※有償依頼の作品を紹介しておりますので、一番下をご覧下さい。
第3話-7
前日とは見違えるような快晴の下、一隻の船が揚々と青い世界を進んでいく。
二島を繋ぐ定期便は一日一往復。船体はそれなりに大きいが、千キロを縦断する大型船とは比べるべくもなく、今日はその大型船との接続便であるにもかかわらず乗客の数はあまり多くない。そのうえほぼ自由席なので、早い者勝ちで好きなところに座れる。
というわけで。
「ひゅー」
俺達は屋根のあるデッキ席に座り、正面から海風を浴びていた。船のモーター音が響く中、口笛風の声を発しているのは、右隣にいるハルカだ。ただ、その声は口笛というよりは、空気の抜けた風船という感じだった。ようは、リラックスしているということなのだと思う。
「あ、電波切れちゃった」
手元のスマホに目を落としたハルカはそう言って、俺に画面を見せた。その左上には、確かに「圏外」の文字が浮かんでいる。島を離れたから当然といえば当然だが、船の旅程は既に半分以上を過ぎている。島の中でも何度か圏外になることがあったことを考えれば、むしろよく繋がっていた方だ。
ハルカはスマホをバッグにしまうと立ち上がり、左舷の手すりに向かった。俺も何となくついていく。
二人揃って、ぼうっと海を眺めた。果てしなく青い世界が続いているが、さすがにハルカも見慣れたからか、とても落ち着いている。ふと、ハルカはいくつか見える島の一つを「あれかな?」と指し示した。島の中でもとりわけ大きそうなものだ。
「そうかもな」
俺が答えたとき、ふと、ハルカが眼下に見えたので、その頭に手を置いた。すると、ハルカを肩越しにのぞき込むような格好になる。
ハルカのアウターは、デコルテの開いたブラウスだ。白く爽やかなブラウスの色と、日焼けの進んだ肌がコントラストを描いていた。そして何より、布地の下に隠れた胸の大きさ、谷間の深さが、出立の頃とかなり変わっている。
ハルカの姿は、同乗している何人かの目を引いていた。それは当然のことだろう。顔立ちも含め、ハルカの容姿はかなり整っている。とは言っても体つきは年不相応というほどではないし、顔つきからはむしろ子供っぽさが隠しきれないが、それでも――もしくはだからこそ、周りからの視線を浴びるようになっている。
ハルカの身体に手を加えた立場として、少し誇らしい気持ちになった。
★
ぽーっ、と高めの汽笛を鳴らしながら船が接岸し、俺達は二時間振りの地上に降り立つ。宿の人が看板を掲げているのは向こうの島と同じだが、人数が圧倒的に少ないので、目的の看板はすぐに見つかった。宿にも話が通っていたようで、こっちが名乗る前に声をかけられた。
そのまま一旦宿に案内されたが、荷物を置いて直ちに引き返す。
「……田舎って感じだな」
「うん」
さっきまで乗っていた船を横目に、俺達の感想は一致していた。
前の島に到着したときにも同じ感想はあったのだが、向こうは港に関しては意外と広く整備されていて(何せ船がデカい)、それなりの発展を感じたものだった。あと、港だけではなく、陸の施設もまあまああった。
対してこちらの島は、定期船が停泊するこの場所を除けば、まさに絵に描いたような田舎である。ひなびた漁村、と言えば良いかもしれない。
いつぞやのレクチャーでの話を思い出す。確か、こっちの島の人口は向こうの四分の一。その人数からすれば、このくらいの雰囲気になるのは納得がいく。むしろ横目に見える船のサイズが過剰だとすら思えるほどだ。
そんな中ハルカは観光地図を開いて、行き場を探している。普通、この年代の女子なら早々につまらない感を出してもおかしくないと思うのだが(ましてや似た環境で既に二週間近く過ごしている)、ハルカは元々、このような場面で楽しみを見出すのに長けていた。
そして、
「ここにしない?」
ハルカは俺に地図を向け、とある場所を指し示した。
「おぉ」
「わー」
集落の裏に何気なくある登山口から、剣のように急峻な道を上った俺達は、あっという間に頂に立っていた。ハルカがここに来ることを提案してから二十分でたどり着くほど、近い場所なのだが。
「いい眺めだなあ」
正面下方には港があり、定期船が係留されている。そこを中心に集落の全景が目に入った。そして振り向くと、集落を囲むような山々が目に入る。
「なんか偉い人みたい」
スマホで写真を撮っていたハルカが言う。一瞬ハテナマークが頭に浮かんだが、あれか。天界から世界を見下ろすようなやつか。集落が近い分、より一層「偉い人」感があるなあ、と思ってハルカを見ると――ハルカはシャツの胸元をパタパタとして仰いでいた。
「あつい」
ただでさえ胸元が開いたブラウスを動かせば、俺の位置から胸の谷間どころかブラジャーも丸見えである。普通ならたしなめるところだが、それをしなかったのは周りに人がいないのに加え、俺も同じ思いをしていたからだった。
「暑いな」
山の頂上には太い木の杭が立っていて、日陰は一応ある。しかしその日陰を利用したところで、暑いことには何の変わりもない。
「やっぱり泳ぎたい」
「そうすっか」
短いやりとりのあと、俺達は次の目的地を目指すことにした。
★
「――んでそのあと泳ぎの練習して、夕方になってから神社行って、夜に宿のお姉さんに星を見に連れてってもらって」
「星ってヘリポートのとこかな?」
「うん。あと帰りに海岸でウミガメ見たよ! 卵産んでた!」
「すごいねえ、はるちゃん、一日でそこまで」
翌朝。俺達は定期船の港にほど近い漁港に来ていた。船の準備をしていた真利奈さんに昨日の様子を聞かれ、ハルカが自慢げに戦果を並べている。真利奈さんはこの宿から少し離れたレンジャーの詰め所で寝泊まりしていたらしく、しかも忙しくて(ヘルプで呼ばれるくらいなので当たり前だ)昨日は夕方にちょっと顔を合わせただけだった。
そんな状況にもかかわらず、真利奈さんは俺達をクルージングに誘ってくれた。クルージングといっても、周遊ではない。真利奈さんの作業場についていくということだ。
真利奈さんの船は漁船を改造したような古い小型船で、屋根があるのは船長室だけである。俺とハルカはその船長室の出口に固定されたベンチに腰掛け、湾を離れた船に揺られる。
「今日はちょっと揺れるかもよ」
真利奈さんの言葉通り、船はやや不安定な横揺れを起こしながら進んでいった。今日は晴れているが風が強く、少し白波も立っている。時折、波しぶきがベンチに座る俺達に襲いかかる。
「冷たい」
しぶきを除ける仕草をするハルカは、まるで遊園地のアトラクションを楽しんでいるかのようだ。
