憧れの教師 第六話

第六話

「新海先生、なんて格好してるんですか!」

 辰巳がパソコンを起動して授業の準備をしていると、朝の気だるさに満ちた職員室に野太い叫び声が響き渡った。
 黙々と仕事を進めていた手を止め、声の方向に目を向けた他の教師から続けざまに短い悲鳴があがる。
 視線の先、入口の前に立っている沙織は体操服を身につけていた。それも、下はいまどき珍しいブルマだ。どこで買ってきたのかはわからないが、おそらく小学生用のものなのだろう。サイズがまったく合っていないため、体にみっちりと食い込んで肉感的なボディラインがあらわになっている。
 例によって下着はつけていないらしく、出勤したばかりだというのに、コットンの生地が張り詰めた胸部には乳首が浮き上がっている。
 ざわめく周囲をよそに、室内の視線を独り占めした沙織はまるでブロードウェイを歩くかのように得意気だ。ぴんと胸を張って自分の席まで行くと、映画のワンシーンと見紛うごとく優雅に椅子へ座る。
 目を疑うような光景にみなが硬直しているなか、ただ一人、学年主任の友永だけが沙織の元へ駆け寄って行く。

「新海先生、どういうつもりですか! それが社会人にふさわしい服装ですか!」

 そばで聞いている辰巳が怯むような怒声を発した友永は、ジャケットを脱いで沙織の前に突き出した。

「ひとまず、これを着てください」
「ほっといてください! 私はこの格好がいいんです!」

 差し出された手を乱暴に払い除けると、沙織は椅子が倒れるほどの勢いで友永に詰め寄り、胸ぐらをつかんだ。

「なんでジャージはいいのに体操服はだめなんですか! 社会人にふさわしい服装って何なんですか! 定義を説明してください、定義を!」

 おそらく、沙織が学校でこれだけ感情的な姿を見せるのは初めてのはずだ。
 つばを飛ばして怒鳴る美人教師の剣幕に、教師歴二十年を超える友永でさえ面食らっている。

「新海先生、落ち着いてください」
「私は落ち着いています! ずっと落ち着いていますよ!」

 沙織は癇癪を起こしたように、自分の机を力いっぱい平手で叩きはじめた。鈍い音が室内に響き、ラックに並べられていたファイルが倒れて机台の上に落ちる。

「みなさんも何か言ってくださいよ!」

 助けを求めるように目を向けられても、誰一人として沙織に声をかけることができない。
 すっかり言葉を失ってしまっている同僚たちに、沙織は地団駄を踏んだ。

「なんですか、みんな。私をそんな目で見て。そんなのおかしいじゃないですか! うっ、うう。うううう……!」

 喋っている途中で沙織の目から大粒の涙がこぼれた。そのまま床にうずくまり、おいおいと泣き声を上げる。

「おかしいじゃないですかあ、私がどうして悪いんですかあ。私はそんなにだめな教師ですかあ……!」
「ちょっと、落ち着いてください。その、新海先生がよくがんばっておられるのは知っています、だから」
「ですよねえ!」

 勢いよく頭を上げた沙織は顔を涙で濡らしたまま、幼児のように相好を崩した。

「よかったあ。もう、友永先生が酷いことばかり言うから、傷ついたじゃないですか。ほんとに友永先生ったら質の悪い冗談を。ふふっ、ほんと、面白い。あははっ、ふっ、はははっ、ふっふっふっふっふ!」

 ついさっきまで号泣していた沙織が、今度は豪快に笑いはじめる。何がそんなにおかしいのか、腹を抱えて笑い転げている沙織は、せっかくの端正な顔立ちが涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。
 あまりの変貌ぶりに友永ですら声をかけることができないようで、ホームルームの開始を告げる鐘が鳴っても教室に向かう人間は誰もいなかった。
 それでもチャイムが鳴り終わり、最初に動き出したのは友永だった。

「……ひとまず、みなさんはホームルームへ行ってください。辰巳先生は、申し訳ないですが一人でお願いします」

 辰巳には頷く他はない。いまの沙織と一緒など頼まれても嫌だ。
 それにしても、沙織のあの格好。朝からとんでもないものを見せてくれたおかげで、あそこがひどく疼いている。多分、他の男性教師たち同じだろう。
 勃起が収まるまで待ってから、辰巳は教室のドアを開けた。

「あれ、辰巳先生一人?」

 教室に入るなり、最前列の男子生徒が声をかけてきた。沙織のファンを公言している、軽薄な子供だ。

「ああ。新海先生はちょっと用事があるそうだから、遅れて来られる。しばらくは俺一人だから、何かあったら俺に連絡してくれ」

 出欠簿を読み上げながら、辰巳は生徒たちを前にしても自分が落ち着き払っていることに気がついた。沙織と雫を手中にした影響で心理的な余裕が生まれている。どうしてこんなに青臭い子供たちを前にして緊張していたのか、もはやわからないくらいだ。
 あの雫だって、いまや思うがまま。

「近本雫さん。……近本、どうした?」

 名前を呼ばれた少女は、辰巳を凝視したまま体を小刻みに震わせている。
 尋常ならざる様子にクラスメイトが気づきはじめた頃、雫はすっくと立ち上がり、びしっと音が聞こえそうなほど鋭く辰巳を指さした。

「ついに正体を表したな! 悪徳怪人タツミール!」

 耳を疑うような雫の発言に、クラスが静まり返る。生徒たちと対峙している辰巳からは、頭の上に浮かんでいるはてなマークまで見えるようだ。

「は? どうした?」
「とぼけても無駄だ! 私は公安秘密警察の命に従い、この二ヶ月の間ずっとお前のことを観察していた。お前は上手く隠していたつもりのようだが、お前が悪徳怪人であることなどこちらはとうに把握していたのだ。いいか、私がいる限りこの地球の子供たちには指一本触れさせないぞ!」
 気迫のこもった台詞に、教室のどこかで吹き出す音が聞こえた。それを皮切りにしたように、一人、二人とあちこちで笑いが巻き起こる。
 雫は体を辰巳に向けたまま、やにわにざわつきはじめたクラスメイトに視線をやった。

「みんな、いままで嘘をついていてごめんなさい。本当の私は近本雫ではなく、ブラウン・サラというの。短い間だったけど、みんなとの高校生活楽しかった」

 クラスメイトの爆笑にも、雫はいたって真剣な顔のまま。自分でかけた暗示にも関わらず、聞いている辰巳の方が恥ずかしくなってしまう。
 雫には前もって辰巳に名前を呼ばれたら、自分が正義のヒーローであると思いこむように暗示を与えていた。生意気な少女は正義感に満ち溢れたヒロインとなり、怪人からクラスメイトを必死に守ろうとしている。

