僕らの発信基地 5話

 2年3組の学級委員、松倉侑李には最近、気になることがいくつかあった。学校にいる時は変だとも思わないのだが、放課後、塾に行くと気がつくことがある。他校の生徒と同じ塾のクラスにいると、自分たちの学校の授業の進度が少しずつ遅れているのだ。昼間はそのことに気がいかない。別に授業をサボったり、中断しているようなつもりもない。以前だったら、教育熱心な棚岡先生を筆頭に、他校よりも授業の進度が早かったはずのうちの学校が、いつの間にか少しずつ、他校よりも遅れている。けれど松倉ユウリに思い当たる節はなかった。それが不思議と言えば不思議だ。

 その話を何となく、クラスメイトで席が近い葛城ツトムにしてみたことがある。彼はあからさまに「しまった」という顔をしながら、「………委員長の気のせいじゃないかな………。ははははは」と答えた。何か知っているような気がして、さらにツトムに聞こうとしたところで、ユウリの頭の奥に、痺れというか、疼きのようなものがビーーンとやってくる。この感覚は、どこかで繰り返し、経験したことがある気がするのだが、思い出せない。静電気が頭の奥の一点に集まってくるような、ゾワゾワとする感触。その不思議な感覚が強まると、ユウリは他のことが考えられなくなる。そしてただ一つ、今、ユウリがしなくてはいけないことを強く、頭に思い浮かべるようになる。うまく思い出せないけれど、この感覚を、ユウリはこれまでも何度も味わってきた気がする。

「あの………、委員長。…………さっきの、話の続き………しなくて大丈夫?」

 こわごわ、ツトムが聞いてくる。

「う………ん・。……ゴメン、葛城君。話はやっぱり、後にしよう。………今は、裸のお付き合いの時間だから」

 学級委員長の松倉ユウリが真剣な顔で答えながら、少し恥ずかしそうに制服を脱ぎ始めると、ツトムはやっと安心したような溜息をついた。

 ユウリはというと、とても安心するような心持ちではいられない。何しろ、思春期の少女が、男子たちの前で裸を晒さなければならない時間なのだ。クラスメイトとはいえ、親しい男子もいれば、そうでない相手もいる。学級委員長としては、出来るだけみんなに対して平等に接するべきなのだろうが、それでも誰彼構わずに裸を晒し合わなければならない時間、それも、誰に体を触られたり弄られても、拒めない時間というのは、やはり年頃の女の子にとっては、安心できる時間ではなかった。

「ツトム………、委員長と話してる時の顔が、なんかヤバそうだったけど、大丈夫?」

 シャツより先にスカートを降ろしたユウリのお尻を、ショーツ越しにペタッと触りながら、ユウリの隣にいるツトムのところへ歩いてくるのは、眞知田シュント。お尻を触られた学級委員長は、「むっ」と声を漏らしたけれど、体を硬直させるだけで、抵抗はしない。抵抗だけは絶対してはいけないと、彼女の心と体が、真面目な学級委員長である松倉侑李自身に教えてくれるのだ。

「ちょっと、ビビった。さすがは委員長、こんなとこ、突いてきたんだよね………」

 ツトムがシュントの耳元でボソボソと喋り始める。ユウリは興味を覚えて、耳をそばだてる。自然に、制服を脱ぐ手の動きが遅くなった。

「…………サボっちゃ駄目だよ、委員長」

 シュントが目ざとく、聞き耳を立てているユウリの様子に気がつくと、手元の『何か』を触る。すると途端にユウリの心の底から、焦燥感のようなものが溢れ出て来て、ユウリは服を脱ぐ手に力を入れる。気がつくと、白のワイシャツの前の部分を思いっきり左右に開いて、ボタンをいくつも飛ばしてしまっていた。『裸のお付き合いの時間だから、脱がないと』という、義務感と言うか使命感のようなものが、彼女の心の中で何倍にも膨らんで、松倉ユウリを駆り立てる。学級委員だから皆の見本にならないと、という彼女の真面目な思いも加わり、気がついた時には、服も下着も若干乱暴にひっぺがしながら、机の上に登って脱いでいた。

「み………みんなっ。裸のお付き合いの時間ですよっ。次の授業が始まるまで、あんまり時間が残っていないから、急ごうねっ」

 上履きと靴下を残して全裸になったユウリは、ギコチない笑顔でクラスメイトたちに呼びかけると、2年3組の生徒たちのなかで率先するようにして、机を降りて、近くの男子にハグをする。今、彼女の間近にいたのは、葛城ツトムだった。彼の頬っぺたにキスをして、胸元に自分のオッパイを押しつける。この教室の中で、ツトムとシュントだけは制服を脱いでいない。もしこれが他の生徒だったら、ユウリは学級委員長として、注意していたと思う。『裸のお付き合い』の時間は、皆が守るべき、ノーガードのスキンシップタイムだ。けれど、シュントやツトム。あとついでに言うと、2-1の丹波ミツル。彼らは何というか、『特権グループ』なので、こうした学校の活動や校則といったものに、縛られなくても良いのだ。一応、ユウリはシュントの両手をとって、自分のオッパイまで導いて、胸を自由に揉ませる。ツトムが嫌がっていないので、次に彼の手をお尻に、そしてユウリの大事なところにと導いて、ユウリの体のことをよく知ってもらう。けれど、これは今、ツトムが嫌がる素振りを見せないから続けていることであって、彼が少しでも嫌そうな顔を見せたら、ユウリは直ちに、次の男子のところへと向かうつもりだった。それが、『特権グループ』に許された、特別なポジションだ。

「………じゃ………、一応、放課後に特別補修クラスみたいなものもセットしてもらって、僕らの遊びとか実験に付き合ってもらった分、授業の遅れを取り戻せるようにする?」

「そうすると、今度は放課後の部活とか習い事とかに影響が出るから、そこも注意しないといけないよね。………だったら、僕らが昼休み中、遊びに付き合わせてないクラスは、そこで補修させるとか。………あと、2-3とかばっかりで遊ぶんじゃなくて、うまく他のクラスを平等に巡回して、遊ばせてもらうとか………。もうちょっと計画的にやらないといけないってことじゃない?」

「…………面倒くさいな………」

「しょうがないよ。………それとも、市内の別の学校も満遍なく巡回して操縦する? ………別にそれでもいいけど………」

 近くでシュントとツトムが話しこんでいる間、ユウリはツトムと、そして次にシュントに、何も着ていない裸の体を押しつけて、ハグしたり両手をオッパイや柔らかい部分に導いて、自分から触らせたりと、スキンシップを図っていく。真剣に話しこんでいる様子でいながらも、ユウリの「お誘い」を拒まないあたりは、彼らがエロ男子であることの証明のようだ。あるいは、顔も可愛くてスタイルも良いと言われている、学級委員長の体が魅力的な証拠なのかもしれない。

「ま、………とにかく、調子に乗って遊びすぎんな、ってことだよね? 気をつけるよ、僕も」

 シュントはそう言った後で、ツトムの顔を向いたまま、手だけユウリのお尻をムギュっと揉んだ後、ペチンとお尻の頬っぺたを叩く。ユウリは急いで「回れ右」をして、他に手の空いている男子を探して駆け寄っていく。お尻を叩かれたら、次に行けという合図だ。恥ずかしいし、気まずいし、自分の体がモノみたいに扱われている気がする時もあるので、松倉ユウリはこの『裸のお付き合いの時間』があまり好きではない。それでも、中学生にもなって、好き嫌いだけで行動している訳にもいかないのだ。そう思いながら、ユウリは嫌な顔を見せず、出来るだけテキパキと、そして楽しそうな素振りで、次の男子とのスキンシップを取り始めた。

。。。

 移動教室の時間だ。2-3の教室を出て、3Fの音楽室まで歩いて行かなければならない。藤野京佳は、音楽の教科書とアルトリコーダーを準備すると、テキパキと制服を脱ぐ。本来はオットリとした性格のキョウカだが、移動教室の時にノンビリしていると、皆を待たせてしまうことになる。そう思うと、お友達とお喋りしながら脱いでいくわけにもいかなかった。

「みんな、準備出来たねー? 出発するから、列作ろー」

 学級委員長の松倉ユウリちゃんは、ルックスは華やかだけど、性格はとても真面目だ。リーダーシップもあるので、2-3の女子たちにビシッと声をかけてくれる。キョウカはそんなユウリちゃんを困らせないように、裸になったあとで急いで列に並んだ。背の順で並ぶので、小柄なキョウカは前から4番目だ。本来だったら、合唱部の藤野キョウカにとっては音楽室は、過ごし慣れたリラックス出来る場所のはずなのだが、そこまでの道のりのことを考えると、少し気が重い。2-3の女子生徒たちは移動教室の際の廊下の歩き方が決められているからだ。

 上履きと靴下を残して、全裸になったキョウカたちは背の順に一列に並ぶと、両手を伸ばして前に立っている女子の体を左右から腕で囲うようにして、脇からオッパイに手を回す。そして下から支えるようにして、オッパイを持ち上げる。自分自身にも脇から、後ろの女子の手が伸びて来て、オッパイを持たれる。女同士とはいえ、直にオッパイを触り合ったりするのは、抵抗がないわけではない。ましてや、音楽室までの歩き方まできっちり決められていることは屈辱的にも感じられた。

「はい、右足から行きまーす。1、2、1、2、1、2、ドア開けまーす。1、2」

 委員長のユウリちゃんの号令に従って、右足、左足と、女子生徒たちの行列が同時に足を進める。そして一歩踏み出すごとに、前の女の子のオッパイをムニュっと揉む。同時に自分のオッパイも後ろの女の子に揉まれて変形する。その様子を、教室や廊下にいる男子たちに凝視されるのが、すっごく恥ずかしかった。胸が大きくて後ろの子の手のひらに収まりきらないような子もいれば、揉まれてもほとんど変形しないくらいの微乳の子もいる。そんな自分たちの体の情報を学校中に晒しながら歩いているような気分になるし、歩いている途中に胸の刺激のせいで頭がボーっとしてきてしまう。そんな時、隠そうと思っても、キョウカたちはなぜか、気持ちの良い反応を押し殺すことが出来ないのだ。部活の下級生の男子と廊下ですれ違う時など、自分の裸も隠したいし、今、後ろの女子にオッパイを揉まれて感じているということなど、絶対に隠し通してやりすごしたい。それなのに、キョウカもクラスメイトたちも、どうしても喘ぎ声を抑えることが出来ないし、憎らしいくらいツンっと立ち上がる自分の乳首を隠すことすら出来ないで、学級委員の掛け声に合わせて、みんなでオッパイを揉み合いながら足を揃えて歩いかなければならない。今、キョウカがオッパイを揉んでいる、前を歩く青砥セイナちゃんがハッと声を潜める。見ると、さらに前方から、歴史の湖川先生が歩いてくる。顔を背けようとするセイナちゃんの反応を見ると、きっと彼女は湖川先生のことが少し好きなんだろう。本当はセイナちゃんの小ぶりなオッパイをこれ以上責めることは、先生から見えなくなるまで、止めておいてあげたい。それでも、キョウカの手は、容赦なくセイナちゃんの、可愛いオッパイを捏ね繰り回すことを止められない。セイナちゃんは肩まで赤くなりながら、アンアンと可愛い声でよがり鳴いていた。

