- 1 -
「うふん♪」
鏡の前で、イロっぽいポーズを決めてみる。
身に纏うは可愛い柄の下着だけ。
あまり太陽に焼かれていない、白くてきめ細かな肌。
くびれて艶かしいラインを描くウエスト。
きゅっと上を向いた、可愛いお尻。
胸は少し薄いけど、形は綺麗だと思うし。
「えい♪」
ふわふわでウェーブが掛かった肩まである柔らかい髪を、両手を首の辺りから後頭部に持ち上げるみたいにして、かき上げてみる。肩までの長さの髪が、ゆるゆると広がるみたいだ。
晒された細い首の上には、これまた可愛い女の子の顔。
「にやりん♪」
よく癒し系とか言われる顔が、鏡の中でおどけた笑みを浮かべている。ちょっと小さめな丸眼鏡がちょこんと鼻に乗っていて、優しげなお姉さんって感じに演出してくれる。人によっては真逆な感想を言ってくる事もあるけど、そんな意見は笑って却下。
これが、わたし。
滝口さくら、20歳。
なぜか恋人がいない歴がイコール年齢。
まぁ、別に急がなくてもいいよねー、なんてお気楽極楽に構えて今に至る。
「ふふ、これでバイトも人気No.1間違い無しだねっ」
鏡の中のわたしに、わたしは保証してあげた。
同じ大学の恵ちゃんにバイトを斡旋されたのは、昨日のお昼に大学の学食でランチを食べていた時だった。
恵ちゃんとは良くカラオケに行ったり、飲みに行ったりする仲なんだけど、今日隣に座った恵ちゃんを見て、なんだか初めて見たヒトみたいに感じた。前からキレイだとは思ってたんだけど、そのキレイさに磨きが掛かってるというか、よりオンナっぽくなってるというか、そんな感じ。
「ね、私の行ってる店で、バイトしてみない?」
私の隣で斜めに座りながらジッと私を見詰める恵ちゃんは、こう言ってはなんだけど女の私から見てもゾクっとするような魅力があって、目が離せなくなった。濡れてるみたいに潤んだ瞳に、揶揄するような薄い笑顔。わたしがオトコだったら、あっさり一目惚れしてたかも。
「こすぷれ喫茶・・・だっけ?」
確か、恵ちゃんが前そう言っていたような。
もともとコミケとかいう所でコスプレしてたって経験もあってか、恵ちゃんはけっこう楽しくバイトしてるって言ってたはず。そうそう、その時に「趣味と実益」って楽しそうに言っていたから、結構羨ましいって思ったんだよね。
「でも、わたしあんまり胸、おっきくないよ?」
口にするのは微妙に悔しかったけど、取り敢えずそう断ってみる。
わたしが言うと、恵ちゃんはにやりという感じの笑みを浮かべた。
「そこがいいんじゃない。勘違いしてるみたいだから言うけど、コスプレは胸の大きさが優劣を決めるんじゃなくて、いかにそのコスが似合うかなの。私だってしたくても出来ないコスがあるんだから!」
話してる最中にテンションが上がってきたのか、最後の言葉にはダンってテーブルを叩くおまけ付きだった。まわりからの注目の視線に、わたしはへこへこと頭を下げる。
「ちょっと恵ちゃん、声おっきいよぉ」
「ああ、ごめんなさい」
恵ちゃんはこれだけの羞恥ぷれいの中、まるで他人の視線なんか気にならないって風にしれっと謝ると、言葉のテンションを戻した。人に見られる事に慣れてるのか、それとも鈍いだけなのかは判らないけど、わたしはなんとなくスゴイなぁなんて思った。
「話を戻すけど、さくらは十分に商品価値があるし、需要もあるの。バイト代も結構いいから・・・いっしょにやろうよ」
「う~ん」
やってもいいんだけど、それほどお金に困ってるっていう訳でもないし、どうしようかな。なんていうか、普通の店と比べて来るお客さんがコワいような気がするのは、わたしの偏見なんでしょうか。
「じゃあ、イヤな事があったら、いつでも辞めていいから。ね?」
こくん。
妙に熱気のこもった勧誘に、わたしはつい頷いてしまった。まぁ、興味がまったくない訳でも無いしね。
そうして恵ちゃんと面接の日程だけ決めて、その日は終わった。
人前に出るバイトをすると決めると、自然と気合が入った。
暫く鏡の前でセクシーポーズを決めると、何て言うかもぉ、気分はばっちこぉーいって感じだ。
そのまま勢いで、とっておきのパンツも用意してみる。リボンがワンポイントな、ブラとセットのお気に入り。まるでデートの前日だね、なんてデートした事ないんだけど。
なんだか、妙に浮かれてるのは自覚してる。
自分の中のワクワクする感じが押さえ切れなくて。
