テレパスキッド 4

『イの壱』の技法は、対象となる相手へ、コードのような『氣の道』を繋いで、いつでも相手の行動や思考、感情や記憶まで干渉出来るようにする。それは『氣』で人に影響を与える技術の中の基本であり、究極とも言えるような、大事な技法だ。けれど、特定の相手に「繋ぎっぱなし」の状態は、消耗も混乱もありうる。なので特に慣れないうちは、人数を絞り込むように、と、ミヤグニ・センセイから指示を受けた。

 

 ダニエルはその意味を、3か月も経つと、良く理解出来るようになった。これまで2本の腕を使ってバスケットボールをしていた選手が、ある時、急に腕が8本に増えてしまったら、腕同士が絡み合って、かえってスムーズにプレイ出来なくなるかもしれない。現に、複数の相手を同時に操り分けようとして、ダニエル自身が難しさを体感した。だから、最初は5人と『氣の道を繋げる』ことから始めて、1か月経つごとに、1人ずつ、接続したままにする人数を増やしていった。

 

 最初の相手は、彼の学年屈指の美少女、ステファニー・マイルズ(今はダニエルの恋人。今も、チャンスがあればダニエルとホットに、いちゃついている)。2番目は彼の実の姉である、エミリー・ランバート(ダニエルはお尻がお気に入り。ダニエルの友人、トミーは彼女の全てが好きなようだ)。3番目は美人でゴージャスな先生、カレン・ステイトン先生(日々、ブロウジョブが上達していく)。4番目に学校で悪名高い不良のジェイク・ロブソン(弟のジョニー・ロブソンが、同学年のダニエルにちょっかいをかけないように、言い聞かせてくれている)。5番目がダニエルのママ、ルシール・ランバートだ(以前よりも物わかりの良い、子供の自由を大切にする寛容なママになりつつある)。

 

 この5人は常にダニエルの支配下にあって、彼の都合の良いように行動し、考えて、感じてくれる。ダニエルにとっての『社会』を彼に都合よくコントロールするにあたっては、当座のところ、この5人の手綱をしっかり握っておけば、問題なかった。パパのポールは、妻のルシールと娘のエミリーが提案することは大体受け入れてくれたし、友人のトミーは、エミリーの魅力に圧倒されていて、彼女からの『サービス』をちらつかせると、ダニエルに色々な面で譲歩してくれる。クラスで人気の美少女、ステファニーをダニエルのような一見パッとしない転入生が手に入れたことは、男子生徒たちの反感を買ったが、「あの不良のジェイク・ロブソンが、なぜかダニエルのバックにいて、彼を守ろうとしている」という噂がたつと、誰もダニエルに対して挑発的・敵対的な行動をとろうとはしなくなった。「美人で頭も良い、カレン・ステイトン先生が、ダニエル・ランバートを特に気に入っているらしく、良く2人きりで授業の続きについて密室で話し込んでいる」という噂がたつと、クラスの女子生徒たちのダニエルを見る目まで、少しずつ変わっていった。どうやら女の子たちというのは、西海岸でも東海岸でも、他の女性による特定男子に対する評価を、気にし合って牽制しあうのが習性になっている生き物のようだ。

 

 もちろん、5人を通じて間接的に影響を与えるだけでは、ダニエルのやりたいことを押し通せない場合も出てくる。そんな時に、相手の人数の制約を取り払ってくれるのが、『ロの壱』の技法だ。これはボルトのように単発の氣を飛ばすことで、相手の行動や考えを一時的、部分的に操作するものだ。この『氣のボルト』の気楽さは、何人までしか繋げない、といった制約がないこと。そしてその効果は一時的なものなので、放っておいても相手はいつか正気に戻ってくれることだった。これはダニエルにとって、若干、責任感が和らぐことにもなった。どれだけの時間、押しこまれた『ボルト』の指示を相手が受け入れるか。これは対象となる相手のモラルや信条と、飛んできた『氣のボルト』に込められた「操作」がどれだけ乖離しているものかによって、違っていた。

 

 例えばダニエルの友人、トミーに、『エミリーのペッティングを、騒ぎ立てずに受け入れろ』と指示を込めてボルトを飛ばす。これは2時間でも3時間でもトミーを従わせることが出来る。トミーが本質的に嫌がっていないからだ。一方で、ダイナーでアルバイトしているウェイトレスのお姉さんに『今すぐ服を脱いで、全裸で店内を楽しく走り回って』と指示してボルトを飛ばす。すると赤毛のお姉さんは少しだけ困ったような表情を見せた後で、テキパキとダイナーの制服を脱いでいく。お客さんのキャットコールや拍手の中、全裸に笑顔で店内を駆け巡ったお姉さんは10分もすると我に返って、赤い顔で服を拾い上げてキッチンへ逃げていく。念のために店長に『今の件で、あのウェイトレスさんを叱ったり、解雇したりしないでね』と指示を送ると、これはもっと長い時間、受け入れられたようだ。店長をしている太ったオジサンは、本質的に若くて可愛いウェイトレスさんが裸を見せてお店を盛り上げてくれたことに、それほど腹を立てていなかったのだろう。ダニエルがボルトを打ち込むことを試した中で、最短時間しか効果が持たなかったのは、道で駐車違反のクルマにメモを書いていた婦人警官に、作業を中断してズボンを下ろし、お尻を出して見せつけるように指示した時だ。彼女は30秒も経たないうちに、慌てて黒いレースのショーツと制服のズボンを引っ張り上げて、パトカーへ逃げ帰っていった。とても精神力が強い人で、なおかつ押しつけた行動が彼女の規範から大きく外れていたから、1分も彼女を従わせられなかったようだ。

 

 授業中、ふと暇を持て余したダニエルは、クラス全体に『氣のボルト』をばら撒いて、「全裸レイブ」を開催してみたことがある。女子も男子も、着ているものを全部? ぎ取って、陽気に踊り狂った。チアリーディングスクワッドに入っている美女が足を高く上げて叫ぶ。さっきまで真面目にノートを取っていた大人しい勉強家たちも、音楽好きの華奢な子も、アート志向のグループも、みんな弾かれたように跳ね回って、頭をブンブンとシェイクしながらリズムに乗せて胸を揺らす。男子を見ていると、筋肉質なジョックたちも、眼鏡をかけたナードたちも、その中間の有象無象も、皆、我を忘れて裸で跳ね回っていた。ダニエルにとって興味深かったのが、一人一人、ばら撒いたボルトの効果が切れるタイミングが違うことだ。てっきり真面目そうな子ほど、早くこの指令の力から抜け出るかと思っていたら、意外と最後の方まで、少しずつ正気を取り戻しつつも、まだ微妙に迷っているような表情で踊り続ける。少しずつ、体の動きが大人しくなっていって、最後には自分の体を隠すことに躍起になる。その順番は、決して、大人しい子からパーティー好きそうな子への順にはならなかった。クレイジーに弾けたいという願望は、ティーン達のなかで皆に意外と共通しているのか、レイブの狂騒は30分も続いた。正気に戻るのが早かったのは、パーティー好きの噂があったり、派手目のルックスの連中。むしろ、そうしたパーティーなどとは無縁、といった生活を送っていそうなティーンほど、最後の最後まで、若干不安な表情になりながらも、クネクネと不慣れなダンスを披露しながら裸で踊りの余韻を見せていた。完全に正気に戻った後で、顔を真っ赤にして悲鳴を上げながら服を拾って着込んでいくのは、大体皆、同じルートだ。相手の行動を操作するボルトよりも、相手の記憶を操作するためのボルトの方が、効き目が長いようだ。特に、教室で全裸で踊り狂っていたことを「忘れてしまいたい」と思ってくれるような生徒たちは、ほぼ、半永久的にダニエルの指示通りに忘却したり、白昼夢だったと解釈してくれるようだ。ダニエルにとっては都合の良い傾向だった。

