DRAW 前編

序章 奇妙な冒険のはじまり

 

 その男、丁屋蝶人(25歳)が、夜の街を徘徊していたのは、季節としては春とはいえ、まだ風の冷たい、花冷えする夜のことだった。丁屋蝶人はその珍しい名前と、人並外れて濃い顔立ち以外は、取り立ててどうってことのない、平凡なニート。ずっと家に引きこもっていると母親の愚痴が鬱陶しいので、時折、小遣いをねだっては、夜の街で気晴らしに一杯飲む。そうして、年取った母親が眠りにつく頃に、自宅に戻って、朝までゲームに興じたり、エロ画像やエロ小説のサイトを覗いたり、マニアックな生配信動画に、厳しめのコメントを出したりして、夜が更けるのをやり過ごす日々だったのだ。

 

 しかしこの男の人生が、今夜変わるっ! そんな人生の岐路とは、常に唐突に訪れて人の運命を決定づけていくのだった!

 

。。

 

 カランコロンカラン

 

 ドアのベルが乾いた金属音を立てる。蝶人は久しぶりに顔を出した、ゲームバーだったはずの店内をのぞき込む。暗がりに目が慣れると、閑散とした店内の様子が明らかになった。立ち飲みのカウンターに歩いていく蝶人。前に来た時には、カードゲームや、テーブルトークRPGなどをテーマにしたバーだったはずだが、何ヵ月か、蝶人が顔を出さないでいるうちに、ごく普通のコンセプトのバーへと変わりつつあるようだった。カウンターの端には、ズングリムックリした体格の、アフロヘアーに近い天然パーマのオジサンが、こちらに背を向けて、強そうな酒をチビチビと舐めていた。

 

「ジントニックをください」

 

 蝶人が声をかけると、マスターはグラスを吹きながら無言で頷く。彫りの深い顔立ちの、やはり濃い顔のマスターは、少しだけ両方の黒目が離れている印象のせいで、何を考えているのか、こちらの想像を拒んでいるような佇まいだが、それ以外にはスラッとした体格と、なかなか男前な顔立ちをした、ダンディな存在と言って良かった。

 

 無言でカウンターに差し出された、ミックスナッツが入った小皿。蝶人がそれをつまみながら、店内を無感動な視線でもう一度見回す。やはり、隣に立っている、小太りなアフロ男が気になった。よく見てみると首にはネックレス。そしてブレスの巻かれた太い手首を見ると、爪にはマニキュアが塗ってあった。顔だけ見れば、完全に普通のオッサンなのに。この男はどうやら、世に言うオカマらしかった。

 

 カチャカチャとマスターが、カクテルを振っている。その様子を黙って見ているのにも飽きた蝶人は、意を決して、隣のオカマに話しかけた。

 

「あの…………こちらのお店は、よく来られるんですか?」

 

「………あら…………ナンパかしら?」

 

 オッサンの声で、ボソッと不愛想な、オカマ言葉が返ってくる。蝶人は慌てて視線を外して、自分の正面にあるボトルの陳列を見据えながら、気を付けの姿勢になって返事をした。

 

「いえっ………あの、そんなつもりじゃ、…………すみませんでした」

 

 慌てて声を張ったつもりだったが、思った以上に声が出ていない。日中は家に引きこもっているせいで、母親以外の他人と話す時に、驚くほど、声が出ない自分に気がつく。こちらを向いたオカマ親父の、そのネトッとした視線に、気づかない振りをして、やり過ごそうとした。

 

「冗談よ…………。ゴメンね。ちょっとからかってみただけ…………。可愛い子ね。マコーレー・カルキンみたい」

 

「………子役の頃の、マコーレー・カルキンみたいですか?」

 

「最近の……よ。……………ま、普段は自宅に引きこもってそうなところは、『ホームアロン』の頃のマコーレー坊やと似てなくもないけどね。ブフッ」

 

 オカマは、一人で喋って、一人で面白そうに噴き出した。蝶人は何が面白いのかわからなくて、手に取ったナッツを、空中に放り投げて口でキャッチしてみた。やがて注文したカクテルが物静かなバーテンダーによって蝶人に差し出される。一口飲もうとしたところで、隣のオカマが、また口を開いた。

 

「アンタ、やっぱり可愛いわね。………このあと、うちに来る?」

 

「ブホッ…………ウゲェエエエッ」

 

 噴き出した拍子に、アルコール分の強い飲み物が気道に入ってしまった。蝶人はカウンターにつかまって、体を突っ張って吐き出した。

 

「冗談だってば、ゴメンなさいね」

 

 大柄なオカマは蝶人の背中をさすりながら、マスターから受け取った布巾で、カウンターを拭いてくれた。悪い人ではなさそうだった。

 

「からかったりして、悪かったわ。…………お詫びに、今夜はちょっとご馳走してあげようかしら。‥‥アタシ、このあたりでは、皆に、『ショーデンさん』って呼ばれてるの。悪いオカマじゃないから、心配しないで良いのよ」

 

 蝶人は喉のえづきを必死で我慢しながら、ショーデンと名乗った、オカマの顔を覗き込む。妙に迫力のあるオカマの姿。迫力のせいだろうか? その背後から、ゴゴゴゴゴゴゴゴと、空気が鳴る音がした。蝶人は子供のころから、不安を感じるとこのような耳鳴りを聞いてしまうのだった。

 

 

 何杯か、高めのお酒や甘いカクテルを飲ませてもらっているうちに、蝶人はショーデンさんと徐々に打ち解けてきた。もともと酒に弱い体質のせいもあってか、気がつくと、母親に対する愚痴や、辞めたブラック会社への文句。そもそも親ガチャに外れたと、自分の人生に対しての不平不満や、鬱屈とした気持ち、そして最近ハマっているエロサイトの話などを、ほとんど一方的にショーデンさんに話していた。引きこもり生活を始めて、はや一年。たまに夜の街を徘徊したのも、目についたオカマに話しかけたのも、もしかしたら、自分は寂しかったのかも、自分の話を聞いて欲しかったのかもしれない。そう思いながら、初対面のオカマのオッサンへ語りかけていた。

 

 オカマのオッサンも、若い男が好きなのか、面白いはずがない蝶人の日常の話を、ニコニコしながら聞いてくれる。特に、彼が最近ハマっている、マインドコントロールをテーマにしたエロ小説サイトの話を聞くと、腹を抱えて笑ってくれた。

 

「ウハハハハハッ………。ヒィ~。おかしい…………。男って、ホント馬鹿よね。良いじゃない。………アタシ、変態って好きよ。…………ブフゥ~」

 

 笑い疲れた様子のオカマのオッサンが、ため息とも豚の吐息ともつかない、謎の息を漏らした。

 

「…………からかっちゃったことのお詫びと、しょうもない変態小説サイトのことを教えてもらった御礼を、何かしてあげなきゃね…………。蝶人。アンタ、今、もし、願いがなんでも1つだけ叶うとしたら、何が欲しい?」

 

 ショーデンさんがこちらを見る。その顔は、笑顔から少しずつ、真顔へとグラデーションを見せていく。

 

「え? 俺っすか? …………欲しいものだらけですよ。仕事もお金もないし、彼女も欲しいし、いい服もクルマも、自分の家も持って一人暮らししたら、母ちゃんにうるさいこと言われないだろうし。…………あと、風俗も行きたいなぁ~。………でも、強いて言うなら、やっぱり、さっき話してた、MC能力ですかね? マインドコントロールですよ。他人を思うままに操るの………」

 

 心を開放しきってしまっている蝶人は、ペラペラと欲しいものを羅列した。ショーデンさんはこちらを向いているけれど、もう笑っていない。蝶人が何の気なしにバーテンダーの方を見ると、彼も話は聞いているらしかったけれど、氷をアイスピックで削る作業に没頭しているような素振りを見せていた。人のまばらな店内に、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴと、空気の振動だけが聞こえていた。

 

「アンタ、やっぱり、いい感じにキモイわね。…………残念ながら、今回はアンタに、マインドコントロールの力はあげられないかな? …………かわりに…………。アタシと、ちょっとしたゲームっていうか、賭けをしてみない?」

 

 ショーデンさんは、カウンターの端、客が暇した時に時間を潰すための、ゲーム用品が入った籠に手を伸ばした。この店がゲームバーだった頃の名残だろう。

 

「これ………サイコロ。…………アンタ、これ、持ってきなさいよ。『人生やり直したい』って、さっき言ってたでしょ? まだ若いくせに、詰んだだの、リセットしたいだの………。このサイコロを、自分の部屋で振ってみなさいよ。ちょっと、違う世界を覗けるわよ。…………でも、賭けてもいいけど、このサイコロに完全にハマった奴は、最後、この世界には戻ってこない。…………アンタがそうならないか、アタシと賭けてみない?」

 

「…………違う世界ってなんすか? ………パラレルワールド?」

 

「まぁ、そんなようなもんよ」

 

「俺ね、マーベル映画とかも好きで見てるんですけど、パラレルワールドって概念が出てくるたびに、ちょっと萎えるんすよ。パラレルワールドって言いだしたら、もう、なんでもありでしょ? 映画で1回死んでも、次作では違う世界です、って言って、平気な顔で生き返ってる。あれ、やられるたびに、感動とかドキドキとか減るわけですよ。どうせ何千とある並行世界の、1つの結末でしかないんだろうなって思うと、もう熱中しにくくなる」

 

「アンタ………。やっぱり、自分には極甘だけど、他人の仕事には厳しいわね。さすが、現代のオタク男子…………。やっぱ、面白いわ。…………いい感じでキモイし」

 

「………オカマにキモイとか、言われたくないっすよ」

 

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………空気が震えていた。

 

