幼馴染はセフレ1

01:あかさ

「………し……つーし……つーしー…あーつーしー!」

 闇の向こうからの声。聞き覚えも何も昔から常に聞かされる声に何度も何度も呼ばれ、眠っていた意識は無理やり覚醒させられた。

「だぁぁっ! うるせえぞ、かずみぃ!」

「あ、やぁーっと起きたー」

 さっきからずっと呼んできていた和海は跳ね起きた俺ににっこりと笑いかけた。

「やぁーっと起きたー、じゃねーよ! 今何時だと思ってんだ!」

「何時って、七時でしょ? 時計も読めないの?」

「読めるに決まってんだろ! なんでこんな時間に起こすんだよ! いつもいつも」

「そりゃあ、起こさないといつまでも寝てるじゃない敦は。ほら、さっさと用意しないと学校遅刻するよ? それとも、まだある余裕で抜いてあげようか?」

 しれっと答える和海に更に反論する力が抜ける。和海の言う通り、俺は割といつまででも寝てるし起こしてもらう事自体はありがたいのだ。問題は時間が早すぎるだけで。そして、この空いた時間をどうするかと考えて、

「そうだな、じゃあ抜いてくれよ」

 和海に抜いてもらう事にした。

「おっけー」

 俺の言葉に満面の笑みを浮かべると和海は中へと潜り込んだ。

 そうして俺達は走っている。

「お前のせいだ!」

「なによー。あたしはちゃんと七時に起こしたじゃん」

「お前がねだってくるからだろ!」

「あたしはねだったんじゃなくて提案しただけでしょ! それを抜いてくれって言ったのは敦じゃん!」

「うっせー、おかげで遅刻だ!」

 俺と和海は罵り合いながらも通学路を走る。まともに朝飯を食う暇もないので食卓においてあった菓子パンをひっつかんで持ってきていた。走りながら食べるとかいう味もよくわからないような食べ方ではあったけど。

「どう?」

 和海が目を細めてこちらを伺っている。俺はこんなに息を切らせて走っているのにこいつは全く息を切らせていない。なんとも不公平だ。

「それっ……なりっ、おじさんっ……の、にはっ……負けっ……るぅ」

 うまいのは事実だ。だが、流石にその辺のメーカーの出してるパンと加山のおじさん――和海のお父さんがやっている加山ベーカリーは近隣の住宅でも人気のパン屋でご飯時のちょっと前には結構な行列ができるようなパン屋だ――のパンと比べたら当然負ける。

 今日出る時は隣の加山ベーカリーには行列はなかったが、それは単純に休みだからだし。

「じゃあ、また今度食べにきなよ。大丈夫、敦ならフリーパスだよ。お父さんもお母さんも敦の事大好きだもん。知ってた? お父さんとお母さん、敦をあたしのお婿さんにって考えてたんだよ?」

 微笑を浮かべ和海が聞いてくる。そんな事はもちろん知ってた。というか、うちの親も同じ事を考えていた。そもそもそうでなかったら親同士が親友だからって隣の家の子供に自分の家の鍵を渡したりしない。そんなこんなで俺たちは子供の頃から両家を我が家のように行き来していた。

 おじさんに試作パンや売れ残りのパンをただで貰ったりもしてたし、俺用にわざわざ別に焼き上げてくれたりもした。流石に他の客には見えない所でだったけど。

「ああっ……そうっ、だなっ」

 息を切らせて交差点を走っていく。この交差点を渡るとようやく学校が見えてくる。この後少しという所で始業のチャイムが鳴り、遅刻が確定した。

「しゅーりょー」

 気の抜ける和海の声と共に俺の体からも力が抜ける。全力疾走していた体が盛大に酸素を求め大きく肩で息をした。ふと、散り始めた桜の木が目の端に映る。それは和海も一緒だったのか、和海はその桜を見上げていた。

