ドールメイカー・カンパニー2 (22)

(22)約束の日(前編)

 諒子はその日、いつに無くゆっくりと起床した。
 いつもは休日でも8時には目を覚ましているのだが、今日はふと目を開けると枕もとの時計が10時を指していたのだ。

「う~んっ、良く寝たわぁ」

 布団の上で伸びをすると、暫らくぶりに身体が軽かった。
 この一週間は不思議と眠気が強く、身体もだるかったのだが、今朝はスッキリとしていた。

「さっ、急がなきゃ」

 諒子はそう呟いてサッと立ち上がったのだが、その場で頭を傾げた。

 (ん?何を急ぐんだっけ?)

 しかし、そんな疑問さえ一瞬で頭の中を通り過ぎ、諒子は何事も無かったかのようにバスルームへ足を運んでいった。
 すると中から水音が聞こえる。
 どうやら美紀が一足先に入っているようだった。
 諒子はお構いなしに鏡の前でパジャマを脱ぎ洗濯機へ放り込むと、バスルームに入っていった。

「おはよう、美紀」

 諒子は頭から熱いシャワーを浴びている美紀に声を掛けた。

「えっ?あ、お姉ちゃん、おはよう」

 ビックリした顔で振り向く美紀の姿が諒子の目に焼きついた。
 ホンの2、3年前までは棒のように細かった体が、すっかり女らしく膨らみ、そして若鮎のようにしなやかだった。
 無意識に・・・全く無意識に諒子の手は美紀の乳房に伸びていた。
 思ったよりずっと重量感があるその感触を指で確かめていた。
 美紀は、そんな諒子を嫌がるでもなく不思議そうに見上げていた。

 その視線に、ふと我にかえった諒子は慌てて手を引っ込めた。

「ご、ごめん。ちょっと寝惚けてたのかなぁ」

 そう言って諒子は照れ隠しのように頭から熱いシャワーと冷たいシャワーを交互に浴び始めた。
 その様子を今度は美紀がマジマジと眺めていた。
 普段のきりっとした諒子の服の下に、こんな完璧な女の身体が隠れているなんて驚きだった。

 真っ白でシミ一つ無い肌、完璧なプロポーション、そして艶やかな黒髪・・・

 女の美のエッセンスのような姉が、ひとたび剣を取ると鬼神のように変るそのギャップが奇蹟のように美紀には思えた。

 ふと気が付くといつの間にか逆に諒子が不思議そうな顔で美紀を見ていた。
 そして2人は顔を見合わせると、クスッと笑った。

 そのあと仲良くバスルームから出た2人は、いつものように手分けして朝食を作り、テレビも点けずに向かい合って食事をした。
 ただいつもと違っていたのは、休みの日でもだらしない服装が嫌いな諒子が、今日に限ってバスローブを羽織っただけの美紀に小言を言わなかったことだった。もっとも当人も同じ格好だったので、言える筈もないのだが。
 久しぶりに2人だけのゆっくりした食事で色々な話をした筈なのだが、どういう訳か今朝はそれが記憶に残らない。
 会話が終わった瞬間に頭からスッと消え去ってしまうのだ。
 まるで始めてのデートの朝のように、2人の心はもうここに無いのだった。

 そして何かに急き立てられるように食事が終わるやいなや2人してテキパキと後片付けを始め、競うように身支度を行った。
 普段スッピンに近い2人だっただけに、ほんの少し化粧をしただけで匂いたつような美しさだった。

 そしてふと時計を見上げると、針はもう11時を指そうとしていた。
 美紀の視線に気付いた諒子も無言で時計を見上げる。

 チコチコチコチコ・・・

 秒針の進みとともに2人の心に張り巡らされた魔法のベールが徐々に透きとおっていった。

 自分達が何故ここにいて、何を待っているのか・・・

 それが次第にハッキリと心に蘇ってきた。
 そして・・・脳裏にその人の姿が浮かんだ丁度その瞬間、部屋のチャイムが鳴らされたのだった。

 弾かれたように立ち上がると、2人は顔を見合わせ、玄関にダッシュした。
 瞬く間に2つの鍵を開け、もどかしげにチェーンを引き抜くと、ドアを開けた。
 差し込む朝日にそんな2人の顔が白く輝き、そして毀れるような笑顔が広がった。

「お待ちしていました」

 それは、はたしてどちらが言ったセリフだったのだろう・・・

 胸に手を当て、深々と頭を下げながら、“きつね”くんは、ふとそんな事を考えていた。

「お迎えに上がりましたよ、お2人さん」

 頭を上げると、“きつね”くんはいつもの口調でそう言った。
 無言でコックリと頷く様子は、まるで双子のようにソックリだった。そして、申し合わせたように“きつね”くんの両腕に2人は縋りついたのだった。