「みんな、眞知田たちを追い越すよ。………気をつけて………」

 クラスのリーダー。ユウリちゃんがこそっと声をかけてくれる。キョウカはおかげで、腰に力を入れて、心の準備をすることが出来た。

『行列がシュントやツトム、ミツルの近くを通る時は、乳首を摘まんで、思いっきりイキながら、進むこと。性感も5倍になって、感じまくる』

 という、誰に教えられたのかも思い出せない、命令というか予言みたいなものが、キョウカたちの頭に思い浮かぶ。そうしたくはなかったけれど、今でもヒイヒイ鳴いているセイナちゃんの乳首を、キョウカは摘まんで捻る。キョウカの乳首も、後ろの子にイジメられる。痛さと気持ち良さとで、クラスメイトたちは皆、悶え狂って喘ぎ鳴きながら廊下を進む。以前に、丹波ミツルという天パのキモめの男の子から、キョウカたちが体育館に移動する途中に撮られた写真を見せられた。口をだらしなく開けて、半分白目をむきながら嬉しそうに涎を垂らして、イキながら歩いている自分の顔写真を見た時には、キョウカは恥ずかしさと情けなさとで、卒倒しそうになったほどだ。

 真っ白に飛びかけていた目の前の視界が、ゆっくりと戻ってくる。シュント君からだいぶ離れたところまで歩いてきたようだった。少しずつ正気を取り戻しながら歩くキョウカは、自分が足を進めるたびに、股間からポタポタと、液体を垂らして前進していることに気がつく。何回イッタのか、覚えていない。けれど内股の感触からすると、自分は今、恥かしい液を垂らしながら歩いているようだった。

「藤野、もうちょっとで音楽室だよ。頑張れっ」

 クラスの男子が、声をかけてくれる。そして追い越しぎわにキョウカの脇腹をムニッと摘まんでいく。教室で隣の席に座っている、甲斐野君の仕業だ。お腹のお肉を摘まんだりしなかったら、励ましてくれたお礼くらい言ってあげても良いのに。男子はやっぱり、余計なことばかりしてくる存在だ。それでも文句が言えないのは、音楽の授業の準備と、女子たちが脱ぎ捨てた制服や下着は、クラスの男子たちが持って歩いてくれているからだ。この子たちにイタズラの理由を与えてしまった日には、スカートや制服を「うっかり」持って来るのを忘れられたりする。そうしたら、半裸で授業を受けなければならないのは、女子たちなのだから、あまり強く当たる訳にはいかない………。不公平なルールは他にも沢山あるけれど、そんなルールには逆らってしまえば………と思ったとしても、キョウカたちの心と体が、自然とそうしたルールの一つ一つに、自分から従順に従って動いてしまうのだから、どうしようもないのだ。キョウカたちの頭の中に、何かビーンと痺れるような感覚が走った時には、もうキョウカたちがどう思おうと関係なく、心と体は誰かの指示通りに動いている。そんな日常が定着しつつあった。

 そしていっぺん、抵抗を諦めてみると、意外と楽な面もある。つまらない授業や今日にの持てない勉強も、ツトムが手で合図をすると、キョウカたちの意識と体は、機械的に粛々と勉強に向かったし、自分がコンプレックスを感じていた体の部分なども、繰り返しクラスや学校の男子に見られているうちに、悩んでいることが馬鹿らしく思えてきたりもした。別の中学に通っているキョウカの友達は、初体験が早いとか遅いとか、性の悩みを秘かに抱えてモンモンとしている子も多かったが、キョウカのクラスメイトたちはまとめて初体験を済ましたグループもいたし、秘密が秘密にならない事情が色々とあった。そんなこんなで、気持ちが良いことと恥ずかしいことを両面加味して考えると、キョウカの学校生活は、最近おかしな方向に迷走しつつも、プラマイでとんとんといった気もしていた。けれど、「特権グループ」でもないクラスの男子に、お腹の肉を摘ままれるのは、やはりちょっと嫌だと思いなおすのだった。

。。。

 棚岡律子は教師になってまだ4年目だが、生徒たちの人望は厚い方だと秘かに自負していた。ルックスが涼やかで整った顔立ちなのと、胸が大きめなことで、時々同僚の先生からは、「棚岡先生は美人でスタイルも良いから男子生徒の人気も安定して高留まりでしょ?」と、やっかみのようなひやかしの言葉を投げかけられることもあるけれど、そうした目に反発するように、一生懸命、生徒たちを甘やかすことなく、熱意でもって指導してきた。そんな律子が尊敬して、これまで背中を追いかけていたのが、生徒指導の柿宮祥子先生と、英語の志堂早紀先生だった。どちらも美貌にかまけないストイックな性格で、生徒を甘やかすことなく、愛情と熱意で引っ張っている、憧れの先輩たちだった。その2人の先輩先生たちと、律子は今、応接室で歌い、踊っている。3人とも全裸で、だ。

 応接室に、ジュースやお菓子だけでなく、通信カラオケのセットまで準備させて、くつろいでいるのは、眞知田シュント、葛城ツトム、丹波ミツルという3人の2年生男子。その中の2人は、律子が担任するクラスの生徒だった。この部屋には先輩先生2人と律子とその3人の他に、生徒会書記の神谷さんや2-3学級委員の松倉さん、女子バスケ部の泉さんに、バトン部の白石部長といった、いわゆるこの学校で人気の美少女たちも、全裸で3人の男子たちにかしずいていた。

「知らなさそうな歌も無理矢理歌わせるというのは、お姉ちゃんたちにもやってもらったんだけど、なかなか面白かったから、先生たちにもやらせようと思って」

 悪びれずに、エロ男子たちが言う。本来だったら担任の律子が叱りつけるべき場面だったと思うのだけれど、シュントが手に持っている箱のようなものに触れているのを見たところまで覚えているのだが、気がついた時には律子は服も下着もすべて脱ぎ捨てて、マラカスを両手で振りながら、熱唱する祥子先輩の後ろで踊っていた。リズムに合わせてステップを踏むたびに、剥き出しの大きな胸が左右交互にブンブンと揺れるのが恥ずかしいけれど、律子は自分が教師である前に一人の『バックダンサー』だったことを思い出した今となっては、曲が止まるまで踊りをやめることは絶対に出来ないとわかっていた。

 堅物と言われるほど真面目な祥子先輩が、ヒーロー戦隊の番組の主題歌を、強引に振りつきで歌わされる。ギコチないポーズをとって歌い終わると、決めポーズのまま、ツトムに写真を撮られていた。カラオケセットが「42点」という点数を出す。祥子先輩の知らない歌なのだから、点数が低いのは当たり前のことだけど、それでも祥子先生は唇を噛みながら、点数を見る(まだ決めポーズは崩していなかった)。「3人の先生が交代で歌って、点数が一番低かった先生が罰ゲーム」という、丹波ミツルが言い放ったカラオケのルールが、3人の美人教師の頭に残って離れてくれないのだ。

 祥子先生の次は、早紀先生にマイクが渡された。選ばれた曲はアイドルのキュートでラブリーなラブソング。造りのはっきりとしたオトナな美人顔の早紀先生には、あまり似合わなさそうな曲調だったけれど、裸の美人英語教師は両手でマイクを握りしめて、一生懸命に歌う。途中から、シュントの顔から一瞬も目を離さずに、ずっと顔を向けたまま、熱唱し始める。布一枚も身に着けていない、完全に無防備な姿なので、Bメロの途中から早紀先生の両乳首がプクッと起き上がり始めたことも、歌のサビのあたりから両脚の付け根のあたりが濡れて光り始めたことも、全て見えてしまっている。彼女はアンダーヘアーを綺麗に剃っているので、股間から恥ずかしい液が垂れ始めたら、それもすべて丸見えになってしまっていた。早紀先生はたどたどしく、あまり馴染みのないアイドルソングを歌っていたはずが、途中から熱唱を始める。そして間奏のあいだ、なんの歌詞も表示されていないのに、真っ直ぐシュントを見つめて、自作の愛のポエムのようなものを朗読し始める。これまで笑っていたシュントもツトムも、少し圧倒されたように、こわばった笑顔を浮かべていた。早紀先生は体をくねらせ、身悶えさせながら最後まで歌いきると、アウトロのなかで四つん這いになってシュントの足元へ近づいて行って、足の甲にチュッとキスをした。そして猫がご主人様の足元でリラックスしきった表情で寝そべるように、シュントの足元に体を丸めると、甲の上に頬っぺたをつけるようにして、安らかな寝顔を浮かべる。それはこれまでに律子が見たことがないほどの、早紀先輩の幸せに浸りきった表情だった。

 早紀先輩の様子が気になっていた律子に、マイクが手渡される。彼女の歌う番が来たのだ。緊張の面持ちで画面を見つめる律子は、すぐにショックを顔に出してしまう。ワールドミュージックというカテゴリーにあったらしい、インドネシアのラッパーの曲が表示されたからだ。もちろん棚岡律子が聴いたことも見たことも無いラッパーの歌だった。インドネシア語も知らなければ、カラオケでラップを歌ったこともない律子は、戸惑いながら、とりあえず必死に画面に映る歌詞のカタカナの方を読み上げる。強引にリズムに載せて、歌い切ろうとする。けれど明らかに、さっきの早紀先輩の3割も曲に乗れずにいた。

