淫麗童子 第Ⅰ章(その5)

第Ⅰ章(その5)

 ドコで狂ったのだろうか…ゴシック調のシルエットが特徴的な校舎の最上部を飾る大時計が未だ7時50分を指し示していた頃…ちょうど小麦色の肌の華奢な『幼い神魔』と所有されて日も浅い長身で秀麗な『雌奴隷』が7階建ての高級マンションを仲良く(?)後にした頃は、彼女の前途には全く問題など無かったのだが…

 チュンチュン…チチチ…♪

 東京渋谷は早朝から青一色の晴天。 渋谷に程近い閑静な小高い丘陵地の一角、広葉樹の大木に囲まれた私立北条女学院の正門前の並木道に新たな麗華が禁断の花園に加わる為にやってきた。

「お客さん…ここが北条女学院だけど、敷地内は特別に許可が無いと入て貰えないんだ。正門近くで良いかね…?」

「あ、はい。ココで結構ですよ」

 へぇ、噂だけは事前に聞いてたケド…随分と厳しい処なンだ…

 留学を終えてイタリアから帰国したばかりの新進気鋭で知られる天才ピアニスト…エリカ・レーマーは、金髪の前髪と黒縁眼鏡で彩られた切れ長の碧眼を車窓越しに懐古主義的な学舎へと向けていた。

「はいよ…っと、料金は見ての通りだ。…でも、お嬢さん…日本語が流暢だね? 何処の人?」

 気の良い初老の運転手は並木道の車道脇へ静かにタクシーを停車させると、四桁少々を表示している料金メーターへ白無垢の手袋に覆われた左手で指差しながら、後ろに乗せた年若い金髪美女に素直な疑問を問い掛ける。

「クス…不思議ですか? そうですよね。両親は二人共オーストリア人で、私も生まれはオーストリアなンです。でも両親の仕事の都合で育ちは殆ど…幼稚園から高校卒業まで日本でした♪」

「へぇ~、だから日本語が上手なんだ。じゃあ高校はココ出身かい?」

 がちゃ…

「あっ、いえ…一つ上の姉はココの卒業生なンですが、私は千葉県の館山にある里見芸術大学の付属高校なンですよ…え~と…これで、お代は足りますか?」

「ふ~ん。あの房総半島の先っぽにある…ココに負けず劣らず有名な全寮制の? すると、お譲ちゃんは絵描きさんかい? ほい、お釣ね」

「いえ…私は楽器を演奏する方です。ココの音楽教師に仮採用が決まって…」

 車通学組のラッシュ・アワーには少しの猶予がある時間帯。時折やってくる朱と白で彩られた制服に黒いニーソックスのコーディネートを見事に着こなした女子生徒達の送迎車に混じって、停車した白地に青と黒のラインが入ったタクシーから談笑しながら降車する黒縁眼鏡も知的な金髪碧眼の白人美女。

「へぇ、そいつは凄い。ココの教職につくの大変だって噂だよ? じゃあ、お嬢ちゃんも頑張って本採用にならないとな☆」

「♪…どうも有難う運転手さん。それじゃ♪」

 車内から踵が少し高い青色の革製ショート・ブーツと白いストッキングに演出されたバレリーナの様な均整のとれた美脚が爪先を揃えながら出てくると、引き締まった美尻へ上下一列に並んだフロントの留めボタンで巻き付ける様に青く染まった裾丈の長いタイト・スカートを纏わせた落ち着いた雰囲気の金髪女性が姿を現し、靴底の薄い上品な艶を湛えたショート・ブーツの爪先を軽く軋ませながら降り立った。

 ふぅ、漸く着いた。ココが明日から私の職場になるのね…

 財布を薄茶色のハンド・バックにしまって右肩にバックの肩紐を預けると、癖の無い金髪を肩口で切り揃え黒縁眼鏡と額から目元に掛かる前髪で彩ったエリカの切れ長の碧眼が、広葉樹の大木が綺麗に整列した並木道からひとしきり辺りを見回すと目元の下がった優しげな碧眼を嬉しそうに綻ばす。

 ココが姉様の母校…そして今の職場なんだ…♪

「♪ 姉様に逢うのも4年ぶりかな…今日来るなんて事前に連絡して無いから、驚いてくれるかな…喜んでくれるかな…♪」

 程よく実った胸元をスカートとお揃いの青いベストに白く上品な長袖Yシャツで包み襟元を黒いリボン状のクロス・タイでお洒落したエリカは、美少女から美女への過渡期にある美貌と肢体に癖の無い柑橘系の魅力を漂わせている。

「へぇ…タクシーの中から垣間見えた時も重厚な面持ちが有ったけど、間近で眺めると本当に西洋の王侯貴族が建てた屋敷みたい…」

 カッ…コッ…カッ…コッ…

 流暢な日本語で素直に感嘆しながら懐古主義的な正門をくぐるエリカ。膝下まで隠れたタイト・スカートの裾は正面の留めボタンを半ばまでしか掛けていないのでフロント・スリットを入れてる格好になり、歩みを進めるたびに白いストッキングに包まれた美脚が清楚な色気と共にスリットから姿を出す。

「あっと…いけない。早く学院長室に顔を出さないと…」

 約束は朝8時までに赴任先の学院長室に出頭する事。黒縁眼鏡が良く似合う金髪碧眼の美女は、辺りを見回して目に付いた女子生徒に教職員用の出入り口を尋ね先を急ぐ。

 カッ…コッ…カッ…コッ…

「確か…さっきの女の子の話だと、煉瓦舗装の道の上を進んで大きな生徒用玄関を素通りした奥が職員用の玄関だって教えてくれたけど…?」

 正門近くに居合わせた青地に白筋が3本入った腕章を左腕に通した風紀委員と思しき凛々しく淑やかな大和撫子の笑顔に見送られたエリカは、涼しげな京都訛りで丁寧に教えられた道順で歩みを進め、生徒用の大きな玄関を通り過ぎた。

 ん? 彼女が教えてくれたのは…あそこかな…?

 確かに少し奥まった処に職員・来賓用と思われる小さい駐車スペースに接した洒落た玄関が見て取れる。

 ココが職員用の玄関よね…?

 都合良く玄関脇に小ぶりな脚立を立てて軒下の外灯の球を交換しているライト・グレーの小綺麗な作業服を羽織った用務員らしき人物が見えた。そうだ、この人に尋ねてみよう。

「あの…失礼します。職員用玄関はココで良いンでしょうか?」

「………」

 カチャカチャ…

「…?」

 金髪碧眼の眼鏡美人は脚立上の用務員を脅かさない様に静かに近付くと、作業に専念している人物を上半身を右横に倒して覗き上げながら、邪魔にならない程度にそっと声を掛けてみた。

「…え~と…お仕事中に済みません…職員用の玄関はココで…?」

 きゅっきゅっきゅっ…

 気持ちの良い快晴の空の下、長身で均整のとれた体つきの黒髪をボサボサにした用務員が、器用に外灯のアンティークなカバーを外していく。

 ? あれ…変だな…送付された紹介資料には、北条女学院って職員から出入りの業者…父兄まで男子禁制だった筈じゃあ…?

「あの…」

「あ~スイマセン。良ければ下の工具箱の脇にある、替えの電球を手渡して頂けませんか?」

 白と青を上品に着こなし綺麗な光沢を湛えるブロンドを肩口で切り揃えた白人美女は、ふと足元で口を開けている使い込んだ外観の割に中が良く整理された工具箱に黒縁眼鏡に彩られた知的な碧眼の視線を落とす。そこには真新しい厚紙に包装された電球型蛍光燈が添えてあった。

 …コレの事かな?

「あ、はい。これですね…え~と…」

 がさごそ…

 エリカは丈の長いタイト・スカートがシワにならない様に両手を膝裏に添えてから上品にしゃがみ込むと、包装を解いて新品の球を取り出して立ち上がり脚立上で作業中の無精髭もワイルド(?)な用務員の作業服の裾をチョンチョンと引っ張り、注文通りに持ってきた事を知らせてあげる。 

「あの…コレですよね? どうぞ…」

「ああ、助かります…」

 きゅっきゅっきゅっ………カチン!

