体育教官室の罠

「晶が来ていない?」

 天音 霞は晶の教室の前でクラスメイトに聞かされた。休み時間、喧噪のある廊下、彼のために晶をより従わせるため教室に行った時のことだった。

「なんで? 風邪?」
「さあ? 天音さんが知らないんじゃ、私たちが知るわけないわ。彼女と親しい訳じゃないもの」

 それじゃ、とその女生徒は友人達のグループへと戻っていく。
 昨日のTV、芸能人の噂、誰が誰を好きだというたわいもない噂に盛り上がる女子グループ。霞はそこから少し離れた席を見る。
 ぽつんとあるその席。今は別の女子が近くの友達と喋るのに座っているが、本来そこは晶の席だ。
 華やかさのかけらもない机。横にかかっていない鞄が本来の主の不在を告げる。

「・・・いってみようかな?」

 霞はその席を見て呟いた。

 ピンポーン。
 インターホンを鳴らす。
 その日の放課後、霞は一人、晶の家へと来ていた。
 ごく普通の家。二階建てになっているその家の周りには似たような家がたくさん並び、建て売り住宅だというのを示している。

「はーい」

 玄関のドアが開き、中から晶の母親が出てきた。

「あら、霞ちゃん。晶のお見舞い?」
「こんにちは、ご無沙汰しています」

 晶の母親は困ったように霞をみて、そして、晶の部屋を見上げた。

「ごめんねなさい。あの娘ったら、急に行きたくないなんて言い出して、部屋に閉じこもったきりなのよ」
「そうだったんですか? てっきり風邪でもひいたものだと思ってたのですが」
「元気だけが取り柄のあの娘が風邪なんてひくわけないじゃない。霞ちゃんもあの馬鹿娘を説得してくれる?」
「はは・・・・頑張ってみます」

 霞は晶の母親に連れられて、家にはいると階段を登り、二階へと上がっていく。
 晶の母親は二階のある部屋の前へ来ると、そのドアをノックした。

「晶、晶。霞ちゃんが来てくれたわよ。いい加減に出てきなさい」

 声をかけるも返事がない。晶の母親は霞に肩を竦めて見せ、霞にその立ち位置を譲る。
 霞は晶の母親に続きドアをノックする。

「晶。どうしたの? 晶? ここ開けてよ」

 何度かノックをするが、返事は返ってこない。

「晶? 晶?」

 ドガンッ
 霞が諦めずにノックを続けると、何かがドアに叩きつけられる。

「晶っ、その態度は何!」

 その行動に晶の母親が怒り、ドアノブをガチャガチャと動かすが、中から鍵がかかっているのでびくともしない。

「晶、ここを開けなさいっ!!」

 どんどんとドアを叩く晶の母親。それを霞がそっと止めた。

「いいですよ。気にしてませんから。それより、これ以上は無駄みたいですので、また来ます」
「そう・・・うちの馬鹿娘がごめんなさいね」

 そうして、霞は晶の家を出て行った。
 晶の母親は最後まで霞に謝っていた。

「ふーん・・・綾瀬がねぇ・・・」

 男子生徒は霞の話を聞き、単純な感想を言う。
 椅子に座り、偉そうにバリバリとスナック菓子を食べている。
 ここは生徒指導室。男子生徒は座り、霞は机を挟んで反対側に立っている。
 そして、この部屋の主とも言うべき生活指導教諭、金子 純子は机の下で男子生徒のものをしゃぶっていた。
 純子はものすごく嫌そうな顔で男子生徒の者をしゃぶり、ちゅぱちゅぱと言う音が室内に響く。だが、男子生徒も霞も気にするそぶりを見せなかった。

「んー・・・ということはこの間のあれがキテいるんだろうなぁ」

 男子生徒は顎に手を当て、数日前のことを思い出す。
 霞が晶に催眠術をかけて、男子生徒が晶を犯した。好意を植え付け、晶に告白させた上でその催眠をとく。そして、その告白を思い出させて晶を追いつめたのだった。

「もう、晶は私の事を信用していないと思います」
「そうだな。霞の話を聞く限りじゃ綾瀬に霞以上の友達はいないみたいだし・・・ここは先生に行ってもらうか?」

 言って、男子生徒は下を見る。男子生徒に見られ、純子はビクッと体を震わせ、泣きそうな眼で男子生徒を見上げていた。

「聞いていたでしょ? 先生。綾瀬を説得してくれないかな? もちろん、先生に拒否権はないんだけどね」

 にっこりと笑う男子生徒に、純子は恐怖を隠せなかった。

 そして、その日の夜。純子は綾瀬家の前に立っていた。
 本当はもう少し早く来たかったが、部活の練習を投げ出すわけにはいかない。
 誰かに任せられればいいのだが、主将の晶がいないんじゃ任せることができない。
 そういうわけでこんな時間になったのである。

 純子はインターホンを鳴らす。
 数秒の間。ぶつっと音がして、インターホンから声が聞こえてきた。

「はい、どちらさまですか?」
「夜分遅く、すみません。私、剣道部顧問の金子という者なのですが、晶さんが欠席した理由をお聞きしたくて参りました」
「あ、金子先生。少々お待ちください。今、鍵を開けますから」

