竜の血族・外伝 1

 触れるだけの口づけを交わし、僕はまた口づけをする。
 今、キスをしたのは別の相手と。
 ベッドに座る僕。
 その左の膝と右の膝。
 各々の膝に1人ずつ女の子が座り、僕と交互に口づけを交わす。恋人と初めてするような、心を込めた唇と唇だけのキス。

「……!……」

 やがて僕は舌を入れる。女の子は軽く目を見開いて驚いたが、すぐに身体の力を抜いて僕の侵入を受け入れた。歯や舌をくすぐり、唾液をすこしずつ流し込む。女の子は嫌がっていなかった。むしろうれしそうに、僕に抱きつく腕の力を強くして、コクコクと小さくのどをならして僕の唾液を受け入れた。
 女の子の口の中は甘く、柔らかかった。
 しばらくそうしていると、くいくいっと、まだ脱いでいないシャツの袖をひっぱられた。

「……私にも………」

 取り残された方の女の子……………僕の左の膝に乗っている方だ………がすねたような顔と恥ずかしそうな声で言った。実際、こんな可愛い催促すらひどく恥ずかしいのだろう。2人とも王族の一員として、大切に大切に育てられ、今の今まで性的な知識から隔離されていたのだから。

「うん」

 僕はうなずくと、大人のキスを交わす。先ほどと同じように心を込めて、少しでも多くこの女の子の鼓動と温もりを味わうように。

「あ……………」

 2人が同時に、吐息とも驚きともつかない声を出した。

「どきどきしてるね。2人とも」

 僕は2人の胸に手を当て、心臓の鼓動を確かめた。2人とも驚くように早く、顔は耳まで真っ赤だった。

「うん………でも、嫌いじゃないよ……」

 今度も同時にうなずき、同じ台詞を左右から言う。

「服を脱ごうか」

 僕の声に反応してか、2人のドクッ、ドクッと鼓動する心臓の音がさらに激しくなった。2人の首筋にふっと息を吹きかけると、初々しい悲鳴があがる。

「心配しないで。2人を傷つけるようなことは、絶対にしないから……」

 僕は2人を見る瞳に意識を集中し、なるべくやさしい声で言った。
 2人はいくぶん身体の緊張を緩め、うなずいた。

「………うん、にいさま………」

 そう言ったのは、どちらの声だったか………。

***

 昔………僕が今より小さく今よりも幼く、そしてそれゆえに純粋だった頃。
 2人の女の子と出会った。
 その2人は2人とも当時の僕よりも若くて、当時の純粋だった僕よりもさらに、少しだけ純粋だった。
 当時の僕らは小さかった。僕らの行ける場所は大きな川岸や、活気に満ちた町の露天や、大きな大きな壁に隔てられた「お城」という名の大きな家の前…………せいぜいが僕らががんばって走って、疲れるまで走って、夕日が落ちる頃には親に怒られるからと引き返すほどの些細な距離。小さな子供がその両足を使って進めるだけの距離だった。

 だが…………子供の頃の僕らに見える世界は広かった。毎日に感動と発見があり、僕と2人の女の子はほとんど毎日くたくたになるまで遊んだ。川に行けば石を飛ばしたり、積んだり、貝殻を拾ったり。町へ行けば露天できれいなペンダントを眺めたり、近くの僕らと同じくらいの年の悪ガキとかけっこしたり、広間で楽師や奇術師が演じる劇や歌や芸を眺めたり。ただ……たまに勉強の時間があって、怖くて厳しい大きな大人に机に座るように命じられた。2人の女の子とも、週に数度か訪れるその日だけは限られた時間しか遊ぶことができなかった。でも楽しかった。

 その日々の中で、僕は1つだけ神様に祈ったことがある。………もしかしたら、1つだけじゃなくてもっと祈ったことはあったのかもしれない。でも、今思い出せる祈りはたった1つだけ。
 
 そしてそれは昔の僕にとっても、今の僕にとっても大切な願い。大切な想い。

 ”僕が好きなくらいに、2人にも僕の事を好きになって欲しい。”

 自己中心的な願いだと、人はののしるかもしれない。しかしそれは譲れない、子供の頃からの僕の望み。2人に出会った頃から今もなお続く、純粋な想い。

 その願いが叶っていたのか、それともいつも3人で過ごしたからだろうか。僕らは出会うたび、遊ぶたび、仲良くなっていった。もちろんその頃の僕らはほんの子供だったから、性的な知識もなかったし触れ合いもなかった。でも2人の女の子は僕のことを好きだと言ってくれたし、僕も二人のことを好きだと言った。子供が言う”好き”と、大人が言う”好き”というのは違うという事は、今は知っている。でも僕は思う。僕らの”好き”は、お互いを異性として認め合った上での”好き”も混じっていただろう……………と。

 今になり思い返せば、その頃に僕はこの能力を認識し始めたのだろう。
 僕は確信している。
 2人に対する想いが、僕を高みへと導いたのだと。

 ………楽しい時間には、終わりが来る。子供だと言われる歳ならば、子供だと後になって自分が認める歳ならば、大人の命じた運命を変える手段はなきに等しい。

 それを告げられたとき、僕は泣いた。泣き出しながら告白する2人と一緒に、声を上げて泣いた。

 出会ってから半年後、2人は遠いところへ引っ越すことになった。お父様に命じられた。2人はそう語った。僕はどんな事情なのか詳しく聞かなかったし、たぶん2人も多くは知らなかったと思う。それに、事情などどうでもよかった。問題は、僕ら3人が一緒にいられなくなるということだから。
 引越しの日、僕はいろいろなものを心に抱えて泣いた。泣きながら手を振った。僕と同じように泣きながら手を振る2人に向かって。再び出会うため、出会った時のため、3人で誓った約束を胸に刻んで。約束をする為に交わした、2人とのキスの感触を忘れないように。

