魔法使いの小冒険 第一話

第1話

 えぇっと、はじめまして。こういうサイトがあるとは、ネットの世界は奥が深いですね(笑)。僕には、紹介するような漫画やゲームのネタはないんですが、実体験なら豊富にあるんで、紹介させて下さい。うーんと、話し出すとなかなか長くなるんで、敬語を使わないで、話し言葉でもいいかな?本当は僕まだ18歳未満なんで、年上の皆さんに対しては失礼な言い方になるかもしれないけど、敬語は難しいんで、勘弁してね。(18歳未満の投稿を、目をつぶってアップしてくれるとは、さすが、ざくそんさんは太っ腹。「君が18になるまで、便宜的に別の人の創作っていうことにしとけば問題ないよ。ええっと、永慶さんあたりの名義にしてアップしてもいい?彼にも聞いとくよ」だってさ)

 それは僕が、無料画像サイトからエッチ画像をダウンロードしようと四苦八苦していた時だった。あ、もちろんコンピューターの話だよ。買ってもらったばっかりのデスクトップ型コンピューター。まだ全然使い慣れてないけど、エッチ画像を見ることに関しては、色々分かってきたんだ。これでも一生懸命モロダシ画像のためにネットサーフィンしてきたんだからね。(ネットサーフィンって言葉、もう古い?)

 そうだ、先に僕の自己紹介を済ませておくよ。僕の名前は草野知也。章花台高校1年4組。テレビとゲームを愛する15歳。もちろん人並みに女の子にも興味はあるんだけど・・・もとい、ひょっとすると平均以上に興味はあるし、知識もあるんだけど、恋愛とは全然縁のない生活を送ってる。もともと僕は、スポーツマンじゃないし、面白い話が出来るわけでも、外見がイケてるってわけでもないから、しょうがないことなんだけどね。まあ、そんなこんなで、部屋にこもってエロエロ画像を拝見してたってわけさ。

 ダウンロードしてるあいだ、僕は何とはなしに、マウスで円を描いてた。エッチ画像が開かれるまでの待ち時間ってドキドキするよね。息を飲んで待つ、緊張の瞬間だ。・・・ところが、いつもと違って「どのアプリケーションで開きますか?」とか何とかいう表示が出たんで、僕は焦っちゃったよ。とりあえず「Excel」で開いたら、なんと意味不明の文字の羅列になっちゃってた。前に誰かから聞いてた、「文字化け」って状態かな?初心者の僕は、なんだかすっかり混乱しちゃったよ。なにしろ友達に、エロサイトのなかには、無料とか言っときながら、接続料とか電話料とか、よく分からない言い方でお金を取るところがあるって脅かされてたもんで・・・。

 どうしていいか分からなくて、すっかり参っちゃった僕は、その日のエッチ画像めぐりはやめることにした。かと言って、他に何をしたらいいのかもよくわからないから、何気なくディスプレイ上に一杯になってる意味不明の文を、読めるとこだけ読んでたんだ。ほら、訳のわかんない文章とか言葉って、時々笑えたりするでしょ?そういうノリだったんだけどね。

「qョサ}ォ・トbコlrYロI qク貂ロ田 ャ E|ーqh g1$<テ・9質8ハタ変€コミ.x゙狭anタ7-V[カ ヤ翰ヘャO・]b E|ーqh g1$<テ・9質8ハタ変€コミ.x゙狭an・・・・」

 半分無意識のうちに文字化けした文を声に出して読んでると、突然、座布団を布団たたきでブッ叩いたような音がして、キーボードとディスプレイの間にオレンジの煙が一瞬充満したんだ。あまりに突然のことで、身動きも出来なかったけど、その時は、コンピューターが爆発しちゃったのかと思ったよ。煙が薄まると・・・、信じてもらえるかな・・そこには、何と言うか・・、妖精がいたんだ。

 そいつは、ディズニーのピーターパンみたいな感じの、緑の服を着てた。違うところといえば、靴の先が長く鋭くて上に曲がってるんだ。身長は15センチから20センチぐらい。髪は藁みたいな色で、紺色で大きめの帽子を被ってた。顔にはそばかすか、ニキビみたいなボツボツがあって、あごはヒョロっと髭が生えてた。そいつが、両手を腰に当てて、片足に重心を置いて、こっちを見てたんだよ。いや、ホントに。