 ショーデンさんは手に取った大き目で六面体のサイコロをギュッと握りしめて拳を作ると、自分の額の近くに持ってきて目を閉じた。オデコの真ん中にある大きめのホクロから、拳に、一瞬何かの光が放たれたような気がした。

 

「ほい。ダイス」

 

 オカマのショーデンさんが放り投げてきたサイコロは、白くて大きめの六面体のサイコロ。どこにでもありそうな、どうということのない…………。そう思って、よく見てみると、蝶人は驚きの声を上げた。さっきまでは本当に、普通のダイスのはずだったのだ。

 

「こっ…………このダイスっ…………。1の目と2の目、そして6の目しかないぞっ…………。今、何をしたって言うんですっ?」

 

 3の目や4の目があるはずの場所は、真っ白になっている。そんな不思議な、スゴロクやゲームには使い道がなさそうなダイスを見て、蝶人は額やこめかみに汗をかきながら周りの様子を伺う。人目を集めそうなくらいの音量の声だったのに、店内にいるまばらな客も、バーテンダーも、蝶人の言葉が聞こえたなかったようなふりをしている。ゴゴゴゴゴゴゴゴゴという戦慄の音だけが蝶人の耳に聞こえていた。

 

「他の目も、おいおい出てくるはずよ。貴方がそれに相応しいと、このダイスが判断した時には」

 

「ダイスが、僕のことを判断? …………今、この人は、一体、何を言ってるんだぁああ?」

 

 勢いに飲まれて。蝶人も絶叫してしまう。なんだか、そうしたほうが良いような、雰囲気だったからだ」

 

「そう、このダイスは貴方に類稀な能力を与える。『DRAW』。『ダイス、ルーム&アナザーワールド』。貴方は今、その力を授かったっ」

 

 それだけ太い声で叫びながら、アフロヘアーのオカマのオジサンは、バーのカウンターに乗り上げて、とびきり変なポーズを決めた。

 

 蝶人は、今夜は家でじっとしていた方が良かったのかもしれない、と、ポーズを決めたまま動かなくなったオカマのオジサンを見上げながら思った。カクテルを作っているバーテンダーは、カウンターに乗り上げたショーデンさんに視線すら送らずに、「ヤレヤレ」と首を小さく左右に振った。

 

 

。。。

 

 第一部 2の目とセカンドライフ

 

 ダイス、ルーム&アナザーワールド! ショーデンさんと名乗るオカマはその力をそう名付けたっ。その夜から、丁屋蝶人の人生は、違った道へと転がり始めていたのだった!

 

。。

 

 23時45分。家に着いた時にはすでに、酔いは覚めつつあった。蝶人は2階にある6畳間、自分の部屋に入ると、ドアのカギをかけた。1階で既に寝ている母親を起こさないように気を遣いながら、蝶人は普段は家庭用ゲーム機を置いて使う、ローテーブルの前にあぐらをかいた。ポケットから、さっき受け取ったダイスを取り出して、マジマジと見つめる。赤い丸で印されている『1の目』。黒丸が2つ、斜めに並んでいる『2の目』。そして『1の目』の面の裏側にある、『6の目』。これ以外の面は真っ白になっているダイス。さっきカウンターでショーデンさんと名乗るオカマのオジサンが、その太い手に握りこんだ時には、ごく普通のダイスに見えていたものが、今はこんな、一風変わったダイスになっている。あれは、マジックか何かだったのだろうか?

 

『まずは「2の目」が出るまで、試してみなさいよ。「1の目」は何も変化が無いはずだから。気をつけるのは、「6の目」。これが出たら、6時間は、ダイスを振った部屋から出たら駄目。扉や窓も開けずに、6時間は絶対に閉じこもってやり過ごすこと。それだけ気をつけてれば、おいおいアンタもこのダイスの持つ力について、わかってくるはずだから………。』

 

 ショーデンさんは、そこまで言うと、喋るのが面倒くさくなったのか、「ブフーッ」と息を吐いて、手にしたお酒を飲みこむ。そのあとは無口になっていった。

 

 

「なんか、変なオカマにおちょくられただけだったのかもしれないな…………。こんなんで、人生が変わるかよ…………」

 

 蝶人は自嘲気味に呟いて、ダイスをローテーブルに放り投げてみる。ダイスはテーブルの上を転がった後、白い面を上にして止まった。興味本位でしばらく待ってみても、何の変化もない。蝶人は(念のため、念のため)と自分に言い訳しながら、もう1回だけ、ダイスを振ってみることにした。それで何も起きなければ、このダイスは窓から投げ捨ててやろう。そう自分に言い聞かせながら………。

 

 2回目でこの確率は、ラッキーかもしれない。「2の目」を上に向けて、ダイスは止まった。ちょっと待つ。何も起こらない。(よし、捨てよう。)そう思って蝶人が座布団から腰を上げようとした瞬間、予想外のことが起きた。ダイスの上面にある、2つの黒丸の外周が、青色に光ったのだ。

 

「なんだこれ? おしゃれなイルミネーション効果? …………ヴィレッジバンガードのおもしろ・インテリア商品かよ………。……ウオッ」

 

 蝶人は浮かした腰を座布団にドスッと、倒れこむように落とした。急に蝶人の部屋の周囲から、ドドドドドドドドドドドッと、大きな音が、振動を伴って響きだしたからだ。

 

「え? …………えぇ? …………嘘だろ? …………ちょっと………何これっ?」

 

 蝶人は思わずローテーブルにしがみつく。彼の部屋の四方を囲う壁が、ゆっくりと回転し始めたからだ。クローゼット、ポスター、窓、壁と一体化している本棚も、見上げると天井ごと、反時計回りに回転している。四方の壁が、ちょうど360度、一周したところで、轟音と振動は止まった。

 

 蝶人は黙ったまま、身動きもせずに30秒くらい、次に起こることを待っていた。そして、もうその後には何も起きなさそうな様子を確認してから、ゆっくりと動き出す。自分の部屋を確認してみた。座卓の上に置かれたダイスは、まだ2つの黒丸の外周が、青く光っている。さっきよりは光は弱まっているが、内部から青い豆電球で照らされている程度の光は、安定して出している。6畳間を隅々まで確認したが、壁と床の間に隙間が出来ていたり、擦ったような跡などは存在していなかった。けれど、夢や幻覚、あるいは気のせいだと自分を納得させるには、あまりにも大きな轟音と振動だった。まだ自分の体に、その振動の残響が残っているような気すらする。絶対にあれは、見間違えなどではなかった。

 

 けれど、窓を開けても、その轟音を聞きつけて外に出てくるような人は見えない。ほんの少し、匂いというか、空気感がいつもとは違うような気もするが、すぐにその違和感は消えた。そしてドアを開けて廊下を歩き、階段を半分くらい降りてみても、母親が起きて様子を確かめに来るような気配すらなかった。蝶人は家の外へ出て、外から自分の部屋の様子に変わりがないか、確かめようかとも考えたが、思案の末、自分の部屋に戻り、布団を敷くことにした。こんな深夜に、外へ出ようという気にならないほど、さっきの出来事が異様だったからだ。………どうせ何か確かめるなら、朝か昼が良い。普段は幽霊やお化けなんて信じていない、夜型生活が染みついた蝶人でも、気味の悪い想像を始めると止まらなくなる。それくらい、さっきの出来事は、蝶人に強烈な印象を残していた。都合の悪いことが起きたら、寝てやり過ごす。これまでの人生でも、蝶人はそうやって生きてきた。

 

 

 翌朝、蝶人は珍しく、まだ窓の外にスズメの鳴き声や登校する子供の声が聞こえる時間帯に、起床して、部屋を出る。1階に降りると、母親が朝食を片付けていた。

 

「あう…………珍しいわね。チョラトはきのラも遅かったみたいだったから、きょラも朝は起きてこないのかと思ってたわ」

 

 蝶人のために、残した朝食を移し替える作業をしながら、世話焼きな性格の母は、蝶人の姿を見て、そう言った。いつもよりも早起きな息子の姿を見たせいか、少し嬉しそうだ。

 

「? ……………。いや…………、ちょっと気になって、様子を確認しに来ただけ………。夜にさ、俺の部屋のあたりから、すごいデカイ音とかしなかった?」

 

「チョラトの部屋から? ………何にも、お母さんは気がつかなかったけど。………何か、ご近所迷惑な音とか、たてたとおもラの?」

 

 母親の滑舌が、今朝に限って、異常に悪い気がしたが、蝶人は聞き流した。両肩をすくめたあとで、いつものようにぶっきらぼうに会話を断ち切ると、ダイニングルームに背を向ける。

 

「ちょっとタバコ買ってくるわ」

 

 蝶人は妙な気分を抑えつけて、コンビニへ買い物に行く。普段は働く人たちの出勤時間に外出するのは避けているのだが、今日の母親と顔を突き合わせているのは、少し気持ち悪いと感じたからだ。近所のセブンイレブンで、17番のメビウス・メンソールを頼んだ。

 

「はい、じゅラななばん、メビラスのメンソールですね。ごひゃくななじゅラえんです。ありがとラございます」

 

「………おえっ……………。……………いや、すみません。…………何でもないです」

 

 蝶人は、アルバイトの店員であるお姉さんが、営業スマイルで口にした台詞を聞いて、急に小さな吐き気を催してしまった。このお姉さんが、当たり前のように喋っている言葉が、たまらなく気持ち悪く聞こえたからだ。お釣りとタバコを受け取った蝶人は、逃げるようにコンビニを出る。自宅へ走って帰ろうとした時、電信柱に貼られている看板が、ふと目についた。「火の用心」と書かれたその看板には、子供にもわかるようにフリガナで、「ひのよラじん」と書かれていたのだ。

 