何の根拠も無いのに、扉の向こうに何かがあるっていう確固な実感がある。
もしかしたら、ステキな出会いがあったりして。
わたしはきゃーとか歓声を上げながら、一人部屋の中でどたばたした。
明日はバイトの面接だ。
- 2 -
「それでは、明日からでもお願いできますか?」
相川諒一さんという名のチーフマネージャーさんは、なんだかわたしよりも年下に見える、可愛い系の顔のオトコノコだった。
まぁ、こういう所のチーフマネージャーさんだったら高校生なんて事はあるはずが無いし、きっと童顔なんだろうね。
それに、こうして向かい合ってるだけで、なんだか妙に迫力・・・というか自信を感じるし、きっと自分をしっかり持った人なんだろうなって思った。
「はい。だいじょうぶです」
恵ちゃんにこれからバイト仲間になる女の子達を紹介してもらったんだけど、みんな楽しそうで、バイトが楽しいんだって納得させられたし。
チーフマネージャーさんはかっこ良くて可愛いし。
これは、思ったよりもいいバイトなのかも。
「じゃあ恵さん、さくらさんの衣装の合わせとか、お願いします」
「はいっ」
チーフマネージャーさんに言われて、恵ちゃんが張り切って返答した。むむ、恵ちゃんの表情は、恋する乙女のそれじゃないでしょうか。付き合ってるのかな。
「サイズを測るから、さくらはこっちね」
「うん」
わたしはチーフマネージャーにぺこりと頭を下げて、めぐみちゃんの後に続いた。
カラフルな衣装に囲まれて、今にも目がチカチカとしてしまいそう。
レオタードに鎧みたいなのが付いてるのとか、ふりふりな改造ワンピースとか。
学校の制服っぽいのとか、すくぅる水着みたいなのとか。
あぁ、ごめんちょっと今わたしのココロの中に後悔の波が押し寄せてるぅ。
「はぁい、サイズ計っちゃうから脱いで脱いでー」
他の誰かで慣れてるのか、それとも無頓着なのかは判らないけれど、恵ちゃんは涙目で茫然としてるわたしの片手を持ち上げたり膝を持ち上げたりバンザイさせたりして、ふと我に返る頃にはわたしは下着姿にさせられてた。あまりに華麗な手際に、悲鳴を上げる事さえ出来なかったよホント。
「さぁ、ちゃっちゃっとヤルからね」
「う、うん・・・」
恵ちゃんはメジャーをわたしの身体に当てて、本格的に計り始めた。
目盛を読み取っては、傍に置いたノートPCに入力していく。項目が埋まっていくと、画面右上の窓にタイトルと人名らしきものが増えていった。
恵ちゃんはわたしがノートPCの画面を見ているのに気が付いたのか、手を止めてわたしに少しだけ自慢げな感じに微笑んだ。
「あ、これは身体の構成部品から、適正なコスを選んでくれるシミュレータなの。例えば、さくらのプロポーションとか身長からすると、魔法少女ものが最適って事になるの」
・・・。
もしかしてわたし、お子様体型って言われてる?
恵ちゃんと同い年のこのわたしに、魔法『少女』のコスプレをしろと言いますか。
まぁ、確かに胸とか少しだけ薄いんだけどね。
「・・・いいけどね。それにしても、衣装がずいぶんたくさんあるんだねぇ」
10畳はありそうな部屋なのに、その殆どが衣装で溢れてる。あとは姿見の鏡と、服を置いておく棚があるくらい。置いてある衣装の特異性は、慣れてきたのか思考停止するほどキツくはなくなった気がする。
「それはそうよ。お客さんだって、毎回同じコスじゃ飽きちゃうもの。だから、最近は自分達でコスを縫うようにしてるぐらいなんだから」
「そうなの?もしかして、必須技能とか?」
だとしたら、手先が不器用なわたしが困る。
なんでも器用にこなす恵ちゃんと違って、わたしってば針に糸を通すのだって一苦労なんだから。
「それは安心していいわよ。出来るコがやる事になってるし、無理してやってもらっても効率は良くないもの」
それは確かに一安心・・・って、わたしが裁縫が苦手なのが前提で話しをされるのも、それはそれで悔しいかも。
「それで、採寸はもうお終い?」
強引に話しを変えてみたり。
「うん。あとは明日のための仕込みだけかな」
微笑みながら恵ちゃんが耳栓をするのが見えた。耳栓というか、受験の時にお世話になった、雑音が入らないっていうやつ。
ん?とか思って恵ちゃんの行動を目で追ってると、今度はラジカセを取り出して、わたしににこっと微笑んでからプレイボタンを押した。
緩やかな波の音。
