Wheel of Fotune 第1節

第一節

 まあ、人の人生なんて色々で、波乱万丈な人生もあれば、平凡に一生終える奴もいる。
 おいらの場合、自分では別にたいした人生だとは思っていない。おいらにとってはそれが普通だからだ。まあ、他人からはどう見えるかは様々だと思うけど。
 おいらが今回こんな話をしようと思ったのは、いわゆる警告であると考えて欲しい。
 この話を聞いて、おいらがどれだけ素晴らしく、強いかと言うことを知ってもらいたい。そうすれば敵も、これからおいらの敵になる人も、変な考えを捨てるであろう。まあ、捨てなくてもいいけどね。でも、愚かにもおいらに喧嘩を売った場合は、とても不幸な事が起こるのは覚悟してもらいたい。

 まず、おいらこと 橘 勘九朗(たちばな かんくろう)が自分の特異性に気付いたのは十に少々毛が生えたぐらいの頃である。
 家庭は四人家族で不住ある生活を送った。何しろ貧乏だから。おいらの家はへっぽくて、ぼろい。風が吹けば倒れそうになる時代遅れも甚だしいボロ家だった。まあ、今ではお屋敷の、家族も六人だがその事については順を追って話そうと思う。
 とりあえずその頃は、親父、長女 朱美(あけみ)、次女 静香(しずか)、そして末っ子のおいら勘九朗が橘家の面々だった。
 おいらが詳しく話しても言いのだが、少々、面倒くさい。おいらは忙しい身なのさ。だから今回はその十プラス毛の頃のおいらに話してもらおう。
 はい、ではよろしく。

 はいはい~~。かわりました、十毛こと勘ちゃんです。
 ぼくが最初にじぶんが変だなぁ~、って感じたのは女の子とぼくの違いを強く知ったときでした。
 ぼくはおとさんや朱ちゃん、静ちゃんに女の子みたいだねぇ、とよく言われていました。
 たしかにぼくは男の子の中で遊ぶより、女の子とおままごとしているほうが好きでした。
 その日も、学校でぼくはおとさんになって、妻子持つ身をえんじていたのでした。
「パパ、おかえりなさい」
「おかえりぃ~~」
「にゃぁ~」
「ただいま~」
 ぼくは三人の女の子にあいさつして、机のうえにすわりました。お母さん役のタマちゃんが、笑いながらぼくの近くにわりばしを置きます。
「パパ~、ごはんにする? おふろにする?」
「う~ん、おふろ」
「じゃあ、背中を流しますね」
「ぱぱぁ、あたしもはいるぅ」
 こんな風にぼくらはじゃれながら、お風呂のまねごとをしていました。猫の役をやっているミヨちゃんだけが不満そうに鳴きます。
「ねぇねぇ、わたしこんな役やだよ。つまらないんだもん」
「だめだよミヨちゃん、しゃべったら」
 子供役のサッちゃんが言います。それでもミヨちゃんは不満そうです。
「そうだよ。ミヨちゃんは今“猫のピータなの、ちゃんと鳴かないと駄目”なの」
 ぼくが言うとミヨちゃんはびくっと震え、そのままうずくまりニャァニャァ鳴き始めました。
 ぼく達三人は服をぬいで、教室のはじで仲良く肩をならべました。一緒に湯船につかっているつもりです。
 そこで、あることに気付き、ぼくはすぐさまその疑問を口にしました。
「ねぇ、タマちゃん。なんで、お胸が膨らんでるの」
 いままで見てたのとちがい、タマちゃんのむねはうっすらと膨れていました。
 大人の女の人とクラスメイトの女の子はちがう者と考えていたぼくにとっては、それがとても不思議だったのです。
「うん。お胸は膨らむものなんだよ~」
「え~、うそだぁ」
「ほんとだよ」
「にゃ~」
 サッちゃんと、猫のピータも話に入ってきました。でも、ぼくはそんなこと信じません。
「嘘だよ、ぼく膨らまないもん」
 ぼくが言うと二人は顔を見合わせ、くすくすと笑いました。
「だって、勘ちゃん、オトコの子でしょ」
 股でぷらぷら揺れるおちんちんを指差し、嬉しそうに言うのです。
 それでぼくは男の子と女の子の違いについておかしいなと思い始めました。たしかに二人は女の子です。おちんちんがあるところに変なたて割れがあるだけです。ピータは服をぬいでいませんが、昔見たときたて割れでした。
「お母さんが言ってたから本当だよ。それよりもおままごと続けようよ」
 ぼくは頭の中がいっぱいで、おままごとなんてどうでもよくなりました。
「あ、こら、ピータ、おしっこしたらだめだよ」
 ピータがふるふるして、水たまりが広がっていきます。
「ピータ、めっ! もう、おしっこしたらだめだよ」
「にゃぁ~~」
 ピータは砂をかける動作をし、スカートを濡らしたままよつんばで逃げていきます。ぼくは気にせず、その後はずっと男の子と女の子の違いを考えてました。