 自宅に戻った蝶人は、母親と話すことも避けるようにして、2階の自分の部屋へと駆け上がる。テレビをつける。朝の時間帯、女子アナウンサーが明るい笑顔で、「続いて、天気よほラです」と平然と話していた。チャンネルを変えてみる。NHKのキャスターですら、「かんぼラちょラかん」の発言に対して「ひょラろんか」のコメントを伺っていた。公共放送のアナウンサーが喋っていることばが、何の訂正もなく、そのまま流されている。外国人向けのサービスなのかテロップにつけられた振り仮名が、「う」と「ラ」の入れ替わりを、はっきりと表示していた。これを見ていた蝶人は、最初は両手で自分の耳を塞いで、座卓に突っ伏したのだが、やがて頭を抱えて呻いた。

 

(「う」が「ラ」に変わっている。………違って聞こえるってだけじゃない。看板の平仮名も変わっている。…………俺の頭がおかしくなったのか? ………それとも………………これ、世界がこう変わったのか? ……………俺のせいで? ……………わからないっ。どっちにしろ、俺がおかしくなりそうだっ…………………。)

 

 思い出したように、蝶人はポケットに入れたままになっていた、タバコを取り出す。注意書きを読んでみる。

「貴方の健康を守るために、吸いすぎには注意しましょラ」と書いてある。

 

「う…………うぁああああああああっ」

 

 頭を抱えたまま、布団に飛び込んだ蝶人は枕で頭を隠すようにして布団の上でのたうつ。しばらくのたうち回っていた蝶人だったが、今度は飛び起きて、本棚を漁り始める。

 

 愛読書も辞書も、全巻揃えている「魔しょラ年 ビーティー」というコミックスも、全ていつの間にか、「う」と「ラ」が入れ替わっている。「ドラゴンボール」は「ドうゴンボール」になっていた。「ゆラゆラ白書」というコミックスの主人公は「ラうめしゆラすけ」という名前になっていた。最後に小学校の卒業文集を開いて、記憶を頼りにページをめくると、自分の文字で書かれた作文すらも「う」のかわりに「ラ」が書かれていた。

 

 バサッ。

 

 卒業文集を床に落とした蝶人は、急に無表情になっている。

 

「………………………」

 

 しばらく無言で宙を眺める。人が変わってしまったようだった。

 

「こういう時は、飽きるまでゲームやって、疲れたら………寝落ちするに限るんだよ」

 

 蝶人は今日に開き直ったような落ち着きを見せ始めると、TVのモードを変え、ゲーム機の画面を表示させる。出来るだけシンプルで中毒性のあるゲームソフトを探す。「テトリス」を始めた。体育座りで、食事のことも忘れたようにテトリスに没頭し始めた蝶人。人生でプレッシャーに晒される局面に出会うたびに、彼はこうして現実から逃避してやり過ごしてきたのだった。

 

 テトリスの自己最高得点を更新した頃、蝶人は窓の外が暗くなっていることに気がつく。ドアの外に置かれていた、トレイに入った夜食。母親が置いてくれていった食料を握りこむようにして食べながら、まだしばらくゲームを続ける。

 

 深夜、蝶人のリモコンを持つ手が、やっと止まる。テーブルに無造作に置かれていた、ダイスが青い光を強めたからだ。ドドドドドドドドドドドドドドドドと、間髪入れずに轟音が鳴り響く。

 

「うおぉおおおお、まただっ。………また、来やがったぁああっ」

 

 叫びながら、反射的に座卓にしがみつく蝶人。その周りを、自宅の部屋の壁が、今度は時計回りにゆっくりと回転を始める。40秒くらいかけて、四方の壁は360度回転して、動きと轟音を止めた。その後、ダイスは青い光を放つのを止めた。

 

 

 次の瞬間、蝶人は天井を見ている自分に気がつく。ローテーブルにしがみついて、周囲の様子を伺っているうちに、寝落ちしていたようだ。カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいた。部屋着のままで布団に寝そべっていた蝶人は、手に握っているものを見た。そこにあったのは、ゲームのリモコンではなくて、四角い、通常サイズよりも少し大きめのダイスだった。今は2の目の面も青い光など出してはいない。ごく普通のサイコロに見える。

 

 恐る恐る、ドアを開けて、階段を降りる。ダイニングキッチンで洗い物をしている、母親の後ろ姿を見ると、少し迷った後で、声をかけてみる。

 

「…………母ちゃん、おはよう。…………」

 

「…………あら、おはよう………。今日は早いのね。調子はどうなの? …………病院に行くこと、ちゃんと考えてくれた?」

 

 母親の言葉は、普通に戻っているように見える。蝶人はホッと胸を撫でおろしながら、適当に話を流した。

 

「いや………まぁ…………。別に…………。どうってことないわ」

 

 蝶人の言葉を聞くと、母は少し安堵したような表情を見せる。

 

「昨日の貴方、喋り方が変だったから、お母さん、心配したのよ。でも…………そういう脳の病気とかもあるみたいだから、一度、診察はしておいた方が良いと思うの。………失語症とか、言語障害とか、…………頭のことは心配だから、ちゃんと病院に行った方が良いわよ」

 

 その母の様子を見ると、また少しだけ、蝶人の不安は増した。昨日突然、言語障害になったように見えたのは、蝶人ではなくて、母の方だった。それを、彼の異常と思ってるとしたら、母こそ、まだ問題を抱えているのではないか?

 

 さらに色々と心配の言葉をかけながら、病院へ行くことをしつこく促してくる母親を無視して、蝶人は階段を駆け上がる。部屋に戻ってテレビをつけたり、本棚の本を漁ってみる。聞こえてくる言葉、目に入る文章に、何も異常は見つからない。すべては、元通りに収まっているように見えた。

 

「へへっ…………。まさかこれで…………、パラレルワールドとか、言うつもりか?」

 

 蝶人は皮肉っぽく、唇を歪ませて笑う。部屋の中でダイスを振ったら、「う」と「ラ」が入れ替わっている、並行世界に1日行っていた。…………この前のあのオカマは、そう言いたいのだろうか? …………部屋の壁が回転するような大掛かりな仕掛けで、わざわざ「う」と「ラ」の入れ替わった世界に行っただけ? …………どう考えても、コストパフォーマンスが合わなさすぎる。

 

 だんだん腹が立ってきた蝶人は、机の上にもう一度、ダイスを叩きつけるように投げる。上を向いたのは白い面。…………まだ少し、気になっていたので、少し未練たらしくはあったが、蝶人はもう一度、ダイスを転がした。「1の目」が出る。特に何も変化がない。腹立ちまぎれにもう1回。やっと「2の目」が上を向いた。青い光が丸の周りを照らす。

 

「はぁ……………。やっと出た。あのさ…………どうせなら、俺が超モテモテになってる世界とか、連れてってみろよ。そうしたら、信じるから。…………これが本当のパラレルワールドに、俺を飛ばしてくれるアイテムだって………」

 

 それだけ言った蝶人は、さっきよりもわずかに、ダイスから出る青い光が強まった気がした。ドドドドドドドドドドドドと、音を立てて、四方の壁が反時計回りに回る。今度は蝶人も、座卓にしがみついたりはしない。もしかしたら、ダイスの中に隠しカメラでも隠されていて、オカマたちに蝶人のビビっている姿を笑われることを、心配したのだ。無駄な心配だとは、自分でもわかっていたが、それすら警戒するほど、このダイスの引き起こす「幻覚」あるいはトリックは、ヤバイものだと、認めざるを得なかった。

 

 壁が一周して、止まる。音が止まってもまだ、体に轟音の残響が残っているような気がした。

 

「ちっ…………。今度は何だよ…………」

 

 前のように、自分以外の人間の言葉が、「微妙に」入れ替わっていたりするのは、何とも言えず、薄気味悪かった。本棚の本をチェックすればわかることだが、前回のことを思い出すと、本を開くのにも少しだけ躊躇いが出た。

 

 

 コン、コン、コン

 

 ドアがノックされる音を聞いて、蝶人はビクッと片足立ちになった。ダイスの前で、焦っていない振りを見せながら、ドアに体を向けて、慎重に様子を伺う。明らかに、母親がするノックの音とは違う。

 

「蝶人~。いるんでしょう? …………オバサンに聞いたよー」

 

 やはり、その声は母親とは違う。聞き覚え自体はある声。しかし、その声の持ち主が、この家に来ている、ということが信じられなかった。

 

 来島ユカリだ。

 

 蝶人が無反応でいるうちに、ドアがガチャっと開けられた。茶髪の女子大生が、半開きのドアの隙間から顔だけ部屋に入れた。

 

「やっぱ、いるじゃん。…………お邪魔するよ」

 

 ユカリは蝶人を見て、ニコッと笑う。彼女が蝶人に笑顔を向けるなんていうのは、何年ぶりのことだろうか? 昔から近所に住んでいる来島家と丁屋家は、以前は家族ぐるみの付き合いがあった。ユカリも、5歳年上の蝶人を、昔は「お兄ちゃん」と慕ってくれていた。そんな彼女も思春期の頃には、蝶人の「パッとしなさ」に気づき、距離を置くようになった。典型的な女子のムーブだと、蝶人は思っていた。それが今日は、わざわざ、蝶人の部屋まで、訪ねてきている。

 

「何の用だよ?」

 

 蝶人は年下の女に、自分の困惑や嬉しさを見せたくなくて、わざとぶっきらぼうな反応になる。ユカリは少しだけ顔が濃いめだが、顔のつくりは美形だ。それも、蝶人が喋りにくい理由の1つでもある。

 

「…………いつもアンタ、部屋片づけないって、オバサンも言ってたから、掃除を手伝いに来たんじゃん。………恩知らずなこと、言うなよ。ブー」

 