揺られること十数分、大きな岩を回り込むようにしたとたん、急激にモーター音が弱まり、俺達は目的の場所にたどり着いたことを知る。しばらく待っていると真利奈さんは小型ボートを下ろし、俺達に乗るように指示した。
★
「すごく静かだな、風」
「うん」
この島は諸島に数ある無人島の一つ。俺達がボートでたどり着いた浜は、外洋とは打って変わってとても穏やかだった。このあたりは小規模だが湾になっていて、今の風向きだとちょうど風が入ってこない。
真利奈さんの仕事は、この島の調査だった。ほんの数日前、一帯を大雨が襲い、付近の島々が結構な被害を被った。さっきまでいた島では俺達は集落付近にしか行ってなかったので気づかなかったが、登山道がいくつか崩れたりして、昨日まで復旧に追われていたらしい。
その復旧が一段落し、今度は周辺の調査をするそうだ。周辺の島は全て無人島だが、天然記念物な生物がゴロゴロしていて、そういう生物への影響を見るらしい。
「あの岩の向こうが、元の島」
湾の中に浮かぶ岩を指さして、真利奈さんは言う。
「ちょうど展望台があるから、一応だけど注意した方が良いよ、望遠カメラの人がいるかもしれないし」
大きなリュックを背負った真利奈さんからの手早い説明を聞き逃さないようにする。こういうときの真利奈さんの言葉は端的で、重要だ。
「今日の風だとダイビングの人もこっちに来ないから大丈夫。調査は多分二時間くらいだから、熱中症に気をつけてね。ちょっとだけなら林に入ってもいいから。あと当然だけど湾から沖に出ないでね! 死んじゃうから!」
最後の言葉は、ハルカにも聞こえる大声だった。まさにその沖を見ていたハルカから「はーい」と可愛らしい返事が飛んでくるのを確認して、真利奈さんは森の中に入っていった。
「泳ぐか」
「うん」
真利奈さんが見えなくなったところでハルカに振り向いてそう言うと、波打ち際を見つめていたハルカは直ちに同意を返した。
この諸島に来てからいろいろなアクティビティをしているが、ハルカが一番気に入っている遊びはおそらく海水浴だ。今日ここに来たのも、誰もいない内湾で泳ぐのが目的の一つである。
「はい」
ハルカは腕を少し広げた形で、俺の前に立つ。
俺がハルカの脳を弄ったせいで、ハルカは俺の前で自ら服を脱ぐと、発情してしまう可能性がある。諸島でも最初の頃は俺から隠れて着替えていたが、最近はこのように、俺が脱がすように促されることが多くなった。まるで子供の相手をする父親のようだが、こうなったのは俺の責任だし、俺としてもハルカを脱がすことにやぶさかではないので、断る理由もない。
ハルカはゆるめのTシャツとショートパンツの姿だ。スプレーで茶色に染めた長い髪は後ろできつく束ねられ、三つ編みのように垂らされている。
俺はハルカに近づき、シャツをめくり上げる。するとハルカは上に手を挙げ、脱衣に協力した。
するすると持ち上がっていくシャツの下から、日焼けしたウエスト、そして蛍光色の水着のブラジャーが現れる。その水着は、真利奈さんから譲ってもらったギャルっぽいツイストビキニだった。肩紐はない。
頭からシャツが抜け、ハルカの三つ編みが揺れる。ほんの微かに、サキュバスの甘い香りがした。俺はシャツを軽く畳み、そういえば、と思いハルカの肌に指を這わせる。
「もぅ」
ハルカがたしなめるように声を出すが、抵抗はしない。俺はハルカの鳩尾から、ゆっくりと指を下に滑らせる。そしてヘソのあたりで、一度手を止めた。
何も感じない。
数日前まで、そこには俺がハルカに彫った「成長紋」が隠れていた。しかし、ハルカが俺のツタに反発したことで、ハルカの体内にあった俺のツタはひとたまりもなく全て消し飛んでしまい、ツタで編まれていた成長紋もその時に同じ運命をたどっている。もっとも、ちょうど役目を終えたタイミングだったので、単に紋を解く手間がなくなっただけとも言えるのだが。
確認に満足した俺は、ハルカのショートパンツに手をかけた。ボタンを外してファスナーを下ろし、ハルカの足から抜く。既に裸足だったハルカは、足につく砂が気になったのか、俺がパンツを丸める間、手のひらで足首のあたりを払っていた。
そして姿勢を戻したハルカとの距離を詰める。
「え?」
予想外の動きだったのだろう、ハルカは困惑の声を上げた。ハルカは既にビキニ水着姿で、普通ならこれで海には入れる。だが、今の俺には考えがあった。
指をハルカの背中に向ける。そして、ブラジャーの結び目に手をかけた。
「泳ぎづらいんだろ? これ、外すぞ」
ほんの一瞬だけハルカの反応を伺い、反発しないのを確認して、俺は結びを解く。はらり、とあっけなくブラジャーは外れ、ハルカのDカップが露わになった。
ハルカは俺を見上げて顔を赤くしていたが、怒ったり胸を隠そうとしたりはせず、むしろ表情を緩めている。それは予想通りの反応だった。俺の弄りの成果で、今のハルカは、俺に胸を見られることを喜びとしか捉えない。俺以外の誰にも見られる心配がないこの場所では、嫌がることはないと踏んでいた。しかし、さすがに居心地はあまり良くなさそうだ。もじもじとして、どうしていいか分からないという様子である。
「泳ぐんだぞ」
ハルカからとったばかりのビキニブラジャーを畳み、俺はハルカに予定を再認識させた。
湾は結構広く、シュノーケリングのし甲斐がある場所だった。
《あの辺なんかいる》
《なんだあれ、エイ?》
《そうかも》
ハルカはゆっくり平泳ぎで進み、数メートル後ろを俺がついていく。
ハルカが海水浴を楽しんでいる一番の理由は、おそらくハルカ自身の水泳技術が成長したからだ。
《もうちょっと左》
《りょーかい》
俺の指示にも難なく応じ、ハルカは顔を水につけたまま進行方向を微調整する。この諸島に来てすぐの頃、いかにも不安定だったハルカの泳ぎとは見違えていた。海水は浮力が高いので泳ぎやすいというのもあるが、綺麗な海の底を見るという練習の動機ができたことも大きそうだ。ツタのおかげで泳ぎながらでも言葉が通じることも込みで、今のハルカなら保護者として安心して見ていられる。イルカツアーへの参加もこれなら大丈夫だろう。
湾を一往復して出発地点にたどり着いたときには、既に三十分近くが経っていた。
「ちょっと休むか」
「うん」
俺達はビニールシートに座り、身体を休める。座ってみて分かるが、身体はかなり疲れていた。バッグから出した水で喉を潤しながら、ぼうっと景色を眺める。のほほんとした静寂が身に染み渡る。