「さ、それじゃ、とっとと確認をしちゃいますか」

 2人を引き連れて部屋に上がりこんだ“きつね”くんは、そう言うと2人を壁際に立たせた。

「じゃ、前からね」

 “きつね”くんが口にしたのはそれだけだった。
 しかし2人には、それで充分だった。
 競うようにバスローブの紐を解くと、あっさりとそれを脱ぎ捨て下着もつけていない全裸を“きつね”くんの目に晒したのだった。
 “きつね”くんは美紀、諒子の順番で、体をじっくりと見ていった。
 納品の最終チェックだった。
 僅かな瑕疵も見逃さない厳しい視線で確認する。
 ことに2人ともスポーツ好きで、しかもここ1週間はマインド・サーカスによるセックス指導も集中して行ったため、身体に擦り傷や腫れ物が出来ていないかを注意する必要があった。
 目を擦り付けんばかりに近づけて観察していく。

「よし、じゃ次、後」、「OK、今度は両手を上げて、そ、バンザイ」、「じゃ、今度は四つん這い」、「よし、最後は股間、自分で広げて・・・」

 テキパキと“きつね”くんの指示が飛び、それに応えて2人は次々とポーズを取っていった。
 その姿はまさに調教済みの家畜であり、マインド・サーカスにより実現した、人が人を飼う姿でもあった。

 床に四つん這いで“きつね”くんに女の全てを晒している2人の尻に、“きつね”くんはポケットから取り出したハンコをポンと押した。
 それは特殊なインクで、透明なのだが見る角度によって文字が浮かび上がるものだ。
 ハンコには丸の中に『マ』が刻まれていて、ドールの品質保証マークである。
 1週間程度はもつので、納品時の確認に使用していた。

「さ、2人ともOKだよ。合格。最後の仕上げはこれだよ」

 そう言って“きつね”くんは用意してあった服を2人に手渡した。
 美紀は制服、諒子はいつも授業で着ているスーツだった。
 美紀は素直にその場で渡された服を身に付け始めた。
 しかし諒子は両手で服を抱えたまま、何かを言いたげな視線を“きつね”くんに向けていた。

「なに?諒子」

 小首を傾げる“きつね”くんに諒子は意を決したように口を開いた。

「次は・・・いつお会いできるのですか」

 その言葉に美紀の手も止まった。
 “きつね”くんは軽く肩を竦めると言った。

「1週間後に点検があるから」

「その・・・その後は」

「1ヶ月点検、3ヶ月点検、半年点検、あとは1年点検を毎年・・・ってとこかな」

「それだけ・・・なんですか?たったそれだけしか・・・」

 驚きの表情で目を見開いた諒子の口に“きつね”くんの人差指が触れた。
 思わず口を噤んだ諒子に“きつね”くんはゆっくりとクビを横に振った。

「早く着てしまいなさい」

 優しげなイントネーションであったが、それは命令だった。
 諒子の意思とは関係なくその手は服を取り上げ、身に着け始めたのだった。

 そして“きつね”くんの携帯がワンコールの着信を告げたときには、2人の準備は整っていた。

「さて、車の準備も出来たみたいだ。美紀、諒子・・・出発だよ」

 “きつね”くんのその言葉に2人の表情が僅かに強張る。
 そんな2人の肩に手を置くと、“きつね”くんは静かに言った。

「僕はドール・メイカー。ドールを作るのがお仕事さ。そして君達ドールには本当の主人が待っているんだ。黒子(くろこ)の僕は・・・もうじき君達の記憶から姿を消させてもらいます」

 “きつね”くんはそう言うと、小さく微笑んで美紀と諒子の目を覗きこんだ。

 縋るような視線の美紀、しかし・・・諒子は違っていた。
 驚くべきことに、挑むような挑戦的な視線が“きつね”くんの視線を受け止めていたのだ。

「忘れさせる?出来ないわそんなこと・・・絶対」

「ふふふっ、舐めてもらっちゃ困るね。僕の実力を」

 “きつね”くんは楽しげにそう言った。

「いいえ。舐めていないわ、私の“ご主人様”だもの。でもね・・・必ず思い出すわ、近いうちにね。だって私、きっと待ちきれないと思うもの、一年毎だなんてっ。絶対思い出して・・・そしてご主人様のもとに戻ります」

 諒子の言葉に“きつね”くんは苦笑いをしながら言った。

「ホント、自身満々なんだから、君は。ま、いいさ。もし本当に思い出せたら俺の傍に置いてあげるさ。それより・・・もう時間だ。いくよ、『WAKEUP Doll・・・WAKEUP』」

 その言葉を最後に2人の意識は深い海の底に引き込まれて行った。
 虚ろな視線を宙に漂わせる2人に“きつね”くんは改めて胸に手を置き、深々とお辞儀をしたのだった。

 しかし最後の瞬間の諒子の表情が、“きつね”くんをほんの少しだけ・・・不安な気持ちにさせた。

                    *

 車で僅か30分程度の道のりだった。
 この地方都市の中では閑静な住宅街として名高い町をとおり過ぎ、その町並みを見下ろせる高台にその屋敷はあった。
 2メートル以上ある塀でぐるりと取り囲まれた敷地の中はまるで公園のように手入れされ、そこに純和風の平屋の家屋が二棟あった。
 ものの価値など判らない者が見ても明らかに見事な風格を感じさせる建物であり、間違いなく金持ちの邸宅だった。
 しかし、この種の邸宅の常として、目立たぬようにではあるがセキュリティにかなりの投資をしている筈なのだが、何故か今日は門が開放されており、車はフリーパスで敷地内へ入っていった。
 そして車は2棟のうち手前の真新しい方の家の前で停車したのだった。