「頑張れー。りっちゃん先生。………全然歌えない歌でも、盛上げたらボーナスポイントあるよ」

「………ちょっとノリ悪いから、調整要るかな?」

 ツトムとシュントがボソボソ喋るのもほとんど無視するように、律子はとにかく懸命に歌詞を早口で読み上げることに注力していた。その時、頭の中にビーーーーーンッという痺れるような感覚が走る。律子の人格のヒューズが2、3個、弾け飛んだような気がした。(もう、どうでも良いから、この場を盛上げようっ)律子は心の底からそう思っていた。別にこれは、歌唱力を競うトーナメントでもなんでもない。たかが中2男子の悪ガキ3人を中心にした、お馬鹿なパーティーではないか………。気がついた時、律子は奇声を上げて、応接室の中を所狭しと跳ね回っていた。いつ差しこんだのか覚えていないが、オンナとして大切な部分に、マラカスの柄を挿して、踊りながら、尻を振りながらマラカスを鳴らして笑いを取っていた。適当に(自分の思う)インドネシア語の、自作ラップを叫びながら踊り狂っていた。そろそろ、曲の終わりのようだ。悪ガキ男子3人組はもちろんのこと、裸で彼らの体に奉仕をしている美少女たちまで、律子を指さして、もう片方の手でお腹を押さえて笑い転げていた。

「りっちゃん先生、可愛い~」

「エッロ~い。りっちゃん先生~。もう最高」

 肩で息をしながら、ただ茫然と立ち尽くしている律子を見ながら、女子生徒たちも涙を拭きながら笑っていた。なぜだかわからないが、エロ男子3人に笑われるよりも、同じように裸になって、この男子生徒たちに奉仕しているはずの女子生徒に笑われる方が、プライドが苛まれるように感じた。いつ自分のアソコからマラカスの柄を抜き取れば良いのかもわからない。律子はまだ、混乱していた。自分が「りっちゃん先生」なんて馴れ馴れしく呼ばれるようになったのも、最近のことだ。そう、最近の、律子が授業中に服を脱いで教室をスキップして回ったり、教卓に登ってニワトリの真似をしたり、掃除道具入れに隠れて狭い中でシュントとセックスしているところをクラスの生徒全員に見つかったり、また翌日に掃除道具入れでツトムにフェラチオをしているところを凝りもせず見つかったりするようになってからだ。普通だったら、噂が広まったり誰かに方向されて、学校にいられなくなるような醜態を、律子は何度も繰り返してしまった。自分を律しようとしても、どうにも我慢が出来ないという状態は、恐怖と妙な快感とが入り混じった、変な気持ちだった。まだ教諭をクビになっていないだけ、ありがたいというべきかもしれない。いや、それどころか、通報されて警察沙汰になっていたっておかしくない奇行の数々だった。それでも、下校時間が近づく頃には、生徒たちはそれほど気にしている様子もなく、別の話題で盛り上がっている。ホームルームの時間には、律子にさっきの問題行動のことを質問してくる生徒すらいなかった。ただ少しずつ、彼女に対してフランクに接するようにはなっていきている。そして律子自身、大して気に病むようなこともなく、その日の大失態を夕方にはちょっと恥ずかしい黒歴史くらいに解釈して、気にしなくなっていた。

 それらの最近の出来事すべてが、今思うと、異常に思えてくる。律子は、自分で自分が信じられないような気すらしている。今、何をすれば良いのか、すっかりわからなくなっていた………、シュントが胸の前に抱えた、箱型の機会のようなものに触れる直前までは。

「せんせーい。サヨーナラ―」

「はーい。さようなら。宿題頑張ってね」

 カーテンが開かれ、窓が開けられた応接室からは下校していく生徒たちが見える。向こうからも応接室の窓際に両手をついて顔を出している先生たちが見えるようで、親しい生徒は挨拶を投げかけてくれる。律子や早紀先生や祥子先生も、笑顔で返事をする。けれど応接室の室内では、彼女たちは裸で、バックでお尻の穴を犯されていた。中学2年の男子たちにだ。窓枠からオッパイを出しているので、外の生徒たちにも見えてしまっているはずなのに、皆、いつも通りの挨拶をしてくれる。ここでも何か、不思議なことが起きているような気がした。けれど、律子先生たちは、下半身に突き上げてくる刺激と快感のあまり、まともにものを考えることが出来ない。どうも初めてとは思えないくらいスルっとお尻の穴に入ってきた、生徒たちのオチンチンのせいだ。窓の外で下校途中か部活動を始めようとしている生徒たちに、取り繕った笑顔で挨拶を返すことで精一杯だった。これが、結局先生3人ともが受けることになった罰ゲームだった。

「棚岡先生っ。これから部活でーすっ! 試合が近いから頑張りますっ」

 青春、真っただなか。屈託が全く感じられない声をかけてくれたのは、テニス部の3年生女子。去年、律子が担任したクラスにいた子だった。その声に、ひきつりそうな笑顔を返しながら、眩しそうに律子は返事をする。

「そっかっ…………。頑張ってねー、水野さん………」

(………水野さん………先生は今ね、受け持ちの生徒にお尻の穴を犯されていて、これからイッちゃうところなの………。だって、どうしてかわからないけど、お尻の穴がすっごく、すっごく、気持ちいいの。)

 そう思い浮かべた後で、絶対にこんなこと、生徒たちに知られるわけにはいかないと思い直した。

 全裸で窓枠に寄りかかるように立って、オッパイは窓から出している状態なのに、何も疑問に思わずに明るい挨拶をくれる、可愛い生徒たち。律子がお尻で感じて、神聖な教育の場で涎を垂らしているような変態オンナになってしまっていても、健気に声をかけてくれる、可愛い生徒たち。律子はなぜか、この異常事態は少しだけ、ありがたいものかもしれないと思うようになっていた。

。。。

 深沢瞳が葛城家を訪れた時、彼女の親友のサヤカは外出中だった。

「私に連絡くれる間もなく外出しなきゃいけなくなったっていうことは………、シュント君かな?」

 ヒトミが大きな両眼をパチクリさせながら訪ねると、サヤカの弟であるツトム君は頷いた。

「そう。シュントが急にお姉ちゃんとプールに行きたいって言いだしたから、姉ちゃんは急いで水着と日焼け止めだけ持って、飛び出したところ。ついさっきだよ」

 ツトムは淡々と答える。中2悪ガキトリオの中では一番小柄で大人しそうな子だけれど、年上に対する受け答えはクールというか、大人びている。

「………じゃ………。いま、ツトム君は、ここのおうちで一人なんだね。どうしよう? お邪魔だったら、私、帰るし、もしツトム君がお暇だったら、私で遊んでもらっても良いかなって思うけれど………」

「……………うん………。あがって」

 ヒトミは「私と遊ぼうか」という聞き方ではなくて、「私で遊んでもらっても」という言葉遣いをする。最近は自分たちがこの男子たちの玩具になるという立場を、自覚するというか、受入れ始めていた。抵抗しようとしても無理なものは仕方がない。

 階段を上がって、ツトム君の後について、彼の部屋に入る。ドアの前で、丁寧にお辞儀をした。

「お邪魔します」

「入って」

 ツトム君の部屋は中2の子供部屋としては大きい。そして立派な本棚の横にある学習机の上には、よくヒトミが目にする、四角い機械のようなものがドンと置いてある。ベッド脇にあるサイドボードの上には3つ、デジタルフォトフレームが置いてある。静止画がスライドしていくそのデジタルフォトフレームを、チラッと見たヒトミが赤面して俯いた。3つ並んだデジタルフォトフレームはそれぞれ、サヤカとヒトミとカナエの写真を映し出している。お洒落に服を着て可愛らしく映っている写真から、徐々に服がはだけていって、大胆なポーズとギコチない笑顔のヌード写真へと遷移していく。ところどころ、過激なハメ撮り写真と、すました表情の普段の写真が交互に映し出されたりするのがまた、かえってヒトミの羞恥心を煽りたてる。こんな恥ずかしい写真の数々を、ツトム君は色んな方法で、色んな場所に保管している………。そう思うだけで、ヒトミは年下のこの子たちに逆らおうという気など全く起きなかった。一生懸命ツトム君たちの機嫌をとって、ヒトミの秘密を出来るだけ長く、守ってもらう。それがヒトミにとっての最近の一番の関心事だった。

 ドスッとベッドに腰かけたツトム君の前に立って、気をつけの姿勢になる。両手はおヘソの下あたりに重ねて立った。

「あの………、私、自分で脱いだ方が良いかな? ………それとも、ツトム君が脱がす?」

 ヒトミに聞かれたツトムは、首を傾げて少しだけ考えたあとで、ベッドの上、自分が座っている隣の場所をポンポンと手で叩いた。

「今日はまだ脱がないでいいよ。座って」

 ツトムに言われたことはすぐ実行するヒトミ。慌ててベッドに隣り合わせに座った彼女の胸を、服の上からツトムが撫で始める。服の上から撫でて、次にブラウスを脱がせた後、ブラの上から揉んで、最後に下着も脱がせて、直に触る。その感触の変化を楽しむというスタイルが、プロセスを大事にするツトムらしい。ヒトミはそう思った。

「…………ん………」

 ブラウスと下着越しにも胸を揉まれるうちに、ヒトミが声を漏らす。こんな時、ツトムは顔を近づけて、観察するように熱心な表情で、ヒトミの反応を見ている。やがてツトムがブラウスを捲り上げようとする手つきを感じ取ると、ヒトミはそれを手伝うように、無言で両手を上げる。

 ヒトミがサイドボードに並べられた3つのデジタルフォトフレームをもう一度見ると、少し胸がキュンと切なくなるのを感じる。仲良し女子3人組の恥ずかしい画像を1枚ずつ機械的に捲っていくそのフレームは、ベッドの枕元に遠い方からカナエ、ヒトミ、サヤカの分の順に並べられている。きっとこれが、ツトムが執着している順番なのだ。ヒトミよりも、ツトムは本当は、実の姉のサヤカの裸を近くで見つめながら、毎晩眠りについているのだ。そのことを理解すると、ヒトミは少しだけ寂しくなる。何といっても、葛城ツトムは深沢ヒトミの初体験の相手なのだから。

「………もっと、遠慮しないで、強く揉んでも良いのよ」

 ヒトミは母性に満ちた表情で、ツトムにそう伝える。研究者が標本を触るようだった手つきが、少しずつ、そして少しだけ、荒っぽくなる。ツトムはいつも、このプロセスを丁寧に踏みたがる。ヒトミはブラジャーを外されるのを手伝いながら、ゆっくりとベッドに背中をつける。ツトムが覆いかぶさって来て、空気に晒されたヒトミの胸に口をつける。乳首がチューーッと吸われる。