「オイラを呼び出す奴なんて久しぶりだな。ボウズ、どこで召喚呪文を手に入れたんだ?」

 なんか、「ドラえもん」に出てくるスネ夫か、ボブ・ディランが、ヘリウムを思いっき闍zったような声で、そいつは言った。

「ちょっと、待ってな、自己紹介だ・・・ゴホン!」

 そいつは帽子をとって咳払いをすると、タップダンスみたいなのを踊りながら、歌いだした。

「・・タラーン! オイラはピンプル・ディンプル・フレックルス・ポボロ・デポロ・マルコ・ハンス・デル・ボスケ・クリソバランティス 森の木陰でタッションベ~ン 偶発性を司る、悪戯好きな哲学者 魔法の力で、ろくでもないことし~まく~る~ぞ~」

「ちょっ・・ちょっと待って、あの、まだ、事態がよく飲み込めないんだ。その・・パソコンやりすぎで目が疲れてるってこと?」

「なんだよ、オイラの踊りを止めやがって、この、くされチンポ!てめえがオイラを呼び出したんじゃないか!」

「ええっと、エスケープを押せばいいのかな・・」

「オイラの話を聞け!」

 ブォンッ って鈍い破裂音がして、僕が触ろうとしてたキーボード全体を葡萄か何かのツタが覆った。・・・僕の目が疲れてるってわけじゃないらしい。頭かも・・・。なんか、あまりの非現実的な出来事に、僕はもう、どうでもよくなっちゃったのかもしれないね。

「・・ええっと、まあいいや。・・・君の話を聞くよ。」

「よし。まずは、オイラを召喚する呪文なんて、どこで見つけ出した?魔法の解析かなんか成功したのか?それとも、どっかの吟遊詩人の碑にでも刻まれてたのか?」

「いや、その、偶然・・コンピューターの文字化けした文章を読んでて・・」

 そいつは、深く被った帽子のひさしをぐいっと上げて、僕を見上げた。

「偶然?なんてこった。ウン百年ぶりに東洋で召喚されたと思ったら、偶然かよ!・・・まあ、偶然こそオイラたちの本質だけどな。・・神々の気まぐれ、運命の忘れ物、時と秩序の落し物・・真の自由だ! タラーン! オイラはピンプル・ディンプル・フレックルス・・・」

「ちょっと、待ってよ! いきなり踊りださないでよ。それじゃあ、妖精って本当にいたんだ。」

「二度も、オイラの踊りを止めやがって。まあ、とにかく、呼び出された以上は何か願いを聞いてやる。ほらっ・・ボウズの願いを言え!」

「いきなりそんなこと言われても・・・しばらく考えさせて。」

「なに言ってやがんだ。願いなんてすぐにでも出るだろうが。腐るほど黄金が欲しいとか、王様になりたいとか、美人の奥さんが欲しいとか。」

「突然物凄い大金持ちになったら税務署に怪しまれるよ。立憲君主制とかもややこしそうだし絶対王政なんてなおさら・・奥さんは美人でも性格が合わないと、返って不幸せになるし・・。」

「馬鹿かてめえは!何をそんな夢のないこと言ってんだ。・・・大体な、オイラたち一族にだんだん元気がなくなってきてるのはな、人間が想像力を働かせなくなってきてるからだとオイラは睨んでんだ。このコンピューターって奴にしたってそうだ。こいつは情報を丸写しして伝えることは馬鹿上手いくせに、物語を伝承するってことはあんまりしねえ。大体、最近の若いモンは・・ってなんでオイラがてめえにこんな愚痴を言わなきゃならねえんだ!早いとこ願いを言わねえとてめえの眉毛を毛虫に変えるぞ!」

「わぁっ、だから、ちょっと待ってよ。そんなこと突然言われたって、急に一つだけの願いとか聞かれたら、誰だって困るよ!」

 すると、ピンプル・ディンプルなんとかっていう妖精は、ディスプレイにもたれかかって、眉をしかめてあご髭をなぜ始めた。なんだか突然性格が変わったみたいに考え込みだしたんだ。