 小春日和の暖かい日差しの中、車から4つの人影が降り立ちその建物に吸い込まれていった。
 先頭の2人は、“くらうん”と“きつね”くん。そして後に続くのは無論、諒子と美紀だった。

 そして一行が玄関に辿り着いた時、まるでタイミングを計っていたかのように内側からその扉は引き開けられた。
 思わず一歩さがった“くらうん”は、黒いサングラスで視線を隠した無表情の大男をびっくりしたように見上げた。

「いらっしゃいませ。“くらうん”さま。黒岩がお待ち致しております」

 体格に見合った野太い声が、意外に丁寧な口調でそう言った。

「あぁ、これはどうも。少しお待たせしてしまいましたか」

 途端に“くらうん”はいつもの愛想の良さを取り戻し、男に微笑みかけた。
 しかし“きつね”くんは挨拶も返さずに、男の顔をしげしげと見詰めていた。

「うわぁ・・・。これ、本当に“くま”さんの作品?カッチカチに固めてありますねぇ」

「えぇ。そういうリクエストでしたから。でも、もう4年ものだけど・・・どう?全然緩んでないでしょ」

 “くらうん”は自慢げに言った。
 自分の開発した催眠持続薬の効果だと言いたいのだろう。

「うん。とりあえず外見は大丈夫みたい。あとで中身も見せてもらえます?」

 “きつね”くんがそう問い掛けた相手は当人ではなく、“くらうん”だった。

「今日は多分駄目でしょう。彼は来月が点検月だから“くま”さんに聞いてみるといいですよ」

 2人はそんな会話をしながら男の案内に従い、諒子たちを引き連れて建物の奥に進んで行った。
 しかし案内されたのは、意外にも洋室だった。
 30畳程もありそうな広さに毛足の短い絨毯が敷き詰められ、猫足の大きなソファが幾つも余裕を持って配置されている。

「こちらでお待ち願えますか」

 案内の大男はそう言ってすぐに姿を消した。
 残された“きつね”くんは諒子と美紀をその内の一つのソファに並んで座らせ、自分達はそれと直角に配置されているソファに腰を下ろした。
 美紀達の正面には独り掛けの椅子が鎮座している。
 無論、この家の主の席なのだろう。

 手持ち無沙汰になった“きつね”くんは、部屋の中をキョロキョロと見回していた。
 すると待つほども無く、部屋の扉が乱暴に開かれた。
 防音が行き届いている室内に、その音は酷く粗野に響く。
 少し眉を上げてそちらに注目した二人の視界に、一人の男の姿が飛び込んできた。

 顔にグルグルと包帯を巻き、焦ったように駆け込んできた男・・・無論、黒岩健志である。

 健志は、挨拶にさっと立ち上がった“くらうん”達などまるで目に入らぬように一直線にソファへ歩み寄ると、背後から正面に回り込みそこに座っている2人を確認した。

「おおっ!こっ・・・こいつらだっ!!来やがったっ、ふ、2人揃ってぇっ!!」

 健志はその場に膝を着くと、ボンヤリした視線を宙に向けている諒子の顔にそっと震える手を伸ばした。

「り・・・りょうこぉ・・・諒子・・・ホンモノなのか・・・」

 健志の指が諒子の柔らかな頬を撫でる。
 夢にまで見た獲物が遂に自分の下に転がり込んできたのだった。

 (ついに・・・ついに捕まえたっ!お、俺のモノに出来たんだ。こいつを・・・この忌々しい女をっ、この極上の女をっ、ついに手に入れられたんだぁ~~っ!!)

 2人の顔を見ているだけで健志の股間は暴発してしまいそうだった。
 一刻も早く2人の女を味わいたかった。
 その為には、邪魔な2人の男に早く引き取って貰うしかなかった。

「ご苦労様でした。振込先のメモ有りますか」

 健志は立ち上がり、振り向きざま“くらうん”にそう言った。

「はい?あっ・・あぁ振込先ですね。えぇとぉ・・あ、これです。ここに・・・」

 “くらうん”がそう言って振込先の書かれた書類を取り出すと、健志はそれをサッとひったくり中も見ずにいつの間にか控えていた先ほどの大男にそれを渡した。

「室田、ここに4000万振り込んで来い」

 それだけ言い渡すと、もう男の方など見もせずに“くらうん”に向き直った。

「金はすぐに入れます。振込み証をあとで確認します?」

「あぁ、いえ。それには及びません。我々の方で確認できますから」

「じゃあ、俺の方は品物は確認したから、これで納品終了ですよね?」

 健志の余りの性急さに“くらうん”は苦笑いした。

「いえ、あと簡単にドール達の使い方をお教えいたしますよ」

 そういって“くらうん”は“きつね”くんに視線を向けた。
 ふられた“きつね”くんは、鞄から小さな冊子を取り出して、健志に言った。

「始めまして、“きつね”といいます。この2人の調教を担当しました。いま“くらうん”から操作説明について話がありましたが、今回リクエスト頂いた内容は非常にベーシックなものでしたので、一通りこの冊子に命令の“ワード”が網羅されています。折角お買い上げ頂いたお客様をお待たせするのは不本意ですので、今日のところはこの冊子だけを置いておきます。今度の土曜日が1週間点検ですから、その時に必要であればレクチャー致します。それで宜しいでしょうか?」