「なんだ、何を言ってるんだ近本」
「近本ではない! 私はブラウン・サラ。正義戦隊ジャスティスファイブの一人、ジャスティス・ピンクだ! いくぞ、変身!」

 腕を交差させ、雫はブラウスのボタンを弾き飛ばして前を開いた。

「きゃああ! 近本さん、何やってんの!」

 女生徒の悲鳴もよそに、雫は乱暴に服を脱いでいく。高校を代表する美少女のストリップに、教室は大盛り上がりだ。
 ブラジャーとパンツも脱ぎ捨てて、雫は艶めかしい裸身をクラスメイトに晒した。

「やああああああっ!」

 生まれたままの姿になった雫は、迫力ある掛け声と共に辰巳へ突進してきた。
 避けるべきか受けるべきか。支えを失いぶるんぶるんと激しく暴れるバストに目を奪われた辰巳は、結局どちらの対応もとることができず無抵抗に押し倒されてしまう。

「くらえ、おっぱいアタック!」

 辰巳に跨った雫はたわわに実った乳肉を顔面へ押しつけてきた。柔らかい肉房は潰れて広がり、辰巳の視界を覆ってしまう。
 すっかり正気を失っている少女は、体重をかけ、乳房をぐりぐりと回して顔を圧迫してくる。この幸せな感触に、辰巳は生徒が見ているというのに勃起しそうになる。

「ちょっと、待ちなさい!」

 混乱する教室に拍車をかけるように、廊下から聞き覚えのある怒鳴り声が聞こえてくる。
 ばたばたと床を打ちつける音が響いたあと、誰かが教室に飛び込んできた。

「いやあああぁ! 新海先生!」
「なにぃ、まだ味方がいたのか。みんな、急いで逃げて!」

 雫が上体を起こしたことで、ようやく塞がっていた視界が開けた。見れば、体操服を着ていたはずの沙織が全裸になっている。
 悲鳴と嬌声がこだまするなか、沙織は教室の中央に立つと腕を広げてくるりと反転した。

「みんな、私の姿を見てください。歌います。Let it go ありのままに」

 大混乱の教室に、沙織の美声が響き渡る。
 少し遅れて友永たちも駆け込んできて、一年三組は阿鼻狂乱の様相を見せる。

(これで沙織と雫の評判は地に落ちる)

 全裸で暴れまわっていた二人は、一時間目のはじまりを告げるチャイムが鳴ると同時に、床へ崩れ落ちるように深い眠りへついた。
 同時に、教師陣も巻き込んだ大騒動はようやく終わりを迎えた。

「白石さん、近本さん、久しぶり。今日は来てくれてありがとう」

 せっかくの休日を使ってお見舞いに来てくれた二人の生徒に、沙織は控えめな笑みを見せた。
 教室で大騒ぎがあってから、二度目の週末のこと。辰巳は夏帆と雫を連れて、高校から車で一時間ほどのところにある沙織のマンションを訪れていた。
 必要最小限の物だけが置かれた簡素なリビングに三人を招き入れるなり、沙織はお茶を入れると言ってキッチンに向かった。
 死角に入り沙織が見えなくなると、辰巳の隣に座っていた夏帆が少しだけ顔を寄せてきた。

「新海先生、思ったより元気そうだね」
「ああ、そうだな」

 騒動を起こしたばかりのころは教師を辞めると嘆いていた沙織だが、辰巳のカウンセリングの甲斐もあり、最近は早く学校に復帰したいと洩らすようになった。
 あれだけ醜態を晒したあとだ。失った信頼を取り戻すのは容易ではないだろうが、沙織ならきっと乗り越えてくれるだろう。
 どうせなら、もっと遊び相手を増やしたいと考えている。そのためには、もう少しだけ先輩教師に付き合ってもらった方がいい。
 しばらく黙っていた雫が何か言おうと口を開きかけたが、その前に沙織がコーヒーを持って戻ってきた。

「お待たせしました」

 机の上にカップを置いた沙織は、一瞬だけ熱っぽい視線を辰巳に送ってきた。
 わざわざ仕事終わりに沙織の家を訪れているのは、ただカウンセリングをするためではない。毎日のように慰め、体を使って励ましながら、沙織には少しずつ熱い恋心を刷り込んでいる。
 沙織と雫を教室で大暴れさせたのは、これまでの屈辱を返すためだけではない。もう一つの目的は、二人から居場所を奪い辰巳に依存させることだ。
 いまのところ計画は順調に進んでいる。あのクールな美人教師に「帰らないで」とすがりつかれたときは、このまま死んでしまってもいいと思ったくらいだ。

(あとはお前だけだ)

 雫はコーヒーを一口だけ飲んでカップを置くと、ここしばらく学校を休んでいる担任教師をじっと見つめた。

「新海先生、なんであんなことしたんですか?」
「ちょっと、近本さん」

 すかさずたしなめた夏帆を、沙織は手で制した。

「いいの、白石さん。でも、本当に自分でもどうしてなのか覚えてなくて……。ただ、あのときはどうしてもそうしたかったの」

 自分でも思い当たる節があったのか、雫は「ふうん」とだけ言った。
 二人には大騒動の記憶をしっかりと残してある。何をしたのかは覚えていても、どうしてしたのかは思い出せないことでより深いトラウマになっているらしい。沙織だけでなく、雫もいまだに学校を休み続けていた。

「でも、近本さんと白石さんが来るって聞いたときは驚いたなあ。こう言ったらなんだけど、意外な組み合わせっていうか」
「そういえば、そうかも」
「まあ、辰巳先生に呼びだされただけだし」

 そう、夏帆はもちろん不登校の雫でさえ、辰巳の呼びかけ一つでここまでついて来てくれた。
 この三人を揃えるのは今日が初めてだ。
 今日という日をどれだけ楽しみにしていたことか。

「みんな、聞いてくれ。『カッコウの卵』」
「あっ……」
「ぅわ……」

 事前に埋め込んでおいたキーワード一つで、あっという間に三人は催眠状態に落ちた。
 誰もが憧れる美女と美少女がいま、辰巳の前で服従を示すかのごとく頭を垂れている。夢にまで見たこの光景。
 まずは、辰巳に屈辱を与えてくれた二人からだ。

「沙織、雫、よく聞いて。お前たちはいま、夏帆の催眠術にかかっている。催眠術にかかるとどうなるんだったか、思い出してくれ……。そう、お前たちは夏帆の操り人形なんだ。だから、夏帆の言う事ならどんなことでも従ってしまうし、なんでも言う通りになる」

