第2話
コンコン
「失礼します」
俺は生徒会室に入る。そこには藤堂麗華が一人で書類作業を行っていた。
「……ああ、豚田くんか」
犯された時の記憶がない麗華は、俺に笑顔を向けた。たかだか数日で、少しやつれたように見える。
(くくく、無理もないか。乳丸出しで歩いてたのを大勢の人間に見られたんだからな)
噂では、その時の写メがすでにネットに出回っているらしい。この女にとっては、消えない人生の汚点だろう。
(まああの程度、汚点だと思えないくらいにめちゃくちゃになってもらうんだが)
俺はそしらぬ顔で麗華にスマホ画面を向けた。
「ほい、捕獲、と。」
いったん隙をつく土台を作ってしまえば、あとはここまでは流れ作業だ。
俺はある命令を事前に仕込んだ上で、‘のがす’ことはせず、一時的に麗華を開放してやることにした。
「ほい、実行、と」
俺がボタンを押すと、麗華が我に返り――俺に気付いて、すさまじい剣幕で立ち上がった。
「貴様……よくものこのこと私の前に戻ってきたな! お前だけは……!」
刺されそうな剣幕。おれはたじろいだふりをしながら、わざとらしく弁明した。
「ま、待ってください会長! なんとかお詫びできないかと思って、すばらしいものを持ってきたんですよ」
「……なんだと?」
麗華が動きを止めた。俺はそんな麗華の前で、ズボンのチャックをおろし、ペニスをあらわにして見せた。
「なっ、なにをっ!?」
「なにをって……チンポですよ。『会長は、この世のなによりもチンポが好き』なんでしたよね?」
一瞬麗華の目がすぅ、と曇り――そしてすぐに元に戻った。
「……確かに、チンポは私の大好物だ。それをくれるというのか……?」
「ええ、どうぞ、味わってください――」
麗華は、半信半疑といった様子で、それでも俺の側にやってくる。無理もない。目の前に大好物があるんだからな。
「あぁ……なんて立派なチンポ……」
俺の前にひざまづいた麗華は、ペニスに顔を近づけて、うっとりと呟いた。もうチンポしか眼中にないだろう。
「しっかり味わってくださいね」
「もちろんだ……あむっ」
(うおっ、いきなり根元までっ)
俺のペニスは日本人の標準よりかなり大きいのだが、麗華は一口でそれを頬張ってしまった。そしていきなりピストンを開始する。俺は慌てて麗華を引きはがした。
「ちょ、ちょいまった」
「なんだ! 邪魔をするな」
正気に戻った時以上のガチギレである。おおこわ。
「もっとちゃんとした味わい方があるんです。俺の指示に従ってやってみてください」
「……わかった」
チンポをしまわれると困るからだろう。憎いはずの俺の言葉に、しぶしぶといった体で頷く麗華。
「どうすればいい?」
「まずは全体にたっぷりと唾をまぶして……横笛をくわえるように、最初は根元を舐めて、ゆっくりと先まで……。同時にキンタマもいじって」
「こ、こうか……? ちゅっ、はむっ」
麗華が必死に俺の指示に従ってペニスを舐めしゃぶる。人形状態で咥えさせるのもいいが、こうやって本人にやらせるのもいいものだ。俺は上から、麗華の様子をスマホで撮影していた。これはいずれネットに上げてやろう。
「そうそう、そのあと亀頭に移ってください。鈴口を舌でほじくるかんじで。先走りは舐めとって」
「ちゅっ、ちゅぱっ……ちゅむっ」
嬉しそうに奉仕する麗華。まるで犬だ。
「よし……じゃあいいですよ。咥えて」
「! はもっ!」
よほど待ちかねていたのだろう。俺の『よし』に、ペニスに再度くらいつく麗華。こんどこそピストンがはじまる。顔を引く度に鼻の下が伸びて、見事なひょっとこ面になるのがなんとも滑稽だ。俺は軽くからかってみることにした。
「会長、あんなにひどいことした俺のチンポに、よくそんなに夢中になれますね」
「ッ……!」
その言葉に、麗華はキっと俺を睨んだ。……とはいっても、勇ましいのは鼻から上だけで、口は未だにピストンを続けてるひょっとこ顔という、形容しがたい間抜けさだ。これは良い絵が撮れた。
じゅぽっ! じゅぽっ!
ピストンに合わせて、俺の快感も膨らんでくる。俺はSAIMIN GOで新しい命令を打ち込んだ。
「『射精と同時にイけ』、と。……よし、出すぞっ!」
びゅるるるるっっ!
「!! ~~~!!!!!」
麗華の喉にザーメンをぶちまけると同時に、麗華が声にならない悲鳴をあげて痙攣した。俺は麗華の頭を鷲掴みにして、胃の中にザーメンを全部送り込んでやる。
「ふう……」
ペニスを引き抜くと、麗華は半ば失神している。白目をむいて鼻水とよだれが垂れており、ひどい面だ。俺はペニスの汚れを、麗華の長い髪でふき取った。
「はっ!」
麗華は当然目を覚ました。
(……ここは、そうか、あの男がまた私を!)