 再び上体を横倒しにしながら作業の行方を覗き上げていたエリカ。いつのまにか彼女は目の前の用務員が北条女学院に存在する事への猜疑心がバカバカしく思えてきた。そうだ…この人は、この人だけは例外なのに。何でその事に気が付かなかったのか…?

「これで良し…と」

 目元までボサボサの黒い前髪で覆われた無精髭を湛えた長身で均整の取れた用務員が小ぶりの脚立から静かに降りてくると、エリカに向って右手で頭を掻きながら申し訳無さそうに頭を垂れる。

「いやぁ…助かりました。で、何か…おっしゃってましたが?」

「!? あ、そうでした。この玄関は職員用で宜しいのですか?」

「ああ、はい。ココが職員用です。んっ? 失礼ですが…?」

 どうやらエリカを見慣れない顔に思えたらしい。

 そうだ、この人に自己紹介しなくては…

「自己紹介が遅れて失礼しました。音楽教師として試験採用されましたエリカ・レーマーと申します。今日は挨拶がてら事前説明を受けに参りました」

「ん? エリカ・レーマー…レーマーって事は、アンナ先生の?」

「はい♪ アンナ姉様は北条女学院で物理を教えてる筈です。姉様の事を御存知なのですか?」

 エリカは目の前の用務員と会話を交わすうちに段々と和み打ち解けていく。エリカ自身も不思議に感じていたが、彼女自身は敬愛する肉親の話題が出たからだと錯覚した。

「あはは、だから日本語が上手なのか。確かに言われてみれば美人な処…顔立ちや面影…その長く伸びた脚の線の美しさなんか非常に似てますよ」

「そんな…アンナ姉様と比べられたら…でも、姉様を良く御存知なんですね♪」

 一つ間違えば嫌みやセクハラに聞こえる台詞がエリカの警戒心を剥ぎ取っていく。まるで基本的な思考が塗りつぶされる様に、麻薬に近い危険な心地良さが欧州で天才ピアニストの一人と称えられた金髪碧眼の美女の思考を静かに蝕んでいった。

「ええ、良く知ってますよ。彼女とは在学中からの顔見知りですから…で、アンナ先生はエリカ先生が来る事を御存知なンですか?」

「同じ学院の教職に就いた事は知ってても、今日来るとは知らない筈です♪」

 クスクス…姉様の驚く顔が見れるかな?

 肩口で切り揃えられた癖の無いブロンドと黒縁眼鏡に彩られ知的さを宿らせた鼻筋の通った美しい顔立ちに無防備で魅力に富んだ微笑を浮かべて、エリカは一時の談笑を楽んでいた。

「…成る程。おっと、学院長室に行かれなくてよいのですか?」

「えっ? あら大変! もう8時を回ってる!? やだ、どうしよう…8時までに学院長室に出頭する様に指示されてたのに、いきなり遅刻だなんて…」

 用務員の忠告に慌てて左手首に巻きつけられた小さな腕時計に碧眼を向けると、柳眉を額に寄せて泣き出しそうな顔で途方に暮れるエリカ。

「そういえば少し前に鳴った8時を知らせる鐘の音は聞こえませんでしたか?」

「い、いえ…話に夢中で…」

 そんな筈は無いのだ。北条女学院の優しい鐘の音色は、近隣まで響き渡るのだから。だが、エリカは…彼女だけは何故か会話に夢中になって全く鐘の音色に気が付かなかったのだ。

「これは失礼…私が不用意に引き止めた様なモノだ。じゃあ、案内ついでに学院長室まで御一緒しましょう。私が事情を話せば学院長なら赦してくれますよ」

「でも、それでは迷惑を…」

 均整のとれた長身をライト・グレーの小綺麗な作業服に包んだボサボサ頭の用務員は、金髪碧眼の眼鏡美人が躊躇するのを聞き流す様に足元の工具箱の蓋と脚立の脚を閉じると、事切れた電球を新品を包んでた包装紙に押し込んで右肩に小ぶりな脚立を担ぎ、右手に切れた電球・左手に工具箱をぶら下げ、黒いスニーカーを玄関マットで綺麗に拭うと校舎の中に消えていく。

「あ、あの…」

 ボサボサ頭な用務員は玄関脇の事務局に面した受付窓口を覗き込み何やら話かけると、窓口の隣の扉から苦笑混じりに出てきた青黒い髪を結い上げたシャープな面影の黒いスーツとプリーツ・スカートが良く似合う美しい女性事務員に、何か耳元で囁いてから手にしてる脚立や工具箱等を手渡していく。どうやら一時的に預かって貰うつもりらしい。

「話は理事長から伺いました。受付の記帳と身元の確認は結構ですから…さあ、どうぞ♪」

『緑』の模様が描かれたミルク色の飾りとセットになった上品なチョーカーで襟元を着飾ってる青黒い髪を結い上げた美しい女性事務員は、受け取った道具類を事務局内に片付けながらエリカに向って玄関脇の来賓用下駄箱を指差す。

「あ、はい… ? え? えっ?! 嘘…」

「学院長室は3階です。余り学院長を待たせるのも失礼でしょう?」

「あ、はい☆」

 青黒い髪を結い上げた麗人と見紛う美しい女性事務員に丁重に諭され、さすがに行動を開始する黒縁眼鏡も知的な金髪碧眼の新鋭天才ピアニスト。

 そんな…あの用務員さんが理事長さんだなんて…

 新事実に混乱しながら玄関脇のスノコ上で慌てて青いレザーのショート・ブーツを脱ぐと来賓用の下駄箱の中の上等なスリッパと入れ替え、白いストッキングに覆われた清楚な美脚の爪先をつっかける様にスリッパを履く金髪碧眼の新任女教師。

「それじゃ理事長、学院長室には私から連絡しておきます」

「有難う。悪いね、事務局長に雑用を押し付けてしまって…」

「そう思うのでしたら、御館様…後で私を…♪」

 エリカがスリッパに履き替えてる僅かな間、年代物の大きな柱の陰で作業服を通した均整のとれた右腕へ砲弾の様に突き出た見事な双丘を、甘える様に摺り寄せる青黒い髪を結い上げたシャープな面影の美人事務局長。

 ちゅっ☆

「…まあ、いいだろう。昼休みに用務員詰め所へ来るといいさ…」

 目元が隠れる程のボサボサ頭な理事長らしい用務員は、雌猫の様に甘える白いブラウス以外を黒系で統一したスーツとプリーツ・スカートとストッキングが似合う魅力的な事務局長の額に軽く祝福の接吻をしてから、大事な『雌奴隷』の一人に昼休みの予定を空ける様に言付ける。

「あ、有難う御座います! 御館様♪」 

「今は理事長だ。さあ、離れて…」

 パタパタパタ…

 スリッパに履き替えた金髪碧眼のエリカが慌てて駆け寄ってくる。

「お、お待たせしました! 先程は理事長さんとは知らず失礼な…用務員の方かとばかり思っていて…申し訳ありません」

「いや、用務員が本業だ。肩書きは名前だけだから。後の事は事務局長…」

「はい、理事長。確かに承りました。では昼休みに…♪」

 青黒い髪を結い上げた美人の事務局長はシャープな顔立ちを心持ち紅潮させて頷くと、ライト・グレーの作業着が似合う(?)無精髭の理事長が苦笑しながら歩き出す。

「さあ行きますか?」

「よ、宜しくお願いします」

 ペタン…ペタン…

 がちゃ…

 重厚な雰囲気に満ちた3階の廊下の中ほどに有る『貴賓室への連絡』と表札が添えられた年期の入った樫の扉を、静かに押し開くボサボサの黒髪に覆われた用務員にしか見えない理事長。

「この先が学院長室なんです」

 癖の無い金髪を肩口で切り揃えた黒縁眼鏡が似合う新任音楽女教師がライト・グレーの小綺麗な作業着の背中越しに樫の扉の奥を覗き込むと、下がり気味の碧眼に映ったのは突き当たりに下層へ降りる小さな階段口が設けられてる廊下の半分くらいの幅の赤い絨毯が敷きつめられた短い通路だった。

「あの、この先ですか…?」

「突き当たりの下へ降りる螺旋階段は2階の職員室に直接連絡しているんだ。通路の中ほどに扉が向かい合ってるでしょ? 左側が学院長室で右側が応接室の扉です」

「へぇ…便利な構造ですね…」

 トントン…トトトン♪

 ボサボサ頭の理事長は独特なリズムで学院長室の扉をノックすると、左側の壁の中にインターフォンかスピーカーが見えない様に設置してあるのだろうか、直ぐに品の良い艶に溢れた美声が適度な音量で赤絨毯の短い通路に木霊した。

「ピッ♪ …お待ちになって、扉のロックを解除いたしますわね…」

 カチン!