 続けて夏帆だ。

「夏帆、お前には誰にも知られていない特技がある。それは催眠術だ。お前は超一流の催眠術師なんだ……。たったいま、お前は大好きな辰巳先生を虐めた沙織と雫をこらしめるため、二人に催眠術をかけたんだ。さあ、辰巳先生が見てるぞ。たっぷりと二人を虐めて、辰巳先生を喜ばせてあげよう」

 わざわざ夏帆を使わなくても、沙織と雫を虐めることは簡単だ。二人は辰巳が一つ命令を与えれば、公衆の前で裸踊りをするだろうし、汚物だって口にするだろう。
 だが、辰巳はこの愛らしい少女に尽くして欲しかった。思いやりにあふれる美少女が、辰巳のために担任と同級生に罰を与える。これほど愛を感じる瞬間があるだろうか。
 夏帆の肩を揺さぶって意識を覚醒させる。

「んっ……あ、辰巳先生」」
「どうしたんだ白石、見せたいものがあるって」
「え? あ、そうそう。先生、見て。あたし、催眠術が使えるんだよ」

 にっこりと笑みを浮かべると、夏帆は首を前に落としている二人に向き直った。

「近本さん、新海先生。あなたたちは、あたしが手を叩くととっても素敵なダンサーになります。はいっ!」

 簡潔極まりない暗示でも、これまで何度も催眠にかかっている二人はパブロフの犬のごとく条件反射で従ってしまう。勢いよく頭を上げた沙織と雫は、すぐに狭い部屋のなかで思い思いに体を動かしはじめた。
 同じダンサーという暗示を与えても、二人の動きはまったく違う。全身を滑らかに動かして艶かしくも腰をくねらせている雫に対し、沙織はつま先立ちのまま手足を大きく広げて優雅に回っている。方やガールズヒップホップ、方やバレエダンス。性格の違いがよくあらわれていた。
 二人の運動神経には驚かされるばかりで、どちらも頭が小さく手足が長いため見栄えがよいこともあるだろうが、目の前で繰り広げられるダンスは意外なほど様になっていた。
 初めて催眠術を目の当たりにする夏帆の驚きは、辰巳以上だ。自分でかけた暗示なのに、口をぽかんと開けたまま言葉を失っている。

「すごいな。お前にこんな特技があったとは」
「えっ? ああ、すごいでしょ。でも、もっとすごいことだってできるんだよ。ほら、二人とも、服を脱いで裸になって」

 二人は夏帆に命令されるとすぐに踊りをやめて、シャツに手をかけた。てきぱきと指を動かして、見る間に白い肌を露出させていく。

「おいおい、やりすぎじゃないのか?」
「いいんだよ、これくらい。だって、二人とも先生にあんなに酷いことしたんだよ? 先生が許しても、あたしは絶対に許さないから」

 少しでも夏帆の良心が傷まないようにと与えた暗示が、効きすぎているのかもしれない。あるいは、何度も二人に対する愚痴を聞いてもらっていたことも影響しているのか。温厚な夏帆がこれだけ怒りを剥き出しにしている姿を初めて見た。
 二人が全ての衣服を脱ぎ終わると、夏帆は顔を真っ赤にして裸体の観察をはじめた。おっぱいを揉まれたり、お尻を叩かれたり、股間を触られたりしても、二人は次の命令を待つように、棒立ちのまま頭をふらふらさせている。
 これほど見ごたえのあるマネキンは、世界中のどこを探してもないだろう。一日中眺めていることだってできそうだ。

「ほら、先生も触ってよ。二人ともすっごいエッチな体してる」
「バカ、お前がいるのに他の女を触るわけにはいかないだろ。気持ちだけでいいよ。ありがとな」
「へへ……」

 いまここで触れてしまえば、辰巳は理性を抑えられる自信がない。本音を隠した言葉にも、純真な夏帆は辰巳に愛されていると信じ込んで、甘えるように体をすり寄せてきた。
 辰巳の愛情に答えるためか、夏帆の暗示はますますヒートアップする。
 二人は体を揺らして合唱したり、プロレスラーになってお互いの魅力的な体を絡ませあったり、鳥になって部屋の中を羽ばたいて回ったりと、見事なまでに夏帆の操り人形となって動いた。

「わんっ、わんっ」
「きゃん、きゃん」
「かわいーっ! 見て、先生。すっごいかわいいよ」

 犬になった二人に夏帆は大はしゃぎだ。目の前でおすわりをした沙織の頭をよしよしと撫でては「かわいい、かわいい」と叫んでいる。
 頭を撫でられた沙織は沙織で、お尻をふりふりと振って喜んでいる。よっぽど気持ちよかったのか、夏帆の胸に飛びついて押し倒した。

「うわっ。もう、サオリちゃんったら。ねえ、先生。すごいねー」
「ああ、ほんとうにな」

 教え子の顔を舐め回している沙織は、知性も何もあったものではない。ペットそのものだ。
 一方、夏帆を取られた雫は辰巳のそばにやってきておすわりをした。辰巳の手をつついては、撫でてとばかりに頭をこすりつけてくる。
 あの生意気な少女とは思えないような愛らしさ。あごを撫でてやると、雫はうっとりとしたように目を閉じた。
 愛玩動物のごとく、ご主人様に身をまかせた無防備な顔は年相応にかわいらしく見える。あごを撫でる手を止めれば、雫はやめるなとばかりに前足でつついてきた。

「シズク、お手」

 差し出した手のひらに雫はちゃんと前足を乗せてきた。褒めて褒めてとばかりに輝いた目で見てくるものだから、頭を撫でてやったら雫は顔を擦り寄せてきた。薄く化粧が施された肌は間近で見ると陶器のようで、シミひとつ見当たらない。
 よっぽど楽しくなったのか、夏帆は二人にエサを与えると言い出した。

「ほら、二人とも、ご飯だよ~」

 夏帆が味噌汁の残りとご飯をかき混ぜたものを床にぶちまけると、二人は我先にと顔を突っ込んだ。
 他人を安易に寄せつけないような気品がある二人が、顔を埋めてエサを食べている姿はあまりにも哀れで、辰巳の中の背徳的なサディズムを刺激する。ときおり顔を上げてはぐちゃぐちゃと音を鳴らして咀嚼する二人の目は、完全にイッてしまっていて、理性のかけらも残っていない。
 犬になりきっている二人は一粒残らずエサを平らげると、床に残った汁まで卑しく舐めしゃぶった。

