ワスレナグサ 一話

一話  偽りの傷跡

***

 男の手が、その柔らかい胸に伸びる。少女はどこかとろんとした恍惚の表情のままそれを見ている。
 大きめの手がその胸を掴み怪しく動き始めた。
「はあ…」少女から吐息が漏れる。少女は制服、男は白衣を着ていた。椅子に座った少女の胸をはだけ、男がその体を蹂躙している。まだ若いがその胸は揉みしだくには十分に育っていた。
 男は、少女の胸の形を楽しむように揉み込みながら、少女の顔を覗き込むように近づく。少女は相変わらずどこか遠くを見るようなぼんやりとした表情だが、頬に赤味が増えたようだ。
 その少女は虚ろながらも美しかった。

―知ッテイル…―

 男は少女に顔を近づけ、そして唇をペロリとなめた。少女に反応はない。薄暗い室内。陽は既に沈んでいる。がその名残りによってかろうじて照らされていた。
 男は空いた手を少女のスカートにすべりこませる。いまどき流行りのぎりぎりの長さだ。
「んふぅ…」また少女から声があがる。恥ずかしい声。

―知ラナイ…アンナ声ハ…―

 スカートの中でもぞもぞと動く男の手。しばらくして少女の口から吐息がこぼれた。
「あっん…」そして一度こぼれた吐息は戻らない。
「はっ…い…ふう…いい…あぁ…」すすり泣くように高く低く。少女の声は止まらなかった。満足した男がその唇をやさしく奪うまでは。

―男モ知ッテイル…彼ハ…―

 少女の耳元で男が囁いた。
「……」男の声は聞こえなかったが、少女はその言葉にうなづき椅子から立ち自らショーツを脱ぐ。水分を含んで重くなったショーツを男に預けた。
 少女は怪しい笑みを口元に浮かべ虚ろな目のまま男を跨ぐ。体重を男の胸元に預け、そして自ら沈めて行った。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ…」スカートにかくれて見えないが、まちがいなく結合している。虚ろだった少女が目を閉じ、何かに耐えるように男にしがみつく。 しばらくそのままでいたが、男は少女の尻を掴み持ち上げると一気に離した。
「はが!」たまらず悲鳴が上がる。少女の自重がすべて結合部分にかかっているのだ。男はゆるりと腰をすすめながらそれを繰り返す。
「あぁ…ひぎ…うあぁ…あは…はぁ…はぁ…」
 少女は既に知っていたのだろう。ともすれば痛みだけのように見えるその行為にも甘い声を上げている。
 が、男は違った。まるで解剖手術に立ち会う学者のように冷徹にそれをみつめている。心なしかその瞳が紅い。

―アレハ知ラナイ、アンナ男ノ貌ハ―

 いつの間にか部屋の中は昏い。どこかの街灯の明かりが二人の影を浮き立たせていた。
 部屋の中に二人の行為の激しさを示す卑猥な音が響く。くちゅ、くちゅ、くちゃ…。
 しかし男の眼はその中にあって妖しく紅く光る。
 それは異様な光景だった。淫靡と恐怖。それが混在として別の何かを創り出そうとしていた。少女は昂ぶり男は冷徹であった。美しく、いやらしく、そして恐ろしかった。
 まるでサタンの宗教画とでもいった光景に釘付けになる。しかし、時は刻まれる。静かな恐怖に黒く塗りつぶされた部屋で少女はついに最後のときを迎える。少女の短い髪が揺れ、汗が流れる。
「はあ、いい…いぃ…イイ!」
 少女の声がさらに高くなりそして絶頂する。二つの影が重なったそのとき、その暗がりで見えたその光景は…。異常であり、そしてその絵の中では当り前の光景だった。
 怪しく光る紅い眼と少女の首筋に食い込んだ二つの牙。

 一瞬の思考の空白。

 そして、時間は動き出す。
「か…は…」
 少女はぶるぶるっと体を震わせ、そして弛緩した。虚ろでそして妖しい笑顔のまま…。

 うわっ! 私は跳ね起きた。そこはいつもどおりの私の部屋。既に朝でとっくに部屋は明るくなっている。
 すごい夢を見た。私はおそるおそる自分のあそこを触る。やっぱし、濡れてる。あ~あ、花も恥らう乙女が見る夢か? いや、まあある意味思春期の乙女の見る夢かもしれん。
 ふう、と考える。えらいリアルな夢だった。これはもしかしてもしかするとアレかもしんない。
 とりあえず起きよう。ベットから出て使い物にならなくなったショーツをはきかえる。あとでこっそり洗濯しなきゃ。
 私は沙由美。桂木沙由美(かつらぎ さゆみ)。この名前嫌いではないがちょっと安っぽいアイドルみたいだ。でも自分でいうのもアレだが私はけっこうかわいい。安っぽいアイドルくらいには。
 158センチと普通の背丈に細身の体。黙っていれば深窓の令嬢に見えなくない。多分…。いや、以前に言われたことがあるのだ。一度だけだけど…。
 しかし、今日の夢はかわいらしい少女が見ていい夢じゃないな。私のファンが知ったら幻滅するだろうな。と余計なことを考えた。いればの話だが。
 制服を着て鏡でチェックする。長い髪が肩より20cm程下でゆれる。すこし撥ねていた。
 おもわず自分の首元をチェックする。もちろん白い肌にはどこにも傷はなかった。
 あ~なんか今日一日引きづりそう。エロくて怖い夢だった。…本当に夢ならいいんだけど。