「そいつぁあ、あれだな。世の中全体の想像力と夢の欠如ってぇヤツだ。てめえらみたいな寿命のある生き物は、本来その寿命ゆえに物語を紡ぎ出して次の世代に伝承していく能力があった。その物語の中で語られることによって、オイラたち、魔法の存在も存在意義を与えられて、力を強めることが出来たわけだ。そこの循環が、てめえらが合理性だの科学だのに偏りだした辺りからどうも・・・ふむ、まあいい、難しい話はオイラの性に合わねえ。ここは一つ、ボウズに現実的な考えなんか吹き飛ぶぐらいの力を与えて、新しい、物語の紡ぎ手になってもらおうじゃないか。おい、ボウズ!今からてめえを魔法使いにしてやる。白魔術を覚えたいか?黒魔術か?」

「えっ・・えぇっと・・」

「優柔不断なボウズだな・・さっき、オイラがくる前に、てめえは何をしようとしてたんだ?そこに、ダイオニシスの宴に参加したほどのオイラを。てめえと結びつけるまでの力が働いてたんだよ。常人にはないような力だったはずだ。それが「七つの三つ編み」の女神ちゃんを介してオイラまで届いた。」

「えぇっと、画像を見てた。」

「何のだ。」

「その・・エッチ画像」

「おう、むっつりスケベか、てめえは。まあ、だったら話は早いぜ。ピンク魔術だ。てめえはピンク魔術師になるんだ。いいな。」

「えぇ! ピンク魔術?・・うぅん、その魔法を覚えると、エッチなこととか出来るの?修行とか、辛くないなら・・いいよ。」

 っと言うようなわけで、僕はそのピンプル・ディンプルなんとかって妖精からピンク魔法っていうのを習うことになったんだ。彼はその見返りに、ギネス・ビール1ダースと、僕のその後の色んな体験を物語にして、どこかで不特定多数の人たちに伝えるように僕に求めた。僕がこの話をここのサイトに乗っけたのは、実はそういう理由があったからなんだ。

 さて、それからすぐに、彼(「ピンプル」でいいんだってさ)は僕に魔法の教授を始めた。
「まあ、オイラだって妖精だ。神さんたちの法則を、ちょっとごめんなさいよっとばかりに、ひん曲げる程度のことしか出来ねえ。ボウズにもそんな大それた魔法を教える訳にはいかねえが・・、まあ、シャボン玉飛ばせれば、色んな願いがかなうはずだ。よし。」

「シャボン玉?そんなの、誰だって飛ばせるよ。」

「オイラの言ってるのは、ピンク魔術の初歩にして最も頼りになる魔法。『ノーティー・バブル』のことだ。まず、てめえ、ストローなしで、口でシャボン玉作れるか?こんな風に・・」

 ピンプルは器用に口で唾の風船を作った。

「無理だよ。」

「だったら、それは普段練習しとくことにして、今はストロー持って来い。ちゃんと先を上手に切って、シャボン玉作れるようにしとけよ。」

 僕が一階に降りて、サスペンス劇場を見入ってる両親の目を盗んで台所からストローを持ってきたら、ピンプルは手に、茶色い小瓶を持っていた。

「まずは、この瓶の薬を飲むんだ。」

「え・・そこにストローを入れて、シャボン玉作るんじゃないの?」

「黙ってさっさと飲めよ、このくされチンポが!」

 薬は、石鹸に酢とドリアンを混ぜたような、最悪の味がした。僕が涙をこぼしながらその薬を飲み干すと、ピンプルは満足気にうなずいた。

「よし、これでてめえの胃の中には永久にシャボンの素が蓄えられた。あとは、吹くだけだぜ。」

 そう言われれば、胃の中でさっきの薬が溜まってるような感触がある。

「ピンク魔術ってそんなに手軽なの?」

「手軽に凄い力が手に入るから魔法なんだよ、ボケ! ストローで吹いてみろ」

 猫よりちっちゃい小人に、口汚く罵られながら、僕はストローを咥えて、シャボン玉を作った。ピンクのシャボン玉が、ふわふわと部屋を漂う。普通のシャボン玉よりも、はるかに壊れるのが遅いみたいだ。