「うわー、すごい……。サオリちゃん、シズクちゃん、顔が汚れちゃったね。お互いの顔を舐めて、きれいにしてあげましょう」

 味噌汁で顔をべちゃべちゃにした二匹は、夏帆が命令するとお互いの顔を舐め合いはじめた。
 これだけでも辰巳は胸がすくようだが、夏帆の罰はまだ止まらない。

「ほら、二人とも。お腹がいっぱいになったら、トイレがしたくなってきたね。この場でおしっこしちゃいましょう」

 二人は四つん這いのまま片足をあげると、股間から透明な液体を放出した。
 勢いよく排出された尿がフローリングを飛び散り、整然としたリビングを汚していく。それでも、部屋の主はぽかんと口を開けたまぬけ面で放尿を続けるばかり。
 排尿を終えた二人は、きちんと後ろ脚で砂をかけるような動作もした。

「おしっこ終わった? じゃあ次はね~……。シズクちゃん、サオリちゃんのお股を舐めてきれいにしてあげましょう。そのあとは、サオリちゃんがシズクちゃんをきれいにしてあげるんだよ。ほら、サオリちゃん。ごろんってなって、お股見せて」

 言われた通り沙織がひっくり返ってお腹を見せると、雫はその股間に顔を埋めてぺろぺろと舐めはじめた。

「きゅん、くぅん」

 小水で汚れた肉唇に雫の舌が這うたび、沙織はくすぐったそうな、気持ちよさそうな鳴き声を上げる。
 本人たちの意識がどうであれ、傍から見れば裸の美少女が美女の股間を舐めている姿は性行為そのものであり、どうしようもないほどいやらしい。汗ばんだ二人の体からは官能的な香りが漂ってきて、むせ返りそうだ。
 そのうえ夏帆がもたれかかってきて、柔らかい女の感触が伝わってくるものだから、辰巳は否応なしに牡の部分がひっぱりだされてしまう。

「なんかエッチだね、先生……」

 いやらしい気持ちになっているのは辰巳だけではないようで、愛しい男を見上げる夏帆の瞳はしっとりと潤んでいた。
 自然と顔が近づき、口づけを交わす。何度も何度もキスをして、互いの口腔を愛し合う。唇を離すたびに涎が糸を引き、二人の服を濡らした。

「先生……。犬と猫、どっちが好き?」
「まあ、犬だな」
「あたしも……。ねえ先生、あたしが大学を出たら結婚しようね……。それで、小さくてもいいから庭がついた家を買って、犬を飼うの。あたし、ポメラニアンがいいなあ……」

 ささやかな幸せを夢想する夏帆は、たまらなく愛おしい。おでこにキスをしてやれば、夏帆はとろけたようにうっとりとする。

「きゃぃん、きぃん、くぅん、きゅ~ん!」

 そうして、いまにも性交へと移ろうとしていた二人のムードを、雫の鳴き声がぶち破った。
 夏帆と睦言を交わしている間に二匹の体勢は入れ替わっており、股座を舐めている沙織も、舐められている雫も、顔がすっかり発情しきっている。唾液と愛液が絡まりあった女陰は濡れ濡れになっていて、沙織が舌で舐めるたびに、びちゃびちゃと下品な音がした。

「うわー、二人とも顔すごいね。発情期かな?」
「まあ、どっちもメスだけどな」
「あはは、たしかに。じゃあ、二人にはそのままエッチしてもらおうか。サオリちゃん、シズクちゃん、よく聞いて。あなたたちは、心から愛しあっています。二人は相手のことが大好きだから、女同士でも関係ないんです。とってもエッチな気持ちになってきました。誰も見てませんよ。二人で気持ちいいことをしましょう」

 夏帆が声をかけた途端、二人の目がとろんとする。先ほどまでの性欲を剥き出しにした表情とはまた違う、言うなれば必死に抑えようとしているのに劣情がこぼれ出しているような、淫らでありながらもどこか憂いをたたえた顔になった。

「先生……」
「近本さん……」

 見つめ合う二人の距離が縮まってゆき、唇が重なる。
 もう二人の世界を邪魔する者は誰もいない。美しい教師と教え子は、互いの口内に差し込んだ舌を絡ませ、ちゅっちゅぱと音が聞こえるほど熱烈に唾液を吸い合っている。

「んんっ……!」
「んっ、ふぅ……!」

 熱い口づけを交わしながら、沙織と雫は体を絡めあう。蛇のように結びついた二人は、床をごろごろと転がり、体勢を入れ替えながら想い人の体を舐めあげている。
 教師と生徒、しかも同性。まさしく禁断の恋だが、そんなことはいまの二人の頭にはない。本能が求めるまま、互いの肉体を貪りあっている。
 そうやって二人がくんずほぐれつしている姿を堪能していたら、夏帆がしなだれかかってきた。

「ねえ先生。あたしの目を見て……」
「ん?」

 直感的に夏帆の意図を悟りながらも、辰巳は黒目がちな瞳をじっと見つめた。

「先生は二人を見ていたら、とってもエッチな気持ちになってきました……。だ、大好きな夏帆ちゃんを優しく抱いてあげましょう……」

 予想していたよりも、ずっと健気な暗示。
 素直にエッチして欲しいとは恥ずかしくて口にすることができなかったのか、いじらしいことに夏帆は催眠術を使って辰巳に抱いてもらおうとしている。いいように操られている二人を見て、すっかり自分は催眠術を使えると思い込んでいるらしい。
 たしかに、ある意味ではこれも催眠術と言えるのかもしれない。期待にきらきらと輝く夏帆の目を見たら、辰巳に拒絶することはできなかった。
 実のところ、夏帆に言われるまでもなく二人の痴態を目の当たりにした辰巳の体は燃えるように熱くなっている。

「お前は本当にかわいいなあ」
「っ……!」

 背中に腕を回し、かたく抱きしめてから唇を重ねると、それだけで夏帆はぐったりとした。
 同じセックスでも、夏帆と他の二人では意味合いが違う。沙織や雫とのセックスは性欲を満たすものであり、夏帆とのセックスは愛を確かめあうものだ。
 必然、辰巳の扱いは二人よりもずっと丁寧なものになる。ソファーに体を移し、夏帆の服を一枚一枚丁重に剥ぎ取って裸にしてあげた。
 沙織や雫と比べればまだまだ成長途中というところだが、夏帆の体は最近めきめきと女らしさが増してきている。大人になれば、二人に勝るとも劣らない官能的な肉体になるだろう。
 とはいえ、それはいまの夏帆に魅力がないということでは決してない。スポーツ少女らしい青々とした肢体は、沙織や雫の成熟した体とはまた別種の輝きを放っている。
 その美しい体の持ち主を、辰巳はいま組み伏せている。
 まだキスしか交わしていないというのに、夏帆の目は涙がこぼれ落ちそうなほど潤み、肌は赤々と火照っている。心臓の鼓動さえ聞こえてきそうだ。