 私の通う聖園学院(みそのがくいん)はバスで30分くらいのところにある。中、高、短大を含むカソリック系の女学院だ。2割程度が寮生だが、私は自宅通いである。
 このバスはこの時間通学の女の子ばかりになる。たまに痴漢さんが出るわけだが、今日は周りは女の子だけだ。そのことを確認してからもう一度夢のことを考えた。
 実は私は予知夢をたまに見る。そう、まるで物語りの主人公のように。この美少女が乱立した昨今、超能力のひとつでもなければ主人公を張れませんぜ! と、ひとりで盛り上がった。そして落ち込んだ。なんせ誰かに話せるようなことではないし、まして今回の夢はなあ…。欲求不満と片付けられそうだ。とほほ。
 私は知らず猫の髪留めに手をやる。かわいい猫のキャラクターの髪留めだ。ちょっとばかしガキっぽいんだけど昔からのご愛用なのだ。
 私の予知夢は、
 1 夢の前後2日の出来事しかわからない。
 2 検証できない。
 のだ。
 つまり、起こることがわかっても詳しい日時や場所が特定できることは少ない。後に新聞で見たり、人づてに聞いたりして「やっぱり」と思うようなことばかりだった。だから実際にそれが起こっても自分で見れるかどうかわからないため、本当に予知夢だったのか、ただの夢なのかは区別がつかない。だから既知夢かもしれない。
 ただ、その夢は普通の夢と違って結構リアルに覚えているのだ。以前交通事故の夢をみて気をつけて歩いてたら、目の前で本当に事故が起きた。車の車種や色まで同じだったから、あれは予知夢だったのだろう。
 昨日の夢に戻る。アレは夜だったな。多分7時くらい。場所は…学校だろうな…。今回の夢は今までとは違った。登場人物を二人とも知っていたからだ。しかし、あの二人がHするなんて…いや、というかあの眼は、あの牙はなんなんでしょうか?
 確かに私はファンタジー小説が好きだが、現実とファンタジーの区別はしているはずだ。アレが本当なら彼はきゅう…、人外の魔物ということになってしまう。ということはアレはただの夢ということだ。うん。
 とすると今度は恥ずかしいことになる。夢に出てきた少女は自分の友人なのだ。うわあ…。まづい。そりゃまづいですよ沙由美さん。かあぁぁぁ。顔が火照ってきた。そんなこんなのうちにバスは学校についたのだった。

「やっ、ごきげんよう、麗しの沙由美姫」
 下駄箱で声を掛けられた。それは不意打ちで私は思わず固まってしまった。
「どしたん?」そう、この脳天気に現れたのが今日夢に現れた御仁の一人だ。
「あ、ごめん。ごきげんよう」
「なんかぼーとしちゃって、またエロいことでも考えてたんやろ」
 ごきげんようというのは今私たちの間で流行ってる小説の真似だ。
 彼女は私の同級生にして親友の葛原理奈(くずはら りな)。背は私より10cmは高く、プロポーションもばっきゅんばんでその上顔も良いという、あらゆる方面で私の劣等感を煽ってくれる存在だ。
 髪はショートでなんというか少年のように凛々しい顔つきをしている。それから運動神経抜群で、まさに頼れるお兄様って感じだ。無論もてる。特に下級生からの視線は熱を帯びていて、冬場はコートが要らないんじゃないかと思う。
 唯一の救いといえば、テストの点数があたしとどっこいというところだ。それに性格に難がある。
 理奈と目が合った瞬間、夢の中の彼女と重なったのだ、虚ろな目の彼女と。
「くっくっく、たまってんならあたしが相手になってやるぜ」
 むっふーと鼻の穴を膨らます彼女を見て、首を振った。こいつは親父だ親父。あれは夢に違いない。
 遠くから彼女を見ている下級生にこの真相を伝えてあげたかった。

 かつかつかつ。廊下から規則正しい足音が聞こえた。わっ、紫のバラの君…じゃなかった。聖華様だ。
 3年生の藤本聖華(ふじもとせいか)さま。ミス聖園学園、学園の華、眉目秀麗な生徒会長様だ。見目麗しい公家のお嬢様で頭も良い。天は2物を与えずという法則を地でくつがえしまくる方だ。責任感が強く厳しいため恐れられているが、公平でやさしいところも十分もっているスーパーアイドルな方だ。
 彼女をみていると聖園の制服が軍服に見えてくる。なんかそれもいいなあと軍服姿の聖華様を妄想していると、ふいに声をかけられた。
「あら、沙由美さん。おはようございます。お元気?」
「あ、はい。おはようございます」私は咄嗟によそ行きの声で応えた。保健委員の私は委員会で何回か顔を逢せていたのだ。
「くす、その髪留め、ダヤンでしょ。わたくしも昔集めましたわ」まあ、かわいいと微笑む聖華様。はやや…。
「それでは」優雅に一礼して去ってゆく聖華様。いと麗しい。
 後姿をぼけらと見ていると
「あたし、あの人嫌い…」理奈がぼそりとつぶやいた。
「へ?」
「なんでもない、早く教室いこ」
 ずるずるずるとひきずられて私は教室に向かった。
 