目の前に広がる、透明感のある青。
脱力したわたしの身体を、ゆるゆるとどこかに運び去る。
それとも、わたしが溶けて、青に混ざっていってるのかも知れない。
自分という個が無くなって行く、それは不思議な幸福感。
- 3 -
ふと気が付くと、自分の部屋だった。
ぼんやりとベッドに腰掛けて。
「あれ?」
なんだか記憶がはっきりとしない。
運動した訳でもないのに少し疲れてて、頭もぼーっとしてる。
ひとつの事を考えるのが、面倒っていうか。
「いいや。今日はお風呂入って寝ちゃおう。明日は午後からバイトだし・・・明日だよね?・・・まぁ、いいかぁ・・・」
お風呂に浸かると眠っちゃいそうだったから、今日はシャワーだけにしよう。両親が結構融資してくれてるおかげで、お風呂が結構広いんだ。トイレは当然別だし、感謝感謝。
脱衣所で服を脱いで、全裸でお風呂場に入る。うちはスイッチ一つでお湯がでるようになっている。冷たい水が出てる間はシャワーを背けて、ぼんやりとお湯に変わるのを待った。
「どうやって帰ってきたんだっけ?」
謎だ。お酒を飲みすぎて、記憶が無い次の日ってこんな感じかも。
ただ、ぼんやりとした頭だと、だからどうしたって気分で、思い出そうとする努力に繋がらない。
ぺたんとマットの上に座りながら、ちょうどいい感じの温度になったシャワーを浴びる。髪の毛も身体も無造作にシャワーを掛けてるうちに、身体の一部がむずむずとした感覚を伝えてきた。
それも、本当だったらぜんぜんそんな感覚を覚えるような場所じゃなくて。
「からだ、洗うだけだから・・・。シャワーをあてるだけだから・・・」
気がつくと、自分で自分に言い訳するみたいに呟いてた。
はっきり言って、酷く混乱してた。
今まで、必要な時以外にこんな所、触りたいなんて思ったことなかったから。
そこでえっちする事もあるっていうのは知ってる。
けど、そんなのカレシもいない自分には、ぜんぜん関係無いって思ってた。
「あ・・・」
シャワーがお尻に当たって、身体のラインに沿って流れ落ちたお湯が、お尻の穴・・・アナルを濡らした。それだけで、身体がヒクっとするような気持ち良さを感じた。
でも、足りなかった。
今のはお湯が流れただけ。
もっと・・・もっとアナルに刺激が欲しかった。
一瞬味わった快感が、頭の中にあった理性とか、恥ずかしさとかを、洗い流してしまったみたいだった。
「ああ・・・こ、こんな格好、いやらしいよぉ・・・」
膝立ちになって、片方の手でお尻を左右に開いてる格好。でも、そうしないと直接シャワーをあてられないから。
わたしは快楽の期待に震える手で、シャワーのノズルをアナルに近付けた。
強めの水流が、身体を清める感覚。
それだけの、はず・・・だった。
「やあっ!な、なにこれ!へんっ・・・へんだよぉっ!」
わたしのいやらしい声が、浴室に木霊する。
シャワーをあててるだけなのに、信じられないほどの快感を感じた。
クリトリスを弄るオナニーよりも、すごい気持ちいい。
いつの間にか頬をマットに押し当て、お尻だけを高く掲げた格好で、アナルにシャワーを浴びせて、快感に咽び泣いてた。
「いい・・・いいっ・・・たまらないの・・・こんなの、クセになっちゃう・・・ああっ・・・」
アナルの窄まりを水流が叩く。それだけで快感が頭まで焼き尽くしてしまう。
まるでわたしの全神経が、そこに集中してるみたい。
ずっとイキっぱなしのような、そんな快感。
けど、ピークが無いから止められない。もっともっと欲しくて、何かが足りなくて、気持ちいいのに身体が飢えていくのが判る。このままだと、快楽の中で、快楽を求めて気が狂ってしまうんじゃないかと、ココロの片隅で思った。
「ああ・・・もっとぉ・・・もっと、ほしいよぉ・・・イイのに・・・イイのにたりないの・・・ッ」
掲げたお尻が、誰かを誘うようにくねくねと振られる。わたしがそうしようとしたんじゃなくて、メスがオスを求めるような、カラダが求める本能的なもの。だったら、わたしの本能はいやらしいメスそのものなんだ。それで、カラダがオトコを欲しがってる。たったそれだけの事なんだ。
「あんぅ・・・そうだよ・・・こうすればよかったんだね・・・」
オトコを求める・・・それは、自分のカラダの中にオトコを迎え入れるという事。だったら代替品でもいいから、入れてみればいい。