「先生、あそこ、舐めてほしい……」

 おわんのような乳房の頂きにある、桜色の突起にしゃぶりつこうとしたまさにその時、蚊の鳴くような声が聞こえてきた。
 思い返してみれば、辰巳は夏帆の女陰を舐めてあげたことがない。あれほど愛を語りながら、辰巳は少女がクンニリングスを欲していたことにまったく気がついていなかった。
 いまの自分は催眠術にかかっているのだから、何でも聞いてあげなければならない。
 膝をつかんでM字に股を開いてみれば、紅褐色の大陰唇はすでにぷっくらと膨らんでおり、小陰唇は外に広がることで女の口を辰巳の前に晒していた。
 女陰はいまにも入れてくださいと言わんばかりだが、夏帆の要求に応えるため、辰巳は肉づきのよい太腿の付け根から下の唇にかけて舐め上げる。

「あっ……」

 舌腹をぐるりと這わせてぽってりとした大陰唇を濡らすと、辰巳はびらつきを唇ではさみこんだ。そのまま優しく吸い込んだり、あるいは内側を舌先でなぞったりと、優しく丁寧に愛撫する。あくまで陰核を舐めるための前座にもかかわらず、夏帆の口からはそれだけで切ないため息が洩れた。
 辰巳は膣が密液を垂らすまでたっぷりと虐めてから、フードごと肉芽を口に含む。

「ひっ……!」

 包皮をはさんでの刺激にも、夏帆は敏感に反応して総身を波打たせる。
 少しずつ刺激に慣らすように、皮の上からちょんちょんとつついたあとで、舌先を根本に食い込ませる。嬌声を上げる夏帆の様子を伺いながら、辰巳は舌を尖らせてフードをめくりあげた。

「んんっ!」

 剥き出しになったピンク色の肉芽に舌が触れると、夏帆はへの字に腰を反らして喘いだ。
 慎重に、触れるか触れないかくらいのタッチでも、少女はいやいやと裸身をくねらせる。
 あまりにも敏感な性感帯への刺激に肉筒はとろとろと愛液を吐き出すので、舌を絡めて舐め取れば、ほんのりとした苦味と生臭さが口の中に広がる。決して美味しいわけではない。けれど牡の性欲を盛りたてるそれを、辰巳は舌を挿し込んでがむしゃらに掻き出した。
 ざらざらした肉塊が粘膜をかき乱す感触に、夏帆は引きしまった体をソファーにのたうたせた。

「ああっ、はああ、せ、せんせい、いい、気持ち、いいよお……!」

 愛液で喉を潤した辰巳は、大きく育った肉芽にたっぷりと唾液を絡める。極力摩擦を減らした状態で表面を優しく撫でつけると、夏帆の太腿がびくびくと震えはじめた。
 少女が絶頂に近づいていることを見て取った辰巳は、人差し指を膣へ挿し込んだ。入口付近の浅い位置にある少しざらざらした部分を見つけ出し、指先をこすりつける。クリトリスに加え、膣まで攻撃された夏帆は頭を振ってよがり、愛液が洪水のような勢いで溢れ出した。

「あんっ、んん、あああ、はあっ、あっ!」

 終わりへ向け、辰巳は顔ごと動かすようにしてますます舌の動きを加速させる。破裂しそうなほど膨らんだ肉芽を突き、吸い、弾き、甘噛する。前歯を優しく擦りつけると、夏帆は両膝をおののかせた。

「あああ、あっ、あっ、待って、先生! い、いく、いっちゃうう!」

 唇で含んだ肉粒をきゅうっと吸い上げると、夏帆の全身が強張った。
 呼吸をとめ、目を固く閉じ、拳を握りしめた少女の体は、膣まで意思を持っているように辰巳の指をぎゅっと締めつけてくる。

「あ、あ……」

 ようやく息を吐き出した夏帆は、徐々に全身の硬直を解いてぐったりとなっていった。
 初めて経験するクンニリングスに、一人絶頂に達した夏帆は愛情のこもった瞳で辰巳を見上げてくる。

「はあ……ありがと、先生。気持ちよかったよ……」

 目尻を下げた、こちらまで幸せになるような笑顔。辰巳は二人にかかりきりで、夏帆を疎かにしていたことが急に後ろめたくなった。
 夏帆の暗示はまだ続く。

「先生、よく聞いて……。先生はこれからあたしのす、好きなところを百個言わなければいけません。あたしをいっぱい褒めて、喜ばせてあげましょう……」

 思わず吹き出してしまいそうになるほど、あまりに純真な暗示。夏帆と一緒にいると、辰巳は自分の心がひどく汚れているように感じられる。なんとしても、この子だけは大事にしなければならない。
 だが、今日の目的は夏帆と体を交えることではない。

「『カッコウの卵』」

 目をうつろにして、あっさり催眠状態に落ちた夏帆の耳元でささやきかける。

「催眠術にかかった辰巳先生が、お前のいいところを挙げてくれているぞ。ほら、聞こえてきた……。辰巳先生は、的確にお前の欲しい言葉を言ってくれる……」

 夏帆は一つため息をつくと、虚空を見つめたまましなやかな腰をくねらせだした。

「ああ……そんな、あたしなんて二人に比べたら全然かわいくないよう……」

 頬に手を当てて、少女はとても幸せそう。夏帆の脳内では、愛しい恋人が望みの言葉をかけ続けてくれる。

「うそ、男の人は大きいのが好きなんでしょ。あたしだって、知ってるんだから……。え、ほどほどってどのくらい? C? あたし、Cカップだよ……もう、先生ったら」

 夢の世界へ旅立った夏帆を放置して二人に目を戻すと、犬になっていたときと同じように雫の股間へ顔を埋めた沙織が、執拗なまでに女陰へ舌を走らせていた。

「すっ、好きよ、好き、大好き」
「ああっ、あ、あたしも、好き、いいっ、先生、いいよおおっ……!」

 二人の表情はすっかり乱れきっており、唾液と愛液に汗も混ざって体中がどろどろになっている。

(ここからが本番だ)

