憧れの教師 第四話

第四話

 辰巳が出欠簿の名前を呼び上げている最中、立てつけの悪いドアが開く、いびつな音がした。
 室内の視線を一身に集めても、教室の後方を歩く雫は一切気にする様子がない。見えない紐で天から吊り上げられているように、背筋をまっすぐ伸ばして歩く姿はまさにモデルのよう。ホームルームの途中だというのに、辰巳はどこかの撮影現場に紛れ込んだような錯覚を覚えてしまう。
 とっくにチャイムが鳴っているというのに、少女は焦る素振りをまったく見せることなく、自分の席についた。

「近本、遅刻だぞ。ちゃんと遅刻届はもらってきたのか」
「いや。あたしまだ名前呼ばれてないですよね? 出欠が終わるまではセーフのはずですよ」

 果たしてそうだったろうか。ホームルームがはじまった時点で不在なら遅刻だと教わった記憶があるが、自信があるわけではない。
 ただ、遅刻を見逃すことよりも、誤って遅刻扱いにした方が、めんどうなことになるのは間違いないはずだ。

「まあ、今日はそういうことでいいよ。次からは気をつけてくれ」
「いけません。出欠ではなく、ホームルームがはじまったときに不在ならば遅刻です。きちんと遅刻届をもらいに行ってきてください」

 どうやら辰巳の記憶は間違っていなかったらしく、言い終わる前に沙織が口を挟んできた。

「あれ、そうでしたっけ。じゃあ、このあと取りに行きます」

 表面上は素直に従った雫だが、返事をする前に「バレた」と口を動かしたのが見えた。
 どこまでも教師を舐めている奴だと、これまでの自分ならきっとここで冷静さを失っていた。そうして、くだらない失態を重ねていたはずだ。
 だが、いまは自分でも驚くほど落ち着いている。

「じゃあ、出欠を続けるぞ」

 生徒の名前を呼び上げながらも、後ろから沙織の物言いたげな視線を感じていた。おそらく、先ほどの適当な対応を腹に据えかねているのだろう。
 案の定、教室を出た途端に叱責が飛んでくる。

「遅刻の定義については揉めやすいのでよく覚えておいてください。原則はホームルーム開始のチャイムが鳴り終わった時点で着席していなければ遅刻です。実際のところ教師のさじ加減に任されている部分はありますが、うちのクラスの場合は厳しくしておいた方がいいと思います」
「はあ、そうですか」

 思い返してみれば、沙織の下についてからお小言を頂戴しなかった日はないかもしれない。
 怒られるたびにいちいち気落ちして、また失敗を重ねる。お手本のような負のスパイラルに陥っていた自覚がある。
 だが、それも昨日までの話。
 沙織の言葉からそこはかとない怒気を感じていながらも、心にまったく響いてこない。それどころか、叱責されている最中なのに昨晩の醜態を思い出して、笑みすらこぼれそうになってしまう。
 そんな内心が表に出ていたのか、先輩教師のまなじりがつり上がった。

「辰巳先生。真剣に聞いていますか?」
「いえ、全然。『酸っぱい酢昆布』」

 細身のスラックスに包まれた沙織の足がぴたりと止まった。眼球がこぼれ落ちそうなくらい目が見開かれて、総身が工事現場のドリルのようにがたがたと震える。
 胸に抱えていたファイルが落ちて、床にプリントが散らばった。

「ああっ、あっ……あっ」
「どうしたんです? 新海先生」

 プリントを拾いながら声をかけると、沙織は両手で肩を抱いてその場にしゃがみ込んだ。

「ちょっと、何やってるんです。目立つじゃないですか」
「……はあ、すみません。なんだか急に、気持ちよくなっちゃって」

 赤い肌。締まりのない表情。捕食者のように辰巳の全身を舐め回す艷やかな瞳。
 怠惰な新人を指導していた女教師はどこへ行ってしまったのか。頭を上げた沙織は、先ほどまでの理知的な姿とはまるで別人だった。

「気持ちよくなっちゃってじゃないだろ。俺に説教するなんて、どういうつもりだ?」
「すみません。帰ったらたっぷりとご奉仕するので、許してくれますか?」

 ふっくらした唇をつり上げて、美女は淫らに笑った。
 普段は催眠状態の記憶を封印しているが、言葉一つで沙織は奴隷に戻すことができる。辰巳が命じさえすれば、教え子たちの前で裸になることさえ、いとわないだろう。なんなら、生徒一人一人とセックスさせたっていい。
 公衆の前でグラマラスな裸体を晒している沙織を想像し、辰巳は勃起した。

(もうしばらくは、この体を独占させてもらおう。でも、飽きるまでたっぷりと遊んだあとはどんな仕打ちをしてやろうか)