 開錠を伝える乾いた機械音が響き長身で均整のとれた身体に小綺麗なライト・グレーの作業着を羽織った無精髭な理事長は、右手でドアノブを握り扉を手前に開くと悪戯っぽくホテルのドアマンを真似て恭しくボサボサ頭を垂れて、びっくりしてる後に控えた金髪碧眼の新人女教師に道を譲る。

「あのぅ…?」

「僕はエリカ先生を案内するのが目的なんでね。さあ、どうぞ♪」

 洒落た悪戯をしているつもりなのだろう。ドアノブを握っていない左手を胸の右側に添えて一際仰々しく一礼するライト・グレーの作業着姿がぴったりな臨時ドアマン。

「は、はい。それでは失礼します…」

 エリカは恐縮しながらもドア向こうの学院長を待たせてはいけないと、黒縁眼鏡に彩られた知的な顔立ちを真っ赤にしながら上品に学院長室に入っていく。

「あの…約束の時間に遅れてしまって…」

「お待ちしてましたわ。事務局長から経緯の連絡は受けておりますから、安心なさって宜しくてよ」

 落ち着いた雰囲気の室内の中には、長く伸びた光沢に溢れたサラサラな黒髪をオール・バックにして白いカチューシャで前髪を留めている清楚な美しさを湛えた淑やかな美女。ネイビー・ブルーのスーツとタイト・スカートに身を包み、上品な微笑を浮かべながら高級そうな大きい木製の机の上に直接腰掛けている姿だった。

「エリカ・レーマー先生ね? ようこそ北条女学院へ。私が学院長の北条忍(ホウジョウ・シノブ)です」

「は、はい。試験採用して頂きましたエリカ・レーマーです。お約束の時間に遅刻してしまい、本当に申し訳ありません…」

 役職に対して不釣り合いな若さと美貌を宿らせた学院長は、透き通る様な白い肌に高貴な気品と威厳を漂わせ切れ長の両目を悪戯っぽく微笑ませると、藍色に染まったタイト・スカートのサイド・スリットから覗かせているガーターベルトの吊紐に接続させた黒いストッキングに覆われた陰影も艶めかしい美脚を高く組み直し、エリカの視界内を黒いハイヒールに彩られた爪先が妖艶なフェロモンを漂わせながら弧を描く様に、ゆっくり大きく移動していく。

「クスクス…さっきも言ったでしょう。事務局長から経緯は聞いているって♪ 貴方が約束の時間に7分遅れたのは、後ろに立っている理事長に捕まっていたせいでしょう?」

「あ、そんな事は…」

「いやぁ、悪い。エリカ先生の予定も聞かず僕が引き止めてしまってね…」

 ネイビー・ブルーに染まったスーツの左ポケットから出した小ぶりな白銀製の懐中時計を元の場所に仕舞うと、机の上に腰掛けていた年若く清楚な顔立ちの美しい学院長は右手に握られていたAV機器用とおぼしき黒いリモコンを操作してから、通路側で頭を掻いている用務員にしか見えない理事長に注進する。

「本当に困った方だこと。クスス…理事長も御一緒にお入り下さいな。面白い物が見られましてよ?」

「面白い物?」

 ガチャン… 

「ええ、一昨日の下校時間にフラリと正門前に現れた『御方』が、先程『従者』を伴ってお見えになってますの♪」

「あの『南海』のおチビさん?」

「クスクス…ご自分で確認なさいませ♪」

 一人会話についていけない本来の来客。エリカはキョトンとしたままスラリと伸びた脚線美を高く組んだ学院長が指し示す方向…落ち着いた色彩に彩られた壁面の一角を占める大小10台程が壁面に規則正しく設置されたモニター群へ、黒縁眼鏡のフレームに囲まれた下がり気味な切れ長の碧眼だけを動かしていく。

「あ、あのぅ…あっ? …?!」

 嫌だ…学院内の中継映像!?

 エリカは驚きの余り思わず両手を口に添えて唖然とする。

「ああ、エリカ先生には説明しておかなくてはね。これは学院校舎の内外に設置された隠し監視カメラの映像なの…大抵の場所はココで全て見る事が出来ますわ」

 ボリュームが切ってあるのか全く音声が欠けていたが、そこには中央に鎮座する巨大モニターの左側と下側を囲む様に大型モニター8台が設置されていて、それぞれのモニターが隅に白いテロップで撮影場所と現時刻を表示した画面を時折ランダムに切り替えながら、校舎内外のLive映像を映しだしていた。

「でも、これは学院の職員同士でも公然の秘め事なの。ですからエリカ先生も、この事は絶対に内緒ですよ♪」

 もっとも話題にしたくても理事長…『御館様』が直ぐにエリカ先生の思考を矯正なさってしまうのだけど。ですが貴方も運が良ければ…姉君の様に『花園の秘密』を共有する側になるやもしれませぬが…

 高く組んだ黒いストッキンに覆われ光沢を湛えた黒いハイヒールに彩られた美脚に左肘を降ろし頬杖をついた天女の如き清楚で淑やかな顔立ちの学院長…北条忍は、モニター群の設置された方向に顔を向けたまま横目でエリカの可愛らしく驚愕している表情を楽しそうに一瞥すると、右手に握られている黒いリモコンを操作して6分割されている巨大モニターの画面の中から1つを選択し、巨大なモニターの大きな画面に切り替えていく。

「見て下さいませ…あら…」

「あはは、成る程。確かに『彼』だな♪」

「そんな…嘘ォ…こ、これって…」

 映し出された衝撃的で刺激的な映像に両手を口元に添えて立ち尽くす、癖の無い金髪を肩口で切り揃えた黒縁眼鏡が良く似合う新卒の新人音楽教師。

 これって、不純異性交遊じゃない…

 巨大モニターに映し出されたのは朽ちた机や壊れた椅子が集積された校舎裏とおぼしき場所で、サラサラの黒髪を美少女剣士風なポニー・テールに束ねた凛々しく淑やかな女子生徒が、あろう事か栗色の髪に鉢巻き状に黒布を巻き付け横に結んでる華奢で幼い少年の性器を頬張り、聖水で喉を潤している映像だった。

「? あの左腕に通した腕章…それに髪型…もしかして玄関までの道順を丁寧に教えてくれた女の子じゃ…間違い無い…あの京都訛りの優しい女の子だ…」

「んっ? エリカ先生には少し刺激が強すぎたみたいだな。仕方無い…よっと…」

「…」

 立ち尽くすエリカの隣に突っ立つボサボサ頭の『神魔』は、長身の割に華奢な撫で肩の白人美女を『お姫様抱っこ』の要領で予告無しに抱き上げると学院長室の隅に設けられた小さな応接セットのソファの上に運んでしまった。いきなり異性に抱き上げられたエリカ。だが彼女は悲鳴を上げるでも暴れるでもなく、まるで自然な事と受け入れた様に抵抗せず大人しくされるがままに身を任せている。