「どうしました、会長?」
背後から声がした。あの謎の力を持った男子生徒の声だ。
「僕のザーメンが美味し過ぎて気絶するなんて、本当に呆れましたよ」
そうだ。自分はまた狂わされて、この男の一物を喜んで――
(うぅっ……! )
胃の中に、汚液が大量に収まっていると思うと吐き気がこみ上げてくる。身体の奥底から汚された気分だ。
「しかし会長ともなると、ケツ穴まで綺麗なんですね。やっぱり食ってるものが違うのかな」
「……え? …………ちょっ……何を見てる! やめろ!」
麗華は、言われて初めて自分の体勢に気付いた。自分は机の上に乗り、尻を豚田に向けて座って、あまつさえ両手で尻たぶを開いて、不浄の穴を見せつけているのだ。一生誰にも見られるはずのない場所を好きなだけ見られる恥ずかしさ。麗華の頭が一瞬で沸騰した。
「やっ! だめっ!」
「おや、生徒会長でもそんな可愛い声出すんですね。……安心してください、恥ずかしがるようなみっともないケツ穴じゃないですよ」
そう言うなり、尻の穴に指が突っ込まれた。
「ひぃっ!」
麗華は異物感にのけ反った。‘出る’場所である肛門に異物が侵入してくる不快感。生理的な嫌悪感だ。
「やめろっ! き、汚いっ!」
「汚い? なんでです?」
「なんでって……当たり前だろう! そこは排泄口だ――ふぅっ!」
二本目が突っ込まれた。指がぐにぐに腸内で蠢く。
「ちなみに、会長は最後にクソしたのはいつです?」
「そんなこと言えるわけだ――放課後、授業終わり直後です。――っ!?」
「なるほど。ちなみにそのクソは、どんな感じでしたか?」
「やめ、やめろっ言わせ――三十センチはありそうな見事な一本グソでした。ああっ!」
「ほー。流石会長は腸も健康なんですね。じゃあほとんど腹の中は綺麗なわけだ」
尻から指が抜け、かわりに何かが押し当てられる。
「な、なにをする気だ?」
「なにって……アナルセックスですよ」
麗華は耳を疑った。
「アナ……!? ふ、ふざけるんじゃない! 病気になるぞ!」
「平気ですよ。それじゃ、ほいっと!」
「ぐ、ううぅ!!」
指とは比べ物にならない太さのものが、麗華の尻穴に押し入ってきた。圧迫感にのどがつまる。
「あぐっ、は、や、やめろっ、抜けっ」
「ちょ、会長もっと力抜いて。チンコちぎれる」
「抜けるかばかっ!」
「しゃーねえなぁ、……実行っ」
背後で何かをやってる気配があり――『実行』という言葉の瞬間、麗華の身体に劇的な変化が現れた。
「ふぅぅんっ!」
唐突にペニスが触れている部分全体が性感帯になったように、背骨に快感が突き抜ける。
「あひっ、はっ、なにをしたっ」
「俺は優しいから、会長も楽しめるようにしただけですよ」
その言葉と同時にピストンが始まった。
「ああっ、ひいっ! はっ!」
内臓を押し上げられるような突きと、我慢に我慢を重ねたあとの排泄のような抜き。どちらも麗華に電撃のような快感を与えてくる。
「どうです? 俺のチンポ気持ちいいっしょ? 感謝してくださいよ」
「ふッ、ざけるなっ! 許さんッ!」
麗華は快楽に流されまいと、必死に虚勢を張ったが、次の豚田の言葉で凍り付いた。
「んじゃあ許したくなるようにしましょうか」
(――まただ! またこの男に心を操られる!)
物理的な暴力など比にならない、自分が自分でなくなる恐怖。麗華のうなじに鳥肌が浮き立つ。
「『一突きごとに、俺が大好きになる』っと。送信
「たのむ、待て、やめ――ふぐっ!」
尻穴を突かれた瞬間、麗華の心にそれまで全く存在しなかった想いがわきあがる。
――この卑劣な男への愛しさ。
(ちっ、違うっ! これは、こいつのせいで、本当の心じゃ――)
「それっ!」
「はひぃっ!」
そうなのだろうか? 実はこれが自分の隠された本心ではないのか。
「ちが、やめっ!」
「おらっ!」
「んぐうっ!」
いや、そうにきまってる。今まで恋などしたことはなかったが、これが、恋。
「せいっ!」
「あひぃっ!」
(わ、わかった――この人が私の運命の人)
「どうだ! 俺のことをどう思うか言ってみろ!」
麗華は、自分の‘心からの想い’をためらいなく口にした。
「大好き、あなたのことが大好きですッ!」
次の瞬間、麗華の直腸に大量のザーメンが注ぎ込まれる。
「ッくっぅぅぅぅっ!!!!!」
(ああ、死んでもいいくらい幸せ――)
麗華はあまりの幸福感に波を流しながら絶頂した。
「ふー、出した出した」
俺は机の上で、尻からザーメンを滴らせながら痙攣している麗華をよそに、SAIMIN GOに命令を打ち込んでいた。
(俺の命令がもうちょい上がって、こいつが‘捕まえられ慣れ’れば、こいつを俺の永久所有マインドにもできるはずだ)
だが今はまだそのときではない。麗華には、記憶の操作と、多少の指令を与えてにがすとしよう。
(あとは、半裸で下校した時の記憶も無くしといてやるか。どうせ誰も気を使ってそのこと言ったりしないだろうし)
「うし、実行、と。ちゃんと命令通り後始末もやっとけよ」
俺は満足して、生徒会室を後にしたのだった。
「ただいまー」
光莉が家に帰ると、母親は例によってクロスワードパズルに没頭していた。
「~♪」
部屋に荷物を置くと、とりあえず弁当箱を洗いに台所へ行く。
「うぷっ」
光莉が弁当箱を開けると、異臭が鼻をついた。
(なにこれ、くさっ)
生臭いような、栗の鼻の様なにおいが漂う。しかも弁当箱の中じゅうに、白いカピカピしたものがこびりついている。
(うわ~……なんだろ。カビかな?)
自分が昼食べた弁当に一抹の不安を覚える光莉。しかし食べた時は、味に異変は感じなかったし、今も体調に変わりはない。
(大丈夫なのかなあ……?)