 午前中は特に何もなかった。英語の中谷にまた新たな殺意を覚えるという日課以外には。
 午後は体育だ、女しかいないから着替えは教室で行う。
「沙由美~胸見せて~」親父だ。変態親父がやってきた。理奈は普段から「女のパラダイスはあたしのパラダイス」と言ってはばからないやつだから周りは驚きもしない。
「だめ。減る」私は言い切る。返す刀でばっさり。取り付く島がないってやつだ。
「う」どうせ減るもんじゃなしに~と続けるつもりだったのだろう。ざまあみろ。減るぞ、お前みたいな胸ばや~んな娘に見られたら。少しはこっちにまわしなさい。
 理奈はうらめしそうに見ている。ちょっとかわいい。が、ここであまやかしてはいかん。理奈が見るだけで終わるはずもない。気づいたら戻れない道に…ということになりかねない。
 やがてあきらめたのかしぶしぶ理奈が着替え始めた。くふ…。勝った。
 と思ったのもつかの間、私の目は彼女に吸いつけられた。肩から首にかけてシップがはってある。
「いや~ん沙由美えっち~」気色の悪い声を上げる。
「理奈…それ…」
「うにゅ?あ、これ、なんか寝違えちゃってさ」
 そのシップの位置は丁度彼の牙が刺さった位置だ。
「う…そ…」昨日の夢がフラッシュバックする。男の牙が首に突き刺さる。その映像が何度も繰り返す。
「沙由美・・・?沙由美!?」彼女の声も遠くなる。あ…だめだ。私の血が引いていくのがわかる。視界が暗くなる。落ちる。落ちてゆく。
 私はその場で崩れ落ちた。

 暗闇の中、白い体が撥ねる。
 男に貫かれた少女はまるでみだらな娼婦のよう。
「…お願い…、お願いします。ご主人様…」
 黒い男がやさしく牙を立てる。
「ああ!…いい!!」
 少女は体をのけぞらせて快感を継げる。
 そのとき、男の眼がこっちをみたような気がした。

 目を覚ますと保健室だった。午後の授業中寝ていたらしい。もう放課後だった。
「ただの貧血だから心配ないわよ」気分はよくないが保健医の先生にそういわれれば帰らざるを得なかった。
 なんじゃ今の安っぽい映画のような夢は…。私は猫の髪留めに触れる。どうして倒れたか思い出した。だけど、あまり考えたくない。…。
 気を利かせてくれたらしく、誰かが運んでくれたかばんを手に取った。
「愛してる リナ(はあと)」と紙がはってあった。ふう…、後で礼言わないとな…。
 そして私は帰ることにした。
「まいったなあ…」誰とも泣くつぶやく。まだまだ外は明るいが、校舎の中は薄暗い。
 保健室から下駄箱までは丁度対角線で遠い。なんとなく怖い空白の時間。根拠のない不安が漂っている。
 無人の長い廊下をとぼとぼ歩いていると向こうから背の高い影が歩いてきた。私の心臓が縮み上がる。
「あ…う…」爆発しそうな心臓を懸命にこらえる。どきどきどきどき…。
 彼がすれ違う。無機質な、整ってはいるが薄汚れた顔は私に見向きもしなかった。彼が見えなくなってようやく私は息をついた。
 彼だ。聖園では数少ない男性。正式な教員ではない。学園の片隅にある、誰も訪れないカウンセリング室の主。
 伍代 玲二(ごだい れいじ)いつもよれよれの白衣を着ている男。
 28歳。なぜ聖園学園に男性のカウンセラーがいるのか?七不思議のひとつである。
 彼だった。まちがいない。夢の中で理奈を組み敷き、牙を立てた主。それが彼だった。
 気がつくと私の手は汗でびっしょりと濡れていた。