「あら、もうエリカ先生に手を出すのですか?」

「い~や、ソファで大人しく座っていて貰おうと思っただけだよ」
 
 巨大モニターを観ている『人外の存在』と配下の『雌奴隷』がエリカの未来を左右する危険な臭いを漂わせた会話を楽しそうに交わしてる最中も、当人の耳には全く届いていない様子でソファに身を沈めたまま新人女教師は知的な灯火に満ちた碧眼の視線を未だ巨大なモニターに釘付けにしていた。

「…処で忍姫、『彼』に跪いてる子は?」

「クス…2年A組の紅宮寺霞(コウグウジ・カスミ)さん。彼女も一昨日の下校時間に正門前に居合わせた一人の筈ですわ。でも…『証』は身に付けておりませぬな」

「ほう、紅宮寺君の姪っ子か…で『彼』が見初めた相手は誰だった?」

 忍は机の上から優雅な仕種で絨毯の上に降りると、映し出された映像を楽しそうに眺めている『所有者』の傍らに近付き、藍色のスーツと白い開襟ブラウスに包まれた柔らかい双丘を押し付ける様に腕を組むと耳元に甘ったるい美声で囁いた。

「そんなに気になりまするか? クスクス…残念ながら『御館様』の想像通りでしてよ♪」

「じゃあ?」

「ええ。新体操部のエース、2年C組の浅野岬さん…」

 残念そうにボサボサ頭を掻きながらも悪い回答を予想していたのか、均整のとれた長身の体躯にライト・グレーの作業着を羽織った『神魔』は悪戯っぽく口元をニカッとさせてバツの悪そうに肩を竦めてみせると、巨大な画面の隅に佇む朱と白で彩られた制服に黒いニーソックスのコーディネートを見事に着こなした凛々しくも秀麗なシャープな顔立ちの女子生徒に視線を移す。

「アンナ先生も随分と彼女を推してたんだ。今更だが少し勿体無かったかな…?」

「ドウで御座いましょう? 多分、彼女の首元を覆う薄地のマフラーの下は『証』が有るものと…」

「ふぅ…まぁ、いいさ。この学院には未だ多くの上質な獲物がいるし、時が経てば出会える機会は増えこそすれど減りはしないからね…」

 うふふ…柄にもなく『御館様』ったら痩せ我慢なさって…♪

 丁度、画面上は忍によって正体を明かされた女子生徒…紅宮寺霞が、幼い少年の身支度を手伝い終えて校舎裏から走り去る処だった。巨大モニターの画面上から消えた美少女剣士風な風紀委員は、少しして正門と正面玄関を結ぶ煉瓦畳を視界に収めていた巨大モニターの周りに陣取る大型モニターの画面内に小走りしながら移っていった。

「さ~て、と…そろそろエリカ先生の方も片付けるかな…」

「クスクス…♪」

 どうやら胸の内が見透かされている事を誤魔化す様に視線を金髪碧眼の新人女教師へ向けると、抱き着いている姫君を優しく引き剥がして惚けながら巨大なモニターに魅入っているエリカの背後に回り込むと、ボサボサ頭の『神魔』は中腰に屈んでソファに身を沈めている彼女の耳元に禁断の祝詞を囁きかける。

「う…うあぁ…あぅぅぅ…はぁぅぅ…」

 上品に膝を揃えて行儀良くソファに腰掛けているエリカ。だが口元はだらしなく半開きにして、うめき声にも似た奇声を涎と共に溢していた。

「どうですエリカ先生? 少しはリラックスできましたか…?」

 あ、あれ…私…身体が…動けない…

 エリカはボサボサ頭の理事長に耳元で囁かれる度に心地良い無力感に包み込まれ、黒縁眼鏡で着飾った下がり気味の切れ長な碧眼が知的な輝きを失い静かに濁り澱んでいく。

「そうそう…大人しくエリカ先生は、僕や学院長に身を委ねていれば良いんですよ」

 …お…大人しく…身を任す? そうだ…理事長さんや学院長先生…には…従わなきゃ…

 いつしかエリカは上等なソファに身を任せ思考を止めていた。

「クスクス…御館様。エリカ先生で御遊びなさいますの? それとも私やアンナ先生達みたく『従者』として手折られるのかしら?」

「さて、どうしようか?」

「まぁ、お呆けになられて…本当に困った方♪」

 忍は自分の『所有者』の呆けた物言いに清楚な面持ちを苦笑させながらソファへ身を沈めているエリカの足元に跪くと、膝下まで覆っていた丈長の青いタイト・スカートの半ばまでしか留めていないボタンを裾側から腰元に向って、白く滑らかなスラリと伸びた指で弾くように外していく。

「うふふ…さすが美形なアンナ先生の妹君だけあって、エリカ先生も美形さんですわね…」

 大人しく惚けている金髪美女の脚線美を覆っていた青いロング・スカートの留めボタンを美脚の付け根まで外した清楚な美貌の学院長は、綺麗にラッピングされた包装紙を丁寧に解く様に両手で裾を摘まみ左右に捲ると、太股の縁をレース柄に加工された白いストッキングを履いたバレリーナの様な均整のとれた美脚が学院長と理事長の前に顔を覗かせる。

「あら…姉君に似てらして、しなやかに伸びた素敵な脚線美ですこと♪」

「確かにアンナ君の脚線美も見事だが…彼女のも姉上に負けず魅力的な美脚だね」

「ええ。私も惚れ惚れするくらいですわ…♪」

 清楚な顔立ちに妖艶な笑みを浮かべた学院長は、四肢を弛緩させ無抵抗なエリカの腰へ白魚の様な美しい両手を左右から差し込むと、股間を覆う白いレース加工されたシルクのショーツを優しく抜き取り、ブロンドの茂みに隠れた未使用の秘裂を顕にする様にストッキングの白い陰影を湛えた美脚を左右に押し広げていく。

「うふふ…どうです御館様? この清楚な娘の蜜壷…試食なさいたいのでしょう?」

「…そうだねぇ。確かに忍姫の慧眼どおり彼女は美味だとは思うけど、僕は上等な人間の雌には不自由してないから…少し惜しい気もするがこの際だ、来賓用の贈答品に流用するってのはドウだろう?」

「本当に酔狂な御館様…随分と『可愛らしい客人』に御執心なんですのね?」

 白いストッキングの半透明な光沢を帯びたバレリーナの様な両脚を開脚している最愛の『雌奴隷』に合わせて、ライト・グレーの作業着に包まれた長身を屈ませたボサボサ頭に無精髭の理事長は昔を懐かしむ様に口元を綻ばすと忍の耳元に囁き微笑む。

「まあね。『南海』の系譜には、君を見初めた頃に少なからず借りを作ってるから…」

「人の世の暦では…もう400年も前の事なのですね♪ 私は『従者』として『御館様』に最初に見初められてスグに彼方の世界へ連れられて…あの頃の『御館様』は童子同然に幼くて…クスクス…」

 400年前…当時の小田原で太閤秀吉に一族を滅ぼされた北条一門にあって『夜叉姫』の二つ名で謳われた美しき末姫は、オール・バックにしたサラサラ・ストレートの長い黒髪に白いカチューシャが映える天女の様な顔立ちに、拳固にした右手を艶めかしい口元に添えて上品に微笑を湛えた。

「そういえば…新体操部の浅野さんを『従者』に選ばれた南海一門の『神魔』の若君は、あの頃の『御館様』に雰囲気が似ておられるかも…クス…♪」

「忍姫も人が悪い。確かに僕は幼かったが…」

 作業着が似合うボサボサ頭の呆けた『神魔』は、四角い学院長室の一面を占めるモニター群の中央にある巨大なモニターに映し出された映像を苦笑しながら一瞥する。

「あんなに泣き虫だったかな?」

 丁度モニターの大画面には栗色の豊かな髪と小麦色の肌が印象深い華奢な子供が、新体操部のエースにして秀麗で長身の凛々しくシャープな女子高生に、半べそな顔を『お祭り』ロゴが散りばめられた日本手ぬぐいで拭って貰っているシーンが映っていた。