 

『イの弐』という技法は、『氣の道』を繋いだ相手から、相手の心の中や記憶の中にある情報を吸い上げるものだ。相手の考えだけでなく、感情やその記憶を共有してもらうことも出来る。ダニエルが真っ先に使ったのが、先生たちからの授業内容の吸い上げだ。先週先生たちが教室で熱弁した内容を、短い時間で共有してもらう。口やホワイトボードへ書き込むペンを動かしての授業よりも、思考の流れるスピードはずっと速く、1時間の授業内容が30秒くらいで頭に入ってくる。ついでに、「近い将来にテストに出そうと思っている内容」についてもこそっと吸い上げさせてもらえば、真剣に授業を受ける必要は無くなってしまった。授業に出ることをさぼっても、後から先生に『氣のボルト』を打ちこめば、彼らは「ダニエルには欠席しても仕方が無い理由があった。彼は優秀な生徒だから、彼の不利益になるような扱いはしないでおこう」と思わせることも出来るようになった。ダニエルにとっての学校生活が「スーパーイージーモード」に変わった瞬間だった。

 

『イの参』の技法を使いこなせるようになるまでは、これまでで最も長い時間がかかった。何しろ、「ダニエルとは違う、複数の対象同士を『氣の道』で繋いで操作する」ということの必要性も、メリットも、最初は良くわからなかったからだ。「自分の思い通りに、対象を操る」、「対象の考えや記憶、感情を吸い上げる」という2方向の楽しみで最初の2ヶ月は充分だったし、それ以外のことをしたいとも思わなかった。

 

 けれど、3ヶ月も経つと、ダニエルは徐々に『イの参』の使い道について気づき始める。それはちょうど、ダニエルの「他人をこんな風に操りたい」という妄想のバリエーションが尽き始めた頃とオーバーラップしていた。

 

 ダニエルの学校には、ダニエルよりも、もっともっと多くのポルノについての知識を持っている男子がいる。例えば「ナードのミック」だ。赤い癖っ毛で顔にはソバカス。そして分厚い眼鏡をかけている彼は、普段は非常に無口なのだが、ひとたび心を開くと、ダニエルやトミーが唖然とするほど、マニアックなポルノのライブラリーを脳内に蓄えていることがわかった。例えば彼とステイトン先生を『イの参』のコードで繋いで、ステイトン先生にブロージョブをお願いすると、いつもの先生とは舌技が一味も二味も変わってくる。ミックの脳内から送られる『僕だったらこんなブロージョブが見たい』という鮮明でイカれたイメージが先生の脳内に届くと、先生はそれがどんなに個人のアイデンティティとして受け入れられないと思ったとしても、そのイメージを忠実に再現してしまう。顔を赤くしながらも、舌を限界まで伸ばしてダニエルを見上げた先生は、大胆に舌から涎を、ダニエルのペニスの上に垂らす。そして伸ばした舌先でピチャピチャと、見せつけるようにペニスの先端を舐めた先生は、挑発的な笑みを漏らして思いっきりダニエルのペニスを、根本まで加えるのだ。そのあとの、先生の頭の激しい動きは、ペニスの先端を自分の喉の奥深くまで突っ込むほどのものだ。口内の粘膜による、そのストロークの長い摩擦は、ダニエルのペニスをそのまま射精しそうなほどの退行的な刺激で包み込む。刺激的な光景に慣れつつあるはずのトミーも、ステイトン先生の授業態度とのギャップの大きさに、思わず口笛を吹いて感嘆する。ミックは表情こそ変えないが、ゆっくりとその分厚い眼鏡のレンズを白く曇らせていく。どうやらこれが、彼が興奮しているというサインのようだった。

 

 ステファニーにも試してみる。申し訳ないのだけれどこの時には、ミックには(分厚い眼鏡の上から)アイマスクを付けてもらった。ダニエルにとって最愛の恋人のはしたない姿を、ミックに見られるというのは、抵抗があったからだ。ミックの、膨大なポルノ知識と鬱積した妄想とをステファニーの頭に繋ぐのも、10秒以内、最低限の時間と決めた。なんだか、自分の彼女の脳内が、変態男子の思考に汚されてしまうような気がしたからだった。

 

 僅かな時間の接続だったはずだけど、ステファニーは、最初は頭を抱えて泣きそうな表情を浮かべたけれど、暫く腕組みをして考えこむような様子を見せた後、自分を納得させるように頷くと、ダニエルを真っ直ぐに見据えた。

 

「ダニエル。お願い。私のお尻を犯して。全部貴方のものにならないと、気が済まないの」

 

 声だけ聴いているミックはアイマスクを付けたまま、「それはそうだろう」といった様子で何度も頷く。ダニエルはミックの発想に嫌悪感を覚える。けれど、ステファニーのお尻の穴に入れさせれもらうというシチュエーションには、興味は覚えてしまった。こんな機会でもなければ、ダニエル独りではステファニーにそうしたことを強いる勇気は出ないだろう。痛そう………、彼女が可哀想………。そんな思いが先に立ってしまうからだ。けれど、実はステファニーとはいつも『氣の道』が繋がっているのだから、彼女の痛覚だって制御出来るとしたら、この機会を逃さずに置いた方が良いのかもしれない………。本当だったら性行為に使うべきではない場所を酷使するというのは、良くないことだとわかっているが、その背徳感のせいか、すでにダニエルのペニスはいきり立ってしまっていた。

 

 少し迷ったあとで、ダニエルはミックを自宅に返すことにする。ステファニーがお尻の穴を初めて捧げるところで、アイマスクをつけた変態男子を部屋の片隅に置いておくのも、彼女にとって可哀想だと思ったからだ。

 

「大丈夫、そんなにドギツいシチュエーションはイメージしてないよ。『アヌス・イン・ワンダーランド』という、割とソフトな自主製作ポルノを思い出しただけだ。ヒロインはアナルを犯されてすっごく感じて、ハッピーエンドになる筋書きだ」

 

 ミックは自信有り気に親指を立てると、アイマスクを外した瞬間に、ステファニーのランジェリー姿をチラッと見ると、自宅へ帰ることに合意してくれた。物わかりの良い変態で助かるが、きっと自宅へ帰ったら、ダニエルの彼女の下着姿を思い出して、マスターベーションに励みながら分厚い眼鏡のレンズを曇らせることだろう。

 

 バスルームを貸したら、ステファニーはずいぶん長い間、シャワーを使ったり、準備作業をしていた。ダニエルも、以前エミリーが自分のお小遣いで買ってくれた、潤滑油をたっぷりとベッドサイドに準備する。やっとバスルームから出てきた、バスローブ姿のステファニーは、緊張の面持ちのままベッドの上に上がって、ダニエルに背を向けるように四つん這いになった。

 

「………お願い…………。私を、不思議の国へ、連れていって………」

 

 これは、ステファニーの言葉なのだろうか。それともミックから押しつけられた、彼が依然見た自主製作ポルノにあった台詞なのだろうか。良くわからないけれど、ダニエルは潤滑油をステファニーのお尻の上からトロトロと充分に垂らして、彼女のお尻の肉を揉み解しながら、恥ずかしいすぼまりに指を伸ばした。

 

「緊張………しなくていいよ………。力を抜いて、ゆっくりリラックスして………」

 