 ユカリが膨れっ面を作るが、それほど嫌そうな雰囲気ではない。むしろこのやり取りを楽しんでいる感じ………。蝶人に邪険に扱われてたとしても、その掛け合い自体を喜び、じゃれあうような感じ………。いつか、休み時間の教室の中心あたりで見たような雰囲気。ここ数年の蝶人が女性から受けてきた、数少ない対応(極力失礼にはならないようにしつつ、しっかりと距離を取る感じ)とは真逆のものだった。

 

「…………そんで、俺の部屋を、掃除しに来たの? …………メイドさんみたいだな」

 

「……ったく、失礼しちゃうな。………奥さんみたいだなって、言ってくれたら、すっごい頑張って、ピカピカに掃除しちゃうのに………」

 

 文句を言いながらも、ユカリはそそくさと作業を始める。蝶人の部屋の、無造作に捨てられた服を集めて洗濯物カゴに入れ、ゴミを捨て、半分のみでほったらかしてある何本ものペットボトルを整理する。彼女が床から何かを拾い上げるたびに、チェック柄で短めのスカートの裾が上がって、健康的な太ももの裏側から、さらにその上、光沢のある、高そうなショーツがチラッと見える。それだけで、蝶人は今月1番の思い出をもらったような気分になる。

 

 ユカリがこちらに背を向けてものを拾うたびに、ショーツのお尻がチラッと見える。そして彼女がこちらを向いて何かを掴み上げるたびに、今度はピチッとした白いブラウスから、胸の谷間と、ブラの肩紐がチラッと見える。そんなチラリズムを横目で何度もチェックしながら、蝶人は表情だけ、あまり興味がないような顔を装いながら、何気なく、聞いてみる。

 

「なぁ…………ユカリ………」

 

「……ん? …………なぁに?」

 

「お前ってさ……………。俺のこと…………好きなの?」

 

 その言葉をきいたユカリが、突然顔を真っ赤にする。

 

「なっ………何言ってんの、バカッ。………アタシ、彼氏いるってば………。この、バカニート。…………そういうこと、気にする前に、就職しろっ。……………もうっ………」

 

 ユカリが焦って、シドロモドロになる。口は悪いが、言葉にそれほどの険はない。

 

「反省しろっ…………。このこのっ」

 

 ハタキで蝶人の顔をパタパタとはたいてくるのは、うっとうしかったが、このじゃれ合いも、嫌な感じはしなかった。

 

「もう………。ホント、アンタと話してると、調子狂うわ…………」

 

 ぶつくさ文句を言いながら、乱れたヘアースタイルを、鏡を見ながら直そうとするユカリ。何度も髪を撫でつけながら、こだわって髪型を直す。それほどまでに、綺麗に見られる必要があるのだろうか?

 

「俺さ、…………オンナ関係は、本当に経験ないから、勘で聞いてるんだけどよ………。ユカリ、お前………。今日、勝負下着、着てきてるだろ?」

 

 さっきから、上着と下着のコーディネートのチグハグさが、蝶人としては気になっていたのだ。女性と付き合った経験は皆無だが、イメージビデオやアダルトビデオ、アイドルのPVなどは人一倍見てきたつもりだ。その勘が、冴えわたる。

 

「………な……………なにをまた…………」

 

「お前、もしも、俺のことを好きなんだったら、絶対に嘘をつくんじゃないぞ。…………彼氏がいるからとか、関係ないんだ。ユカリは……………俺のことが、好きなんじゃないのか? …………だったら、今ここで、着てるもんを全部脱いで、裸になりな。…………抱いてやる」

 

 ことオンナ関係に限っては、蝶人に失うものなどない、自分で想像していた以上に、大胆に、強気にユカリの気持ちを試してしまった。いや、焦りが出たのかもしれない。

 

 何か言い返したいような表情をしていたユカリが、言葉を飲み込んで俯くと、服に手をかける。スルスルと衣擦れの音。今度は蝶人が焦る番だった。さすがに彼氏持ちの女子大生。来島ユカリは、よっぽど男女関係では蝶人よりも修羅場を潜り抜けてきているようだ。男の部屋で、男女2人きりのこの状況で、ユカリはブラウスを脱ぎ捨てるとスカートのファスナーも下ろしてチェック柄の布地を足元へ落とす。思った通り、光沢あるシルク地の、如何にも上等そうなランジェリー姿になった。

 

「………お…………俺は、裸になれと言っているんだーぁぁああっ。お前はブラもパンツも着けたままで、裸と言い張る気か? ………貴様、生まれた時からブラつけてたのか? …………え? ……………お前はその姿で、風呂に入るとでも言うのかーぁぁあああああっ」

 

 呼吸が苦しい。体中に汗をかきながら、蝶人はユカリを指さしながら叫んだ。

 

「………………わかった……………」

 

 ユカリは小さくため息をついたあとで、背中に両腕を回し、ブラのホックをプチっと外した。ストラップが細い肩と腕を滑り落ちると、カップが外れて、形の良い胸が無防備に露出される。綺麗で白くて丸い胸。彼女がさらにショーツに手をかけて、スルスルと長い脚を滑らせるように下ろしていく。足を抜き取る時に、内股気味に足をクロスさせる彼女の仕草がセクシーだった。その一部始終を見ていた蝶人は、すでに完全に調子に乗っていた。

 

「お前は次に、俺に『抱いて』と言う」

 

「抱いて………。蝶人………。ずっと、……………好きだったの」

 

 ほとんど同時に交わされたその言葉を聞いた蝶人。右手でユカリを指さし、左手で自分の頭を抱えた蝶人は足を組むようにして顔は天井を仰ぐ。完全に、変なポーズをとってしまっていた。

 

 バーーーーーンッ。

 

「ダイス、ルーム、アンド、アナザー・ワールドッ。俺はもうっ、疑うことをしないっ。この1分、1秒をっ。味わい尽くしてやるっ。……………ウリィィイイイッ!」

 

 裸になったユカリに飛びついた蝶人は、その柔らかい肌に手を、顔を、舌を押し付ける。その感触を楽しむように、というよりは、まるでその裸と一体化しようとするほどの勢いで、ユカリの体にしゃぶりつく。サクランボの種のように小さな乳首に舌を這わせて、レロレロレロレロレロレロッと舌で転がす。「くぅっ」とユカリが、鳴き声のような音を口から漏らした。もうユカリの抵抗を心配する必要はない。彼女の目が、こちらを潤んだ目で見上げるその目が、蝶人への恋心に染まりきっていることが、今はわかる。だから乳首を舐めまわしても、ロケット型の胸が変形するくらい強めに揉んでも、尻肉をギュッと掴んでも、唇を奪って舌を入れても、ユカリは一切抵抗しない。蝶人のことをどうしようもなく、愛しているからだ。本当の来島ユカリだったら、蝶人に突然唇を奪われたりしたら、拒絶反応を示すために、わざわざ道端の水たまりの泥水で、口をすすぐことすらしてみせるかもしれない。けれど、今の、この部屋にいるユカリは、全てを受け入れてくれる。この、よく見ると結構な美人の女子大生が、蝶人のすることなすこと、全て愛のままに受け入れてくれるのだ。この状況を、みすみす取り逃すつもりは、丁屋蝶人にはなかった。

 

 彼女の股間に手を伸ばして、アンダーヘアを掻き分けながらまさぐる。反応を見ながら、指先でユカリのクリトリスと思われる場所まで辿り着いた。数センチ、数ミリの指先の調整だったが、蝶人の気持ちの中ではその距離は、北米大陸を横断したくらいの長旅に感じられた。彼は童貞でありながら、エロ知識と指先の感覚を頼りに、美人女子大生のクリトリスまで探り上げたのだ。

 

「あっ…………そこ……………。蝶人…………………………。好きっ…………」

 

 ユカリが体に力を入れて、ブリッジするような体勢で緊張する。その、いつかの態度の大きさとはギャップのある、改めて見ると華奢な体を抱きかかえるようにして、蝶人は下から、いきり立ったモノを一気に挿入する………とまではいかなかったが、何度目かのトライで、ペニスをユカリのヴァギナに押し込んだ。そして腰を振る。彼女がイイ声で鳴く。蝶人はますますエキサイトして、腰を突き上げるように激しく振った。

 

「俺は童貞をやめるぞっ。チョチョ―ッ!」

 

 丁屋蝶人は、自分に呼び掛け、叫んでいた。チョチョとは、「丁屋蝶人」というフルネームの名に、「チョ」という音が2つあったためにつけられた、小学生の頃の彼のあだ名だった。自分で口にしてみると、懐かしい思いがする。蝶人は小学生1年生の頃は、今のように引っ込み思案でもペシミスティックでもなく、もっと世界を真正面から、真っ直ぐに見据えていたような気がする。1回、腰をピストンさせてペニスをユカリの中で蠢かせるごとに、その頃の自分を取り戻すような、自分が生まれ変わっていくような感触を、蝶人は今、この瞬間に得ているのだった。

 

 天から光が差してくる気がする。裸の赤子の背中に羽が生えたような姿の天使たちが、ゆっくりと舞い降りてきては、チョチョを祝福する。この宗教がのようなイメージのなかで、蝶人は少しずつエクスタシーの予感を強めていく。ユカリをきつく抱きしめながら、狂おしく腰を振る。その荒々しい動きさえも、彼女は受け入れてくれる。その関係性を愛おしく思う。そしてそれに感謝を示すようにして、丁屋蝶人は来島ユカリのナカに、ついに射精する。太古から人類に刷り込まれてきたプログラム。継承してきたはずのプログラムが、いつかエラーを多く含んで、機能不全になっていた。そのDNAの歪に保存されていたプログラムが、今、急に正しく復元されて起動していくのを見守るように、蝶人は恍惚のなかで、近所の美人女子大生とセックスを完結させた自分を意識している。まるで男女が性器を結合させただけで、完全生物として生まれ変わったかのような、万能感に満たされた。蝶人のモノが精液を暴発させた時、それはまるで25年間貯めこんできた鬱屈をすべて放出したような陶酔する快感の炸裂となった。