「ええ、まるで鏡を映した様ですもの…♪」

「…参ったなぁ」

「…♪」

 忍は切れ長の目を優しげに細めて巨大なモニターを一瞥すると跪いたまま身を乗り出し、こめかみから口元に垂れ落ちるサラサラの黒髪を左手で優雅に掻き揚げながらブロンドの茂みに隠れた未使用の秘裂へ唾液混じりの舌を捻じ込み始める。

 んちゅ…

「う…ああ…あぅ…」

「流石に生娘ですわね。もう少し下拵えして差し上げましょう…」

 んちゅぅぅぅ…あむぅ…

 ぼんやりと宙を見つめるエリカ。だらしなく両脚を押し開かれた金髪碧眼の眼鏡美人は、混濁した意識のさなか何かを訴えかけたそうに時折口元を動かすが、虚ろな瞳は焦点を失い正面をぼんやり見つめスラリと伸びた四肢の爪先まで弛緩させていた。

 んむっ…ぴちゃ…ぴちゃ…

 思考を濁らせて全く抵抗もせず忍の舌技に股間を蹂躪されていくエリカ。その蕩ける様な甘い刺激を秘裂に繰り返し与えられ、淡くルージュがひかれたキュートな口元と金髪の茂みに覆われた下の口から涎を垂らしていく。

「アン♪ うふふ…卑らしい甘露をこんなに溢れさせて…クス…」

 最古参の『雌奴隷』は跪いたまま悪戯っぽく苦笑すると、妖艶な舌先と白魚の様な細い指先で膨らみかけた肉芽の薄皮を剥いて唇で吸い付く様に甘噛みしエリカの性感帯を弄ぶ。

「あ! あぅぅ…はぅん…はぁぁぁ…」

「クスクス…やはり異性を知らない女子の反応は可愛らしいですわね♪」 

 エリカの腰掛けたソファの背もたれに頬杖をつき成り行きを背後から見守っているボサボサ頭の『神魔』は、学院長室で繰り広げられる雌同士の痴態と巨大モニターが映し出す2年C組の授業風景を交互に観ながら苦笑している。だが、この光景は左程長くも続かなかった。

 …ピ! ピロロロロ♪ ピロロロロ…♪

 不意に高級そうな大きい木製の机の上に陣取った機能美に富んだ多機能電話が、複数並んだスイッチの一つを点滅させながら小気味良いメロディを奏で始める。それは階下の職員室…教頭のデスクからの内線呼び出しのコール音。

「? あら、もう8時16分。朝の職員会議ではありませぬか…」

「おやおや…♪」

 先程みえたばかりの新任音楽教師の股間を楽しそうに弄んでいた北条女学院の実務を司る最高責任者は、アンティークな面持ちの壁に掛けられたアナログ時計を一瞥すると名残惜しそうに立ち上がり優雅に身繕いを済ませると、自分の執務机に近付き淑やかな仕種で受話器を取り上げる。

 ピロロ…ピッ!

「あ、はい…私です。はい、判りました。直ぐに職員室に降りますわ。それじゃ…」

 かちゃん

「ふぅ…残念ですが続きは少しお待ち下さいませ。ご覧の通り、朝の職員会議の立ち会いを教頭先生から催促されてしまいました」

「それは残念。さぁ忍姫も朝の勤めに行っておいで」

 忍は再び身支度を確認すると彼女の『所有者』に対して優雅に頭を垂れると、学院長室を後にしようとして立ち止まった。

「何か『可愛らしいお客人』に関して、先生方へ指示などありまするか?」

 どうやら忍は他の教職員や配下の『雌奴隷』達に指示や連絡は無いかと問いかけているらしい。

「…そうだな。『大事な客人』だから粗相や無礼の無い様に注意を促してくれるかい? 好きに振るって貰って構わないからってね♪」

 悪戯っぽく頬を右手の人差し指でなぞってから人差し指と中指で敬礼してみせるボサボサ頭。

「あとは忍姫が上手く主旨を伝えてくれ。僕は君が戻ってくるまで…まぁ、適当に暇を潰すさ」

「クスクス…確かに承りました。仰せの通りに…♪」

 最古参の『雌奴隷』は全てを理解すると苦笑しながら学院長室を後にした。

 ガチャン…

 施錠せずに退室した天女の如き清楚な美貌の学院長を見送ったボサボサ頭の理事長は、高級そうな執務机の上に放り出された黒いリモコンを取りにいくとリモコンを操作して巨大モニターや周囲の大型モニターを操作して、数分前に校内へ消えていったナギと岬を探し始める。

「うん。やっぱりココだよな」

 何度か画面が切り替わっていく大型モニターの内、左上の1台が目標を捕らえた。浅野岬のクラス…2年C組の教室を映しだしたのだ。ボサボサ頭の『神魔』は左上に位置する大型モニターの映像を巨大モニターに切り替える。

「エリカ先生…観てご覧よ。あの『可愛らしい客人』に気に入って貰う事…それが当面の君の存在理由だからね?」

 2年C組の教室内で長い豊かな栗色の毛にヘアバンドみたく黒いバンダナを横で結んだ小麦色の肌をした子供が、独り読書に耽っていた短めの栗毛をボブ・カットに整えた縁無し眼鏡が良く似合う知的な面影の女子生徒を楽しそうに思考汚染している様を、巨大モニターは音声を欠いたまま映し出していた。

「あの『幼い神魔』に気に入られなくてはいけない。身も心も全てを捧げて尽くすといい、その美しい肢体を貧欲に犯して貰うといい、それがエリカ先生の存在理由だから…」

 この後も次々と2年C組の教室に登校してくる女子生徒達を小麦色の様な美しい褐色の肌の小柄な子供が思考汚染している過程を、ボサボサ頭の『神魔』に意識や価値観を矯正されながらエリカの濁り澱んだ碧眼は魅入る事になる。

「…あ…うぁ…」

 巨大モニターに映る幼い人影を黒縁眼鏡のフレームに覆われた澱んだ碧眼で追い続ける金髪の天才ピアニスト。

「そうさ『彼』に気に入って貰えれば…『彼』の祝福を受けて『従者』に叙して貰えれば、永遠に幸せでいられるんだ。素敵だろう…?」

「あ…ぁあ…あぅ…」

 画面の隅に表示される時刻は8時20分を刻んでいた。

 東京渋谷は天を衝く快晴。

 リ~ン…ゴ~ン♪

 日差しも2月下旬にしては暖かく、風も微風で過ごし易い一日になりそうだ。

 リ~ン…ゴ~ン♪

 渋谷に程近い閑静な小高い丘陵地の一角…並木の大木に囲まれた私立北条女学院の懐古主義的な学舎の内外に響き渡る涼やかな鐘の音色は、登校や通勤を済ませた全ての女子生徒や職員に8時25分の到来を告げていく。

 リ~ン…ゴ~ン…

「…これで保健室からの連絡を終わります」

「はい、有難う。次は…」

 北条女学院の中枢区画…標準的な教室の8倍は有りそうな2階の巨大な職員室は、西洋の貴族の館の様な懐古主義的な校舎の中心に位置している。

「事務局から来月以降の式典準備に関して先生方に連絡が有るそうです。それじゃ事務局長、始めて下さい」

 その広い空間には教師達のデスクやキャビネットが学年や学科毎に余裕をもって島状に並べてあり、給湯室や休憩・談話室の他にも化粧ブースが立派な職員専用のトイレやシャワールームを備えた更衣室に仮眠室まで設けられた豪華な空間だった。

「はい、今年度の卒業式典の予定と来年度の新入生受け入れ準備に関して…」

 また直上の3階に学院長室や応接室・会議室、直下の1階には購買ブースが併設された事務局と設備が充実した保健室や図書司書室にそれぞれ職員用内階段で直接連絡されていて、廊下を経由しなくても簡単に2階中央の職員室に移動できる構造になっていた。