 “きつね”くんの言葉に健志は一も二も無く頷いた。

「あ、あぁ。そっ、そうしてくれ。別に危険とか、無いんだろ?」

「勿論、ございません。買主様には絶対に暴力を奮えなくしてあります。それにあと2つのリクエストも完璧に刷り込んで有りますのでご安心下さい」

「そっ、そうかっ。判った。1週間待ってくれるのか、アリガト。じゃあ、も、良いかな?」

 気が急いている健志は、言うことが支離滅裂になってきた。
 “くらうん”達も、その様子を見て今日はもう駄目だと悟ったようだった。

「それでは、我々はお暇(いとま)させて頂きます。どうか、当社のドールを末永くご愛用いただけますように」

 そういうと“くらうん”と“きつね”くんは胸に手を当てて深々と頭を下げた。

「あぁ。OK、了解、了解。また頼むわ」

 それだけ言うと、健志は2人を急かすように部屋の外まで案内し、そしてそこで別れを告げたのだった。

「じゃ、またな」

 顔を見合わせる2人に、部屋のドアの鍵が下ろされる音がハッキリと聞こえたのだった。

「じゃ、帰りますか」

 “くらうん”がそう話し掛けると、“きつね”くんが妙に難しい顔で考え事をしていた。

「“きつね”くん。あんまり気にする必要は有りませんよ。あの年頃の高校生に諒子クラスのドールを与えれば、だいたいあんなモンですよ」

 “くらうん”は“きつね”くんの肩を叩いて軽くフォローしたが、“きつね”くんはちょっと苦笑いをして肩を竦めた。

「いえ・・・。別にそんなんじゃ無いんです。ただ・・・」

 しかし、そこから先は“くらうん”の耳には届かず、“きつね”くんの胸の内に沈んでいったのだった。

 (ただ、あの高校生と諒子では、アンバランス過ぎだなぁ。若葉マークにフルチューンのレーシングカーを乗りこなせるんだろうか)

 “きつね”くんの中で小さな不安が芽を出していた・・・

 一方、扉の鍵を閉めた健志は、興奮のため足元も覚束なくなりながら、2人のソファの前に駈け戻った。
 そして血走った目で2人を見下ろしたのだった。
 知らず知らずのウチに呼吸が荒くなり、それとともに涎が顎を伝っているのだが、健志はそんなことにも気付かない。
 その様子は、腹を空かせた本物の肉食獣のようだった。

 鼻を砕かれてから・・・いや、諒子の応募写真を見たときから、半年も待ち望んでいた瞬間が遂にやって来たのだった。
 頭の中には何百回もリハーサルをした淫欲のシナリオが渦巻いていた。

 (諒子ぉ、それに美紀ぃ・・・今まで俺に逆らってきたことを、た~っぷりと後悔させてやるぜぇ。へへへ・・・じっくりとなぁ、・・・何度でもなぁ)

 そして健志は顎の涎を袖でグイッと拭うと、その手を美紀に伸ばしていった。

                     *

 小さな呟きが聞こえた・・・

 そう思った途端、頭の中で風船が破裂したように突然諒子は目を覚ました。
 ボンヤリと宙を彷徨よっていた諒子の視線が急に焦点を合わせる。
 しかしそこに展開されていた異常な事態に、諒子にしては珍しく一瞬身体を硬くした。

 諒子の目の前・・・ホンの1メートル先で美紀が背後から羽交い絞めにされて、男に身体を弄(まさぐ)られていたのだ。
 美紀は精一杯抗っているのだが、男の腕力が強いのかそこから抜け出せないでいた。

「なっ!」

 驚愕から怒りに・・・諒子の表情は一瞬で変った。

「止めなさいっ!」

 言葉と同時に諒子はソファから立ち上がると、美紀の片手を素早く握り自分に引き寄せ、反対に男の肩に掌底を叩きつけようとした。
 しかし、その時美紀の陰から男の顔が不意に見えた。
 そしてその包帯に巻かれた汗ばんだ顔を見た途端、諒子は全身が鳥肌立つのを感じた。
 その余りにおぞましい気配に、諒子は反射的に男の肩に伸ばした手を止め、中途半端な体勢で美紀を引っ張ったのだ。
 しかし、意外にも男は諒子の奪回作戦にさしたる抵抗も見せずに美紀を解放したのだった。

「お姉ちゃんっ!」

 美紀はガタガタ震える体を諒子に摺り寄せ、その背後に逃げ込んだ。
 諒子はそんな美紀を庇いながら、正面に立つ男を見詰めた。

「よ~~やくお目覚めですかぁ先生ぇ~」

 包帯の間からくぐもった声が聞こえる。
 そんなに特徴がある声ではないのに、諒子は耳を塞ぎたくなるような嫌悪感を味わった。
 思わず目を逸らしたくなる気持ちを諒子は懸命に抑え、男を見据えた。
 包帯を巻いた顔と欠けた前歯、そして赤く濁った目と生臭い呼気・・・