**

「ん…」
――まただ、またあの夢だとわかる。
 少女がうつぶせにベットに寝ていた。聖園の制服を着たままだ。
 顔は隠れていて見えないが、長い髪をポニーテールにしている。理奈じゃない。手がしっかりシーツを掴んでいるから眠っているのではないようだ。
 男の手がスカートの中に入り脚と脚の間で蠢いていた。
「ん、はあ…」声とともに髪が揺れる。うわ、えろい。夢だというのにつばを飲み込む。ごっくん。
 男がするりと手をひいた。
「……」何かつぶやいたが聞こえなかった。
 しばらく、ぼんやりとしていた少女が長い髪を引き摺りながら上半身を起こした。
 え?え?…ええええ!!聖華先輩!!ベットの上の制服少女は藤本聖華様だった。あの3年生のミス聖園。生徒会長にして、聖園のカリスマ。生写真売上ナンバー1の美少女だ。
 顔を真っ赤にして、涙まで浮かべている。はずかしげに、頼りなさげに。眉を寄せ、どうして? という表情で。
 うわあああああ、かわいい。めっちゃかわいい。聖華様でもこんな顔するんだあ。思わず抱きしめたくなる。落ち着け、これは夢だ、しかも淫夢。私は見てるだけで手は出せないのだ。
 聖華様は男…先生をきっとにらむ。それから互いに何かを言い合ったけどそのセリフは聞き取れなかった。
 でも、なんかすごい淫靡な雰囲気。
 聖華様は先生を睨みながらをぼそりと何言かをつぶやく。聞こえない。そしてもう一度、今度は聞こえた。
「聖華に…いやらしい聖華にお仕置きをして…ください」うわ、その表情。顔を真っ赤にし、涙をため、恥ずかしそうに睨みつける美少女!
 どうしよう、その気のない私だが思わず、変な気分になる。すっかり気分はでばがめだ。
 しかも、聖華様はそのあとベットでよつんばいになると自らスカートをたくしあげ、白いレースのショーツに手をかけたではないか。鼻血出そう。夢でよかった。
 白い桃のようなお尻が、まるで皮をむくように現われた。ショーツの位置は微妙にお尻の下に留まっている。きれいなお尻だ。シミとかほくろとか全然見当たらない。
 真っ白なお尻を男に捧げ屈辱に濡れる貌。これを表現する文才がないのが悲しい。(小説家志望)
 先生が何かを告げた。先輩のお尻がさらに高く上がる。そして、手を大きく振りかぶる先生。
 ばしっ!
 その手が白いお尻を打った。ええ!?
「ぐう…」シーツをつかみそれに耐える聖華様。シーツに長いしわが走る。
 ばしっ!
 更に先生は反対側のお尻も叩く。力は加減しているのだろうが、大きな音がする。
 ばし!!ばし!!2発。そしてさらに続けて2発打った。白いお尻が赤く染まる。
 体を震わせ歯を食いしばりながら耐える聖華様。むきだしのお尻を屈辱的なポーズでさらし、おしおきを受ける美少女。…。
 更に2発。
「…」先生が何か言う。
「違います、そんな…」聖華様があせって言い返す。何のことだろう。
 先生は聖華様の脚の付け根に指を埋めた。
「ふ…あぁ…」え? あれ、あれれ、聖華様もしかして…。もしかしちゃったようだ。先生は女の一番感じる部分をいらいながら何かを告げている。
 更に朱に染まる聖華様のお顔。ぞくぞくする。
 そして打擲(ちょうちゃく)が再開された。
 ばし!ばし!ばし!ばし!
 その部屋にお尻を打つ音だけが響く。
「はあ!く…!ン!」なんだか痛がってるのか感じてるのかよくわからなくなってきた。
 と、いうことは、聖華様ってもしかしてもしかすると「M」ですか?ショック! 普段の聖華様を知る者としてはとても信じられない。
 あの、いつもはきはきしていて、軍服の似合いそうな彼女が!? まだ「S」といわれたほうが信じられる。う~ん。
 そして、そのギャップに酔う。うわあ~、じゅる。だめだ、妄想が炸裂しそうだ。というかしてる。待て止まれ私。
 そうしてる間に、すっかりおしおきを受けて大人しくなった聖華様に先生は己のものを咥えさせた。従順にそれをしゃぶる聖華様。いやがってる風ではない。むしろ喜んでいるような…。
 二人の関係ははじめてではないのだ。
 聖華様は、先生のものを捧げもち、先端を丁寧に舐めていた。カリに舌を引っ掛けはじく。唾液を丹念にまぶす。それの表面すべてに行き渡るように、ほんの一部でも洩れのないように舌先を使ってじっくりと。
 とても淫靡で同時に神聖だった。聖華様は顔を赤らめていたが、うれしそうにうれしそうに何度も何度もそれを舐めた。
 やがて、先端からぱくりとくわえ込む。唇でカリの部分をこすりながら口腔で舌を動かしているようだ。ときどき、先生の顔を窺うように目線を上げる。
 わあ、これがフェラチオってやつなのね。後学のためにじっくり見ておこう。いや、ほら夢のことだし…。
 聖華様はその美しい唇で深く咥えたかと思うと、ぎりぎり先端まで戻す。そしてまた深く咥える。ゆっくり繰り返しだした。しばらくすると、先生が腰を振りはじめた。苦しそうなのに夢中でしがみつく美少女。先生は少女の頭を抑え腰をさらに激しく振った。無言の時間が続く。そして止まった。美しい少女の白いのどが「ごくり」と鳴る。何かを嚥下しているのだ。口の端からつうぅっと白い液体がこぼれた。
 鎖骨のあたりでそれをすくいあげ、またしゃぶる。とろんとした美少女は全てを飲み干すと、更にそれを咥え吸い上げた。
 それから先生は聖華様にベットに上がるよう命令した。また四つんばいにさせる。今度はスカートを脱がせると後ろから覆い被さった。
 ずぶり。まるで音が聞こえそうなくらいいやらしく二人はつながった。
 鉄のフレームのベットがぎしぎしと音を立てた。先生は聖華様の細い腰を掴むと遠慮なく打ち据える。
 聖華様はベットの頭の鉄のアーチに掴まり、こらえる。いや、声はすぐにあふれた。
「ああああ…!いい!いいっ!気持ちいい!…すご…す…ごくいいです。ご主人様!」
 ご主人様って…。
 よほど気持ちがいいのか、全身を真っ赤にし、汗が散っている。乱れた黒髪が汗を吸い、いやらしい。
 もうすでに限界なのか、大声で求める。
「ああ!いいの!いいです!すごい!いく!ひぃ!…いく!」
 ところが先生の方は余裕なのかいきなり動きをとめた。
「あ…?いや…」
「待て」はじめて先生の声が聞こえた。太く低い。支配することに慣れた声だった。
 そして先生の目線が私を貫いた。紅く光る目が。
「え?」傍観者を決めていた私の意識が急に引っ張られる。
 次の瞬間、私は聖華様に同化していた。とまどう私に聖華様の快感が瞬時に襲ってきた。
 な…、これ、何、すご…。いままで自慰でも感じたことのない強烈な快感だった。
 ぐちゅ。そこに先生のものが奥深くまで突き入れられる。こすれる粘膜。
 瞬間思考が蒸発した。
「ひ!はが…。」私の口から嗚咽が洩れる。いやそれは聖華様の口から洩れたものだった。私は未知の快楽に恐怖した。力の入らぬ手で、ベットの端を強く掴む。掴まっていないとどこかに飛ばされそうだ。また抽送が再開された。
「…な、にこれ…」気持ちいいなんて生易しいものじゃない。100のスピーカーが同時に大音響で音をかき鳴らしているようなものだった。私はひとつひとつの音に翻弄される。どれをとっても音は違うが全てが快感だった。痛みに近いものすらも気持ちいい。
 突然先生が、動きを止めた。
「いや!やめないで!ください!もっと」私は叫んでいた。
 また、突きこまれた。そして快楽のリズムが全身に刻まれ安心する。そう、安心だ。音が途切れたことで気づいた。深く、全身を包むようなリズムがベースのように一定に鳴りつづけている。それは大きな幸せだった。巨大な多幸感。
 強烈な快楽と強大な多幸感。それが脳細胞のひとつひとつに侵入してくる。自分が侵される。支配される。支配される。
 それを押しとどめようとする自分はいなかった。いや、それどころかもっと支配されたかった。私の全てが支配されれば、この快楽と幸福は私のものになるのだ。もっともっと、支配されたい。心からそれを渇望した。
「ご主人さま!」私の口からその言葉が洩れた。
「ご主人様!いきます!…いく…はう…もう…もう…いくの!いく!いく!あああぁぁぁ…」快楽だけの身体。快楽だけの心。快楽だけの世界。焼け爛れた頭の中は快楽でいっぱい。
 ご主人様の牙が私の首元にやさしく食い込む。
 そして私のすべてがご主人様のものに…。

