妖染 ─ 崩山(1) ─
「えー・・・最後に言いたい事がある」
担任の男性教師はここで言葉を切り、教室全体を見回した。今はSHRが行われているのである。勿体ぶって咳払いを一つすると、担任は口を開いた。
「最近、物騒になってきているそうだ。生徒達の夜間の外出を禁止してくれと、警察から通達があった」
これを聞いて、室内からざわめきが起こった。どの生徒も、近くのクラスメート達と顔を見合わせている。
「静粛にっ!」
担任の一喝が教室内に響き渡り、生徒達はシーンと静まり返った。
「あー・・・そういうわけで、夜間は決して外出しないように。以上だ」
担任が言い終えると、委員長が号令を掛けた。
「起立っ!礼っ!」
生徒達が下げた頭を上げ、担任が教壇を降りると、全員の動きが止まった。教室内には妖気が立ち込め、表情が抜け落ち始めた。
「さてと・・・」
唯一の例外、啓人は呟いた。
(今日は仕込みだけにしておくか・・・)
そう思った事に理由はない。何となく、一度にやるのが勿体ない気がしただけである。
(明日からは、それなりに楽しませてもらうか・・・)
啓人は詠唱中にそんな事を考えていた。
次の日の早朝、楠町真梨江はいつものように教室で洋書を読んでいた。人気のない寂しい教室で一人静かに本を読むのが、彼女の習慣であった。
「あら・・・?」
真梨江の前を黒い影が横切り、彼女は本を読むのを止めた。その影は、数メートル先でフラフラと床に落ちた。
(何かしら?)
近づいてみると、一羽の小鳥であった。怪我をしているのか、茶色の羽は赤くなっていた。真梨江は駆け寄ると、ポケットからハンカチを取り出した。
「少し我慢してね」
小鳥が暴れないようにしっかり押えると、ハンカチで傷口をギュッとしばった。
「これでマシになると良いんだけど・・・」
小鳥の体を両手で抱え、窓へ歩いていった。教室に入ってきた時に開けておいた窓から放してやると、小鳥はふらつきながらも飛んでいった。
「良かった・・・」
小鳥が飛び去る姿を見送ると、真梨江は席へと戻った。
(え・・・?)
違和感を覚え、真梨江は手を止めた。
(何か体が・・・)
芯から疼くような、火照ってくるような、奇妙な感覚であった。
(どうして・・・?取り敢えず、何とかして抑えないと)
真梨江は何のためらいもなく、右手を股間へ伸ばした。今までろくな経験もなく、まして学校でした事などなかった。
「んっ・・・」
それを疑問にも思わず、割れ目をまさぐり始めた。
「ふうっ・・・」
真梨江の下着の下は、既に濡れ始めていた。
(はあ・・・私ってこんなに感じやすかったかしら・・・)
一瞬だけその考えがよぎったが、それも渇望の前に消えた。
「あうっ・・・んっ・・・」
クチュクチュという音と、小さな喘ぎ声が誰もいない教室に響き渡っている。
「んくっ・・・はぁ・・・」
真梨江の白い指は、段々と動きが速くなっていく。
「あぁ・・・んん・・・くはぁ・・・」
真梨江の声は、徐々に大きくなっていった。いくら感じても、体の疼きは一向に収まらなかった。それどころか、益々体の疼きは大きくなっていく。
(ど、どうして・・・あっ・・・止まらないの・・・んっ・・・)
真梨江は戸惑いながらも、手を止める事は出来なかった。
「ああっ・・・んっ・・・あんっ・・・」
持っていた本は、机の上に落ちた。
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」
日頃の物静かで、近寄り難い雰囲気は見る影もなかった。
「あっ・・・ああっ・・・ああっ・・・」
今の真梨江は、ひたすら快感を求め、貪っていた。
「あれ?楠町先輩?」
聞きなれた、涼しげな声が聞こえ、真梨江は思わず手を止めて入り口の方を見た。
「どうかしたんですか?」
(く、栗橋さん・・・?)