「よし、じゃあ、人体実験だ。」

「えぇ、もう?」

 僕はうるさい妖精を肩に乗せ、階段を降りて、再びリビングに到着。開いたドアに隠れながら、テレビを見ている両親を確認した。

「いいか、何を考えさせたいのか、何をさせたいのか、はっきりと考えながら、ノーティー・バブルを膨らませるんだぞ。飛ばす時には誰に当てるのかちゃんと意識しろ。後はバブルが勝手に相手の頭を追跡して、当たって壊れる。そうすりゃ、そいつはその通りに行動するぜ。」

 よーし、こうなったら、こいつの言うことを信じて、母さんに、僕の小遣いを増やさせてやる。

『母さん、僕の小遣いを増やしなさい、いますぐ増やさなくてはいけませんよ。』プ~ゥゥゥ

 出来たピンクのシャボン玉は、最初は全然見当違いの方向に、じきにゆらゆらと、ソファーでテレビを見ている母さんの方向に向かってゆっくりと漂っていった。頼りなく揺れていたシャボンが、ようやく母さんの頭上で止まる。そして母さんの頭に当たって弾けると、母さんは、眠気を覚ますかのように頭を軽く左右に振って、辺りを見回した。ところがその後、母さんは、僕の期待とは裏腹に、突然席を立って、電話機のダイヤルを回し始めたんだ。父さんが新聞を下ろして、母さんに聞く。

「どこに電話するんだい?今ちょうど、犯人が分かるところじゃないのか?」

「それどころじゃないのよ。実家に電話しなきゃいけないの。」

 なんだか、悪い予感がする。ピンプルを見た。

「おい、ボウズ、てめえ、どういうふうに考えてノーティー・バブル膨らませたんだ?」

「え、・・『母さん、僕の小遣いを増やしなさい』って・・」

「違うんだよ。相手に考えを植え付けるんだから、相手の立場に立った考えを作るんだよ!ほら、見ろ。」

 母さんは電話越しに、おばあちゃんと話しているようだった。

「母さん、だから言ってるでじゃない。僕・・私のお小遣いを増やしてよ。今すぐよ!・・え?・・うん・・うん・・・。だから、そんなの関係ないでしょ。とにかく母さんは、僕のお小遣いを増やさなきゃいけないの!」

 父さんがあせって、間をとりなそうとするが、母さんは受話機を離そうとせず、おばあちゃんに、もともと貰ってもいないお小遣いのアップを要求していた。どうやら魔法って、注意しないと厄介なことになるみたいだ。

 その夜はほとんど寝ないで、ノーティー・バブルを使いこなす練習をしたんだ。おかげで、次の朝の辛いこと・・・。まだ眠い目をこすりながら、学校に向かうバスに揺られてる僕の右肩には、しばらくこの世界に居座ることに決めたピンプルが乗っかってる。彼や魔法の多くは、望まない限りは一般人には見えないんだってさ。そのピンプルが、僕の耳たぶを引っ張った。

「おいボウズ、オイラをその辺の、自然のあるところで降ろしてくれよ。」

 僕は周りに気を使いながら、小声で話す。

「え、僕と別行動とるってこと?」

「そうだよ。オイラは一日のうちの決まった時間、草いきれの中でで寝そべったり、でかい木の下でオカリナ吹いたりしてねえと、調子がでねえんだ。あとは適当にこの街のことだの色々調べときたい。ボウズは夜に教えた魔法で、上手いことやってきな。」