「あ…」
 朝だった。カーテンを通してにぶい朝日が部屋を染めている。その中で、私は一人だった。一人で自分のベットの上で目がさめた。
 知らず涙があふれた。どうしてだかさびしくて、さびしくて仕方がなかった。

「ねえ理奈」昼休み、私は理奈を屋上に誘った。
 午前中はいろんな事をず~っと考えて授業がまったく手につかなかった。とりあえず、伍代先生の聞き込みから開始することにしたのだ。
 風がここちよい。私は弁当箱を仕舞いながら切り出した。
「伍代先生って知ってる?」理奈は一瞬間があってから答えた。表情は「へっ」て感じ。
「…まあ、一般的な範囲でなら知ってるけど」そして少し空を見てむう…って感じの表情で、
「まさか、伍代先生に惚れたとか言うんじゃないでしょうね?わたしというものがありながら」と聞いてきた。
「…違うって、ただ、どういう人なのかな~って思って」
「本当?…あれは、ひまな時間を女子高生ウォッチングで楽しむ変態よ、近づかない方がいいわよ」
 あれ?一般的に知っているという割には、なんか親しげだな。なんか隠してるという気もする。
「沙由美、そんなにあたしのことみつめちゃって、やっぱり?」
「わ~違うって」私は襲いくる理奈の手をかわしながら聞いた。
「ほかに先生のことなんか知らない?」
「ん~とあたしらが中等部の3年の時に赴任してきたでしょ」
「え、そだっけ?」
「そーだよ。あたし学校で見たときびっくらしたもん」
「へ?なんで」
「あわわ、いや、それは…なんでもない」急に態度が怪しくなった。
「もしかして以前から知ってたとか?」
「知らない!知らないってばあんな男!」理奈は慌てて取ってつけたように言い足した。
「とにかく!あんな危険な男が当学園にいるのは何かの間違い!沙由美も関わっちゃだめだよ。できるなら…」
「はえ?」
 怪しい、すごく怪しい、ものすごく怪しかった。
「んじゃ、話はおしまい、あたし用を思い出したから」
 理奈はそうたたみかけると呆然とする私を残して、風のように去っていった。
「いったいなんなのよ…」仕方ないので猫の髪留めをいじる私が取り残された。
 クラスに戻って聞こうと思ったけど、理奈は来なかった。彼女は午後の授業に出席しなかった。