 家に帰って早速、朱ちゃんに尋ねました。朱ちゃんはぼくと六つも年がはなれてていろんな事をとてもよく知っています。ぼくは朱ちゃんが優しくてとっても好きです。
「男の子と女の子ってそんなに違うの? なんで、そんな違いがあるの?」
 朱ちゃんは困ったように口元だけで笑って、ぼくの頭を撫でます。結局、答えはもらえませんでした。
「なんで、おちんちんは女の子にないの?」
 と、今度は静ちゃんに尋ねました。
 朱ちゃんと二つ違いのお姉ちゃんは、いじわるそうに笑ってぼくの頭を軽くこづきました。
「勘九朗にはまだ早い」
 なんだそうです。
 おとさんにも聞こうと思ったんですが、その日は真っ赤になって帰ってきて、家の中で散々あばれていたので結局聞けずじまいでした。
 むしろ、ぼくはおとさんに叩かれた頬の痛みでそんな疑問どうでも良くなり、朱ちゃんに抱きしめられたまま泣いてねました。

 それからしばらく経って、そんな疑問はきれいさっぱりあたまから消えた頃です。
「わたしね、聞いたよ、勘ちゃんの気にしていたこと」
 ぼくは何の事かわからなくて、タマちゃんの顔をじっと見ていました。タマちゃんは少し赤くなりながらも、答えてくれます。
「わたしと勘ちゃんとの違いはどうしてかってこと。お母さんがね、オトコの子とオンナの子は、せっくすするから違うんだって」
 ぼくはさらにわけがわかりません。
「せっくすって何?」
 ミヨちゃんもわからないみたいです。タマちゃんは得意げな顔をして口を開きました。
「あのね――――」
 そのとき、チャイムが鳴って、先生が入ってきました。
「ざんねん。後で教えてあげるね」
 先生がなにかを喋っています。そんなものは耳に入りません。このちょっとした謎解きにわくわくして、答えがすごく待ち遠しかったです。

 放課後。誰もいない教室にいつもの仲良し四人組みが集まります。
 おおきく胸を張って、いつもは先生がいる場所に立つタマちゃん。ぼくとミヨちゃん、さらにぼく達よりもさらに小さいサッちゃんが仲良く並んでタマちゃんの前に座っています。
「えっとねぇ、せっくすは、オトコの子のおちんちんをオンナの子のお股にいれるんだって――――」
 タマちゃんは自身満々におしえてくれます。ぼく達は興味しんしんに聞きました。
 話をようやくするとこうです。せっくすとは子供を作るために必要らしいです。ほんとうに愛し合っている人じゃないと出来ないらしいです。
 ぼくは信じられませんでした。なぜなら、昔、コウノトリがぼくを連れてきたと朱ちゃんが言っていたからです。しかし、話を聞いているうちにどうしてか体が熱くなっていくのを感じました。
「ねぇ、なんかよくわからないよ」
「え~」
 ぼくが言うとタマちゃんは泣きそうに顔を歪めました。
「でも、お母さん、これしか教えてくれてないよ」
「じゃあさ、試してみない。そしたら、わかると思うよ」
 ぼくの提案に三人ともすぐに反応しました。当然です。三人ともまだ子供でした。まあ、ぼくもだけど。
「だめだよ。愛し合ってないと出来ないんだよ」
 皆口々に反抗します。
 ぼくは少し腹が立ちます。ぼくの心臓は新しい遊びをやりたくて高鳴っていたのです。だから、そう、また、いつものとおり、ぼくは命令したのです。
「みんなさ、“ぼくのこと愛してる”よね?」
 三人はびくっと震えます。頬を真っ赤に染めて頷きます。
「“なら問題ない”よね」
 ぼくは三人が断れないよう、さらに強く言いました。