首をかしげながらも、念入りに弁当箱を洗った光莉は部屋に戻った。
(……うん、やっぱりヒロは入ってない。SAIMIN GOさまさまだねっ)
「よし、宿題すませちゃお」
そう言って光莉はシャツの前を開けてブラジャーを外して、パンティーを脱いだ。ベッドに座り、スマホのビデオ撮影モードを起動した。
「えーと、今からオ、オナニーしますので見てくださいね」
宿題とはいえ、オナニーという単語を使うのはまだ照れくさい光莉である。自分が写るようにスマホを置いて、脚を開いて座る。
「まず……右のおっぱいからです」
自分でカメラに向かって言葉で説明しつつ、作業的にオナニーを始める光莉。
「乳首を軽くつまみつつ、左のおっぱいを全体的にもみます……」
光莉自身、自慰の経験はほとんどない。今までに数回ほどである。少ない経験から、たどたどしい手つきで実況オナニーを進めていく光莉。
(ううーん、難しい)
開始十分は越えたはずだが、女性器がわずかに湿ってきた程度である。
「今はお、おまんここんな感じです」
そう言ってスマホに向かって、女性器を指で割り開いてみせる光莉。
(少し気持ちよくはなってきてるんだけどな……)
結局その日は絶頂しないままに夕食になってしまい、イけないままの動画を提出する羽目になってしまった。
(明日ことは絶対イくんだから)
夕食を食べながら、光莉は一人意気込んでいた。
「ひかりさあ、昨日の宿題提出した?」
昼休み。光莉達が弁当を広げているのは、昨日と同じ場所だ。打ち合わせしたみたいに、なんとなくここにきてしまった。
「うん、した。でもイけなくて」
光莉は少しためらいながら答えた。
「まつりはイった?」
「うん、あたしはなんとか」
そう言って胸を張る茉理に光莉は素直に感心してしまった。
「はぇ~やっぱまつりは大人だなぁ」
「光莉だって、慣れればすぐにイけるようになるよ」
「だといいけど……わたしオナニーとか全然やったことないし……」
「やっぱりさ、クリをもっと責めればいいんじゃない?」
「そうなのかな。わたしあまりそこは怖くて」
(くっくっく、俺に見せるためのオナニー動画の完成度を上げるために、一生懸命話し合っている姿はいじらしいの一言だな)
二人の背後の茂みに身を潜めながら、俺はほくそ笑んだ。
『毎日実況オナニー動画を撮って俺に送れ』という命令。そしてここを昼食の場に選ぶようにしたのも俺の命令だ。
二人の‘宿題’の出来はひどいものだった。茉理は、少しは経験があるようで、最後には小さくとはいえイってみせたが、光莉はろくに濡れないうちに、画面外から夕食を呼ぶ声が聞こえたところで動画が切れていた。
(まあ、つっても現役JKの無修正動画だ、客はめちゃめちゃ着くだろうが)
二人の動画は、顔と声に加工をかけてネットの裏サイトに上げてある。自己紹介のところに昭府学園の生徒だと入れているので、ほどなく話題に上がるだろう。二人のオナニー日記を大勢の生徒に見てもらうというのが、俺が選んだ方法だ。
「ふむ……ボールの手持ちは二個か」
SAIMIN GOの最大の弱点は、ボールの回復が遅いことだ。レベルが高くなっていくこれからは、対象を増やしたいところだしどうにかならないものだろうか。
(まあいい、とりあえず今日はこいつらの宿題を助けてやるか)
俺は二人に向けてボールを放った。
「ひゃっ!?」
光莉は、いきなり胸に違和感を感じて声を上げた。
「……ひかり? どうしたの、虫でもいた?」
「う、うん、虫だと思ったけどかんちが――んっ!」
胸がまるで誰かに揉まれているような感じを受ける。しかし周りには誰もいない。
(な、なにこれっ……)
「ところでさー、渋谷あしたでもいいけど明後日にする?」
「えっ、しびやがどうしたのッ」
‘誰か’が、光莉の乳房を揉みしだく。
(ひゃぁっ、なんで、これ、すごい感じるっ)
胸はこうやって愛撫するんだと、身体に教え込まれているように、丁寧に下乳から乳首までが刺激される。
「――で、――」
茉理の声が全く耳に入らない。
「ぁ――くッ」
光莉は胸への刺激だけで絶頂した。茉理にバレないよう、背中を丸めてぶるぶると身体を震わせる。
「……ひかり?」
「あ、にゃ、にゃに?」
「めっちゃ涎でてるけど大丈夫?」
「だ、だいじょ――ににゃっ!」
股間に刺激が走る。
「だ、だめ、そこだめっ!」
「ひ、ひかり!? 大丈夫? あんた。誰かよんでこ――」
不自然に茉理の声が途切れたが、光莉にはそれを気にする余裕がない。
見えない指が自分の膣をかき回している。
「あっ、ひっ、あめっ、そこっ」
浅い部分を刺激されると同時に、クリトリスの付け根を擦られると、腰が跳ね上がってしまう。光莉は完全に翻弄されていた。
(こ、こんなに気持ちよくなれるんだ、わたしの身体――)
見えない指が、とどめを予告するかのように、恥丘を数回たたく。体験したことのない絶頂の予感。光莉は力の限りハンカチをかみしめた。
(くるっ、きちゃうっ)
そして訪れるとどめの一撃。クリトリスが力強く、すり潰された。
「ッッッゥーーーーーー!!!!!」
光莉は声を押し殺しながら、昼の学校で絶頂に達した。
「ひかり?」
茉理の声に、光莉は我をとりもどした。
「ま、まつり、違うの! これは!」
「……は? いきなりどったん?」
「……あれ?」
光莉は目をしばたかせた。
「わたし、どうなってたかな?」
「どうって……一瞬ぼーっとしてた。ひかりって昔からそういうとこあるよねー」
(どうなってるの?)