「もう桜も散る頃なんだねー」

 呼吸も収まってきた所で上を向くとあれだけ満開だった桜は見る影もなく、緑の中に疎らにピンクを残すのみになっていた。

「何詩人みたいな事言ってんだよ。いままで桜なんて気にした事なかったくせに」

「ひっどー。あたしだって桜見てお餅食べたいなーとか思う事はあるんだよー」

「食い物じゃねーか。ってかお前そこはパンだろ、パン屋の一人娘」

「パン屋だってお餅食べたい事はあるんだよ?」

 和海は子供のように頬を膨らませ俺を睨む。その頬を指で突きたくなるが、そんな事をしたらまたまくしたてられそうなのでやめておく。

「まあ、そりゃそうだろうけど、おじさんが可哀想だろ? 毎年和海の誕生日に和海が好きそうな新作パンを作ってるんだしさ」

「そうなんだけどさー。ほぼ毎日パンを食べてるしー……ご飯も食べてるけど、おやつって言ったら菓子パンだしお餅類なんてそれこそお正月しか食べないんだよ?」

「ウソつけ、割と買い食いしてるじゃねーか」

「バレたか」

 てへ、といいそうな感じで舌を出した和海。

「バレたかも何も目の前で買ってたしな」

「だってー、お腹すくんだもーん」

「でも、お前ってその割には細いんだよな。佐藤とか羨ましがってただろ?」

「運動、してるから♪ サチも動けばいいんだよ。ってか羨ましいのはあたしの方なんですけどー。なにあれー」

 和海は頬を膨らませる。その様を微笑ましく思いながら和海が恨まやしがる理由に思いを馳せる。

 そう、あの胸だ。服を下から押し上げるその胸は服の上からでもその大きさを盛大に主張する。体の細さ、ないしはバランスは和海の方が上だろうが、その胸のインパクトに関しては圧倒的だ。なにせ、教師である葉月ちゃんと比べても遜色ないレベルだし。

「まあ、互いに無い物ねだりって事だな。にしても運動って……お前が言ってるのってあっちの意味だろ? 佐藤がそんな事できるわけ無いじゃん」

 目を細め、妖艶に笑う和海。その笑みの意味は表情を見れば一目瞭然だが、それを佐藤には絶対に勧められない。いや、佐藤にっていうか和海以外には、か。

「いや、それがね? サチも結構好きものなんだよ。だって、あたしの腰使いってサチに教えてもらったものだし」

「本当かよ……」

 あの佐藤がビッチだって言うのはにわかには信じられない。例え、彼女の親友且つ俺の幼馴染である和海の言葉であってもだ。いや、ほぼノリだけで構成されてるこいつの言葉だからこそ信じられないんだけど。以前にも有る事無い事吹聴しやがったし。

「ほんと、ほんと。後でサチに聞いてみればいいよ? 『今度俺と一発どう?』とかさ」

「お前じゃないんだからそんな事聞けるかよ」

 いつも和海に引っ張り回されて困ったような笑みを浮かべてる印象しかないおとなしい少女が実はビッチというのは和海のアホみたいなフカシなんじゃないだろうか? そもそもそんな事聞いたら一発でクラスの鼻つまみ者にされる。もちろん親に連絡が行くだろうし先生からもめっちゃ怒られるだろう。松来先生に怒られて平然としていられるのは和海くらいだ。

「じゃあ、あたしがやってあげようか?」

 和海は挑発する様に笑いかける。言っている事に対して躊躇がなさすぎるのはやはりこいつの性格故だろう。

「想像してみてよ、サチの体をさ……あのサチの体、すごいよね。でもね、サチってばまだ生えてないんだよ? あの体でだよ? ほんとすごいよね? そんなサチの体を好き勝手できるんだよ? やってみたいと思わない? 」

 悪魔の囁き、そう言っていい言葉が耳に入り込んでくる。

 佐藤の体は和海や高見はもちろん、葉月ちゃんと比べても負けないような大きさを持つ。そんな体が生えてない? 何を言ってるんだ?

「まじか……?」

「マジマジ。プールに入る時にね、ガバーってやったわけよ。そしたら生えてないの。そりゃあもうその場は大騒ぎよ。あたしとナナナで騒ぎまくってたまちんはキレまくってサチは顔真っ赤」

 その様がその場で見たかの様に思い浮かぶ。佐藤も高見も大変だったなぁ……こんなのがいて。それにしても本当に生えてないのか……

「ほらほら、妄想してないでいいからさっさと行こ。サチが待ってるよ。あと松来先生も」

「妄想させるような事をお前が言ったんだろ。ってか、嫌な事思い出させるなよ」

 和海に促され、残りの道程を軽く走っていく。流石に全力疾走は疲れるし、かと言って歩いていったら松来先生の印象が悪い。まあ、どっちにしろ怒られるんだけど、怒られ方をちょっとは軽くしておこうという打算の結果だ。

 

 

「遅い! 何をしていた!」

 そして、一限の途中から教室に入った俺には案の定、松来先生の雷が落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、酷い目にあった」

「おっつー」

 昼休み、職員室から戻った俺を和海が出迎えてくれる。っていうか、俺だけ怒られるのは不公平だ。和海のせいなのに。

「なによー、敦だって乗ったじゃーん。気持ちよかったでしょ?」

 気持ちよかった事に関しては否定ができない。互いに知らない所などないような体だ。俺と和海なら最高のセックスができる。俺と和海の体なら。

「飯どうっすっかなぁ……」

 空腹を訴えてくる体に対し呟く。起きてから食ったのは菓子パン一つだけだし、遅刻だったので途中で買う余裕なんかないし、説教食らってたので購買も出遅れた。まったく、和海のせいだ。