 再びぶつっと言う音がしてインターホンが切れた後、がちゃがちゃという音がしてドアが開く。
 純子は晶の母親に会釈すると、晶の母親もつられて会釈する。

「晶さんは・・・?」
「まだ部屋に閉じこもったままです・・・・なにがあったのやら・・・?」
「それを聞きたいんですよ。お母さんは何か知っていることは?」
「それが・・・恥ずかしいことなのですが、今回のことは私にもよく分からないんです。いつもは色々と話してくれる子なのに・・・」
「本人に聞くしかないですかね・・・?」
「そうですね・・・、どうぞ・・・」

 晶の母親に促され、純子は家へと入っていく。そして、晶の部屋の前へ来ると母親がまずドアのノックした。

「晶、晶! ほら、出てきなさい。金子先生が来てくださったんだよ。いい加減に出てきなさい」

 だが、やはり反応はない。今度は純子がドアを叩く。

「綾瀬! 私、金子。あんた、いい年してなにやってんの。こんなのは義務教育中の子供のやる事よ。話聞いてあげるから出てきなさい!」

 数秒の沈黙。そして中から声が聞こえてきた。

「先生・・・・?」
「そうよ、私」
「なんで・・・・・?」
「話を聞きに来た。何で休んでるのか、教えてよ」
「・・・・・・・・・・・・」

 再びの沈黙。純子も晶の母親も何もしゃべれない。

「・・・・先生だけはいって」

 ぼそりと伝える晶の声。そしてカチャンという音がして、部屋の鍵が開かれた。
 純子と明の母親は顔を合わせて、肩をすくめる。そして、言われた通り純子だけ中に入った。
 夜だというのに明かりもつけず、カーテンの開かれた窓からの月明かりだけが部屋を照らし出している。その中で晶は一人、たたずんでいた。
 晶はちらりと純子を見るとベッドに上り、膝を抱えて座る。その姿は何かに怯え、普段の晶が見る影もなかった。
 暗闇に目が慣れてきた純子は背もたれを前に椅子に座り、晶に向かう。
 晶はそんな純子を見て、何か言いかけるが何も言えずに口を噤む。純子も晶に何か言いたいことがあるのか、口をぱくぱくとさせるが結局音は紡がれなかった。
 そして、長い沈黙が部屋を支配する。

「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・なんで」

 長い沈黙。その沈黙を破ったのは純子だった。じっと眼だけで純子を眺めていた晶が顔を上げる。

「なんで、学校休んでんの?」

 純子の声が晶に突き刺さる。その言葉に晶は体を竦ませた。

「天音にもあたしにも言えないことなの?」
「・・・・ごめんなさい」

 純子に謝る晶の瞳には何とも言い難い恐怖ともどかしさが混ざっていた。

「ねえ、学校には行きたい? 行きたくない?」
「・・・・・」

 純子の言葉。その言葉が晶の心へと飛び込んでくる。
 晶はぎゅっと膝を抱える手に力を込めて顔を深く沈み込ませる。

「・・・・・・行きたい、行きたいです・・・・先生にも色々教えてもらいたいし・・・・」

 嗚咽混じりの声。晶の心の吐露は続く。
 晶は顔を上げる。その顔は涙と鼻水にまみれ酷い物だった。

「でも、怖くて。行けないんです。学校に行くのが、外に出るのが、人に会うのが怖い・・・」

 悲鳴にも似たその声は、だんだんと声が小さくなっていく。
 再び、顔を埋めようとしたところを純子は押さえ、ティッシュで丁寧に晶の顔を拭う。
 そして、純子は晶のすぐ近く。ベッドへと座り直す。

「怖い・・・・か。ね、暗示をいれてあげようか? 綾瀬が怖くなくなるように」

 暗示という単語が出て来た時、わずかに晶の体が震える。それを見取り、それでいて純子は気づかない振りをして、どう? と晶を見る。
 晶の瞳が不安に揺れる。助けを求める眼差し。晶はしばらく純子を見ていたが、やがて首を縦に振った。

「よろしく・・・・お願いします・・・」

「さあ、深呼吸して・・・すう・・・・はぁ・・・・・」

 晶は純子に言われるがまま呼吸をする。
 純子はベッドを上り、晶の隣へと腰を据える。

「目を閉じると綾瀬はすっと催眠に入っていく。ほら、すうっと力が抜けて何も考えられなくなる。気持ちいい。怖いことなんか何もないよ」

 晶は純子に言われたとおり目を閉じると、純子へと体を委ねる。
 純子は晶の体を支えると、優しくその体をかき抱いた。

「さあ、静かにしているととても気持ちいいね。ずっとこのままでいたい。怖いことなんて何もない。いつでもこの気持ちを思い出せるよ」
「綾瀬が怖いと思ったら、目を閉じて。そうすれば、いつでも今の気持ちを思い出せる。怖いことなんて何もない。学校へ行くことも、外へ出ることも、人に会うことも怖いことなんてないんだよ。言ってごらん。怖くない」
「こ・・わく・・・な・・・い」

 純子に促され、晶の口が音を紡ぐ。
 それを聞いた純子はうんと頷く。

「そう、何も怖いことはない。目を閉じればいつでもこの気持ちいい気持ちを思い出せる。それを覚えておいてね」

 純子はすっと晶の髪を梳く。安心して純子に体を預ける晶を見て、純子は悲しげな表情を見せる。
 だがそれは一瞬のことで、次の瞬間には先程と同じ、生徒思いの教師の顔になっていた。

「じゃあ、三つ数えると綾瀬はとてもいい気持ちで目が覚める。催眠状態の時に私が言ったことも全て覚えていて、必ずそうなるよ。一つ、二つ、三つ! ほら、気持ちよく目が覚めた」