 ミヨちゃんに裸になるよう命じました。タマちゃんには間違ってないか見てもらっています。何だか悪いことをしている気がするのでサッちゃんには廊下で見張っててもらいました。
 ミヨちゃんをかえるの解剖のごとく机にねかせ、股の間を観察します。そんなに近くで見たのは初めてでした。
「ねぇ、勘ちゃん。やっぱりやめよう。なんか、わたし、……こわいよぅ」
 震えた声でミヨちゃんは言います。何だか泣いてしまいそうでした。
「だめだよ、“ミヨちゃんは怖くなんてない”の、怖いなんて思わないの」
 一度おおきく震えた後、ミヨちゃんはもう何も言いません。ぼくは胸がどきどきして、自分が焦っていることが解り、不思議になりました。
「タマちゃん。どこに入れればいいか、わからないよ」
「ほんとだ。穴、どこだろう」
 股を見ながら、ぼく達二人は頭をひねりました。割れ目の先から指を下げて穴をさがします。
 指がだいぶ後ろ、お尻の割れ目まで来たときタマちゃんが手を叩きました。
「おしっこの穴じゃちっちゃいから、きっと、これじゃないかな」
 それは三つの穴の一番後ろ、お尻の穴でした。
 すっかり怖くなくなったミヨちゃんもニコニコしながら言います。
「とりあえず入れてみたらいいよ。何かわかるかもしれないしね」
 積極的なミヨちゃんの言葉にぼくはズボンを下ろしました。おちんちんはいつもと形が違い、上を向いて大きくなっています。今までも時々こうなりました。ぼくは大きいままで入るのか少し心配になりました。
 それを見たタマちゃんの息を飲む音が聞こえます。
「あれ、入らないよ」
 ぼくがどれだけ力を込めても、大きさが違うのか、おしりの穴にぜんぜん入っていきません。おちんちんが痛かったです。
「……穴が違うのかな」
 焦っていたぼくはさらに力ずくで入れようとします。
 その時です。
「勘ちゃん。来た」
 サッちゃんが小さく声をあげました。ぼくは何のことだかわかりません。むしろ、行為をじゃまするサッちゃんをにくたらしく思いました。
 廊下に顔を向けながら、サッちゃんがさらに声をあげます。
「せ、先生だよ。おこられちゃう」
 驚きにいきなりのどがくっ付いたようでした。ぼくは跳ねるようににズボンを履きました。
 後ろでは、タマちゃんが困ったようにぼくを見返します。怖くなくなっているミヨちゃんは変わらず裸で寝そべっています。この場で助けを求めれる人はだれもいません。
 すごく長い、一瞬の間です。ぼくはどうしようもなくて、どうしたらいいのかわからなくて、必死に息をとめていました。それで先生がぼくに気が付かなくなるわけでもないのに。
「沙耶ちゃん、もう下校時間だよ」
 廊下から聞こえてきたいつも通りの優しい声は、なぜだかその時はひどく恐ろしかったです。
 泣き虫のサッちゃんが泣き出しました。
 心臓がはねます。サッちゃんの前でしゃがみ込んだ先生の横顔がぼくからも見えます。
「ど、どうかした? どうして、泣いているの?」
 先生から目をそむけて、サッちゃんが助けを求めるようぼくを見つめます。
 そして、サッちゃんを追うように振り向いた先生のひとみと、ぼくの目がぶつかりました。
「あ、あなた達、な、なにをやっているの」
「あそんでいただけだよ」
 答えても、先生はぼくではなくミヨちゃんを見ています。
 裸でミヨちゃんはくすくす笑いました。
「うん、せっくすしてたの」
「な――――」
 先生は青くなって、赤くなって、怒り出しました。
「美代さん、服を着なさい。全員、教室に入って並びなさい。早く」
「先生、どうしておこってるの」
 いつもの先生はとてもきれいなのに、その時だけは物語に出てくる鬼のようでした。先生はぼくをにらみつけます。
「いいから。はやくしなさい」
 ぼく達は従うしかありません。タマちゃんは今にも泣きそうな顔で、サッちゃん泣きながら、ミヨちゃんは笑いながら横一列に並びました。
 せっかくの遊びを中断させられてぼくは少しイライラしています。
「あのね、みんな。その、セ、セックスというのは大人になってからするものなの。だから、みんなはまだしてはだめなの」
「やだよ。ぼく、いましてみたい」
「…………。ちょっと聞いていい? 橘くん、だれが君にこんな事を教えたの?」
「タマちゃんだよ」
 小さく声をあげるタマちゃん。うつむいて泣いてしまった。
「タマちゃん、お母さんに教えてもらったのかな」
「う、うん」
「あのね、みんなが聞いたその知識はきちんとしたものじゃないの。今、そんな事をしたら女の子も、橘くんも、お互いに傷ついてしまうの。みんな、良い子だから解るよね」
「別に傷ついてないよ。“みんな、楽しかった”もんね、そうでしょ」
 三人ともびくん、と震え、いっせいに頷きます。
 満足したぼくは笑顔を先生に向けました。でも、先生はおこったような深いため息をつきました。
「いいから、もうこんな事は大人になるまでしては駄目。いいね」
 その時、ぼくはこの新しい遊びをうしなうのは、ひどくもったいなく感じました。ぼくはすぐに抗議します。
「やだ。ぼくは、せっくすをす――――」
「口答えしない!!」
 ぼくの言葉をかき消すような怒鳴り声に、思わずぼくは泣いてしまいました。
 先生がひどいと思いました。せっかく見つけた遊びを、どうして先生が取り上げるのか。先生はきらいです。
 サッちゃんがぼくと合わせて大きく泣き出しました。なぐさめるタマちゃんとミヨちゃんの声もきこえません。
 泣きながらも誰かが助けてくれることを、誰かが先生をどうにかしてくれることを願っていたのです。愚かなことに、まだ気付いていないのです、ぼくの願いは必ず叶うという事を。
《今思えば他力本願なその願いが、この運命を歩む決定打にしたのではないだろうか》
 その時からでした、あの声が聞こえるようになったのは。