 夜中に寝室でゴキブリを発見した時のように、気味が悪い故に目が離せなくなった。
 しかしやがてニヤニヤと上機嫌な口元と、さっきの話しっぷりから、諒子はようやく相手の正体に気がついた。

「お・・・おまえ、黒岩健志だなっ!」

 その言葉に健志は少し俯いて小さく笑った。

「あたり~っ。でも先生、ちょっと遅いよ。授業を持ってるクラスの生徒くらい覚えて欲しいなぁ」

 上機嫌な健志の言葉を、しかし諒子は完全に無視して言った。

「ここは何処っ。お前、私たちに何をしたっ!」

 その言葉は、もう完全に教師が生徒に掛ける言葉ではなかった。
 京子の一件を知って以来、学校でこそ表面上は冷静さを保っていた諒子だったが、こうして他人の目のないところで対峙するに至って、偽りのない感情が口をついて出たのだった。

「“お前”ですかぁ?酷いなぁ。一生徒をそんなに毛嫌いしないでもらえませんかぁ」

 しかし、諒子の感情の高ぶりと対照的に健志は実に落ち着いていた。
 それが諒子には相手の罠の深さに感じられ、次第に焦りの色が浮かんできた。

「そんなことは訊いていない。ここは何処かと訊いているっ!」

「僕のウチですよ」

 何故、自分達がこんな所に居るのか・・・

 ここに来た記憶がない諒子はそれが不気味だったが、いまはそれを問い質すより脱出する方が先決だと思った。
 チラッと背後を振り返り扉を確認すると、健志に言った。

「帰ります」

 その言葉に健志の表情が動いた。
 罠にかかった獲物を見るように、実に嬉しそうに頬を緩めたのだった。

「そうですか?扉には鍵がかかってるんですけど」

「だったら鍵をよこしなさいっ、今すぐに!でないとお前を監禁罪・・・」

 そこまで言ったところで、諒子は健志が放り投げたモノを反射的に受け取った。
 手を開けてみると、それは真新しい鍵だった。

「どうぞ。それで扉は開きます。訴えられては敵いませんからね」

 健志は小さく肩を竦めてそう言った。

「ただし・・・扉は開くけど、お二人ともきっとすぐにここに戻ってくる事になると思いますよ」

 そんな余裕のセリフを吐く健志を諒子は火の出るような視線で威嚇しながら、ゆっくりと後ずさって行った。

「美紀、帰るわよ。これで扉を開けなさい」

 背後の美紀に鍵を渡し、諒子自身は健志の動きを牽制していた。
 するとすぐに背後で鍵が開錠される音と、扉の開く音がした。
 廊下に溢れていた暖かな冬の日差しが室内にも射し込み、開放感が広がる。
 チラッと視線を走らせたが扉の向うにも人影は無かった。
 再び視線を健志に戻し、動きが無いことを確認してから諒子も扉の方に後ずさって行った。
 しかしすぐに腰が何かにぶつかり、諒子はビックリして振り向いた。
 そこに立っていたのは美紀だった。

「美紀、なにしてるのっ。早く外に出なさい」

 諒子は美紀にそう言ったが、しかし美紀の怯えたような表情に気付いて訝しげな視線を外に向けた。
 しかしそこは相変わらず陽光が降り注ぐ閑散とした廊下だった。

「美紀?」

 再び問い掛ける諒子に美紀は体を小刻みに震わせながら訴えた。

「あ・・・足が進まないのっ!わ、私っ、動けないっ!」

「何言ってるのっ!あなた今ここまで歩いて来たじゃない」

 諒子は美紀を叱り飛ばすように言ったが、何かに気付いたように後を振り返り健志に鋭い視線を向けた。
 健志は相変わらずニヤニヤとそんな二人の様子を見ている。
 その表情に再び焦燥感を煽られた諒子は半ば強引に美紀の肩を抱くと、そのまま外に押し出そうとした。
 しかし次の瞬間、諒子に驚愕の表情が現れた。
 美紀を連れ出そうと横に並んだ途端、なんと諒子の両足も前に進まなくなったのだった。

「なっ!」

 迂闊にも諒子は驚きの視線を美紀に向けてしまい、その顔を食い入るように見詰めていた美紀に動揺を悟られてしまったのだった。
 途端に美紀の顔から血の気が引いた。

「お・・・お姉ちゃんも?」

 目に涙を一杯に溜めた美紀にそう呟かれて、諒子はいっぺんに頭に血が上った。

「何をしたのっ!」

 怒りの矛先を健志に向けて、諒子は怒鳴った。
 しかし、ふと気付くと諒子は健志に向けて足を踏み出していたのだ。

 (動く?何、いったい・・・)

 当の健志は、肩を竦めて溜息を吐いている。
 わけが判らず再び扉に向けて足を出そうとすると、その足はまたしても動きを止めたのだった。

「どういうこと?いったい・・・どうして」

 考えられない事態に諒子の頭は完全に混乱した。

「教えてあげましょうか?先生」

 健志の声が掛かったのは、丁度そのタイミングだった。
 悔しいが、今はその答えを聞かなければ先へ進めそうも無かった。
 敵意に満ちた視線を諒子は健志に向けた。

 しかしその健志は、諒子の表情に悔しげな色を見つけ、小躍りしそうなほどの爽快感を味わった。

 (これだっ!この表情だぁ!いっつも取り澄ましていやがったこの女にっ、遂にこんな表情をさせてやったぜっ!)