 辰巳は口からよだれを垂らし、狂おしくよがっている雫の肩に手を置いた。

「雫、お前は三つ数えると正気に戻り、これまで自分が催眠術にかけられていたときの記憶も全て戻ってくる。だけど自分の意思では首から上しか体を動かすことができない。その姿勢のままでしかいられない。三……二……一……〇」

 カウントを〇にした途端、とろけていた雫の目に理性が戻り、数瞬遅れて耳をつんざくほどの絶叫が響き渡った。

「バカ、うるさいよ」
「ふざけんなよ! この変態野郎! 死ね!」

 先ほどまでは喘いでいた少女の顔が真っ赤に染まり、辰巳を刺し殺すような視線を向けてきた。けれど、体は犬のように仰向けになり、あそこを沙織に舐められているまま。

「お前が悪いんだぞ。ちゃんと先生を敬わないから」

 いつもの人を食ったような態度はどこへいったのか、雫の口から耳を覆いたくなるような罵声が返ってきた。

「雫、よく聞け。お前は俺の催眠術にかかっている。だから俺の言うことはなんでも聞いてしまう。ほら、沙織に舐められているとものすごく感じてきたぞ。とっても気持ちいい」
「はあ、ふ、ふざけんなよ。ちょ、やめ、あっ、あん。くそや、や、やめ……あっ、ああん」

 聞くに堪えない罵詈雑言が、艷やかな嬌声に押し流されていく。自分の意思では体を動かすことができずとも、快感に耐えきれなくなった全身は無意識にがくがくと震える。

「あっ、ああ、はあ、ひ、ひう、ううう! あっ、あっ……!」

 沙織は長く伸ばした舌を使って割れ目をなぞったり、あるいは膣に潜り込ませたりと、絶え間なく雫の気持ちいいところをマッサージしては、湧き出す愛液をじゅるりと音を立てて啜っている。

「んんっ、はあっ、せっ、せんせ、やめっ、んんっ、あああ!」

 雫の反応が良くなったと見るや、沙織はクリトリスへと攻撃の対象を変えた。
 包皮を指で剥き、口に含む。楽しそうに舌で転がしては溜まった愛液を舌先で掠め取り、肉芽に絡めつける。それを肉芽ごと吸い取っては再び愛液をなすりつけ、吸う。
 執拗な陰核への攻撃に、雫はすぐに忘我の境地へ達した。

「ああっ、はああっ、いいい、ああっ、ああ!」

 馬鹿になって叫ぶ雫を愛おしそうに見つめる沙織は、唇を押しつけ、顔ごとこすりつけるような力強い愛撫でとどめを刺しにいった。

「んんっ、ああっ、はああ、あああああ、あああ、ああああああああ!」

 一際甲高い嬌声のあと、雫の総身がさざなみのように痙攣を繰り返した。

「よかったな雫。学校一の美人教師にイかせてもらうなんて、男子が聞いたら羨ましがるぞ」
「はっ、あ……ク、クソ野郎……ほんと死ねよ……ひっ」

 雫がエクスタシーに達しても、沙織はまだ股間から溢れた愛液を舐め続けている。

「ああ、雫さん、好きよ、好き、好き。もっと、気持ち、よくなって」
「ちょっ、せっ、せんせい、やめて、目を覚まして……んっ!」

 沙織の愛欲はどこまでも留まることを知らず、ほうっておけば永遠に愛し続けてしまいそうだ。
 辰巳はそっと沙織の目を覆い、まぶたを下ろす。

「お前は俺の腰掛けになる……。四つん這いになって固まるんだ」

 教え子の股ぐらを貪り続けていた女教師は、辰巳が声をかけると魔法にかかったようにおとなしくなった。
 沙織は蜜液で満ちた柔肉から顔を離すと、四つん這いになって彫像のように固まる。
 椅子になった沙織に腰掛けた辰巳は、下着ごとスラックスを下ろして自らの下腹部を露出させた。
 隆起した肉棒には太い血管が浮かび上がり、大きく反り返っている。

「フェラをしろ。できるだけ奥まで飲み込んで、歯を立てず、優しくしゃぶるんだ」
「いやっ、やだっ……あっ、あ」

 顔をそむけて拒絶していた雫の細い指先がペニス掴んだ。少女は大きく口を開け、もごもごと声を出しながらも、ゆっくりとペニスを咥えていく。美女たちの乱れる姿にすっかり敏感になった肉棒は、しっとりとした唇が撫でていくだけでも、芯まで疼くようだ。
 辰巳の生殖器は生暖かい口腔に飲み込まれてゆき、亀頭が喉に当たるまで深く咥えられる。

「んっ、ぐっ、んん……」

 苦しいのか、悔しいのか。雫は涙を流して呻いている。これまでは虐められる側に回っていたこともあり、強気な少女の涙は辰巳の嗜虐心をひどく沸き立たせた。

「ほら、顔を動かして刺激してくれ」

 泣きながらも雫が顔を前後に動かしはじめると、すぐに肉竿やカリ首にたおやかな唇が張りつく幸せな感触が襲ってきた。
 美少女があそこにしゃぶりついているという事実だけでも体は昂ぶるのに、まして快い摩擦運動まで加えられては、我慢などできようはずがない。
 体中がこそばいくなるような快感が流れ、カウパー線がとろとろと我慢汁を垂れ流す。

「いいぞ雫。もっとペースを上げてくれ」
「んっ、ふうっ、んんっ!」

 先端から吐き出された精液は、唾液と絡まりながら雫の唇によって肉棒に塗りたくられてゆき、それを潤滑材としてピストンはますます滑らかになる。
 薄い唇が繰り返し亀頭を撫で、カリをこすっていくたびに背中がぞくぞくするような快感が湧いてきて、意識していなければ出してしまいそうだ。

「も、もっと強く吸ってくれ」
「んんんっ、んっ!」

 雫はほんのわずかな隙間さえないよう唇を肉竿にへばりつけ、強烈な吸引を加えてくる。
 頬をすぼめた美少女の顔はあまりにも下品で、たまらなく官能的だ。

「んんっ、んん、んんん!」

 舌先で鈴口をこれでもかと刺激したかと思えば、カリ首に絡みついて裏筋をえ抉る。大粒の涙をこぼしながらも、雫の舌は淫らに動いてペニスを刺激してくる。
 カウパー腺液は泉の如く湧き出して、唾液と絡まったそれが雫の小さな口から溢れてきた。

「こぼすなよ。ちゃんと、全部飲み干すんだ」
「んっ、ぐ……」

 ごくりと喉が動き、雫の表情がゆがんだ。それでも液がこぼれそうになると、少女はじゅるじゅると卑猥な音を立てて吸い上げる。
 涙や鼻水、飲みきれなかった粘液できれいな顔はぐちゃぐちゃ。なのに口だけは絶えず動かして奉仕している雫を見ていたら、辰巳はすぐに満たされた。