「…事務局からの連絡は以上です」

 青黒い髪を結い上げたシャープな面影の女性事務局長がファイルを閉じて着席すると、議事を進めていたモデルの様なプロポーションの女性教頭が整った顔立ちで居並ぶ女性職員らを一瞥する。

「ご苦労様。3年生を担任に持つ先生方は、朝のHRで生徒さんに伝えて下さいね」

 出席簿を用意している女性教師の何人かは教頭に言われるまでもなく、支給されている上品なシステム手帳を開き手早く連絡事項を記入していく。

「他に何も無ければ…これで朝の職員会議を終えますが…」

「…教頭先生、宜しくて?」

 ずらりと勢揃いした常勤教師や非常勤講師…本業以外にも教員資格を併せ持つ司書・保険医・事務方の総勢およそ60名の女教師達。正門当直の数名が校門の方に出向いてるが、それらを除けば北条女学院の教職員の殆どが一同に顔を揃えている事になる。

「学院長?」

 タイプは異なるが全て妙齢で美しい女性達が上座中央に控える一際気品に満ち溢れた透き通る様な白い美肌の淑女…北条女学院の総責任者にして学院長たる北条忍(ホウジョウ・シノブ)の美しい顔へ一斉に視線を移す。

「クスクス…大した事では無いのですが、今日は可愛らしいゲストが本学院にお見えになってます。大事なお客様ですの…くれぐれも失礼の無い様に♪」

 ひそひそ…

「…学院長、ドコからかの来賓ですか?」

「ええ、遠くからいらした大事な客人です。見掛けても好きな様に振る舞って頂きなさい。決して粗相があってはなりません…」

 ざわざわ…

 サラサラ・ストレートの艶に満ちた長い黒髪をオール・バックに後ろへ流し、白いカチューシャで前髪を留めた役職に対して非常に年若い容姿の学院長は天女の様な清楚な顔立ちに微笑を浮かべると、洒落たチョーカーに吊ってある『緑』の不思議な模様が描かれた白乳色の小さな飾りを形の良い指で弄びながら話を続けていく。よく見渡すと他にも数人の女教師や女性職員が学院長と寸分違わぬ同じチョーカーと飾りを身に付けている。

「皆さん、宜しくて? これは理事長からのお願いでもあるのです」

 その一言でざわめきが静かになっていく巨大な職員室。

 麗しくも淑やかな妙齢の学院長は切れ長の目に優しげな微笑を浮かべると、傍らに立ち控える議事進行役のグラビア・モデルと見違える美人教頭に優雅な仕種で用件が済んだ事を伝えると、一人静かに立ち上がった。

「それでは皆さん。今日も生徒さんの指導や仕事の程、宜しくお願いしますね」

『はい! 宜しくお願い致します!』

 学院長の言葉に声を揃えて元気良く答礼する多彩な美女達。そして各々が所定の任地に移動を開始する。担任を持つ者はHRに、1時限目に授業を控える者は準備を済ませ各教室に、巡回当直にある者は簡単な装備を整え二人一組で校舎内外の巡視に、保険医達や司書達は自分の講義があるまで保健室」」や図書室に、事務方の一団も同様に割り振られた講義まで事務局に…巨大な職員室から慌ただしく人影が消えていく。残った職員は2時限以降を担当する常勤教師ばかり10名程。

 クスクス…

「それじゃあ教頭先生、職員室の管理・監督はお任せします。私は自分の授業まで上の自室に居りますから、何かあったら内線で…宜しくて?」

「はい、学院長。お任せ下さい」

 クス…年若い『神魔』の方とお逢いするのも4年ぶりですね…

「…♪」

 自分の襟元を見せつける様に、白いシルクの開襟ブラウスの襟をスーツの襟の上に出したスタイルで藍色のスーツを着こなし、スーツと同色のタイト・スカートのスリットから光沢ある黒いストッキングにガードされた陰影も艶めかしい美脚を覗かせながら、学院長は職員室内と直結している螺旋階段を黒いハイヒールで優雅に踏みしめ3階の貴賓エリアへ昇っていく。

 さて…御館様に次の指示を仰がなくてはなりませぬな…

 サラサラ・ストレートの長い黒髪をフワリと波立たせた天女の如き淑やかな学院長は、透き通る様な白い右手でチョーカーと対の『緑』の模様が入ったミルク色のタグの感触を確かめると、今朝がた校舎裏で悪戯をしていた元気でやんちゃな『幼い神魔』の無邪気な笑顔を思い出して、無意識のうちに妖艶な笑みを湛えていた。

「…しかし新体操部のエース…2年生の浅野岬(アサノ・ミサキ)さんを選ぶなんて、とても良い選定眼でしてよ。御館様が残念がるなんて珍しい事なのに…♪」

 そういえば浅野さんの学級担任はアンナ先生だった筈…うふふ…はてさて…♪

 天女の如き大人びた淑女は心地よい想いに耽りながら独り言を呟くと、ビシッと着こなしたスーツ姿を螺旋階段の彼方へ静かに消していった。

 トン…トン…トン…トン… 

 年期を感じさせるアンティークな螺旋階段を優雅な足取りで昇り終える学院長。そこは突き当たりと中程の左右に重厚な扉を覗かせる深紅の絨毯が敷き詰められた短い奥行きの幅狭い回廊だった。

 あら…もう8時半…

 彼女はスーツの左ポケットから出した小ぶりな白銀製の懐中時計で時刻を確認しながら、黒いハイヒールに彩られた美脚から清楚なフェロモンを漂わせ真っ赤な絨毯の上を進んでいく。

「あれから、どうなったのかしら…♪」

 藍色のスーツやタイト・スカートと光沢に満ちた黒いストッキングを着こなした天女の如き面影の大人びた淑女は、白魚の様な左手に握られた愛用の小ぶりな懐中時計を元の場所に戻しながら赤く染まった絨毯の回廊半ばで歩みを止めると、向かい合う様に備え付けられた扉のうち、『学院長室』と表札が飾られた右側の扉に向き直り独特の旋律でノックする。

 トン、トトトトトン♪

「御館様。忍(シノブ)に御座いまする」

 忍とだけ名乗ったサラサラ・ストレートの長い黒髪をオール・バックに流し白いカチューシャで前髪を留めた天女の如き淑やかな学院長は、室内からの返事や了解を待たず鍵の掛かっていない扉の開けた。

 がちゃ…

「お帰り、忍姫。もう朝の職員会議は終わったの?」

 そこには長身で均整のとれた体躯に小綺麗なライト・グレーの作業着を羽織り目元までボサボサ黒髪に覆われた無精髭もワイルド(?)な男性が、学院長室の隅に設けられた小さな応接セットのソファに身を沈めソファの肘掛けに頬杖をついて、室内を覆い囲む落ち着いた色彩に彩られた壁の一角を占めるモニター群の中央にある巨大モニターに映し出された映像を楽しそうに眺めている。

 ンチャ…チュプ…クチュ…

「ええ、先程。それから御館様に言付けられた一件、皆さんに申し渡しておきました…」

「ご苦労様。それじゃあ君も隣に座って一緒に先程の続きを観ないか?」

 学院長は丁寧な口調で朝の職務を済ませた旨を先客に伝えると、ソファに腰掛けている『所有者』の足元に跪き股間へ顔を埋めている癖の無い艶やかなブロンド・ヘアーの若い女性へ涼しげな視線を差し向けた。

 アムゥ…クチュ…チュ…ンチュ…

「あら、御館様…? その娘は贈答用にするのではなくて?」

「ん、コレかい? 生娘でウブな新卒のエリカ先生に、唇や舌での奉仕の仕方を指導してたのさ。下の2穴には手を出してないよ」

 青く染まったベストとロング・タイト・スカートに身を包み、青いベストの袖口や捲くれた青いスカートの裾から白いYシャツの長袖と白い光沢を纏うストッキングに覆われた美脚もあらわにして正座を半ばで崩した様な姿勢のまま、黒縁眼鏡の金髪美女は口元に垂れ落ちてくるブロンド・ヘアーを白く滑らかな右手で掻き揚げながら凶悪な造形の逸物を呑み込み拙い口淫奉仕を続けている。