 

「…………素晴らしい…………。これが、長年求めてきた。魂の安息なのかもしれない」

 

 解放感に浸りながら、天井を向いた蝶人が呟く。ユカリも一緒にイッたようで、2人で力なく、床に崩れ落ちる。重なり合うようにして寝そべった。

 

 しばらく目を閉じたまま、呆けたように快感の余韻を全身で甘受する蝶人。その完成された魂の平穏を、打ち破ろうとしてきたのは、無機質な振動音だった。誰かからの電話だろうか? 蝶人は舌打ちして体を起こすと、普段は石のように動かない、自分の電話が置かれた机へ向かった。

 

 ヴヴッ、ヴヴッ、ヴヴッ、ヴヴッ。

 

 机の上で振動を続けていた電話の動きで、これが電話を着信した時のバイブレーションではないことに、蝶人は気がついた。最初は、電話かと勘違いしたが、それもそのはず。…………メールの着信が、連続しているのだ。こんなことは、蝶人には経験がないことだった。

 

「うっ、うぉぉぉおおおおっ。これはいったい………。どういうことなんだぁああっ」

 

 メールの着信履歴を見ると、見たこともない、女子らしい名前やニックネームからのメッセージが、ひっきりなしに入ってきている。タイトルを見ただけで、『今、何してる?』、『会いたい』、『寂しい』、『声を聞かせて』、『こんな下着どうかな?』、『蝶人に見てもらいたくて、こんな恥ずかしいポーズを撮ってみたよ』など、どれも蝶人に興味を持っていると思われる、ギャルや女子学生、OLや若奥様たちからのラブコールのようだ。

 

 蝶人は窓に背中をピタッとくっつけると、壁にもたれたまま携帯を胸の前で握りしめた。

 

「おっ………………俺は…………。モテモテだ……………」

 

 瞼を閉じたその目には、涙が溜まっていた。

 

 壁に体を密着させた蝶人の耳に、窓の向こうから人の声が聞こえた気がする。蝶人は壁にさらに体を押し付けて、窓の向こうから自分が見えないようにしながら、ゆっくりと首を伸ばし、窓から下に見える道路の様子を伺う。女子高生と思われる、学生服の女の子が3人、こちらがわに背を向けて、Vサインなどをしている。どうやら、蝶人の家を後ろに映しこみつつ、自撮りをしているようだった。

 

「どうせ、蝶人の追っかけか、それとも聖地巡礼に来た、地方の修学旅行生かもよ………。アンタのモテモテぶりは、首都圏の外にも伝わってるみたいだしね。………………呼んで、家に上げてやったりしたら、感激してヴァージンでも喜んで差し出すかも…………。なんてね」

 

 ユカリは裸のまま起き上がって、また蝶人の部屋の鏡を使って、自分の髪型を直していた。今の彼女は、蝶人に裸を見られることよりも、ヘアースタイルの乱れを見られることの方が、恥ずかしいのだろうか? 彼女は彼女で、どこかぶっ飛んでいると感じられた。

 

「ユカリ…………。お前、それ、自分で何言ってるか、わかってんのか?」

 

「………………そりゃ、アタシだって、蝶人を独り占めしたいよ………。ずっと。………けど、アンタのモテモテぶりは、昨日や今日に、始まったことじゃないし、もう、日本社会も黙認するしかないくらいの治外法権のモテぶりなんだから、アンタは誰かが1人が縛れるような存在じゃないんだよ。オンナだったら、誰でも、アンタに抱かれたい。アンタにどんなことされても、女子ならみんな、喜んで受け入れちゃうんじゃない? …………それ考えたら、処女の女子高生たちと、アタシ含めた5Pくらい、アンタにとっては、日常茶飯事みたいなもんなんでしょ?」

 

 蝶人は一度両手を天高く突き上げた後で、膝を床につけ、思いっきり振り下ろしてガッツポーズを決めた。何度も何度も、その拳を握りなおした。

 

「この世界っ。サイッコーすぎるっ。…………世界に感謝だっ。礼を尽くそうっ。…………イエスッ…………。ヘイル、トゥー、ユーッ!」

 

 飛び起きた蝶人は、窓を開けて、路地でキャッキャと記念撮影していた女の子たちに声をかける。皆、一緒に抱いてあげるから、上がっておいでよ、と呼びかけると、女子高生たちは黄色い悲鳴を上げて、家の玄関へ駆け寄っていく。犬の散歩の途中だった若奥様も、その言葉を聞きつけたようで、リードを手放し、愛犬を放ったらかしにして、一緒に玄関へと押し寄せた。

 

 地方から来た3人の女子高生。近所に住んでいるらしい、1人の若奥様。そして昔馴染みの女子大生である来島ユカリ。5人の女性は誰もがそれぞれに魅力を持った、チャーミングでそそられる女子たちだった。本来だったら、趣味嗜好もそれぞれ違うだろう5人が、揃いも揃って、蝶人に熱っぽい視線を送ってくる。急に彼女たちの頬を撫でたり、胸をタッチしたりしても、モジモジすることはあっても、拒絶されたりはしない。全員が、蝶人に恋しているからだ。丁屋蝶人がこの世界でモテモテだからだっ! その5人全員を素っ裸にさせて、蝶人自身も全裸になって、6畳の自室でグッチャグチャに絡み合う。布団から、はみ出て転がるオンナに構っていられない。この人数で絡み合うと、もう蝶人は今、誰のオッパイを吸い上げているのか、誰の尻に? みついているのかも、よくわからなくなるが、その、わからなさ具合も心地良い。頭のリミッターを振り切って、獣のように一心不乱にまぐわう。その野性味が、蝶人の脳をさらに過激にドライブさせる。

 

 好き勝手に腰を振り、自分の好きなタイミングで、誰にも気兼ねすることなく射精する。誰かのナカで出したはずだが、蝶人は気にしない。申し訳ないのだが、誰が妊娠したところで、これは蝶人の世界とは別世界での出来事なのだ。責任の取りようもないところでは、堅苦しいことを意識したところで仕方がない。女子高生の1人が法令の許す年齢じゃなかったら? 条例違反も法律違反も、気にしたところで仕方がない。証拠が出揃って、立件される頃、蝶人はとっくの昔に元いた世界に帰っている。この時間、この許された時間内で、蝶人はこの世界で好き放題過ごすことが出来るのだ。特にそれが、「蝶人がモテモテの世界」なら、羽目を外すな、という方が無理な話ではないか。だから蝶人は羽目を外した。そしてハメたっ!

 

 さっきユカリのナカで射精したばかりなので、今回はより長時間持続する。そのぶんの延長時間。神が見逃したアディショナルタイムを限界まで味わい尽くして蝶人は派手にブッ放つ。今度は外に放出した。顔や体にかかった女子が嬌声を上げる。シャンパンシャワーのようだ。これは、この世界の勝者に許された、表彰台だ。蝶人はそう思った。

 

 

 童貞喪失からわずか1時間の間に、蝶人の女性経験は飛躍的に伸びた。両腕に2人ずつの頭を乗せさせて、腕枕をしていると、腕への負担はかなりのものだが、その重みに蝶人はあえて耐える。若い人妻は学生たちよりもタフなようで、すでに目的を大いに果たしてリラックスしている彼のイチモツを、まだ名残惜しそうに舐めて愛撫していた。

 

 ここにずっといられたら…………。そう思いながら、体力を消耗しつくした蝶人は、無意識のうちに瞼を閉じていた。

 

 

 

 ドドドドドドドドドドドドド、ドゴォオオオオオォォォンッ!

 

 壁が回転する音で、蝶人が目を覚ます。体を起こした時、ちょうど四方の壁は360度、時計回りの回転を終えたところのようだった。周囲を見回すと、女子高生たちもユカリも、あのエッチな人妻もいない。蝶人が座卓に放り出されていた携帯電話を拾い上げて確認するが、メールの着信履歴は一つずつ、消えていった。最後に残っていたのは、4ヶ月も前の、母親からの「ドンマイ蝶人!」というタイトルのメッセージ。これが彼のもとに届いた最後のもの、ということになっている。蝶人はせめて、あの大量に寄せられていた、女性陣たちからの熱いメッセージを、読んで、記憶に焼きつけておけば良かったと、後悔した。

 

 それでも、童貞喪失の感触、オンナたちと、くんずほぐれつの大立ち回りをした余韻は、体に残っている。ふと、指先の匂いを嗅いでみた蝶人は、無意識のうちにニヤケた顔になっていた。

 

 ドアを開けて、階段を降りる。今が朝方なのか夕方なのか判断に迷うが、母親はパートに行っていなければ、家にいるはずだ。大人のオトコとして、成長したところを、見せてやりたい気持ちだった。

 

「………おう………。母ちゃん、…………俺を見て………何か今までとの、違いを感じないか?」

 

 ぶっきらぼうに、聞いてみる蝶人。振り返った母親は、しばらく無言だったが、まず一言、口に出す。

 

「蝶人、貴方、頬っぺたはもう、赤みが引いたみたいだね。…………でも、やっぱり、病院に行った方が良いと思うよ。お母さんを安心させてよ。………………これ、診察代。お金があまったら、帰りにアンタの好きな、フィギュアとか買ってきても良いから。絶対に病院に行ってよ。…………お母さん、心配でしょうがないの」

 