わたしはシャワーノズルを放り出すと、ボディソープを右手にまぶした。それから一瞬だけ躊躇して生唾を飲み込んだ。
今までのオナニーだって、指を膣に挿入した事が無かった。だって、コワかったから。
今もコワいけど、それ以上に期待する気持ちが強い。だから、躊躇したのは一瞬だけ。わたしの右手の中指は、わたしの恥ずかしい場所へと伸びていった。
「ひあっ!」
くちっという粘膜を擦る音と一緒に、頭の中が真っ白に染め上げられるような強烈な快感が、わたしの身体を駆け巡った。
「い゛い゛っ」
奥歯を噛み締めるように、喘ぎを搾り出した。そうしないと快感でコワれちゃうんじゃないかって気がした。
まだ窄まりを擦っているだけで、中に指を差し込んでいる訳でもないのにこんなに感じるなんて、なんだか恐ろしいと思った。
もう、戻れなくなりそうな。
もう、ダメになっちゃいそうな。
そんな甘美な恐怖。
もちろん、発情しきったわたしの身体が、立ち止まるなんて許してはくれないのだけど。
ぬち。ちゅぐ。にゅぐ。
そんな濡れた音を立てて、ボディーソープにまみれた中指が、排泄の穴に入ってく。
そこは思ってたほどには窮屈じゃなくて、でもまるで吸い付くように指にまとわりついてくる。自分のお尻の穴が、こんなにいやらしい感触だったなんて、今まで知らなかった。中を擦りたてる指まで、気持ち良い気がした。
「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーっ」
苦しんでいるような呻き声が、わたしの声帯を震わせた。
気持ち良過ぎて、こんな声が出るなんて・・・。
もう、止まらなかった。
ぐちゅぐちゅと音を立てて、指でお尻をほじくった。
目が開いているはずなのに、目の前はフラッシュを焚いたみたいにチカチカして何も見えなくて。
頭の中はお尻からくる快感で埋め尽くされて。
「おしっ、おしりっ、いいっ、いひのぉっ!」
もう、自分で何を言ってるかも判らなくって。
ただ、すごい絶頂が近付いてきてるのだけが判った。
壊れる・・・。
さっきよりも強く、それが実感できた。
「いぐっ!イクイクっ!おしりで、イ゛っちゃうっ!」
身体中がバラバラになるような絶頂を感じて、わたしは悲鳴を上げた。
こんな気持ち良くて、幸せな事があったなんて、信じられない。
今までの何も知らなかった自分が、ばかみたいだった。
「いひ・・・おひりぃ・・・いひよぉ・・・」
わたしは力尽きて、お尻を突き上げた形で倒れたまま、涙とか涎とかで汚れた顔もそのままに、ゆっくりと意識を失っていった。
でも、こんなにスゴイ事を経験していながら、ココロのどこかで切ない気持ちが疼いてた。
こんなに気持ちいいのに、何が足りないのかな・・・。
そんな思考を最後に、意識が闇に飲み込まれた。
- 4 -
そしてバイト初日、わたしはバイト先へと向かった。
一歩歩くだけで、意識がお尻へと向いてしまうのを、止められなかった。
ぼんやりすると、昨日のアナルの快感を思い出して、手がお尻へと伸びそうになってしまうし。
なんだか本当にハマっちゃったと思う。
まだ処女だっていうのに、こんなにお尻で感じちゃって、将来どうするんだ、みたいな。
「はぁ」
溜息というには少し熱い吐息をもらして、わたしは歩いた。
昨日は浴室で意識を取り戻してからベッドの上に場所を替えて、5回もアナルでオナニーしちゃったのが、身体に疲労を残す原因となった訳で。
でも、疲れてるのはそれだけが原因じゃなくて。
なんだろう。すればするほどアナルの快感は深くなっていくのに、逆に物足りなさというか、切ない感じが強くなっていくのって。
おかげで気分的にもやもやした状態で、バイト初日を迎えたのでした。
「おはよー。早速この衣装に着替えてくれる?」
「おはよう・・・でいいのかな」
なんでこういうとこって、出勤=朝って扱いなんだろ?
そんな疑問なんて欠片も感じて無さそうな恵ちゃんは、どこぞの胸を強調した喫茶店の制服を着てた。待ち構えてたようなタイミングで、にこやかにクリーニング袋に入った衣装を渡してくれる。
「じゃ、着替えてくるね」
わたしが昨日の記憶をもとに更衣室というか衣裳部屋に行くと、後ろから恵ちゃんが着いて来た。
「どうしたの?」
恵ちゃんはにやにやという感じの笑みを浮かべてる。
まるで、何かを企んでるみたいに。
さぷらいずどぱーてぃーとか?