「ご主人様ったら、いやらしい……」

 テントを作った辰巳の股間を凝視しながら、沙織は舌なめずりをした。
 そのまま一人分ほど空けた空間を詰めて体を擦り寄せると、ふくよかな脂肪の塊を右腕に押しつけてくる。

「おい……」
「大丈夫ですよ。誰もいないことは確認してますから。それより、見てください」

 ジャケットの襟に手をかけると、沙織は胸部が見えるよう外に開いた。
 あらわになったブラウスはボタンを弾かんばかりに張り詰めており、大きな膨らみの頂には突起が浮かび上がっている。
 破廉恥なシャツに身を包んだ沙織は、涎を垂らさんばかりの恍惚とした表情で辰巳を見上げてきた。

「ノーブラなんです。パンツだって履いてないんですよ」
「痴女か」
「どうですか? 喜んでいただけましたか?」

 睦言のあとに植え付けた暗示は見事なまでに作用している。あの清楚な沙織が下着を身につけることなく高校へやってきて、生徒の前に立っていたのだ。
 昨日までの清廉な女教師はもうどこにもいない。いま目の前にいるのは羞恥心をこじらせた淫女だ。
 あまりの痴態に呆れながらも、分身は劣情を素直に反映してめきめきと成長している。このまま仕事をしろというのは拷問に近い。まして、隣にはこの淫魔がいる。
 欲望を爆発させることを選んだ辰巳は、沙織の手を取って股間に押しつけた。

「お前のせいでこんなに大きくなっちゃっただろ。どうしてくれるんだ?」

 スラックスの上から細い女の指が当たっただけで、辰巳のペニスはさらなる進化を遂げている。
 それをぎゅっと握りしめ、沙織は艶やかに笑った。

「ご主人様は次の授業なかったですよね……」
「ああ」
「じゃあ、沙織が責任を持って処理しますので、それで許してください……」

 何も言わずとも、沙織の手の中でタケノコのように育つ男根が、辰巳に代わって返事をしていた。
 沙織と共に職員室の手前にある階段から人通りのない三階へと上がると、誰もいない進路指導室のドアを開ける。
 教室に入るなり、沙織は一刻も待てないようにジャケットを脱ぎ捨て、官能的なシルエットを晒した。
 生肌に張りついた普段より一回り以上小さなブラウスは、乳房の膨らみだけでなく、腰のくびれまでくっきりと浮かび上がらせている。

「誰にも見られてないですよね?」
「ああ」

 辰巳が椅子に腰掛けると、沙織はすぐに膝の上に跨ってきた。肉感的な体にはそれ相応の重みがある。

「まあ、私は見られてもいいんですけどね」

 小さく笑った沙織が唇を重ねてくると、ふっくらとした感触にたちまち脳がとろけるような幸福感に包まれる。
 そのうえ、沙織は体を密着させて巨乳を押しつけてくるものだから、一度は鎮まっていた股間がたちまち膨張しはじめた。
 たまらず舌を挿し込むと、沙織は口を開いて受け入れた。

「んっ、ふぅ……む……!」

 廊下のやりとりで余程高まっていたのか、まだキスをはじめたばかりだというのに沙織は敏感な反応を示した。上の歯茎と歯の境目をなぞるだけで堪えきれないように身をよじり、舌の裏側の筋をこすってやると熱い呼気が溢れる。

「ふぅ……んっ、んんっ……!」

 太った舌を絡め、思いっきり吸引してお互いの唾液を味わう。沙織の唾液はねっとりとしていて、かすかに甘い味がする。痛みを感じるほど強く、二人は熱烈に吸い合った。
 隅々まで口内を犯してから顔を離すと、二人の口から絡まった唾液が糸を引いてブラウスの胸元に落ちた。
 純白の生地に水玉模様の染みができても、沙織はまるで赤ん坊のように涎を垂らしたまま、いかにも楽しそうに笑う。

「汚れちゃった……」
「あーあ、これから授業あるのにどうするんだよ」

 二人は再び唇を重ね、お互いの粘液を絡めるように舌を交わらせる。

「んんっ……む……」

 沙織のぶよぶよした舌が口蓋をなぞるたび、背中が微弱な電流を流されたようにぞくぞくする。
 さらなる快感を求めるように、辰巳の手はひとりでに張り詰めた乳肉を鷲掴みにしていた。

「んっ、ぐ……」

 辰巳の口内で、沙織の舌が生きのいい魚のようにびくんと跳ねる。
 肉房を揉む度に暴れる軟体は辰巳の口蓋を突き刺し、舌をねじり上げる。湿度の高い鼻息が吹きかかり、辰巳の体まで熱を持つようだ。
 たわわな実りを愛撫する手のひらには、細胞の一つ一つを刺激するような弾力が返ってくる。薄布一枚隔てていることすら我慢できなくなった辰巳は、ブラウスのボタンを外し、中へ手を挿し込んで、肉がはみ出るほど力強く握りしめる。