「あの……秋津くん」

 机に突っ伏した俺の耳に小さな声と共にビニールの音が聞こえた。空腹の体に鞭打って頭を持ち上げると、俺の頭があったあたりに有名メーカーの惣菜パンとそれを差し出している佐藤の手が見えた。

 朝の話を思い出す。服を押し上げるこの体の下、一番大切な所は隠されていないという和海の言葉が頭の中で渦を巻き、どうしてもその中身を想像してしまう。だけど、流石に今それを口に出す訳にはいかない。和海じゃないんだし。

「佐藤?」

「これ……食べる?」

「いいのか?」

「うん、わたしはもう食べたから」

「ごめんね~サチー。敦、燃費悪いから御飯食べないと動けないのよ」

 誰のせいでこんなに腹減ってると思ってんだ。

「悪いな。いくら?」

「別にいいよ。捨てるのももったいないし」

「そういう事なら、ありがたく」

 佐藤に向かって合掌をするとパンを受け取り包装を剥がす。出てきたパンを大口を開けてかぶりつくと佐藤は満足そうに自分の席へと戻った。それを見届けて、和海が話しかけてくる。

「ねぇねぇ、敦」

「ん?」

「サチの話なんだけど」

「佐藤がどうかしたのか?」

「サチ、どう思う?」

 は?

「どう思うってどういう意味でだよ?」

 言いながら自分の席へ戻った佐藤へと目を向ける。佐藤は鞄の中から取り出した文庫本のページを捲っていた。

 佐藤はおとなしくあまり自己主張しないのになぜか和海と仲がいい。それについては聞いた事ないがどうなんだろう?

「もちろんそういう意味で。入れたいとかヤリたいとか犯したいとかさ」

「全部一緒じゃねーか」

「サチの体はいいよぉ? あそこはいい感じにキツイし、口もうまいしね」

 口に指先を当て口の端を上げる和海はその指をぺろりと舐めて佐藤を見る。その視線を感じたのか佐藤は頭を上げて周りを見回すが、何も見つけられなかったのか首を傾げながら文庫本に視線を戻した。

「そういう意味でだったらまあ、興味は湧くわな。あの大きさだし。お前よりも揉み応えはありそうだ」

「敦ならそう言うと思ってた。敦、揉むの好きだもんね」

「何を人聞きの悪い事を言うんだよ。俺は揉むのが好きなんじゃなくて押し返される感触とその際の相手の反応が好きなんだよ。だから大きいだけじゃだめなの」

「うっわ、ひくわー。最低な事を言いだしたよ」

 和海は声を上げて笑う。ひくわーとか言いながら全く引いてない。むしろ喜んでいる。

「後お前が言ってた生えてないっていうのは気になるな。別に生えてないあそこ自体はお前ので見たことあるけどあの体で生えてないっていうのは見てみたいと思わなくもない」

「まじひくわー。サチ逃げてー、ここに性犯罪者がいますよー、襲われるよー」

「襲わねーよ。ってかお前がこの話題振ったんだろうが。何だってこんな話になってんだよ」

「え? そりゃあだって面白いから」

「だよなー。お前はそんなんだよなー」

 そう、こいつの質の悪い部分は常に自分の楽しさを最優先にしている事だ。そのためには相手が親友だろうと両親だろうと、恋人――こいつにそんな存在が現れるとは思わないけど――だろうと気にせずに振り回して陥れる事だろう。俺も佐藤もそんな和海に振り回されていた側だから断言できる。まあ、俺に関しては一緒に悪ノリしてるわけだが。

 だって、こいつのノリ楽しいし。たぶん、佐藤も似たような理由だろうな。割と碌でもない事に振り回されてるけど。

「で、いつやるの? 手伝うよ?」

「だからやらねーよ。大体、佐藤だって俺の事何とも思ってないだろ?」

「ふーん、サチが好きだって言えばいいんだね?」

 また碌でもない事を考えてんだろうな。

 悪い貌で嗤う和海をよそに始業のチャイムが鳴り響き、そのチャイムに紛れて俺の腹は足らないと自己主張していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……ぁ……んぅっ………」