「コスを見てショックを受けないかとか、ちょっと気になったからね。なにかあった時の為のフォローをしようかと思って」
「・・・そんなに衝撃的なコスプレな訳?」
思わずジト目で追求するわたし。
渡されたコスは、クリーニングの袋に入ってて、何が入ってるのか判らないんだよね。
何が出てきても驚いてあげないとココロに誓って、わたしは衣装を取り出した。
指先に伝わる化学繊維の感触。
「ほほぉ、すくぅるみずぎデスカ。通デスねー」
ぜんぜん平気♪を表そうとして出した声は、どこか歪んで耳に届いた。
取り出されたのは、紺色のスクール水着。
胸の所に白い布がついてて、『1年1組 たきぐち さくら』ってご丁寧に書いてある。
まさか、1年ってのは小学校とか中学校じゃないよね。
「そうなのよー。さくらに一番似合うのをチョイスしたら、スク水だったのぉ。しかも旧式!あ、オプションでセーラー服の上と、ルーズソックスがあるから、それもちゃんと着てね」
「・・・」
わたしは溜息を吐くと、仕方なく服に手を掛けた。
視線を感じて振り返ると、恵ちゃんがにこにことわたしを見てるし。
「恥ずかしいから、見ないでね」
「べつに気にしなくったっていいのに」
なんかぷちぷち言いながら、それでも恵ちゃんはわたしに背を向けてくれた。
恵ちゃんがちゃんと向こうを向いていてくれてるのを確認して、わたしも反対側の壁際を見ながら服を脱いだ。ブラもパンツも脱ぐと、紺色のスクール水着を手に取った。
「もお着たー?」
「まぁだだよー」
能天気な恵ちゃんの声に、ふざけて答えるわたし。
こうしていてもしょうがないし、手に取ったスクール水着を身に纏った。
引っ張って足から入れてくの、なんか久し振り。
ルーズソックスを履いて、上だけのセーラー服を着る。セーラー服は普通のものとは違って、可愛らしいデザインになってた。
鏡で自分の姿を見て、それまでの『なんだかなー』感が消え去って、代わりに気分が高揚するのが不思議だった。恵ちゃんがわたしの為にチョイスしてくれたコスチュームだけあって、妙に似合ってたし。
ちょこんと鼻に乗せた丸メガネも、この格好だとドジっ娘みたいで可愛らしいし。
って、20歳の女に見えない・・・。
「ふふ、やっぱり思った通り、このコス似合うわね」
「・・・素材がいいからね」
悔しいから、そういう事にする。
「じゃあ、フロアに行こうか。今日は私が教えながら指示を出すから。・・・ふふ、手取り足取りね」
そう笑みを湛えた表情で言うと、恵ちゃんは歩き始めた。
- 5 -
「ここよ」
恵ちゃんが扉を開けると、その向こうには結構広いフロアがあった。
薄暗いフロアは、なぜかテーブルやイスが壁際に寄せられていて、ソファーが一つだけ中央に置かれている。そこには男の人が一人で座っていた。ここからだと後頭部しか見えないけど、昨日会ったチーフマネージャーかも。
それから、いろいろなコスチュームの女の子達が、まるでそのコにかしずくようにして控えている。それは、まるで王様付きのメイドさんみたいだった。
わたしがフロアに入って、一瞬で見て取れたのはそこまでだった。
そして、扉が開くのに合わせてスイッチが入ったのか、入り口から見て正面に設置されてるプロジェクターに、映像が映し出された。
「え?」
なにそれ。
自分の目で見ているものが、信じられない。
だって、記憶に無いもの。
なのに、目の前のスクリーンに恵ちゃんに犯されて、悦びの声を上げているわたしが映ってる。
『おしりに入れられる気分はどう?』
『いいっ!いいよぉ、めぐみちゃ・・・ぅあんっ」
自分の膝を自分で抱えて、前も後ろも大事な所を全部晒して、わたしが悦んでる。どろどろの愛液をもらしているアソコも、恵ちゃんの持つバイブで広げられてるお尻の穴も、酷く鮮明に映ってた。
わたしは頭が真っ白になったまま、スクリーンを見詰めた。
『うふふ、今日はじめてお尻でしたのに、もうこんなに感じちゃうなんてね』
『ひあっ!だ、だって・・・あ、ああっ』
バイブが出し入れされる。
スクリーンの中のわたしが、信じられないほどに蕩けきった表情で、お尻からの快感に溺れてる。
抜かれる時はバイブを追いかけるように腰をうねらせて、入れられる時は安心と満足の混ざった表情を浮かべて。
こんなのわたしじゃない・・・そう思う反面、そこまで感じる事が出来るスクリーンの中のわたしに、嫉妬みたいなものを感じてた。