 健志は無意識に顎を持ち上げ、見下す表情になって言った。
 興奮で鼻腔が膨らんでいる。

「なに、簡単なことですよ。貴女方お二人の身柄は僕が先ほど買い取ったんですよ。4000万程でね。だからもう貴女方は僕の命令に逆らえないようになってるんです。だって僕の所有物ですからね」

 健志はそう言って、抑えきれない笑みで頬を歪めた。
 しかし諒子は嫌悪感一杯に健志を睨んで言った。

「戯言(たわごと)はいい加減にしなさい!これ以上ふざけるのなら怪我人でも容赦しませんよっ!」

 武道家としての気迫が全身に漲り諒子に信じられない迫力を与えていたが、しかしそれがまるで健志には通用しなかった。
 まるで小馬鹿にしたように諒子を見下すと、張りのある声でこう言ったのだった。

「美紀っ!ここに来い!ここに来て素っ裸になるんだっ!」

「何を馬鹿なことをっ!お前、いったい・・・」

 そう諒子がすぐに言い返そうとしたときだった。
 諒子の視線の隅で何かが動いたのだ。
 反射的に視線を向け・・・諒子はわが目を疑った。
 顔を恐怖に引き攣らせながら、美紀がゆっくりと歩いていたのだ・・・健志に向けて。

「美紀っ!」

 諒子の声が悲鳴のように響いた。

「お姉ちゃん、助けてっ!足が・・・足が勝手に動いちゃうのっ!」

「な・・・なんですってっ!」

 諒子は青ざめた顔を美紀に向けていたが、次の瞬間目の前を通り過ぎようとする美紀の腕にしがみついた。

「とまりなさいっ!」

 体重を掛け全身を使って美紀を止めようとしたが、なんと諒子に比べ小柄な美紀はまるで重戦車のように諒子を引き摺ったまま歩みを続けたのだった。

「ふっふっふっ。物分りが悪い先生だなぁ。じゃ、特別に判り易く実感させてあげるよ」

 健志はそう言うと、自分用に用意しておいた独り掛けのソファに腰を下ろした。
 そして軽く頬杖をついて、気軽な声で命令した。

「諒子、手を放して美紀をここに連れて来い。お前が美紀を裸にするんだ」

 必死に美紀を止めようとしていた諒子は、その声を聞いた途端、驚愕で目を見開いた。
 一瞬で身体全体から力が抜けきり、あっさりと美紀を解放したのだ。
 しかも、いつの間にか足は勝手に美紀の後をついて健志の下に向っていたのだった。

「おっ、お姉ちゃん!」

 前を歩く美紀が必死に振り向いて諒子に助けを求めているが、諒子にはもうどうすることも出来なかったのだ。
 そして気付けば二人して健志の前に整列していた。
 諒子は完全に血の気が引いた顔で健志を見下ろした。
 そして健志はそんな諒子の顔を見上げて、命令したのだった。

「始めろや」

 諒子はその声を合図にまるでロボットのように動き出した自分の両腕に、化け物でも見るように怯えた視線を送った。

「いやあああああ~っ!!お姉ちゃんっ、やめてぇっ!」

 目の前の美紀が火の付いたような悲鳴を上げる。
 諒子の両腕が美紀の制服のボタンを外し始めたのだ。

「だっ、駄目なのっ!う・・腕が勝手に動いちゃうのよぉっ!」

 諒子も負けずに大声で叫ぶが、その腕の動作は止めようが無かった。

「いやああああっ、脱がさないでぇ!いやっ、嫌なのぉっ!!」

「あぁ・・・美紀、美紀ちゃんっ。ごめんっ・・・ごめんなさいっ!止まらないのっ」

 目の前でパニックになっている二人を見て健志は興奮が抑えきれなかった。
 自分が慰み者にするために採用してやったにも拘わらず、その健志に反抗ばかりしてきた生意気な女教師がようやくその立場に相応しい身分に落ちてきたのだ。

「へっへっへっ。今日は随分サービスがいいっすねぇ、先生ぇ~。自慢の妹をヌードにしてまで俺のご機嫌取りかい?ウチの学校には俺のパシリの教師はたくさん居るけど、そこまでする奴ぁいなかったなぁ」