(その歳で幼女レイプ未遂とは、さすがやねぇ)
 男の人のようでかなりの年上に思える声。
 突然、聞こえたそれにぼくは震えました。教室に男の人はいません。でも、その声は耳元で、むしろ、頭の中から聞こえるようでした。
(安心して良いぞ。おいらはおまえの味方だからね)
「だ、だれなの」
 あまりの不気味さにぼくは泣くのを忘れました。
 辺りを見てもやはりぼく達以外にはだれもいません。みんなが驚いたようにぼくを見つめます。耳を澄まして声の出所をさがすぼくには、サッちゃんの泣き声がとてもうるさく感じました。
「サッちゃん、“ちょっと黙ってて!!”」
 ぼくが叫ぶとサッちゃんは言葉を出さず、びくびくと震えながら涙を流します。
(おお! もう能力に目覚めているのか)
「なんなの……、なんなんだよぉ」
「た、橘くん、どうしたの」
 ぼくは泣きながら手足をばたつかせました。しかし、すぐにぼくの手は先生に押さえつけられてしまいます。声は聞こえつづけます。
(おいおい少し落ち着けって。おいらは味方だって言ってるだろ。それよりも、この女をどうにかしたいんだろ)
 わけがわからなくて、ぼくはさらに泣きました。とにかく怖かったです。
(だから、泣くなよ。楽しい思いさせてやるからさ)
「……たのしい、思い?」
(そうだ。とりあえず、目の前の女に言えよ。手を離せってな)
 先生はぼくを押さえつけながら、三人に叫びました。
「誰か、他の先生を呼んできて、早く」
 でも、三人とも動こうとしません。先生はぼくの手首をこわれそうなほど握り締めます。
「い、いたい。いたいよ」
(さあ、言えよ)
「は、はなして。“手をはなせぇ”」
 先生はびくん、と震えぼくの手首を開放しました。そして、おどろいたように自分の手を見つめています。
(よし、次はその女に動くなって言え)
「“先生、動かない”で」
 手を見たかっこうで先生は止まりました。その姿はまるで人形みたいです。驚いたタマちゃんが触れますが、反応はありません。
 ぼくは声をあげました。
「な、なにをしたの」
(おいらは何もしていないぞ。これはおまえがやったことさ)
「ど、どういうこと?」
 慌てているぼくの声はうわずっています。
(おまえにはとてもイカした能力があるって事だ。今まで、ただ何となく使っていたみたいだが、これからはおいらがきちんとレクチャーしてやる。その能力は世界を制覇するんだ。そう、おまえは皇帝、エンペラーなんだ)
「えんぺらぁ??」
 ぼくにはまったく何のことだかわかりません。声は続きます。
(よく頭に叩き込め。おまえの能力は全てを支配する)
「そ、そんなの持っていないよ」
(今まで疑問に思わなかったのか。何でこのガキどもはおまえの言うことを聞くんだ。おまえが頼めば何でもやってくれたろう? それはおまえが支配しているからだ)
「ぼく、良くわからないよ」
(心配するな、おれがきちんと教えてやる。とりあえず、その女に服を脱ぐように命じろ)
「う、うん、わかったよ。先生、“服を脱いで”」
(そうだ。おまえは何をしても良いんだ。おまえにはその権利があるのさ)
 先生は怯えたような表情をしながら、衣服を取っていきます。声が出ないのか、喉をゆらしています。
 なぜだか、服を脱ぐ姿から目が離せません。
「何、先生? 何て言ってるの。声を出しても良いよ」
「いや、体が勝手に動く。何! 何なの!! 橘くん、何をしたの」
 先生の体は女の子と違って、いろんな所が膨らんでいました。でも、ぼくが一番気になったのは、股間に真っ黒な毛がはいていること。
 ぼくは先生に近付き、股間の毛を一本抜きました。先生が悲鳴を上げますが気にしません。その毛はちぢれて、それでいて太かったです。
 だんだんぼくは興奮してきました。そういえば、母親がいないぼくが大人の女の人の裸を見たのはこれが始めてでした。