 三つ数えてがくっと晶の体を揺する。
 それを合図に晶はぼんやりと目を開く。まだ頭がはっきりしていないようで、そのままの体勢で数秒ぼうっとしていた。

「あっ、先生っ」

 やがて、自分がとっている体勢に気がつくと晶は恥ずかしそうに純子から体を離す。そんな晶を純子は優しげに見ていた。しかし、その顔にわずかに差す翳りを晶は気づくことができなかった。

「これで大丈夫。怖いことなんてないよ。覚えてるでしょ? 怖くなったら目を閉じればいいんだよ」

 そういって純子はベッドから降りて、照明をつける。
 いきなり明るくなった部屋に二人とも眼を細めて互いを見る。

「じゃ、あたしはこれで帰るから。明日はちゃんと来なさいよ」 
「はい、ありがとうございました。明日、行けるようなら行ってみます」
「うん、待ってるよ」

 そう言って純子は晶の部屋を出る。その先に佇んでいた晶の母親に会釈すると、純子は晶の家を辞していった。

「晶!」

 その声に晶は振り返る。
 次の日、無事に学校へと登校してきた晶を呼び止めたのは霞だった。

「霞・・・・」

 晶はじっと霞を見る。その瞳には敵意が宿っており、晶は一分の隙も見せない。

「そんな怖い顔しないでよ。ここは学校よ?」
「その学校であんなことさせたのはどこの誰よ」

 ぎりと強く歯をかみしめる晶。
 そんな晶の敵意を受け流し、霞は微笑んでいた。

「大丈夫。今は何もしないわよ。誓ってもいい」
「勝手にしなさい」

 吐き捨てるように言うと、晶はすたすたと校舎へと歩いて行った。
 そんな晶の態度にはあーっと大きなため息をつき、霞は晶を追っていった。

「待ちなさいよー」

 そして、そんな二人を後ろから男子生徒が見ていた。
 その口の端はにやりと釣り上がり、邪悪な笑みが張り付いている。

「来たんだ、綾瀬」

 そう言って、男子生徒も校舎へと歩いていく。

「今日は楽しくなりそうだ」

 ぼそりとつぶやいたその声は誰の耳にも届かなかった。

「やあああああーーーっ!!」

 パーンッ!!
 胴衣と防具に身を包んだ生徒達の怒号と叩かれる竹刀の音が剣道場に響き渡る。
 試合形式の練習をしている部員達の脇、剣道場の隅で晶は一人黙想をしていた。
 誰かに言われたわけではなく、晶は今日ずっとこのままでいた。
 それは、主将なのに数日休んでしまったという、晶なりのけじめの付け方だった。

「やってるねー」

 職員会議が終わったのか、純子が胴衣姿で入ってくる。その姿を認めると部員達は打ち合いをやめ、一斉に純子を見た。

「そのままでいいから聞いて。今日は軽く流して終わり。綾瀬も出て来たことだし、明日からがんがんやるよ」

 そして、純子は晶を見る。
 晶は純子が来ても、ずっとそのままで黙想をしていた。

「綾瀬、聞こえてるだろ。ちょっと教官室まで来な。他の者は素振り100! 終わった者からあがってよし。戸締まりは後であたしがやるからそのままでよし!」

 そこまで言って、純子は踵を返す。それを合図に生徒達は素振りを始め、そして晶は黙想をやめて、純子の後を追っていった。
 武道場を出て、更衣室や倉庫のある小さな棟へと入っていく。そしてその2階へとあがっていく。
 そこには純子達、体育教師の担当している体育教官室がある。そのドアを開いたところで純子は立ち止まる。

「先生?」

 晶が声をかける。その声に返ってきた答えは晶の想定外のものだった。

「ごめん・・・・綾瀬」
「え?」

 純子は振り向き、晶を抱きしめる。純子の突然の行動に晶は驚きを隠せなかった。

「せ、せんせっ!?」
「眠りなさい、晶・・・」
「え・・・あ・・・・」

 純子の口から紡がれる言葉。その言葉に晶は体を支える力を失い、意識を闇に落としていく。
 完全に力が抜けた晶をかかえ、純子は教官室のドアを閉め鍵をかけた。

「さすが、先生。見事な手際です」

 かけられる声。その声に純子はびくっと体を震わせた。

「あなたがやらせたんでしょ」

 この声に純子は答える。その言葉は怒りを隠そうともせず、声の主に敵意をぶつけていた。

「そうですね。でも、先生だって断らなかったじゃないですか」
「逆らえないようにして言う言葉がそれ!?」

 純子は怒りに満ちた顔で振り向き、男子生徒を睨む。その先で男子生徒は鍵を構えていた。

「・・・・っ!!」

 純子は息をのむ。次の瞬間、男子生徒の手首が返り純子の意識も消えていった。
 体を支える力が消え、純子は晶ごと崩れ落ちる。それを男子生徒の横から飛び出した霞が支える。だが、霞一人では支えきることができず、結局一緒になって崩れてしまった。
 そんな三人を見て、男子生徒はふんと息をならした。

「何やってんだ霞。先生も立ってください。これからがお楽しみなんだから」

 言って、男子生徒は前もって机をどかしておいた教官室を進んでいく。その後ろに霞と晶を抱えた純子が続いた。
 男子生徒の指示に従い、晶を座らせ、そして晶に相対するように純子と霞が座る。
 そして男子生徒はまず純子へと声をかけた。