 前回よりも、もっと深刻な心配顔で、蝶人に病院へ行くことを薦める母親。蝶人は、脱童貞の浮かれた気分に、冷水をかけられたような気がした。何がそんなに心配なのか聞いてみる。すると母親は、「覚えてないの?」と、泣きそうな顔で言った。今日の蝶人は、話し方は普通だったそうだ。『う』と『ラ』が入れ替わるというような、気味の悪い喋り方はしていなかった。けれど、話の中身は、母親を震え上がらせた。蝶人は今日、1階に降りてきてキョトンとした様子で、「俺の追っかけガールズは、今日は誰も来てない?」と聞いたらしい。母親が怪訝な顔をして、今年に入ってから蝶人への来客は1人もいないと告げると、変な顔をした蝶人は、外へナンパをしに行った。本当に気軽に、プラッと外出したらしい。そして1時間もたたないうちに、頬っぺたに真っ赤な、ビンタの跡をつけて、半泣き顔で帰ってきて、部屋に閉じこもった。それが、母親の見た、一部始終だったそうだ。

 

 蝶人も腕組みして、考え込まざるを得なかった。確かに、母親の言う通りの丁屋蝶人が居たとしたら、蝶人本人が横で見ていても、病院で受診することを薦めるだろう。…………だが、聞いた限りで想像するに、そこにいた蝶人にとっては、自分がモテモテなのが、むしろ当たり前だったようだ。

 

 つまり、蝶人がダイスを使って、『丁屋蝶人が超モテモテである』というパラレルワールドに行って楽しんでいる間、この世界には、『自分がオンナにモテまくって当たり前』と自認する丁屋蝶人が変わりに来ていた、ということになる。2つの並列世界で、丁屋蝶人同士が、入れ替わっていた、ということではないか?

 

 25歳ニートで一文無しのはずの蝶人が、この世界で、自分が入れ替わっているとも思わずに、強引なナンパをしようとして、ビンタされていた。そのことを思うと、蝶人自身の頬が赤くなる。ひとの世界で何をしてくれているのだ………。

 

「これは…………。気をつけて使わないといけないな………。効果自体が絶大なだけに」

 

 それだけ言うと、蝶人は母が差し出した「診察代」、1万円を受け取った。もっとあの「ダイス」の力について、調べたいことがある。しかし、自宅や近所で色々と試すのには、リスクもあるということを理解したのだった。

 

 

。。。

 

第二部 性交潮流

 

 ダイスの力を! そして並行世界の仕組みを! 少しずつ理解し始める蝶人。それが彼に数奇な運命を辿らせることになる。あらかじめ読者に告ぐ。この物語はMC小説ではないっ! そのことが、MC小説サイトに当然のようにMC小説を期待して読み始めた読者の心に、いくばくかの波紋を起こすことになるかもしれないっ。

 

。。

 

 

 翌日は朝から蝶人が、荷物を押し込んだリュックサックを背負って家を出る。ここ2ヶ月ほどは、自宅とコンビニ、ドラッグストアくらいしか往復していなかったことを思い出すと、駅前に行くだけで額やこめかみに脂汗が浮かぶ。それでも、蝶人は行かなければならない。ポケットに「例のダイス」をしのばせ、財布には母親に病院へ行くとして受け取った1万円を入れて、実験に相応しい場所を探し出す。そして、この力を、正しく理解し、自分のものにする。今回の外出はその目的を成し遂げるため。つまりは自分で人生を切り開いていくためのものだ。すでに蝶人は童貞ではなくなった。昨日までの自分とは違うのだ。一歩でも多く、前へ進むという強い意志。そしてダイス。この2つがあれば、蝶人にとっても、一度閉じかけたと思われた未来の扉を再び開け放つことが出来るはずなのだ。

 

 

 電車を乗り継ぎ、辿り着いたのは都心のビジネスホテル。ここで蝶人は格安の部屋に宿泊する手配をし、早速部屋に入る。小型のテレビに据え置き型のゲーム機を繋ぐ。小さな作業机には、社会人時代にボーナスで買った、タブレットを置く。なかには電子書籍として好きな漫画やライトノベル。そして好きなアイドルの音源やPVが一通り入っていた。タブレットの奥には、自宅から持ち出してきた、お気に入りのフィギュアを何体か並べる。配置に工夫を凝らすと、徐々に自分の部屋らしくなってくる。フィギュアの配置に納得すると、作業机に向かって、ノート用紙を取り出し、文章を書き始めた。書き終えると、部屋の出入り口にある、金属製の重い扉、蝶人の顔の高さに、ノートの紙をテープで止める。これで蝶人が考えてきた、一通りの準備が整ったことになる。

 

「よし、俺は別の世界に行くぞっ。…………頼むっ。ダイス、ルーム、アンド・アナザーワールドッ」

 

 普通に転がせばよいはずのダイスを、蝶人は高々と飛び上がって、机に叩きつける。最近、ここぞというところで、無駄に画的に力が入ってしまうのだ。

 

 ドドーーンと、効果音を背景にして、ダイスが止まる。上を向いた面の目を見ると、最悪な事態が起きていた。

 

 小さめの黒丸が六個並んでいる。6の目だ。この前、このダイスをくれたショーデンさんが、真剣な顔で忠告をしていた目だ。初っ端から、最悪の出だしだった。

 

「なんだとぉーーーーぉぉおおっ。このっ、俺が振った目が、6だというのかぁああっ」

 

 蝶人が大きく見開いた方の片目を近づけて、大声で叫ぶ。しかし、出てしまった6の目は変わらない。6つの丸の外周から、黒い光が放たれ始めた。

 

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド、ドゴォォオオンッ。

 

 四方の壁が反時計回りに1回転する。蝶人の家の部屋よりもより長細い長方形の形をした部屋だが、奇妙に違和感なく、四方の壁は回転し、止まった。ビジネスホテルの小さな窓から差し込んでいた陽の光がなくなっている。外は夜のように、いや、都会の夜とは比較にならないほど濃い闇が覆いかぶさっているようだ。そして窓や扉のほんの僅かな隙間から、冷たい隙間風が吹き込んでくる。その乾いた音は、聞いているだけで心を重く冷たくさせる。

 

 カリカリカリカリッと、ドアの向こうが鳴った。何かの爪で引っ掻かれるような音。次に、コツーン、コツーンと、ノックの音。まるで肉がない、骨だけの拳が鉄製の扉に叩きつけられて鳴るかのような、硬質な音だった。

 

『6の目が出たときは、絶対に外に出てはいけない。誰も部屋の中にも入れてはいけない。』

 

 蝶人はショーデンさんの言葉を思い出して、小さなベッドに潜り込むと、枕を頭の上にかぶって突っ伏する。確実に今、この部屋は人間に適さない異世界に行ってしまっている。ドアを開けて、今ノックしているヤツを入れたら、最後だ。震えながら蝶人はそのことを理解した。

 

 それから1時間もたっただろうか? ノックは15分くらいの間隔をあけて、繰り返しやってくる。この世界からいつになったら戻れるのかも、わからない。何もせず、1時間我慢してきた蝶人が、ついに我慢の限界に達した。立ち上がった蝶人はまた、生気のない、呆けたような目つきをして、無言で前を見ている。

 

「…………2の目の時間と同じだと、丸一日、やり過ごさなきゃいけないのかもな…………。だったら、ゲームでもすっか」

 

 ベッドの上にあぐらをかいた蝶人は、テレビをつけて、ゲーム機を起動させる。もともと、外の世界で何が起こっていようと、部屋に閉じこもって逃避し続ける、というのは蝶人にとっては馴染みのある戦術。伊達にブラック企業を退社してから1年もニートを続けてきた訳ではない。蝶人には、自分の世界に引きこもる耐性があった。

 

 

 すでに何年も前にクリアしたRPGのレベル上げだけをひたすら数時間続けていると、気がついたら、ノックの音がしなくなっていた。そして、ドドドドドドド、とビジネスホテルの壁が時計回りに回転を始める。時計を見てみると、6の目を出してしまってから、6時間が過ぎていた。

 

「6の目を出しちゃったら、6時間の辛抱か…………。俺のようなニートなら、精神をやられることなく、やり過ごせる時間ではある………。よしっ。いけるぞっ」

 

 ビジネスホテルの小さな窓に、昼下がりの日が差し始める。蝶人は、もう一度、ダイスを振ることにする。

 

「ドラァアアアッ…………くっ……………くそっ。もう一度だっ!」

 

 出た目が白だったので、もう一度。バレーのアタッカーのようなポーズで飛び上がり、ダイスを机に置くときには、若干力を抜いて、優しく転がした。コロコロと、机の端近くまで転がるダイス。「2」の目を上にして、止まった。

 

「ぃよしっ。……………『ダイス、ルーム、アンド・アナザーワールドッ。俺を、姉ちゃんたちが裸で出歩く世界に連れて行ってくれっ。十代後半から三十代までの女は外にいる時、仕事をする時。全裸が当たり前。男に体を触られても、嫌がらない。あ、ついでに俺は超モテモテだっ。』どうだ?」

 

 ドドドドドドと四方の壁が反時計回りに回る間に、蝶人は早口で飛びたいパラレルワールドの世界設定を叫んだ。最後の方は、時間がなかったので、全ての願いが伝わったかどうかはわからない。次からは細かい設定も言い間違えないように、メモを準備しようと思った。

 

 6時間も、薄気味悪い世界で孤立した部屋に閉じ込められてきた蝶人は、さすがに部屋を出て、外の空気を吸いたい。蝶人は、慎重にドアを開け、狭い廊下を歩いて、小さなエレベーターへと向かう。途中ですれ違った掃除のオバサンは、50代くらいの人だろうか? 当たり前のように清掃用の作業着を着ていた。

 

 ピンポーン。

 