「えぇっ、そんなこといきなり言われたって、まだ使いこなせるかどうか自信がないよ。」

「大丈夫だ。シケた面してんじゃねえよ。心配だったら、学校行く前に実験しとけばいいじゃねえか。ほら、このバスの中にチョメチョメしたい奴とかいないのか?」

「チョメチョメって古いよ。・・・・あっ、菅井だ。」

 通学バスだから、キョロキョロしてみるとクラスメイトがすぐに見つかった。真面目で勉強がよく出来る、菅井紀美子だ。さすがは優等生、まだ始業時間よりも随分早いバスなのに、キリっとして乗ってるよ。長いストレートの髪を耳にかけて、本なんか読んでる。なかなか可愛い。それに比べると、僕がこんなに早いバスに乗ってるのは、もう少し寝ちゃうと起きれなくなりそうだったからだし、目の下にはクマ、胸ポケットにはシャボン玉用のストロー、おまけに肩には妖精まで乗せてる(見えないだろうけどね)。ほとんど馬鹿だ。こんな僕が菅井に声かけてもなぁ・・・。でも、お堅い菅井にヘンなことさせれるんだったら、きっと誰でも操れちゃうってことになる。やってみようかな・・とか菅井を見てたら、なんと目が合っちゃった!やべっ・・視線ってホントに感じるモンなのかな。あらっ、すぐに目をそらされちゃった。くやしいから、実験を決行しよう!短めに切ったストロー咥えて、

 プゥゥゥーゥウッ
『さっきクラスメイトの草野君と目が合ったのに、そらしちゃったか・・もうしわけないから、ウインクしてあげよう』
 フワフワフワ

 ノーティー・バブルがバスの後ろの方に立ってる菅井に向かって、ゆっくり飛んでいく。菅井の頭に当たって弾けると、菅井は本から顔を上げて、こっちをまじまじと見た。そしてなんと、少し微笑んで、ウインクしたんだ。

「ほら見ろ、あのお嬢ちゃんも、お前の思い通りさ。」

 ピンプルが胸を張る。よ~し、次のバブルだ。

 プゥゥゥーーー・・・
『今日は、学校で服装検査があるかもしれないから気をつけなきゃいけないわ。・・あれっ?確か、下着って校則違反じゃなかったかしら?しまったわ、せっかく真面目にしてるのに、校則違反で捕まったら、私の進路が狂っちゃう!こうなったら、草野君に相談して、私の下着を今日一日、預かってもらうしかないわ。』 ・・ゥゥゥウッ
 フーワ フーワ

 息が切れそうになったよ。相手に与える暗示が長いほど、シャボン玉も大きくなるし、息も続かせなきゃいけない。今のは、ちょっとだけ大変だったな。でも、そんなこと考えてる内に、ストロー咥えながら、はぁはぁ言ってる、はっきり言って怪しい僕のもとへ、思いつめたような表情の菅井がやって来た。

「草野君、おはよう。あの・・ちょっと相談があるんだけど、いいかしら?」

「菅井か、おはよう。どうしたの?」

「あのね、・・・ここではちょっと。その、二人だけで・・でも、あの、誤解しないでね。別に二人でって、そういう話じゃないの、ただ・・ちょっとね・・・。」

「何かよく分からないけど、次の、章花池公園で降りようか?」

「う、うん。お願い。」

 左肩に跳び移ったピンプルは、うつむいている菅井の髪をかきあげて耳に向けて大声を出す。

「あんたエッチなことされちゃうぜ。このボウズは超高校級むっつりスケベなんだよ、ヘヘへ。」

 菅井は全く反応しない。ピンプルとシャボン玉を認識できるのはホントに僕だけみたいだ。バスが止まった章花池公園前で、僕らは降りた。口笛吹きながら跳びはねてったピンプルとは、別の方向に僕らは歩いた。この公園は、結構大きくて、ジョギングするひとや、体操してる人とすれ違う。水のみ場も過ぎて、人気のないところまで来ると、菅井が口を開いた。

「あのね、こんなこと、しかもほとんど話したことが無い、草野君に頼むのって凄く変だと自分でも思うんだけど、私の・・下着を預かって欲しいの。」

「はぁ?」

「あの、ほらっ、今日、持ち物検査があるかもしれないでしょ。・・・それでよ。」

「・・・。なんか、よく分からないけど、預かってほしいってんなら、預かるよ。」

「本当?よかった。ちょっと待っててね。」

 これで安心って感じの菅井は、トイレの方に走ってった。僕は、慌てて小さなバブルを飛ばしたんだ。そいつはやっぱり、のんびりと菅井の後頭部を追いかけてった。あれで、走ってる菅井に追いつくのかな?