『ほら、クリトリスもこんなにおっきくしちゃって・・・。こっちも弄ったら、さくらはどうなっちゃうのかなぁ」
『やっ、だめ、だめだめぇ!ひぐっ、あ゛あ゛っ!』
『うふふ・・・すごぉい♪』
気が付くと、わたしの背中から恵ちゃんが抱き着いてきて、胸をわたしの背中に押し付けてた。ただ胸を押し付けるだけじゃなくて、強弱を付けたり、左右に擦りつけたり、その柔らかい感触にぞくっとするような、いっそ愛撫って言ってもいいくらいの事をしてた。
「ほら、スクリーンの中のさくら、とってもいやらしくて可愛いでしょう?」
恵ちゃんの声に、わたしはまたスクリーンを見詰める。
『おしっ、おしり、いひぃっ!』
すすり泣くように、喘ぎを押し出すわたし。
こんなになるなんて、信じられない。
鏡で見慣れた顔が、見た事の無い表情を浮かべてる。
「うふ」
恵ちゃんの両手が、わたしの身体のラインを確認するみたいに、腰から胸へと上がってきた。スクール水着とセーラー服(上)の間に手を滑り込ませて、わたしの胸をやわやわと揉む。ときどき乳首の辺りを指先でくりくりとくすぐる。
「ん・・・ぅ・・・」
わたしの唇から、堪えられない喘ぎのようなものが漏れる。けど、わたしの注意の大半は、目の前のスクリーンに向いてた。ひくひくと痙攣し、快感に咽び泣く記憶に無いわたしの痴態から、目が離せなくなってた。
『そんなに悶えちゃって、いやらしいのね。おしりでされるの、好き?』
ねとつく口調で恵ちゃんが、わたしに問い掛ける。スクリーンの中で、わたしは狂ったように首を縦に振る。恵ちゃんが捏ねるようにバイブを動かし、わたしは敏感な場所を責められたかのように、ビクンっと身体を震わせる。
『しゅき!おひりぃ、ひゅきぃ!』
半開きの口から涎を垂らし、熱い吐息と一緒に喘ぐスクリーンの中のわたし。
「んっ!」
恵ちゃんが、わたしの固くなった乳首を、左右同時に水着越しに摘んだ。興奮してるわたしは、苦痛よりも快感を感じて、ビクっと反応する。
でも、スクリーンの向こうでは、もっとスゴイ快感を感じてるわたしがいる。
「こっちはどうなってるかなぁ♪」
恵ちゃんが右手を伸ばして、わたしのあそこに水着越しに触れた。わたしは恵ちゃんのしたい事を邪魔しないように、脚を開いて恵ちゃんが触りやすいようにした。
「ふあっ、は、んぅっ!」
わたしの割れ目を中指で塞ぐようにして、指の付け根でクリトリスをぐりぐりと押し潰す。酷く直接的な快感に、膝がガクガクと震えた。恵ちゃんが片手で支えてくれなかったら、倒れていたかも知れない。
『ひぁああああっ!』
鋭い悲鳴に視線を戻すと、スクリーンの中のわたしは仰向けの姿勢から四つん這いになっていた。それも、上半身を床に落として、お尻だけを突き上げた体勢だ。
スクリーンの中の恵ちゃんは、右手でわたしのお尻のバイブを抽送しながら、首を捻ってあそこに舌を這わせている。恵ちゃんの手が動くたび、舌が踊るたびに、わたしのお尻がヒクヒクと反応する。喘ぎ声だって止まらなくなってる。まるでわたしじゃないみたいな、イヤらしい姿だった。
「うらやましい?また、おしりをぐりぐりって抉って欲しい?ね、さくら・・・素直になったら、ご褒美をあげるよ?」
”ご褒美”という言葉で、わたしの中の欲望に火が点いたみたいだった。
お尻・・・お尻を弄ってもらえる。
こんなに沢山の人がいる前で、お尻をぐちゃぐちゃに掻き回されて、気が狂ったみたいに感じちゃって、恥ずかしい所も全部見られちゃうんだ。
欲しい。一杯して欲しい。
スクリーンの中のわたしみたいに、めちゃくちゃにして欲しい。
「どう?」
「うん、欲しい・・・欲しいよぉ・・・」
スクリーンの向こうのわたしに、憧憬の視線を向けた。
スクリーンの向こうのわたしは、尽きることの無い快感を、貪欲に貪ってる。
切なくて、羨ましくて、おなかの奥のほうが、きゅんってなった。
「だ、そうですよ、諒一君」
恵ちゃんの声に、一人ソファーに座ってた人がこっちを振り返った。
チーフマネージャーの、相川さん・・・諒一さんだ。
「じゃあ、僕がしてあげます。こっちにいらっしゃい・・・さくらさん」
その瞬間、わたしは生まれて初めて恋をした。
どうしようも無く破滅的で。
救いようの無い程享楽的な。
最初で最後の恋をした。
- 6 -
