竹の子企画

「うるさいわね」

 その声は一人の女性の口から出たものだが店内全体に鳴り響いた。

「あんたみたいなださい男が私と釣り合うわけないでしょ」

 かなり厳しい言葉だがその端正な顔立ちに妙にマッチしているのが不思議である。

「そ、そんな舞子さん」

 と、それに共鳴するかのように平凡な顔から発せられる弱々しい声が小さく鳴り響いた。
 ここは何しろ8人も入れば満員になる小さなショットバーだ。どうやっても声は鳴り響いてしまうのである。
 幸いその日は彼等以外に客はなく店主らしき人物を入れても全員で3人しかいなかったので彼等のやりとりは店主にしか聞かれなかった事になる。

「バッグだって、毛皮だって、ダイヤだって」

「なんだって言うの!私を物で釣ろうとしたわけ?」

「いや、そんなつもりじゃ」

 もちろんそんなつもりではある。
 20代も後半になるまで女性経験のなかった彼(健太郎)はいつも優しく微笑みかけてくれる美形の彼女にたちまち夢中になりその結果贅沢をせずこつこつ地道に貯めてきた貯金を一気に使い果たすはめになったのだ。

「じゃぁどういうつもりよ」

 更に厳しい声が店内に響いた。
 店主はなだめるそぶりすら見せない。口出しする事は損にしかならない事を知っている。
 それは長年に渡りこの小さな店を守り抜いてきた事により身についた知恵であった。

「あ、あれはただ舞子さんの喜ぶ顔が見たかったから」

 と、すでに押され気味になっている男はさらに小さくなった声でつぶやいた。

「あんな安物でこの私が喜ぶと思ってるの!軽く見ないでほしいわ」

「ぼ、僕はただ・・・・・・」

 完全に男は萎縮してしまっている。

「『ただ』いったい何よ。あ~いらいらする」

 と、女は言うとバッグの中から折り畳み携帯をだした。

ピッポッパ!

「あっ!たけし。私舞子。今どこに居るの?・・・・・えっ!近くじゃん。私今サンタナに居るの。・・・・・そうそう!この前行ったところよ。実はね、今すぐここに来てほしんだけど」

「そんな~!舞子さん」

 狼狽する健太郎。

「うんうん!待ってるわ。は~い」

ピッ!

 携帯を切ると女の顔は再び怒りを含んだ物になり健太郎を睨みつけた。

「横でごちゃごちゃ五月蠅いわね。人が携帯かけてる時くらい静かに出来ないの?」

「舞子さんたけして誰なんですか?なんでそんな男を呼ぶんですか?」

ガチャッ!

 その時店の扉が開き身長が高くがっちりした体型の男性が入ってきた。

「はい!たけしと言うのは僕の事で~す」

 健太郎は突然店内に入ってきた身長も体型も自分とは大違いのこの男にすっかり気圧されてしまった。

「あの~失礼ですが舞子さんとはどういったご関係で?」

 と、いうへりくだった健太郎の態度に彼は

「お前と関係ない」

 と、一言で済ませると舞子の前に歩みでていきなり抱擁をはじめた。

「あ~なんて事を」

 健太郎は目の前でおこってる現象に対しただただパニック状態に陥った。

「お客さん!店の中ではそんな事困ります」

 と、いう当人達には何を言ってるか分からない程度の小さな店主の声をBGM代わりにたけしと舞子の抱擁はさらに激しくなった。

「あ~そんなにきつく抱きしめるなんて」

 健太郎の声に少しうざったくなったたけしは一旦舞子から離れた。

「おめえよ~!さっきから横でうるせいんだよ。なんか用か?」

 すっかりたけしの迫力に押されている健太郎は

「お似合いのカップルだなと思いまして」

 と、わけの分からない事を言いだす始末である。

「だったら静かにしろよな!だいたいおめえはいったいなんなんだよ?」

「私を追いかけ回してる変態よ」

 と、女の声が横から飛んできた。

「そんな~!舞子さ~ん」

 健太郎は倍程あるたけしの太い腕に胸ぐらを掴まれた。

「この変態野郎!俺の舞子に・・・・・・・・・」

 『俺の舞子に』という言葉が頭の中をぐるぐる回りだしたがすっかり怖じ気づいてる健太郎にはどうする事も出来ない。

「ごめんなさい!ごめなさい!」

「たけし!そんな変態野郎早くやっつけて」

「この変態野郎が!」

 たけしは健太郎の胸ぐらを掴んでいる腕に更に力を入れた。

「ぐ、ぐるじぃぃぃー!もう駄目!助けて!助けてMCマーン」

 健太郎の叫びと同時に店内に陽気な音楽が流れ出しきた。

「いったいなんなんだ?」

 うろたえるたけしの後ろで店のドアが開かれた。

ガチャッ!