「こんにちわ~」
 放課後、私は生徒会室を訪れた。無論、聖華様に会うためである。ラッキー。聖華様は一人でおられた。
「あら、沙由美さん。いらっしゃい」
 やわらかい午後の日差しの中に佇む、凛とした美少女。はあ、絵になるわあ。その首に巻いた白い包帯が無ければ。
 そう、その符丁はやはりあった。私の視線に気づいたのか、聖華様はおっしゃった。
「これ、ちょっとかぶれてしまって。たいしたことないのよ」
 今日は気分が悪くなったりはしない、ある程度予想はしていたからだ。そのかわり、あの乱れた聖華様を思い出して顔が赤くなる。ごほん。と咳払いをすると、私は話を切り出した。
「あの、聖華様。カウンセリングの伍代先生をご存知ですか?」
 反応はあった。聖華様は顔をちょっと赤らめたのだ。とそれから眉を寄せ、心配そうな表情になる。をを?
「何か、心配事があるの?」
「え?」
「カウンセリングを受けたいのでしょう。あなた。でも、悩みならわたくしが聞いてあげますわ」
「あの…」
「あの先生には…その、あまり良いうわさがありません。心配ですわ。沙由美さんは特にかわいいですから」
「えーと」聖華先輩はぐっと身を乗り出すと
「まさか…!すでに何かされたとかいうことはありませんわね。もしそうならわたくしが直接文句をいってきますわ」聖華様震えてる。
「あ、いえ、何も…何もないです」
「そう、…アレは女の敵です。不用意に絶対に近づかないこと、いいわね」
「は、はい…。あの…」聞けない、何かあったのかと。過去に二人の間に何かがあったのは間違いない。だってあの聖華様が興奮なされているのだもの。でもとても聞けない。聞けるような雰囲気ではなかった。
 私はほうほうの態で(そうか、こういうときに使うのかこの言葉)生徒会室から逃げ出した。
 最後まで聖華様は「何かあったらわたくしに相談するのよ」とおっしゃられていた。半分涙目で。私はとにかく「はい」としか言えなかった。そんなだから、私が退室した後彼女がくすりと笑ったなどとは知る由も無かった。

 がば! 朝だ。私は飛び起きた。きた! ここのところしばらく見ていなかった夢を見たのだ。
 まず、シャワーを浴びる。冷たいのと熱いのを交互に浴び頭をしゃっきりさせる。部屋に戻った私はベットの上で髪を乾かしながら考える。
 確か、あれがあったはずだ。小物入れを漁る。昔買ったあれが…。あった。
 でもこれだけじゃ心もとない。台所に行って、親の目を掠めて食材の中からそれを失敬する。ないよりまし程度だが。
 あれから2日が何事も無く過ぎた。その間夢は見なかった。
 私は特別何もしなかった。ただ、美容院に行き少し髪を整えたことと、図書館で調べ物をして過ごしただけだ。それと、疲れからかときどきぼ~となったことがあった程度。
 そして今日を迎えた。
 図書館での調べ物は無論吸血鬼についてである。机のひとつを占領し、それらしきものを片端から並べておいた。赤川次郎の吸血鬼シリーズまでだ。ヴァンパイアとは変な生き物である。
 いわく、太陽に弱い。鏡に映らない。流水を渡れない。強力な魅了眼をもつ。牙に噛まれると仲間になってしまう。人間よりはるかに怪力で不死身。白木の杭で心臓を刺すか、首を切り取らないと死なない。こうもりや霧に化ける。十字架に弱い。にんにくに弱い。なんてのもあった。
 はっきりいって常識の無い化け物だ。
 そして、その夢を見た。あれが予知夢なら今日か、遅くとも明日には事が起こる。
 そう今日の夢に出てきたのは、まちがいなく私なのだから。