「さあ先生。これから三つ数えると先生は目を覚ます。でも、催眠状態のままで僕や霞の言うとおりに先生の体は動いてしまいます。考えることも見ることも聞くこともしゃべることもできますが、先生の体は僕たちの言うとおりにしか動かないんですよ。一つ、二つ、三つ」

 男子生徒が三つ数えると純子の瞳に灯が灯る。
 ギロリと男子生徒を睨む。だが、それきりで純子の体はどうあっても動かない。

「無駄ですよ、先生。先生の体は私たちの言うとおりにしか動かないんですよ。わかっているでしょう?」

 霞が横から純子にしなだれかかり、首筋に指をはわせ、耳に息を吹きかける。
 その刺激に純子はぴくっと体を震わせる。

「あっ、まねっ・・・」
「それにもう後戻りはできないんですよ。先生だって晶のことを嵌めているじゃないですか?」
「っ!!」

 霞の言葉。それが純子を切り刻む。霞はひょいと純子の顔を上げ、目の前の晶を見せた。

「ほら、あんな無防備な晶。ちょっと前までなら私にもできたけど、今はもう先生だけにしか見せてくれないでしょう? こんな風に晶をおとしめたのは先生ですよ」
「・・・っ」
「だめですよ、先生。ちゃんと見ないと。ほらちゃんと晶を見てください。これから落ちていく晶の姿を」

 顔を背ける純子を霞が注意する。その言葉に純子の顔が再び晶の方を向いた。
 それを確認すると、男子生徒は晶へと近づく。
 すっと晶の顎に手をやり、くいと晶を上向かせる。
 男子生徒は晶の頭を押さえ込み、純子へと向けて固定する。そして、晶へと暗示をいれていく。

「さあ、三つ数えると綾瀬の意識は元に戻る。だけど、催眠状態はそのままだ。見ることも聞くこともしゃべることも考えることもできるけど、綾瀬の体は私と霞の言うとおりにしか動かない。そして、今、私が言ったことを綾瀬は覚えていないけど、必ずそうなる」

 言って、男子生徒は純子達の方へと歩いていく。そして、男子生徒を睨む純子へと声をかける。

「ふふ、さて、先生はいつものようにしてもらいましょうか」

 純子をどかして男子生徒が座る。純子はそのまま男子生徒の股間へと体を埋め、男子生徒のモノを引き出すといつものように舌を這わせた。
 その表情は見難いが屈辱にまみれていた。

「霞」

 男子生徒が声をかける。それだけで意図を理解したのか霞は頷くと晶の隣へと行き、三つ数えた。
 先程の純子と同様に晶の瞳にも力が戻る。
 だが、今の記憶はないので晶の反応は純子とは違った。

「・・・・あ・・・れ? せん・・・せ・・・」
「ようやくお目覚め? 晶」
「っ、霞!? それにあんたっ!」

 霞の声に晶が状況を把握する。それに伴い、怒りと恐怖が混じったような微妙な表情を見せる。

「よお、綾瀬。気分はどうだ?」
「何であんたがここにいるのよ!! ここは体育教官室よ!」
「何だっていいだろ。大事なのは俺がここにいる理由じゃない。これから綾瀬がどうなるか、だ。まあ、こうなるわけだが」
「うっ・・・ふっ・・・・」

 男子生徒の股間で純子が動く。男子生徒のモノは純子の唾液で照り光り、輝いていた。

「せ、先生っ!!」
「綾・・・瀬・・・っ」

 晶の叫び。その声に反応し、純子が体を震わせる。しかし、その動きは止まらず、純子は男子生徒のモノをしゃぶり続ける。
 そんな純子の姿を晶は驚愕の瞳でみる。

「先生っ! 先生っ!!」
「・・・・・」
「っ!!」

 純子から返事はない。その答えに晶は声を詰まらせ、そして男子生徒を睨みつける。
 その視線を受け、男子生徒は肩を竦める。

「あんたっ・・・・先生にまでっ・・・・」

 晶の全身から怒気が滲み出る。だが、晶が動けないことを知っている男子生徒には余裕があった。

「だったらどうする?」
「絶対に許さない・・・あんたを絶対に殺してやる!!」
「そんな状態で何ができるんだ?」

 男子生徒の挑発に晶はギリと歯ぎしりをする。男子生徒の言うとおり、晶の体は動かない。

「それに、最後までそんなことを言ってられるか、なっ」

 男子生徒の声が詰まる。次の瞬間、白濁液が勢いよく発射され、純子の顔を汚していった。
 次々とかけられる白濁液を甘んじて受ける。純子の肌を白濁液がつうっと垂れる。
 そんな純子の姿に晶の眼が見開かれる。軽く開いた口が何かを言いたそうに震えているが、何も言うことができなかった。

「さあ、先生。ここに座って。綾瀬にオナニーを見せてあげてください」

 男子生徒の言葉に純子の貌が蒼白になる。その瞳がせわしなく動き、かたかたとその体が震える。

「先生っ!! やめてくださいっ!!」

 晶が叫ぶ。しかし、その叫びはその場の誰にも全く届かなかった。

「さ、どうぞ」

 男子生徒が椅子から立ち、その場所を純子に譲る。男子生徒からの強制力に逆らうことができず、純子はその椅子に座る。

「先生っ!?」

 戸惑う晶。見せつけるように胴衣の上に指を這わす純子から目を背けようとするその顔に霞が声をかける。

「だめよ、晶。ちゃんと先生を見なくちゃ・・・ほら、晶は先生から目を離せなくなる・・・」

 そっと晶の顔を押さえ、純子へと向けていく。霞の言葉は晶に染みこんでいき、晶はその言葉の通り、純子から目を離せなくなっていく。

「か、かすみぃぃぃ」

 恨めしそうな晶の声。その声を楽しげに聞き流し、霞はさらに暗示を重ねる。

「ほら、よく見て。晶の感覚は先生に移っちゃった。だから、晶は先生が感じるとおりに感じてしまう。先生が気持ちいいと晶も気持ちよくなっちゃうんだよ」
「かすっ・・っ!」