「雫、出すぞ!」

 言うやいなや、尿道が熱を持ち、辰巳の性器から大量の精子が吹き出される。

「んんっ! ううう! んんんんんんん!」
「飲め! 全部飲むんだ!」

 くぐもった声を出しながらも、雫は舌の上でだまになった白濁液をごくりと飲み込んだ。

「んっ、んぐ……」
「ああ……残った精液も処理してくれ」

 鈴口に吸いつき尿道に残った精子を吸引すると、雫は根本から舌を這わせて竿についていた粘液まで一滴残らず舐め取った。

「すっきりした。じゃあ、次はお前をイかせてやるよ」
「やだっ、やめてっ……! やめてください、お願いします!」

 あの生意気な少女が泣きわめいている。必死の懇願は完全に逆効果で、辰巳のサディスティックな衝動をますます唆り立てる。

「大丈夫。ちゃんと気持ちよくしてやるから」
「いやだっ! 新海先生、白石、助けてよ! 目を覚まして!」

 雫の叫びにも、二人は深い催眠状態に落ちたまま。沙織は腰掛けになったまま固まっており、夏帆はまだ何か一人で喋りながらごろごろと床を転がっている。

「ほら雫、仰向けになってお前のきれいな体を見せてくれ」
「やだっ、いやあ!」

 抵抗の叫び声もむなしく、雫はフローリングに背中をつけると手足を大きく伸ばして大の字になった。
 あらためて、なんて艶めかしい肉体だろうか。
 小さな顔にすらりと長い手足。細身でありながらも胸部と臀部にはみっちりと肉がついている。
 眺めているだけでも欲情を唆る、極上の肢体。
 辰巳はじっくりと教え子の裸体を鑑賞してから、すべすべとしたお腹に手を伸ばした。

「ひっ……!」
「雫、よく聞いて。お前は全身がクリトリスのように敏感になる。お前の体はどこを触られても、クリトリスと同じくらい気持ちよくなるんだ」

 ぴくっと雫の総身が跳ねた。へそ周りから脇腹にかけてゆっくりと手を這わせる、たったそれだけのことでも白い肌が赤く染まっていく。
 体にあらわれるほど感じていながらも、声だけは出さぬよう雫は固く唇を閉じていて、そのかたくなな態度がことさらに辰巳を興奮させた。
 雫にとって地獄のような陵辱がはじまった。
 辰巳は雫の乳首を、豊かな膨らみを、グロテスクな女性器を、頭のてっぺんから足のつま先まで全身をひたすら舌で犯し続ける。
 どれだけ嫌がっていても、全身が性感帯となった少女の体は否応なしに反応する。
 乳頭は触れれば破裂しそうなほど膨み、股間からは蜜液が垂れ流しになる。形のよい胸は興奮もあらわにせわしなく上下しており、固く結ばれていた唇はとっくに開きっぱなしになって、絶え間ない嬌声を紡いでいた。
 全身を唾液でぎとぎとにした雫は、ついに抵抗の意思を示すことすらできなくなり、放心状態となった。

「四つん這いになって、お尻の穴を見せるんだ」
「はあっ、あっ、あああ……」

 身を反転し、うつ伏せになった雫はお尻のみを持ち上げると、両手で割れ目を開き男の前にアヌスを晒した。
 辰巳は丸見えになった尻穴に生殖器を押し当て、ぐにゅりとへこませると、雫の腰を抱いて力強く埋め込んでいった。

「いっ! あっ、や、やめ、いっ、ああ!」

 苦悶の声を上げる雫にかまわず、辰巳は臀部に根本が当たるまで深く肉棒を挿し込んだ。

「ああぁぁ、いたいいぃぃ!」
「俺が一突きするたび、お前は少しずつ俺のことを好きになる。そして、心から俺のことを好きにならなければお前はイくことが出来ない。行くぞ!」

「や、やめ……ああ、あああ!」

 全身がクリトリスになるという暗示は、例外なくアナルにも作用している。かすかな抵抗を示した雫の言葉は、辰巳が抽送を開始するとすぐに絶叫へと変わった。

「あああ! やめ、ろ! くそ! あっ、あああ! ちぐしょう、うぁあ!」

 力を抑えたピストン運動でも、雫の体はすぐにパンクした。太腿が地震でも起きているかのように震え、前後運動がままならなくなる。体が揺れるたび肉棒の角度に変化がつき、予期せぬ場所へ刺さることで、雫はますます狂乱の境地へつ突き進んでいった。

「んん、あああ! くぞ! あああああ! きゃああああ! ひあああああ!」

 喉が張り裂けんばかりの絶叫。股間から垂れ流しになっている愛液が膝を伝い、汗と混ざりあって小さな水滴を作っている。
 普段ならとっくにエクスタシーに達しているのに、さらに快感を叩き込まれる雫の体は完全に暴走を起こしていた。

「ああ、あああ! はああああ! ひいい! いいいいい! やだああああああ!」

 雫は大粒の涙をこぼし、ガチガチと歯を噛み鳴らす。全身にびっしょりと汗をかいた雫の口からは辰巳を罵倒する言葉が少しづつ消えてゆき、それだけ淫らな叫び声が増えていく。

「はああ、いいい、あああ、あああん、ああああ!」

 電流を流された魚のように、雫は全身を痙攣させている。白目を剥き、気が狂ったように頭を暴れさせては、言葉にならない言葉を放ち続ける。

「俺への思いを口に出してみろ! そうすればお前はもっと気持ちよくなれる!」
「あああ! ひいいい! あっ、あああ、す、く、く……! うあああ!」

 ほとんど意識を失いながらも、雫はまだ抗おうとする。
 それならばこちらは更なる刺激を与えるのみと、辰巳は更に抽送を加速させる。

「やああ! いいい! いっ、あああ! うううう!」
「言え! 好きと言うんだ!」

 ぐううと、腹の底から唸るような声が聞こえた。辰巳に対する憎しみは好意で上書きされ、雫の強固な意思すら奪っていく。
 そしてついに、雫の理性は感情に服従する。

「ああ、あっ、ああ……! す、好き。好き! 好きいぃ!」

 絶叫と共に、雫の膣から勢いよく潮が吹き出した。ぴゅっぴゅと透明な液体を吐き出しながら、悦楽の極地に達した少女は全身を波立たせる。

「そうだ、もっと言え! 言えば言うほど、お前はもっと気持ちよくなれる!」
「ああ、先生! 好き! 好ぎ! 好ぎぃ! すぎいいいいいぃぃ!」

 雫は髪を振り乱し、発狂したように辰巳への愛を叫びはじめた。
 全身から湧き出す歓喜と制御が壊れたような締めつけが相まって、脳みそがとろけそうなほど気持ちいい。

「そうだ、お前は俺のことが大好きになった! 俺のことを心から好きになったからお前はイくことが出来る! さあ、残りの力を全部使って俺に気持ちを伝えるんだ!」
「せんせええええええぇぇぇ! すきいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!」