 ツトムはヒトミよりも、彼の実の姉、そしてヒトミの親友である、サヤカに、より強い執着を持っている。家族として、というよりも、女性として興味を持っているのだと思う。それでも、サヤカがツトムに提供出来なくて、ヒトミには捧げられるものが2つある。そのことが、ヒトミの気持ちを穏やかに、優しく、そして強くしてくれる。

 1つは、ヒトミのオッパイだ。サヤカのオッパイも形が良くて柔らかそうで、とても素敵な胸だけれど、大きさで言ったら、ヒトミの方が2サイズほど大きい。だからツトムの顔を覆ってしまうくらい2つの乳房を押しつけて包みこんであげることも、ヒトミだから出来る。

 そしてもう1つは、ナカ出しだ。ツトムは慎重派で理性的で、実の姉には(ちょっとくらい手出しはしていると思うけれど)アソコの中で射精したりは出来ないようだ。女性目線で考えると、お姉ちゃんに対して他の酷いことをしている時だってあるのに、ナカで出さないという一線だけは、生真面目にずっと守っているようだ。けれどヒトミのアソコの中では、ツトムは遠慮なく射精する。1日に3回出したこともある。そのことが、ヒトミの中で、親友のサヤカに対する、不思議な優越感となっている。

 だからヒトミは、ツトムと2人きりになったら、必ずオッパイで自由に遊んでもらう。心ゆくまで揉んだり、舐めたり、吸ったり。強めに握ったり、摘まんだり、引っ張ったり、ツトムのオチンチンを挟んだり、ツトムの顔を包みこんだり、ツトムの精液をかけたりと、考えつく限りの酷使をさせて、ヒトミ自身も満足感に浸っている。

 そして興奮したツトムのオチンチンを、毎回温かく湿ったヴァギナに導き入れる。はしたないことだとわかっていても、精一杯絞めつけて、自分から腰を振って、ツトムの射精をオネダリする。自分のオッパイがツトムの射精に役立ったと感じた時、そして自分の体の内部にツトムが精を出しきってくれたと感じた時、ヒトミはウットリと幸せを噛みしめる。これが今のヒトミを駆り立てる、オンナとしての義務感というか、使命感だ。生き甲斐といっても良いかもしれない。そしてその気持ちは、ツトムかシュントが最近よく見る、箱のようなものスイッチを触る動きを見せるたびに、強くなったり、弱くなったりするのだった。

。。。

 倉池カナエは実験動物のように扱われている自分について、薄々勘づいている。それでも抵抗しようという気持ちがほとんど起きない、自分自身に対しても、若干のイラつきを感じていた。

「うひゃは………、ひゃはひゃはっ…………。やっぱ凄いな、女の感じ方って」

 裸で体を好き勝手、弄くり回されているカナエの横で、丹波ミツルが横になってハシャイでいる。気がついたらカナエとペアになっていることの多いミツルのマニアックさ、変態純度の高さは、カナエがお付き合いをしたり、深く知り合った男子の中でもトップクラスだと思う。最近、カナエがどうしてもご奉仕してしまう『ご主人様』3人衆のなかでも、シュントやツトムとは比較にならない、ネジレっぷりをミツルは見せる。その、快楽をとことん追求する姿勢や、カナエを駆使して遊び倒そうとする執念は、時にカナエ自身も感心してしまうほどだった。

 今、カナエは葛城家のサヤカとツトムのご両親の寝室にいて、全裸でベッドの上に寝転がって、バイブレータをアソコに突っこまれている。カナエとしては別にそんなことを(ミツルのような変態中学生男子の前で)したい訳ではけして無いはずなのだが、なぜかこうしないわけにはいかないという、強い衝動に突き動かされて、こうなっている。最近の日々の行動を考えると、通常運行といったところだ。今日、いつもと違うのは、カナエの頭にはヘッドホンが装着されていて、それと繋がるコードが、四角い、箱のようなものまで繋がっている、ということだ。そしてカナエが、アソコで暴れるバイブレータの刺激に悶えると、隣に寝転んだミツルも同時に「うひゃうひゃ」言いながら悶える。まるでカナエと同じ感触を共有しているかのように、ほとんど同時に同じような反応を示すのだった。もしかしたらこのコードの先にある、箱のようなものが何か…………。と考えが至ったところで、ストンとカナエの頭の中の興味も観察意欲も思考力も寸断される。そこには箱のようなものはある。今、カナエの身には(ミツルの身にも)、不思議なことが起きている。けれどその2つの要素がカナエの頭の中で結びつくことはなかった。箱は箱、不思議なことは不思議なこと。何も怪しいことはないし、何かに抵抗しようというのはとにかく面倒くさいこと。カナエが今、一番避けたいことだった。

「いやー、色々、勉強になるわ。………俺がもともと思ってたほど、カナエちゃんがオッパイを触られても普通だと感じてないってのも、新しい発見だったね。みんな胸がトップクラスの性感帯っていうのが、男の願望というか希望的観測だったのかな? …………胸だけにトップクラスとか………。…………あ、いや、一度、アソコが快感をキャッチし始めると、また乳首の感度も変わるのかな? ………このへん、ツトムに教えたら、ちゃんと研究しはじめちゃうかも………。………うん………。カナエちゃんの場合は、感度、さっきより変わった感じがする」

 ミツルは独り言をブツブツ口にしながら、カナエの胸を触る。ヒトミはもちろん、サヤカと比べても、比較的平坦な胸………。そこを撫でたミツルが、ビクッと自分の肩をすくめながらアゴを上げる。まるでカナエのオッパイが揉まれる感触を、ミツルが感じたように、ここでも振舞う。それは隣で見ていて、気持ち悪い絵ヅラだった。

「………じゃ。そろそろメインディッシュにいきますか? ………カナエちゃんのアソコの中と、クリトリスと、お尻の穴を、3点責めさせてもらって…………。前は、俺が失神しちゃったから、ちょっと振動をマイルドめに………。女の子はやっぱり、得だよな~」

 カナエを一度、四つん這いの姿勢にさせて、左手で体を支えさせながら、右手に握らせた枝分かれした形状のバイブレータを、カナエのデリケートな部分に押しつけさせる。キモい形のバイブレータはカナエのお小遣いで、大人の玩具店で購入させられた商品だ。そのうちの細い枝部分をお尻の穴に押し当てる。全部、カナエがしたいことでは全くないけれど、ミツルの指示は『体を傷つけそうなことでない限りは従う』しかないと、思っている。どうしてそう思っているかは、考えない。考えようという気にもならない。この状況で「女の子は得だ」と言われても、同意は出来そうにない。今からカナエの体に襲いかかる、刺激と違和感、そして快感の嵐のことを考えると、とても自分が得な立場にいるとは思えないのだ。

 けれど、これからやってくる感覚の嵐を、もし一緒に共有する相手がいるなら、それはほんの少しだけ、カナエを安心させる要素かもしれない。でもそれがここにいる、丹波ミツルだというなら………。カナエは自分の気持ちが胸の中で複雑に絡み合ってカオスになっていくのを、見守ることしか出来ずにいた。

。。。

「でな? ………俺がそん時に、カナエちゃんの感じてるすっごい快感を、どっかに保管して、あとから何回も味わえないかと思って、何となく直感的に『双シン壱号』をあれこれ弄ってみたら、この真空管の部分がちょうどカチッて動かせたんだよ。ほら、こんな感じ」

 ミツルがシュントとツトムの前で、『双シン壱号』の操作盤の左上端に3つ並ぶ、真空管のうちの左端のものをに触れた。上から一度、下方向へ押しこんで、そのまま時計回りに捻る。すると、真空管の前にある小さなランプが赤く点灯した。

「そっか、上から管を押しこんで回すんだ………。これまで、ここの部分が操作出来なくて、機能も試せなかったんだけど、そういうことか………。………でも、ミツル。今回はたまたまうまくいったみたいだけど、当てずっぽうで試してみるのは、もう止めてよ。取り返しのつかないことになると怖いから」

 ツトムが自分でも真空管を押しこんだり回したりしながら、ミツルに注意する。どうしても注意のトーンが弱くなっているのは、これまで謎だった部品の機能が解明される糸口を掴めたからだ。ツトムはブツブツ文句を言いながらも、目は真空管から離さない。既に、『双シン壱号研究者』モードに切り替わっていた。

。。

「今回は珍しく、ミツルの言う通りだったよ。この真空管をこうやって捻ると、同調用の端子の電荷反応から収集している情報を、同時にここに保存することが出来る。3個ある真空管だけど、左側の2つしか機能してない。残り1個は壊れてるみたい。フィラメントを交換してみたんだけど、ここのランプは光らないし、保存は出来ないみたい」

 翌日、目の下に隈を作ったツトムが、シュントとミツルに説明をしてくれた。もともと古いオーディオアンプに取りつけられていた真空管は、情報を保存するような機能を持っていないので、これは真空管の形状を借用した、データ保存、あるいはそのスイッチとして機能している部品なのだろうということだった。

「あれ? でも、指示を覚えこませるって、こっちにもそんなスイッチがなかったっけ?」

 シュントが尋ねる。最初の頃、シュントのジーチャンが害獣除けの指示を『プリセット』していたことを思い出したのだ。ツトムの疲れた顔が、パァーっと明るくなる。

「そう。そうなんだよ。僕が最初にこっちの真空管の機能を予測できなかったのも、シュントと同じことを考えたから。こっちに、指示のプリセットスイッチがあるよね。だからこっちとどう違うんだろうって、普通思うでしょ。でも今になって思うと、ここが、開発者の、なかなかマニアックなところなんだよ。こっちの真空管は、あくまで同調用の端子から収集した行動とか、感情とか、思考とか性格を保管しておくための部品なんだ。だから調節弁の発展形だと言えるかもしれない」

 ツトムがいつもよりも早口になる。こうした話を出来ることが、とても嬉しそうだった。

「言葉で説明していても、なかなか理解してもらえないと思うから、まずは使って、慣れながら機能を肌で実感していくことだと思うよ」

「おう。それは賛成」

 ツトムが早口でまくし立てている間はよそ見をしていたミツルが、「まずは使って」という言葉に反応して、ニヤッとしながらシュントを見る。すでに悪だくみは始まっているようだった。