 彼からの招待状は午後の授業中にやってきた。
「先生、すいません。頭が痛いんですけど、保健室に行っていいですか?」
 理奈だ。真っ青な顔をした理奈が先生に訴える。
「あら、本当にひどそうですね、保健委員いっしょについていきなさい」
「え」保健委員は私だ。
「ごめん、沙由美お願い」哀願する理奈。だけど、私にはそれが彼の招待だとはっきりわかった。
 私は理奈につきそって教室を出る。二人とも無言だ。階段を降りたところで理奈の態度が変わった。頭を上げると私の腕を掴みぐいぐい引っ張る。頭の痛い演技をやめていた。
「ちょ…理奈痛い」しかし、理奈の手は少しも緩まない。無言のまま保健室とは違う方に連れて行かれる。
 予想はしていたが恐怖が走る。いつもの彼女ではない。
「逃げないから放してよ」私の言葉は無視される。
 そして、私たちはそこにたどり着いた。「カウセリングルーム」そう書かれた一室へと。
 ガチャリ。鍵のかかる音が思ったより大きく響いた。
 そして部屋の主が、白衣の男が、おおげさに過剰な演技で私を迎えた。
「ようこそ。ようこそカウンセリング室へ桂木沙由美さん」伍代玲二のにやついた顔がそこにあった。

 覚悟はしていたが、それでも鼓動は早くなる一方だった。男のその存在感は私を圧倒する。
 カーテンを布いた薄暗い部屋で、彼はただ、佇んでいるだけなのに。
「まあ、座りなさい」それでも、私の体は動かない。彼が目配せすると理奈が強引に私を座らせた。
「さて、率直に聞こう。勇ましいお嬢さんはどこまで知っているのかな?」私は答えない。いや、答えられないのだ。声が出なかった。
「おや、俺としたことがすまない、お客人にお茶もまだだった。理奈」先生はわざとなのかことさらゆっくりとしゃべる。それを受けた理奈が無言でお茶を入れた。
 壁にかかる時計の秒針が刻む音を、奇妙なくらい大きく感じた。
 私の前にお茶が置かれた。もちろんそんなものが飲めるはずも無いのだが。
 先生はゆっくりとタバコをくわえ、ライターで火をつける。銀のジッポーだった。大きく煙を上に向かって吐き出すと、私を見た。ぞくりとする。その眼はいつかの夢で見た実験動物を見るような眼だった。
「いろいろかぎまわっていたようだけど、どこまで知っているのかな」
 ことさら慌てないのは、彼が絶対的な優位に立っているからだ。
 私は汗ばんだ手を数回握る。大丈夫、動く。あれはポケットの中だ。
 私はここで、今までさんざん考えた思考をたどる。順序を計る。ここまではまだ私は知っている。彼は知らないが私は知っているのだ。そう、夢で見たから。彼の部屋で相対する夢。
 ここからは賭けだった。勝算は五分、いや四分といったところか。
 私の須臾の間を不信に思ったのか男は怪訝な顔をする。
 今だ! 私は両手をポケットにすばやく突っ込むとそれを取り出した。それを先生につきつける。アクセサリの十字架とにんにくを!
 先生は大きくのけぞった。

 先生は大きくのけぞった。
 そして笑い出した。十字架とにんにくを持ったまま固まる私。私は必死だがちょっとまぬけかも…。笑いを収めた後こう言った。
「つまらんな、実につまらん。理奈」理奈が私を羽交い絞めにする。あっさり落ちる対バンパイア兵器。
「あのなあ、桂木。いまどきそんなものが効くと思うか?」
「俺が吸血鬼ならとっくに日に焼かれて死んでるぞ。悪いがキリスト教徒じゃないし、にんにく料理は大好きだ」
「…」
「俺はまあ、いわゆるハーフでな、俺に噛まれてもゾンビにも吸血鬼にもならんが俺に逆らえなくなる。便利だろほらこういう風にな。お前は動けない!」先生の目が紅く光ると私は本当に動けなくなった。心臓が早鐘を打つ。
「面倒だ。下僕にしてから全部聞いてやろう」そう言うと、先生の顔が近づいてきた。口を開けると牙が見える。怖い。それでも私の体は動かない。噛みやすいようにわざわざ理奈が私の首元を開ける。ああ、いい親友だよほんと。
 そして先生の牙が私に喰い込んだ。焼けるような痛みと、熱さ。そして血が吸われる。先生の下僕になる。なってゆく。私は昏い闇に囚われてゆく。
 闇に消える意識の中で私は笑った。
 —そう、私は賭けに勝ったのだ…。

エピローグ

 ご主人様が後ろから私を犯していた。
「はあ…ひぃ…気持ちいい!いい!いいよぉ!」そう、あの圧倒的な快感と幸福感が私を包んでいる。しかも、今度は私自身の身体で感じているのだ。
 そう、私、桂木沙由美は伍代玲二様の下僕になったのだ。たまらなく気持ちいい。