ふとハルカの方から、仰向けに寝転ぶ気配がした。その気配につられるように視線を空に向けると、かなりのスピードで雲が流れているのが見える。どうやら上空は相変わらずの強風らしい。そのおかげでときどき雲がかかって強烈な日射しが遮られ、過ごしやすく感じる。
「海の中綺麗だったねー」
「ああ」
声をかけられたハルカの方を再び見て、一瞬動きが止まる。そこには何もつけていない、ハルカの胸があった。
(馬鹿)
密やかな罵声は、俺自身に向けたものだった。ハルカのブラジャーを外したのは俺だ。俺が驚くのは間抜けすぎる。
しかし、綺麗だった。褐色に日焼けした肌の中、三角ビキニの跡による白肌が胸の丘陵を強調している。ハルカはその胸を隠そうともせず、今も日射しに晒していた。その姿はとてもセクシャルだ。
「泳ぎやすかっただろ?」
だがそんな内心を隠して、俺はハルカに別の言葉をかけた。
「うん」
少し揶揄ったつもりだったのだが、ハルカの答えは素直だった。
真利奈さんからもらった水着は、どちらかといえば見た目重視の「陸用」だった。昨日、ハルカがこの水着で初めて泳いだところ、少し泳ぐだけで、何度もブラジャーを直す羽目になっていた。そして、ハルカが持ってきた方の水着は、まずいことに元の宿に置きっぱなしだったのだ(明日戻る予定なので、不要な荷物を置かせてもらっていた)。だから実は、俺がハルカのブラジャーを外させた理由自体は、何も嘘がなかった。
だがもちろんそれは、疾しい意図がないということではない。
「ねえお兄ちゃん、どうしよう」
ハルカは空に視線を投じたまま、俺に問いかける。俺はその言葉にやや困惑しながらハルカを見て、続きを待つ。
「外でおっぱい出すの、やっぱりちょっと気持ちいいかもしんない」
「……それは困ったな」
そう答えたのは冗談のつもりだったが、直後、少しだけ不安を覚えた。俺自身も、この諸島に来て大分タガが外れている自覚がある。
「お兄ちゃんのせいで露出狂になっちゃったら責任とってくれる?」
「責任はとってもいいが、その前に向こうに帰ったらちゃんと気持ちを元通りに切り替えろよ?」
「気持ちは元に戻るかもしれないけど、身体は結構変わっちゃったよ?」
「……」
俺は返す言葉が見つからず黙った。そして気づく。これはハルカに揶揄い返されている。ハルカの声が笑っていた。
「とってくれるんだ? 責任」
「……そうじゃなきゃお前の脳や身体弄ったりしねえよ」
「……そっか」
自分でも何を言っているか分からないが、多分理解しない方がいい。嘘をついてないという確信があれば十分だ。
「そっか」
ハルカがもう一度そうつぶやいたのを最後に、二人の言葉がしばらく止まった。
★
「よいしょっ」
心地よい静寂の中、不意にハルカの声がした。横を見ると、ハルカが鞄に手を突っ込み、ごそごそとしている。何をやっているのかと思ったが、ハルカが取り出したのは見慣れたものだった。
「日焼止めか?」
「うん」
肌を焼いているハルカだが、日焼止めは焼き具合の調整で用いている。ちなみにハルカはサンオイルも持ってきていたものの、真利奈さんにきつくダメ出しされて一度も使っておらず、結果として真利奈さんの宿に置きっぱなしになっている。日射しの強いこの諸島でサンオイルを使うと、あっという間に診療所送りになってしまうそうだ。
「そだ、お兄ちゃん、塗ってくれる?」
ふと何かを思いついたように、ハルカはそう言った。
「いいけど」
普段は自分で塗っているのに珍しいな、と思いながら、差し出されたボトルを受け取る。
「ここだけ塗って」
するとハルカは、いたずらっぽい表情を浮かべながら、自らの指で身体の二カ所を指し示す。
そこは――ハルカの両乳首だった。
なんでそんなところに日焼止めを、と思ったが、すぐに納得はいった。ハルカはブラ無しのまま肌を焼くつもりなのだ。水着を途中で替えたために水着の焼け跡がちぐはぐであることをことをハルカは少し気にしていたので、水着跡を消してしまおうとしているのだろう。しかし、乳首を焼きたくはないので、そこだけ日焼止めを塗る、ということだ。
そして、わざわざそれを俺にやらせる理由も、別の意味ですぐ分かる。
俺を誘惑しているのだ。
俺はキャップを開け、人差し指の先にほんの少しだけ、日焼止めの乳液をとる。塗る範囲はごく僅かなので、これで十分だ。両方の親指と人差し指だけを使って、乳液を伸ばす。
「こっち来い」
ハルカに命じると、ハルカは女の子座りで腰を下ろしたまま、こちらに少しにじり寄った。
大きくなり目立つようになったDカップの胸は、太陽光に照らされて白く輝いている。眼下の双球に指を伸ばし、その頂を両方同時に、的確に捉えた。
「っ」
ぴくり、とハルカがほんの僅かに震えたのを感じる。だが俺は構わず、両方の乳首を親指と人差し指でつまみ、日焼止めを塗り込んでいく。
俺が触る前から、ハルカの乳首は既に固くなり始めていた。しかし俺はそれを指摘せず、日焼止めを塗り漏らさないように「という名目で」、全ての凹凸に丁寧に指を這わせる。
「えっち」
ハルカは口だけ文句を言うが、肉体は俺の指使いに抵抗を示すことなく、刺激を受け止めている。指を動かすごとに、乳首が大きく、固くなっていくのを感じる。
「乳輪も塗るぞ」
ハルカの返事を待たず、俺は指の稼働範囲を広げていく。皮膚のシワの一つ一つをなぞるかのように、周りと色が違う部分に日焼止めを塗り込んでいく。指につけた日焼止めが足らず、一度指を離して日焼止めを補充した。
はぁ、はぁ。
気づいたときには、ハルカの息づかいが耳に響くようになっていた。口元が緩み、どことなくぼうっとした表情になっている。とはいえ日射しの状況からみて、熱中症ということではないだろう。水分補給も問題はなかったはずだ。
つまり、ハルカは純粋に欲情している。
乳輪を何周もして日焼止めを塗り終わる。それでも少し指に余っているのに気づき、俺はハルカに言った。
「残りは乳首に塗るぞ」
それと同時に、俺は両手の指でもう一度、ハルカの乳首をつまむ。
「あっ」
密やかながら、明らかに快楽を表す声が漏れる。だが俺は構わず、両方の乳首を軽くひねるようにして、改めて日焼止めを塗り込んだ。
「だめぇっ」
おそらく反射的にだろう、抵抗の言葉が出るが、ハルカの身体はそう言っていない。ひねられた乳首につられるように、胸を突き出している。
そのままハルカの乳首を数度擦り上げて、俺は日焼止め塗りの任務を完了した。
俺の指から解放されたハルカはしばらくぼうっとしていたが、やがて、こてん、とその場に寝転がった。日焼け目的だったことを思い出したのだろう。せっかくなので俺もハルカの横に寝そべる。するとハルカの手が俺に触れてきたので、軽く握ってやる。