。。。

 さっそく学校で試してみる。シュントたちの2-3のクラスは、いつも葛城家でサヤカさんたちで実験させてもらうのに次いで、御用達の実験室だ。ツトムがお手本を見せるとばかりに、仕込みを始める。まずは青砥セイナちゃんを呼び出して、端子を貼り付けて彼女の性格を複写させてもらう。そしていつもの操作スイッチを弄って、『全員起立。ズボンやスカートを降ろして、パンツを膝まで降ろして、そのまま立ってなさい』と指示を出す。黒板に板書をしていた棚倉律子先生も、学級委員も男子も女子も、全員一斉にズボンやスカートを床に落とすと、下着を膝の高さまでズリ降ろす。全員、正気は保ったままなので、顔を赤くしている。それでも、悲鳴や怒号が教室中に響き渡るかと思いきや、全員がモジモジ、オロオロするだけで、とても大人しい、ウブなリアクションを見せる。そのはにかむ仕草は、シャイで真面目な、青砥セイナちゃんソックリだった。成人女性の棚倉先生も、体育会系の男子までも、ただ顔を赤くして、周りを見ないように顔を両手で覆っている。そのリアクションが気持ち悪い野郎もいたけれど、大体みんな、可愛らしかった。

「こっちの操作スイッチで指示を出しながら、こっちの真空管でリアクションの微調整が出来たりする。本来は反応は人それぞれのはずなんだけど、こうすると行動と反応、バラバラのものを一緒に対象に押しつけたり出来るんだ。これがうまくハマると、すごく多面的に相手を操縦出来てる感じになるんだ。………みんな、やってみてよ」

 ツトムはまだ興奮しながら話している。シュントとミツルは興奮してクラスメイトたちが恥ずかしさに身悶えしている姿を眺めていた。

 2-4に、ミツルやシュントも尊敬する、筋金入りの陽キャがいる。塚田ケンタというひょうきんものだ。暑苦しい顔と、ところかまわずに体を張ったギャグを放りこんでくる、そのメンタルの強さとで、「ボリウッド・ザコシショウ」という異名を持っている。操縦機を弄って、彼の鋼のメンタルと芸人根性を採取させてもらう(採取といっても、減ったりするわけではないので、複写しているだけなのだが)。そして真空管の中に保管した上で、放課後の茶道部に伝播させてみた。それだけで、外部から来ている茶道部のお師匠さんがひっくり返るほどの、カオスがお茶室に生まれる。シュントたちは畳の上で、頭の上を飛び交う帯や着物を避けながら、お腹を抱えて笑い転げた。

 茶道部を休部の危機に追い込んでしまった後始末をした頃にはずいぶん遅い時間帯になっていた。学校からバスに乗ると、営業先からの帰りなのか、くたびれた様子のサラリーマンの中年男性が椅子に深々と腰を下ろして、イビキをかいている。両足を大きく開いて、眠りながら股間をポリポリ掻き始めた。品は無いけれど、自由な感じが素敵なオジサンだ。彼が起きないように気をつけながら、ヘッドホンをかぶせる。オッサンの行動を採取。嫌そうな顔をしてそれを見ていた女子高生もОLさんも、買い物帰りの奥様も、スイッチを捻ると、全員がオジサンと同じ行動を始める。吊り手に掴まって立っていたОLさんは、バスの床に崩れ落ちて、そのまま大の字でイビキをかきながら、股間をポリポリ掻き始める。バスの車内が、マナーは悪いけれど妙に弛緩した平和な空気になった。

「これやっぱり、飲み会とかでハシャいでる、能天気な大人のムードとか採取しときたくね?」

 ミツルはあれこれとアイディアを出す。シュントもツトムも、ちょっと面白そうなので、家に帰るのを後回しにして、駅のガード下まで足を伸ばすことにした。まだそこまで遅い時間帯ではないのに、結構酔っ払って、出来上がってるオジサンたちが、そこそこいる。不景気なのだろうか? 鬱憤を晴らすかのように、ビアマグを傾けて、グビグビやっている。意外と若いお姉さんたちも、立ち飲み屋や居酒屋に連れ立ってきているようだった。

 操縦機で周囲の人たちに、中学生男子が入って来ることを『気にしない』ように指示を出して、シュントたちは物色する。酔っ払いの声と物音でごった返す店内から、シュントとツトム、ミツルはそれぞれ1人ずつ、面白そうな状態の大人を選び出した。シュントがピックアップしたのは頭にネクタイを巻いて陽気に鼻歌を歌っているオジサン。ミツルのチョイスはお座敷で半裸でモノマネか何かを披露していたチャラい大学生。ツトムは笑いが止まらなくなって、ひたすら手を叩いているお姉さんを見繕ってきた。

「真空管を捻る角度で3段階、カチッと鳴る箇所があるよね。そこで同調した行動とか感触、考えとか性格の保管先を選ぶことが出来るからね。2つの真空管が今、使える状態だから、合計6種類までの情報を録り分け出来るっていうことだよ」

「録り分け出来ずに、うっかり同じチャンネルに採取しちゃったら、どうなんだろ?」

 ミツルがツトムの顔を真顔で見据えている。こういう時は、何かろくでもないことを考えている時だ。

「…………一度、反時計回りに回しきって入ってた情報をリリースするのが標準手順だと思うんだけど。それをしないで、採取した情報を重ねて保存したら………。…………どうだろ? ……混ざるんじゃない?」

 ミツルが、まだ黙ってツトムを見ている。

「それ…………。面白そうなんだけど…………」

 ミツルに言われて、ツトムも黙ってこの、天然パーマのポッチャリ男子を見返す。

 こうして、真空管の中に、「呑んだくれて、色んなことがどうでもよくなった、脱ぎたがりの笑い上戸」の感情が一緒に保存された。そしてシュントたちがワクワクしながらその情報のミクスチャーを伝播させると、店内はまるで応援している野球チームが優勝したかのような、喧騒でごった返すようになる。見ると、包丁を握っていた厳しそうな大将も、チャキチャキした元気そうな店員のお姉さんも、見る間にへべれけになって、だらしない笑いを浮かべながら、上着を脱いでいく。面白いのでお店の外まで電波を飛ばしてみたら、駅裏の道を歩いていく大人たちも、素面だったはずなのに、千鳥足になってヘラヘラ笑いながら、スーツやシャツに手をかけていく。一気に退廃的だけどヤケクソに明るいムードが周囲を覆った。

 満面の笑みを浮かべてお箸でグラスを叩いていたオジサンに、まだごそごそと操縦機を弄っていたミツルがこそっと耳打ちする。するとオジサンは鷹揚に頷いて、「中日ドラゴンズ」という、マイナーな野球チームの応援歌を歌い始める。「燃えよドラゴンズ」という、それなりに歴史のある応援歌だそうだ。見る間に店内は、燃えよドラゴンズの大合唱となる。半裸のオジサンやお兄さん、お姉さんにバイトのお姉ちゃんも、みんなで肩を組んで、左右に揺れながら、地方球団の応援歌を大声で歌う。歌詞があやふやなお客さんたちも、6巡目くらいにはサビの部分くらいは熱唱出来るようになる。あっという間に、大衆居酒屋が地味目の球団ファンの巣窟のように変わってしまった。お調子者の性格が伝播されているからか、カウンターによじ登って、ダイブするお姉さんがいる。店員さんの作務衣の色が青という球団チームカラーに近いというだけの理由で、バイトのお姉さんまで半裸で胴上げされてハシャイでいる。

「そういえばミツルお前、ドラゴンズファンだったよな?」

 シュントが聞くと、ミツルがテヘッと笑顔を見せながらベロを出した。

「東京だと仲間がなかなか見つからないから、………これくらい、良いだろ? ………この、色んな情報を混ぜて同調指示出すのが、面白いっていうことは、わかったわけだし」

 シュントとツトムは、ミツルの言う、「ミクスチャー」発信が面白いかもしれないという点には共感出来たけれど、それでも無意識のうちに、誰か年配のオールドファンあたりが出て来て、この調子に乗っている天パ男子に「星野元監督」ばりの鉄拳制裁でもしてくれないかと、秘かに期待していた。しかしそんなに都合よく、この球団のオールドファンは見つからなかった。それくらい、地味な野球チームなのだ………。

。。。

 しばらくの間、真空管を使った「ミクスチャー」同調指示の発信は、シュントたちの間でブームになった。居酒屋で試したように、「へべれけ」、「チャラいお調子者」、「笑い上戸」といった、性格を重ねてチューニングすることも面白かったし、性格と正反対の行動とをミックスさせて発信するのも、これもまた面白い効果を生んだ。例えば、前に試した、青砥セイナちゃんの超大人しい真面目な性格と、バスでみかけたオジサンの大股開きで股間ポリポリアクションとをミックスして発信する。するとそこがお洒落なネイルサロンでも、流行りのカフェでも、見る間にその場には、顔を真っ赤にしてモジモジ、オドオドしながらも、大胆に両足をおっぴろげて股間を? く、人格が分裂したかのようなお姉さんたちが、大量発生する。さっきの酔っ払い3点セットと、幼稚園児がお絵かきしていることろのアクションとをミックスさせてデパートの化粧品売り場に展開したら、顔が真っ白や、真っ黒、まだら模様や、あるいはパンダのような顔になったお客さんや美容部員さんたちが、お腹を抱えて笑い泣きしながら、デパートから街へ繰り出していく。すました顔で颯爽と入っていったはずのハイソな若奥様や格好いいお姉さんが、すごい顔になって両手を叩きながら爆笑しながら出て来る様子を見て、シュントたちも笑うしかなかった。

 暑い日の混雑する遊園地で、指示を出したり、反応の採取をしたり、その場で採取した情報を「ミクスチャー」かけたりを繰り返してみた。アトラクションに列を作って並んでいるカップルたちを操縦機で強制的に『発情』させる。おまけに体を『刺激に対して凄く敏感に』させる。ちょっとツマミを回して強度を操作すると、列のあちこちで、カップル同士のキスや秘かなペッティングが始まる。そこに先日からヘビーローテーションで使っている「酔っ払い3点セット」をまぶすと、今度は秘かどころではない、大っぴらなペッティングとディープキスが波となって列に広がり、うねっていく。そこで特に良い反応をしめしている、AVの女優、男優のように豪快な絡みをしているカップルから、今の感情と感触を「サンプリング」させてもらうのだ。その情報を別の場所で指示・拡散すると、観覧車のゴンドラはどれも、係員のお兄さんが少し心配そうに見上げるくらい、どれも横揺れ、縦揺れを始めることになる。1周してきたゴンドラの降り口にはセイナちゃんの真面目でウブな性格の同調を範囲限定で発信しておくと、激しく揺れていたはずのゴンドラから、まだ服を半分しか着ていないカップルが、顔を隠ししながらそそくさと中腰で出て来ては、逃げるようにその場を走り去っていく。その後ろ姿が何とも言えず、可愛らしかった。