 人差し指で円を描くように、彼女のお尻の穴をゆっくりと解していく。見るとステファニーは、顔をベッドのシーツに突っ伏して、恥ずかしさに耐えながら、両膝で下半身を支えてお尻を突き上げている。左手の人差し指と親指で、いくぶんかほぐれたお尻の穴を左右に開きながら、ローションに浸った右手の人差し指をゆっくりと挿入していく。ステファニーが痛みと異物感に襲われたからか、「ハァッ」と強く息を飲む。そのあとの彼女は、ベッドに顔を埋め、シーツを噛んで耐えているようだった。ゆっくりと、彼女の反応を確かめながら人差し指を奥まで挿入していくダニエル。根元まで入れてもステファニーの体が想定外の反応を見せたりしないことを確認したダニエルは、入れる時よりは早いスピードで指を抜いた。彼女の腰がヒクヒクッと震える。痛みや異物感以外の感覚も持ったのだろうか? 「んっ」とベッドから漏れたくぐもった声は、彼女がダニエルと普通のセックスしている時に出す声とも似ていた。

 

 ステファニーが苦しみながらも、お尻を突き出した姿勢を崩さずに待っていることを確認して、ダニエルも覚悟を決めて、両手を彼女の腰にあてた。自分の腰を押し出すように彼女に近づけて、コンドームを被ったペニスを、彼女の後ろに押し込んでいく。彼女の柔らかくてプルプルしたヴァギナに入れるのとは違い、相当に時間もかかるし苦労する工程だった。けれどダニエルのペニスは途中で萎えたりしなかった。背徳的な行為をしているというスリルと、何よりステファニーの強烈な締めつけが、強い快感を生んでいたからだ。そして、彼女がこんな部分でもダニエルを受け入れてくれるという事実が、心を温めてくるようだった。

 

「んぁっ………あっ…………あぁっ…………んぁあっ…………」

 

 ベッドに顔を埋めていたはずのステファニーが、背筋を更に反らし、顔を上げて喘ぎ始める。その声はまるで動物が交尾をしている時の鳴き声のようだった。

 

 通常のセックスの時よりもうんと遠慮して腰を振ったつもりだったが、2人で果てた後は、どちらもぐったりとベッドに寝そべってしまった。ダニエルは早くコンドームを外して捨てたいのだが、なかなか体が言うことを聞いてくれない。どうやら2人とも、肉体的に、というよりも精神的に疲労困憊になるほど、緊張していたのだった。

 

「ステフ。………大丈夫だった? ………痛くなかった?」

 

 ダニエルは思わず声に出して彼女に聞いたのだけれど、言った後ですぐに、無駄な質問だったと後悔した。自分の体にされたと想像するだけで、痛くないはずがないことはわかる。だから、彼女が答えるよりも先に、『氣の道』を使って痛みが安らぐように感覚を操作した。少し表情が楽になったステファニーがダニエルの方を向く。

 

「貴方はどうだったの? …………ダニエル。気持ちよかった?」

 

「え? …………あぁ…………。良かったよ。………ありがとう。ステファニー。僕が一番嬉しいのは、君がここまで僕のためにしてくれた、っていうこと」

 

「………気持ちが嬉しかった、っていうこと? …………貴方の体は、気持ちよくなかったの?」

 

 なんとなく明言するのを避けたのに、ステファニーは懸命に追及してくる。なので、ダニエルは正直に自分の気持ちを告白した。

 

「いや………、すっごい良かった。…………癖になったら困ると思って、シテいる間、あんまり考えないようにしていたのに、すごく興奮しちゃったんだ。気持ちよかったよ」

 

 そう言ったダニエルに、ステファニーが裸のまま、ギュッと抱きついてきた。

 

「………嬉しいっ………。私、貴方が気に入ることは何でもするから、…………私に飽きないでね。………ずっと大好きよ。ダニエル」

 

 ステファニーは心底、安心したように表情を緩めて、ダニエルとキスをすると、彼の胸元に顔を埋めて愛おしそうに頬ずりする。そしてそのまま寝息を立て始めてしまった。彼女の寝顔を見ながら、物思いに耽るダニエル。振り返ると、ここ1カ月ほど、彼女とのセックスの頻度が少し減っていたかもしれない。学校の外にも美人は沢山いる。オークカウンティ・ハイから車で20分ほどで、オークカウンティ・ユニバーシティもあれば、カリフォルニア大学のテック・カレッジもある。新しいセックス・パートナーの探索は、いつもダニエルのハンター魂をくすぐった。その上、彼にとって初めての彼女であるステファニーは、顔や体だけではなくて、優しくて清らかな性格も最高。ダニエルにとっては特別な存在だ。それだけに、彼女を酷使したり無茶なことをさせるようなプレイは、なんとなく避けてしまうのだった。結果、刺激を求めて、自然とステファニー以外の女性とのセックスの方が増えてしまった気がする。そのことが、彼女に寂しい思いをさせてしまったのかもしれない。さっきの、ジンジンと痺れているであろうはずのお尻の穴の感覚に耐えながらステファニーが見せた、天使のような笑顔を思い出すと、ダニエルは寝ている彼女をギューッと力強く抱きしめた。

 そんなこんなで、彼がステファニーの体を動かしてベッドから起き上がり、コンドームを捨てて両手を念入りに洗うことが出来たのは、30分も後のことだった。

 

 

。。。

 

 

 最愛の恋人、ステファニーだって、特別扱いはしない。そう決めたダニエルが、次の日に思いついた遊びは、彼がニュージャージーに住んでいた頃から、カリフォルニアのティーンに対して抱いていたステレオタイプなイメージに影響されたものだった。オークカウンティは高校としてはレベルの高い学校だし、裕福な家庭の子供も多かったので、(ジェイク・ロブソンのような例外を除くと)不良も少なかった。しかし、それとこれとは関係がないのだろうか? 彼が『イの弐』の術式を活用して噂を辿っていくと、比較的シンプルに彼が探していた相手は見つかった。ビーチでポット、つまりマリファナを吸ったことのある生徒だ。この娘はチアリ―ディングチームに属していて、ビーチだけではなく、ミュージックフェスやボーイフレンドと悪友が集まる家などでも、マリファナを楽しんでいたようだ。大した罪悪感も持っていなかったことが、彼女の記憶を吸い上げたことで分かった。『イの参』のコードを、ダニエルはこのチアリーダーと唯一同じクラスである、アルジェブラの授業を受けている生徒たち、そして先生にも繋いでみる。数学の先生、それはカレン・ステイトン先生だ。

 

 そのゴージャスでホットな見た目とは違って、生徒に対して厳しい態度を取ることが多いステイトン先生の授業中に、珍しく、教室のあちらこちらから、クスクスと笑い声が聞こえ始める。内緒話から漏れてくる笑い声とは違う、ダラダラと尾を引くような、独り笑い。振り向くと、ニタニタしている生徒の隣に座っている別の生徒は、放心したようにホワイトボードよりも上のある一点を凝視して、口を開けたままになっていた。

 

「誰ですか? …………授業に、集中してくらはい………」

 

 注意をしたはずだけれど、ステイトン先生の滑舌も少し、悪くなっていた。その、少し舌ったらずになったような喋り方が、ツボにはまったのか、笑いを止められなくなる生徒が続出する。机に突っ伏したり、椅子に仰け反ったりと、皆の姿勢が崩れてきた。ダニエルは、せっかくなので、彼の席の斜め前に座っているステファニー・マイルズにも、『氣の道』を繋いでみる。チアリーダーのリサから、彼女がマリファナをキメて、最高にハイになった時の感覚の記憶を送り届けてみる。するといつも真面目で大人しいステファニーが、手を叩いて笑い始めた。周りの目を気にすることなく、ダニエルの方を振り向くと、何度も口でキスをする仕草を繰り返す。ダニエルが恥ずかしがって、気まずそうに周りの反応を確認するほど、ステファニーは悪戯っぽく笑って、何度もウインクやキスの仕草を見せつけてくる。この子は一体、どれだけダニエルのことを好きになってくれたのだろうか? ありがたいやら、気恥ずかしいやら、ダニエルは少し頭から汗をかいた。