「もう飲めませ~ん」

 と、言って入ってきたのは額にMの文字が描かれている40代半ばくらいの男性だ。

「あっ!MCマン来てくれたんだね」

「おっ!健太郎君久しぶりだね!相変わらず情けなさそうな人生を送ってるじゃないか!はっはっはっ!」

 大きな笑い声が店内にこだました。

「なんだ?このいかれた親父は」

 たけしは健太郎の胸ぐらを掴んだままでその奇妙な男性を睨みつけた。

「MCー」

 男はわけの分からない叫び声と同時に全く無意味なポーズをとった。

「ところで健太郎君!なんだねこの失礼な兄ちゃんは?」

「僕に暴力を振るうとっても悪いやつだよ」

「つまり悪人だね」

「そうだよ!悪人の中の悪人だよ。きっと僕に暴力を振るった後はMCマンに襲いかかる気だよ」

 好き勝手に散々言われてたけしの怒りは頂点に達した。

「おめえらいいかげんにしろよ!さっきから言いたい事言いやがって!二人まとめて殴ってやらあ」

 と、言うとたけしは健太郎を片手で引きずりながらMCマンにせまった。

「どうやら健太郎君の言う事は本当らしいね」

 MCマンは手のひらをたけしに向かってつきだした。

「おうおう!おっさん。なんのつもりだよ」

「衝動買いビーム」

 その叫び声と同時に手のひらから紫色した光線のような物が飛び出したけしを直撃した。

「MCマンいったいこの光線に当たるとどうなるの?」

「見てれば分かるよ健太郎君」

 たけしの目はとたんに虚ろになり健太郎の胸ぐらを掴んでいた手から力が抜けた。

「あっ!俺はいったい?」

 狼狽するたけしの目に店内に置いてある様々なカクテルが入ってきた。

(あぁ!美味しそうなカクテル!あれも欲しい。これも欲しい。誰にも渡したくない)

「店主!俺にあれを売ってくれ!これもだ!それも!え~い店ごと売ってくれ」

 たけしの購買欲は止まらなくなった。

「MCマンこれはいったいどうなってるの?」

「ふっふっふっ!見てのとおり衝動買いビームに当たった者はなんでもかんでも欲しくなって衝動買い地獄に陥るんだよ」

「なんだって!周りの人にも自分にも大ダメージが残る大人買い(まとめ買い)が止まらないとは、なんて卑劣かつ恐ろしい技なんだ」

「お褒めにあずかりありがとう健太郎君」

ガタッ!