 放課後、いつの間にか消えてた和海を探しがてら鞄を取りに教室に戻ると、喘ぎ声が零れていた。中を除くと夕日の逆光に照らされる教室で一つの影が蠢いていた。

「んくぅ……気持ち……いいっ……あぅんっ」

 その影は机に腰を擦り付けるように動き、湧き出る快感を隠しているつもりなのかとぎれとぎれの声を漏らす。時折深く感じるのか体を小さく震わせた。

「もっと、もっとしてぇ……秋津くぅん……んぅっ!」

 俺としてる事でも妄想してるのか机の角に腰を擦り付ける。敏感な所に当てているのか体の震えを大きくしながら口に手をあて声を潜める。走り抜ける快感に背を反らした影は呼吸を乱しながらこっちを見る。

「あは、秋津くんだぁ……」

 蕩けるような声を上げてこっちを見た影の正体は佐藤だった。その瞳は俺を認識すると潤みを増した。

 風に煽られる草木の様に体を揺らし俺の方へとにじり寄ってくる。呼吸は荒れ、全身から立ち上る気配がそこで佐藤が何をしていたのか教えてくれた。

「さ、佐藤」

 佐藤の足に夕日があたり、そこに伝っていた銀の雫を反射している。そう、佐藤は俺の机で自慰をしていたのだ。佐藤の服は昼間と同じにボタンは止まっているがそのままで崩れていて、服の上からその大きな胸を弄っていたことが見て取れる。その様が佐藤の体に得も言われぬエロさを醸し出していた。

 佐藤の指が自身の股間へと伸び、そこからくぐもった水音が零れた。

「ほら、秋津くん……見て」

 股間から戻ってきた佐藤の指には粘性の高い液体がまぶされて糸を引いている。

「『あたしのここ、こんなに濡れてるよ……秋津くんの事を考えたらこんなになっちゃうの……』」

 指についた液体を舐めとり、佐藤は上目遣いで熱い吐息を吐いた。

「『この体は秋津くんの自由にしていいんだよ? だって、あたしは秋津くんの物だもの……』」

 そう言って、佐藤は上から順にボタンを外す。服の下からその豊かな胸を取り出し、腕で寄せて見せつけた。

 そんな佐藤の痴態にどうするかをちょっとだけ悩んで、チョップをすることにした。

「痛っ」

「痛っ、じゃねーよ。何してんだよ和海」

「あ、バレた?」

「バレない訳無いだろ。何年の付き合いだと思ってんだ。お前なんてパッと見でわかるんだよ。で、お前は佐藤に憑依して何してんだ?」

「何って、そりゃあ敦を待ってたのよ」

 佐藤の体で声を出す和海。その答えになんて答えればいいのか悩む。

「ほらほら、見てよこの体。この体を好きにしてもいいんだよ?」

「好きにしてもいいって大丈夫なのか? 記憶とか」

「ああ、それなら大丈夫。中に入るとその人の魂かなんかに命令できるみたいでさ、もう命令してあるからあたしが抜けてもサチの体は自由にできるよ? 何だったら後で記憶を消してもいいし。ほら」

 そう言って和海は佐藤の体から抜け出る。瞬間、佐藤はふらついたが軽く頭を振ると自身の状態に気づいた。

「えっ、ええっ、なにっ!? きゃっ、秋津くん!?」

 混乱したまま俺の存在に気づいた佐藤は慌てて胸を隠し、体を縮めてしゃがみ込む。そして俺に背を向けたまま小さく動いていく。おそらく和海によって出された胸を服の中へと収めているんだろう。

「なんでわたし教室にいるの? なんで胸出してるの!? 秋津くん……見た?」

 ちらっとこっちを向いて俺に問いかける。泣きそうになっているその顔になんだか悪いような気もしてきた。悪いのは俺じゃなくて和海なんだけど。

「悪い、ちょっとだけ」

「ちょっと? ガッツリ見てた気がするけど?」

 和海が余計な茶々を入れてくる。うるさいと怒鳴りつけてやりたいけど、流石にそれは佐藤が不審に思いそうだからやめておく。

 佐藤の性格からして怒らないとは思ってはいたが、佐藤の口から出たのは思いも寄らない言葉だった。

「なんで謝るの? わたしの体は秋津くんのものなんだから自由にしていいのに」

 そう言って佐藤は立ち上がる。服を整えた佐藤は普段どおりなのだが言っている内容が普段の佐藤からはあり得なかった。

「自由って……佐藤はそれでいいのか?」

「いいも何もわたしの体はわたしのものじゃなくて秋津くんのものだもの。わたしが嫌でも仕方ないよ。恥ずかしいけど……」

「ほらね?」

「…………」

 横で和海がにやついているがそれにかまっていられるほどの余裕がない。それほど佐藤の言葉は破壊力が高かった。俺の理性は一瞬にして欲望に駆逐されていた。

「触っていいのか?」

「いいよ。わたしの体秋津くんの自由にして」

「じゃあ、触るぞ」

 言われるがままに手を伸ばし、佐藤の象徴と言ってもいいその大きな胸を服の上から鷲掴みにする。

「んっ」

 俺の手が触れた瞬間、体を震わせる佐藤。その胸は服の上からでもわかりやすいくらいに押し返してくる。中身の詰まったとてもいい胸だというのがよくわかった。だが、これだけいい胸を服の上からで済ませるなんてありえない。