 あれからどれくらい、星霜を見たのだろう。
 あれからどれくらい、僕は変わったのだろう。
 あれからどれくらい、2人は変わったのだろう。
 あれからどれくらい、僕らは大人になったのだろう。
 あれからどれくらい、想いは深まったのだろう。
 2人の想いはまだ、残っているのだろうか。薄れてはいないのだろうか。
 確認するのが怖くもあり、早く会いたいという衝動は強くもある。

 大切な人との別れは、覚悟していても突然に思うほど衝撃的で心に残る。ならば出会いもまた、覚悟していても突然に思うほど衝撃的なのかもしれない。

 僕は今日、あの2人と出会う。

 誓いを交わした、あの双子の姉妹と。

***

 動けなかった。
 正確には、動くということを忘れていた言うべきか。
 声すら出なかった。

「にいさま!」

 2人の女の子は同時に言い、走りにくいドレスを着ながらも必死に駆け寄って僕に抱きついた。棒立ちの僕は2人の勢いを支えきれなかった。
 幸運にも後ろには椅子があったので、倒れることはなかったのだが。

「きゃ、ごめんなさい」
「大丈夫ですか、にいさま」

 声をかけられ、少し気が戻る。
 先に言ったのが妹のリスフィーナ、後に言ったのが姉のルフィーナ………であるはずだ。何しろ双子なだけに、顔や身体つきでは見分けがつかない。
 見分け方は彼女らの性格から来る微妙なしぐさと、最終的には勘に頼るしかないという有様だ。
 とはいえ、何故だろうか?
 僕は1度も間違えたことがない。
 腰までに届く長い金の髪をシニオン(巫女結びといえば分かるだろうか?)に結い、母親ゆずりの整った目鼻立ち……一流の彫刻家が丹精を込めて妖精の像を彫れば、彼女らに似るのかもしれない。体型は少女から大人へ進む半ばのあたりか、無駄な肉はどこにも見当たらない。
 ドレスの上からでも分かる豊かな胸と、抱きしめれば折れてしまいそうなたおやかな腰。

「ああ………」
 
 2人の顔が僕のすぐ近くにあって、僕を見ている。
 身体に力が入らなかった。
 呆けてしまっていた。その……あまりにも、綺麗になっていたから。

「にいさま?」

 あまりにも長くアホ面を晒していたのだろう、ルフィ(仮)が訝しげに僕を呼んだ。
 僕は今更だが、ごまかすようにコホンとせきをする。

「いや………ルフィもリスフィも、大きくなってたからびっくりした」
「んっふっふっふ。それはもう、もう少しで結婚もできる歳ですから」

 ルフィ(仮)が妖しく笑い、僕にしなだれかかる。

「むぅ。ルフィ、ずるい」

 対抗心をそそられたのか、リスフィ(仮)が横から同じように抱きついてきた。

「ところでにいさま、どちらがどちらか分かりますよね?」
「もちろんだとも、ルフィーナ君」

 冗談めかして言うと、ルフィは心底嬉しそうに笑顔を見せた。
 その笑顔は華が咲くような、というべきか。それとも100万枚の金貨に匹敵するとでもいうべきか。
 本当に………綺麗になった。

「当然ですね、リスフィより私の方が綺麗だもん」
「えー。私だよ」

 リスフィが抗議する。

「だってルフィの方が私より太っているんですよ。この前だって、私が大切に残していたチーズケーキを――」
「ずびしっ」

 奇声を発しながら、ルフィは妹に気合いの篭もったでこピンを放った。
 見事に当たり、リスフィは痛そうに額に手をあてる。

「太ってるのはリスフィの方でしょ。だいたいこの前のチーズケーキだって、この前の前に私のを横取りしたからでしょう?」
「いらないかどうか聞いて、うんって答えたじゃない」
「うん、じゃなくてううんって言ったの!」

 リスフィが頬をふくらませ、僕の胸に顔を寄せた。

「にいさま、ルフィが因縁を吹っかけて私をケーキ泥棒に仕立てようとしています。助けてください」
「因縁を吹っかけているのはリスフィの方でしょう?」

 僕は笑うのをこらえながらやり取りを見守っていたが、これ以上放置したら険悪な雰囲気になりそうだった。

「………ルフィ、リスフィ、手を出して」

 そうやって差し出された2人の手をとると、僕は握手させた。

「はい、仲直り」

 きょとん、とした2人だったが、諒解して素直に謝り合った。元々仲が良いのだ。

「よしよし。ご褒美に奢ってしんぜよう。店長、ニラ茶を3つとみたらし団子を2本ずつ3セットおくれ」
「へいっ」

 店主は言うと、奥に引っ込んだ。

 ああ、今の状況を説明が遅れてしまった。

 僕の名前はレオンフィールド。
 身分はこの国の王子………ということになる。一応だが。何しろ国王の隠し子、つまり平民に手付けされた結果の庶子であるので、大貴族を母に持つルフィやリスフィ達に比べて後ろ盾があるわけでもなく、身分は非常に低い。父親(であるはず)の国王は僕に対しては冷たいしな。さらに言えば、母は幼い頃に亡くなってしまったし、母に親戚らしき人はいなかったのである意味では天涯孤独だ。