 大きな音がした方向を見てみると危険を察知した舞子がその場から逃げようとして椅子をひかっけてしまい横向けに転がしていたのである。

「MCストップ」

 今度は手のひらから黄色した光線が発射され舞子の身体を直撃した。

「動かない!どうして?」

「健太郎君!あの女はいったいなんだね?」

「僕に散々貢がしておいたくせになんにもやらしてくれない非道い女だよ」

「食い逃げか!それは非道い女だね」

「きっと次はMCマンに貢がさすつもりだよ」

 MCマンの怒りは頂点に達した。

「よりによってこの私を財布代わりにしようとはなんて非道い女なんだ!絶対許さないぞ」

 と、言うと今度は緑の光線を舞子に当てた。

「メ~!メ~!」

「うわ!あの舞子さんが四つんばになって羊の真似をしている」

「真似じゃなくて彼女は羊その物になっているんだよ。性格が曲がらないようにこれからは大事に育ててやれよ」

 羊になった舞子が健太郎の足元に頬を擦り付けている。

「どうだい、かわいいだろ健太郎君」

 と、誇らしげにMCマンが言っていたが健太郎は何か物足りない。

「う~ん!かわいいけどなんか物足りない。やっぱりこの女には人間のままで僕に一生奉仕して欲しいな」

 と、願望を述べた。

「『奉仕』という言葉を使うなんて、健太郎君も大人になったもんだな!ようし、その願い叶えてよろう。絶対服従ビーム」

 今度はピンクの光線が舞子を直撃した。

「これで彼女は一生僕の物なの」

「そうだよ!健太郎君。これからこの女の人生は君の物だよ」

「うわぁい!ありがとうMCマン」

「なんのなんの!これからも困った事があったらいつでも呼んでくれたまえ」

「えっ!もう帰っちゃうの?」

「あぁ!今から新年会に顔を出さないといけないからな。では健太郎君さらばだ!」

 外に出たMCマンは夜の街へと消えていった。

「さぁ!舞子こっちを向くんだ」

「はい」

 虚ろな目をした舞子が健太郎に視線を移した。
 そこには先程の強気な舞子は完全に消えていた。

「お前は俺の言う事はなんでも聞くんだな」

「はい」

 舞子はとても嬉しそうだ。

「お前は俺の事が好きで堪らないだろ」

「はい!死ぬほど愛しています。ご主人様」

 いつの間にか健太郎は舞子の中では『ご主人』になっていた。

「ようし!ではお前は俺のなんなんだ?」

「命より大事なご主人です。なんなりとご命令を」

「では服を脱げ。そして俺に奉仕するんだ」

「はい!喜んで」

 小さなショットバー内で男女が絡み合う姿がテレビの画面いっぱいに映し出されていた。

「いくいくいく!ご主人様もうご勘弁を!舞子の中にいっぱい出してください」

 その映像を食い入るように男性7人が見ていた。
 ここはある雑居ビルの5階の一室でちょうど真ん中に長テーブル2つ置かれており7人は鉄パイプの椅子に座り向き合っていた。
 壁にはビキニ姿の女性のポスターが何枚か張られているのである。
 そのポスターには全て右下に竹の子の絵に『企画』の文字が踊っていた。
 そう!こここそはアダルトビデオ業界NO.2のシェアーを誇る竹の子企画である。

どびゆうぅぅぅー

「あ~ん!もう舞子駄目~!」

 女性が快感のあまり気絶している映像が映し出された。

ピッ!

 そこでテープは一旦切られたのだ。

「どうです!これこそはわが竹の子企画が業界NO.1に昇るべく自信をもってお贈りする『MCマン(MCビームで私を奴隷にして)』です」

 と、20代後半くらいの男性が部屋に響き渡るほどの大きな声で叫んだ。

「さらに抜きどころの3秒前には画面右上にMCマンのイラストが現れお客様には安心して自慰の用意をしていただけるようになっております。題して『MCオナニーポイント(これで間違って男優を見て発射する事は無いよ)』です」

「うむぅ」

 7人の中で一番年長者らしき人物が言葉にならないうめき声を出している。
 今の若い者の考えは全く理解出来ないってところだろう。

「山本君!そんな物が本当にうけるのかね?」

 と、一番の年長者の隣に座っていた男性が質問した。

「当たり前です。これこそが現代の若者が求めているものです。きっとレンタルビデオ店のアダルトコーナーはMCマンの新作を求める為に男性がむらがり学校や会社でもMCマンの話題でもちきりになる事でしょう。あっ!ひょっとしたら子供の間でもMCマンごっこが流行るかもしれません」

「いや~ブラボ!ブラボ!」

 突然立ち上がり拍手しだしたのは山本と同期にこの業界に飛び込んだいわゆるライバルというべき存在の真壁であった。

「ま、真壁?」

「『MCマン』ですか!こいつは傑作だ。さすが山本さん。勇気が有りますね」

「どういう事だ?」

「私だったら怖くてこんな我が社を潰すような作品は作れないね」

「真壁!」

 部屋の中は異様な緊張感に包まれた。

「真壁君!いいから続けなさい」

 と、言ったのはこの会社の社長である松本である。

「はい!社長。え~と先ずこの作品のパッケージを想像してください。パッケージは舞子と呼ばれる女優にしますか?それとも題名どおり主役のMCマンをもってきますか?」

「それは・・・・」

 口ごもる山本を尻目に真壁は更に続けた。

「もちろんこんな親父がパッケージになっている物誰も手に取らないので女優にしますよね。すると『あっ!これよくあるパターンだな。しかも題名からして地雷の臭いがぷんぷんする』という事でやっぱりこれも誰も手に取らない事になるんです」