「服、脱がすよ」

「……っ、………ん」

 佐藤は顔を真っ赤にしながらも俺の手に逆らわず、されるがまま、いや、むしろ自分から導くように上着のボタンを外していく。一つ、また一つとボタンを外し、ブラウスの前を開ける。そこには先程も見た大きな胸が隠されていた。手を佐藤の背中へと回しホックを外す。ブラジャーから開放された胸は更に大きさを増したように見えた。

「すっげ……」

「うゎぁ……」

「ゃぁ……」

 俺の自由にするのは当然だが、そのために裸を見せてるのは恥ずかしいらしい。俺の言葉に佐藤は耳まで真っ赤にして顔を俯かせた。

 改めて佐藤の胸を掴む。文学少女で運動なんて体育くらいでしかしていないはずの少女の胸はみっちりと詰まっていて、且つその重さにも負けていない。下から持ち上げるようにするとその重さをダイレクトに感じられとても気持ちよかった。

「んぅっ……ぁぁ……はぁぅ……すごっ……いぃ……」

 俺が胸を揉む動きに合わせて佐藤は体を跳ねさせ身を捩る。その仕草がとても新鮮でもっともっと触っていたくなる。

「どう、佐藤? 気持ちいい?」

「そんなっ……ことぉ………んぅっ、いえっ………ないぃ……」

 熱い吐息を零しながらも佐藤は首を大げさにふる。自由にしていいのは体だけなので脳内で思った事とかは対象外らしい。

「和海」

「おけ、任されたー」

「か、ずみ……ちゃ……んぅっ!!」

 和海が佐藤の中に入るのと俺が佐藤の胸を強く揉むのは同時になった。跳ねるように体を震わせ、俺の手を巻き込むように体を縮こませた。

「は……ぁ……和海ちゃん。そう、和海ちゃんって言った。秋津くん、どういうっ……ことぉ……ぅ。秋津くぅんんっ、おし、えてぇっ………和海……ちゃんはぁっ、どうっ、なったのぉっ……」

 俺の言葉を聞いたのか、佐藤は俺を問い詰めようとして体を走る快感に勢いを失わせる。

 だけど、それでも質問をやめようとしないのは佐藤が和海に入られるのに慣れたのか、それとも佐藤はそれほどに和海を想っているからなのか。

「教えても何も知っての通りだよ、佐藤。和海はまだ寝てる。佐藤だって見舞いに来ただろ」

 ある日、いつまで経っても和海が俺を起こしに来ないから加山家へ行ったら、和海が自室で倒れていた。すぐさまおじさんたちと救急車を呼んだのが功を奏して、和海は何とか命だけは助かった。しかし、意識は戻らなかった。

 それが一応の事実だ。そういう事になっている。しかし、本当はもうちょっと違ってる。

 まず、あの日も和海は俺を起こしに来た。いつもの通りにやかましい声で。そして俺を起こしたかと思ったらいきなり『あたし死んじゃった。てへ』とかいつものノリで言ってきた。詳しい話を聞いて和海の部屋へと駆け込むと、和海が言った通りの場所で言った通りの姿で倒れていた。そうしておじさん達を呼んだんだが、呼んだ時も救急車で搬送された時も、その後病院のベッドで寝かされている時も和海は俺の隣に浮かんでいた。

 しかもその姿はおじさんやおばさん、佐藤とかには見えないらしく結果俺が四六時中和海の相手をする事になった。それこそいつも通りだけど。

 和海が誰かに憑依できるって知ったのはつい最近だ。いい加減に欲求不満が溜まってきてたのか和海はセックスしたいと騒ぎ出し、体がすり抜けるのにも構わず必死に俺の服を脱がそうとしていた時だ。浮いているのにどうなったのかわからないが、バランスを崩しつんのめった和海が俺と重なった時に和海が俺の体の中へと入ってきた。和海は憑依するとその体が受けた感覚も感じられるらしく、一緒にイッたりもした事はあったがやっぱり女性の体の方がいいらしい。佐藤に憑依して俺に迫っているのが良い証拠だ。

「………」

 俺の説明に納得がいっていないのか、佐藤は快感に震えながらも強い意志の籠もった瞳で俺の事を見つめる。だけど、そう言われても事実は事実だ。和海が幽霊になってここにいるって言っても信用してくれるともあまり思わないし。まあでも、それは別に関係ない。