 ジェットコースターの頂上から、車体が下り始める、丁度その場所に、カメラが設置されていて、記念撮影した写真が有料で販売されている。その付近にも「酔っ払い3点セット」の同調伝播を発信しておくと、出口付近のモニターに映し出される、お客さんたちの写真は、みんな、ベロを出したり、シャツと下着を捲ったりと、陽気というか暴徒のような写真で占められていく。安全バーの隙間から、苦労してオッパイを出して、カメラに見せつける女の子の横では、優しそうな彼氏が両手の指でオッパイを指して、自慢げに笑っている。こちらのアトラクションも出口付近には「セイナちゃんのウブでシャイで大真面目な性格」を発信しているから、降りてきたお客さんたちは皆、自分の行為の記憶に悲鳴を上げながら、印刷された写真をひったくるように買って、逃げていく。遊園地の売上には多少貢献してあげられたようだ。

 せっかく週末に遊園地まで来て、若いカップルや女の子たちの楽しむ姿を見させてもらっているのだから、今、シュントたちの間で流行っている「ミクスチャー」指示以外にも、どんどん操縦をして、こちらも楽しませてもらうことにした。のってきたら、マイブームの操作法も、シンプルでベーシックな操作法も、もはや関係ない。手始めにティーカップが回転するアトラクションが目の前にあったので、列に並んでいたカップルには、それぞれ別々のカップに乗ってもらうことにする。そして次に並んでいた人たちが、先にカップに入った人たちの存在を認識せずに、楽しみな顔で乗り込んでいく。音楽が鳴ってカップが動いている間、先に一人で乗った人は自分の性別と逆の性別のお客さんに対して、濃厚なフェラチオやクンニリングスを提供する。後から乗ってきたお客さんたちは先に乗った人のことに気がつかないけれど、彼らのすることに抵抗もしない。ここまで指示を出すと、カップの縁を掴んで、もたれかかるように天を仰いでいるお客さんたちは、カップの中では下半身が剥き出しにされた状態でエッチな奉仕をしてもらっている状態が出来上がる。恋人同士がバラバラに分かれて、先に乗らされたお兄さん、お姉さんたちはまるで自分がアトラクションの一部と化したかのように、無心になって口を駆使しながら後から乗ってきたお客さんの下半身を愛撫する。曲が止まると、今までサービスを受けていたお客さんたちが、次に乗り込んでくるお客さんたちに奉仕をする番だ。みんな、柵から出てきた時には、何が起きたか覚えていないけれど、体はホカホカで、潤んだ目で降りて来て、カップルが再集結する。

「トシ君。私、もう1回、これ乗りたいかも………」

 可愛らしい女子中学生が、しなだれかかるように絡みついた、優しそうな男の子は、顔の下半分がベタベタになった状態で、彼女をジェントルに受け止める。

「シーちゃん、他にももっと、スリルがある乗りものとか、いっぱいあると思うけど………。このティーカップにまた乗りたいの?」

「う………うん………。なんか、………よく覚えてないけど、これも充分、スリルがあった気がするし、………グルグル回ってるうちに、なんか気持ち良くなっちゃって………。変かな?」

 唇を拭いながら、お互いを気遣い合って寄り添っている、初々しい中学生カップルが話すのを見て、シュントは秘かに興奮した。こんな清純カップルも、あと何周かティーカップに繰り返し乗り終わった頃には、すっかり経験豊富なオトコとオンナになっているかもしれない………。

 顔に似合わず経験豊富、というアイディアがティーカップのアトラクション付近を去った後でも頭の中に引っかかっていたシュントは、ケータリングカーがチュロスを売っているところで立ち止まって、次の遊びを思いつく。

『ここを通りかかった十代の男女のうち、セックスを体験済みの人は、裸になって、セックスした人数分だけチュロスを体の穴に突っこんで歩け。本人も周りの人たちも、それが当たり前のことだと思え。』

 発信ボタンを押すと、カップルが、同性の仲良しグループで歩いているお兄さんやお姉さんたちが、申し合わせたように立ち止まって、その場で服を脱いでいく。ケータリングカーの横に置いてあったテーブルの上に、どんどんと脱ぎ捨てられた服が積まれていく。スレンダーなお姉さんがアソコにチュロスを2本突っこんで、もう1本買ったあとは迷った様子で自分の体を見回したあと、お尻の穴にチュロスを挿していった。服を着たままの彼氏と手を繋いで歩き去るのは、意外にも清純そうな美少女。アソコに3本、お尻に1本入れた上に、口を全開に開けて3本ものチュロスを咥えこむ。少し苦しそうにしながらも、隣の彼氏に、はにかんだ笑顔を見せて、閉じない口から涎を垂らしながら、全裸で歩いていく。仲良し2人組で同じキャラクターのリュックを背負っていた女の子たちは、なぜか一本のチュロスを分け合うように両端からアソコに入れて、四つん這いで横歩きしていく。もしかしたら彼女たちは、同じ男子とシタのだろうか? そしてそのことを2人とも深層意識の中でだけ、知っているということなのだろうか? 10本以上のチュロスを購入していった美少女は、とても体中の穴を広げても全ては突っ込めないので、周りの人に手伝ってもらって、10本のチュロスを順番に入れたり出したりしてもらいながら、運ばれて行く。それを手伝っている男子たちは皆、真ん中でチュロス入れみたいになっている美少女のことをとても丁重に扱いつつ、チュロスをズコズコと順繰りに入れていく。あれが「サークルの姫」という奴だろうか? ちょっとした指示だけれど、反応は人それぞれだったので、シュントは、とても勉強になったような気がした。

「あ………、あれって、声優の祐源寺コユネじゃないか?」

 お城の近くの広場まで来たところで、ミツルが目ざとく指をさす。シュントは名前を聞いても、それが誰なのかよくわからなかった。どうしてミツルは、声の仕事の人を、ビジュアルだけ見て気がつくことが出来るのだろう。本人は帽子を深くかぶってサングラスまでして、静かにしているのに………。また一つ、悪友の奇妙な特技を知ってしまった。そしてそのまま放置しておくのは、なんだかもったいないので、操縦させてもらう。どうせなら、このテーマパーク内にお忍びで遊びに来ている芸能人みんなに、同じ指示を出してみよう。

『今日、この遊園地のなかにいる、芸能人はみんな、顔バレを気にせずに身に着けているものを全部脱ぎ捨てて、自由に過ごしなさい。需要がありそうなら、今いる場所をグリーティングスポットにして、ファンたちとの写真撮影に応じてあげなさい。解放的になりましょう。今日はミラクルファンサービスデーです。』

 発信ボタンを押すと、さっきミツルが指さした「祐源寺コユネ」さんは、隣を歩いていた友達らしき人に、身に着けていたものを預け始める。帽子もサングラスも、Tシャツも、左右の長さが違うジーンズも、ネックレスもバッグも、格子柄のブラジャーもショーツも渡して、気持ち良さそうに深呼吸をした。

「あの…………、祐源寺コユネさんですよね? ………握手してください」

「一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

 あっという間に、これまでどこにいたのかわからないほど、目立たないタイプの男性たちに囲まれる声優さん。やはり、有名な人だったんだ………と、言おうとしたら、すでにシュントの隣にミツルはいなかった。気がついた時には彼は声優さんを囲む男たちの一角にいた。

「は~い。いいですよ~。握手だけで良いんですか? ………写真も………、普通だと、面白くないよね? ………ハグしちゃっても大丈夫?」

 にこやかに応じる声優のお姉さん。その声は、確かに可愛らしかったし、もしかしたらシュントも聞いたことがあるかもしれない。鼻にかかってはいるけれど伸びがある、特徴的な声だった。さっきまでは帽子とサングラスで変装をして、息を潜めるように遊園地を歩いていた芸能人さんは、自然発生的に出来てくる行列の男子たちににカジュアルに声をかけて、ハグをしたり、ホッペにチューをしたり、オッパイを触らせたりと、過剰なほどのファンサービスを始める。やっていることはかなり異常だけれど、その表情はとても生き生きとしてして、楽しそうだった。

「女優の鷺宮レンです。今日は撮影がオフになったので、内緒でお付き合いしている舞台仲間と秘密のデートをしてましたーっ。今だけ、撮影オッケーでーす」

 両手を振って、大きな声で「秘密デート」のことを喧伝しながら、全裸で人を集めている綺麗な女の人がいる。言われてみれば、何かの商品のCMで見たことがある人だった。集まってきたファンの人たちに愛想を振りまきながら、オッパイを揉まれつつVサインをつくってカメラに収まっている。この人も、『ミラクルファンサービス』の名に恥じない、見事な己の捨てっぷりだ。

 もともと遊園地内に、あった定点的なキャラクター・グリーティングスポット。そして時間限定でサプライズ的に表れるキャラクターとの触れ合い。その人気を凌ぐくらい、同時多発的に芸能人、有名人のゲリラ・グリーティングが始まる。裸でファンとのスキンシップに応じたり、笑顔で写真撮影を受け入れていくタレントさんたち。これまで気がつかなかったけれど、思ったよりも多いようだった。写真がネットに流出したりすると可愛そうなので、ファンたちにも指令を出す。

『芸能人さんの写真は自分だけの秘密の宝物にすること。一緒に写真を撮る時は、自分も全裸になって撮影してもらうこと。』

 こうして指示を送ったことで、有名人さんたちのタレント生命は守られた(多分)。シュントたちが観察していると、予想以上に女性のタレントとグリーティングを求める女性ファンも多いということがわかった。そして男性タレントに群がる女性ファンたちの勢いは、女性アイドルを追いかける男性ファンよりも凄いかもしれない………。

 中に1人、全裸で腰を横回転させて自分のモノをスイングしながら笑顔でファンを待っている筋肉質の大男がいた。

「うぉっ。凄い偶然………。あそこにいるの、中日ドラゴンズの二軍内野手だぞ。………ほら、去年、育成から上がった………」

 ミツルが一応、サインをもらいに行く。その男性の周囲には、ファンが一人もいない状態だった。シュントは切なさで胸がキュンとなる。………3日前、駅裏の居酒屋で起こった、奇跡のドラゴンズ大ブームを、今の彼に見せてあげられたら、とさえ思った。