 そして、今僕と一緒にいる女の子の名前はルフィーナとリスフィーナ。
 2人は双子の姉妹だった。ルフィーナが姉で、リスフィーナが妹。歳は僕より3つ下。一卵性の双子ということで、同じ格好をして同じ髪型をしていると親にすら見分けがつかない。2人は陛下の第2皇后の娘で、王族としての地位は男の僕よりも2人の方が高かった。

 2人は今年、別荘での花嫁修業を終えて王都へ帰還することになった。それを知った僕は伝令を使い、会う約束を取り付けた。
 そして今、王都へ続く街道沿いの茶屋で待ち合わせをしたという次第だった。

 王都についてからは国王の目があるし、何より姫という身分は忙しいらしくまともに会うこともままならない。帰宅したらすぐに、国内外にいる有力貴族達との謁見や夜に行われる晩餐会への準備をさせられるらしい。

――閑話休題。

「お待たせしました。ニラ茶とみたらしになります」

 店主が持ってくるそれを、2人は目を輝かせて見つめた。

「ナイフもフォークもありませんけど、どうやって頂けばよいのですか?」

 ルフィが聞く。

「ん。普通に手で取って食べるだけだよ。こういう風に」

 大口をあけ、一口で、串に刺さった団子を1つ食べる。
 食べ方を示してやると、2人も同じように手に取り、ほおばった。

「おいしい」

 と、ルフィ。

「暖かい料理は久しぶりです」

 と、リスフィ。

「ああ……そうか。毒見か。大変だな」
「にいさまは毒見を通さないのですか?」

 ルフィが驚いたように聞いた。

「ん。僕は楽な身分だからね。こういう軽い奴で良かったら時々差し入れを持っていってあげるけど」
「迷惑でなければ是非」

 すかさずリスフィが言った。

「ふっふっふっ、ボロを出したわね。リスフィ」
「うゆ?」
「私よりリスフィの方が食い意地が張っているでしょう?」
「つまりルフィーナ君は差し入れはいらないと」
「みたいですね」

 この切り返しに、ルフィは難なく降参した。

「………私も欲しいです」

 僕は笑いながら髪を撫で付けてやる。
 ともあれ、そんな感じでしばし談笑していると――時間が来てしまった。

「姫様、そろそろお時間です」

 馬車の傍らでずっと控えていた女が、声をかけた。
 王女付親衛騎士団の団員だろう。女ではあるが、声は野太く筋骨たくましい。それに衣服は普通のものだが下に鎖帷子をつけている。

「まだそれほど時間が経っていないでしょう?」

 ルフィが怒ったように言う。女騎士は引き下がらなかった。

「いえ。これ以上引き伸ばすと間違いなく遅刻してしまいます」
「ルフィ、また会えるから」

 一緒に居たいのは僕も同じことなのだが、行かなければ互いに迷惑がかかるのは目に見えている。
 特に、2人の方がダメージが大きいだろう。これから応対する予定の人数も、スケジュールの過密度も違う。

「……はい」

 しぶしぶ、といったていでルフィはうなずいた。
 去り際、僕はルフィとリスフィの口元に軽いキスをしてやる。少し、ニラ茶の香りがしたのはご愛嬌といったところか。

「店主、御代はここにおいて置くよ」

 銀貨を6枚、取り出して座っていた長椅子におく。
 店の半月分の売り上げと同額のそれを見て、店主はほくほく顔で頭を下げた。

「ありがとうございます」
「ただし、僕はここでずっと1人でくつろいでいた。いいね?」
「へいっ。旦那はずっとお1人でした」
「良し」

 連れてきた馬に乗る。馬術は不慣れだが、全力疾走でもしなければ落ちない程度の心得はある。

 2人と会えてよかった。
 変わっていないということが分かったから。
 僕の気持ちも、それにおそらく2人の気持ちも。
 さて――これから忙しくなりそうだ。

***

 国の名を、アリエサスという。
 国土の境界の半分は海に、残った分のさらに半分は険しい山に、もう半分はそれぞれ大陸の各国へと面している。
 大地は肥沃。海路および大陸行路からは無数の商人がひしめき合い、険しい山からは無数の金鉄が産出される。さらに国王直下の近衛騎士団、アリエサスの双璧と謳われるアルド騎士団、エンプレス騎士団及び各地の領主の軍勢を足し合わせるとその数は30万にも及ぶ。他の国家の兵力がせいぜい10数万であるに比べ、この数は飛びぬけていた。
 大軍が存在できるということは、それを支えうるだけの資金と食糧を有しているということである。
 この当時、アリエサスは紛れもなく世界でも有数の大国家であった。

 さて。
 国の規模が大きくなり、外敵への備えも整えられれば、残る危険は自国で起こる内紛である。
 事実、10年前は現国王であるレイストンとレイストン以外の王族、大貴族、一部の商人達が手を組んで小競り合いを起こし、そのあおりでレイストンの近親者以外の王族は処刑、レイストンも長女のエイフィーナを失った。
 粛清の嵐と、大きな代償を経て、レイストンの政権は磐石になったかと思われた。
 