困惑した光莉だったが、下着がぐっしょりとぬれそぼっていることに気付いた。
(やっぱり夢……じゃない)
俺は家でパソコンの画面に向かっていた。画面の中では、女子生徒――小笠原光莉が、股を広げてあられもない姿を晒している。
「そーそー、今日教えてやったことをちゃんと覚えてるじゃないか。偉いぞ、くっくっく」
この動画は、先ほど送られてきたホヤホヤのやつだ。光莉は俺が昼に‘指導’してやったとおりに、まんこをほじり、尻穴にも指を伸ばし、クリトリスを擦っている。
『あッ、くっ、ッー』
画面の中で光莉がびくびくと身を震わせた。そして背を丸めるようにしばらくうずくまった後、画面に手を伸ばし――動画は終了した。
「これは視聴者が喜ぶぞ」
俺はほくそ笑んだ。わざわざ少ないボールを使って、躾てやった甲斐があった。このままオナニーを続けさせれば、俺がまんこを使う時にはいい具合に仕上がっていることだろう。
「顔と声は修正して……アップロード、と」
手早く画像を加工して、今日のオナニー動画を投稿型アダルトサイトにアップする。光莉達のオナニー動画は、初日で数万のPVをつけた。すぐにこの二人はネットの人気者になるだろう。
「そのうちリアルタイム実況とかもさせてやるとしよう」
まだ今は完全に個人情報を隠しているが、そのうち顔出しで全国デビューさせてやる。大騒ぎになるのが今から楽しみだ。
「しかし……やっぱり、もっとボールがいるな」
机に置いたスマホを見ながら俺はつぶやいた。
マインドボール。当然ながら、俺はそれに関する機能も見つけ出した。どうやらいろいろな地点に、ボールを貰えるいわば‘マイ(ンド)ストップ’があるらしい。そしてそれは人の多い場所に多く出る傾向にある。例えば、都心のターミナル駅……このあたりなら、渋谷や新宿が近いだろう。
「……行きたくねえな」
俺が二年前まで通っていた学校は、ちょうど渋谷と新宿の間にある。その時の俺も当然いじめられていた。そして問題なのは、そのあたりにいくと、あのクソどもに遭遇する可能性があるということだ。
いじめっこなど、SAIMIN GOがあればと思うかもしれないが、それは違う。
あのクソどもはたいてい数人で行動している。日々の躾で限界までボールを使っている俺にクソども相手に割くボールはないのだ。それに、できるだけSAIMIN GOが人目に触れる可能性は低くしたい。……少なくとも、俺が催眠マスターになるまでは。
「せめて平日にいけりゃ、クソどもに会う可能性も減るんだが」
そう独り言をつぶやいた瞬間、俺の脳裏にアイデアが浮かんだ。
「……これでいくか。なに、死んでもかまやしねえ」
俺は呟いて、椅子に背をもたせかけた。胸に暗い歓びが湧いてくる。今週末は家で英気を養うとしよう。
「おはよう、小笠原さん」「あ、おはよー」
月曜の朝の教室は、またこれから一週間をむかえる活気のような、あきらめの様な、独特の雰囲気に包まれる。光莉はそんな空気が嫌いではなかった。
「えーと……二時間目は現国だから……」
「うわー! 信じらんない!」
引き出しの中を整理している光莉の耳に、茉理の声が聞こえてきた。
(月曜日から元気だなあ)
低血圧な光莉は、月曜はずっと自分の中でエンジンがかからないような感覚を覚える。茉理のように、「たっぷり休んだから朝からテンションマックス」とはなかなかいかないのだ。しかも今日は足が少し痛い。
光莉達は日曜に渋谷周辺を練り歩いて、手当たり次第にマインドボールを収穫した。しまいには、光莉は茉理についていくだけでやっと、というくらいに疲れ果てていた。しかしおかげでマインドボールは二十個以上たまった。
(というかこんなにいらないんだけど)
マインドボールは一日一個も使わない。今まで使ったのは、汗のにおいが凄い運動部の男子に、制汗スプレーを使ってくださいとお願いしたり、授業中うるさい女子に、もう少し静かにしてくださいと言ったり。
世直しと言うより、面と向かって言いづらいことをさせる程度のことに使われていた。
(まつりは、もっとじゃんじゃん使っていこうっていうけど、そう簡単じゃないよね)
顔を上げて教室の前方に目をやると、男子のグループと茉理がワイワイ喋っている。茉理は男子にも女子にも全くわけへだてなく接するので、すごく人気があるのだ。
「このへんたいども~!」
そう言いながら茉理が戻ってきた。言葉は汚いが、表情は明るい。こういった言葉の使い分けも、男子たちと接するときの秘訣なのだろう。
「ったく、男子ってほんと馬鹿!」
「どうしたの?」
「朝からスマホでエロ動画見てるんだよ! 信じらんない!」
「はぁー」
光莉は反応に困って、曖昧な笑顔を浮かべた。まあ年頃の男の子はそんなもの――なのだろう。
(年頃、かぁ)
月浩もそろそろ女の子に興味が出てきたりするのだろうか。そんなことを想像して、光莉は思わず鼻で笑ってしまった。
(……ヒロはまだまだお子様だよね)
そんなどうでもいい光莉の思考は、茉理の言葉に吹き飛ばされた。
「それがさ、そのエロ動画……出てるのうちの学校の生徒なんだって」
「ええっ!?」
光莉は裏返った声を上げてしまった。
「それほんとなの?」
「そうっぽい、顔は隠してるけど」
「うわぁ……誰かに脅されてとかじゃなくて?」
「ううん、なんか自分から上げてるっぽい感じだった。カメラに向かって足ひらいてさ」
「わー! ストップストップ!」
「おや、光莉ちゃまには刺激が強すぎたか」
茉理はひひひと変な笑い方をして自分の席に戻っていった。
(はぁ……そんなことする子がいるんだ)
あまりにも別の世界の話のようであり、光莉にとってにわかに信じがたい話である。
(やっぱり……目立ちたいから?)