 隣のツトムの様子を伺うと、彼も絶句して、別の方向を見ている。そこには、先日デビューしたばかりの正統派アイドル、黄瀬川ミヤビちゃんが、黒山のような人だかりをつくっているファンたちに、丁寧に応じている。ミヤビちゃんの裸が見たくて、思わずシュントも背伸びをする。そして気がついた、ミヤビちゃんはまだ幼児体型の面影が残るプロポーションに、形が良くて可愛らしいオッパイを持っていた。そして下半身には、チュロスが複数本、突き刺さっていた。シュントたちがいた時に、あのチュロス売り場の付近を歩いていたのだろうか? 「国民の末っ子妹」というキャッチフレーズを持つ純朴な美少女アイドルの秘密を、チュロスの数で見せつけられてしまったシュントは、複雑な溜息を漏らす。眩しいくらいの純真な笑顔を浮かべて、ファンとの交流を楽しむミヤビちゃん。彼女が可愛らしく初々しいリアクションをするたびに、お尻にまで挿しこまれたチュロスが揺れて、砂糖の粉を撒き散らす。その光景を呆然と見守るシュント。ツトムが肩をポンポンと、2度たたいてきた。夢のテーマパークで、2人は少しだけ大人になった。

 メリーゴーランドの外周には、木馬の進行方向と逆向きに、カップルたちで円を作ってもらって、男女に一人分ずつズレてもらい、出来上がった即席カップルで騎乗位で交わってもらう。メルヘンチックな音楽が流れて、木馬が回転している間、外周には笑顔の即席カップルたちが音楽に合わせて上下運動をしている。子供がみたら悪夢にうなされそうな光景にも思えたので、ちゃんと子供たち(とカップルで遊びに来たお兄さんお姉さんたち)には記憶とメンタルケアを操作しておいた。

 園内には大きめのキャラクター帽子をかぶっている女の子や、大きな手の飾りをはめている仲良しグループなどが目につく。『知らない人で、同じキャラクターグッズを身に着けている相手を見つけたら、その人とセックス。キャラクターグッズ以外は何も身に付けずに、相手と濃厚に交わろう。その相手が最高のエクスタシーに達するまで、全力で奉仕しなさい』という指示を、園内をカバーするくらいの広い範囲にミツルが出す。キャラクターグッズの好みが同じ人同士なのだから、もしかしたら体の相性もバッチリ合ってしまうようなこともあるかもしれない。夢の国で運命の出会いが演出出来たりしたら、素敵じゃないか、と、ミツルが言う。ミツルの珍しくキラキラした目を、ツトムが生気の無い眼差しで見つめていた。

 園内のあちらこちらで、予想外の出会いをはたした即席カップルが、キャラクター帽子や手の飾り、ヌイグルミと一体化したリュックサックなどのみを身に着けてあとは全裸という姿で、一心不乱にセックスに励んでいる光景が見えるようになる。年の差があっても、ビジュアルのレベルやタイプが全然合致していない人たちでも、女の人同士でも。同じキャラクターグッズを身に着けている相手と目が合ったら、10メートルくらいの距離を走りながら服を脱いでいって、相手の胸元に飛び込んでいく。当たり前のように抱き着き合い、激しいキスを交わして、レンガ道に寝そべると、ゴロゴロと転がりながらキスとペッティングを続ける。阿吽の呼吸で、人目も憚らない、大胆で過激なピストン運動が始まる。そんな景色が園内の至る所に現れる。中には、法則性に気づいた目ざといお兄さんたちもいたようで、売店で賞品のキャラクターグッズを展示目的で自ら身に着けている店員の可愛いお姉さんを見つけると、エッチが目的で同じグッズを購入し始めたようだ。店員のお姉さんはお店の商品が飛ぶように売れるのと、これから自分の体を酷使してイカせなけらばならないお客さんが列を作っているのを見て、困ったような笑顔で「嬉しい悲鳴」を漏らしていた。大きめのギフトショップには遠めからもパッと目を引く、「看板娘」さんがいる。彼女の裸に触れたい男性客がレジと彼女の前に行列を作っている。多少強張った笑みを作りながら、看板娘さんはキャラクターの耳がついた髪留めとリストバンド、そしてポシェット以外は素っ裸の状態で、押し寄せるお客さんたちに必死のご奉仕を続けている。アソコと両手と口とオッパイの谷間に同時に押しこまれるオチンチンを懸命にすべて愛撫しながら、顔から胸から、体中にかけられる白い粘液を笑顔で受け止めていた。今日はお店も大盛況だった。

 そろそろパレードの時間だと、係の人が日焼けした顔に業務的な笑顔を浮かべて、ハスキーな声で誘導を始めている。シュントたちも沿道に並ぶことにした。少しでも前の方でパレードがみたいと、定められた線よりも前に座ったり、一人で何人分もの場所取りをしている、マナーの悪いお客さんに、係の人が注意をしている。大変そうなので、ミツルが手伝ってあげることにした。もちろん、『双シン壱号』を使ってだ。少し嫌な予感を感じて、操縦機を渡し渋っているツトムから、箱型の機械を奪ったミツルは、ハンドマイクを口に当てる。

『パレードの邪魔をするお客さんが出ないように、前列にいる人たちで人間の柵を作ろう。前列にいる若い男女、それから後ろの方にいても自分の体の魅力に自信があるお客さんは、前で裸になって、西側に顔を向けて四つん這いになろう。前の人のケツが目の前に来るよね? せっかくだから、前にあるおケツをキスしたり舐めたり、可愛がってあげよう。君たち自身のお尻も舐められると思うから、その感触を楽しんで。』

 ツトムが、予感が的中した、とばかりに渋い表情を作る。また、お尻の行列だ。けれどツトムの良識や戸惑いなど、双シン壱号の発信には敵ではない。園内の沿道に集まってきたお客さんたちは、みんな素直に立ち上がって、「仕方がない」といった表情で服を一枚一枚脱いでいく。ゾロゾロと全裸になった彼女たちが四つん這いの列を作ると、そこに肌色の柵が登場した。チューチュー、ペロペロ、ピチャピチャと、舌で前の人のお尻を舐める音がそこかしこから聞こえ始める。

「おっ、あのオッチャン、なかなかノリがいいね。…………ひょっとすると生粋の尻フェチ親父かもしれない………」

 ミツルが嬉しそうに駆け寄っていって、データを採取しようとする。その先をたどると、確かに前に四つん這いになっているお姉さんのお尻を、唾液が飛び散るほどの勢いで舐めまわしているオジサンがいた。家族連れでこの遊園地に来ているのだろうか、今のこの時間だけは、全てを忘れて目の前のお尻を舐めたり、お尻の肉が引っ張られるほど吸いついたり、あるいは口いっぱいに甘噛みしたりと、自分を曝け出してこの瞬間を満喫していた。その変態オジサンの頭にヘッドホンをつけて、データを採取したミツルが、満足げに真空管を弄る。次に『双シン壱号』のハンドマイクに何か囁いて操作盤を弄ると、オジサンの性癖と今の感情が伝播していく波が見えるかのように、そのはじけっぷりが沿道で列を作る裸の人たちに広がっていく。いつの間にか、若くて上品そうなお母さんも、グループで遊びに来たらしい女子学生さんたちも、カップルもお一人様も、綺麗なお姉さんも、可愛らしい美少女も、みんな夢中になって、自分の顔の前に突き出されているお尻を舐めまわして、吸いついて、子犬がじゃれるみたいに甘噛みすることに夢中になる。お尻の穴に舌先を入れることすら、何の躊躇いも見せずにやってのける。至福の表情でウットリと目を細めたり、そうかと思うと今度は真剣に目を見開いて、口いっぱいに尻の肉を頬張ったり舌をグリグリとお尻の穴までも押しこんで背徳的な快感を貪ったり。完全に自分たちの世界、しかも現実からかなり遠い世界に入りこんでしまっている。これからやってくるはずのパレードのことなど、頭の片隅にも残っていないようだ。自分のお尻も後ろで四つん這いになっている人に唇と歯と舌とでネットリと愛撫されて、腰をクネらせ、背筋を反らせて悶え喘ぐ。そしてその刺激に負けないように、いっそう熱のこもった愛撫を前のお尻に与える。変態尻フェチ人間の数珠繋ぎが、暑い園内の照り返しのくるレンガの沿道の気温をさらに5℃くらい上げていくのだった。

「お………、パレード、そろそろ先頭がこっち来るな」

 ハンドマイクに何か囁きながら、シュントたちのもとに戻ってきたミツルが、パチッと思わせぶりなウインクをしてくる。シュントは隣のツトムの顔を見なくても、ツトムの渋い表情が簡単に想像出来た。

 楽し気なメロディと力強いビート音。パレードの先頭メンバーが近づいてくると、シュントは予感が的中したことに気がついて肩をすくめる。笑顔全開でローラーブレードで滑走してくるお姉さんたちは、ウィグと白銀のシルクハット、そしてステッキと手袋の他は、体を覆う布を一切、身に着けていなかった。子供や家族向けには設定されていないパレードの始まりだった。

 蝶々の羽のようなものを背中に背負った、小柄なお姉さんたちは羽以外のコスチュームを身に着けていないせいで、本物の妖精のように見える。嬉しそうに沿道の観客たちに手を振ったり、投げキッスをしたり、悪戯っぽくお尻を振ってみせたりする。普段の衣装がそれを求めるのか、アンダーヘアーを前の方少しだけ残して、剃ってしまっているお姉さんが多かった。

 次の集団は男女のペアが何組も横に並んで進んでくる。女の人は両手で這っていて、男の人がそのパートナーの腰を抱えて、性器を結合させたまま、ノッシノッシと歩いてくる。男性ダンサーも女性ダンサーも、セックスしながら前進しつつ、何の悩みもなさそうな、カラッとした笑顔で左右の沿道沿いのお客さんたちに挨拶をしている。とても礼儀正しい人たちだ。

 飾りつけをされた台車がモーターの力でゆっくりこちらへ向かってくる。「フロート車」と呼ばれる、お祭りの山車のような乗り物だ。その上にはキャラクターの着ぐるみの頭の部分だけ身に着けて、首から下がスッポンポンの状態のアクターが両手を振っている。フロート車の飾りつけには上からスポーツブラやショーツ、アンダースコートのような布がひっかけられて、たなびいている。周囲を踊り歩いてる裸の、あるいは半裸のダンサーさんたちの下着のようだ。ダンサーさんたちは歩道へ近づいてくると、ノリの良いお客さんを見つけて、両手でハイタッチをしている。その瞬間に剥き出しのオッパイを両手でタッチしてくるお客様もいるが、そんな人たちにも、おどけたような怒り顔を作ってプンプンとリアクションをとって見せる、さすがのプロ根性の持ち主たちだった。そんなお客さんとダンサーさんとの瞬間的なスキンシップの下で、「人間柵」になっている綺麗なお姉さんは今も、お尻を舐められ、舐めることにだけ夢中になって、あたりに自分の涎を散らしていた。