 エレベーターが1Fに到着した音が鳴り、扉が開く。目に飛び込んできた、フロントのお姉さんは、受付台の上で胸元から上だけが見える状態だったが、スレンダーな体と健康的に日焼けした肌が露わになる、裸の状態だった。蝶人は左手で小さくガッツポーズをする。

 

「外出ですか? キーをお預かりします」

 

 フロントのお姉さんは、両手を差し出して蝶人を見る。目が合うと、彼女の顔がポッと赤くなった。多分この人も、俺に恋している。そう思うと、蝶人の股間がズボンの布地をグッと押し上げる。あとで部屋に帰ってきたら、この子も部屋に呼ぼう。この反応なら、勤務規定に違反していようが、2つ返事で部屋へきて、通常の宿泊客には提供していない、スペシャルなサービスを、蝶人だけに提供してくれるはずだ………。

 

「………あっ………。あの、………いってらっしゃいませ」

 

 キーを渡した後で、フロントのお姉さんの、剥き出しになっているオッパイを揉んでみる。ムニュッとした弾力。真面目そうなお姉さんは少しだけモジモジと恥ずかしがったが、一切の抵抗を見せなかった。このお姉さんにもう少し悪戯を続けてみたい気もするが、それ以上に、外に飛び出したい気持ちが勝つ。足取りも軽く、蝶人が自動ドアも開き切らないうちにホテルの外へ出た。ビジネスホテルのある路地から、ダッシュで大通りへ出る。

 

「天国だーっ。俺は天国に来たぞーっ」

 

 蝶人は両手を上げて、飛び跳ねる。周りの通行人にクスクスと笑われる。東京へ初めてやってきた、田舎からの観光客だと思われているのだろうか? 歩行者天国を珍しがっているとでも思われているのだろうか? 笑われたって、まったく嫌な気がしない。なぜなら、蝶人を見てクスクス笑っている少女たちは、全員、全裸だったからだ。

 

「………ディ・モールト。………ディ・モールト(凄く)、良いぞっ」

 

 なぜ自分が、急にイタリア語を口走ったのかは、蝶人にもよく理解できなかったが、それくらい彼は興奮していた。

 

 大通りを行きかう、買い物客、観光客、遊び場へ移動する地元の学生。外回りの営業や職場へ移動する働く女性たち。全員漏れなく全裸。その体を隠そうともせず、手荷物を持ったりスマホを弄ったりしながら、当たり前の顔で、素っ裸で歩いている。彼女たちが歩くたびに、オッパイが揺れる。外気に晒されてツンと立った乳首があちこちを向く。腰回りの柔らかそうな肉がくねる。腰骨が浮き立つ。お尻の肉が斜めによじれる。アンダーヘアが風にそよぐ。その隙間から、女性器の閉じた粘膜がチラリと見える。大小さまざな形のオッパイが、惜しげもなく晒されて、弾んでいく。蝶人の胸まで弾ませてくれる。しばらくの間、蝶人はただそこに立ち尽くして、口をあけて、道を行きかう都心の女性たちの裸をただただ眺めていた。

 

 目が少しずつ慣れてくると、蝶人は行動に移る。目についた、立派なオッパイや形の良い可愛らしいオッパイを、片っ端から触っていく。遠慮も、断りもせず、無言で通りすがりの女性の乳を揉む。撫でたり、乳首を指の腹で転がしたり、摘まんで引っ張ったり、時には乳房を掴みながら指の間に顔を出す乳首に舌を伸ばして舐めたりする。お姉さんたちは、ちょっと驚いたような表情や、恥ずかしそうなリアクションは見せるものの、あからさまに嫌がったりはしない。そして蝶人としっかり目が合うと、急に恋に落ちたような、はにかんだ表情になって、蝶人と一緒に過ごす僅かな時間を楽しんでくれるかのように、協力的な態度になる。気に入ったお姉さんからは名前と電話番号を聞く。全身を収めた全裸ショットを撮影させてもらう。何時になったら、向こうにあるビジネスホテルの407号室に来い、と勝手にスケジュールを決める。生意気そうにプリッと張ったお尻を見つけたら、バチーンッと、景気よく叩いてやる。お尻を両手で押さえながら、驚いたように振り返るお姉さんに、ウインクをしてやると、彼女たちは痛みをこらえながら、涙目で懸命に笑顔を作って蝶人に手を振り返す。女性が全裸が当たり前の世界、なおかつ蝶人が超モテモテの世界を歩くということの、なんと幸せなことか。その万能感に、蝶人は大声で叫びながらこの街を走り回りたくなるほどの衝動を覚える。

 

 駅前の大型ショッピングモールに入る。ここでも買い物客、そして店員・美容院・インフォメーションセンターの受付嬢も皆が全裸だ。高所得層向の高級モールだけに、女性たちのグレードも高いし、皆、プロポーションが良い。適度な運動をして、スタイルの維持に気を遣っていることがわかった。フロアを歩いていて、まず蝶人が気づいたことは、アパレルショップが激減していることだ。女性の外出用の服がほとんど売られていないと、モール内の雰囲気がだいぶ違う。そのことは女性経験の乏しい、(元)非モテ男子の丁屋蝶人でも気がつくくらい、目に見えた変化だった。そのかわり、ボディローションや日焼け止め、保湿クリームやボディペインティングなどの美容と肌にかかわる商品の売り場やショップ、そしてネイルやヘアサロン、髪飾りなどに関わるショップが拡張、増加しているように思われる。やはり、女性が外で裸であることが当たり前の世界は、そうでない、蝶人が元いた世界とは、異なるトレンドやビジネスの発展が進んでいるらしい。

 

 そこまで考えて、蝶人はさっきから感じていた、僅かな違和感を解消する気づきを得た。清楚なタイプやお嬢様タイプの女の子を見ても、思ったよりも日焼けをしていた。そして30代の女性の多くは、綺麗な体をしていても、バストが想像するよりも垂れている人が多かった。それもこれも、「仕事中や外出中は全裸が当たり前」という世界で過ごしているうちに起こる、自然な変化なのだろう。蝶人にとっては、今日、初めて目にする世界だが、この世界自体は、今日、突然作られた世界ではない。ずっとこのようなルールと常識とで成り立ってきた、昔からある世界なのだ。…………当たり前のようだが、蝶人はそのことをようやく実感とともに理解することが出来た。

 

 そういう目で見ると、この世界は『女性が全裸』以外にも、蝶人の元いた世界とは微妙に違っているところが他にもあるような気がする。若者が集まる街に足を伸ばすと、心なしか、カップルの比率が高いように見える。別に男たちの顔のクオリティが上がっているわけではない。けれどどことなく服装はよりオシャレになっているかもしれない。カップルで歩く男たちは、例外なく、全裸の彼女の荷物を持ってあげていた。肩さげのバッグなどは、必ず男が持っている。これも、『女性が全裸』というこの世界の慣習が必然的に求めた、男女の生活様式なのかもしれない。確かに素肌に肩掛け鞄やリュックを身に着けてずっと生活するのは、辛い。そしてこの世界では女性が急に、無防備な全裸を見知らぬ男にタッチされても、拒絶が出来ないことになっている。すると『全裸で触られることを拒否できない』女性たちは無意識のうちにも、自分を守り、代わりに荷物を持ってくれる彼氏の存在を、そうでない世界よりも強く求めるのかもしれない。そして彼女たちは、自分自身には向けられない服装に関するお洒落間隔を、彼氏に向ける。それがこの世界の当たり前のようだった。

 

 オタク文化で有名な、秋葉原を歩く。メイドカフェのチラシを配っている女の子は全裸だ。仮説ステージで歌って踊る、アイドル研修生たちも全裸で体を弾ませている。コスプレの撮影会が、広場で行われている。衣装を鞄に入れて、全裸でやってきたモデルさんたちが、仮設試着ルームに入り、ややきわどい水着を着て出てくると、カメラを構えたオタク男子たちが「おーぉぉぉぉおっ」と声を上げる。明らかに、肌の露出は、彼女たちが来た時よりも下がっているのだが、これはこれで、この世界のオタクたちには、喜ばれているのだろう。

 

 交差点に設置された、大画面のモニターには、ニュースキャスターが裸でニュースを読んでいる。とても深刻そうな顔をしているが、元の世界でも馴染みのある、真面目なキャラクターで有名なこの女子アナが、全裸でテレビに出ていることの方が蝶人にはショッキングで、彼女が読み上げているニュースの内容は、まったく頭に入ってこなかった。

 

 一通り、街歩きを済ませ、女性の裸の洪水に晒された脳と下半身を休みえるために、ビジネスホテルに戻る。1Fフロントの真面目そうなお姉さんは、今もオッパイ丸出しで、部屋のキーを蝶人に渡してくれる。

 

「お客さんの応対が少ない時間帯に、コソッと俺の部屋に来てよ。………2人で良いことしよう」

 

 大人しそうな全裸のお姉さんは、蝶人に耳打ちされて、驚いたような表情になったが、何度か彼と目を合わせたあとで、罪悪感に苛まれるような顔をしながらもコクリと頷いてみせた。

 

 部屋に戻った蝶人。受付にいたお姉さんとの約束は、少し破ってしまうことになる。「2人」で良いことをするつもりだったのだが、夕方には、蝶人と外で出会って約束をした、選りすぐりの美女たちが、次から次へと蝶人の部屋へやってきた。道で見つけた美人OL、モールの美人受付嬢。オジサン人気の高い、喫茶店の看板娘に、アイドルの原石。デート中に彼氏と別れて駆けつけてくれた清純派美少女。みんな全裸で部屋へきて、蝶人に求められるまま、どんなことでもしてくれようとする。そんな中で、こっそり部屋に忍び込んできた、ビジネスホテルの受付嬢のお姉さんは、どうしても、ほかの子たちと一緒に、まとめてお相手することになってしまった。