「んんっ、ぐっ……。いっ、痛い……!」

 嫌がる口ぶりとはあべこべに、沙織は気持ちよさそうに上体をくねらせる。
 丁寧に愛撫するよりも、無造作に、乱暴に揉んでやる方がマゾヒストはお好みらしい。
 遠慮なく乳首をつまみ上げると、沙織は学校であることさえ忘れたように甲高い嬌声を上げた。

「ふふ、こんなところ誰かに見られたら終わりですね。……あんっ!」
「わかってるのなら、もうちょっと声を落とせよ」

 辰巳が指の腹で赤々と膨らんだ乳頭をこすると、女はフーフーと野獣のように荒い鼻息を漏らす。

「そうそう、声を出したら見つかっちゃうぞ。そうなったら、多分クビだな」
「そ、そのときは……沙織が風俗で働いて養ってあげるので安心してください……」

 献身的な美女の言葉に、下腹部が熱棒を押し当てられたように疼く。
 あまりに魅力的な提案に、辰巳は本気で教師など辞めてしまってもよいと思ってしまう。
 衝動的に白い肉塊へしゃぶりつき、固く締まった桜色の実を吸い上げた。

「ご主人様、お、おっぱいすきですよね。あっ……!」

 夢中でむしゃぶりながら、個人の嗜好に収まる話ではないだろうと辰巳は思う。
 手のひらから溢れる沙織の乳房は絹のようにきめ細やかで、自在に変形する柔らかさと指に吸いつくような弾力を兼ね備えている。このふくよかな半球体の魅力に抗える牡など、いるはずがない。

「それじゃ、こういうのはどうですか」

 ただでさえ頭が茹で上がりそうなほど幸せなのに、沙織は辰巳の頭を抱えてぎゅっと巨乳を押しつけてきた。
 目の前が肌色で覆い尽くされて、官能をくすぐる柔らかな感触が顔中に広がる。
 サービス精神豊富な女教師が体を揺さぶるたび、少し汗ばんだ乳房が顔のパーツにへばりついてきた。
 男の性を刺激するメリハリの効いた体からは、昨晩の石鹸の匂いとはまったく異なる、かぐわしい薔薇の香りがする。呼吸も許さぬほどの密着と激しい興奮状態が相まって、窒息してしまいそう。

「あはっ……ご主人様、大きくなってる」

 体の間に手を差し込み、沙織はしなやかな指で勃起した肉棒を撫でこする。
 海綿体に大量の血液が流れ込んだ生殖器は、二重の生地を挟んだ愛撫を痺れるような快感に変換する。脳からは大量のアドレナリンが分泌され、辰巳の許容量をあっさりと超えてしまう。
 そんなご主人様の限界を優秀な奴隷は敏感に察知してみせる。

「お口でしましょうか?」
「ああ、頼む……」

 足元に跪いた沙織は、傘が大きく張り出した肉竿を取り出し、あんぐりと口を開けて飲み込んでいく。
 清楚な女教師がめいっぱい口を広げてグロテスクな肉棒を咥えていく姿は、あまりに非日定常的で、卑しくもあり、それだけでも自慰では決して生み出せない興奮を与えてくれる。

「はむ、んっ……んん、むぐっ」

 喉に当たるほど奥まで飲み込んだ沙織の顔が後ろへ引き、すぼめられた唇がカリ首を越えたところで、再び前へ突き出される。
 ずっと憧れていた美人教師のフェラチオは体の芯まで疼くようで、鈴口からはすぐに我慢汁が吐き出されてしまう。
 沙織は唾液と絡めたそれを睾丸の付け根から太った幹までなすりつけると、ローションの代りにして、唇と舌、手までも駆使して辰巳の性器を責めあげてくる。

「ちゅっ、んんっ、んぐ」

 ぷりんとした唇の端から垂れた白濁液があごを伝い、はだけられた胸元に落ちる。
 本来の目的地へたどり着くことのできなくなった精子は、摩擦のないさらさらとした肌を伝い、深い谷間に吸い込まれた。
 熟練の風俗嬢には到底及ばないテクニックを補って余りある官能的な光景。体中に快感が押し寄せて、太腿が意思を持ったように震えはじめる。

「んぐっ、んむむ、んん、ふぅん……!」

 辰巳の昂ぶりを察した沙織は、ますますペニスに加える力を強めていき、精液を搾り取ろうとする。
 肉感的な唇がカリ首をこすり、なめらかに動く五指が陰茎を締め上げる。さらには強烈な吸引も加わって、肉棒の付け根で何かが爆発するよう感覚が全身を襲う。
 同時に性の塊が鈴口から放出された。

「ふっ、んんっ……!」

 口内に出された大量の粘液を沙織は喉を鳴らして飲み込んだ。
 射精したあとも二、三度と震える肉棒の先端に吸いついて、根本から指で絞り上げる。
 沙織は肉棒をしゃぶり尽くすだけでは飽き足らず、睾丸に絡みついた精液まで一滴残らずに舐め取った。