「お父様、お久しゅうございます。ルフィーナです」
「お父様、お久しゅうございます。リスフィーナです」
 
 そういって、双子は謁見の間に座る父に深く頭を垂れた。
 親子がするには非日常的な挨拶だが、王と王女らにとってはこれが日常であった。

 今、彼女らの衣装はレオンフィールドと出会った時のものとは違う。どちらがどちらであるか見分けがつくようにと、ドレスと髪留めの色を、碧と藍とにしてああった。ルフィ―ナは碧を纏い、リスフィーナは藍を纏う。
 
 父親であるとはいえ、到着してすぐに国王に会うことは儀礼上できないし、しない。
 前もって到着の使者を立ててはいたが、どのような者であろうと国王に会うには城壁の番兵から国王付侍従長まで、大小8つに及ぶ取次ぎの段階を踏まなければならない。
 その間、彼女らは外で用いる機能的なものから内で用いる装飾的なものへと、服を着替えなおし、髪を梳かしなおし、化粧を施しなおした。
 その作業は彼女達ではなく大勢居る侍女が行った。
 姫ともなれば、自分で何かをする必要はないし、普通、その能力もない。1人で生活できなくとも、周りが行ってくれるのだ。
 
「うむ。よく戻ったな。あちらでの生活はどうであった?」
 
 双子の姉妹は顔を上げ、父を見る。
 顔には笑顔があり、こちらを見る瞳は暖かかった。
 だが、瞳の奥を覗く時………彼女達は悟ってしまっている。
 決して逆らわない着せ替え人形として、父が自分を見ていることに。
 
「はい。つつがなく進みましたわ。先生方には色々なことを教わり、感謝しております」
 
 ルフィーナが答えた声音の奥には、無機質なものがあった。
 表層では感情を取り繕っているが、底では全く正反対のことを考えている者特有の。
 
「リスフィーナはどうであった?」
「はい。姉さまとほとんど一緒でしたわ。ただ、私の方が物覚えが悪くて叱られましたけれども」 
「そうか。まぁ、身につくならば覚えの遅速などあまり問題ではなかろう」
「はい」
 
 そこで3秒ほど、ぽっかりと話題の空白ができる。
 
「ルフィーナ、リスフィーナ、もう少しこちらに来い。顔をよう見せてくれ」
「はい、お父様」
「はい、お父様」
 
 双子は答え、足音を立てぬように父に近寄っていく。
 ルフィ―ナとリスフィーナは、そこでふと違和感を感じていた
 直前にあった会話の途絶えと、突然そう申し出た父の真意がわからない。
 姉妹の頭の中で、何かが警告を発していた。
 それが何であるかと聞かれれば、勘、としか言いようがない。
 だが、一歩近づくごとにその警告は大きく、頭に渦巻いた。
 危険だと。
 
「……大きくなったな」
 
 父が、慈しむように言う。
 ぞくり、と背筋に何かが走った。
 父の、国王の瞳を間近で見た瞬間から。
 しばし、国王と王女達は視線を交差させる。
 にらむ、というほど険しい眼光ではない。
 だが……その瞳は無形の力を、双子の娘達に与えていた。
 押しつぶすような圧力ではなかった。
 魂を奪うような、熱病に浮かされた時のような、倦怠感がじっとりと体中にめぐってゆく。

「……………」

 見つめること3呼吸ほど。
 国王が目をそらした。

「長旅で疲れたであろう。部屋に戻り、旅の垢を落とすがよい。明日はお前達が主賓の晩餐会がある」
「はい、お父様」
「はい、お父様」

 礼をし、どことなくふらつきながらも姉妹は退出した。

***

 1人になり、レイストンは深く息を吐いた。

「もはや、術をかけられぬほど衰えたか」

 建国の王、レイグラント・シルディエンはある地方領主の娘を娶り、妻の家柄の名アリエサスをそのまま国の名とした。
 戦においては鬼神の如く、治においては菩薩の如く慈悲深く、長きにわたり彼は民の心を支配した。

 素寒貧から覇王へと登ることを可能とした彼の能力は、彼の子孫らへと受け継がれていた。
 王族の男は敵意を――特に嫉妬を糧とし、人を操る。
 王族の女は好意を――特に思慕を糧とし、人を操る。

 歴史の表には決して出さぬが、アリエサスの男と女とは互いの人格を賭けて争った。
 敗者には、死か、人形としての生を。
 女が生まれたと聞いた時、殺すことも考えた。
 だが、できなかった。
 当時のレイストンは覇気に溢れていた。
 誰であろうと、当時の自分を害すことは不可能だと考えていた。それに赤子を――自分の子供を殺すことはさすがに忍びなかった。

 レイストンは王座に深く座り、目を閉じた。

 娘らは、父の贔屓目を差し引いても美しく成長していた。やがて、どこの馬の骨とも知らぬ輩と添い遂げることとなろう。
 そうなってからでは遅い。思慕を糧に能力は増大し、手がつけられなくなる。
 今、討たねばならぬ。
 そして自分が駄目であるならば、息子が戦わねばならぬ。
 ルフィーナ、リスフィーナの双子に操られぬ為に。
 だが、長男のウェインズは愚鈍と惰弱とを足し合わせた人物であった。一族の能力もほとんど受け継いではいない。
 対して、次男のグルンガストは10年前の戦にて、敵側に加担した謀反人であった。しかし己の息子であったことと、その溢れんばかりの才能を惜しみ、国外追放に処分を留めた。
 そして………レオンフィールドは――。