 

 狭いビジネスホテルの1室は、裸の美女、美少女たちでギュウギュウになる。気を聞かせたOLさんがケーキやアイスを買ってきてくれたらしい。蝶人は生クリームを、近くにいたアイドル研修生のオッパイに塗りたくる。そしてベロベロと舐めてやる。「やったなぁ~っ」とおどけた声を出して、女の子はクリームを蝶人にも塗り返す。そのクリームを、ノーブルな顔立ちのモールの美容部員さんがペロッと舐めとる。初対面の女子たちも、みんな、蝶人が好き、という一点で結束できるようで、一気にパーティーが始まる。蝶人の体から服を剥ぎ取り、四方八方から美女たちの手が伸びて、生クリームやアイスクリームをベチャベチャと塗りたくられて、女の子たちに全身を舐め回される。くすぐったがり屋の蝶人は情けない笑い声を上げながら、必死にやり返そうと、彼女たちの性感帯と思われる場所を、両手、両足、顔と舌とで刺激する。激しく品のないパーティーが、地味なビジネスホテルの一室で繰り広げられた。

 

 

 

 快感の余韻に足先から頭まで浸りながら、蝶人が時計を確認する。20:00。もう夜だ。自分はどうやら、5時間近くも、お姉ちゃんたちとイチャイチャし続けていたようだった。この世界から、元の世界に強制的に戻されるのは、来てから24時間後のはずだから、明日の昼過ぎまで、まだ充分な時間がある。そのはずだが、蝶人は1つだけ気がかりなことがあって、机の上にあるダイスを見る。

 

「…………母ちゃんに連絡しないと…………あのまま一晩、帰らなかったら、さすがに通報されるかもしれないなぁ…………あぁ…………………。面倒くさい………」

 

 蝶人と抱き合って折り重なるように眠っていた美女3人を避けつつ、小さなベッドから起き上がり、机に向かう。彼の母親は元の世界で、蝶人が1万円札だけを持って、大きな病院へ診察へ行ったと思っている。このまま一晩、彼が何の連絡もせずにいなくなったら、慌てふためいて、色んなところに連絡を入れ始めるかもしれない。………このバラ色の世界には名残惜しかったが、蝶人はダイスを拾い上げて、何気なく転がしてみる。2回、「白」が出た後で、赤い大きな丸が面の中央にある、「1の目」を出す。途端に部屋に残ってまだセックスの余韻を楽しんでいたはずの、全裸の美女たち3名が、無表情で立ち上がり、部屋から出ていく。ドアが閉まったそのあとで、四方の壁がドドドドドドドドドッと時計回りに回転し始める。やはり「1の目」は、こうして使うためのもののようだ。

 

 

「………あ、母ちゃん。………診察、時間かかったけど、大丈夫みたいだわ………。悩みとかあるかもしれないから、気晴らしするのが良いって、言われた…………。それでさ、帰りの電車で、たまたま、大学時代の友達に会って………。一緒に飯食って、今日はそいつの家に泊まってくことになったわ。………うん。大丈夫。心配ないから………」

 

 電話口の母の声は、蝶人から「診察の結果」を聞いてから、明るくなった。そして、蝶人が珍しく、友達の家に泊まるなどと伝えたので、より機嫌が良くなっている。とりあえず母親が心配して通報する、というリスクはなくなったので、蝶人も一安心だ。

 

 電話を終えて、ホテルの部屋の、ドアの内側に貼られたノートを、読み返してみる。

 

『別世界の俺へ。俺はもう一人の丁屋蝶人。嘘じゃないぞ。その証拠として、俺は10歳の時に、母親の財布から金をくすねて、少年週刊ジャンプを買いに行ったことを書いておく。誰にも言ったことがないはずだ。………急なお願いで申し訳ないけれど、お前は不思議な現象で、別世界に飛ばされて来ている。けれど1日以内に戻ることが出来る。ここはお前にとっての当たり前の世界ではないから、外には出ないで欲しい。とりあえず、食料は部屋に置いてあるし、机のタブレットには、俺なら絶対に好きになる、漫画やライトノベル、アイドルソングが入っている。1日時間を潰すには十分すぎるくらいのはずだ。多分、恵まれた世界で生きてるお前は、ここまでのオタク趣味は今まで網羅していないと思うけれど、それでも本質は丁屋蝶人なんだから、絶対に好きになると信じる。悪いけれど、今日一日、これを見て聞いて、大人しくしていて欲しい。』

 

 朝にそれだけ書いた蝶人のノート用紙の右下には、ボールペンで1つ、チェックマークが入っていた。これはおそらく、読んだ、という印だろう。

 

 机に戻り、タブレットを起動する。電子書籍や動画、音楽ファイルの閲覧・再生履歴を確認する。ずいぶん色々と見ていたようだ。なかでも、とある「日常系ユルユル美少女アニメ」が気に入ったようで、シーズン2の8話目までの視聴履歴がある。これだけ見ていたのなら、外に出ていないはずだ。蝶人は胸を撫でおろす。別世界の住人とは言え、根は丁屋蝶人本人だけあって、深く刺さるコンテンツは共通していた。しかし、これも、もっともっと根本的に別世界から交代してきた蝶人だったら、通用しなかったかもしれない。

 

「変化幅が大きい世界に行ったら、24時間過ぎるのを待つんじゃなくて、早めにこちらに帰ってくるとか、考えた方が良いな…………。でも、傾向と対策は、掴めてきた気がするぞ」

 

 そう呟いて、ダイスを手に取ってみる。最初に受け取ったばかりの頃よりも、蝶人の手に、馴染んできたように思えた。赤い1の目、その裏側にある6の目。使い方がわかってきた2の目…………。

 

「………なにっ? ……………これは………………。いつの間に? ……何だってぇええっ」

 

 思わず持っていたダイスを落としそうになる。2の目の隣の面、確かこの前までは白い空白の面だったはずのところに、中くらいの丸が3つ、斜めに並んでいる面がある。『3の目』だ。

 

 ドガ――――ァアアンッ!

 

 背景の音が鳴る。

 

「いつの間にか、3の目が現れているっ。このダイスっ………せ……………成長しているのか?」

 

 戦慄で、空気がゴゴゴゴゴと震え始める。蝶人は気がつくと、前衛舞踏のような変なポーズを決めて、ダイスを見つめていた。

 

 

<後編へつづく>

5件のコメント

  1. あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
    おれは抹茶でMC小説を読んでいたと思ったらいつのまにか荒木パロ小説を読んでいた…
    な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった…
    催眠術だとか超能力だとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ…

        もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

    というわけで一体何を読ませられたのかよくわからなかったでぅw
    まあ、MCというかもしもボックスな小説なのはわかったのでぅが(荒木パロだからD4Cが正しいんでぅけど)
    成長しているダイスで別の目が出た時にどうなるのかは次回の後編を楽しみにしておきますでよ。
    あとどこまでパロを出してくるかもちょっと楽しみ。既にジョジョにBTも出てるのでバオーあたりは次回に出てきそうな気がするけど、ゴージャスアイリンとか読み切りのものは来るのだろうか?(まあ、みゃふもそこまで読んでないので細かすぎるところは出てきてもわからないんでぅけどw)

    であ、次回も楽しみにしていますでよ~(色んな意味で)

  2. 常識改変ではなく、歴史があるパラレルワールドですね!
    確かに「女性が裸は当たり前」の世界なら、紫外線の露出頻度も高いだろう。
    それなら現代文明の恩恵を享受している今の女性は過去の女性より幸運ですね!
    基本的な女性のプロポーションも今より良いということでプラス(笑)
    しかし、30代の胸のたるみは… 悲劇だ w

    後編、待ってます~

  3. こんなにも、早く永慶様の新作が読めるとはありがたき幸せ
    人気キャラクターのショーテンさんを見ると永慶さんのユニバースに繋がりが感じられて、長年読者やってて良かったと感じます
    往年の名作、劇場版クレヨンしんちゃんの偉大なオカマキャラクターの皆さんを連想する圧倒的なパワーと、ユーモアとウィットに富んだ台詞回しに、シニカルで冷静な現実的なオタク評論はいつ見ても痺れます
    2次元と三次元の双方を情報を通して支配してる感もあって創作世界を飛び越えた力を感じます
    楽しんで、創作活動をなさって下さい
    応援してます

  4. >みゃふさん

    いつも、ありがとうございます!
    >一体何を読ませられたのかよくわからなかったでぅw
    でへへへ。どうもすみません。
    そう困って頂きたくて、書いたようなもんでございます(笑)。ストライクゾーンに入れることばかり考えていると、フォームが縮こまってくると思い、たまーに外しても良いからとブン投げさせて頂いております。後半でこの冬の投稿は最後になります。お時間ありましたら、最後までお付き合い頂けましたら、幸いです。

    >第3のだいちさん
    そうなんです。常識改変とは違うので、MC小説とも違うんです。逆に考えると「それが当たり前の世界」に行って遊ばせてもらえるということは、誰にも迷惑をかけていないのかもしれませんね。どうにも勝手な話ですが。。。毎度、感想頂きまして、ありがとうございます!大変励みになります。

    >筆筆さん
    筆筆さんも、ハンドルネームからして、創作をされる方なのでしょうか?毎回、とても豊かな表現力でお褒め頂いて、その文章力に恐縮するとともに驚かされています。今回は変な話なのですが、読んで頂いて、本当にありがとうございます。次がこの冬の投稿の最後です。少しでもお楽しみ頂けましたら、幸いです。

    永慶

  5. ジョジョネタ多いw まさか催眠小説を読んで笑ってしまいました

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