「うん!うん!」

 年輩者はそのとおりだと言わんばかりにうなずいている。
 気を良くした真壁は更に続けた。

「そもそもMCマンなる者が本当に実在するでしょうか?もちろん答えはNOです。そんな事は誰だって分かっています。よってMCマンのタイトルが付いた時からこの作品は『嘘ですよ~』『そんな馬鹿な事あるわけないでしょ』と公言しているようなもんです」

 真壁と山本を除いた5人が小さな声で相談しだした。
 と言ってもその相談は結果を出すまでそんなに時間のかかるものでは無かった。

「この作品は没とする!山本お前には休養が必要だよ。しばらく里へ帰ったらどうだ」

 と、社長の松本が言い放った。

「そ、そんな~これは絶対うけます。私を信じてください。私を・・・・・・」

 と、山本は最後の抵抗を試みようとしたがむろんそんなものはこの状況では通じない。
 MCマンのビデオはデッキがら取り出され山本の手に突き返された。
 一瞬の静寂!
 『今年もトップの座は奪え返せないか』と言う役職者の溜息。
 しかしその空気を断ち切る者がいた。
 そう真壁である。

「落胆するのはまだ早いです」

「真壁君ひょっとして何かあるのかね?」

 輝く役員達の顔!

「今私の手に何が握られていると思いますか?」

 そにいる全員の視線が真壁の右手に集中した。

「ビデオテープだ!まさか真壁君」

「そうです。竹の子企画が業界NO.1に上りつめるために実は私は秘密に撮影を行っていました」

 今やその部屋は真壁のワンマンショーの会場と化していた。

「ずばりテーマは『やらせなし!素人!私を止めて』です」

 言いながら完全に真壁は自分に酔っているのである。
 完全に役員達は自分の手のうちに入っている。
 今からは俺の時代だ!

「つまりそれはいったいなんだね?」

 と、すっかり真壁のペースに乗せられていた役員達が質問した。

「路上でかわいい女性を探し催眠術をかけSEXまで持っていくというものです」

 会場に失望の空気が漂った。

「はっはっはっ!さすが真壁君!凄い凄い!でも残念ながらその手の物はすでにありふれているよ」

 と、真壁により恥をかかされた山本が言った。
 しかし真壁は動じない。
 あたりをゆっくり見回し口元に不敵とも言える笑みを浮かべると更に話しを続けた。

「そうです!ありふれてます。ただあれは、ほとんどやらせです」

 業界では禁句となっている『やらせ』と言う言葉を使った事により更にその場の緊張が高まった。

「紹介しましょう!催眠術師大平さんです」

ガチャッ!

 ずっと部屋の外で立ち聞きしていたのだろう。凄く良いタイミングで大平と呼ばれた男が部屋に入ってきた。
 背はどちらかと言うと低い方だががっちりした体育会系の筋肉質系体型で右手にライターを持っていた。

「初めまして!大平と言います」

 全ての視線は大平の一挙手一投足に注がれた。

バーン!

 突然けたたましい音が場内にこだました。
 大平がおもいっきりライターをテーブルに叩きつけたのだ。

(どいつだ?どいつだ?こいつだ!)

 大平は素早く催眠にかかりやすい人物を探しだし社長の横に座っている50代前半ぐらいの男性の右横に移動した。
 そして右手を顔の30㎝程前にかざしてから『はい!ずーっと!ずーっと!すー』と言うかけ声に合わせ手の平をその男性の顔に近づけた。

「ほうら!凄く気持ち良いですよ!凄ーく!凄ーく気持ち良いですよ。はい手足の力が抜けてきます。こことここですよ。ほらすーっとすーっと!とっても気持ち良い!とっても気持ち良いですよ!はい!お腹も肩も力を抜きましょう。はい!すーっとすーっと!更に!更に力が抜けますよ。ほうら凄ーっく気持ち良いですね」