「はあ……。おいしかった」

 惚けたように開けた沙織の口内は、粘り気に満ちている。口の周りを白濁液で濡らしたその表情は、とても未成年を教育する者ではない。
 射精したばかりなのに、たまらなく唆られる。
 このまま体を交えたいくらいだが、校内ではさすがに自重するしかない。
 名残惜しいが、そろそろ戻らなければいつまで経っても帰ってこない二人を怪しむ者も出てくるだろう。

「続きは家だな」
「はい……あの、ご主人様」

 辰巳を呼び止めると、沙織はスラックスが汚れるのもかまわず床に腰を降ろした。
 何を思ったかM字に開脚した変態教師はジッパーを開き、愛液でどろどろに濡れた性器を露出させる。

「いまからオナニーをするので、見ていきませんか?」

 興奮を抑えきれない沙織の潤んだ瞳。
 それにあてられたように、辰巳の体も熱を持っていく。
 結局、二人は揃って次の授業に遅れてしまった。
 

 
 夕食を終えた辰巳がベランダで一服していると、インターホンが鳴った。

「ご主人様、沙織です。遅くなりました」

 学校から直接来たらしく、モニターに映る沙織はスーツのままだ。辰巳が帰宅してから一時間以上経っているが、これまで仕事をこなしていたらしい。
 部屋に招き入れるなり、沙織は辰巳が投げて渡したクッションを無視して服を脱ぎはじめる。

「来ていきなりか」
「だって、今日一日我慢してたんですよ」

 校舎で体を交えてからも、あえて沙織にかけた催眠は解いていない。意外なことに錯乱しても良識は残っていたようで、学校ではせいぜいブラウス越しに乳を揉んでいたくらいのものだった。
 しかし、二人きりになると沙織の欲望を抑えるものは何もない。
 足で払ってスラックスを脱ぎ捨てた沙織は一糸まとわぬ姿になり、男を刺激する曲線で満ちた魅力的な裸体をあらわにする。
 口ほどにもなく、辰巳はたちまち牡の部分を引きずり出されてしまう。
 沙織をベッドへ誘い、二人で安物のマットレスに腰掛ける。
 肩を抱き寄せると、沙織は煙草の匂いがしたのか一瞬眉を歪めたが、すぐにうっとりした表情に切り替わった。
 煙草の匂い、べとついた汗、これまで嫌悪していたものほどマゾになった沙織を欲情させる。それならば、大嫌いな後輩教師に虐められることはさぞ快感だろう。
 胴に腕を回し、ひしと抱きついてきた沙織は一刻も我慢出来ないというように、豊満なバストを胸板に押し当ててくる。
 辰巳の顔を見上げ、沙織は静かに目を閉じた。
 いまにも口づけをしようとするその間際、辰巳は沙織の胸元で乾いた精液の跡に気がついた。
 途端に気持ちが萎えて、栗のような匂いが鼻をつく。
 おそらく、精液を塗りたくった体を拭いていないのだろう。自ら唇を重ねようとする沙織を、辰巳は力づくで引き剥がした。

「シャワーを浴びよう。……臭いぞ」
「ふふっ……。授業中もご主人様の匂いがして、ずっとムラムラしてたんですよ……。じゃあ、一緒に入りましょうね」

 胸を持ち上げて匂いを嗅いだ沙織は、恍惚としたように舌で舐める。自分でかけた暗示とはいえ、恐ろしいまでの性的倒錯ぶりだ。
 辰巳も服を脱いでバスルームへ入り、二人して小さな浴槽に腰掛ける。胴が触れ合うほど体を密着させてきた沙織は、辰巳のあごに冷たい手を添えた。

「じゃあ、まずは歯を磨かせてください……」

 手を下方にやって辰巳の口を開くと、沙織は鼻先を近づけてきた。小さな鼻の穴を膨らませて辰巳の口臭を嗅ぎ取っては、頬をとろけさせる。
 存分に焼き魚の匂いを堪能した女教師は、歯の隙間に舌を伸ばした。歯茎から歯の裏側まで、たっぷりと唾液を蓄えた舌を這わせては、食べ残しをほじくって自分の口へ運ぶ。ざらざらした舌で口内をまさぐられると、体中がくすぐったくなるように痺れた。
 夢中になって歯を掃除する沙織の荒っぽい鼻息が、口元に吹きかかる。至近距離から見るまつ毛は驚くほど長く、ニキビ跡一つない肌は洗いたてのキャンバスのように白く滑らかだった。
 一通り食べかすを処理した沙織は、舌先をこすりつけて歯を磨いてくれた。舌を絡め、舌苔を取ることも忘れない。