 

「ちょっと……もう……………、みんな………いい加減にしなしゃいっ」

 

 ステイトン先生はホワイトボードの前から、歩き出そうとして腰が砕けたように膝から崩れ落ちてしまう。足首に力が入らないようだ。その様子を見て、教室が笑いの渦に包まれる。ついに先生本人までも、お腹を抱えて笑い転げてしまった。

 

 足で床をドタドタと鳴らしながら笑う生徒。顎が外れそうなくらいに大きな口を開けて仰け反る生徒。お互いの方に寄りかかりながらお腹を抱えている生徒。机にオデコを乗せたまま、その机をバンバン叩いている生徒。薄っすらと笑みを浮かべたまま、まだ一点凝視を続けている生徒。みんな汗ばむほどに笑って、腹筋を揺らしていた。

 

 教室の温度自体も上がったように思える。案の定、筋肉質な男子生徒から、シャツを脱いで上半身裸になり始める。それを指笛を吹いて囃し立てる女性がいる。よく見てみると、それは床に座り込んだステイトン先生だった。ダニエルが気になって確認してみると、ステファニーまでも、少し顔を赤らめながらも、笑顔で拍手をしている。彼女の意外な一面を見たような気がした。

 

「アタシたちも脱ごうよ」

 

 最初に声を上げた女子は、チアリーダーのリサ・マッケンジーだった。彼女がその気になってくれるのは、都合が良い。なぜなら『イの参』のコードは彼女の心を送信する方向に繋がっているので、ダニエルがその気になれば、いとも簡単にクラス全体にその意志を浸透させることが出来るからだ。そして、彼は当然、その気になった。早速彼女の最高にハイになったマリファナ体験の記憶を、クラス皆に、今の感覚として共有してもらった。

 

 弛緩した笑顔を見せながら、男子生徒も女子生徒も、立ち上がってシャツやジーンズを脱いでいく。わざわざ椅子や机の上に乗って、見せつけるように脱いでいく生徒も少なくない。隣同士の男女で、お互いに剥き出しの胸や股間を見せ合って笑い合っている生徒たちもいる、まるで高校生ではなく、精神が幼稚園児くらいに退行してしまったようにも見える。ただ、教室の空気はカオスになっているかというと、それよりはピースフルで、レイドバックしたムード。それはまるで70年代のサイケデリックなヒッピー映画でも見ているような雰囲気だった。

 

「見て~。ここ………。昨日、ダニエルが入れてくれたの。………嬉しい~。私は、全身、全部、ダニエルのものなの………。ダニエルが大好き。………本当に大好きなの~」

 

 聞きなれた上品な声色は、いつもよりもあどけなく間延びしている。なんと椅子の座面に立ったステファニーが、スカートもショーツも下ろして、ヒップを突き出して見せびらかしているではないか。昨日、ハードに責められたことが、よほど嬉しかったらしい、自分のガールフレンドのはしたない姿を見て、ダニエルは頭を左右に振った。なかなか現実として受け入れられないくらい、強烈な光景だったのだ。

 

 厳格な美人教師、ステイトン先生がコントロールしているはずの数学の授業が、恍惚の表情で裸でまぐわいあう、若者たちの乱交パーティーに変化してしまった。肌の色、髪の色も違う生徒たちが分け隔てなく抱き合い、口づけを交わしていちゃついていく。人気のある子の周りには何人もの異性が群がって、様々な体勢から、空いている部位に愛撫をする。教室中に、喘ぎ声が響き渡る。ダニエルは、まだ自慢げにお尻を晒して回ろうとするステファニーが、他の男にちょっかいをかけられないように守っているので精一杯だった。

 

 授業終了のベルを聞いたダニエルが、氣の道を分断すると、一人ずつ、冷静になって服を探して拾い上げていく。ダニエルはとりあえず視界に映る生徒たちに、『授業中のことを忘れる』という氣を練りこんだボルトを飛ばして、事態の収拾に努めた。それでも、何人かは彼の対策を逃れたらしくて、自分が誰かに「知らないうちに薬を盛られた」と心配して、メディカルセンターに駆け込んだりしたそうだ。当然ながら、彼ら、彼女らの血液からは何の違法物質も検出されなかった。

 

 後でリサ・マッケンジーの記憶を『イの弐』の術式を使って、より深く調査する。すると、ダニエルは彼女の「最高のマリファナ体験」の日に、実は彼女はエクスタシーやその他、媚薬のようなパーティードラッグを何種類か混ぜ合わせた、ドラッグカクテルを服用していた、ということがわかった。ニュージャージーにも薬の濫用をしていると噂されている生徒はいたが、大抵は明らかな不良生徒だった。彼が元いた場所と比べると、やはり南カリフォルニアは若干緩いというか進歩的というか………。薬でハイになる体験を共有してもらうにも、より注意が必要ということが、わかったのだった。

 

 

。。。

 

 

 ダニエルは、氣の使い方を教わって数カ月たち、『イの壱』の術式を使える相手の数も増えてきたチャンスを見計らって、近所に住んでいるエイブラハム・ツィンマーマンという大富豪の爺さんを『氣のコード』で繋いで、彼の考えや行動を操作できるようにさせてもらった。この、天涯孤独で人付き合いの悪い頑固爺さんは、ダニエルの家のはす向かいに大きな邸宅を構えていた。聞けば、テキサスのオースティンやアリゾナのフェニックスにも、同様に大きな家を所有しているらしい。ミスター・ツィンマーマンには悪いのだけれど、せっかく沢山の別荘を持っているなら、それらの不動産を有効活用してもらうためにも、しばらくの間、彼には旅行に出てもらうことにした。その間、広い庭とプール、ガレージにSUVやヴィンテージカーを擁する豪華な邸宅は、ダニエル・ランバートが管理して、自由に使っていい、という署名を残して、金持ち爺さんは長い長い旅に出て行ってくれた。

 

 ダニエルのパラダイスはその土地に拓かれた。まずはキングサイズのウォーターベッドが鎮座するマスターベッドルームを、ダニエルとステファニーのものにして、彼女と同棲を始めた。食事は、はす向かいの自宅から、ママのルシールや姉のエミリー。そしてエミリーの友だちのアマンダや、時にはステイトン先生が精魂込めて作った手作り料理を運び込んでくれたり、食材を持ち込んで、広いキッチンで作ってくれたりする。沢山の配信チャンネルが繋がれているリビングの巨大な壁かけテレビに、バスケットボールやフットボール、ベースボールなどのスポーツ中継や、ステファニーが見たい文芸ドラマ、そしてたまにトミーが見たがる日本製アニメなどを映し出した。

 

 最近、急速に仲が良くなっている、変態オタクのミック・キンスキーが「ダニエルの(預かっている)家」を訪れることもあるが、彼が普段耽溺しているような、ドギツいポルノ作品は、リビングの巨大テレビに映させたりはしない。ミックの記憶にあるライブラリーを再現するべき場所は、テレビのスクリーンではなく、ダニエル邸そのものだと、ダニエルは考えているからだ。

 