 男性の顔に大平の手のひらを完全に乗せた時身体は完全に脱力状態になった。
 それから男性の耳元で大平が囁くと男性は鶏になったり犬になったりした。

「どうです。凄いでしょ。彼に今回協力していただき本物の催眠エロビデオを作ったのです。それがこのビデオです」

 真壁は得意げにテープを上にかざした。

「それを早く見せたまえ」

 と、役員の一人が叫んだ。
 真壁は一礼するとデッキにテープを差し込み再生ボタンを押した。
 『デモテープ』の文字の後に奇妙な音楽が鳴り響き大平がアップで登場した。

「は~い!みなさんこんにちは。みなさんが見る頃には『こんばんは』かな?」

 そこは何処か場所は特定出来ないが繁華街であった。
 人通りが多く様々な人々がせわしなく行き来している。

「私は大平と言いまして正真正銘の催眠術師です。あらっ!ひょっとして疑ってませんか?胡散臭いな~とか思ってるんでしょ。いえ!別に怒ってるわけじゃないですよ。あまりにも嘘催眠が多いんであなたが疑うのはしょうがないです」

 と、大平は大きくうなずきながら人差し指を立てて道行く女性を指さした。

「あんな女性とやりたいと思いませんか?あんな女性とも!あの女性とも!ではナンパでもしましょうか?・・・・・・・・えっ?ナンパは苦手!出来れば催眠術とか使って思いどおりに操りたい。・・・・・・・う~ん!あなた危険人物ですね。街頭催眠でばんばんやりたいなんてなんて卑劣なんでしょ。・・・・・・・・えっ?私?もちろんばんばんやってますよ。試しにあの娘でやってみましょう」

 と、言うと学生らしき女性の前に進み人差し指を前に突き出した。
 誰でも道行く人にいきなり指さされたら気分がいいわけない。
 少しむっとするのは当然だろう。

(なんなのこの人?危ないわ!目をあわせないでおこう)

 彼女は彼を避けるようにやや早足ぎみで右よりに進路をとったが彼は彼女を追いかけるようにゆっくり近づいてきた。

(いったいなんだって言うの?この人頭おかしいんじゃない)

 とうとう彼は彼女の目の前まで来てしまった。

「あんたね」

 彼女が何か言いかけた時彼は指先を彼女の目線より少し上にもってきて顔の表情の変化を読みとってから下におろした。
 そして指先がおりるのと同時に瞼が閉じた女性の耳元に少し暗示を与え脱力さしてからカメラの方に向きかえり手招きしだした。

「カメラさん!もう大丈夫ですよ!彼女はかなり深いところまで入っています」

 女性は瞼を閉じ身体からは全く力が感じられなかった。
 もし大平が支えている左腕を離したら彼女の身体はたちまち路上に転がるにちがいないだろう。

「さぁ!ここはあなたにとって凄ーく落ち着ける世界です。なんでも正直に話してください。あなたの名前はなんですか?」

「前川京子」

 彼女は目を閉じたままつぶやくような声で答えた。

「学生さんですね」

「はい!服飾の専門学校に通っています」

「う~ん!ぞくぞくするようなハスキーな声ですね」

 それから大平はAV定番の『彼氏は?SEXは?初体験は?週何回くらいオナニーするの?』などの質問をおこなった。

「大平さん!そろそろ彼女に何かやらさしてください」

 ひととおりの質問の後カメラマンらしき人物の声がして再び大平の顔がカメラに大写しにされた。

「はい!ではこの笛を鳴らすと彼女の性感帯を刺激するようにしますね」

 そこで彼はまた彼女の耳元で何かつぶやきだすのである。
 時々聞こえる彼の『子宮』『おまんこ』『気持ち良いおちんちん』という声に反応して彼女は小さなうめき声をあげ身体をくねらしていた。

「・・・・・・・・・・いいですね。目が覚めても絶対そうなりますよ。3,2,1,はい!」

 パチンという彼の手をたたく音と同時に彼女の目が開きだした。

「いったいなんなんですか?それにこれカメラじゃないですか!」

 と、凄い勢いで怒りだしたが大平は全く動じずポケットから小さな笛を取り出すとカメラの前に笛を突き出した。

「警察呼びますよ」

ピー!

「あっ!」

ピピピピピー

「あんあんあんあんあん」

 とうとう路上に座り込んだ。

ピピピピピピピーピー

「あん!いやんいやん!どうして?はうっ!」

 道行く人がじろじろ見る中更に続けられた。

ピッピッピッピッ!