 晶は霞に何かを言いかけ、突然襲ってきた感覚にその言葉が途切れる。
 純子の指は胴衣の合わせを押し開き、その胸に指を這わせる。片手を後ろに回してブラジャーのホックを外す。押さえられていた胸が押し上がり、開かれた前からすっとブラジャーを抜き取る。ふんと鼻から空気を漏らす。しかし、その顔は苦渋に満ちていて非常に泣きそうだった。
 その表情とは裏腹に指は純子の性感帯を刺激していく。つつっと乳房を伝い、乳首をこりこりと刺激する。その刺激に晶はがくっと前のめりになる。しかし、顔は上げられ、その視線は休むことなく純子を見続ける。

「先っ・・生ぇっ・・・! やめてっ・・・くだっ・・・・さいっ・・・」

 体育教官室に響き渡る晶の声。その声を無視し、純子の体は動き続ける。ねぶるように指は乳房を優しく揉み、その指の動きに胸は変形し、その度に、純子と晶の体がびくびくと震える。

「くぅ・・・っ。せんせぇ・・・」
「綾・・・瀬・・・・」

 びくっびくっと体が震える。そんな純子に晶にも聞こえる声で男子生徒が言った。

「ほら、先生。上だけじゃ満足できないでしょう? 下も刺激しないと」
「・・・・っ!!」

 信じられないモノを見るように男子生徒を見る純子。だが、その体は男子生徒の指示通り、すでにしとどに濡れた股間へと進んでいく。袴の裾を持ち上げて口にくわえる。そこから指を進ませ、晶に見せつけるように股間への刺激を始める。

「ぅああぁっ!!」

 瞬間、晶は大きな声を上げて、更に深く前へと沈み込む。律儀にも顔を上げたままで。
 純子の指がその秘裂を刺激する度に晶の腰がビクッビクッと跳ね上がる。

「せん・・・・せぇ・・・・」
「綾・・・瀬ぇ・・・・みないっ・・・でぇ・・・・・」

 晶の声に純子は必死に声を上げる。それは晶のためか、それとも自分のためか。
 しかし、二人の声など関係なく、純子の体は快楽を貪り続ける。その行為に晶の体は反応し、びくびくと体を震わせる。

「せんせぇ・・・・やめて・・・・くだっ・・・さいぃ・・・」

 四度目の晶の声。その声が届いたのか、晶へ伝わる刺激が治まる。晶ははあはあと肩で呼吸を整える。その頬は真っ赤に染まり、その瞳は潤んでいた。
 もはや純子以外見ることができなかった晶の視界が戻り、その現状を把握する。
 純子の隣に男子生徒。そして、その瞳が晶を捉えて放さない。

「どうした? 綾瀬。もっといじって欲しかったか?」
「そんな・・・わけっ・・・ないっ・・・・でしょっ・・・!!」

 晶のうちからとめどなく衝動が突き上げ、晶の言葉を途切れさせる。だが、晶は気丈に男子生徒を睨んでいた。
 そんな晶の様子を見て男子生徒はハッと嗤う。

「そんな格好で言われても、微塵も説得力がないぜ。まあいい。じゃあ、やめてやるよ。霞」

 男子生徒の言葉に霞は頷き、晶の耳元へと声をかける。

「がんばったね晶。晶の感覚は先生から晶へと戻った。だから、先生がどうなっても晶は何も感じないよ」

 そう言って、男子生徒を見る。男子生徒はその様子を確認すると、純子へと声をかける。

「先生。今から指を鳴らすと先生はイッてしまう。どうしようもなく気持ちよくて、先生はその快感に流されてしまうんですよ」

 そう言うと、見せつけるように右手を挙げる。そして、その意味を理解した純子や晶が声を上げる前に指を鳴らす。

「っ・・あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「先生っ!!」

 次の瞬間、純子の体が跳ね上がり、勢いよく背をそらす。首の力だけでブリッジをし、その反動で椅子から転がり落ちる。
 床に横になった後もビクッビクッと間断的に震える。その瞳に力はなく、その口からは涎が床に垂れていた。

「・・・・先生」

 その姿にごくんと晶は息を呑む。驚きに目は見開かれ、口はわずかに開いていた。

「欲しくなったんじゃないか?」
「っ・・・そんなわけないでしょっ!!」

 男子生徒の言葉に晶は自分を取り戻す。一瞬放心状態だったのを男子生徒は見逃していなかった。

「その割には金子先生に見入ってたみたいだけど?」
「っ・・・・」

 男子生徒の言葉に晶はたじろぐ。感情はどうであれ、一瞬、純子に見入ってしまったのは事実なのだから。
 男子生徒は晶の姿ににやりと笑い、純子へと体を寄せる。しゃがみこみ、まだびくびくと体を震わせる純子の頬をぺしぺしと叩く。