 ツィンマーマンさんが快く残していってくれた邸宅の管理費は、部屋をどれだけ改造したり、様々なサイズのコスチュームやユニフォーム、ドレスやランジェリーを購入し続けても、ほとんど減る様子もなかった。ミック監督が指示する通りに工事が行われ、リビングの天井からはチェーンやワイヤー、拘束具が垂らされると、ヒロインであるステファニーやステイトン先生、エミリーやアマンダ。そしてリサとチアリ―ディングスクワッドの美女たちは、何の疑問も違和感も持たずに、喜んでそれらの道具に吊るされて、僅かな面積の黒いレザーに身を包んだセクシー極まりない姿で、あらゆるポーズで拘束された。ダニエルやトミー、ミックが、次々と多種多様な形状と機能を持った玩具で彼女たちを責め立てると、発情した彼女たちは歓喜に咽び泣きながら、もっとイジメて欲しいと懇願した。

 

 庭のプールに大きな浮き輪のベッドを浮かべて、そのベッドに寝そべったダニエルの体を、水面に顔を出した裸の美女たちが、懸命に立ち泳ぎをしながら、かわるがわる愛撫をして、口で奉仕する。まるで古代ローマの貴族の遊びのように、ダニエルは可愛い奴隷たちが必死にこなす仕事を愛でて、快感に酔った。

 

 

。。。

 

 

 いくら彼が女の子たちと遊ぶことに溺れても、ダニエルの『氣』への興味は薄れなかった。『イの壱』の術式の対象者が10人にまで増え、『イの弐』の術式を駆使して学校の授業はほぼ欠席してもトップの成績を得た。遊びに飽きた頃には『イの参』の術式で新しい遊び方を得る。『ロの壱』で一度に放つことが出来る『氣のボルト』も30を超えるようになっていた。頻度は減っても、忘れないようにミヤグニさんの家を訪れて、氣の使い方の成長を見せた。それに対してミヤグニさんは、ダニエルがそうした技を濫用しないように、時々戒めながらも、読みにくい表情でため息をついては、期を見計らって、新しい術式を教えてくれた。

 

『ロの弐』という術式は、『ロの壱』のように氣のボルトを作って飛ばす。けれどそのボルトの形状は、ネジ頭が2段になっているように見える。ボルトの先にもう1つ、ボルトがあるような、特殊形状のボルトだ。

 

「対象が2人いるとする。対象Aの頭にこのボルトを飛ばす。対象Bがどんな相手で、その相手に『子ボルト』がハマったら、どんな効果を出すかも、最初の対象Aにボルトを飛ばす時点で決めておかなければならない。それらがきちんと出来ていれば、君から遠くに離れていても、君が全く気づかないうちにも、対象Aが対象Bと思われる人物と接触した瞬間に、自動的に『子ボルト』が飛んで、対象Bに影響を及ぼす。そういった、間接的な操作を可能とするものだ」

 

 ミヤグニさんの説明は、一度聞いただけでは、ダニエルは完全に理解したという気分になれない。それでも、何度か実演してもらううちに、原理は体感出来るようになっていく。そして、完全にその効能を自分のものとして理解できるようになるのは、いつも様々な実践を試したあとだ。

 

 それはこんな活用法だった。ダニエルが、例えばチアリーダーのリサ・マッケンジーに『ロの弐』の『親子ボルト』を飛ばす。彼女は普段通り、ジョックたちのスポーツの試合をチアリーディングスクワッドと応援に行ったり、パーティーに参加したりする。そこで彼女が相手チームの応援席やパーティー会場で『特別に可愛い子を見た』、『特別に魅力的な女性を見た』と感じた瞬間に、その相手にリサの頭から『子ボルト』が飛ばされていって、氣の影響が及ぼされる。この場合は、『こちらにいるリサという子からダニエル・ランバートという男子の連絡先を聞き出して、彼に会わなければならない』という使命感だ。こうして、ダニエルが見たことも会ったこともないどこかの美女が、リサを経由して、向こうからダニエルのもとを訪れてくれることになる。ダニエル自身が可愛い子を探して色んな場所を徘徊しなくても良いし、ダニエルでは行きにくい場所にも、リサやステイトン先生、ジェイクやエミリーが足を運んでくれ、新しい交友関係を築いてくれる。そしてその新しい関係性は、すべてダニエルの新たな楽しみへと変わるのだ。

 

『親ボルト』をつけて運ぶ相手としては、優秀なタイプとそうでないタイプがいることがわかってきた。例えばミック・キンスキーのような変態オタクに『ロの弐』の親子ボルトを備えつけても、彼はオタク仲間としか会うことはない。学校の外では、そうした同類とネットで連絡を取り合うか、ポルノショップのくたびれた店長くらいとしか、直接会話をしない。そうした相手にこの術式を使っても、『氣の無駄』だ。しかし、ダウンタウンにある美容室の店員さんにこの親子ボルトを付けてもらったら、どうだろう。3日と開けずに、飛び切り可愛い子が、ダニエルの元にやってきてくれた。やはり、美容室の店員さんは、毎日、何人もの女性と接していて、その中でも外見に気を遣う、魅力的な女性と接する機会がある。そうしたことに気がついたダニエルは、街にいる接客業の人たちに、より多くの親子ボルトをばら撒くようになった。ビーチの目の前にあるリゾートホテルのデスク、会員制高級ジムも受付、ショッピングモールの化粧品店、ダイナー、クラブ、ボーリング場、映画館。気がつくと、オークカウンティという街全体が、魅力的な女性を補足してダニエルに提供するための、蜘蛛の巣のような装置になりつつあった。

 

 毎日、新しい美女が、ダニエルの家を訪れる。プールで浮かんでいる彼の元に、リビングで美少女たちとイチャついている彼の元に、あるいはマスターベッドルームでステファニーとスキンシップを楽しんでいる彼の元に、今日も新しい美女が現れては、自己紹介を始める。そのたびにダニエルは、彼女たちに新たな『氣のボルト』を飛ばして、第一印象から思いつく、それぞれに相応しそうなグループ・プレイへと招待するのだった。

 

 

。。。

 

 

『ロの参』のボルトはさらに変わった形状をしている。ネジ頭に相当する部分を囲むように、グルリと小さなネジ頭が組み込まれているのだ。

 

「この『多頭型ボルト』は『ロの弐』と違って、親ボルトと違う指示を込めることは出来ない。あくまでも親ボルトと同じ行動や感情を与えるだけだ。けれど、子ボルトの数が圧倒的に多い。少なくとも10個。慣れれば24個くらいまで1つの親ボルトにつけることが出来る。これを一つ、現場に居合わせた通行人にでも装着させておけば、例えばその後にその場所へやってきた10数名の別の通行人にも、同じような影響を与えることが出来る」

 