「次は足を掃除しますね……」

 浴室の床にお尻をつけた沙織が辰巳の右足をとった。深い谷間にかかとを乗せて親指を咥えると、老廃物のたまったそれを美味しそうに舐めしゃぶる。生暖かい舌が指の隙間を撫でるたび、下腹部がぞくぞくする快感が生まれる。
 誰もが羨む美人教師がいま、精一杯辰巳に奉仕してくれている。これまで付き合ったことのある恋人だって、ここまで尽くしてくれたことはない。
 足の掃除をしながらも沙織は体を後ろへ倒し、性器が見えるよう股を開いている。ぼってりとした肉唇はすでに受け入れ体勢が整っていて、溢れる粘液で恥毛がねばついていた。
 沙織が口を離すと、涎で濡れた指先にひんやりとした外気が伝わってくる。
 右足の指を全て舐め終えた沙織は、瞳に熱をたたえて辰巳を見上げてきた。

「ご主人様、気持ちいいですか?」
「ああ。気持ちいいよ」

 辰巳の言葉に沙織はだらしないほど顔をほころばせると、もっと褒めてと言わんばかりに左足の掃除もはじめる。
 新人教師と先輩指導員の関係は、すっかりご主人様と奴隷に成り代わっていた。目線だけで辰巳を震え上がらせた美人教師が、いまや言うがまま。
 舌をれろれろと動かしながら、沙織は辰巳の股間を凝視している。様々な角度に顔を傾けて足を舐めながらも、肉棒への視線は決して外さない。口よりも雄弁に語る目が、いますぐむしゃぶりつきたいと訴えている。

「いいよ沙織。ちんこを頼む」
「はいっ、喜んで!」

 生徒からクールビューティともてはやされる沙織が、こんなにも素敵な笑顔を見せてくれるなんて。他の教師が知れば嫉妬で殺されるかもしれない。
 嬉々として肉棒を咥えた女教師は、ねっとりと涎を絡めた舌を駆使して、亀頭に張りついた恥垢を取り除く。カリ首にこびりついた汚れも舌先で削ぎ落としたあとは、弾力ある唇を水切りのようにして全てを洗い流してくれた。
 大量の排水をごくりと飲み込んだ沙織は、肉棒を咥えたまま、もごもごと口を動かして、何事かを呻いている。

「お、おひっほ。おひっほ、ほはへへふははい」

 どうやら、性倒錯者は飲尿プレイをご所望らしい。
 ちょうど膀胱に張りを感じていた辰巳が放尿すると、沙織は一瞬びくりと体を震わせたものの、すぐに喉を動かしはじめた。恍惚と目を閉じて辰巳の小水を口にする沙織は、上等なワインでも堪能しているかのごとく頬を上気させている。
 喜んで黄金水を飲用する沙織を見ていたら、ふつふつと嗜虐心が湧いてきた。
 下腹部に力を込めて勢いよく放出すれば、沙織はすぐ飲みきれなくなって口から尿を溢れさせた。

「んっ、くっ、ふう、んん……!」

 身悶えしながらも、沙織は胸元に降りかかる尿を自分の体に塗りたくっている。乳首や股座にまで尿をこすりつけたかと思えば、一、二度と体が大きく引きつって、いきなり口からペニスを引き抜いた。
 拘束を失った肉棒は天へと跳ね上がり、撒き散らされた尿が沙織の顔面に吹きかかる。

「うわ、何だよ」
「おしっこ、おしっこかけてくださいっ!」

 飲尿プレイに理性のたがが外れたのか、沙織は犬のようにごろんと仰向けになった。剥き出しになった股間は、大量の愛液に辰巳の尿まで絡まってもうびしょびしょ。
 強固なマゾヒズムと汚物愛好症を植え付けられた沙織の痴態は、どんどんエスカレートしてゆき、辰巳の嗜好が追いつかない領域に入りつつある。それでも、期待に満ちた先輩教師の目を裏切ることはできなかった。
 辰巳が残った尿をかけてやると、沙織は全身をびくびくと痙攣させながら、それを受け止めた。
 体を洗うという当初の目的は、すっかり忘れ去られている。放尿が終わっても、沙織は床をごろごろと転がって、全身におしっこをなすりつけていた。
 ここまで来ると幻滅もいいところだ。なのに、どうしてこうも昂ぶるのだろう。
 体を床に伏せたまま、沙織は常軌を逸した目で辰巳を見上げてくる。

「お尻。お尻も、舐めさせてください」
「ああ……」

 迫力に押された辰巳がシャワーを手に取ると、沙織は指が食い込むほど力強く手首を掴んできた。

「何を洗おうとしてるんですか……!」

 血走った目で睨みつけてくる沙織に、辰巳は黙って頷くことしかできない。
 もはや、どちらが主人でどちらが奴隷なのかわからない。本当に奉仕させられているのは、誰だろうか。
 四つん這いになってお尻を差し出した辰巳の割れ目に生暖かなものが触れ、次の瞬間にはざらりとした軟体が肛門を撫でる。かすかな不快感と、背筋がこそばゆくなるような快感。
 硬く尖らせてきた舌先が尻穴に侵入するたび、太腿が電流を流されたように震えた。