 いつから、私がそう思ったかはっきりしない。あるいはあの夢を見た後すぐだったのかもしれない。彼に支配されたい。そう完全に意識したのは今朝、今日の夢を見た後だった。しかし無意識の中の希望でも私はそれにそって行動を開始していた。
 まず、私がしたことは彼に知らせることだった。私が彼の正体を知っているということを知らせなければならない。なぜなら私はそれを夢で知ったのだから。
 だから、まず、理奈と聖華先輩にいかにも私が何かを知ってそうな風に話したのだ。二人が先生の下僕なら当然報告が行くはずだ。
 それから、図書館で調べ物をした。わざと何を調べているか誰が見てもわかるようにだ。
 理由はわからないが、私が先生の秘密を知っていることは伝わったはずだ。先生は私を放って置けない、不確定要素ではあるが万が一私が何かを口走るかもしれない。あるいは、誰かに相談するかもしれない。そうでなくてもまだ2年近くも私はここに在籍するのだ。先生は必ず私に接触して来るだろう。そうして、実際にそうなった。
 問題なのはその方法だ。私を殺すかもしれない。いや、それはまずありえないだろう。この学園で死者が出たという話は聞いてない。それに大騒ぎになることは彼は望まないだろう。
 あるいは私に暗示を与えて記憶を消すかもしれない。これは大いにありうる話だ。だが、それでは意味が無い。私は彼の下僕になりたいのだ。
 だから、私は美容院にいき、見た目を少しでもよく見せようとした。ふだんよりスカートのたけを短くした。勝負パンツも穿いた。先生が私を欲しがるように仕向けたのだ。聖華先輩の言葉から少しは自信があったけどそれは賭けだった。 そして私は賭けに勝った。私はご主人様の物になったのだ。
「あ」ご主人様がペニスを抜いたのだ。けど、今度は私を仰向けに起こすとまたすぐ淹れてくれた。ご主人様はやさしい。
「ふあああぁぁぁ…ひいぃ」私はよだれをたらしながら快楽に泣く。そして、ご主人様の大きな身体に手を回ししがみついてキスをせがんだ。やさしいご主人様はそれに応えてくれる。両足を持ち上げられがんがんと突かれる。信じられないほど気持ちよかった。すぐに絶頂に押し上げられる。
「ああ、だめ!いく!いっちゃう!ご主人様!いきますぅ!」
 ご主人様は私の首にまた牙をたてる。深く。深く。流れ込む異界の血。ご主人様の血。私は達しながらご主人様に誓う。私の心はご主人様のもの、私の身体はご主人様のもの、私の魂はご主人様のもの。これからずーっと。永久に私の全てはご主人様のもの!

おわり

*** 催眠術とその継続についての一考察 ***

 催眠術は万能ではない。本人の嫌がることは強制できないし、無理やりすれば覚めてしまうとはすでに周知のことだ。
 問題は、催眠の持続力だ。意外と簡単に暗示というものは解けてしまう。
 被験者の資質、催眠の深さ、施術者の能力などによってそれは左右されるが、放っておけば確実に暗示は解ける。人間の脳というのは意外に柔軟で強靭なものだ。
 では、どうすれば持続力が上がるか、

 一、頻繁に催眠に掛ける。
 二、深いラポールを築く。
 三、本人が信じたいことを暗示に掛ける。

 随分強引であるが大きく分けてこの3つであるといえよう。
 一及び二については、施術者に多大な努力や時間が要求されるため難しい。
 今回は三について実験を行った。

 被験者はS.K。彼女は空想好きで、協力者も彼女の周囲にいたため理想的な被験者といえた。
 方法は、施術者を超常能力者だと信じさせ、またその能力で逆らえないようになると思い込ませる。また、それは気持ちのよいものであると暗示を与える。
 つまるところ吸血鬼だと思い込ませた。その牙にかかれば絶対に逆らえなくなると信じさせ、またそうなることが快楽であると暗示した。三について言えば快楽暗示は非常に有効なのだ。
 手順は大変複雑なので割愛するが、何度も暗示に掛け、調整し夢の中で啓示を受けるようにした。彼女が信じ込んだ場合十字架を携帯するといった暗示を植え込んだ。それを見た協力者が報告。実験は最終段階に入った。
 キーワードで一旦眠らせ、動けないようにして催眠を解いた。私が噛み付けば実際に牙で血を吸われる感触がある。これは事前に入念に埋め込んだ暗示のせいだ。そして実験は成功した。
 いや、今も継続中である。あれから10日間がたつが彼女の暗示が解ける気配はいまのところはない。
 今の彼女にとっては、施術者が与えた暗示の世界が大変心地よいのだ。このまま実験を続けるつもりだが、暗示が解けそうなときは彼女の首筋を軽く噛めばよい。それで簡単に元に戻るであろう。

 今回の実験で、方法によっては持続力を高く上げることが可能であると証明された。今後も広い条件下で持続力が上がるよう実験は続けたい。

 催眠術は万能ではない。しかしあえて私は言いたい。
「催眠というものは想像力である」と

伍代 玲二

あとがき

 ども、久しぶりです。月之満欠です。え?知らない?
 ……。
 3年ぶりですから、ここに再録してからも1年経つしね。
 うわ、まるっきりダメ人間じゃん。
 とりあえず、がんばって書きました。どうですかね?
 ザクソンさん他このHPの作者さまたちに感謝。それと一樹さんにも感謝。
 いろいろなものを頂きました。復活できたのはみなさんのおかげです。
 ありがとう。

< つづく >

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