 これも、言われただけでは理解しづらいので、実践してみることにする、すると何度か試して、ようやくミヤグニさんの意図が腹に落ちた気がしてくる。例えばダウンタウンの広場でストリートパフォーマーがダンスを披露しているのを見る。浅黒い肌とドレッドヘアーがクールな女性ダンサーだ。彼女に『ロの参』の術式で作り出した、『氣の多頭ボルト』を飛ばす。ダンサーのお姉さんは、踊っていて暑くなってきたといった表情で、パーカーを、そしてタイトな白シャツを、さらにはスポーツブラをも脱いでいく。少しずつ、ギャラリーが増えていく。そうしたギャラリーや、通行人の中に、ダンサーのお姉さんが「綺麗だな」と感じた女性がいると、『ボルト』は反応して、子ボルトを飛ばす。それも1人に飛ばして打ち止めにはならない。10人近くの女性に対して、ダニエルからの『氣の補充』も無しに、子ボルトを飛ばす。見えない氣のボルトを打ち込まれてしまった女性たちも、どうしようもない衝動に襲われて、我慢できなくなってその場で服を脱いで踊り出す。即興のストリートダンスバトルだ。広場のキッチンカーにホットドッグとレモネードを買いに来ていただけのキャリアウーマン風の女性が、急にビジネススーツと襟付きシャツを脱ぎすて、黒くて大人っぽいブラジャーを放り投げて、オッパイを振り乱して踊り狂う。アイスクリームを手に、談笑しながら歩いていた女子4人組のうち2人が、上半身裸になって、フィギュアスケートのペアのようにリフトしたり足を突き上げたりと難しいポーズを取る。サングラスをしてイヤホンから音楽を聴いていた綺麗なアスリート系の美女も近くのテラス席にサングラスを置くと、さらにその上にジャケットとトップスを置いて、ストリートダンサーに対抗するようにステップを踏む。ダンサーとこのお姉さんは、まるでお互いを威嚇するように、突っかかるようなステップを仕掛け合っていたかと思うと、急にお互いの体に身を預けて回転して見せたり、息の合ったコンビプレイを披露してくれる。2人の人種と肌の色が違うところも、ギャラリーたちの目を楽しませてくれる。気がつけば、12人もの半裸の美女たちが、広場の一角でダンスコンテストを繰り広げている。携帯を出してカメラを構える野次馬がいたら、『携帯の電源をオフにして、ズボンやスカートを脱いだ上で、ダンスコンテストを盛り上げる』という指示を込めた『多頭ボルト』の子ボルトが事態を収めてくれるので、ダニエルは心置きなく、この「自然発生的な」ダンスバトルを眺めて楽しむことが出来た。不特定多数の対象を相手にした時に、『イ』の術式では、常に相手の操作にある程度の集中が必要だ。『ロの壱』の術式にしても、新たに現れる一般人に対して、常に自分からトラブルを予防するボルトを飛ばすことを考えて、構えていなければならない。『ロの弐』や『ロの参』の術式は、間接的に操作の手を拡張してくれるので、ダニエルが心置きなく、目の前に広がるシチュエーションを楽しむことが出来るという、特長を体感することが出来たのだった。

 

 

。。。

 

 

 今日はダニエルの家の庭に、選りすぐりの美少女たちが集められて、ゲームをすることになった。単に体を使うだけではない、相当に体力を消耗する、ハードな運動だ。綱引き。これがシンプルだけど意外と見応えがあり、参加者は思わず体にある力を全て使い果たすまで健闘してしまう競技だ。プールに浮かべた浮き輪ソファーにプカプカと浮かんで観戦するダニエル。そのダニエルから見て、右側にいるのがオークカウンティ・ハイスクールの美少女、美女たち10人だ。そして左側に並んでいるのが、オークカウンティハイ以外の高校の生徒や大学生。今は観戦しているが、ワーキングウーマンチームの10人と、ハウスワイフチームの10人も、それぞれ魅力的な女性たちが、それぞれ思い思いのセクシーな服装で集められている。ダニエルがツィンマーマンさんから預かっている豪邸は広い庭を持っているが、流石に若い女性が50人近くも詰め込まれると、汗ばむ女性たちの香水や体臭で、むせかえるほどムンムンとしている。

 

 スポーツショップで買った太い荒縄を、両チームが持ち上げる。両チームの間に立っているのは、審判ではなく、ダニエルが指名したとっておきの美人3名。彼女たちは両手を頭の上に組んで、縄を跨ぐようにして両足を肩幅に広げて立っている。レオタードや水着、生地の少ないホットパンツなど、大胆な服装を求められていた。演出しているのは、舞台監督のミック・ヘンタイマスター・キンスキー。彼の美的感覚を押しつけられたせいで、真ん中で荒縄に跨っているビキニの美女は、オークカウンティ・チャーチに赴任してきた、シスター・オーコネルという、敬虔な修道女だった。

 

「ピーッ」

 

「オーエスッ。オーエスッ」

 

「カモンッ。オーエスッ。オーエスッ」

 

「オー、ノー! オー、ノー!」

 

 審判のステイトン先生が笛を吹くと、両軍の選手10名ずつが、背筋をピンと伸ばし、重心を後ろに傾けながらロープを引っ張り合う。そのロープが片方に引っ張られるたびに、跨いだ荒縄に股間を擦られる、3人の美女が喘ぎ声を上げる。特に中央のビキニ美女、シスター・オーコネルは時々右手で十字を切って、天を仰ぐと、誰かに許しを乞いながら身悶えして体をくねらせる。彼女の前後で切なそうに腰を振っているのは、オークカウンティ署で一番美人な婦人警官と、LAのロースクールに通っている弁護士の卵という2人だった。

 

「オーエスッ、オーエスッ」

 

「オー、ノー! オー、ノー!」

 

 美女たちの掛け声と歓声、悲鳴とが同時に緑の庭に響き渡る。

 

「凄いや、こんな馬鹿馬鹿しい光景、見たことないよっ」

 

「さすが、ミックは南カリフォルニアが誇る、ヘンタイマスターだ!」

 

「………まだまだ行くぜぃ」

 

 4つに分かれた綱引きチームの中で、1回戦で敗退したチームから、慰労を兼ねてプールに入らせることにする。家庭用のプールなので、20人も入ると、ごった返す。裸で泳ぐ彼女たちには、呼吸をするために顔を水面に出すことを許可する以外に、オッパイかお尻を水面に出すように指示を出した。こうしてダニエルが見下ろす水色のプールは、オッパイやお尻の、2つの丸が連なった浮島を大量に擁する、群島地帯のような光景になる。懸命に水面下で手足で水をかいて維持する、丸い柔肉の群島。その、エロというよりもシュールと呼ぶべきような光景越しに、ダニエルは綱引きの決勝戦を観戦するのだった。

 

 。。

 

「そこの白いのと………。あと、そっちのおっきいのにしよっか。………トミーはあっちの乳首デカイやつにしたら?」

 

「………俺のチョイスを勝手に決めるなよ………。でも、実際、あれはなかなか、良いかも………」

 

 綱引きがひと段落ついた後も、プールの中にはオッパイやお尻の浮島が水面の上にプカプカと浮かんでいる。顔が魅力的なことは、今日、ここの庭に招かれていることで、保証付きの女性たち。その女性のなかから、次に奉仕をしてもらう相手を見つけ出す。本来なら、プールに浮かぶ落ち葉などを拾い上げるためのタモを使って、女の子たちをピックアップしていく。苦労して水面に浮かび上がらせていた自分のオッパイやお尻に、網をかけられた女の子は、嬉々としてプールサイドまで泳いでいって水中から上がる。ビーチベッドに寝そべりながら、タモを操作する女の子にアレコレ指示を出している、ダニエルやトミーのもとへ行って、精一杯の奉仕を披露する。ご奉仕されているダニエルやトミーが途中で飽きてしまったら、罰ゲームへ移行しなければならないから、彼女たちも大変だ。

 

「今のところ………暫定1位は? …………俺はシスターだな」

 

 ミックがソバカスだらけの顔をニヤつかせる。シスター・オーコネルは確かに、まとっている雰囲気から清らかだったし、フェラチオさせたりお尻を犯したりする時のリアクションがいちいち新鮮で、可愛らしかった。

 

「俺はやっぱり、エミリー。………シスターのお尻よりも、張りがあるし」

 

「お前、真顔で俺の姉ちゃんをランクインさせんな…………。大体、これだけ集めておいて、いつもの感想と変わんないって、遊び甲斐がない奴………」

 