「先生。起きてください。まだまだこれからですよ」
「う・・・・・」

 呻き声と共に弱々しく純子の目が開かれる。よろよろとよろけながら起きあがる純子に男子生徒はさらなる言葉をかける。

「さあ、先生。先生の方法で綾瀬を堕としてください。僕に服従するように」

 無情と言える男子生徒の言葉。その言葉に純子の体が固まる。
 だが、それも一瞬のことで純子の体はゆっくりと立ち上がる。合わせを押し開き、胸を露出したまま晶へと歩いていく。そんな純子を見る晶の顔も、晶へと近づいていく純子の顔も蒼白で恐怖に支配されている。

「せ、先生・・」

 弱々しい晶の声。純子に助けを求めるように晶は純子を見上げる。

「先生・・・嘘・・・ですよね」

 震える声。そんな晶の声を無視し、純子の体は晶に迫る。

「冗談・・・なんですよね・・? そう言ってくださいっ!! 冗談って!! ・・・言って・・・くだ・・さい」

 恐怖からか、純子を見上げる晶の瞳から雫が垂れ、頬を伝う。だが、涙ながらに訴えたその言葉は純子の体には届かなかった。

「さあ、綾瀬・・・よく聞いて。ごめん。これから三つ数えるとあなたの体はとても敏感になる。ごめんなさい。どこを触られても気持ちよくて仕方がなくなる。ごめんなさい、綾瀬。でも、綾瀬はどうしてもイク事が出来ない。わかったね。ごめん・・・一つ、二つ、三つ」

 瞳から涙を流し、純子は晶へと暗示を告げる。そして三つ数えてパンと叩くと、晶の体がびくんと震えた。

「先・・生・・・」
「天音」

 純子は霞に声をかける。霞はすぐに意図を察して「はい」と勢いよく返事をした。

「あーきらっ♪」

 純子とは反対側から霞が晶に抱きつく。その感触に晶の体がびくっと跳ねる。
 自由にならない体で突然の相手を何とか睨む。

「霞ぃ・・・んっ」

 霞が晶の唇を奪う。口を開かないように必死に抵抗する晶の耳元で純子が囁く。

「綾瀬・・・口を・・・開いて・・・」
「ん゛~~~~~」

 その言葉に逆らえず口がだんだん開いていく。そこから霞の舌が侵入し、晶の口内を蹂躙していく。
 霞の舌が上へ下へと動き回る。その度に晶の体はビクッビクッと跳ね、口と口の接合点からは溢れた涎がつうと垂れる。
 霞の手は前へと回り、胴衣の隙間から晶の胸へと侵入する。滲み出た汗を掬いつつ、ブラジャーの上から晶の胸を刺激する。
 くりくりとブラジャーの上から乳首をいじり、「晶は淫乱だね」と言わんばかりににやにやと晶を見る。その視線を否定するように晶はぎゅっと目をつぶる。
 そんな晶を嘲笑うかのようにブラジャーを押し上げ、直に乳首に触る。

「っ!!!」

 びくんと晶の体が跳ね上がり、体を走る快感にびくびくと震える。

「っ、あ゛あ゛あ゛ぅ!」

 霞は晶の唇を放して、耳たぶをなめる。晶の口から悲鳴にも似た喘ぎ声がでる。
 その声に満足しつつも、霞は責める手を休めない。袴の脇から手を差し入れて、ショーツに守られた晶の秘裂へと指を這わす。

「ああぅっ!!」

 クチュリと水っぽい音が響く。それに伴い、晶の体がいっそう大きく跳ね上がった。

「ほら・・・晶のここ、とても濡れてる。いやらしいね晶は」

 霞の責めるような声。それに晶はぶんぶんと顔を振ることで否定する。溢れ出る快感を必死に耐える晶の顔は涙と鼻水、そして唾液で汚れ、見るも無惨な姿になっていた。
 つつつとゆっくりと秘裂にそって指を動かす。ぴったりと張り付いたショーツの隙間から指を差し込み、もぞもぞと指を動かす。それに併せて、びくっびくっと晶の体が跳ねる。頭は大きく跳ね上がり、背中は大きく反って快感を知らせる。

「ふふ。晶。もっともっと感じていいんだよ。ほら、晶のここも欲しいって言ってる」
「っぁ!!」

 つぷりと霞の指が晶の中へと入っていく。晶は大きく口を開けるが、空気がないのか声にならない。
 積み重ねられる感覚。それに煽られ、晶の体がびくびくと震える。だが、その瞳には未だ力が存在し、必死になって抵抗を試みていた。

「綾瀬・・・・イキ・・・たい?」

 震える声で純子が聞く。その言葉に晶はぶんっぶんっと大きく首を横に振る。それを見て、霞が淫核をこりっと刺激した。

「ーーーーっ!!!」

 声にならない叫びをあげ、晶は体をぴんと伸ばす。体を突き抜ける快感に息は途切れ途切れとなり、心臓はどくどくと早く動く。
 それでもイク事ができない晶は高ぶったまま意識が朦朧となる。それをさらなる刺激が引き戻し、晶は無限のループを続けていた。

「天音」

 純子が霞に声をかける。以心伝心、霞はそれだけで純子の意を汲み、ぴたりと晶への責めを止めた。
 突然止まった快感を貪ろうと、晶の体は無意識のうちにひくひくと動く。しかし、霞はそれを巧みにかわし、晶への快楽の供給を絶った。
 それでも快感を得ようと動く晶の体。そんな晶に霞は声をかける。