わたしの足は、ふらふらとそのコに向かって歩を進めていた。さっきまでの、スクリーンの中のわたしなんて、ぜんぜん気にならなかった。
まわりに控える女の子達も。
背後に残した恵ちゃんも。
何もかもがどうでも良かった。
ただ、目の前の諒一さんだけが全てで。
ただ、目の前の諒一さんだけが大事だった。
わたしが諒一さんの前に立つと、諒一さんはその整った顔に、柔らかい笑みを浮かべた。それだけでわたしの心が幸せで一杯になる。
「さくらは、処女のままでお尻だけを徹底的に教育しました。どちらでも、お好きな方をお使い下さいね。それと、キーワードは私と同じ・・・に致しました」
諒一さんの背後から、恵ちゃんがそう言った。
いままではお尻でして頂けると思い込んでたんだけど、恵ちゃんの言葉でわたしの初めてを貰って頂けるかもという事に思い至って、その想像に陶然とした。
当然、わたしの全ては諒一さんのものだから、どんな風に使って頂いてもいいんだけど、やっぱり全部使って頂けたら嬉しいなぁ、なんて。
「うん、まずは口でして貰おうかな」
そう言うと、諒一さんはソファーに浅く腰掛けなおして、腰を前に突き出すようにした。
「はい、初めてだからヘタですけど、一生懸命がんばりますね!」
諒一さんが、わたしがやりやすいように姿勢を変えてくれた事に感動しながら、弾むように返答した。
諒一さんの開いた脚の間に膝を突いて、ドキドキしながら両手でズボンのチャックを下ろした。既に内側から膨らんでいるのを見て、さっきのプロジェクターを見ておっきくなったのかな、なんて嬉しくなった。
取り敢えず、パンツの端に指を掛けて、諒一さんのそれを引っ張り出す事に成功。でも、やり方は後で勉強した方がいいかも知れない。なんだか上手なやり方じゃない気がするし。
「あの、し・・・失礼します」
そう断ってから、根元を押さえて先端にキスをした。口の中に、なんて言っていいか判らない、不思議な味が広がった。でも、諒一さんのだと思うだけで、なんだか美味しいって感じる。
それからできるだけ口をおっきく開けて、諒一さんのそれを口に含んだ。ただそれだけで、口の中が一杯になった。顎が痛かったけど、我慢して頭を前後に振る。途中から頭がパニックで、何をどうしたのか判らなくなった。
「もういいよ」
諒一さんにそう言われて、わたしは口を離した。どれだけ、どういう風にしたのか、まったく記憶に残ってなくて、ただ顎がガクガクとしてた。上手じゃないどころか、諒一さんに不愉快な思いをさせてしまったんじゃないかって、怖々と諒一さんの顔を覗った。わたしの顔を見て、諒一さんが苦笑を浮かべた。
「最初だからしょうがないですよ。それに、そのうち上手になるでしょうしね。情熱は伝わってきましたから、良しとしましょう」
その優しい言葉に、わたしは胸の中が幸せで一杯になる。
「せっかくだから、後ろを使おうかな。そのまま、自分で入れてみて」
「はいっ!」
わたしはスクール水着のボトムを指でずらして、後ろ向きでアナルに諒一さんのものの先端がくるように腰を下ろした。
こんなに大きいのに、入るかなぁ。
取り敢えず、力まないようにしなきゃ。
ドキドキしながらお尻をゆっくりと下ろして、位置を確認するように諒一さんの先端を当てた。ちゅくという音と一緒に、ぞくぞくとする快感が身体中を駆け巡る。
「ひゃんっ」
思わず仰け反ると、諒一さんが後ろから手を伸ばして、わたしの腰を固定した。
「大きく呼吸して。それで、身体の力を抜いてね」
「は、はい・・・んぅううううっ!」
諒一さんの手の動きに従って、諒一さんのものが、ゆっくりとわたしの中に入ってくる。先端の膨らみが、わたしのお尻の穴を限界まで広げてて、その息苦しさに力むような声が出る。
けど、それだけじゃなくて。
痛いだけじゃ、ぜったいになくて。
お尻の中いっぱいに諒一さんのもので埋められて、息が出来ないくらいにきつくって、でも一ミリ擦れただけで、意識が消え失せてしまいそうなほどに気持ち良い。まだぜんぜん入ってきてないのに、身体の中ぜんぶが諒一さんに埋め尽くされたような幸せな快感で、イっちゃいそうになってる。
「ほら、もうすぐ先端が入るよ」
諒一さんが優しい声で囁いた。
「ひんっ」