「何か!何か中で動いているよ~!あ~んあ~ん」

「京子ちゃんそれが何なのかよく知ってるはずですよ。そうです!あなたの大好きな気持ち良いおちんちんですね。ピー」

「ひぃ~!駄目駄目!お願いみんな見ないで!」

 彼女は路上に横たわり快感の中もがいていた。

「ほうら!京子ちゃんのおまんこ熱い!熱い!ピー」

「あぁん!いやん!いやん!いやん!」

 大平は京子の額に手をあてた。

「はい!あなたは私の質問に正直に答えるよ!抵抗しても無駄!絶対正直に答えてしまうよ。3,2,1,はい」

「もう駄目!許して」

「『許して』だって?本当は気持ちよくてしょうがないから止めてほしくないんでしょ。ピー」

「あ~ん!そんな事・・・・・そんな事・・・・・・・はい!その通りです止めないでほしいです」

(なぜ?どうして?私何言ってるの?)

「ほうら!私が思ったとおり京子ちゃんはとってもすけべな女性ですね。では今京子ちゃんの中で何が動いているのかみなさんに分かるように大きな声で言ってみましょう」

「いや!いや!そんな!そんな!・・・・・・おちんちんです。とっても気持ち良いおちんちんが京子の中で動いてます」

「うわぁ!こんな事を路上でもだえながら大声で言うなんて最近の若い女性は凄いですね」

「もういや・・・」

「えっ!嫌ですか?ピー」

「は~ん」

ピッピッピー

「はんはんはん!いい!いい!」

「女心は複雑ですね。では彼女にはそろそろいってもらいましょう」

 再び大平は彼女の額に手を当てて暗示を入れはじめるのであった。

「・・・・・・・・・です。いいですか10まで数えたら必ずそうなりますよ」

 京子は物欲しそうに下半身中心にくねらせていた。

「では10まで数えますよ。1,2,3,4」

 大平は数を数えを始めそれにともない京子のよがりようは更に激しさを増した。

「あんあんあんあん!ひぃひぃ!気持ち良い!気持ち良いよ~!」

「ほうら!おちんちんが凄ーい勢いで動いてるよ。まるで身体中がおちんちんで犯されているみたいだよ」

「あ~ん!あ~ん!痺れちゃう!身体中が痺れちゃうよ~」

「5,6,7」

「もう許して!京子を許して」

「快感は更に更に増してきます。ほうら!気持ち良いですね。凄ーくおまんこ気持ち良いですね。京子ちゃんの大好きなおちんちんが更に更に激しく動くよ」

「ひぃ~」

「ほうら!我慢出来ない!あそこがぎゅっぎゅっぎゅっぎゅっ締まるよ」

「あ~ん!いくいくいくいくいくいっちゃいそう」

「まだいきたくてもいけませんよ!8,9、9,9,9,9」

「ひぃぃ~いやんいやんいやん!いかしてお願い!京子をいかして」

「9・・・・・・・・・・・・・10!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!ぴくぴく」

 京子の身体は路上で果てる事なく痙攣し続けた。

「カメラさん!ではここは一旦退散しましょう」

 大平の号令のもとカメラ共々その場から消え去り画像はそこで一旦切れて2秒ほどの砂嵐のあと先程とは違う繁華街が映しだされた。

「どうですか?京子ちゃんかわいかったですね。私も興奮してきてあそこは破裂寸前です。これは処理しないといけませんね。では、そうですね・・・・あっ!彼女なんかいいですね!あの張りのあるバストなんかあきらかに男を誘ってますよね。では希望どおり私のスッペルマをご馳走してあげましょう」

 大平は20代前半ぐらいの大きめの胸を持った女性に近づいていった。

「カメラです!どうやら大平さんの次の獲物は彼女らしいですね。切れ長の目によくとおった鼻筋小さめの唇少し尖った顎!う~ん美人ですね。あっ!地図を取り出して道を聞いていますね。首を2,3度かしげてます。くさい縁起ですね。更に更に何やら聞いています。あっ!地図を見ていた彼女の表情が変わりました。暗示を入れてます。耳元で暗示を入れてます」