一瞬の静寂のあと、ハルカが口を開く。
「……えっちしたくなっちゃった」
「……もう少し休んでからな。焼きたいんだろ?」
「お兄ちゃんがえっちなことするから」
「お前が仕掛けたんだろ」
俺が言い返すと、ハルカはむぅ、と漏らして黙り込む。ハルカの機嫌を少し損ねたかとも思ったが、ハルカと繋いだ腕が嫌がっていないので多分大丈夫だろう。
俺達は昨日はセックスしていない。夜もツアーのように遊び回って、さらに宿でハルカがスタッフと話し込んでいるうちに、俺の方が寝入ってしまっていた。
一日くらいしなくても、これまでは何も問題はなかった。だがこの諸島に来て、ハルカの胸が大きくなり、脳の改造が進み、そして喧嘩と仲直りを経た俺達は、お互いに自分でも分かるくらいに性欲が強く、しかもその欲望に正直になっている。
つまり、僅か一日「お預け」されただけのハルカは、内なる欲求に朝からずっと苛まれていたのだ。ハルカに直接聞いたわけではないものの、俺は感づいていた。朝起きてすぐのとき、それとなく俺の肌に手を触れる仕草が、明らかに求めるときのそれだったからだ。
この島で二人きりになれるということが分かったとき、俺だけでなくハルカも、ここで愉しむことになると気づいていたに違いなかった。
「お兄ちゃんも焼けてきたよね」
不意に、ハルカが言った。
「そうか?」
「うん」
俺は自分の胸を見下ろす。言われてみれば、俺の肌も大分色がついてきている。ハルカと一緒に海で遊んでいたのだから当然といえば当然ではある。
「お兄ちゃんとお揃い」
ハルカを見る。ハルカはトップレスなので、胸とそれ以外を見比べれば、どれだけ焼けたのかは一目瞭然だ。
「ハルカは日焼けも似合うな」
「そう? お化粧したらギャルっぽくなるかなって思ってたけど」
「ハルカならギャルでも似合うと思うぞ」
「えへへ、そっかな」
ハルカは照れたように笑い、「セリナさんに聞いてみよっかな」と言った。
「あの三人はもう向こう帰っちゃうんだろ?」
確か俺達がこっちにいるうちに、船で帰ることになっているはずだった。ハルカから聞いたので覚えている。
「SNS交換したから大丈夫」
しかしハルカはしれっとそう答えた。「結構家近いんだよ」と付け加える。口にした場所は学園の最寄りから電車で数駅のところだ。
「じゃあ向こうでも会えるんだな」
「うん」
ふとハルカは起き上がり、近くに置いたペットボトルから水分を補給する。
その時、俺のいたずら心が反応した。
「ハルカ」
水を飲み終えたハルカに声をかける。ハルカは一瞬きょとん、としたが、俺がむくりと起き上がったのを見て、何かされると察したようだ。
俺はその察しに答えるように、指からツタを伸ばした。
★
「んっあっ、あっあっあっあっ」
首からツタを差し込まれたハルカは、反射的な抵抗のそぶりを僅かに感じさせた後、俺の脳弄りへの快楽反応を赤裸々に漏らす。ハルカは女の子座りをしたまま、びくん、びくんと身体を震わせる。
「あっ、あっあっあっいいっあっあっあっ、する、する、ちくびするぅっ」
ハルカは嬉しそうに目を細め、自分の乳首をかりかりと両手で刺激し始めた。
「あっあっ、いいっ、あへあぁっ」
乳首刺激とツタの指示を遂行したことのご褒美とが重なり、ハルカは表情を崩して強烈な快楽を表現する。とはいえ、これはあくまで準備運動だ。
「あっ、あっ、あぁぁ……っ」
ハルカはツタの指示に従い、快楽に酔う身体で何とか立ち上がると、ふらふらと波打ち際に歩を進めた。そのまま、くるぶしが水に浸かるところまで行き、こちらを向く。
ハルカの表情はすっかり悦楽と服従心で蕩けきっている。先ほどから日光に晒され続けているDカップの胸が時折不随意に揺れ、ハルカが唯一身につけている蛍光色のビキニショーツは、ハルカが溢れさせた汁を吸い込んで色が変わっていた。
そしてハルカに、ツタで命令を与える。
《ションベンを漏らせ。そしてその感触でイけ》
「あっだめっ」
にわかにハルカの声に力が入った。初めて受ける命令に、羞恥心が、もしくはハルカの尊厳が反応したのだろう。しかし、既にツタに馴らされたハルカの脳にとって、ツタを通しての命令に従うことは抗い難い魅力である。ほどなく、しょわぁぁ、という音が響き、そして一瞬遅れて、黄金色の液体がショーツからしみ出してきた。
「ああっ、ああっ、だめぇっ!」
ハルカは少しでも止めようと内股になるが、俺はツタでハルカの肉体を制御し、それ以上体勢を崩させない。
「あーっ、あぁぁっ、きもちいいっ!?」
ハルカは泣きそうな声で快楽を訴える。放尿に合わせるように脳の快楽部分を刺激することで、ハルカはそれを放尿の快楽と解釈する。放尿を見られる羞恥心と痺れるような快楽の板挟みで、ハルカの表情は再び、急速に蕩けていく。
「あっイくっ、イく、イくっ、ああぁぁ……っ!!」
数秒前に守ろうとしたはずの尊厳を投げ捨て、惚けた顔で絶頂を告げるハルカ。びくん、びくん、と大きな絶頂痙攣に襲われる。それが収まっていくにつれて、俺も徐々にハルカの動作制限を緩めていく。するとハルカは内股のまま少しずつ腰を落とし、やがて尻餅をつくようにその場に座る。打ち寄せる波がハルカの腰を洗い、ハルカの排泄液が海原に拡散していった。
何となく声をかけるのが憚られ、俺はハルカを見つめている。
「ぁ……ぁぁ……」
ハルカは未だに、女の子座りのまま茫然としている。すでに痕跡は跡形もなくなっているが、俺はツタを通して、ハルカの自尊心がダメージを受けたことを感じ取る。
だが、ハルカの心の中に過ったものは、それだけではないはずだ。そのことはツタを通さなくとも、ハルカの顔を見れば分かる。その茫然とした表情は、禁忌を踏みにじった開放感、そして悦びの色を含んでいた。
その姿が何となく絵になっていて、俺はハルカをツタで無理矢理立たせるのをやめ、俺の方が立ち上がってハルカを迎えに行った。ハルカの脳から一度ツタを抜き、砂浜を踏みしめて波打ち際にたどり着く。
ハルカはまだ放心しているのか、未だにその場を動かない。俺はしゃがんでハルカに手を伸ばし――
飛び上がるように立ち上がったハルカが俺に抱きついてくる。数秒前とは逆に、ハルカは立っていて、俺は座ったままだ。そのまま抱きつかれれば、何が起こるか。
(しまった――……)
ハルカの胸の谷間が俺の顔を直撃していることに気づいたときには、俺の鼻腔が甘い香りに支配されていた。ハルカの体臭がみるみるうちに俺の脳裏を染め、俺から思考を奪っていく。
気がついたら俺はハルカの身体を抱きしめ、自分から胸元の香りを求めていた。