 レイストンは、自嘲めいた笑いを浮かべた。 

「アリエサスの王も、堕ちたものだ」

***

 ルフィーナ、リスフィーナの姉妹は部屋に戻ると、崩れるようにソファによりかかった。
 けだるい。
 間近で、父の瞳を見てから。
 何をする気力も浮かばなかった。
 このまま眠ってしまうのは行儀が悪いと分かりつつ、侍女か騎士の誰かが寝室に運んで適当に取り計らってくれるだろうと考える。
 もはや彼女らの安眠を妨げるものがなかったかのように思われたその時、王女付護衛騎士がドアをノックした。

「なぁに……?」
「姫様、レオンフィールド殿下から言付けがありますが」
「にいさまから? 入って」
「は。失礼いたします」

 女騎士が敬礼する。双子は行儀悪くソファに身を預けたまま、薄目を開けた。

「本日の夕刻より、会いたいとおっしゃっているそうです。いかがなされますか?」
「いつでもお待ちしておりますと、お伝えして。もちろんお父様には内緒で手引きしてね」

 ルフィーナが言う。人見知りするためか、レオンフィールド以外の前ではリスフィーナはほとんど喋ることはない。必然的に騎士への指示、侍女へのお願いは姉の役目となっていた。

「しかし………男が女の部屋に訪れるには多少非常識な時刻かと思いますが」
「シェスタ、そのあたりの調整は貴方と副団長さんとでよろしく取り計らってちょうだい。にいさまは、特別なの」
「………は……」
「工作費は、必要な分だけ支払うわ」
「分かりました。努力いたします」
「ありがとう。じゃ、下がって」
「失礼いたしました」

 敬礼し、女騎士が下がる。
 パタンとドアが閉められると、そこには倣岸で、他人に命令することに慣れている王女ではなく、年頃の少女の顔があった。

「ふ…うふふふふふふ……。リスフィ、にいさまがいらっしゃるって」

 ルフィーナは、ひどく幸せそうに笑った。先ほどまでのけだるさなど、まるでなかったかのように目をぱっちりと開けている。

「うん、早く来て欲しいな」
「ちゃんと、起きてないとね」
「うん、粗相のないようにしないとね」

 リスフィの顔にも、幸せそうなものが浮かんでいた。
 ルフィーナが、近くにある呼び鈴を手に取り、鳴らす。

 ちりん、ちりん、という音と共に、2名の侍女が現れた。

「これから大切な人を出迎えるの。そのための着替えを手伝って頂戴」
「はい、姫様」

 恭しく、侍女は頭を下げた。

***

 夜。
 光を得る手段は太陽と、火とに限られていたこの時代、日が沈めば大抵の者は寝静まる。
 この時間に起きている人間といえば、政務に追われた官僚や火急の用事のある商人、それに睦言を奏でる恋人や夫婦。

 暖炉の炎と燭台のともし火が、僕らを暖かく照らす。
 僕と、2人の少女達を。
 ふかふかの絨毯が敷かれた上で、僕らは川の字を描くように寝転がる。
 僕は真中で、少女達は僕の右と左とにそれぞれ寝転がっていた。
 ともすれば眠ってしまいそうなほどに心地よい半面で、眠るのはもったいないと叱咤する僕がいる。
 会話は、あまり交わされなかった。
 触れ合うだけで満たされるような気がするが、触れ合えば触れ合うほどにもっと互いを感じたいという想いが高まる。
 胸が、柔らかく押し付けられている。僕の左右から。
 10年前、一緒に風呂に入った時とは違う。女らしい膨らみに僕の鼓動がいやおうにも高くなる。
 少女らの年は、外見から察するに16,7ほどか。腰まで届くほどの長い金髪は、ちょこんと髪の先端のあたりで結わえてあった。神殿で見かける巫女のようではあるが、それにしてもこの少女ほど見目麗しい者はいないであろう。
 意匠をこらした豪奢なドレスではなく、日常で用いられる普段着。それにしても一般市民が着るものとは材質からして高級だった。
 撫でてみれば絹の手触りと、その下にある肌の暖かさが心地よい。

「ねぇ、にいさま………」
「ずっと待っていたんですよ、私達………」

 甘えるように頬を僕の頬にこすりつけ、囁くように耳元で言う。
 僕の肩を抱くようにして、胸がより強く密着した。
 心臓の音が、トクントクンと伝わる。そのリズムは、次第に早まっていった。
 2つの唇が、同時に僕の頬に触れる。
 漏れる、熱い吐息。

「抱いて………私達を支配してください…」
「心も身体も、にいさまのモノにして欲しいの………」

 かっと、僕の頬が熱くなった。
 血が、溶岩へと変質したかのように、たぎっていた。
 この状況で据え膳に手を伸ばさぬ男が、果たしているだろうか。
 僕もまたそこまで枯れては居なかった。むしろ、飛びそうになる理性をなだめすかすことに内心で必死になっていた。

 ああ、僕も待っていたのだ。
 2人が遠くへ行ってしまってから、10年もの間、想いを変えることなく。
 抱きたい。
 初めての証を刻み付けたい。
 支配したい。
 2度とどこへも行かぬように。

「服を……脱ごうか」
「はい、にいさま」

 同時に聞こえる、声。
 同じ顔で、同じ声で、双子の姉妹は恥じらいながらも僕に従う。
 立ち上がり、服に手をかけた。
 ほっそりとした手が、胸で結ばれている紐をゆっくりとほどく。
 シュルシュルと音が鳴り、胸元の素肌が目に広がる。
 上体を覆っていた布が、1枚、はらりと落ちた。
 白いカッターシャツとその下にある肌が顔を出す。