「クスクス…それで少しは上達しましたの?」

 チュプ…ンフン…ンチュ…

 忍と名乗っていた役職に対して非常に年若い容姿の学院長は切れ長の両目を意地悪そうに微笑ませると、用務員にしか見えないボサボサ頭の隣へ藍色のスーツとタイト・スカートに包まれた魅力的な肢体をしな垂れさせる様に腰を降ろした。

「教え始めたばかりだから、まだまだかな。まぁ確かに新鮮味は有るけど…僕をイカせるまでには刺激が足りないな」

「ふふ…可哀相な御館様♪ それでは忍が続きの相手を致しましょうか?」

 忍は天女の如き清楚な顔立ちに媚びる様な微笑を湛えながら身を乗り出し、隣に腰掛けてる『御館様』…『神魔』の横顔へ思慕の想いを込めて舌を這わしていく。

「後は『贈呈した相手』に任せようか…でも、気に入って貰えるかな?」

「クス…アンナ先生の妹君ですもの。御客人も無下にはなさらないと忍は思いますけれど?」

 ライト・グレーの作業服姿が似合うボサボサ頭の『神魔』は、知的な輝きを宿していた碧眼を濁らせ黒縁眼鏡をズリ落しかけたまま惚けた表情で口淫を続けていた白人美女の頭を優しく撫でて注意を引くと、横笛を奏でる様に凶悪な肉棒のカリ裏を舐めていた今日初めて来校したばかりの金髪の新人教師が深緑に染まった瞳をゆっくりと頭上へとむける。

「う…あ…エ、エリカは…一生懸命…」

「はいはい、エリカ先生は休憩だ。そこで大人しく姉上の授業風景でも観ていなよ」

 流暢に話せる筈の日本語も途切れがちに言葉を紡ぐ、エリカと呼ばれた金髪碧眼の惚けた眼差しの新任音楽教師。

「ふふ、身体が火照って御辛いでしょうが、もう暫く我慢なさって下さいな。きっと可愛いお客様がエリカ先生を新境地へ誘って下さるから…♪」

「もっとも客人に気に入って貰えない時は、残念だけど続きは無しだよエリカ先生」

「あ、熱い…です…身体の中が…股間が…ああ…嫌ぁ…助けて…」

 既に青く染まったロング・タイト・スカートは正面の中心線上を裾から腰元に1列に並んだ留めボタンの殆どが解かれ、女の子座りした美尻から先は大きく左右に開かれたスカートの間から擦り落ち止めのシリコン・ストッパーが内側に加工された太股までの白いストッキングだけしか纏っていない下半身をあらわにして、ブロンドの茂みに覆われた未開封の秘裂から粘っぽい分泌液を滴らせていた。

「あらあら…まだ生娘のエリカ先生には、少し刺激が強かったみたいでしてよ?」

「そうだな…仕方無い。火照ったまま少し大人しくさせとくか…」

 美少女から美女への熟成課程を終えつつある美しい肢体を火照らせ、黒縁眼鏡に覆われた澱んだ切れ長の碧眼に薄っすらと涙を浮かべ救いを求める新人教師の金髪美女は、自分の頭を撫でているボサボサ頭の『神魔』をすがる様に見上げていたが、目元まで覆った黒髪の隙間から刺し貫く視線を感じると糸が切れた操り人形の様に横へ崩れ落ちる。

「クスクス…可哀相に♪」

「客人をもてなすまでの辛抱さ。じゃあ、忍姫…僕の相手を頼めるかい?」

 薄目を開けながら足元で意識を失った金髪碧眼の白人美女は、着崩れた青いロング・タイト・スカートから覗く白いストッキングに包まれたバレリーナの様に均整のとれた曲線を描く美脚を、時折ピクンと痙攣させている。

「ん?! おや…モニターを観てご覧よ? もう2年C組は『彼』の物になってしまった。参ったね…もうあのクラスだけは『小さな客人』の縄張りだね」

 北条女学院を自らの縄張りにしていた小綺麗な作業着を羽織った黒髪ボサボサの『神魔』は、足元の眠れる美女から学院長室の壁に直付けされた巨大モニターに視線を移すと、映し出される2年C組の様子にわざとらしく呆れながら隣から覆い被さる様に口淫しようとしていた清楚な美しさを漂わせた学院長の肩を藍色に染まったスーツ越しに軽く揺すった。

「えっ? あら…本当。クスクス…アンナ先生の前に生徒さん達が10人近く立ち塞がってますわね。もう殆ど『可愛らしい御客人』の熱烈な信者でなくって♪」

「これ以上、無差別に僕の縄張りを荒らされると後始末が大変だ…早く『彼』と会って話し合わないと」

「その為のエリカ先生ですものね♪」

 忍は姿勢を正すと『所有者』の首に両手を廻し抱き着きながら、切れ長の両目を細めながら再び巨大モニターへと視線を移す。 

「では、1時限目が終わりましたら、早速に…?」

「そうだね…もてなす支度は概ね出来たし…それまで二人で肌を合わせながら一緒に成り行きを観ていようじゃないか?」

「うふふ…承知しました。全て忍にお任せあれ…♪」

 ギシ…ギシギシ…

 艶に満ちた流れる黒髪をオール・バックにして白いカチューシャで前髪を留めた清楚な顔立ちの学院長は、一旦『所有者』の首に廻した長く伸びた両腕を解くと藍色のタイト・スカートのサイド・スリットや裾から両手を潜らせ、股間を覆っていた黒いレース柄のショーツをガーターベルトで吊った黒いストッキングにガードされた美脚から器用に片足だけ抜くと、ソファに身を沈めてる『神魔』に背を向け跨ってスカートを捲り上げながら既に充分に湿りきった蜜壷を背面座位の要領で『所有者』の凶悪な造形の肉棒へ沈めていく。

 ズブ…ズププ…

「ん…あふぅ…んくぅぅぅ!」

 強烈な挿入感に痺れながら妖艶な表情を天女と見紛う清楚な顔立ちに浮かべる忍。彼女の『所有者』は自らの業物を秘裂に深く挿入したまま、背後から手折ってしまいそうな細いウエストに作業着の袖を通した左腕を廻すと、胸元を留めていない藍色のスーツの中へ右手を滑り込ませ白いシルクの開襟ブラウスの拘束を器用に上から解いていき、大人びた黒いレース柄のショーツと対になった黒レースのブラ越しに形良い膨らみを何度も揉みほぐす。

 ギシッ…ギシッ…ギシッ…

「御館様…ふふ…忍の具合は…くぅん…いかがで…如何で御座いましょう?」

 藍色のスーツを着込んだまま背後から挿入された天女の如き清楚な顔立ちの淑女は、薄桃色に肌を染めながら切れ長の両目を細めながら白いカチューシャに彩られたオール・バックの長髪に覆われた頭部を『所有者』の顔に当てない様に左後方へ預けると、主たる『神魔』の横顔に自分の滑らかな頬を摺り寄せる。

「クク…愚問だよ。忍姫…」

「アン…意地が悪ぅ御座いますな…クス…それでは判らないではありませぬか?」

 チュッ♪

 清楚で淑やかな顔立ちを苦笑混じりに悪戯っぽくしかめると、問い詰める様に艶めかしい唇で困った顔を忍に向けてきた『御館様』の口を塞いだ。

 ンン…あむぅ…

 クスクス…しっかりと忍の腰奥は美味だと申されませ…御館様?