「カメラさん来てください!彼女も完璧に入りましたよ」

 と。言う大平の言葉どおり完全にこの女性も脱力しきっていた。

「さぁ!まず最初の暗示を入れてみましょうね。・・・・・・・・・・・・・・・・だからあなたは絶対そうなります。そうなる事であなったにはとっても幸せな気分になります。3,2,1.はい!」

 パチンという大平の手をたたく音と同時にその女性の目が開いたがその目はどこか虚ろで顔全体や身体全体にも力が感じられないものになっていた。

「はい!あなたの目の前に居るのは誰ですか」

 女性は大平に抱きつくと

「私の愛する人」

 と、つぶやいた。

「彼女は今私の事が好きで好きでたまらなくなっています。少し胸を揉んだだけでも」

「あぁぁん!素敵!」

「と、なります。では、私の下半身は限界近いので早速彼女をスタジオに連れ込みましょう」

「これ欲しい!これ欲しい!」

「う~ん!積極的ですね。でもスタジオはあそこですよ。ちょっと我慢してください。あっ!ビデオを見ているあなた!絶対わがマンションでピンポンダッシュなどの悪戯はやめてくださいね」

 そこで画面は切り替わってマンションの一室が映しだされた。

「は~い!スタジオに来ました。ありきたりのベッドですね。ここで今から彼女とSEXします。彼女も待ちきれなくて下半身は洪水状態ですよ。ほうら」

くちゅくちゅ

「あぁん!いい!いい!くちゅくちゅ凄く気持ち良い」

「良かったですね。凄く満足しているみたいですよ。ではこのまま恒例のインタビューをおこないましょう。まずあなたの名前は?」

「はうはう!西沢あんりです」

「あんりちゃんか!凄くいやらしい名前ですね。えっ?なぜそれがやらしい名前だって?悪いんですが質問は受け付けませーん。くちゅくちゅくちゅ」

「ひぃぃぃぃ!あぅあぅあぅ」

「次の質問ですが・・・・・・あ~すいませんが私ももう我慢できそうにありません。ではインタビューをうち切ってもうやっちゃいましょう」

 と、言うと大平は再び彼女の目を手の平で覆った。

「今から私が数を3つ数えるとあなたは目覚める事が出来ます。もちろん見る事も聞く事も話す事も出来ますがあなたは催眠状態のままで目覚めます。ですから私の言う事はなんでも聞いてしまいますよ。なんでも。なぜならそうする事が当然の事だからです。それはあなたもよーく知ってますよね。ではいきますよ。3、2、1、はい!」

 再び彼女の目が開いた。
 もちろん虚ろな目のままで。

「私・・・・いったい?」

 見知らぬ男性に道を聞かれいつの間にか気絶して気がつくとベッドの上にいるのだ。彼女にしてみれば混乱状態に陥るのは当然の事だろう。

「今君は私とSEXをする為ベッドの上に居るんだよ」

 と、先程の男性に笑顔で言われているのだからたまったもんではない。

「何を言ってるの?ここは何処?」

 彼女はベッドから立ち上がり外へ出ようとドアノブに手をまわした。

「ここから出たら駄目だよ!ベッドに戻って」

「はい!えっ?・・・・・・どうして?どうしてなの?」

 なぜかこの男の言う事を聞かなければいけない気がしてあんりはベッドに戻った。

「はい!もっとこっちに来て」

ぎゅっ!

「はい!もっときつく抱きしめられれば抱きしめられるほど幸せな気持ちで溢れますよ。ぎゅっ」

「あっは~ん」

(どうしてかしら?凄く幸せだわ。もっともっときつく抱きしめて欲しい)

「はい!邪魔な服は脱ぎ脱ぎしましょうね」

「えっ?えっ?私?えっ?」

 彼女は戸惑いながらも一枚一枚ゆっくりと脱ぎだした。

「ほうら!脱ぐ事にだんだん気持ちが高ぶってくるよ」

「はんはん!あは~ん!うふ~ん」

 あんりの下半身は再び疼きだした。

「どうして?どうして?」

ぶちゅっ!

(いやん!どうしてこの人とキスなんかしなきゃいけないの?でもでも気持ち良い!幸せ!)