 獣のような咆哮とともに雫は上体を大きくのけ反らせた。豊満な乳肉が揺れ、全身の筋肉という筋肉が浮かびあがる。
 両腕を大鷲のように広げ、雫はひたすらに叫び続けた。
 華奢な体にいっぱいまで溜め込んだ快楽を爆発させている少女に、辰巳もあらん限りの精子を注ぎ込む。瞬時に全身を襲う虚脱感と、それ以上の幸福感。
 辰巳が全ての性を注ぎ終わったそのとき、雫は頭から前に倒れ込んだ。
 全身の力が失われた肉体が床にぶつかる鈍い音が響いたが、雫はぴくりとも動かない。完全に気を失ってしまっているらしい。
 それから、どれほどの時間が経っただろうか。
 シャワーを浴びた辰巳が服を着替えていたら、雫が横から飛びかかってきた。不意をつかれた辰巳は情けなくも仰向けになり、組み伏せられた形になる。
 雫の手が、辰巳の頬にかかった。

「先生、すっごく気持ちよかったよ」

 極上の笑みを浮かべた雫は、柔らかな唇を押しつけてきた。

 雫を手中に収めても、辰巳は快楽の限りを尽くした。
 マッサージ師になった沙織は、美しい肢体をフルに使って辰巳の体を揉みほぐしてくれた。施術中にもかかわらず発情したマッサージ師は、全身ローションまみれのまま襲いかかってきた。
 沙織のように性的倒錯者にされた雫は、夏帆の性奴隷になった。雫は穴という穴を侵されたあげく、最後は夏帆のおしっこを全身に浴びて絶頂に達した。
 赤ちゃんになった沙織は、涎を垂れ流しながら部屋の中をハイハイして回った。自分の仕事道具まで涎まみれにした沙織は、夏帆ママのおっぱいにむしゃぶりついてちゅうちゅうと吸った。
 極度の匂いフェチになった雫は、誰にも見られないように――と、本人は思っている――辰巳のボクサーパンツを盗み出した。隠れて嗅ぐだけでは満足できなかったのか、雫は頭に被ってオナニーをした。
 目の前で痴態を繰り返す二人に股間が疼くたび、辰巳は夏帆と愛し合った。
 夢のような時間に終わりが来ることはない。

「先生、ほっぺにご飯粒ついてますよ」

 二人が配膳をしている間にちゃっかり辰巳の隣をキープしていた雫が、頬にキスをしてきた。

「あっ! ずるい!」
「いま、本当についてた? 料理ができない上にやることもせこいのね」
「変な言いがかりつけないでくださいよ。あたしはご飯粒とってあげただけですから。ねー先生?」

 誰もが羨む美人教師と美少女が、自分を巡って争っている。

(俺はいま、人生の絶頂期にいるのかもしれない)

 食事を終えても、美女たちの至れり尽くせりは続く。
 後片付けを三人に任せ、浴室でシャワーを浴びていたら雫が入って来た。
 雫は布一枚身につけることなく、生まれたままの姿を晒している。

「先生、洗ってあげるよ」
「おお、頼む」

 肉感的な体に石鹸を塗りたくると、雫は柔らかいおっぱいをスポンジ代わりにして辰巳の体を洗いはじめる。
 弾力のある乳肉が背中でぎゅっと押しつぶされる感触に、精も根も尽き果てたと思われた男根がむくむくと首をもたげてきた。

「どう、気持ちいい?」
「ああ」
「ねえ、あたしの体魅力的でしょ? いまは同じくらいだけど、あたしはまだ成長してるから新海先生より大きくなりますよ。しかも、若いし。あたしと付き合いましょうよ。あたしの恋人になってくれたら、この体でたっぷりと気持ちいいことしてあげますよ?」

 そっと耳元でささやかれた声は、思わず「うん」と言ってしまいそうなほど艶があった。
 幸いなことに、辰巳が返事をする前に新しい闖入者がやってきた。

「もー、近本さん。洗い物ぐらいやってよ!」
「ほんとにこの泥棒猫は……。好き勝手やるのは高校だけにしなさい」

 大股で近づいてきた沙織は力づくで雫を引き剥がし、後ろから辰巳を抱きしめた。

「さっきの会話、聞こえてましたよ。辰巳先生ほどの方が容姿だけで選ぶような愚を犯してはだめです。先ほどお召し上がりになったのでご存知だと思いますが、私は料理も得意ですよ。家事裁縫なら何でも任せてください。もちろん、セックスも。私の方が、辰巳先生の恋人にふさわしいかと」
「家事なんか家政婦に任せればいいじゃないですか。そんなものよりエッチの方が大事ですよ。ねえ先生、どっちがいいですか?」

 美女と美少女はあまりに悩ましい問を投げかけてくる。
 だが、辰巳の答えは決まっている。

「どっちも嫌だよ。お前らと付き合ったら、俺まで変なやつだと思われるだろ」

 例の大騒動以来、二人はすっかり奇人扱いだ。恋人にするつもりであれば、あんなことなどさせていない。

(俺を惨めな気持ちにさせたこと、一生後悔しろ)

「俺にふさわしいのは、夏帆だけだよ」
「やったあ! あたしも先生のこと大好きだよ!」

 気絶しそうなほどショックを受けている二人に代わって辰巳の背中に抱きつくと、夏帆はさも愛しいというように頬を背中へこすりつけてくる。

「二人ともセフレにならしてやるよ。ほら、足を洗ってくれ」
「セフレ……」
「……まあ、いっか」

 二人は辰巳の足を取り、豊かな乳房を押しつけてくる。

「いまはセフレでも、心変わりする可能性あるもんね?」
「たしかに、そうね」

 大いなる愛の前に、障害など何も存在しないらしい。すぐに、辰巳の全身がおっぱいで包み込まれる。
 誰もが羨む美女たちが、自分に尽くしてくれている。
 これほど幸せな人間が他にいるだろうか。

 教師になってよかった。

< 終 >

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