「上、つけていないのか」
「2人でいるときと、にいさまの前だけですけどね………」
「胸が締め付けられる気がして、嫌いなんです」

 顔を赤らめて言う姿が、初々しい。
 ついで、スカートに手をかける。
 おそらく脱ぐことが恥ずかしいのだろう、動作はひどく緩慢だった。
 それが逆に、彼女らの色気を際立たせる。
 下は、レースの入った純白のパンティと、ニーソックスを吊り上げるためのガーターベルトのみ。
 すらりと伸びた脚が、なまめかしい流線を描いている。
 視線を上にずらせば、胸がカッターシャツを押し上げ、すでにしこっている乳首の形までもが見て取れる。それは彼女達の呼吸にあわせ、規則的に上下していた。
 ある意味、全裸よりも厭らしいその姿になった時、2人はのろのろと動いていた手を完全に止めてしまった。

「どうしたの?」
「そんなにじろじろ見たら駄目です。それに、私達だけなんて恥ずかしいですよ」
「にいさまも………」

 語尾がか細くなり、聞き取れない。おそらくは、脱いでくださいと続けているのだろうが。

「ああ、そうだね」

 手早く上着を脱ぎ、上半身を露出させる。
 余計な脂肪はつけないようにしているが、騎士のように筋骨たくましいとは云い難い。容姿に関しては王族らしくそこそこだとは思うのだが、肉体美という点ではせいぜい中の上くらいだろう。あまり自信がない。
 ちと、視線が痛いんですが。

「あんまりじっくり見られると、脱ぎづらいんだけど」
「えー。にいさまも同じくらい見てましたよー」

 いたずらをしている最中の子供のように、言い返す。
 好奇心を抑えられないような、瞳。

「じゃ、私達で脱ぎ脱ぎさせていただけますか?」
「んー」

 少し考えたが、まぁ、別にかまわないだろう。どうせ裸になるのは一緒だから。

「じゃ、僕も残りを脱がせていいかい?」
「………にいさまがしたいなら」
「私も、にいさまのお好きなようにしてください」
「ああ。……先にしてくれ」
「はい」

 歩み寄り、僕の腰帯に手をかける。
 上から、2人の金の髪を撫でてやる。
 女の子の髪って、男と違って何故こんなに手触りがよいのであろうか。
 すっと、ズボンが降ろされる。ただ1つ残ったトランクスに、姉妹はおそるおそる手をかけた。

「…………………」

 視線が、そこに突き刺さる。
 隆々と、というとサイズの大きさを過大報告しているといわれそうだが、まぁ………すでに硬くなったモノが2人の目の前に顔を出していた。

「こう………なっているんですか………」
「触ってもいいですか?」

 積極的なのはルフィだった。頬を赤らめてはいるが、羞恥心よりも好奇心が勝っているようだった。

「ん。その前に脱ぎ脱ぎしてからね」

 リスフィに唇を触れ合わすだけのキスをし、ルフィに向き直る。

「きゃんっ」

 ルフィは、可愛い声で驚く。
 脱がす際に、わざとブラウスを押し上げている乳首を軽く押したり、擦ったりしてやったから。

「にいさまのえっち」
「ルフィがだろう? 少し触っただけで身体が熱くなってる」

 上を脱がせる。柔らかそうな胸が露出した。
 今度は直接、円を描くように胸を刺激する。やわやわと、くすぐるように。
 胸、特に乳首というのは人体急所の1つなのだ。そうでなくとも、まだ成熟しきっていない女の子の身体はデリケートにできている。最初から強くしすぎると、痛みしか感じない。
 乳首に触る時は特に慎重に、擦るように、時折ひっかくようにしてやる。
 相手の瞳を見て、反応を確かめながら。
 
 息が、乱れてゆく。
 瞳が、快楽に染まってゆく。
 乳首がコリコリに固くなり、自己主張した。
 自分の手で、絶世の美女が感じている。その姿に、いやおうにも支配欲が満たされてゆく。

「にいさま、私にも………」
「ああ、ごめん」

 夢中になりかけたところで、待機させられていたリスフィが僕に声をかけた。
 ルフィの唇に触れるだけのキスをし、待たせたお詫びにリスフィに深く口付ける。

「んっ………!」

 リスフィが驚き、身体を硬直させた。
 リスフィの小さな唇を、僕の舌が這い回ったから。

「力、抜いて。本当にイヤだったら、やめるから」 
「はい………」

 舌を、差し入れる。
 くちゅ………と、水音が身体の中に響く。縮こまっているリスフィの舌を追いかけ、絡ませながら唾液を少しずつ送る。
 こくん、こくん、とリスフィの喉が鳴り、僕の唾液を嚥下する。
 恍惚とした顔と、蕩けた瞳。
 身体が、火照っている。
 要領を得たのか、次第にリスフィの舌の動きも積極的になってきた。
 僕がやった動きをトレースするように、舌を絡め、唾液を流し込む。
 ぞくぞくと、背筋に何かが走った。
 才能だろうか、それともこれがはじめてではないのだろうか。感じさせるツボを心得ているかのように高い技巧で、リスフィは深いキスをしてくる。