「はあっ、ん、んぐっ、ああ、ふう」

 せわしなく舌を動かす口から、淫らなあえぎ声が聞こえてくる。
 舐められている辰巳よりも、舐めている沙織の方が興奮しているようで、肛門だけでは物足りなくなったのか、冷やりとした指先で睾丸を握ってきた。
 細く長い指で二つの球体を転がしながら、ときおり痛くない程度の力を込める。性の塊を直接刺激された辰巳の肉棒は根本から脈打ち、それに反応した沙織は舌と指を触手のようにぐねぐねと動かしてきた。

「んんっ、ふう、ふっ……!」

 太腿の間に腕を挿し込んで、沙織は剛棒のようになった竿をしごいてくる。節くれだった辰巳の指とは違う、女らしいきめ細やかなそれは、オナニーとは全く別種の快感を植え付けてきた。
 沙織は溢れ出す我慢汁を鈴口から睾丸までくまなくなすりつけ、滑らかになった表皮を撫でさする。性感帯をくまなく刺激された辰巳の肉棒は、射精寸前まで追い込まれていた。

「あー、やばい。入れさせてくれ」
「はいっ、私も、早く欲しいです……!」

 お互いの向きを入れ替えて、今度は辰巳がバックに回る。
 入口に先端を押し当てて、ゆっくりと突き刺していくと、暖かくて柔らかい肉穴は相変わらず肉棒を容易に受け入れることなく、熱いヒダを絡みつけてきた。

「んっ……あぅ……ふっ……!」

 苦痛の声を上げる沙織にかまわず肉路の奥へ奥へと突き進み、子宮口に触れたところで止める。
 強烈な締めつけも、入れてさえしまえば竿に馴染むようだ。
 お互いの呼吸が整うまで待ってから辰巳が抽送を開始すると、すぐに沙織もお尻を突き出してきて、二人の性器に強烈な摩擦が加えられる。

「ああっ、ん、はああ……! あっ、んっ……お、おっぱいも、おっぱいも揉んでくださいっ!」

 摩擦運動だけでは物足りないのか、胸乳への愛撫も求めてきた沙織の要求通りに、両の膨らみを鷲掴みにして、体から湧き出すリビドーをぶつけるように力強く揉みしだく。つきたての餅のような感触は、震えてしまいそうなほど気持ちがいい。
 胸を揉み潰されるたび沙織は大きな嬌声を上げる。艶めかしい声に性欲を刺激された辰巳は、制御を忘れたようにピストン運動を加速させていく。

「あっ、あっ、ああ……ああっ!」

 奥まで深く抉るたびに強烈な締めつけが襲ってきて、目が回りそうだ。沙織が身をよじるたびに肉茎も右へ左へねじられて、尿道を突き刺すような快感が走る。

「はっ、あっ、あああ……!」

 沙織の太腿が引きつりだしたかと思うと、続けざまに上体を持ち上げていた肘が折れた。
 絶頂へと向かいはじめた沙織に応ずるように、辰巳も豊かな乳房を握り潰していた両手を腰に滑らせ、抽送に全神経を注ぐ。

「あああ! わあっ! ああ! うわあ! ああああっ!」

 一つ度合いを上げた摩擦運動に、沙織は正気を失ったようによがりだした。亀頭が膣をえぐるたびに愛液が溢れだし、収縮運動を繰り返す膣ヒダはまるで生き物のようにカリ首に吸着してきて、腰を後ろへ引くたびに爆発してしまいそうなほどの快感を植え付けてくる。
 こみかみから垂れた汗があごを伝い、大きく盛り上がった臀部に落ちた。それを皮切りにしたように、沙織の青白い下半身が痙攣を起こす。

「ああっ、やああ、いいっ、いいっ! い、いく、いっちゃう!」
「お、俺も、出すぞ!」

 辰巳は残る力を全て振り絞り、前後運動を加速させる。膣壁に亀頭を押しつけるようにしながら引くと、沙織は馬鹿になったように叫びだした。

「ああああ! うわああ! あ、あああ! やあああ! あああああああ!」

 体の奥底から快感が湧き出して、辰巳は思考ができなくなる。
 絶頂の間際、恥骨の裏側を突き上げると沙織は天に向かって咆哮を上げた。
 同時に射精した辰巳は、収縮運動を繰り返す膣にむしり取られるように、最後の一滴まで放出する。
 そのまま、優に一分は放心していただろうか。
 重たい体をなんとか動かして、二人でシャワーを浴びた。
 辰巳はまだ髪を乾かしている沙織を置いて脱衣所を出ると、下着だけ履いたままベッドに倒れるように寝転んだ。
 奉仕されたはずなのにやたら疲れていて、射精した後の心地よい倦怠感でそのまま眠ってしまいそう。
 あるいは本当に眠ってしまっていたのかもしれない。ふかふかとした布団に辰巳が身を沈めていると、足音が聞こえてきた。
 ベッドのそばで足を止めた沙織は、ためらいなく辰巳に覆いかぶさってきた。しかも、この柔らかな塊が押しつぶされる感触は、裸のままだ。