「納得行かない?」

「『ううん、だってあたし秋津くんのこと信用してるから。秋津くんの言う事なら信じるよ。それに秋津くんになら何でも正直に答えてあげる』……っ、わたし……何を?」

 和海が認識を変えるしな。

「佐藤」

「あ、秋津くんぅっ……」

「佐藤、教えてくれよ。気持ちいい?」

「んぅっ……んっ、うんっ。気持ちっ、いいっ……」

 佐藤は体を震わせながら何度も頷く。髪を振り乱しながら体を反らせる佐藤を後ろから包み込み、胸を揉みながらもう片方の手を下へと滑らせた。

「もっと気持ちよくしてあげようか?」

 質問をしておきながら佐藤の答えを待たずにスカートの中へと指を入れる。しとどに濡れているあそこから溢れる液体が指に絡まり激しい水音をかき鳴らした。

「あぁっ………、んっ、すごぃぃ……」

「すごい濡れてるな。どうしてこんなになってるんだ?」

「それはっ……秋津くんっに、……されてるからぁっ……秋津くんのぉっ、こと、考えるとぉっ、そぉっ、なっちゃうっ、のぉ! いっ、くぅ……!」

 何度もあそこをかき回し、止めにクリトリスを強く摘む。その瞬間、佐藤は体を硬直させイッた。数秒後脱力して俺へともたれかかるが、断続的に体を震わせ荒い呼吸を繰り返す。

「ほら立って」

 生まれたての子鹿のように足を震わせる佐藤を何とか立たせて近くの机へと寄りかからせる。そして、後ろから佐藤のスカートを捲りあげ、盛大に濡れているショーツを膝まで下ろした。

「んぅっ……あ、秋津くんぅっ……恥ずかしぃっ……よぉ」

 そう言いながらも佐藤は抵抗せず、されるがままに俺に尻を向けている。

「マジなのかよ……」

 後ろからだからちょっとわかりにくいけど、俺の前に晒された佐藤のあそこは和海の言っていた通りに何も生えていなかった。

「そう言ったじゃん」

 佐藤の体から和海が抗議してくるが、正直和海の言葉は話半分で聞いておくのが丁度いい。それは俺や佐藤が和海の相手をする上で培った経験則だ。だから、実はあまり信じていなかったけど現実として目の前に晒されたら話は変わる。

 俺はしゃがみこんで佐藤の体を下から覗き込む。すでに薄暗くなっているのでわかりにくいが佐藤のあそこは生えてないからかとても綺麗なピンク色をしていた。

「うわ、本当に生えてない。この年にもなって生えてないとか本当にすげえな」

「ゃぁ……」

 消え入りそうな佐藤の声。その声に反発するかのようにあそこから溢れる液体はその量を増した。

「なんだよ、見られて感じてるのか?」

「ぅん……秋津くんに……見られて……んぅっ!? 秋津っ、くぅんっ」

 堰がないため簡単に氾濫しているそこに指を突っ込みかき回す。源泉はそれだけで湧出量を増やし大洪水になった。

「んぅっ、あんっ、こえっ、でちゃうっ……!」

 もはや体を支えていられない佐藤は寄りかかるどころか机に覆い被さって全体重を預けている。足は床を離れ、俺の指の動きに合わせて震わせていた。

 佐藤のあそこは指を飲み込み、中へ中へと蠢いていく。その中はとても熱くそして柔らかかった。

 佐藤の中から指を引き抜く。絡みついた液体によりふやけた指を荒い息を吐く佐藤へと見せつけた。

「ほら、佐藤の中こんなに濡れてる。もう入れていいよな?」

「……ん」

 力が入らないのかほんの僅かにだけ頷く佐藤。俺は手早くズボンを下ろすと力強くそそり立っているあれを取り出し佐藤のあそこへと擦り付ける。溢れ出す液体をあれにまぶし、佐藤のあそこへと狙いを定めた。

「いくぞ」

「んーっ!?」

 俺の先端が佐藤のあそこに入ったのを確認すると佐藤の腰を掴み、一気に押し込んでいく。佐藤の中はとても熱いものの、指を入れた時とは異なり途中で飲み込むのをやめてしまった。