 菅井が戻るのを、手持ち無沙汰に待ってる僕の前を、上品なマダムって感じの若奥さんが、いかにも高そうな小型犬を連れて通り過ぎる。朝早くからの犬の散歩なのに、化粧を欠かしてないところはさすがだ。そこでふと思いついたんだ。魔法だったら、動物にも効くのかな?僕は試しに、女の人と犬に、一個ずつノーティー・バブルを飛ばしてみた。

 プゥゥゥーゥウッ  プゥゥゥーゥウッ
『何だかアソコを犬に舐めさせたくてしょうがないわ。もう我慢できない!』
『ご主人様の後ろ足と後ろ足の間を、丁寧に舐めたいワンッ!』
 フワフワフワ

 すると、ツンとすました顔で歩いてた奥様と犬が、突然お互いに探り合うように見つめあった。その後、若奥さんは血走った目で周りを見回して、犬を抱きかかえて茂みの中に入ってっちゃった。どうやら、犬にもこの魔法は効いたみたいだね。

 僕が奥さんを追っかけようかと思ったその時、菅井が戻ってきた。ちょっとタイミング悪いなあ。でも、彼女が握り締めていた白い布にはスッゴイ興味をそそられたよ。

「これ、お願い。」

 彼女は僕の顔を見ようせず、真っ赤になった顔を伏せたまま、そう言って右手を突き出した。よっぽど恥ずかしいみたいだね。

「はい、確かに。」

 何だか僕も神妙に受け答えをしちゃった。菅井は、まだもじもじしてる。・・・さっきの小さなシャボン玉がちゃんと追いついたのかな?

「まだ・・・。えぇっとね・・、ブラも外さなきゃと思ったんだけど、何って言うか・・、外し方が分からなくなっちゃって、その、いつもはそんなこと、絶対にないんだけど、今日は、なんでかしら、あせるほど分かんなくなっちゃって・・・草野君、手伝ってもらえないかしら?」

 目に涙まで浮かべてお願いされちゃあ、男として手伝わない訳には行かないよね!緊張でこわばる菅井の背中をそっと押しながら、木々が人目をさえぎってくれるところまで入り込んだんだ。彼女は何度も躊躇しながらも、僕に背を向けて、グレイのブレザーを脱いで、チェックのネクタイを外した。カッターのボタンを外していく彼女の両肩が(これが細くて可愛いんだ、また)小刻みに震えていた。男にブラジャーを外させるなんて、初めての経験なんだろうね。僕にしたって、ブラ外すのなんて始めてさ。

「お願い・・します。」

 言われて、彼女の背中に近づいていく。僕の足が一歩、草を踏む音を立てる度に、彼女の華奢な肩がすくむ。間近で見ると、女の子の背中ってスベスベしてて、いいなぁ~。うなじの辺りの、未処理の産毛も初々しくていい。ブラのホックにそっと手を伸ばす頃には、僕の指先も緊張で震えてきちゃったよ。

 プチッ

 ホック外すのは、あっけないほど単純だった。これじゃぁ普通は、付けた人が外し方を忘れちゃうなんてありえないな。ピンプル様とノーティー・バブルのおかげですって訳だ。交互に肩紐を腕から降ろす仕草に僕が見とれてる内に、菅井はこちらに背を向けたまま、右腕を胸に当てて、左手で背後の僕にブラを手渡した。優等生菅井の真っ白なブラジャー・・・嬉しい。だけど、もうちょっとだけ欲を出してみよう。映画の主人公がタバコを口にするみたいな仕草で、すかさずストローを咥え、ゴルフボール大のちっちゃなノーティー・バブルを菅井の後頭部に吹きつける。一瞬背筋がピンと伸びて、すぐに菅井は反応した。