 健志は自分で操っておきながら、そう言って諒子のプライドを逆撫でした。
 途端に諒子の怒りに燃えた視線が健志に突き刺さった。

「いい加減にしてっ!もう、やめさせなさいっ」

「やめさせる?先生、何言ってるんですかぁ。やめたけりゃ、やめりゃ良いじゃない。自分でやってるんだから」

「腕がっ・・・腕が勝手に動くのよっ!お前の命令じゃないかっ」

「腕が勝手にぃ?ホントかなぁ。じゃ、そのブラジャ、取ってみてよ」

 健志はニヤニヤと諒子をからかう。
 しかし、そんな言葉にの諒子の両腕は忠実に従った。

「お姉ちゃんっ!いやあっ、やめてぇ!」

 美紀の叫びを無視して背中に腕を回しホックを取り、両腕から抜き去ったのだった。
 美紀自身、自分の両腕を自由に動かせなくなっているため、こぼれ出た真っ白な乳房を隠す手立ては無かった。

「ひょ~っ、美乳だねぇ、美紀ぃ。へっへっへっ、お前服の下にこんなモノを隠していたんか」

 健志は美紀の乳房を目にすると、もう我慢の限界とばかりに腰を上げ両手をその柔らかいふくらみに当てゆっくりと感触を楽しんだのだった。
 すると露わになっている美紀の上半身にみるみる鳥肌が立っていった。
 極度の嫌悪感で美紀の眉が顰められている。
 その様子をじっくりと観察していた健志は、意外なことにニヤッと笑い唇を歪めたのだった。

 諒子と美紀の行動を完全に制御すること・・・

 これが健志がマインド・サーカスに注文した1つ目の希望ならば、実は2つめの希望が、『自分を心底嫌悪させること』だったのだ。
 いわゆる“生理的に受付けない・・・”とか、“虫唾が走る・・・”とかいった状態を何倍にも強めたような嫌悪感を植え付けることを希望したのだ。
 今の美紀の反応は、まさにそれを如実に表わしていた。

 無論、それでお仕舞いのわけは無かった。
 健志はその希望を刷り込んだ上で、こう希望したのだった。

 『最も嫌悪する俺にいたぶられ、強姦され、慰み者にされることが、最っ高の快感となるような変態にっ、この女どもを仕込んでくれっ!』と。

 そして、事実美紀はとても口には出せなかったが、気の狂うほどの嫌悪感に全身に鳥肌を立てながらも、その股間は異常なほどの反応を示していたのだった。

「ふっふっふ。い~感触だぁ。気に入ったぜ、美紀。どれ、仲直りにちゅ~しようか?」

「いっ・・・イヤッ!やめてぇ、お願いっ!」

「やめなさいっ!!美紀から手を離してっ!」

 健志は気絶しそうに青ざめている美紀を抱きしめると、美紀の背中越しに諒子に言った。

「お前はうるさい。黙ってとっとと美紀の下半身も裸にしてろっ!」

 その一言で一切の言葉を奪われた諒子だったが、更にその身体は美紀の後ろにしゃがみ込み、健志に無理やり口を吸われている美紀を見上げながら、その腰からスカートを外し、ショーツを引き下ろしたのだった。
 美紀はついに実の姉の手で全裸に剥かれてしまったのだ。

「んっ!んんんんっうんっ!」

 口を塞がれた美紀はそれでも必死に叫び声を上げようとしていた。

「騒がしい女だな、お前も!暫らく口を開くなっ!」

 美紀の口をチュバッと音をたてて離した健志は、そう言って美紀を怒鳴りつけた。
 しかし次の瞬間には、何かを思いついたようにニヤッと笑った。

「お前が開くのは、口じゃなくてオマ○コだろ?ふふふ・・・そのソファに載って思いっきり広げて見せろや」

 美紀の顔がサッと青ざめる。
 しかし身体は何の躊躇いも無く、健志が顎で指し示すソファに向った。
 若鮎のようにしなやかな背中と弾力に満ちた尻が健志の視線を釘付けにする。
 健志は視線を美紀に注いだまま、足元に跪いている諒子に命令した。

「おい、諒子。俺のズボンを下ろせ。トランクスもな」

 そう言ってから諒子の顔を見下ろす健志。
 言葉を奪われている諒子は表情と身振りで必死に健志の命令に反抗しようとしているが、それはただ健志を楽しませる事にしかならなかった。
 すぐに白い指が健志のベルトに掛かり、躊躇いも無く緩め始めるのだった。

「へへへっ、慎重にしろよ、諒子。これからお前らが一生を捧げる肉棒を取り出すんだからなっ」

 それだけ言い捨てると、健志は再び視線を美紀に戻した。
 既に美紀は命令どおりソファに辿り着くと、その上に立ち自らの足を大きく割り広げた格好でしゃがんでいたのだった。
 隠しておきたい女の媚肉が余すところ無く健志の視線に晒されていた。
 健志は腰に手を当ててその肉の構造をじっとりと眺めた。
 そして、無論その間にも穿いていたズボンの締め付けが緩められ、腰から取り払われていく。
 これから妹の体内に無理やり押し込もうとしている肉棒の準備を姉がせっせと行っているのだ。

 やがて健志の腰から最後の布が取り去られ、そして諒子たちが最も嫌悪する肉の剣が二人の視線に晒された。
 それは既に臨戦状態となっており、腹につくくらい勃起したその先端からは、生臭い粘液が強烈な匂いを放っていたのだ。