「あれ?」

 覚えのある引っかかり。過去に和海で経験したそれを思い出し、思わず叫んでいた。

「和海ぃ! 佐藤、処女じゃねーか!」

「あれぇ、そう言わなかったっけ?」

「言ってねーよ! むしろ、ヤリマンみたいな話し方だったじゃねーか!」

「ま、でもいいじゃん。処女だって」

 和海はふらつきながらも佐藤の体を動かして俺のものを抜くと、机の上で仰向けになる。

「ほら、サチの初めて、絶対気持ちいいよ? 大丈夫大丈夫『あたし、とても敏感だから初めてでも快感しか感じないよ』。ね、敦のちんちん、またあたしに感じさせてよ」

 そう言いながら右手で胸を揉み、左手で佐藤のあそこを開く。完全に出来上がっている佐藤の体はそれだけで快感に打ち震え、中から湧き出る液体がどんどん溢れて机の上に水たまりを作っていた。

 だからこいつの言葉なんて話半分に聞いてればいいんだ。

 大きくため息をつくが、このまま辞めるなんて言う選択肢は俺にも和海にない。

 改めて佐藤のあそこへとあれを突き立てる。

「いくぞ、和海」

「いつでもどーぞ、んぅっ」

 閉じられた扉をこじ開け、強引に佐藤の中をかき分けていく。何年かぶり、二度目の感触を感じた。佐藤もその感覚を快感として感じさせられ、体を大きく震わせる。

「あああああっ!?」

 入れただけでイッたのか、佐藤は絶叫をあげた。しかし、ちゃんとあそこは力強く締め付けてくるし、ちょっとだけ引いたあれには処女の証である赤いものが滲んでいた。

 和海の行った通りに快感だけを感じているのだろう。佐藤は腰を動かす毎に体を震わせ、俺の体を強く抱きしめた。

「すごっ、いぃっ、敦、いいよっ、いいっ!」

 抱きしめるだけではなく、俺の動きに合わせて腰を振ってくる。俺を知り尽くしたこの動きは和海だな。和海はともかく佐藤の方は快感すらも初めてなんじゃないだろうか?

 腰を置くまで押し付け佐藤の奥を擦る。

「あーっ、あーっ、あぁぁぁぁぁっ」

 大きく体を震わせて、佐藤は絶叫を上げ続ける。俺を抱きしめたのはおそらく和海だろうが本能的にだろうか、佐藤も俺を抱きしめ続けた。

 腰使いは和海の動きだが、その中は紛れもなく名器だった。蠢き、咥え込むあそこはまるで手も使ってるかのように繊細な動きをし、手前と奥で違った力加減を加えてくる。処女のはずのそこは何度も経験を重ねた和海がやっと到達した域に最初から到達していた。外の腰使いではなく中の蠢き、この点において佐藤は天才と言って間違いなかった。本人はそんな事言われても真っ赤になるだけだろうけど。

 それが、和海の熟練の腰使いを借りて完成されていた。おそらく、数年後に佐藤が辿り着くであろう性技。いや、佐藤の性格から考えると辿り着かずに人生を終わりかねないその域を初めてのセックスで披露していた。気を抜けばあっという間に絞り出されてしまう天性の淫魔を和海は見抜いていたのか。

 

 

 ……そんなわけないな。偶然だ偶然。

 

 

 そもそも佐藤と俺達は小三からの付き合いだ。流石に初めてやる前からの付き合いの佐藤の具合とかわかってたらエスパーだ。いや、和海は現時点で超能力者だけど。

 佐藤のあそこから伝えられる快感が俺の中を走っていく。全身が総毛立ち、既に厳しかった限界がもう超えることを脳に伝えた。

「和海、出すぞっ!」

「いっくうぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 佐藤の奥深くへと突き込み、中に欲望を開放する。それと同時に佐藤も絶叫を上げ、力いっぱい俺を抱きしめた。

 互いに体を震わせる。そうして数秒、圧倒的な快楽の奔流に揺蕩っていた俺たちはゆっくりと現実に帰ってきた。漂う倦怠感の中、佐藤の中からあれを引き抜く。佐藤の初めての証、快楽の証、そして俺の絶頂の証が混じったものが俺のあれに絡みついていた。

 佐藤、いや和海はよろけながらも体を起こし、俺の前にしゃがみ込む。そして、躊躇なくあれを口に含んだ。

「あむ……」

 佐藤の小さい口を無理に開け、俺のものを根本まで咥え込む。そのまま舌を動かし、絡みついたものを丁寧に拭っていった。その頭を撫でる。それが幸せなのか佐藤は目を細め、頭を動かしながらも受け入れていた。