まるで、鼓膜が性感帯になってしまったみたいに、諒一さんの声だけで身体が震えた。誰も触れていない前の方は、白濁した愛液をとろとろと分泌している。身体がこんなになっちゃったのは、初めてだった。昨日の夜だって、こんなにぐちゃぐちゃにはならなかったのに。
にゅぐ。
にゅ。
ちゅぐ。
くちっ。
「ほら、奥まで入ったよ」
「お、あああああ゛っ」
お尻が、蕩ける。
からだも。こころも。
ぜんぶ、とけちゃう。
諒一さんの、すごく熱くて。
ひとこすりで、頭の奥まで突き抜けるみたい。
「さくらさんのお尻の中、すごく熱いですよ。溶かされちゃいそうです」
「わ、わらひもっ、わだひもとけちゃうのっ!ひぁ、ひゃんっ」
わたしの呂律が回ってなくて、頭の中もからだもぐちゃぐちゃで。
もう、なにがどうなってるのかも判らなくて。
たまらなかった。
たまらなく、きもちよかった。
「・・・っ!・・・!・・ぁ・・・ッ!」
自分が何を叫んでるのかも判らない。ただ、どんなに気持ち良いか、どんなに幸せか・・・どんなに諒一さんを愛してるか、そういった事を啜り泣きながら叫んでたように思う。
「ありがとう、さくらさん。お礼に、身体の一番奥で、出してあげますね」
「きりぇっ!にゃかにぃ、いっぱ・・・っ!・・・ひあああああっ!」
お尻をいっそう広げるように、諒一さんのがおっきくなって。
どくんっって音が聞こえるくらい、すごいいっぱいの、熱い液体がわたしの腸内に打ち込まれた。逆流して口から溢れるんじゃないかって心配を一瞬して、そんな下らない考えごと打ち砕かれた。
「え?あ、ひっ!あ、あつ・・・あああっ!あ、ひぃああああっ!!」
諒一さんの精液が、身体中に快感として染み込んで来るみたいだった。圧倒的な快感が、わたしの細胞のひとつひとつを焼き尽くすみたいな、そんな感覚に頭が真っ白に染め上げられる。
「いい・・・たまらないよぉ・・・」
意識が無くなる寸前、諒一さんが、わたしを後ろから抱き止めてくれた気がした。
しあわせ・・・。
わたしの意識は、自分のそんな呟きを最後に、あっさりと暗闇に落ちていった。
- Epilogue -
「ねぇ、恵がいってるコスプレ喫茶って、どうだった?」
大学の廊下で、前を歩いてたタエコがわたしを振り返って、そんな事を訊いてきた。最近金欠って言ってたから、評価次第ではタエコも始めるつもりなのかも。
「そうだねぇ・・・」
どんな風に答えようかと思って立ち止まると、横を歩いてた恵ちゃんがわたしの背中に手を回してきた。それが腰を経由して、最後はお尻へ。
――ちょっと、だめだよぉ。ばれちゃう!
わたしが抗議の意思を込めて恵ちゃんを睨みつけると、恵ちゃんはにやって笑った。唇だけが動いて、無音で『がんば♪』って言ってるのが判った。
「ほら、さくらから見た感想を、素直に教えてあげたら?」
「んっ!」
とうとう、恵ちゃんの指はミニスカートのお尻側から進入して、パンツの中・・・わたしのお尻の窄まりへと辿り着いた。わたしは反射的に軽く足を開いて、お尻の力を抜いてしまう。頭ではだめだって判ってるのに、身体が勝手に恵ちゃんの指を受け入れてる。
わたしがへんな声を上げたから、タエコが怪訝な顔をわたしに向けた。
「ん、と。いろんな衣装があって、けっこう楽しいよ。んっ!」
恵ちゃんの指が、入ってくる。
目の前にタエコがいるのに、嬲るように指の第一関節で、中をほじくってる。
一瞬で、あそこが濡れた。
このまま快感に溺れたいって気持ちと、ばれたらいけないって気持ちで、頭がぐちゃぐちゃになる。
「さくら、なんだか顔が赤いけど、大丈夫?」
「あ、うん、だ・・・だいじょう・・・ぶ・・・。その・・・んっ・・・すごくイイ・・・よ?」
「そうなの?」
「ッ!」
タエコがわたしの要領を得ない説明に、小首を傾げて聞き返した。
まるでそのタイミングをはかったみたいに。
恵ちゃんが、指をぐりって奥まで突き入れた。
なかを抉るみたいに。
快感で、目がチカチカした。
脚ががくがくと震えて。
瞬間的に溢れた愛液が、太腿を伝って。
イってる・・・わたしのからだ、すごいイってる・・・。
大学の廊下なのに。
人が沢山いるのに。
すごく深く、イっちゃってる。
「・・・あはぁ・・・ん・・・すごく・・・イイん、だよ・・・」
熱い吐息と一緒に、わたしは感想を口にした。
タエコにも、このステキな気持ち、教えてあげたいな。
そう思いながら、幸せな気持ちで絶頂の余韻に浸った。
< 終わり >