「ふぅ…悪かった。忍姫の膣内(ナカ)は最高だよ」

 忍はバツの悪そうに苦笑しながらも彼女の望む返事をした『神魔』に満足すると、引き締まった細い腰をゆっくり上下させ蜜壷に収まった大振りで凶悪な業物を締め上げながら巨大なモニターに意識を戻す。

「あくぅぅん…あら…モニターを御覧になって下さいな。ふふ…アンナ先生が心配そうな顔をなさってますわよ?」

 丁度2年C組の授業風景を映し出していた巨大モニターが伝えてきたのは、豊かに伸びた銀髪を一本の三つ編みにして詰め襟がフリル状に加工された白いブラウスを着込んだ胸元に垂らした白人美女が、鼻筋の通ったシャープな美しい顔立ちに柳眉を八の字にして困惑した表情を浮かべながら、フレームの細い銀縁眼鏡に覆われた切れ長の碧眼を隠しカメラに向けている姿だった。

「クス…何事にも動じないアンナ先生が…ンクッ…まるで無理難題に戸惑っている優等生の様ですわ♪」

「おやおや…どうして排除しないのかって顔だね。まぁアンナ先生にも、暫くは大人しく振る舞って貰うさ」

 均整のとれた体躯にライト・グレーの作業着を羽織ったボサボサ頭の『神魔』は、当時在学3年生だった4年前に洗礼を与え『所有物』の末席に加えた銀髪碧眼の美しい白人女教師の心配そうな表情を一瞥すると、まるで何事も無かった様に忍の下顎から唇にかけてなぞる様に舌を這わし、黒いストッキングの光沢に満たされた美脚の太股裏から膝裏にかけて両手を滑らせ背後から抱え込む。

「あっ!? きゃぅん、あぅぅぅ…」

「最初から喧嘩を売る事も無いって事さ。しかも相手は人間の世界に来たばかりの半人前なおチビさんじゃあ、僕も大人げないだろ?」

 ギシッ…ギシッ…ギシッ…

「あ…あう…んくぅぅぅ…お、御館様ァ…はぅぅぅ…」

 股間の秘裂に深々とグロテスクな肉の凶器を差し込まれ、オール・バックのサラサラなロングヘアーが波打たせながら藍色のスーツに包まれた肢体を背後から脚線美ごと抱え込まれる様に持ち上げられた天女の如き清楚で淑やかな学院長は、ゆっくりとだが乱暴なまでに力強いピストン運動を施され薄桃色に染めた透き通る様な肌の上に幾筋もの汗を浮かべていく。

 ギュッ! ギュッ! ギュッ!

「はぁはぁ…そ、そんな…んんっ…急に…攻められると…ハァン…し…忍は…果てて…あくぅぅん…果てて…しまいまする…」

「ん? あはは…今日の忍姫は少し堪え性が無いな。未だ少し物足りないが気を差し上げようか…?」

 均整のとれた長身の体躯に黒髪のボサボサ頭を載せている長身の『神魔』は、目元を覆っている前髪を揺らし時折ルビーの様な輝きを宿した縦細の瞳を垣間見せながら、黒いハイヒールを履いた両脚を何度も宙にふらつかせながら暴風雨の様な快感と暖炉の温もりに似た安心感に酔いしれている、最古参の『雌奴隷』の形良い耳たぶを悪戯っぽく優しく甘噛みしてやった。

「んくぅぅぅ! も、申し訳…ありませぬ…ひゃあん! み、耳は…忍の耳は駄目で御座います…ああん! お戯れが過ぎまするぅ! ひっくひっく…きゅぅぅぅん…」

 いきなり弱点の耳を攻められ清楚な顔立ちに半べそを見せる忍。しおらしい恥じらいをチラつかせながら、黒いストッキングに覆われた美脚を抱きすくめてる『所有者』の大きな両手に小さく色っぽい透き通る白魚の様な両手を這わせて、気品溢れる大人びた顔立ちの淑やかな『雌奴隷』は敬愛する『所有者』を少しでも悦ばそうと股間に咥え込んだ肉棒を必死になって蜜壷全体でシゴき続ける。

 ギュッ! ギュッ! ギュッ!

「んんっ! お、御館様ぁ! はぅん! もっと忍を…忍のことを貪って下さいませぇ!」

「クスクス…相変わらず忍姫は殊勲な事を言う…」

 しかし、背後から抱き竦められる様に犯され主導権を握られた絶頂寸前の姫君は殆ど抵抗らしい抵抗も出来ず、宙にふらつかせる黒いハイヒールに彩られた爪先をガクガクと痙攣させ始め急速に昇り詰めていく。

 ガクン! ガクン! ガクン!

「あ、あぁぁぁ…お、お赦し下さいませ…し、忍は…」

「どうぞ♪」

 性交相手から優しく赦しを賜った姫君は感極まって四肢を強ばらせながら何度もひきつけを起こすと、背後から脚線美ごと丸め込むように抱きすくめられたまま、最上級の蜜壷の奥底へ半ジェル化した灼熱の滾りを注ぎ込まれる。

 ビュック! ビュック!

「あっ! あっ、ああっ…」

 背面座位で交わり抱きすくめられた姿勢のまま、子宮の中に白濁液を吸収させている白いカチューシャに彩られたサラサラ・ロング・ヘアーをオール・バックにした天女の如き大人びた学院長。力無くうな垂れながらも幸せそうに清楚な顔立ちを淫靡に惚けさせながら、忍は胸奥の小さなつかえを囁く様に呟いた。

 ドクン! ドクン! ドクン!

「…本当に御館様は…御自身の『縄張り』や『獲物』を、一部とはいえ…お譲りさなるのですね…?」

 汗ばんだ薄桃色の頬に数条の後れ毛を貼り付けた妖艶な面持ちで呼吸を整えた姫君は、白いカチューシャで彩られた豊かな黒髪に覆われた頭を捻る様に背後へ向けると、白濁した体液を子宮の隅々まで注ぎ込まれながら僅かに柳眉を寄せ心配そうに『御館様』の真意を伺ってみる。

 トクン…トクン…

「まぁ『彼』の出方次第だけど、忍姫も僕も『南海』の一派には少なからず借りが有るからね?」

 ボサボサ頭な『平原』出身の『神魔』は姫君の膣内へ射精を続けながら、最古参の『雌奴隷』との馴れ初めを苦笑混じりに思い出しつつ巨大なモニターへと注意を移す。

「…そう決めているのでしたなら…忍に異存は御座いませぬ…♪」

 ふふふ…我らに御味方して下さる『神』になるか、我らと敵対して『魔』と化すか…忍とて出来れば『可愛らしい御方』には北条女学院へ『神』として逗留して頂きたいのですが…さてはて…

「ん? 時間は未だ残っているか…それじゃあ、忍姫。このまま続きに付き合ってくれないか?」

「ええ、御館様。喜んで♪」

 未だ硬度を殆ど失わない凶悪な造形物を秘裂に深く収めたまま、接続部から滲み出た本気汁と注入しきれない白濁した体液を溢れさせ絶妙な曲線を描くヒップ・ラインから滴らせつつ、背後から折り畳んだ美脚ごと抱きすくめられた忍姫は憂いに帯びた顔立ちを綻ばすと、再び上下に揺すられるのに身を任せ甘ったるい嬌声を響かせ出す。

 ピクン…

 そんなさなか上品で重厚な作りの学院長室に響く淫靡なBGMに意識を取り戻した人物が、混濁した思考のまま薄めに開けた黒縁眼鏡のフレームに覆われた切れ長の碧眼で、巨大モニターに映し出された映像をぼんやりと眺めながら一筋の涙を流してした。

 あ? あは…姉様…アンナ姉様だ…アンナ姉様が映ってる…

 天女と見紛う清楚で淑やかな学院長とボサボサ頭の用務員同然な黒髪の理事長が背面座位のまま交尾を繰り返す足元近くで、青と白の衣装をメリハリの利いたボディに包み腰周りを中心に顕にしたまま全身を弛緩させ、上等な絨毯の上に力無く横たわる金髪碧眼の新人音楽教師。

 あれ…可笑しいな…私…何してるのかな…

 美少女から美女への熟成課程を終えつつある美しい肢体を火照らせ苦悶する白人美女は、再び細められた澱んだ碧眼から清らかな雫を溢れさせる。

 …わ、私は…姉様に逢えるの…楽しみに…してた…だけ…なのに…

< つづく >

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