★
「油断しちゃったねえ、お兄ちゃん?」
ハルカの楽しそうな声に心を揺さぶられながら、俺はハルカの匂いと、ハルカへの愛しさを噛み締める。
俺の求めに応じて肉体の成長を遂げたハルカは、数ヶ月前とは全く異なり、すっかり魅力的なフォルムをその身に備えている。元から天使のようだった姿が、女神に一歩踏み出した、と表現すればよいだろうか。このようにハルカの身体を抱いているだけでも、しなやかにくびれたウエストが俺の指に魅力を訴える。
「お兄ちゃん」
ハルカの声がする。俺は胸から顔を僅かに離し、「ん」と最小限の声で答える。
「私のこと、好き?」
「好きだ、大好きだ」
ハルカの問いかけに答えながら、胸元から顔を離し、改めて膝立ちになってハルカを抱きしめた。
「愛してる」
ハルカの耳元で、思いの丈を伝える。今度は俺の胸板に、ハルカの柔らかくもハリのある感触が伝わる。
「えへへ」
ハルカが気恥ずかしそうに笑うのが聞こえた。ハルカの腕の力が強まり、俺達はしばらくそのまま抱き合う。膝元を波がさらっていくのが心地いい。
「お兄ちゃん、前より私のこと好きになってない?」
「なってるぞ、前より魅力的になってるからな」
ハルカは元から魅力的な女なのだから、そこからさらに魅力的になれば、それに魅了されてしまうのは何も不思議ではない。
「やーだ、お兄ちゃん私の身体目当て?」
「身体『も』目当てだぞ」
「ふふふ、そっか」
一呼吸置いて。
「うれしい」
ハルカの言葉が電撃のように俺の脳裏を貫き、絶大な幸福感をもたらす。
「じゃあお兄ちゃん、私をきもちよくして?」
「任せろ」
俺はハルカに唇を合わせた。みずみずしい唇が俺の求めに応じて開かれ、唾液が交換される。ぴちゅ、と密やかな水音が耳に響く。そして、手をハルカのおっぱいに近づける。
「ゃん、いい」
キスをしながらハルカの乳房を揉みほぐすと、ハルカは切なそうで、それでいて満足そうな声を上げた。吐息とともに可愛らしい声が耳に届き、俺の喜びに変わっていく。
「ぁ、あ、ぁ、ああん……っ♥」
すでにカチカチに固くなったハルカの乳首をつまむようにして刺激すると、ハルカはたまらなそうに身をよじらせた。ハリのあるおっぱいがふるふると揺れる様子に、目が奪われる。
「好きだぞ、ハルカ」
「さっき聞いたよぉ」
「でも、まだ言いたい」
「……いつも言ってくれればいいのに」
そうだ。いつでも言えばいい。なんでそうしてこなかったのだろう。
「これからはそうする」
俺は誓いながら、ハルカの尻に手を伸ばした。
「んふ……」
ビキニショーツの上からなでるように手を動かすだけで、ハルカはてきめんに反応する。俺は尻たぶをほぐすようにハルカに尽くしながら、それとなくハルカの股間に手を近づけていく。
「お兄ちゃん」
「っ」
唐突にハルカは俺の手を取り、ハルカの正面から股間に触れさせた。
「ぐっちゃぐちゃ。お兄ちゃんのせいだよ」
「……っ!!」
ショーツ越しに、ぬるりとした感触が手に触れる。それは海水や小水ではない、特有の粘液の感触だった。
「私、えっちな魔女だなあって」
とても嬉しそうに言うハルカの姿がまぶしい。純粋さと妖艶さを兼ね備えたハルカの笑顔は、俺の理性を食い破るのには十分すぎる。
「お兄ちゃん」
だから、そのハルカに。
「えっちして。…………私のおまんこに、おちんちん入れて」
囁くようにそんなことを言われたら、我慢できるはずもなかった。
★
渦巻く衝動を何とか抑え込みながら、ビニールシートの上にハルカを押し倒す。唇を合わせたその隙にハルカからショーツを取り去り、俺も海パンを脱ぎ捨て、二人揃って生まれたままの姿になった。呼吸のために唇を一度離すと、ハルカの蕩けた表情が目に入る。
「愛してる」
「私も」
ハルカの膝に手をつき、足を大きく開かせる。日に焼けて褐色になった身体の中で、その部分はまだ白さを残している。中心部には薄い繁みがあり、その下にハルカの女の部分が息づいていた。俺が視線を注ぐと、まるで反応するようにひくりと動く。
「えっち」
ハルカは揶揄うように言うが、そこを隠そうとはせず、むしろ見せつけるかのように腰を浮かせてくる。ハルカのマンコは綺麗な色をしていて、今は大きく口を開いている。透明な液体が溢れ、受け入れるべきものを今か今かと待ちわびている。
自然に腰が近づいた。俺の股間はとっくに限界まで張り詰め、その衝動を受け止める場所を狙っている。
「んぅっ! ああっ!」
先端が入り込んだ瞬間、ハルカから大きな声が上がった。そのままゆっくりと体重をかけ、チンコを沈めていく。ハルカのマンコは相変わらず狭いが、今日はいつもより抵抗が少なく感じる。
「ぁ……ぁぁ……っ!」
感極まったような細い声がハルカから漏れ、全身をブルブルと震わせて快楽を表現する。
「はいったぁ……ぁぁっ♥」
俺のチンコが完全にハルカの中に収められると同時に、ハルカは表情を惚けさせる。しっくりさせるために僅かに身体を動かすと、ハルカが悩ましげな声を上げる。
「ぁはぁ……お兄ちゃんのおちんちん、すきぃ……っ」
「俺もハルカのマンコ好きだぞ」
ハルカの膣内は熱くて、狭いながらも柔らかく、まるで俺に絡みついてくるようだ。ハルカは軽く腰をよじらせて、いいところを探している。
「あっ、ここ、ここっ」
俺のチンコがある一点を擦ったとき、ハルカの反応が変わった。どうやらハルカの好きなところに当たったらしい。俺はそこに狙いを定め、亀頭で押し込むようにする。
「あぁっ、それっ、すごいっ、んああ……っ」
ハルカはよほど気持ち良いのか、自分の腰を押しつけるように伸び上がった。どろぉ、っとハルカの奥から分泌液が溢れる。
俺はその様子にたまらず、腰を前後に動かし始めた。
「あっ! ああっ! あぁっ! あんっ! あぅんっ! やっ、いい、いいっ! いいっ!」
ハルカは待っていましたとばかりによがり始め、全身で性の快楽を表現する。ハルカの足ががっしりと俺に絡められ、さらなる刺激をねだってくる。俺はそれに応えるべく、さらに強く激しく腰を動かした。
「ああぁっ!! あー、いい、すごいぃ……! きもちいぃ……っ!!」
秘め事の最中であるにもかかわらず、ハルカは俺達に降り注ぐ太陽のように明るく、楽しそうにあえぎ声を響かせる。
「あーっ! えっちすきぃっ! お兄ちゃんとのせっくすだいすきぃ……っ♥」
「っ!」
ハルカの淫蕩な告白に、俺の頭に一瞬にして血が上る。俺はハルカの唇を塞ぎながら、より強くハルカに股間を突き立てる。
「ふむうぅ……ッ!? んぅううッ!!! ん、んくぅっ!」