しかしそれだけで、自分の一番恥ずかしい部分を不特定多数――それこそクラスメートが見ているかも――に曝け出すというのは、あまりにもリスキーである。ばれれば下手すれば退学……いや、それどころではない。データは永遠にウェブに残るのだ。
(自分がもしそんなことになったら、生きてけないよー)
光莉は、朝から胸に溜まってしまったもやもやを吐き出すように、大きく息を吐いた。
「くあぁぁっ……ねむっ!」
三時間目が終わり、茉理が思い切り伸びをする。
「今日みたいな天気がいい日は眠くなっちゃうよね」
「うそつけ、あんたが居眠りしてるとことか見たことないぞ」
そんなたわいもない会話を光莉達がかわしていると、突如教室にざわめきが起きた。
「ちょっと……あれ」「うわっ、マジ?」「ちょっと! 先生よんできなよ!」
窓際にいた生徒たちが、口々にささやきあいながら、窓の外を指さしている。
「どうしたどうした!」
野次馬精神前回の茉理が窓際に走り寄り、それに引きずられるような形で光莉も後に続いた。
光莉は他の生徒の視線の先を、目で追って思わず息を飲んだ。光莉達のいる通常棟からL字になっている実習棟の校舎の屋上。その転落防止策の外側に一人の男子生徒が立っている。
「うそ、まさか飛び降り!?」
現実感の無い光景。茉理が横で呟くのが、まるで夢の中のセリフのように響く。
「やめなさーい! 柵の内側に戻るんだー!」
下から数人の教師が叫んでいる。窓という窓から、生徒たちが顔を出して一点を見つめる光景は、不思議な感じだった。
屋上に立っている男子生徒は、背が高くシャツの裾を出していて、いわゆる自殺しそうなタイプには見えないが。遠すぎてその表情までは光莉にはわからない。
「あれってC組の町田じゃね?」
誰かのつぶやきが聞こえた。
その時、男子生徒の足がまるで教室から出るような気軽さで前に踏み出された。そのまま不自然な体制できりもみ状になりながら、落下する。
「――ッ!」
硬直した光莉を、茉理が抱きしめた。光莉の視界は茉理の身体で遮られる。次の瞬間どよめきと悲鳴があたりを包み込んだ。
「えー、今日の授業は終わりです。寄り道せずに帰るように」
結局四時間目は完全に教室待機だった。その後救急車やパトカーが校門に止まったりしているのが見えたが、男子生徒が助かったのかはわからない。
「明日もしかするとテレビや週刊誌の取材があったりするかもしれないが、答えないように」
そう言って担任は足早に教室を後にする。教室はとたんに喧騒で満たされた。
「あれやばかったねー。ドラマみたいだった」
「そうだねー」
「あれC組の生徒だったんだってね」
「そうだねー」
「光莉さん? 大丈夫?」
「そうだねー」
「……駄目だこりゃ」
下校中、光莉は茉理の言葉に相槌を打ちながらも、今日自分が見聞きした出来事について、ショックというよりはなんとなく釈然としない想いを感じていた
次の日。結局連絡網で学校は平常通りということになり、光莉達はいつもどおりの時間に登校していた。
「町田、命は助かったらしいよ」
「そうなんだ。よかった」
光莉は胸を撫で下ろした。名前と顔は知っていたが、件の生徒とは全くといっていいほど接点がなかった。それでも命が助かったならそれ以上のことはない。
「だけど意識不明らしくて――あれ、あそこにいるのって……」
茉理のことばに遅れて光莉も、校門の脇に見知った生徒が立っているのに気付いた。とはいえ、光莉が一方的に見知っているだけだったが。
「藤堂先輩だ」
生徒たちに目をやり、ときおり挨拶を交えているのは生徒会長である藤堂麗華だった。
「はぁ~相変わらずお美しい」
茉理が呆けたような声を出した。光莉もその言葉には同意である。麗華の整った顔立ちと見事なスタイルは、女子でも惚れ惚れするほどだ。噂ではファンクラブもあるらしい。さらに学業優秀、運動もできる。教師からの信頼も厚く、まさにこの学校の女王といってよい。
(こんな人がなぜおっぱいを……)
光莉は近づくにつれ、まじまじと麗華の身体の一部を見てしまった。そのせいで本人が自分に目を向けたのに全く気付かなかった。
「おはよう」
「ひゃい!? おおおおひゃようございます!?」
(光莉にとっては)突然かけられた声に、裏返った声を出す光莉。周りじゅうの視線が光莉たちに集中した。
(は、はずかしいっ)
顔を真っ赤にしてうつむく光莉。あっけにとられていた茉理が、ごまかすように挨拶の言葉を口にした。
「あ、会長おはよーございまーす。……ひかり、ほら、いこっ」
「うん……」
光莉はうつむきながら麗華の横を通り過ぎようとしたところ、麗華の足が小刻みに震えているのに気付いた。よく見ると顔が赤いような気もする。
(体調悪いのかな?)
「あ、あの、大丈夫ですか」
光莉が声をかけた瞬間、麗華の表情に変化が現れた。眉に皺をよせ、僅かに小鼻をふくらませる。喉からわずかに呻き声が漏れた。
「ふっ……くっ」
「……! す、すいません!」
気を悪くしたのかと思い、頭を下げる光莉。しかし麗華が異変を見せたのは一瞬で、すぐにいつものクールな顔に微笑みを浮かべて、光莉に優しく声をかけた。
「いや、大丈夫だ。君がきにすることじゃない。ほら行きなさい」
「は、はいっ」
光莉達は足早に、校門を後にした。
「はっ、はっ……」
生徒の流れが途切れた校門で、麗華は門柱によりかかると荒い息をついた。そこに一人の男子生徒が近づいてきた。
「くくく、よく我慢したじゃねえか」
麗華はその男子生徒――総介を、きっと睨み付けた。
「そんなものほしそうな顔すんなよ。すぐにぶちこんでやるから」
「誰がほしがるものか! 己惚れるな」
「へいへい。『ついてこい』」
途端に麗華の足が、麗華本人の意志に関係なく総介の後を着いて歩き出した。
二人が向かったのは、駐輪場の建物の裏に生えている木の裏である。
「よし、『木に手をついてケツをむけろ』や」
「くっ、やめっ……」
麗華はぐい、と総介にむかって尻を突き出した。形のいい尻のラインがスカートのプリーツの上からでも見てとれる。
「ほいっと」
総介の手が無造作にスカートをめくり上げた。すると本来あるはずの下着はそこにはなく、麗華の白い尻が露わになった。二つの肉の丘の真ん中のすぼまりから、紐の様なものがとびだしている。