「どうだい?諒子ぉ・・・い~い匂いだろぅ?退院したばっかりでまだ風呂に入っていねぇんだ」

 そう言って健志は肉棒の先端を諒子の顔に擦りつけた。
 命令で動くことが出来ない諒子は、それだけで全身に鳥肌がたち髪まで逆立った。

「へっへっへっ。そ~んなに嫌そうな顔をするなよ。お前らを唯一往かせられる大事な道具だぜ。ん?何か言いたそうだなぁ。良いぜ、言えよ。聞いてやる」

 その途端に諒子の口から抑えていた怒りが爆発した。

「どけろっ!そんな汚いモノを擦りつけるなっ!この変態っ!」

 火の出るような強烈な視線が再び健志を貫いた。
 しかし完全にマインド・コントロールされている女の気の強さなど、健志にとっては丁度いい薬味のようなものだった。
 見下ろす健志の目が嬉しそうに細まった。

「これは失礼しました、先生。確かに1週間以上も洗ってなかったですからね。大切な妹さんに突っ込むにはちょっと失礼でしたね。まずは・・・先生のお口で綺麗にしてもらってからにしましょうか」

 この一言で諒子の表情は凍りついた。

「さ、身体はもう動かないよ、先生。頭も駄目だ。動くのは口だけ・・・それも俺のペニスが差し出されたら自動的に開くんだ。へへへ、ほおぅら、たぁ~っぷり唾液が溜まってくるだろ?そのまま舌を差し出すんだ。俺のペニスを乗っけてやるから、そのドロドロの舌で受け止めるんだ」

「やっ!やめなさいっ!やめにゃひゃひぅ・・・ひょんにゃひょひょ・・・うっ・・・・あうぅぅぐっ」

 健志は諒子の反抗を無視して、自分の言葉どおり諒子の口元にペニスを差し出す。
 すると、忽ち諒子の口は本人の意思を裏切り、最も嫌悪する男の異臭を放つ男性器に舌を差し出したのだった。
 健志は自分のペニスに女の熱い吐息が掛かるのを陶然と見下ろしていた。
 そして差し出された舌の上にそっとペニスを乗せた。
 すると忽ち暖かい体温と、唾液のヌメリ、そしてザラッとした感触が健志の性中枢を駆け上る。
 気を紛らわせないとそれだけで往ってしまいそうな衝撃だ。
 健志はこめかみの血管をピクピクと痙攣させながら必死で堪(こら)えると、そのまま喉の奥に向って腰を進めたのだった。
 途端に諒子の唇がきゅっと窄まり、唇全体でペニスを扱き出す。

 ついに・・・遂にっ!念願の諒子の口を健志は犯したのだったっ!

 半年もの間、健志に屈辱を味合わせ続けた女の口は、今その肉棒をしっかりと咥え、喉の奥まで使って締め付けているのだ。
 健志はあまりの感動に、あまりの感激に、身体が破裂しそうなほどだった。

 (やっっったぜえぇぇぇぇっ!クソ生意気な諒子をっ、遂に俺の肉奴隷に、肉便器にしてやったぜっ!!)

 健志は大きく股を開き腰の位置を調整すると、両手で諒子の頭をガッシリと掴んだ。
 そして自分の手で諒子の頭をゆっくりと前後に振り、自らのペニスに絡みつく舌の感触を楽しんだ。
 視線を上げ横を見ると、そんな二人の様子を美紀が絶望に顔を歪めながら凝視している。しかし、開ききった美紀の媚肉からは後から後からベトベトの粘液が滴り落ちてきていた。

 夢にまで見た光景が、今、目の前で現実となって再現されていた。

 (俺は・・・石田の姉妹を手に入れたんだ・・・もう、こいつらは俺の自由なんだ。どんな事でもさせられる・・・何をしても許されるんだっ!)

 健志はそう思った途端、もう抑えが効かなくなった。
 ペニスから腰の中心に向けて信じられないような快感信号が走りぬけたっ!
 するとそれに呼応するように熱い粘液が出口を求めて根元に殺到する。
 その圧力に健志の我慢は呆気なく崩壊した。
 尿道を駆け上る熱い快感っ!
 健志はそれを感じた途端、両手で固定していた諒子の頭を信じられない速度で前後に力一杯振っていた。

「っくぅぅぅうううううっ!諒子ぉぉおおっ、受け止めろっ、俺のザーメンをっ!注いでやるっ!」

 諒子の美麗な顔が自らのペニスを咥え必死で口を窄めている情景を健志は網膜に焼き付けながら今日最初の記念すべき射精を諒子の口に注ぎ込んだのだった。

 マインド・サーカスに依頼してからの1週間、健志は病院で禁欲をしていた・・・すべてはこの時のために。
 そして今、驚くほど大量の粘液が次から次へと諒子の口に注がれていった。
 そして腰がカラッポになったかと思えるほど熱い迸りを繰り返した後、ようやく健志は溜めていた息を吐いたのだった。

 全身を襲う心地よい虚脱感・・・そして視線を下げればまだ自分のペニスを咥えている諒子の顔、その呆然とした表情を見詰めるうちに湧き上がる優越感と達成感・・・

 健志の至福の時は今、始まったばかりだった。

< つづく >

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