途端にハルカのマンコが急激に締まって、軽くイったようだった。ハルカの全身が痙攣して、表情が弛緩する。だが俺は構わずに腰を打ち付け続けた。
「ぷはぁ……っ、ああぁぁぁ……、すごぉ……、もっと、もおっとぉ……♥」
ハルカは朦朧としながら、俺を求め続ける。俺はもっとハルカに応えてやりたくなって、腰を動かしながらハルカの乳首に指を触れた。
「あ、ああぁぁ……っ♥ ぁは、あひゃあぁっ♥♥」
複数の刺激を受け、ハルカは加速度的に快楽に溺れていく。しかしハルカは抵抗を示すどころか、貪欲に腰を躍らせて俺のチンコに押しつけてきた。魔女の名に恥じない、底の見えない快楽への欲求を見せつける。
「あひぃっ、あ、らめ、らめ、いく、いく、またイく♥ あっ♥ イくぅぅぅ……っ♥♥♥」
ハルカは次の絶頂にすぐたどり着いた。がくんがくんと身体を仰け反らせて、全身で絶頂快楽を受け止める。
「おにいちゃぁぁ……んっ♥♥♥」
しかし連続絶頂を浴びたにもかかわらず、ハルカはまだ満足していないようだった。ハルカはなおも俺から足を離さず、それどころか力を込める。
そして。
「おにいちゃん、しゃせー、しなきゃ、だぁめぇ♥」
蕩けきった甘ったるい声で、まるで呪文のように、ハルカが唱えた。
「っっ!!」
その言葉を聞いた瞬間、僅かに残っていた理性が吹き飛び、全力で腰をハルカに叩きつけた。
「あぁぁぁぁっっっ♥♥♥♥」
ハルカが大きな声を上げて、身体を大きく跳ねさせる。それと同時にマンコがきゅうぅっと収縮し、チンコ全体を締め上げる。だが、もはやそんな挙動に構っている余裕はない。俺の衝動を力一杯ハルカにぶつける。
「ぉほぉぉぉっ♥♥ しゅごぃい♥ しゅごぃぃいいっ♥♥♥」
首をぶんぶん振って、ハルカが悦びの雄叫びを上げる。その様子があまりにも幸せそうで、俺の意識がハルカの全身に吸い込まれていきそうになる。
「ハルカっ! ハルカっ!」
俺はハルカの名前を呼びながら、一心不乱に腰を振る。
「あ゛っ♥ お゛っ♥ お゛っ♥ ぉお゛っ♥ お゛ほぉぉぉっ♥」
濁ったあえぎ声を垂れ流しながら、それでもハルカは求めるのをやめず、腰を限界まで突き出して、チンコを一番奥まで飲み込もうとする。
ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ! ぱんっ!
「お゛っ♥ お゛っ♥ あ゛っ♥ あ゛っ♥ お゛イ゛くっ♥ お゛ほっ♥ イ゛くぅっ♥♥♥♥」
やがて俺の側は言葉の代わりに荒い吐息だけになり、あたりには小気味いい接触音と、ハルカの濁ったあえぎ声だけが響くようになった。俺の目にはハルカしか映らず、そのハルカはほとんど白目を剥きそうになっている。だが俺は全く動きを緩める気はなかった。
今の俺達は、魂で繋がっている。ハルカも絶対にそう思っているという確信がある。今まで感じたことのないような多幸感だった。
「お゛っ♥ おおぉっ♥ い゛く、イぐっ♥♥♥♥ お゛おぉー……っ♥♥♥♥♥」
口からよだれを垂らし、舌を突き出しながら獣じみた声を上げるハルカもまた、全身から多幸感を滲ませている。ハルカの両脚は俺の腰にしっかりと巻き付けられ、決して逃がさないという意志を露わにしていた。
(そろそろ)
腰の奥から予兆を感じ、俺は終わりを悟る。俺とハルカの逢瀬はあまりにも甘美で、心底手放したくないと願う一方で、ハルカの胎内を自分の色で染めたいという欲求も、また抗い難い魅力だった。
「ハルカ……っ!」
尿道を駆け上ってくるものを少しでも抑えながら、ラストスパートとばかりにハルカの一番奥に腰を叩きつける。
「あ゛っ♥♥♥ い゛あ゛あ゛っ♥♥♥ い゛ぐ♥♥♥ イ゛ぐぅぅぅ♥♥♥」
もう何度目かも分からないが、ハルカは全身を震わせて絶頂しようとする。俺はそれに合わせて、股間の我慢を解き放った。
「っ♥」
射精が始まった瞬間、ほんの一瞬、ハルカの目が見開かれる。待ち焦がれたものを胎内に感じたからだろう、微笑もうとしたように見える。
「お゛っっ♥♥♥ お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛おっっっ♥♥♥♥♥」
だが次の瞬間には、ハルカは身体を弓なりに仰け反らせ、喉仏が見えそうなほどに首を伸ばしながら、聞いたこともない悲鳴を上げていた。待ち焦がれていた精液を注がれたからか、圧倒的な快楽量に感情を押し潰され、肉人形のように絶頂に翻弄されている。
どくん、どくん……っ
なおも続く射精を感じながら、俺の意識も一瞬遠のき、絶頂にのたうち回るハルカに覆い被さるように倒れた。
目の前が暗くなっていくのを感じながら、このまま死んでも本望だ、とうっかり思ってしまうほど、幸せなセックスだった。
★
船がモーター音を響かせ、無人島から離れていく。船長室で操舵する真利奈さんを背に、俺達二人は備え付けのベンチにしなだれかかるように座っている。
「疲れた……」
俺はインターバル中のボクサーのような姿勢でうなだれる。
ハルカの魅了にやられ、間違いなく人生で一番ハードな逢瀬だった。意識が戻ってから、辛うじて水を口に含めたのは良かったが、そこからは茫然と時間が過ぎるのを待つしかなかった。真利奈さんが島の奥から戻ってくるまで、海水パンツを穿くことすらできなかった。
「熱中症になってない? 大丈夫?」
もっとも、俺達を見た真利奈さんはそれだけ確認して、後は何も言わなかったが。
(おっと)
無人島にいてすっかり忘れていたが、まだ風は強く、船がかなり揺れている。俺は船の中でバランスを取りながら隣のハルカを抱き寄せた。
ハルカはハルカで、行為後はほぼ精液を拭ったくらいで、あとはそのまま全裸で日の光を浴びていた。もともとは日焼けするために来ていたのであえて声はかけなかったが、俺と同じくらい疲労困憊だったに違いない。正直、数日前と同様に怒られることも覚悟はしていたのだが。
《気持ちよかったぁ……♥》
当のハルカが恍惚とした表情で俺にしなだれかかっているのを見れば、それが杞憂なのは明らかだった。
(こいつ……)
思い返せば身体が心配になるくらいイき狂っていたハルカだが、あの行為をリードしたのはハルカの方だ。俺を魅了しての行為はとても満足度が高かったらしい。
ハルカに手玉に取られたことの屈辱感がないわけではないが、ハルカの満足した様子を見るほどに、細かいことはどうでも良くなる。ハルカが可愛い。
(成長したなあ……)
船が湾に入り、船の揺れが落ち着くのを感じながら、ハルカの頭をなでて感慨にふける。元々、ハルカの肉体改造はこの旅行の大きな目的だった。そして、その目的は無事達成されたと言っても良い。何せ、俺を最後まで誘惑しきることができるようになったのだから。