「ふとももの内側がべとべとじゃねーの。脚をすりあわせて、マン汁垂らしてんの、ばれないようにしてたのか。健気だな。そんなにアナルローターを気に入ってくれたなら、プレゼントした甲斐があるってもんだぜ」
「ふざけるな! 貴様が怪しげなことをして入れさせているんだろう!」
麗華は声を荒げた。アナルローターを入れて校門に立つよう命じたのは総介である。そして総介はきままにローターのスイッチを切り替えて、麗華をなぶった。麗華は一時間近く、肛門をいじめぬかれて、光莉たちに挨拶をしたときはもう限界に近い状況だった。
「そんな怒んなって。ほい、スイッチオン」
総介が手に持った小さなリモコンのタブを押し込む。その瞬間、麗華の肛門に埋まっているローターが低い音を立てて動き出した。
「ほぉっ! お、おぉっ」
麗華はローターが生み出す快楽に、身体をぴくぴくと震わせた。総介にアナル処女を奪われて以来、麗華の尻穴は恐ろしく敏感になっていた。
「ははは、おもしれー。会長のケツが電動モーターで動いてるみてー。オン、オフ、オン、オフ、と」
ローターの切り替えに合わせてカクカク尻を動かす麗華の姿は、滑稽という以外にないものである。
「ひ、人で遊ぶのもいい加減に――ッ」
「まあそうだな。もうすぐ授業もはじまるし。ほんじゃ抜くぞ」
そう言って、総介はローターの紐をゆっくりと引っ張った。麗華が小さく呻き声を上げる。紐が伸びきってわずかな抵抗感があったかと思うと、麗華の肛門がぷくりと膨れ、そして火口から卵型のローターが顔を出す。そのままローターが引き抜かれると、肛門とローターの間でねばついた腸液が糸を引いた。
(やっとこれで開放される)
麗華が息を吐いたその時、総介の手が麗華の尻たぶを乱暴に掴んだ。
「なっ……何をする!?」
「何をするって……アナルセックスだよ。ほれ、授業始まる前にすますぞ」
「まて! 外だぞ、せめて屋内で――ふぐぅっ!」
総介のペニスが麗華の肛門を貫く。ローターと比べ物にならないサイズ間に、麗華は息を詰まらせた。
「おぉ、はじめて犯した時とは別ものだ。ねっとり絡みついてくるぞ」
「や……やめ……んンッ!」
ずんずん突かれて、麗華は呻いた。ローターでじっくりと温められたアナルは、素直な快楽を伝えてくる。
その時、自転車のベルが聞こえて麗華は身をこわばらせた。自転車登校の生徒が、自転車を置きに来たのだ。
「あー、そういや手前ほとんど埋まってたから、空いてんのはそこだけだったわ」
総介の言葉の通り、人の気配が近づいてきて、薄い壁を隔てた反対側で止まる。麗華は必死で息を殺した。
「あ、出そう」
背後のつぶやきに麗華は耳を疑った。
(ふざけるな! ど、どうすれば――)
声を上げられず、身体も動かせない。むしろ身体が緊張することで、ただ一つ自由になる肛門に力が入り、ペニスを締め付けて、みずから射精の引き金を引くことになった。
びゅるるるっ!
「―――ッ!!!」
麗華の腸内にザーメンが吐き出された。同時に抗いがたい快楽の波が押し寄せる。しかしまだ薄壁の向こうに人の気配。麗華は歯を食いしばって、射精の間、ひたすら耐えた。歯がカチカチとなる。
ザッザッザ……
足音が遠ざかっていく。
「もうイっていいぜ」
そう言って総介が肛門からペニスを抜いて、ぺちんと尻たぶを叩いた。それを合図に、麗華は自制の心を手放す。
「ぐッ……イっぐうううぅぅっ」
甲高い嬌声ではなく、野太い獣の唸り声のような声を上げて、麗華はへたり込みながら痙攣した。尻からぶひゅぶひゅとザーメンが噴水のように噴きでる。
「ふぅ、ちょいとは気が晴れたぜ」
俺は教室に向かいながら呟いた。麗華はまた尻にローターを入れて教室に向かわせた。電源は入れっぱなしにしておいたから、昼くらいまではケツ穴でよがり続けているだろうが、あの女のことだから上手く誤魔化すに違いない。
俺は朝から不機嫌だった。なぜなら、昨日のマインドボール集めが予想以上に上手くいかなかったからだ。
(せっかくDQNの馬鹿な飛び降りショーで計画通り半ドンにできたってのによ)
俺は昨日、自分をいじめていたクラスメートの一人である町田を操って飛び降りを敢行させた。そして首尾よく、平日の都心に向かったのだが。
(なんでマイストップがろくになかったんだ!?)
そう、俺の予想を裏切り、ほとんどマインドボールが集まらなかったのだ。
(マイストップの出現はランダムなのか? だとしたら面倒だな……)
やはり最低回復単位の前提で計画を進めるしかないのかもしれない。
「しゃーねえな。そろそろメインディッシュその2をいただくとしよう」
俺は呟いて、ごみ溜め――世間的に言うところの教室に向かった。
「小笠原さーん」
昼休み。光莉が鞄から弁当箱をとりだしていると、クラスメートが教室の入り口から光莉を呼んだ。
「はーい」
光莉が教室から出ると、そこには思いがけない人物がいた。
(と、藤堂先輩!?)
そこには生徒会長が立っていた。
「な、なんでしょう」
光莉はおどおどしながら、上目遣いに麗華を見た。無理もない、下級生ならほとんどが似たり寄ったりの反応になるだろう。
「ああ……すまないが、君に用があるんだ。来てくれないか」
麗華はそう言いながら光莉を見た。
(あれ……?)
光莉は、自分を見る麗華の目に、何か一瞬違和感を覚えた。しかしそれを確認する前に、麗華は歩き出した。慌てて光莉も後を追う。
「あの、何かわたしに用ですか?」
「ああ、少し手伝ってもらいたいことがある。なに、すぐすむ」
「はぁ……」
光莉は仕方なく、スマホを取り出して茉理にLINEを送った。
『先にいつもの場所いっててー』
するとすぐ返信が返ってくる。
『りょーかい!』
それを見た後、スマホをしまった光莉は、麗華の太ももから一筋の液体が垂れていることに気付いた。
(え……)
身をかがめてよく見ようとした瞬間、麗華が立ち止って、光莉はその背中に顔から突っ込んだ。変な声を出してしまう。
「……大丈夫か」
「ひゅ、ひゅいません」
鼻を抑えながら謝る光莉。いつのまにか二人は生徒会室の前に着いていた。
「先に入ってくれ」
「え? わたしがですか」
「ああ。鍵は開いている」
「……わかりました」
光莉は釈然としないものを感じながらも、扉を開けて生徒会室に入った。そこには予想に反し、一人の男子生徒がいた。
(……豚田君?)