「ん、ちゅぅ……んぅ」

 和海の舌技が俺のものを綺麗に舐めあげていく。何度も積み重ねたそれは俺を興奮させるのも逆に興奮させずに汚れだけ舐め取るのも自由自在だった。

 数回頭を動かして、最後に大きく飲み込んでから佐藤は口を離した。

「はい、終わり」

 和海はそう言って立ち上がる。口をハンカチで拭い、佐藤の服を整えていく。

 そんな佐藤の姿に倣い、俺もズボンを穿き直した。

「で、どうするんだ?」

「どうするのがいい? このまま夢に思わせるのも、サチを絶対服従の奴隷にするのも、覚えさせたまま誰にも伝えられないようにするのもできるよ?」

「俺に聞くのかよ……」

「そりゃそうよ。だって、あたしは別にどうなっても構わないもん。何だったらこのまま全てを覚えたさせたまま帰してもいいんだから。そうなったら敦はどうなるのかなぁ?」

「怖い事言うなよ……わかったわかった。じゃあ、今回の事は全部忘れさせるか。佐藤の体は魅力的だけど、別にヤリたくなったらまた入れるだろ?」

「敦も悪よのぉ」

「お前に言われたくねーよ!」

「あははは」

 和海は笑いながら服が整ったことを確認する。佐藤の体に異常が見当たらないのを確認すると、佐藤の席に座り軽く咳払いをした。

「ん、んんっ。『あたしは放課後、自分の机で眠ってしまった。秋津くんに起こされたらもうこんな時間になっていた。眠っていたのでここで何があったのかわからない』。うん、こんな感じかな?」

 そう言って和海は佐藤の中から飛び出した。そうして和海が俺の隣に戻ると佐藤は目を何度か瞬きして頭を軽く振った。

「あれ? わたし……あ、秋津くん」

「ん、どうした」

「ううん、寝ちゃってたみたい……もうこんな時間!? 疲れてるのかなぁ?」

「和海の件もあってストレスが溜まってたんじゃないか? 今日はもう帰った方がいいぞ」

「そう……だね。うん、そうする。って、なにそれ!?」

 佐藤は先程自分が作った水たまりを見つけて驚いている。本当に驚いてるみたいだし、ちゃんと覚えてないようだな。ってか、これも気づかないようにするか先に後始末しとけばよかったんじゃないか?

「あっはっは、忘れてたー。まあ、なんとか辻褄合わせてよ」

 隣で和海が無責任に笑いやがった。まあ、俺も忘れてたけど。

「ああ、これな。来たらこうなってた。佐藤は気づかなかったのか?」

「うん……わたし、ずっと寝てたから……でも、こんなのできるような事が起こってたのに寝てたなんて……」

「それだけ疲れてるって事だろ? これの始末は俺がやっとくから、佐藤はさっさと帰った方がいいよ」

「あ、うん、そうする……ごめんなさい」

 佐藤は机にかかっている自分の鞄を取り立ち上がる。

「謝る事なんてないって、ほらほらさっさと帰る」

「うん、じゃあ、また明日」

「おう、また明日」

 俺に促され、佐藤は頭を下げるとそのまま教室を出ていく。そうして教室には俺一人残された。

「ね、サチ良かったでしょ?」

 いや、正しくは俺と和海がだったな。

「ああ、すっげー良かった。お前とはぜんぜん違うな」

 得意そうな笑みを浮かべて訪ねてくる和海に俺は答えた。今までは和美とだけだったから違う体がこうも違う感触だとは思わなかった。

「むぅ、それはそれで複雑な気分」

「そういうなよ。佐藤のほうがいいって言ってるわけじゃないんだしさ」

「うそつきー。あたしとやってる時より感じてたじゃない」

「確かに佐藤の中はとんでもなかったけど、それでもお前のほうが俺はいいわ。佐藤とだと多分俺が保たない。それに中の具合はともかく技術的なのはお前の手柄だろ」

「まーね、サチとは年季が違うから」

 そう言うと和海は得意そうに胸を張った。張る胸は佐藤と比べるべくもないけど。

「それは誇っていい事かどうかはわかんないけどな。俺もだけど」

 俺と和海の回数はイコールな上に三桁以上だ。いや、今日の事をカウントすると俺のほうが一回多くなるんだけど。それとも今回の回数も和海にカウントしていいんだろうか?

「それにしてもお前すげーな。佐藤以外にもこういう事できるのか?」

「んー、どうだろ? 敦にも入れるわけだし、サチにも入れたから、入れるんじゃない? 今度誰かで試してみようか? 誰でもいいよ? 敦が選ぶ? たまちんとかナナナとか葉月ちゃん先生とか松来先生とかにする?」

「がっつきすぎだろ。まあそれは今度な。とりあえず今はこれの後始末しようぜ」

 そう言って俺は目の前に広がる水たまりに目を向ける。

「いやー、すごい事になってるね。敦やりすぎ」

「お前だろ!」

 掃除用具入れから雑巾を取り出して机と床を拭く俺を尻目に馬鹿笑いする和海の声が俺にだけ響き渡った。

<幼馴染は性浮霊 続く>

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