「ふはー!では、今度はおっぱいの辺りがむずむずしてきて愛撫して欲しくてたまらなくなるよ」

 と、言いながら大平は彼女のバストから5センチ程上で円を描くように指先をまわし始めた。

(あん!嫌!でも熱い!熱い!おっぱいが熱いよー)

「ほうら!私におっぱい揉んで欲しくてたまらないんでしょ」

「そんな事・・・・・・・・」

「えっ!嫌ですか?でも考えてみてください。おっぱいをいじられる事はSEXでもなんでもないですよ」

(それもそうね。おっぱいをいじられるくらいは・・・・)

「お願いします。私のおっぱい揉んで!吸って!かじって~!」

「ではみなさん私は彼女の願いを聞いてあげる事にします」

ちゅー!ちゅぱちゅぱ!がりがり!こりこり!

「ひぃ!ひぃ!ひぃ!はぁ~ん!何これ?気持ちいい!気持ちいい!凄くいいよー」

 大平は彼女の張りのあるおっぱいをゆさぶってみたり揉んだり舐めたりかじったりして楽しんだ。
 そして透き通るような白い肌を舐め回し彼女のうなじにしばらく残るほどの強烈なキスマークをつけた。

ちゅぅぅぅぅぅぅー

「はぁ~!とろけそう。身体がとろけそう」

 ねちっこい愛撫は20分程及んだ。

「ほうら!気持ちいい!凄ーく気持ち良いよ。もう身体がたまらなくなってきて私のおちんちん入れたくてしょうがなくなってるよ」

(あん!たまらない!入れて欲しい!入れて欲しい!・・・・・でもそれは)

「あんりちゃん大丈夫ですよ。中に入れても射精しなければSEXじゃないでしょ」

「そ、それもそうですね!」

 彼女は股をV字型に大きく開げ大平の物が入れやすい体制をとった。

「お願いします。私のここにあなたのおちんちん入れてください」

「しょうがないですね!では彼女のリクエストに応えるとしましょう」

ずぼっじゅるじゅる

 すでにそこは愛液で洪水状態になっていたので大平の肉棒はなんの抵抗もなく簡単に入った。

「はい!締め付けて!締め付けて!もっと締め付けて」

ぎゅっぎゅっ!

「あんあんあんあんあん!なんなのこのおちんちん!凄く凄く気持ち良い!こんなの初めて~」

ぎしぎしぎしぎし!

「ひぃひぃひぃひぃ!身体がばらばらになるよ~」

ぎしぎしぎしぎし!

「いい!いい!いい!凄ーい!凄ーい!凄ーい」

「ほうら凄く気持ち良いでしょ。もう私の精液を中に入れてもらいたくてしょうがなくなってくるよ。中に出してくださいってお願いしようね」

ぎしぎしぎしぎしぎし!

「いきそう!いきそう!いきそうなの!お願いあなたの物を私にちょうだい!いっぱいいっぱい私の中で出して~」

「しょうがないですね!彼女がそうおっしゃるなら。では私もそろそろ限界なのでいかさしていただきます」

どびゅっー!ぴくぴくぴくぴく!

「あひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃー!最高ぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅ」

 彼女は快感のあまり気絶した。

ピッ!

 そこでビデオが消された。

「どうです。このリアリズム!高鳴る感情!揺さぶる性欲!これは絶対いけますよ。大ヒット間違いなしですよ」

 真壁は興奮しきっている。

「まっ!おもしろい事はおもしろいね」

 と、社長の松本がつぶやいた。

「ありがとうございます。名付けて『リアル!街頭催眠でエロエロ(次はあなたの番だ)』、この作品は絶対にわが竹の子企画を業界NO.1の座に導いてくれる事でしょう」

「そうなればいいが・・・・・・・・・ただ」

「ただ?」

 真壁に不安が広がった。

「これは犯罪じゃないの?」

「へっ?」

「それにさっきから外でサイレン鳴らしている車がいるんだけどひょっとして君達二人を迎えにきてるんじゃないの?」

「えっ?」

ピーポーピーポー!

 真壁は窓の外のパトカーを確認した後、社長の前に歩み出た。

「あの~半年程休みを取らさしていただいてもよろしいでしょうか?」

 それから一年後『リアル!獄中で男に目覚めた私(次はあなたの番だ)』というタイトルの作品が発売された。

 すくすく育て竹の子企画!突き抜けろ竹の子企画!いつの日か、いつの日か業界NO.1に・・・・・・・・・

< 終わり >

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