光莉は目の前にいる総介が、スマホをこちらに向けていることに気付いた。そして総介の指が動き――光莉の意識がマインドボールに捕えられた。
光莉の全身から力が抜け、人形のように立ち尽くす。
(なんだろう――すごくふわふわする……)
光莉は何も認識できない。ここがどこかも、自分がどうすればいいかもわからない。まるで夢の中にいるようだ。
「よし。『お前の名前を言え』」
頭の中に声が響いてきた。光莉は瞬時に理解する。これはご主人様の声だ。この声に従うのが自分の存在意義なのだ。
「小笠原、光莉です」
光莉の口から、抑揚のない言葉が紡ぎ出される。
「よしよし、ちゃんとマインドは捕えられてるな。ほれ『キスしてやるから、舌をしゃぶれ』」
総介が唇を重ねてきた。光莉は命令の通り、口に入ってきた総介の舌に、自分の舌を絡ませた。にちゃにちゃと部屋の中に音が響く。
「……ぷは。さてと、『お前は処女か?』」
「……はい、処女です」
「『好きな男はいるのか?』」
……好きな男の人? わからない。家族は大事だから、そう言えばいいのだろうか。
「お父さんと、ヒロは好きです」
「ちげーよ馬鹿。……ん? 『ヒロってのは、姉弟か?』」
「はい、そうです……」
「なるほど、使えそうだな。ちょいと趣向を凝らしてやるか。んじゃこういう設定で……」
「はっ!?」
光莉は我に返って、目をしばたかせた。
「あ、あれ、わたしどうしたんだっけ……?」
(確か藤堂先輩に声をかけられて……)
その後が頭にもやがかかったようになって思い出せない。記憶をほじくりかえそうとしている光莉の耳に、聞こえるはずのない声が飛び込んできた。
「ね、ねーちゃん……」
(え!?)
慌てて光莉が顔を上げると、そこに弟――月浩の姿があった。
「ヒロ!? なんでわたしの学校にいんの!?」
あわてて弟に詰め寄る光莉。月浩は怯えた様子で首を振った。
「わ、わかんねーよ……気づいたらここにいて……」
(ええっ、どうしよう……とりあえず先生に……)
「な、なあねーちゃん」
「ちょっと、な――」
意識を月浩にもどした光莉は、言葉を詰まらせた。あろうことか、月浩はズボンを脱いで、ペニスを露出させているのだ。そしてその一物は、ギンギンにそりたっている。
「な、な、なにしてんのっ」
光莉は声を潜めて月浩に詰め寄った。こんなところを見られたら大変なことになる。
「はやく、服着て!」
「で、でもチンチンが変になってて……」
月浩が泣きそうな顔をする。それを見て、光莉の胸の中に不自然なほどの強さの使命感が湧いてきた。
(ヒロがこんな不安そうな顔をしてる。わたしがなんとかしてあげなきゃ!)
「……大丈夫、わたしにまかせて」
「えっ……?」
言うなり、光莉は月浩の前にかがみこんだ。目の前に弟の怒張がある。
(お、男の子のあそこってこんなになるんだ)
光莉は体も弱く、両親から箱入りぎみに育てられたこともあって、同年代の女子に比べて性に関する知識が驚くほど少ない。男性器など小さいころに見た親のそれか、弟がいっしょに風呂に入るのを恥ずかしがる前のものしか知らないのである。
それが、日本人平均をはるかに上回るサイズのペニスを目の前にして、普段の光莉なら完全にショートしてしまうはずのところが、今の光莉にはやるべきことが自然とわかっていた。
「……はむっ」
光莉は迷うことなく、亀頭を口に含んだ。月浩が小さく声を上げたのが聞こえる。
(うわぁ、びくびくしてる……)
月浩のペニスはひどい臭いを放っていたが、光莉はそれを嫌と感じなかった。恋人の唇にするように、ちゅっちゅっと鈴口に連続で口づけする。そしてそのまま顔を傾けて、ペニスにほおずりするような角度で竿に舌を這わせながら、指できんたまを愛撫する。
「ちゅっ……ちゅむっ」
「ううっ、ねーちゃんの舌が……」
月浩の声を聞いて、光莉は少しうれしくなった。そういえば長らく姉らしいことをしていなかったかもしれない。
(よし、もっとヒロを気持ちよくしてあげようっ)
光莉は、いったん顔を離し、そしてペニスを一気に飲みこんだ。
「はうっ!」
月浩が情けない声を上げてのけぞった。
(ふぐっ……やっぱ、おおきっ……)
亀頭が喉にまで達っする圧迫感にあえぐ光莉。しかしひるむことなく、そこからピストンを開始する。
「じゅっ、じゅぼっ、じゅっぷ!」
首を前後に動かし、ペニスを刺激する光莉。カウパーとよだれが混ざった泡が顎からしたたり落ちた。
「ね、ねーちゃん、もう……」
「ふぃぃよ、だひれ。じゅぽっ、のんれあげりゅっじゅぼっ」
光莉は一際深くペニスを銜え込んだ。次の瞬間、ペニスが喉の奥で膨れ上がり、ザーメンが噴出した。粘ついた液体が、大量に光莉の喉を通って胃に落ちていく。光莉は喉をならして、必死にザーメンを飲んでいく。
「ごきゅっ、ごくっ」
数十秒続いた射精を、光莉は見事にすべて飲み干し切った。
「……げぷっ」
ペニスを口からぬいた光莉は生臭いげっぷを漏らした。普段ならげっぷなど絶対しないところなのだが。
「ヒロ、これでズボンはけ……えっ」
光莉は言いかけて絶句した。光莉の腹がたぷたぷ言うかというほどに射精したのに、月浩のペニスは全く張りを失っていなかった。
「ね、ねーちゃんどうしよう」
「…………」
(ここでわたしがどうにかしないと、ヒロの人生が狂っちゃう)
「よし」
光莉は意を決して立ち上がった。
「ヒロ、そこに座って」
「えっ、で、でも」
「いいから、お姉ちゃんがヒロのおちんちん、大人しくさせてあげる」
そう言って光莉はパンティーに手をかけて、引きずり下ろした。脱いだパンティーに染みができている。