 くちゅ……くちゅくちゅ………くちゃ………

「はぁ………」

 唇を離すと、こもった熱を押し出すようにリスフィは息を出した。立つこともおぼつかないのか、僕の胸に体重を預けている。
 その間、僕の手はリスフィのブラウスを脱がせていた。
 リスフィの頭を撫で、ルフィに目配せする。
 嬉しそうに微笑み、ルフィは僕に抱きついてくる。今のキスの刺激と彼女のへその辺りに僕の反り返ったモノが当たって………非常にやばい。もし僕が童貞だったら、この刺激だけで射精してしまっていたかもしれない。

「カタく、なってますね………」

 僕のそれを凝視して、ルフィが少し上擦った声で指摘する。
 リスフィもまた、姉の視線を追い、こわごわと僕のモノを見つめた。

「2人が綺麗だからさ、興奮してるんだ」

 正直に言うと、2人は可愛らしくはにかんだ。

「下も、取るよ」
「はい………」

 緊張と、期待の入り混じった声。
 純白のガーターベルトとニーソックスはそのままに、今度は悪戯をせずにゆっくりと2人のそれを降ろす。
 髪の色と同じく、金色にけぶる恥毛。その下にある淫靡な女性器。
 若草と言っていいほどに、2人のそこは薄かった。かきわけるまでもなく、キスの影響のためかすでにかすかに濡れている女の子の大事な部分がはっきりと分かる。

「やだ……にいさま………」
「恥ずかしいです」

 言葉とは裏腹に、彼女達の秘部は新たな愛液を分泌しはじめていた。
 見られて、感じている。
 2人とも、身体が羞恥に震えていた。

「僕のもじっくりと見ていただろ? おあいこだよ」

 今更だが、経験の差は大きい。僕の方はもう、裸を見られても堂々としていた。多少恥ずかしいことは確かだが、2人ほどではない。

「むぅ…………理不尽です……」

 ルフィが、膝立ちにしゃがんだ。今更ながらに、身体を隠そうとでもしているのだろうか。
 と思っていると、彼女は妹に上目遣いで目配せをした。
 無言でのアイコンタクト。
 一体何を………?
 彼女達の視線を追い、僕は納得した。
 頭の高さがちょうど、僕の股間の高さにあった。
 視線は、真正面。
 奇妙な生き物を見るかのように、僕のソレを凝視している。
 おそるおそるといったていで、ルフィの手が伸ばされた。

「服を脱いだら、触らせていただけるって約束でしたよね……」

 耳を澄まさなければ聞こえないほどの小さな声。
 顔が真っ赤だった。

「きゃっ」
「うわっぉ」

 ルフィの白魚のような手に触れられた瞬間、僕のあばれん棒将軍は節操なくびくんと震えた。
 ルフィとリスフィが、将軍様の突然のお怒りに驚きの声をあげる。

「触っても、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。というか是非触って欲しい」
「……………変なの……」

 一転して及び腰になっていたルフィを尻目に、リスフィが目を輝かせ、手を伸ばした。 
 弱々しく、棒を握る。
 屹立したそこに集まった血が、そこに集中している神経が、愛しい彼女の手の平の情報を伝えてくれる。

「どくどく脈打ってる……にいさま、痛くないですか?」
「いや……すごく気持ちいい。もう少し強く握ってもいいよ」

 理性が、暴走し始めていた。
 処女に手でさせるなど気が引けるが、リスフィは好奇心を顕わに僕の言うことを実践してくれる。
 喉が、カラカラに渇く。
 横から、手が添えられた。
 ルフィの手。
 リスフィの指の隙間を埋めるように、僕の屹立に添える。

「…………っ」

 肉体よりも、精神的な昂ぶりが僕の口から小さなうめきとなってこぼれた。
 愛しい相手が、ルフィ、リスフィの双子が、僕のそれに小さな手をかけているという光景。
 恍惚としてしまいそうなほどに、破壊力があった。

「気持ち……いいのですか?」

 上目遣いで、ルフィが聞く。

「ああ」

 短くそう答えると、ルフィは嬉しそうに微笑んだ。

「何だか、可愛い………」

 リスフィが言う。その言葉には男として複雑なものがあったが、その考えもリスフィの次の行動の前に吹き飛んだ。

「ちゅ♪」

 あろうことか、亀頭の部分にリスフィは口付けした。

「く………」

 ビクンッ。

 モノが、再び震えた。2人はびっくりしたかのように手を離してしまった。

「にい……さま?」
「気持ちよかった」

 僕の言葉にふたりはほっとしたように小さな息を吐いた。

「本当ですか? びくっって、すごく震えましたけど」
「あんまり気持ちいいと、男はそうなるんだよ」
「へぇ……。また、キスしていいですか?」
「ああ、是非、お願いしたい」

 言いながらも、脳髄のどこかが切れ始めていた。
 時折僕の様子を伺う、2人の蒼い瞳。
 それを見ていると、頭がぼんやりとしてくる。
 愛しいという気持ちが溢れて、気が狂いそうになってしまう。
 もっと触れてほしい。もっと感じたい。そして………できうるならば感じてほしい。
 支配してくれと、ルフィは言った。
 心も身体も僕のモノにして欲しいと、リスフィは言った。
 ならば……躊躇する理由などどこにあるのだろう。
 彼女達が望んだのだから。