「どうしたの晶? 気持ちよくして欲しい?」
「っ・・・」

 霞の言葉に晶は喉を詰まらせる。一瞬の逡巡の後、敵意の籠もった瞳を霞に向ける。

「綾瀬、気持ち・・・よくなっても・・・いいん・・だよ。一緒に・・・気持ち・・・よくなろう?」

 そんな晶に純子が囁く。晶は気づかなかったが、その貌は絶望に満ちていた。
 純子は晶の正面に回り、晶の袴の帯を解く。しゅるりという音がして、結ばれた紐が解かれていく。腰に二重三重に巻かれた帯を解くと、晶の袴はさほど力を入れなくてもずれ落ちる。その中から霞に弄ばれている秘裂がショーツに包まれて出てきた。

「先生っ!?」

 晶の叫びを聞き流し、今度は胴衣の紐を解いていく。紐が解かれた胴衣ははらりと開かれ、晶の胸が露わになる。

「先生っ!!」
「綾瀬・・・・気持ちよくなっても・・・・いいんだよ。一緒に・・・気持ちよく・・・なろう」

 純子は晶の顔を抑えて、正面を向かせる。鼻が触れあいそうな距離。自身の顔を以て、晶の視界を純子は塞ぐ。その頬には男子生徒の白濁液がこびりつき、純子の顔を壮絶なモノにしていた。

「先・・・・生・・・・」
「ん・・・・」

 純子の顔が晶に近づき、晶の唇を塞いでいく。ただ、唇を重ねるだけのキス。だが、それだけでも晶の意思を濁らせる。
 長いようで短いキスから純子は唇を離す。純子の目の前にある晶の顔はぼうっとして、明確な意思が見られなかった。

「あやせ・・・・気持ちよくなってもいいんだよ・・・・。一緒に・・・・気持ちよくなろう?」
「先生・・・気持ちよく・・・なって・・・・いいんですか?」

 先程とは違う晶の反応。その変化に隣で見ている霞はにやりと笑う。しかし、正面の純子はこの世の終わりのような顔を見せ、心中とは違う言葉を吐く。

「そう、気持ちよくなっていいんだよ。・・・・ごめん・・・・。一緒に気持ちよくなろう。・・・・ごめんね、綾瀬」

 ぺろりと頬にこびりついている白濁液をぺろりと舐めて再び晶の口を奪う。純子の舌が晶へと進む。先程の晶と霞のキスとは違い、晶からも舌が伸びて純子の舌へと絡みつく。
 口よりの唾液の音。秘裂よりの愛液の音が大きくなっていく。ビクン、ビクンと晶の体が何度も跳ねて、自身の受けている快感を示しているが、いつまでたっても絶頂へと達しない。
 晶は何とか絶頂へ行きたいと体を動かす。刺激を多く得ようと、胸や股間を前へと押し出す。
 貪欲に絡みつく晶の舌。その舌を純子は余裕を持って舐り、ぺちゃりぺちゃりという唾液の音が響く。晶が白濁液を飲み込んだのを確認して、純子は晶から口を離す。つうと唾液が糸を引いた。二人の口を繋いでいるその糸は距離が離れるほどに細くなり、やがてぷつんと言う音が聞こえるかのように綺麗に途切れた。
 晶の貌は快楽にとろけ、その瞳はボウッとしていた。物欲しそうにパクパクと口を動かす様は水に揚げられた魚のようだった。

「せんせぇ・・・・きもちよく・・・してくださいぃ・・・・もっとぉ・・もっときもちよくなりたぃ・・・いかせてぇ・・・・せんせぇ・・・」

 涎、涙、そして汗に汚れた顔で晶はつぶやく。さっきまでの気丈な姿はどこにもなかった。

「そう・・・なら・・・彼にお願いしなさい。・・・ごめん・・・。彼にセックスしてもらえば・・・・ごめん・・・・綾瀬はとても・・・・きもちよく・・・なる。・・・・ごめん・・・彼にして・・・もらえば・・・綾瀬は・・・イクことが・・・・ごめんっ・・・できる・・・・」

 ぼろぼろと大粒の涙を流し、純子は言葉を重ねる。ごめんごめんと言いながら、晶が元へ戻れなくなるように仕込んでいく。

「次に晶がイッた時に・・・・ごめん・・・最初に見た男の人を・・・晶は好きで・・たまらなく・・・なる・・・ごめんなさい・・それが・・今まで・・・大嫌いに・・思っていた・・・相手だと・・ごめん・・・しても・・・」
「それでもいぃ・・・それでもいいからぁ・・・いかせてぇ・・・・いかせてくださぃ・・・・」

 飢えたように言う晶。その姿を見て、純子はぼろぼろと涙を流しながら、男子生徒に場所を譲る。見るに堪えないとばかりに晶から目を逸らし、ごめんごめんと呟き続ける。
 男子生徒はそんな純子の顔を上げ、まだ何かするのかと恐怖に震える眼を捉える。

「先生・・・目を逸らしてはだめですよ。先生には綾瀬が堕ちていく様をしっかりと見てもらいます」

 その貌を絶望に染めて、純子は震える。しかし、どんなに思っても純子の体が動くことはない。そんな純子の姿を確認すると、男子生徒は晶へと向かう。すでに肉棒は力を取り戻し、晶の目の前に力強くそそり立っていた。