(お、チンポ立ってきた。って、でも、性交はさすがに早いか。仕方がない。今回は一人エッチをしてもらおう)
「ひとりえっち?」
(ああ、そうだ。先生にこう言え、オナニーしろってな)
「“おなにーしろ”」
 ぼくの言葉に先生は反応して股のところや胸のさきっぽをいじり出しました。
「いや、いやぁ!!」
 その姿は何だかいやらしく、ぼくを興奮させます。仲良し四人組み、みんなで食い入るように見つめてました。
(楽しいだろ、おい。次は先生に犬になれっていうんだ)
「“先生はこれから犬”だよ」
 先生は四足になってわんわん鳴きます。舌を出し、お尻を机の柱にあて、上下に擦りつけていました。
 先生の呼吸がだんだんと早くなります。タマちゃんに目をやると、飛びかかりました。
「か、勘ちゃん。先生を止めて、止めてよ」
(次は先生とガキに気持ちよくなれって言うんだ)
「“先生、タマちゃん、気持ちよくなるんだ”」
 ぼくが言うと二人は呼吸がいっきに激しくなって、腰を振り始めました。先生の胸のさきっぽが立ち、股から粘っこい液体が垂れています。
 タマちゃんは顔を赤くして、今まで聞いた事もないような、甲高い声をあげ始めました。
「あ、先生おもらししてる」
 ミヨちゃんが楽しそうに言います。
(いい感じだな。これで最後だ、二人にイっちゃえと言え)
「“二人ともイっちゃえ!!”」
 その反応はとても面白いものでした。
 二人はがくがくと震え、変な声をあげながらその場に倒れるのです。倒れた後も、おもらししているのか変な液体が床に広がります。
 ぼくの心はすごく嬉しい気持ちでいっぱいになりました。
(どうだ、わかったか。おまえの能力は他人の意思を無視して自分のモノに出来る――――)
 もう、そんな言葉も耳に入ってきません。ぼくはまた叫びました。
「イっちゃえ!!」
 すると今度はサッちゃんもミヨちゃんも、一緒になってがくがく震えます。
(――――って、こら、やめろ、おい)
「イっちゃえ!! イっちゃえ!! イっちゃえ!! イっちゃえ!!」
 ぼくはあまりの可笑しさに笑いました。なにせ、ぼくの一言でみんなの体は揺れまくるのです。ぼくはさらに叫びつづけます。
「イっちゃえ!! イっちゃえ!! イっ――――」
 しかし、突然ぼくの目の前が、ぐるりと暗転します。気付いたときには天井が上に、その場に倒れていました。
(馬鹿が……。力の使いすぎだ。やっぱり、根本から教育してやんないといけないみたいだな)
 頭が痛み、その痛みもすぐに消えます。ぼくの意識はどんどん暗い闇に沈んでいって、目の前は真っ暗です。助けて助けてと声をあげましたが、自分の耳にすら聞こえません。
(ま、安心しろ、すぐに馴れる。この力をどう使うかはおまえしだいだ。何せ、おまえは皇帝なのだからな)
 そして、ぼくの意識は完全に消えました。
 この出来事が、ぼくこと勘ちゃんを、橘 勘九朗を、偶然か必然に、新たな運命に組みこんだのでした。

 はいはい~、と、言うわけで、ぼくこと勘ちゃんの話はひとまず終わりです。この先生達を操った事件はけっこう問題だったんですが、頭の中の声に従いみんなの記憶から消しました。こう言う事も出来るんです。
 おっと。はい、ではそろそろお別れです。未来のぼくが替われって叫んでいます。ではでは、また貴方にあえる日を楽しみにしています。
 ばいばい~~。

 十毛、ご苦労だったな。
 よぉ。おいらのガキの頃の経験はひでぇもんだろ。今思い出すと恥ずかしくてしょうがねぇや。あだ名もカンちゃんだしな、どっかの魔神を呼び出せそうな勢いさね。
 じゃあ、次はおいらの、そうだな初恋の時の話でもしようか。
 笑うなよ。こんなおいらにも純情なときがあったのさ。
 ま、少しつかれたと思うからとりあえず一時休憩にしてやるよ。また後で会おうな。

< つづく >

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