「ちゅ、チュッ」
「んっ、ちゅ………」

 ルフィまでもが参加し、僕の醜悪なソレに可愛らしい唇をつけていた。
 むず痒く、心地よい。
 だが、あまり大きな刺激ではないために焦らされているような感じが付きまとう。
 肉体というよりも視覚と、精神が刺激されての快楽が大きかった。

「ルフィ、リスフィ、僕の目を見て」
「ふぁ……?」

 2人が見上げる。僕の屹立を優しく握ったまま。
 瞳に、意識を集中させる。
 発動する、人を操る能力。
 僕の瞳を見た者の被暗示性を、少しの間だが極限にまで高める。
 見返す2人の瞳が、次第に……とろんと曇ってゆくのが見て取れた。
 この間、2人には僕の言うことが全て真実になる。
 文字通り、全てだ。

「これから、ルフィとリスフィは僕のモノを舐めるのがとても好きになる。僕が気持ちいいと、2人もすごく気持ちよくて幸せになる……いいかい?」
「はい……にいさま。にいさまが気持ちいいと、ルフィも気持ちよくて幸せになります」
「はい……にいさま。にいさまが気持ちいいと、リスフィも気持ちよくて幸せになります」

 2人が、僕の言ったことを自分自身に反芻するように呟く。
 僕は手をパンッと叩いた。
 暗示はそのままに、2人の意識が戻る。もっとも、僕が何をしたのかはきっちり覚えているのだが。

「にいさま……いまさらですよ……」

 ルフィが、少し怒ったように言う。
 心がちくりと痛んだが、その時の僕は正常ではなかった。欲情の歯止めが、きいていない。

「何が……?」
「にいさまが気持ちいいと私達が幸せで気持ちいいのは、当然のことですから………」

 リスフィが姉の言葉を補足すると、僕の屹立に舌を添えた。ルフィも妹に習い、僕のモノに舌を這わせる。

 くちゃ………くちゅくちゅ………れろ………

「にいさま、気持ちい?」

 ルフィが、上目遣いで僕に聞く。

「ああ、すごく……歯は、たてないようにしてくれ」

 背筋に、さっきの数倍もの線が走る。

 くちゅ……ちゅっ………ぺろぺろ………じゅるる………

 2人の唾液に、屹立の全体がてかてかと光る。
 2人は僕のモノに舌を這わせながら、時折わざとお互いの舌を絡めていた。僕に見せつけ、自分達だけではなく僕をも興奮させるように。

「あ、先っちょから何か……出てきました」

 欲情のためか、かすれている声で、リスフィが言う。

「先走りっていってね……男がすごく気持ちよくなると、そういうのが出てくるんだ」
「へぇ……にいさま、気持ちいいんですね………んっ……」

 リスフィの身体が、震えた。やや遅れて、ルフィの身体も震えた。
 彼女らの腰が揺れていた。
 軽く逝ってしまったのかもしれない。
 暗示の通り、僕のモノに奉仕することがとても好きで、僕が気持ちいいと2人は感じるのだ。

「ふぁ……すごい……気持ちいい……です…」

 ぴちゅ…………くちゅ……ちゅる……ちゅるちゅる……

 2人の口戯に、熱がこもる。
 カリに舌を這わせ、亀頭を舐め、鈴口に口をつけ、僕の先走りを幸せそうに吸い取る。双子ゆえか、絶妙のコンビネーションだった。
 きっと、2人とも学習能力が凄く高いのだろう。快楽から来る僕のうめきを察知して、どこが感じるのか、どこをどの強さで刺激すればよいのかを的確に捉えてくる。

「もうすぐ………逝きそうだ」

 歯を食いしばりながら僕が言う。背筋を、衝動がせりあがってくる。
 逝くという意味を、2人が知っているかどうかは分からなかった。だが、僕に大きな波がきていることを敏感に察知していたのだろう。
 2人が、切羽詰った声を上げた。

「にいさま……いい……変なの……」
「あついよ。からだがあつい……」

 舌を僕の屹立にあてたまま、言う。その刺激がとどめだった。

 びゅる、びゅるるっ!

 鈴口から、大量の精液がほとばしった。

「んぅ!」
「あっ!」

 白濁液を顔に浴びながら、双子の少女たちは鋭い叫びをあげた。
 しばらく身体が大きく震えたかと思うと、はぁはぁと荒い呼吸を繰り返す。

「にいさまにご奉仕して……すごく、気持ちよかったです……」と、ルフィ。
「私……も。飛んで、しまいました……」と、リスフィ。

 双子は濡れた瞳で、白濁液にまみれた顔で、僕を見上げる。

「僕もすごくよかった」

 気持ちよくしてくれたお礼に、2人の顔を撫でてやる。

「はにゃー、幸せです……」
「駄目だよリスフィ、後始末が残っているんだから」
「うん。そうだね、ルフィ……」
「何をするつもりなんだい?」
「後始末ですよ、にいさま♪」
「にいさまのと、私たちのお顔をキレイキレイするの……」

 ルフィが楽しげに言い、リスフィが笑顔で補足する。
 ちゅっと、再び2人は僕のモノにキスをした。
 そのまま、精液に汚れたモノを舐め取ってゆく。
 時折、互いの顔についた精液を舐めとり、淫靡な顔で双子は深いキスを交わす。
 心底から、おいしそうに。僕の出した精液を互いの唾液と共に嚥下してゆく。
 そうこうしていくうちに、僕のモノが節操なく復活を始めていた。
 長い夜になりそうだった。

< 続く >

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