(わたし、濡れてる……弟のおちんちんしゃぶって……)
嫌悪感は感じず、むしろ姉としての誇らしさが胸に湧いてくる。
(よし、これだけ濡れてれば、初体験でもきっと大丈夫だよね)
心臓が早鐘のように鳴っている。光莉だって子供ではない。初体験は、なんとなく大学とかで出会った人とすませるものだと思っていた。まさか弟とすることになるとは。
(……でも変な人とエッチしてヴァージンじゃなくなっちゃうよりは、ヒロのほうが……)
光莉はぎこちなく月浩の腰に跨った。
「ヒロ、じっとしててね」
「う、うん……」
「じゃ、入れるね」
そう言って、弟のペニスを持って、自分の膣口にあてがう。
(場所……間違ってないよね)
わずかに不安になりながらも、ゆっくりと腰を落としていく。
「くうっ、つっ」
思わず声が漏れる。しかしできるだけ表情を変えずに、ペニスを受け入れていく光莉。
途中、引っかかるような痛みを覚える部分があった。処女膜だろう。
「っ……んぅっ!」
覚悟を決めて、そこから一気に根元までペニスを銜え込んだ。
「つっ……!」
痛みは一瞬。光莉は月浩の首に抱き付いて、少しの間息を整えた。
(ヒロのおちんちんの形……わかる……)
「じゃ、動くね……」
そう言って、光莉はゆっくりと腰を上下に動かし始めた。初めてのセックスだが、不思議なほど痛みは感じない。むしろはっきりと快感を感じていた。
「うはっ、ねーちゃんのまんこ、すごっ」
月浩も気持ちよくなってくれているらしい。光莉は夢中で腰を動かした。ペニスを自分の気持ちいいところに呼び込む。
(そっか、わたし、ヒロのことを弟としてじゃなく、男の人として好きだったんだ……)
光莉は弟に口づけをした。月浩も積極的に舌を絡めて来る。部屋の中に、ねばつく音と二人の吐息だけが響いた。
月浩が目で訴えかけてくるのに、光莉は頷いた。
「いいよ、膣内に出して」
妊娠するかもしれない。でも、弟の子供なら産んでもいい。だってお姉ちゃんだもの。光莉は恥骨を月浩の腰に押し付けるようにして、今までで一番深くペニスを銜え込んだ。
「出るっ!」
ヒロの声とともに、今度は光莉の子宮にザーメンが吐き出された。それにあわせて、光莉の意識も天高く打ち上げられる。
「イっっ……くぅっ!」
目が眩みそうな多幸感のなか、光莉の意識は闇に落ちていった。
「ふぅ……」
俺は椅子に深く腰を預けて息をついた。
「なかなか面白かったな。弟の童貞奪って膣出しキめられて失神ってどんなビッチだよ」
そう言って、足元で意識を失っている光莉の顔を踏みつけた。光莉はぴくりとも動かない。
「たく、グズが。『起きてチンポ咥えろ』」
命令を受けた光莉が、半分白目をむいたまま起き上がり、俺のチンポを咥える。俺はそこに小便を放った。光莉が意識のないまま、喉を鳴らして小便を飲み下していく。まさに人間便器だ。
「とりあえず今の記憶は消しとくか。そのうち自宅で弟とのセックス生配信ってのもいいな。……せっかくだし、なんか性格変えてやるか。よし、オナニー大好き女って設定にしてやろう。どうせ今でも毎日やってるしな。……送信っと」
俺は一滴残らず小便を光莉に飲ませてチンポを引き抜き、命令を送った。光莉はのろのろと服を着だす。
「こいつらいつも二人組だし、片方だけいただいたんじゃかわいそうだな。次は桑原にすっか」
新しいプレイの設定を考えながら、俺は生徒会室を後にしたのだった。
「お待たせ―」
光莉がいつもの木の下に行くと、茉理は待ちくたびれた様子で芝生に寝転んでいた。
「ひかり、おーそーいー」
「ごめーん。……ぱんつおもいっきり見えてるよ」
「どーせ見る人ひかりしかいないし。よっと。……あれ? ひかり顔のところ汚れてるよ」
「え、ほんと?」
「うん、なんか靴跡みたいな。なに、生徒会長に踏まれでもした? あの人女王様っぽいもんね~」
「もー、何馬鹿なこと言ってるの」
そう言って光莉は顔をハンカチで拭きながら茉理の横に座って弁当を広げた。
「餓死するかと思ったー。いただきまーす! それで何の話だったの?」
「なんてことない簡単なお手伝いだったよ。……うぷっ」
「どしたの?」
「うん、なんか今日お腹すいてないかも……」
そう言って、光莉は腹をおさえた。なにか大量の液体が胃の中に納まっているような気がする。
「大丈夫? 気分悪い?」
「ううん、大丈夫。そう言えば、何かアイデアがあるとか言ってなかった?」
「ん! ひょう!」
「……食べ物口にいれたまま話さない」
「……ごくっ、そう、なんか前にホームルームで、校舎裏にタバコの吸い殻がどうこうってセンセーが言ってたじゃん」
「うん、なんかそんな話あったね」
「それさ、あたしたちで止めちゃおうよ!」
「ええっ!?」
顔をしかめた光莉に、茉理は拳をにぎりしめて力説した。
「SAIMIN GOがあれば絶対安全じゃん! それにタバコなんてやめさせてあげた方がそいつらの為だって!」
「……それはそうだけど」
「でしょでしょ!」
そう言って、茉理は弁当の残りの具を一気に口にかきこんだ。
「わたしが遅かったからってそんなに急がなくても」
「らってひゃあ」
「お口」
「……ごくっ……うぐ、詰まった、お茶お茶」
「もう……。はい、お茶」
「ありがど」
茉理は受け取ったお茶を一気に飲み干した。
「っはー! ってわけで、今日の放課後ね! あたしは掃除当番だから、光莉には先に行って偵察を命ずる!」
「はいはい。それじゃいこ。次、移動教室だし」
二人が立ち去ったあと、光莉が座っていた場所には、ザーメンの小さな水溜りが残っていた。
< 続く >