「ご主人様、まだいけますよね?」

 いまだ性欲に満ち溢れている沙織と違い、辰巳はシャワーで体が温まったせいでひどい眠気に襲われている。
 頭を振って拒絶の意思を示すと、性獣は肩を揺さぶってきた。

「そんなこと言わないで、ほら」

 沙織はボクサーパンツをずり降ろし、すっかり縮こまってしまっている性器を咥えると、ちゅぱちゅぱと品のない音を立ててしゃぶりついてきた。
 キスをしたり、裏筋を舐めあげたりと、沙織の愛撫に身を任せていると徐々に心地よい快感が湧いてきて、自然とペニスも膨らんでいく。
 愚かにもまぶたを開いた辰巳は、沙織と目があってしまった。
 性欲の権化は半勃ちになった肉棒に手を添えて、勝ち誇ったように笑みを浮かべる。

「ほら、体は正直ですよ」

 ピアノでも引くように、沙織は五指を優雅に動かして肉茎を根本からしごきあげてくる。
 女の手淫によっていよいよ眠気を快感が上回り、ペニスが剛棒のように固くなっていく。

「ねえ、しましょうよ」

 たしかに体は疼いているが、先ほどから沙織が主導しているようで辰巳は面白くない。これでは先輩と後輩の関係に逆戻りだ。
 辰巳は上体を起こし、奴隷の瞳を覗き込む。

「沙織、俺の目を見るんだ。俺の目の中に渦が見える……。その渦にお前の魂は吸い込まれていく……」
「あっ……」
「魂を吸い込まれたお前の中身は空っぽになる……。何も感じない、何も聞こえない……。だけど、俺の言葉だけは聞こえる。俺の言葉がお前の中身を満たしていく……。だから、お前はなんでも俺の言う通りになる……。」

 すぐに催眠状態へ戻った沙織のまぶたが、とろんと垂れ下がった。顔中の筋肉から力が抜けて、口がだらりと開く。

「お前はヤギになる。さあ、私はヤギですと口にするんだ」
「……私はヤギです……」
「そうだ。お前はヤギだ。もう人間の言葉を喋ることはできないぞ。ヤギならなんて鳴くんだ?」
「……め、めえええ、めえええ」
「お前はいま、広い牧場を散歩しているんだ。さあ、四本の足を使って好きなところへ歩いて行こう」

 体を抱きかかえて床に降ろすと、沙織は喉を潰したような声をだしながら、四つん這いで歩きはじめた。

「メエエエエエ、メエエエエエエ」

 ヤギになった沙織が両手両足を動かして前に進むたび、豊かな胸がたぷたぷと揺れた。
 沙織はときどき足を止めては、遠い目をしてメエメエと鳴き声を上げる。床に落ちていたチラシに気がつくと、口に咥えてバリバリと咀嚼していった。

「ほら沙織、こっちにおいで」

 ヤギになっても辰巳のことをご主人様だと認識しているらしく、声をかけると沙織はすぐそばまで寄ってきた。
 可愛い家畜は、あごを撫でてやると目を閉じて気持ちよさそうに鳴いてみせる。
 あのクールな美人教師が、すっかりヤギになりきってしまっている。知性が抜け落ちて野生動物まで退行しても、体はたまらなく魅力的なまま。普段の理知的な姿とのギャップも相まって、どうしようもないほど辰巳の欲情を唆る。
 重力に従いロケットのように下へ突き出したバストを持ち上げると、たっぷりとした質量が手のひらに伝わってきた。

「こんなにおっぱいを大きくして。ほら、早く乳を搾らないと」
「メエエ。エエエ」

 辰巳は沙織の豊満な乳房に手を添えて根本から先端へと握っていった。小学校の遠足以来十余年ぶりの乳搾りだが、ヤギの細い乳頭と違い沙織の乳はふくよかで、搾るのが難しい。その代り、柔らかな脂肪の塊ならではの極上の揉み心地を備えている。
 もちろん乳など一滴も出るはずがないが、ヤギになった沙織はおとなしくおっぱいを揉まれている。これなら人間のときの方がよほど騒がしかったほどだ。
 沙織には、もっともっと乱れて欲しい。

「サオリちゃん、お前は乳を揉まれていると、なんだかとってもエッチな気持ちになってきた。体中が疼いてしかたない。ほら、もっと触って欲しい。ご主人様に触られていると、とってもいい気持ちになるぞ」
「メエエ、ンメエエエェ」