「つ、・・ついでだから、胸の揉み心地も確かめてよ。校則違反になってない?」

 声が裏返ってる。でも魔法はしっかり効いたみたいだ。

「でも、前は見ちゃ駄目、そこから動かないって約束して。・・・ごめん、私がお願いして、やってもらってるのに・・・でも本当に死ぬほど恥ずかしいの。むこう向いてて。」

 彼女なりに、必死で戦ってるみたいだ。しょうがないから顔を横に向けて、両腕を彼女を彼女を囲うようにして前に出すと、彼女の両手が、僕の両手を胸までリードしてくれた。

 ムンニュッ ムンニュッ

 スッゴイ気持ちいい!菅井のおっぱいはまだ小さくて、手のひらサイズだけど、それはそれで、こういうシチュエーションには両手にキッチリ収まって便利だ。(誉め言葉になってない?)僕の荒くなった鼻息が、身を固くしてこらえる彼女の、首筋にかかってしまう。

「うっ・・・く、草野君・・・ん・・あの、こう言い方って・・・あ・・すごく失礼だと・・・んん・・思うんだけど、・・これって、・・ぁっ・・・そういうことじゃないからね。・・・ただ、・・校則違反になると・・駄目だから・・ん・・こうしてるだけだから、・・・はぁん・・・勘違いしたり・・しないでね。ひどい言い方で・・・ごめんなさいね。」

 ・・・まあ、何だっていいよ。ぁああ、前に回りこんで、見てみたいなぁ!そうするのは簡単なんだけど、それやっちゃうと止まらなくなっちゃいそうだからなぁ・・・僕にだって、最初にヤルのはこの娘がいいって、お目当ての娘がいるんだ。菅井とは今日はこの辺までにしとこうかな。まだ学校にも着いてないんだから。

「まあ、この位の揉み心地なら、セーフだと思うよ。違反にはならないはずだよ。」

 何がどう、セーフなのか、自分でも言ってて訳分かんないけど、菅井は勝手に解釈して納得したみたいだ。ホッとして僕から離れ、カッターを着始めた。だけど、さっきの『勘違いしないで』って言葉にちょっとだけムッときたので、最後に一発ノーティー・バブルを作ることにする。

 プゥゥゥーーー・・
『まだ体が火照ってるから、草野君には丁寧にお礼を言って、別れた後、トイレでオナニーしよっと。もしオナニーの仕方が分からなかったら、今の内に草野君に聞いておけばいいわね。それから私が彼と別れた後は、絶対に草野君に会ったことも忘れちゃうわ。私は今日、公園のトイレでオナニーをするために、下着をつけずに来たんだから』
 ・・・ゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウッ!

 今までに作った中で一番でかいシャボン玉が、彼女にぶつかった。菅井は僕に深々とお辞儀をした。

「草野君、今日は本当にありがとう。おかげで先生方に叱られなくてよくなったわ。私はこの後も用事があるから、ここで別れましょう。それでは教室で・・。」

 にっこりと微笑んで、トイレの方へ駆けていく彼女を見送りながら。肺を限界まで使って、へとへとの僕はぼんやりと思った。服装検査はいいけど、この調子だと遅刻して叱られるぞ、菅井。

 菅井の下着をカバンにしまいこんで、さっき降りたバス停まで戻ろうと少し歩いた僕は、ふと、レンガ道の反対側の、つつじがたくさん生えているところから、こもった喘ぎ声が聞こえてくるのに気がついた。そうだ!思い出した。もしかして奥さんとワンちゃんが・・・

 茂みの中に入り込んで覗いてみると、いたいた。お上品そうな若奥さんが、股をおっぴろげて飼い犬に舐めまくられてたよ。近くにはパンストと、これまた高そうなシルクのパンティーが、無造作に放ってある。奥さん(20代後半か30ちょい、ってとこかな)は大声を出さないように、必死に自分の口を手で押さえながら、よがってたんだ。まだやってた訳だ。魔法をかけられたとはいえ、朝っぱらからよくやるよね。

 もちろん彼女が、口を押さえずに大声で喘ぐように、シャボン玉を飛ばして、僕は再び、バス停に向かって歩き出した。今朝の実験は全て成功だ。早く学校に行って、色んなことをしちゃおう。こんなにワクワクしながら学校に行くのも、小学校の遠足以来かもしれないな。今日は雲一つない、絶好のピンク魔術日和だ。いろいろやっちゃうぞ~!

< 第2話へ続く >

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