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・それ・・・・それぇ・・・・・」

 晶は物欲しそうに男子生徒のモノを見上げ、渇望の声を上げる。そんな晶の姿に男子生徒は笑みを見せると、そのモノを晶へとあてがい、一気に突き込んだ。

「ああああああああっ!!!!」

 その瞬間、晶は大きく体を反らし、びくんびくんと体を跳ねさせる。一瞬にして高みへと持ち上げられた晶は天井を見上げハアハアと息をする。涙と涎を垂れ流すその表情は悦楽にとろけていた。
 数十秒。その間、思い出したように体がビクンビクンと痙攣する以外、晶は動かないままでいた。
 やがて、晶の意識が戻る。しかし、その瞳は濁ったままで呼吸は甘さを残している。

「もっと・・・・もっとぉ・・・・いかせてぇ・・・・いかせてよぉ・・・・・」

 熱の籠もった吐息を零して、晶は男子生徒に懇願する。敵意に満ちていた晶のそんな姿を見て男子生徒はククッと嗤った。

「俺が嫌なんじゃなかったのか? あんなに俺のことを憎んでいただろう?」
「あんたでもいいのぉ・・・・あたしをいかせてぇ・・・・もうたえられない・・・いきたいのぉ・・・・きもちよく・・・・なりたいのぉ・・・」
「あ・・・や・・・・せ・・・・・」

 晶の言葉に純子が絶望の声を上げる。男子生徒はフッと笑い、ずんと晶を突き上げた。

「あああああっ!!」

 晶は嬉しそうな声を上げ、自分から腰を動かす。

「ああ、あああっ、もっとぉっ!! もっと突いてぇ!!」
「あやせぇ・・・・」

 晶は歓びの声を上げて、送り込まれる快感を享受する。
 貪るように腰を動かす晶の姿に純子は次から次へと涙を零した。
 ズン、ズンと男子生徒が腰を動かすたびに晶の顔は歓びに満ちていく。先程とは違う、限りなき高みへと晶は持ち上げられていく。
 霞が晶の胸を揉む。指が触れた時点でびくりと震えた晶の体は胸が歪むにつれ、何度も大きく震える。

「あああっ!! かすみぃっ!! もっとぉっ!! いかせてぇ!!!」

 晶の中がひくひくと蠢き、男子生徒に射精を要求する。すでに一度射精をしていた男子生徒のモノは敏感になっており、すぐに出してしまいそうになっていた。

「綾瀬! いくぞっ!! おまえは中に出されるとイッてしまうっ!!」
「きてぇ! だして! いかせてぇっ!!」

 切羽詰まった晶の声。男子生徒は腰の動きを一層強め、晶へと深く深く突き刺した。

「っ!!」

 ギリと強く歯を噛みしめて、晶の中へとどくどくと射精した。
 その白濁を内部に感じ、晶は絶頂へと高められる。

「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛・・・・・・っ」

 大きくなりすぎる感覚に声が出せずに、びくびくと震えたまま声帯を震わせる。声とは言えない咆吼のようなモノが晶の口から零れた。
 次の瞬間ぶつんと切れたように晶の体が崩れる。口からは涎を、接合部からは愛液と白濁液の混じり合ったモノが垂れる。晶の表情は安らかで、そして淫らだった。

 そのままどれだけ過ぎただろうか。誰も何も言わないまま沈黙が体育教官室を支配していた。
 窓から見える空はオレンジ色から青黒い色へと変わっていた。グラウンドから声は既に聞こえず、ほとんどの生徒は校内から姿を消していた。
 沈黙に包まれた空間。それを晶の声が打ち破った。

「う・・・・」

 男子生徒の胸の中で晶が身じろぎ、目を覚ます。
 フッと晶と男子生徒の目があった。だんだんと晶の顔が朱に染まっていく。
 そして、晶は男子生徒とつながったまま幸せそうに目を閉じる。
 閉じられた瞼から涙が頬を伝い、晶は幸せそうな顔のまま男子生徒に身を預ける。

「綾瀬・・・・・」

 先程まで殺気まで孕んだ瞳で睨みつけていた相手。その相手に今度は幸せそうに体を預けている。
 そんな晶の幸せそうな表情に純子は驚きを隠せない。

「晶」

 霞が抱き合っている二人に近づき、声をかける。

「霞」

 霞と晶は笑いあう。それが当然だというように。

「だめだよ、晶。彼は私や晶のモノじゃない。私や晶が彼のモノになるの。彼に愛してもらうために」

 晶を律する霞の言葉。
 その言葉に晶はうんと頷いた。
 そして、んっと力を込めて、男子生徒とつながっている自らの体を引き離す。
 二人の体が離れた瞬間、晶はカクンと尻餅をついた。

「・・・・ぷっ」
「ふふふふふ、あははははははっ」
「あははははははははっ」

 晶と霞は互いを見て笑いあう。
 その二人の間に昏い感情なぞどこにもなかった。
 そして、その二人から少し離れたところで純子が二人を見ていた。

「綾瀬・・・・」

 晶の変わりよう。その姿に純子は絶望の声を上げる。
 その純子の姿に男子生徒は笑みを絶やさない。男子生徒は服を整え、純子のそばに立つ。

「先生もお疲れ様です。先生はこれまで通りでいてください」
「ごめん・・・・綾瀬・・・・ごめん・・・・」

 ぼろぼろと涙が零れる。溢れる涙は純子の絶望であり。その嗚咽はいつまでも体育教官室に響き続けた。

< 了 >

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