俺達の長い旅行も、大詰めに近づいていた。
★
クルーズ船はターゲットを見つけたようで、俺達はその場所に向かうのを風の動きで感じる。そして船のスピードが落ちると、乗客は慌てたように僅かな身支度を調えて船尾に集まった。その中には、俺も、ハルカもいた。
「ここでいきます!」
入って! というガイドのお姉さんの声を合図に、続々と入水していく。このクルーズで三度目の行為に、ハルカも大分慣れた様子で海原に繰り出した。俺もその後ろに続く。
透明度が高いが故に、彼方の海底をはっきり見ることができる。かつてのハルカであれば到底泳ごうとはしなかったであろう場所だが、今のハルカはゴーグル越しに嬉々としてあたりを見回している。
《お兄ちゃん! あれ! あれ!》
ツタで言葉が通じるのをいいことに、ハルカは俺に呼びかけながらその影を指さす。俺がハルカの指に従って目を向ける。
それこそが、イルカだった。二頭、いや違った三頭のイルカが、思ったよりも圧倒的なスピードで、泳ぎ回っている。
《やった!》
ハルカだけでなく俺にも、そして少し遅れて他のツアー客にも喜びが伝わる。
さらに。
《こっち来る!》
イルカのうちの一頭が進行方向を変え、俺達に近づいてくるのが見えた。イルカがこちら側を向き、目が合った――ような気がする。
そのままイルカはコースを曲げ、俺達の周囲を大きく回るようにして、海原の彼方に消えていった。
★
そして俺達は今、前浜にいた。この諸島に来て、一番最初に泳いだ海岸だ。浜には地元の子供達の他、数組の観光客がいる。海を見てはしゃいでいる人が多いのは、きっと彼らが今日この諸島にやってきたからだろう。俺達から数百メートル離れたところには、昼前に到着した大型船が港に鎮座している。
無人島で泳いだ翌日、俺達は真利奈さんの船に乗ってこちらの島に帰ってきた。そのさらに翌日にハルカが沈没船チャレンジ(港から沈没船まで泳いで帰ってくるだけだが)を達成し、諸島での最終日の今日、ドルフィンスイムツアーでイルカと泳ぐ最終目標(ということに、いつの間にかなっていた)にたどり着くことができた。
その後昼食をとり、後は帰るだけになったものの、出航時間まではまだ時間があるので、こうやって最後の一遊びをしているのだった。
「うりゃあっ!」
俺が全力でハルカに水をかけると、ハルカはそれをよけるそぶりをしながら、同じようにやり返してくる。最初は感動を覚えた綺麗な海にもすっかり慣れてしまっていたが、この旅程では正真正銘の最後なので、あえて気合いを入れて戯れることにしていた。
ハルカは三角ビキニを身にまとっている。ハルカ自身が持ってきた方の水着だ。来たときより胸が大きくなっているが、それに合わせてビキニのブラジャーも明らかに大きくなっていた。どうやら真利奈さんがやったらしい。
「ていっ!」
せっかくなので、その胸の谷間を狙って手から水をぶつけた。その衝撃に胸が揺れる――ほどには水圧は強くないが、俺の意図を読み取っただろう、僅かながらハルカは不本意そうな表情をし、これまで以上に力強くやり返してくる。
そしてその海水が、一直線に俺の目を潰す。
「ぶっ!」
俺は思わずひっくり返り、大きな音を立てて水面に背を打った。
そんな感じで最後の一はしゃぎを終え、俺達は浜辺のベンチに腰掛ける。
「今日で終わりなんだね」
海を見て、ハルカがつぶやく。先ほどのテンションとは一転して、名残を惜しむ様子だった。
「私、一生分海で遊んだ気がする」
「分かる」
駄弁りながらハルカが鞄からスマホを取り出すのを見て、俺もそれに倣う。いよいよタイムリミットが近づいていることを、待ち受け画面が教えてくれた。この後に真利奈さん達が荷物を宿から運んできてくれることになっているが、そのタイミングまでには着替えて港に戻らないといけない。
「そうだ、お兄ちゃん写真撮ろ」
ハルカはそう言うと、自撮りの体勢でカメラを構える。俺は意図を察し、その横に歩を進めた。シャッターを切る音が何度か響く。
「ほら、これ」
数秒の後、ハルカは俺に写真を見せてきた。それは今撮ったものではない。この島に着た初日、同じ場所、同じような構図で撮った写真だった。
「今撮った方はそっちに送ったよ」
いつの間にか俺のスマホに送られてきた写真を開き、二つを見比べる。
「改めて見るとすげえ変わってるな」
構図が似通っているからこそ浮き彫りになる、この諸島で過ごした足跡。
「お兄ちゃん、やっぱりちょっとチャラくなってない?」
「日に焼けてるだけだろ」
「うーんそうかなぁ」
自分も日焼けしているのは知っていたが、こうやって見比べるとその差は歴然としていた。俺達の本来の肌はこんなに白かったのか、とかえってびっくりする。
「むしろお前の方だろ」
ハルカの肌は綺麗な褐色になっている。もちろん自然な焼けなのでムラはあるものの、その分健康的だ。胸のサイズが二回り大きくなっているのも一目で判別がつく。
だが、改めて見比べてみると、他にも違いがある。
「ハルカ、顔つき変わってるな」
「そう? 写真映りの違いじゃない?」
確かにそうかもしれないが、改めて記憶を掘り起こすと、やはり少し変わっている気がする。
輪郭はおそらくシャープになった。それにもかかわらず、ハルカの顔から受ける印象が丸くなったような気もする。全体的な違いを上手く表現しようとしたが、短い時間では思い浮かばなかった。
「どちらにせよ一夏の思い出、だな」
だから代わりに、お茶を濁すための言葉をつぶやいた。
「何かそう言うとお兄ちゃんと終わっちゃうみたい」
「終わらないからな」
「じょーだん」
ハルカはからかうように笑い、俺の腕に抱きついてくる。
その時ちょうど、スマホに通知が現れた。
「ハルカ、着替えるぞ」
「うん」
ハルカにも同じ通知が来たのだろう、ハルカは機敏に手荷物をまとめ、シャワーに向かっていく。
通知は真利奈さんが荷物を積んで宿を出た知らせだった。
★
「島は楽しかった?」
「うん!」
「はい」
「よかった」
人がごった返す待合所で、俺達は真利奈さんと最後の挨拶を交わす(百果さんは既に挨拶を終え、買い物に向かった)。すでに乗船は始まっており、順番に番号が呼ばれている。
「真利奈さんもまたこっちに来て下さい」
「でもいないんじゃない? まさくんもはるちゃんも」
「土日なら会いに行けますから」
「そっか、また来年行くんじゃないかな」
「じゃあそのときに」