 ダニエルが呆れてコメントするけれど、内心では、自分のことが指摘されないかと、ドキドキしている。結局彼も、今日今までスキンシップをとって、ご奉仕してもらった中で、誰が一番しっくり来たかと言うと、恋人のステファニー・マイルズを挙げたい、というのが素直なところだった。これだけ街中の美女を集めて、選びたい放題に見繕って、彼女たちの体を好き勝手に弄んでも、やはり毎日のように肌を合わせているステファニーが一番、体に馴染んでいる。そしてこれほどの美女選抜の中でも全く霞まない、彼女のポテンシャルの高さを大いに褒めるべきだろう。………しかし、これだけ大掛かりな遊びを設計させて、ミックに舞台監督、演出を任せておいて、いつもの彼女を選んでしまうというのは、若干気が引けた。だからダニエルは、

「シスターも良かったよな。………ホントに………」

 

 と、なんとなく語尾を濁して誤魔化してしまうのだった。

 

 

。。。

 

 

 日差しも強いので、プールサイドでおイタをするのもそこそこに、室内に戻る。リビングには特注したチェーンや拘束具が天井からぶら下がっている他にも、撮影に必要なライティングや反射板、集音マイクといったグッズも揃っていた。ここからさらに、ミックの妄想が冴えわたる。ダニエル1人でこの集団を支配していたら、とても扱いきれなかった、極彩色の変態世界だ。

 

「ウェンディ・ダルトンは警官だったよね。せっかくだから、制服を気直させよう。手錠を持って来てるなら、自分で後ろ手に手錠をしてもらおうか。手錠をかけられた下半身裸の婦人警官をバックから犯すのが、夢だったんだ。犯すのは俺じゃなくてもいいから、ダニエル、やってくれよ」

 

「…………お前は本当に、サラッと狂ったことを言うよな………」

 

 ダニエルが飽きれて返事をしている間にも、オフィサー・ダルトンは顔をしかめながらも神聖な公務のための制服を身に着け始める。『イの参』のコードでミックと繋がってしまっている彼女は、彼の下品な妄想を忠実に再現するしかないのだ。それこそ、言葉で表現されないような細部まで忠実に………。手錠はダニエルが想像していた銀色のものではなくて、光沢のない黒いものだった。けれど警察官の制帽は、男子たちが思い描いているもの、そのものだ。

 

「どうせなら、ダニエルがバックで責めてる時に、後ろから突かれながらも、笑顔で敬礼しているっていうところを写真に撮りたいな。どうかな? 監督」

 

 最近では、トミーまでも、少しずつ自分の性癖や妄想を解放してきて、ダニエルを閉口させる。彼の好きなジャパニメーションと、ヘンタイというのは、強い関連性があるのだろうか?

 

「ど………どうでもいいけど………、後から僕を逮捕したりしないでね。オフィサー・ダルトン………」

 

「もちろんよ。今日の私の任務は貴方たちを喜ばせること。全ての法律、それに私の人権や尊厳よりも優先される、最重要任務ですから」

 

 水色のシャツを着て、紺色のネクタイを締めかけていた美人オフィサーは、気をつけをして、きびきびとした敬礼を見せた。その表情は、まだ少し微妙な迷いを見せていたけれど、彼女に刺さっている氣のボルトは、まだきちんと効果を発揮しているようだった。(使えば使うほど、彼の氣のボルトの効果時間は伸びつつあるようだ)

 

「じゃぁ、ウェンディ。君がこれまでにした悪いことを、正直に答えなさい」

 

「イエス・サー! …………私は、法律違反などはほとんど犯していないと思いますが………、昔、恋人に対して、裏切り行為を働いたことがあります。………若かったためです……」

 

 敬礼して直立の姿勢で胸を張って、オフィサー・ダルトンは赤面しながら答える。

 

「何をしたのか、全て包み隠さず答えなさい」

 

「プロムパーティーの夜に、パートナーが男友達たちと飲み騒いでいる間に………、昔から気になっていた男性に、キスを求められて、こっそり許しました…………。酔っていたんだと思います。申し訳ございません」

 

「そのことを、貴方のその時の恋人には、謝りましたか?」

 

「………いえ………。私たち2人しか………知らないことです。これまで、誰にも言っていません」

 

 なんとも若々しい、学生時代の過ちを、下半身裸のまま、頬を赤くして説明してくれる婦人警官のことが、どんどん可愛く思えてきた。罪の告白を求めたらこんな過去の、ちょっとした話しか出てこないなんて、どれほど真面目な人生を歩んできた人だろう。その真面目で美しい警官を、これから犯す。そう考えると、少し疲れを見せていたはずのダニエルのペニスが、また復活して固くたぎってくる。

 

「それでは、罰として、僕が貴方をバックからファックします。法と秩序を守る立場の人間として、潔く受け入れるように」

 

「イエッサー。よろしくお願いしますっ」

 

 両手の手首を後ろで手錠に繋がれた美人警官が、体を折って剥き出しの下半身をダニエルに突き出す。制服の婦人警官を、手錠で拘束して犯す日がダニエルの人生に訪れるなんて、これまで想像もしていなかった。けれどウェンディの魅力的な容姿と生真面目な性格、そして鍛えられたヒップの間から見せるピンクのヴァギナを見て、ダニエルのペニスは完全にいきり立っている。ちなみにウェンディのヴァギナの唇からお尻にかけて赤く腫れているのは、さっきの綱引きの際に荒縄がつけた摩擦の跡だろう。

 

 ダニエルがウェンディの腰を両手で持って、ペニスをグッと彼女の体内に押し込む。法の執行官がハァッと息を飲んだ。仰け反った瞬間に体のバランスを崩しそうになったウェンディは両腕を広げようとして手錠に邪魔される。鎖が擦れあう音。自然な身動きさえ出来ない、不自由さ。きっとオフィサー・ダルトンがこれまでに経験したことのない、屈辱的なシチュエーションだ。

 

「そらっ。ウェンディ、これが罰だっ。反省しなさいっ」

 

 ダニエルが腰を振るたびにパンパンと音が鳴る。その破裂音は乾いた音から、徐々に湿り気を感じさせる音へと変化していく。

 

「あぁっ。ごめなさい。サー。私は、反省しています。この通りです」

 

 後ろ手に拘束された不自由な体勢の中で、ウェンディ・ダルトンはダニエルとタイミングを合わせるかのように腰を振る。これが自分の潜り抜けるべき贖罪だと信じて、後背位での獣のようなファックに、協力的に体を動かしているのだ。ダニエルのペニスに強烈な締めつけと温かい襞の摩擦が快感となって押し寄せる。ウェンディも必死で動いているうちに、制帽が床へ落ちてしまう。

 

「駄目だっ。帽子をちゃんと被っていなきゃ、台無しなんだ………」

 

 慌てて制帽を拾い上げ、埃を払う仕草のあとでウェンディの頭に載せてくれるミック。彼の美意識へのこだわりにも、熱がこもっている。

 

「さぁ、ウェンディ、こっちを向いて、敬礼して。もっと笑顔をお願い。うん。格好良いスマイルよりも、自分がアニメのキャラクターになったみたいな、可愛い少女イメージの笑顔が良いかな………。あ、………そうそう。良いねっ!」

 