 足の下に竹馬のように長い台をつけて、身長が2倍になったように見えるお姉さんたちも、腰回りと胸は丸出しなので、歩くたびに上空でオッパイがブルンブルンと揺れるし、大股開きで歩いていく途中にアソコが開いたり閉じたりするさまが全部見えてしまっている。続いて来たフロート車の上では、おとぎ話のなかの王子様とお姫様にそっくりな白人の俳優さんたちが、大胆な姿勢でセックスの真っ最中。お姫様役にしては歯を剥き出して漏らす喘ぎ声からはあまり品とか恥じらいとかは感じられないが、そのぶん、生のエネルギーに満ち溢れているようで、観客たちを圧倒してくる。

 フロート車の間を縫って、ローラーブレードで颯爽と滑走していく美女たちがいる。見事なプロポーションと体の柔軟性を見せつけて、フィギュアスケートの選手のようなポーズで優雅に滑っていく。足以外は全裸という姿のために、そのスタイルの良さはいっそう際立つ。汗をうっすら浮かべた体が、日没の時間帯の西日に照らされて、キラキラと光っていた。

「そろそろだぞ………」

 ミツルが呟く。ウットリとした表情で背筋を反らして滑っていく美女たちは、今度は体を横に伸ばして、地についていない方の足をピンと伸ばしたまま大きく開くと、ためらうことなく、そのままの姿勢で、滑走しながらオシッコを始める。歩道近くで緩やかなターンを決めると、放射状に飛んでいく液体が歩道の観客たちにもかかる。悲鳴が上がった。

「ひどいな………。もう、いい加減に………」

「うおっ。何だあれ………。しまったっ!」

 ツトムの呆れた声を、ミツルの驚いた声が遮る。そろそろ大トリといった、一際大きなフロート車が、オシッコ・スケーターたちの露払いの後で現れると、ミツルが頭を抱えた。最後の大フロートに乗っていたのは、普通に筋肉質な男女のアクターたち。抱き合って、駅弁スタイルで腰を振っている。その足元には、この遊園地のメインキャラクターである、人気キャラクターペアの着ぐるみと頭の部分とが転がっていた。

「うぉいっ! ………お前らは違うだろう。………人の…………夢を壊すなよっ!」

 ミツルが膝から崩れ落ちる。オタクでマニアなミツルは、実はこのキャラクターペアを大事にしてきたようだ。その着ぐるみそっちのけで全部脱いでエッチに興じるアクターたちの姿に、ピュアな幻想を破壊されたようで、頭を抱えて呻いていた。けれど、シュントが考えてみると、これも全てミツルが『双シン壱号』で指示したことのはずなのだ。アクターさんやダンサーさん、スタッフさんたちは操縦された通りに動いて、笑顔で裸を晒して、お客さんたちに愛想を振りまいて、激しくセックスをしながら練り歩いた。全て、ミツルの指示に自動的に服従した結果なのだ。シュントは、足元で子熊のような呻き声を出しているミツルの姿を見て、なぜかちょっと、胸のすく、スカッとした思いを感じていた。

「言っただろ? ………だんだん指示が雑になってるって…………。悪ふざけばっかしてるから、こうなるんだよ」

 ツトムが笑う。シュントもツトムと顔を見合わせて、肩をすくめて笑った。

 そろそろ笑い疲れたし、途中で可愛い子を見繕っては、ツマミ食いするのも疲れた(ミツルに至っては、「可愛い子ちゃんのお尻に挿入させてもらったら、さっきまでチュロスが入っていたみたいでザラメ状の砂糖が残っていて痛かった」とボヤいていた)。狂乱のパレードが終わって、日も暮れたところで、遊園地を出ることにする。出口へ向かおうとする3人の背後で、広場のお城付近から花火が上がる。わかりやすい、夏の思い出になりそうだった。シュントとツトム、ミツルは少し照れ臭そうにしながらも、振り返って男3人で花火を見る。………途中で最後に一つだけ、しょうもないイタズラを思いついたシュントが、操縦機のハンドマイクを口元に寄せる。

『今、園内にいるカップルは、今日一緒に見た打ち上げ花火の数と、同じ数だけ1ヶ月以内に、セックスをしなさい。今日の指令は以上です。お幸せに。』

 シュントが周りを見回すと、まだ付き合い始めたばかりのような学生カップルが、打ち上げ花火の数を数えながら、手を繋いでモジモジしているところを見る。新婚夫婦らしい男女を見ると、女の人がハシャギながら花火を数えて足をバタバタさせている。旦那さんは少し不安げに、夜空を見上げながら生唾を飲みこんでいた。空を見えてニヤニヤする彼氏の横で、気まずそうにしている彼女もいる。そしてフィナーレに向けて、大小の花火の連発が始まる、10連発? 20連発? まだ続いている。カラフルに光る夜空を見上げるカップルたちは、もう呆然と、口を開けたままの状態で、指折り数えていた。もはやお兄さんもお姉さんも、信じられないという表情でただただ、空を見上げている。冷静なカップルの中には、今夜からタスクを消化しなければと、慌てて電話で宿泊先を探し始めている人たちもいた。ツトムが笑いだす。ミツルも、笑いながら近くで青い顔をしている美男美女カップルたちの肩をバシバシと馴れ馴れしく叩きながら激励する。嬉しさと不安が入り混じったようなお兄さんや、片手で自分の口を隠して、もう片手が無意識のうちに自分の股間を押さえている生真面目そうなお姉さん。皆の唖然とした顔を見ていると、まだ笑いが止まらない。シュントとツトムとミツル。3人の中学生男子は、3人並んで肩を組んで、笑いながら遊園地を出ていくことにした。なんだか世界を手に入れたみたいな気分がする、暑いけれど最高の夜だった。

<第6話につづく>

5件のコメント

  1. 読ませていただきましたでよ~。

    スポーツ選手は芸能人に入るのだろうか・・・?
    本人が芸能人と思っていれば暗示どおりに動くのだろうけれど・・・つまり、あの内野手は自分を芸能人だと思っていたということでぅかね? 引退後はタレントとして活躍しそうでぅw

    志堂先生の乙女化はまだ解いていなかったのかという感じでカラオケのときの志堂先生の行動にちょっとびっくりしましたでよ。あと、青砥セイナちゃんがちょこちょこ出番もらっててみゃふ狙い撃ちされてる? とか自意識過剰なことを思ってしまいましたでよw

    それはそうと、今回誤字を四箇所くらい見つけたのでぅ。
    >「う………ん・。……ゴメン、葛城君。話はやっぱり、後にしよう。………今は、裸のお付き合いの時間だから」
    んの後の・は変換ミスか打ち間違いか・・・?

    >そしていっぺん、抵抗を諦めてみると、意外と楽な面もある。つまらない授業や今日にの持てない勉強も、
    今日には興味の打ち間違いでぅよね

    >シュントが胸の前に抱えた、箱型の機会のようなものに触れる直前までは。
    機会

    >顔を真っ赤にしてモジモジ、オドオドしながらも、大胆に両足をおっぴろげて股間を? く、
    ? くがよくわからないんでぅけど開くが機種依存文字にでもなったのでぅかね?

    とまあ、こんな感じでぅ。
    とりあえず、次回が最終回とのこと。
    やりたい放題やってる収集はつくのだろうか? 三人の仲は別に変わらないとのことでぅがこの話をどう畳むのか楽しみにしていますでよ~。

  2. 『双シン壱号』の使う場所が大きくなっていくのは当たり前の展開!
    それにしてもこんなに大規模だとはw
    MCの醍醐味というか、スキルが苦手なユーザーのせいで予想外の結果が出るのがささやかな楽しみかも~。

    遊園地のパートが良い部分は悪童のガキたちの命令に以前に肉付けするはずがなかった無関係の男女が[即席カップル]で思わず大量量産されたり、カップルを交差させて他人に「口でサービス」。 次はサービスを受けた他人がバトンを受け取り、サービスしてくれるとか、役逆転の演出がシンプルにエッチw

    次の6話が待ち遠しいですね!

  3. おお、大規模パニック回だ!
    最後のパレードみたいな、本人の命令が適切に機能しているからこそ、想定外の事態が生じるパターン大好きです。
    マーフィーの法則に「プログラムは、あなたがして欲しいことではなく、しろと命じたことをする」という一節があるのですが、けだし名言だと思っています。
    あと王道ですが、ヒトミさんみたいに、自分で考えて納得した結論だと本人は思っている系が大好きです。
    本当は操られている被害者なのに、いつの間にやら共犯者や加害者にさせられたり。

  4. 読ませていただきました。

    4,5話くらいの規模でおっかなびっくりしつつも大胆になって来ている感いいですね。
    このシリーズに限らず永慶さんは操り内容のレパートリーが凄いですね。
    次で最終回かな?楽しみにしています。

  5. >みゃふさん

    ありがとうございますー。スポーツ芸能と言いますから、本人も芸能人気分でいる人だと思います。
    というか、「女子アナと結婚したい、女優と結婚したい」というビッグマウスがちょこちょこいるんですよ。
    打撃で一軍でもちゃんと結果を出してくれれば、本当に問題ないんですけどね。。。。
    そんな訳で、来シーズンはみゃふさんも、この地方のマイナー球団を一緒に応援してくださいませ。

    >ソウルフードさん

    感想ありがとうございます!大変励みになります。
    規模の大きなMC風景は、実写などではなかなか難しいので(パフュームという映画の集団催淫シーンはなかなか迫力がありましたが)、
    活字に大いに有利な戦場だと思っております。
    完全な万能機械や能力ではないので、出来ることに限界はありますが、ラッキーな利用者にはそこに挑み続けてもらいたいと思っております。
    温かいご感想をありがとうございました。とても嬉しかったです。

    >ティーカさん

    毎度ありがとうございます!今回は結構自分の基本に帰りつつ、
    妄想の肺活量みたいなものを試しております。
    次が最終話です。今年の夏もそろそろ終わりでございますです!

    >慶さん

    ありがとうございます。
    MC好きのなかでも、ロマン主義者はどんどん限界までチャレンジしたがると思いますし、
    自然主義者は、現実的にありそうな限界を考慮しつつ、安全運航(もしくは納得性の高い失敗談)を想定すると思います。
    うまいこと両方にご満足頂けるラインを、今後も探って行きたいと思います。
    感想ありがとうございました!

    永慶

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