やがて俺達の番号が呼ばれ、俺とハルカは荷物を持ち上げた。
「まさくん、はるちゃん、『いってらっしゃい』」
「「いってきます」!」
いってらっしゃい。それはこの諸島からの旅立ちを見送る、別れの言葉。
ここはやってくる場所ではなく、「戻ってくる場所」だという、島民の気持ちを込めて。
乗船客は船の横甲板に鈴なりに並び、港にいる島民との別れを惜しむ。太鼓による出航セレモニーが終わり、船が離岸すると、大きな汽笛の音とともに、見送りの声が響く。
「あっ、お姉さん! と百果さん!」
ハルカから声が上がり、俺は指し示す指の先に、真利奈さんと百果さんを捉えた。百果さんは買い物が終わったのか、帰ってきてくれたらしい。
「いってきまーす!」
改めて告げる別れの言葉はさすがに二人に届かないが、おそらく目が合った。船が遠ざかり、見えなくなるまで手を振り続ける。
そして岸から目を離すと、そこにはいつの間にか数隻の船があった。クルーズ船と漁船だ。見送りだ、と思っていると、そのうちの一隻が動きを止める。すると、「いってらっしゃーい!」のかけ声とともに、船員が海に飛び込んだ。
「お姉さんが言ってたやつ」
「ああ」
飛び込んで見送るのが島の名物らしく、船の連携も慣れたものだった。船がスピードを上げて前に出たと思えばそこで止まり、船員が手を振って飛び込んでいく。
そして。
「あの船」
「うん」
最後に残った船は、俺達が今朝のツアーで乗ったクルーズ船だった。見送り船の中で最も大きいその船がついに動きを止め、ガイドをしてくれたスタッフの人がこちらに手を振り、一斉に飛び込んでいく。
いってらっしゃーい、と一際の声を最後に、俺達の船は今度こそ、島に別れを告げた。
★
セレモニーが終わると乗客は次々に船内に戻り、次第に嘘のように無味な航海になっていた。しかし俺達は何となく名残惜しく、甲板の椅子に座って時間の流れを感じている。
「……切れたか」
手元のスマホが圏外を表示し、ついに外界との接触が断たれた。俺はスマホをしまい、ふと隣を観ると、ハルカは波立つ海をまだ眺めている。延々と続く青い砂漠はまだ離島のそれで、俺達の旅が決して夢や幻でないことを示すようだった。
ハルカはこちらの動きに気づいたのか、椅子に座ったまま、それとなく俺にしなだれかかってきた。俺はそれを受け止め、ハルカの頭に手をやる。
「……ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
「やっぱり、髪切ることにする」
「……そっか」
それは昨日の夜、相談を受けた。
ヘアスプレーには髪を守る効果があったはずなのだが、島の日射しが強すぎたためか、大分髪が傷んでしまった。だからこれを機に、バッサリ切ってしまいたい。そういう話だった。
ハルカの髪を指に感じる。ちょっと前まで海に入っていたからでもあるが、かなりごわついている。髪の指通りが日に日に変わっていたことは、俺自身も感じていた。
俺はハルカには長い髪の方が似合うと思っているが、長髪の手入れの苦労は、男である俺には計り知れない。だから最終的にはお前が決めろと答えた。
「じゃあ、今のうちにお前の頭をなでないとな」
「短くなったらなでてくんないの?」
「なでるぞ、もちろん」
「だよね」
どことなく嬉しそうに、ハルカは俺に身を寄せる。
「……あと、向こうに帰ったら、サラキチ行きたい」
「サラキチかあ、いいんじゃないか」
サラダキッチン、通称サラキチ。サラダ食べ放題で、ハルカお気に入りのチェーン店だ。
そういえば、諸島では野菜が少なく、ハルカが満足するほどには野菜を食べられていない。
「そんじゃ、向こう着いたら行くか」
「うん! ……あっ」
一際嬉しそうな声でうなずくハルカが、不意に声を上げた。
「あれ」
その指の先に、鳥がいる。見覚えがあった。カツオドリだ。カツオドリが一羽、船に並行して飛んでいる。しかもかなり近く、お誂え向きの位置にいた。
「見送ってくれてるのかなあ?」
「そうかもな」
ハルカは立ち上がり、俺も続く。カツオドリを驚かせないように、柵に寄りかかる。
しばらくすると、カツオドリは鳴き声を上げ、向きを変える。一瞬こっちに近づいた気がしたが、すぐに方向転換して、進行方向の反対側に戻っていった。
「ばいばーい」
島に帰っていくカツオドリに、ハルカは長く手を振っていた。
*ご紹介*
オリヒト様(Twitter @cetus_kkk)に有償にて当作品のヒロインである姶良遥を書いていただきました。冬服が作品開始時点、夏服が南の島から帰還後の遥です(日焼けは省略しています)。かわいい!
オリヒト様、ありがとうございました。
<続く>
やったートップレスだ!
是非! お外でもいっぱい脱いでください! はあはあ!
ツタの操りと魅了での濃厚イチャイチャプレイ!
遥ちゃん、今回の旅行で本当に成長しましたね……。
そして島での旅行編もいよいよラスト。次回からはちょっと変わった二人による日常でしょうか。
今後も楽しみにしています!
>ティーカさん
はいトップレスですよー! トップレス大好きですよー!
白昼にトップレスで活動してもらうために無人島に行ってもらいましたよー!
今回はいろいろな事情で執筆にものすごく時間がかかってしまいましたが、結果として遥の成長が見せられて良かったと思います。
次回以降は学園の日常に戻ってきっと何かが始まりますので、いつになるかは分かりませんがお楽しみに。
読ませていただきましたでよ~。
どこまで進んだっけと考えてなんか勝手に島編終わってたかな?とか思ってたけど、全然終わってなかったのでぅw
というわけで、今回で島編終了。自然満載の中でのいちゃらぶえっち素晴らしかったのでぅ。
トップレスダイビングとか大昔にプリンセスメーカー2で見た(いや、あれは全裸素潜りか)
エッチしちゃってるからむしろ全裸ダイビングとかでもよかったのでは・・・
次回から夏休みが終わって日常ってことでぅけど、一夏で胸が大きくなっちゃったハルカに友人たちの遠慮のない視線が集中しそうでぅw
であ、次回も楽しみにしていますでよ~
>みゃふさん
南の島編自体が長いのに更新も滞ったせいで本当に長かったと思います。申し訳ない。
個人的に全裸よりトップレスの方が大分好みなので今回はこういう形にしました。
遥は元々クラスで目立ってたハズなので、日焼けして胸が大きくなったら相当目立つでしょうねえ。もっとも、彼氏持ちであることは周知なので多分何も起こらないとは思います。多分。
次の更新がいつになるかは分かりませんが、これからもよろしくお願いします。