 カメラを構えて動き回るトミーも、いつの間にこんなにフットワークが軽くなったのか、精力的にベストショットを押さえようと動き回る。ダニエルはそんな友人2人にコメントを投げかける余裕も無く、とにかく荒ぶる野獣のようにパンパンと激しくウェンディを犯した。最後に彼女のオッパイをキツく握りしめながら、大きく仰け反って射精をすると、倒れこむようにしてウェンディのヴァギナからペニスを抜いた。オフィサー・ダルトンは、ダニエルのペニスを口で掃除する前に、彼のペニスの先に顔を近づけて、フーッと息を吹きつけた。その仕草は、アクション映画のヒロインが、発砲直後で煙を漂わせている銃口に息を吹き付ける仕草とそっくりだった。

 

 

。。。

 

 

「主よ、お許しください。私は本当は、こんなこと、したくないんです。………でも、止まらないんです。………オゥ………。誰か………助けて………」

 

 気慣れなかったビキニを脱いでも、いつもの修道女の服を脱いでいても、シスター・オーコネルは清純な美しさに包まれていた。白くて透き通るような肌は、ダニエルの彼女、ステファニー・マイルズにも負けないくらいだ。その敬虔なシスターである彼女、メアリー・オーコネルが、今、男子高校生3人の目の前で、カーペットの上に裸で横たわって、恥ずかしい姿を晒してしまっている。両足を限界まで開いて、仰向けになっている彼女は、腰を僅かに浮かせて、両手で自分のヴァギナをまさぐっている。さっきの手錠をかけられた婦人警官のバックファックもなかなか見られるものではないが、こちらを見たことがある男子もほとんどいないだろう。清らかな修道女の、全裸でのハード・マスターベーションだ。彼女には『罪悪感を感じるほど激しく自分を辱める。自分の行為を汚らわしいと思うほど、強い快感を感じる』という指示を氣に練りこんでボルトとして打ちこんであるから、どれだけ自分の行為が信仰の道に外れた、軽蔑すべき醜態だと思っても、それをやめることが出来ない。それどころか、そう感じるほどに、自分の手が際限なく厭らしく、下品に動いていく。メアリー・オーコネルは自分の身に起こっていることが恐ろしくて情けなくてポロポロと涙を流すのだが、同時に誰に対しても隠しようがないほどに、発情しきっていた。自分の指が熱いヴァギナをほじくるほどに、その、決して人には見せてはいけない場所から、栓が壊れてしまったかのように、卑猥な液が音を立てて溢れ出ていく。その、汚らわしい光景を、まだ成人もしていない高校生男子たちに、3フィートも離れていないところからまじまじと見つめられてしまっていた。その視線を感じるほどに、メアリーの乳首が狂おしげに固く立ち上がり、彼女は自冒の愉悦に身を捩り、悶え喘ぐ。もはや涙も愛液も涎も鼻水も、際限なくカーペットに注いでいってしまうのだった。

 

 マスターベーションの経験がほとんどなかったからだろうか? あるいは意外と密かに自分を開発してしまっていたのだろうか? 彼女の体は快感に素直に反応し、5分も続けているうちにオルガズムの天国へと導かれていってしまった。

 

「い…………イヤァアアアアアッ」

 

 殉教者のように無垢な声で、シスター・メアリー・オーコネルは背中を反らしてエクスタシーに達した。たっぷりと時間をかけて、腰を絞り、体をヒクつかせ、股間から愛液を飛ばしながら、じっくりとイク。その姿はエロティックでありながら、綺麗だった。ダニエルが無意識のうちにカウントしていると、彼女は11回も腰を振って、名残を惜しむように痙攣しながら、ようやっと長いオルガズムを終えたのだった。

 

 

「…………こんな……恰好、見られたら……。私は修道院にも、教会にも居られなくなってしまいます。………許してください。お願いです。こんなこと、させないで」

 

 顔全体が鬱血したのかと心配になるほど赤面しているメアリーが、ダニエルたちに訴える。けれど、ダニエルの隣、腕組みしているトミーが断固として首を左右に振るのだった。

 

「ジャパンでは、美少女のオシッコのことは聖水と呼ぶらしいんだ。だからこれは、アジアだったらシスターとして、むしろ立派なことなんだと思うんだ。たぶん」

 

 トミーの力説を聞いても、その一言たりとも納得出来きるものではなかったが、ダニエルはとにかく、太平洋の向こうにあるジャパンという島国に、改めて恐れを抱いたのだった。3人の前に立っているシスター・オーコネルは、黒と白の布で出来た修道院服に身を包みながら、腰から下のスカートの部分を捲り上げて立っている。腰元には、成人用のオムツをはかされていた。彼女がどれほどそれを嫌がっても、なぜかそうしないわけにはいかなかったのだ。メアリーは今日、何度も自分の意思を無視して勝手に行動してきた自分の体を、今度ばかりは必死に制御しようとする。しかし、確実にやってくる、ある生理的感覚に心底震えて、指で十字を切るのだった。

 

「だ…………駄目です…………。ここで………してしまいます………」

 

「…………まぁ、どうぞ」

 

 ダニエルがそう答えた瞬間に、シスターの体がギュッと縮こまったかのように見えた。腰を落として、内膝を擦りつけるように、モジモジとする。その動きが、まるで彼女のシルエットが縮んだかのように見えた理由だった。溜息と涙をこぼすシスター。けれど彼女の表情はすでに天国へ飛翔していく途中のようだった。

 

『シスターはオムツの中でオシッコをします。それはさっきのマスターベーションの時に得たオルガズムよりももっと幸せな快感です。』

 

 ダニエルがメアリー・オーコネルの体に与えた指示は、彼女にとって、決定的な福音だった。痺れるような快感に溺れて正気を飛ばしてしまった彼女は、だらしない笑顔を浮かべながら、遠い目で何かを見上げている。口から微かに賛美歌の旋律をハミングをしながら、オムツの中にまだユルユルと温かい尿を解放していた。

 

 

。。。

 

 

 綱引きは思ったよりも筋肉を硬直させる。ダニエルの提案で、夕日が差す庭とダニエル邸のバルコニーそして屋根まで女子たちが広がって、裸で全身ストレッチをした。充分に体の節々を伸ばしたあとで、ダニエルの指示を受けて全員が両足を開いて閉じて両手を頭上で打ち鳴らす、ジャンピングジャックフラッシュという運動だ。堅固なダニエル邸もギシギシと揺れる、庭の地面も揺らす、全裸美女たちの激しい運動。ダニエルはまた、それを見ながらプールの上で360度の景色を楽しんでいた。

 

 

「何ごとも陰陽のバランスが大切だ。………やりすぎることがあってはいけない………」

 

 ミヤグニさんの言葉が脳裏に浮かんだような気がしたが、それもすぐに、ドシンドシンと大地を揺らす全裸ブロンド美女たちの足音で? き消されていったのだった。

 

 

<第5話につづく>

2件のコメント

  1. 読ませていただきましたでよ~。
    まあそろそろ来る頃だと思いましたでよ。
    今回のはっちゃけ場所はクラスと近くの富豪の家でぅか。
    富豪の家はダニエルが奪っちゃったわけでぅけどw

    ロの系統で不特定多数の人数を操るのはわかってたけど、ロの弐や参は自動的に操った人を増やしていくのは中規模のはっちゃけをやるのにも色んな人をとっかえひっかえやり捨てるのにも都合がいいでぅよね。
    この世には5人知り合いをたどっていくと6人目で世界中のどの人とも知り合えるという六次の隔たりという説があるみたいなのでロの応用で大統領をどうにかしてみるのもいいのではないかとおもってみたり。

    まあ、最後のミヤグニさんの言葉がひっかかるわけでぅが
    次回は因果応報かな?
    であ、次回も楽しみにしていますでよ~

  2. やっぱそれでも気類じゃねえ。
    おつかれさまでしたあ。

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