 辰巳が暗示を与えた途端、沙織の鳴き声に淫らな揺れが混じった。
 真白い膨らみに辰巳のごつごつした指が食い込むたび、沙織の太ももがぴくぴくと揺れる。繰り返し根本から先端へと指で押していくにつれ、乳首がどんどん膨らんできたので、そこを集中的にいじってやれば、沙織はたゆんたゆんとおっぱいを揺らして身をよじった。

「メエエエエェェ、ベエエェェエェ」

 シャワーを浴びたばかりの裸身からは滝のような汗が吹き出して、口はだらしなく開かれたまま。白い肌は見る見る朱に染まってゆき、耳まで真っ赤になっている。
 乳房だけではなく背中やお腹、お尻の隙間までくまなく全身をまさぐってやると、沙織は理性を失った獣のように涎を垂らして喘ぎだした。
 特に股間の周辺に触れてやると敏感な反応を見せたので、あそこの穴に指を挿し込んで中を掻きむしれば、発情期の獣はその場でばたばたと足踏みをした。

「ベエエエエエ、メエエエェ、エエエエエエェェ!」

 足をじたばたと動かすたびに、愛液が滲み出した股間から、にちゃにちゃと卑猥な音がする。
 どうせならこのままイかせてやろうと、勃起したクリトリスを摘めば、沙織は暴れ馬のように上体を大きく持ち上げた。体を起こしたその勢いのまま身をよじった牝ヤギは、辰巳にお尻を向けて頭を伏せる。
 すっかり発情しきったヤギは首を捻り、しっとりと濡れた瞳でご主人様を見つめてきた。
 小刻みに震える下半身の付け根はとろとろした蜜液にまみれていて、剥き出しになった女陰がひくひくと蠢いている。
 家畜と言葉を交わすことはできずとも、何を求められているかは明らかだ。
 辰巳は本能のままに下着を脱ぎ捨て、沙織の腰を抱きしめると、野生動物らしくバックの体勢で勢いよく先端を突き刺した。

「メエエエエエエェ! ベエエエ! エエエエェェア!」

 異物が中に入るなり身をよじって暴れだした沙織を力づくで抑え、奥までしっかり挿し込むと、辰巳はのっけから全力の抽送を開始した。
 手加減なしのストロークに沙織は頭を振ってよがり、大きな鳴き声をあげて逃げようとする。しかし、もがけばもがくほど肉棒は膣をえぐり、牝となった沙織の性を刺激する。

「アアアア! エエエア! ンメエエェェ!」

 ついに痛みを快楽が上回ったのか、牡の動きに合わせ牝も腰を振りはじめた。先ほどと比べればずいぶんぎこちないが、人間であったとき以上に、もっともっと気持ちよくなりたいという貪欲な意思の力を感じる。
 人間の尊厳を捨てるような動物との性行為だが、脳裏によぎる背徳感がますます辰巳を昂ぶらせる。

「メエ、エエ、ええ、あ、ああ、あああ……!」

 快感に押し流された沙織は、もはや満足に鳴き声をあげることすらできない。
 ほとんど半狂乱状態になった沙織の全身は震えを起こし、口からだらりと舌が垂れた。
 沙織と同様に辰巳の身体も限界まで高まっていて、脳からドーパミンが溢れ出している。馬鹿になってしまいそうなほどの幸福感が湧いてきて、放出間際のようにペニスの付け根がぎゅっと絞られる感覚が襲いかかってきた。

「あっ、があっ……!」

 獣のような唸り声とともに、沙織の体が大きな引きつけを起こした。がくがくと上体が崩れ、額を床に打ちつける。
 あまりの快感に耐えかねたのか、雌ヤギは失神してしまったらしい。それでも膣は激しい痙攣を続け、まだまだ刺激を求めようとする。
 これまでにないほどの強烈な締めつけのなか、辰巳は熱く粘っこい液体を沙織の中に放出した。
 開放感に満ちた射精の最中、ほんのわずかな罪悪感が脳裏をよぎる。
 これはある意味では獣姦なのだろうか。
 冷静になるとひどく後悔の念が押し寄せてくる。しかし、普通のセックスでは決して味わえないような快感を堪能したのは事実だ。
 肉棒が引き抜かれても尚、沙織は大きくお尻を持ち上げた格好のまま気を失っている。
 この瞬間、辰巳は先輩教師へのあこがれがすっかり失われてしまったことを覚った。
 やはり、自分にふさわしいのは夏帆しかいない。
 ベットに運んでやっても、白目を向いたまま気絶している美女は、絶頂の余韻にまだ裸身を震わせている。

(沙織はもう俺のものだ)

 大嫌いだと言われた屈辱は消え失せて、いまの辰巳は満ち足りた気分に包まれている。
 だが、もう一人恨みを晴らしたい相手が残っている。

 次は雫、お前だ。

< 続く >

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