真梨江が硬直しているの見て、不思議そうに入って来たのは栗橋清華であった。
「何でもないわ」
真梨江は咄嗟に言い訳が浮かばず、最も信用され難い言葉が飛び出していた。
「本当ですか?」
清華は心配そうに近づいてくる。それを見て、真梨江は慌てた。
「ほ、本当に大丈夫だから」
真梨江は、清華と目が合わないように窓の方を向いた。
「でも先輩・・・」
清華は真梨江の前まで来ると、屈み込んだ。
「エッチな匂いがしますよ?」
そう言って、机の下を覗き込む。
「ちょ、ちょっと・・・」
真梨江は急いで脚を閉じようとしたが、清華は手を出し、それを妨げた。強引に脚を開かせると、むっとした匂いが室内に広がる。
「きゃっ!な、何をするの?」
真梨江は驚いて、清華を見る。清華は黙ったまま、真梨江のスカートへ手を伸ばした。
「大人しくしてて下さいね」
清華はさっきとは打って変わって、そっけなく言った。真梨江のスカートが捲り上げられると、白い太腿とその奥にある下着が露わになった。
「先輩らしいですね」
下着の色が白いのを、清華はそう評した。真梨江は頬を赤らめただけで、何も言わなかった。続いて清華は、下着の上から割れ目をなぞった。
「あっ!」
敏感になった部分を触られ、真梨江は声を出してしまった。下着はグショグショになっており、液が太腿までツウッと流れていた。
「凄い事になってますね」
清華はあくまで冷静で、事務的な口調で言った。
「み、見ないで・・・」
真梨江は、顔から火が出るような思いであった。
「先輩、どうしてこんな事になったんですか?」
清華は口に笑みを浮かべ、首を傾げながら聞いた。
「そ、それは・・・」
(言えるわけがないじゃない・・・)
言葉に詰まる真梨江を見て、清華は不満そうな顔になった。
「言えないんですか?」
確認と言うより、何で言えないのか、と言いたそうな口調であった。
「あ、当たり前でしょう・・・」
(栗橋さん、こんな娘だったかしら?)
そんな疑問が、真梨江の脳裏をよぎる。真梨江の疑問を知ってか知らずか、もう一度真梨江の割れ目を触る。
「はんっ・・・」
真梨江は思わず声を出し、両手で股間を押えた。そんな反応を見て、清華はくすくす笑った。
「先輩って可愛いですね・・・」
そう微笑みながら、真梨江の髪を撫でようと手を伸ばした。
(違う・・・栗橋さんじゃない)
その結論に達した真梨江は、反射的に伸ばされた手を避けた。
「どうして避けるんですか?」
強張った顔をした真梨江を見て、首を傾げた。その答えは、扉の方から聞こえてきた。
「お前の演技が下手だからだ」
二人が同時に振り向くと、そこには啓人が立っていた。
「あ、啓人様!」
清華は嬉しそうな声を出し、駆け寄っていった。その姿を真梨江は、唖然として見ていた。
「違和感が丸出しだったぞ」
啓人が呆れ返って指摘した。それを聞いた清華─佳純は、一瞬固まったが、直ぐにぺロッと舌を出した。
「やっちゃいました?」
頭を掻きながら、無邪気に笑う。そんな清華の横を通り、啓人は全く理解が出来ていない真梨江の前に立った。
「それで?楠町は何をしていたんだ?」
真梨江はその言葉に我に返ると、赤くなって俯いてしまった。彼女の服の下は敏感になっている上、下半身は洪水になっていた。
「べ、別に何も・・・」
そう答える声に、いつものような張りはない。今の状況で異性と向き合っているという事実が、彼女から冷静さを奪い、さっき感じた疑問を封じ込めていた。
「どうしたんだ?」
啓人は心配そうに声を掛け、屈み込んで真梨江の顔を見た。真梨江は反射的に顔を背けた。
「・・・・お前、自分でしてたのか?」
それを聞いた瞬間、真梨江の肩がビクッと震え、顔から耳朶まで赤く染まった。
「へえ・・・学年一の秀才がねえ・・・」
啓人の言葉が油となって、真梨江の羞恥心の炎に注がれる。
「見かけによらず、淫乱なんだな・・・」
泣き出しそうな顔になった真梨江の首が、微かに揺れる。
「違う・・・」
真梨江の口から、ポツリと言葉がもれた。
「何が違うんだ?」
啓人の方にも容赦がない。
「私・・・淫乱なんかじゃ・・・」
消え入りそうな声で、真梨江は啓人の言葉を否定した。だがそれを聞いた啓人は、ニヤリと笑った。
「へえ・・・これでもか?」
啓人は人差し指で、真梨江の股間を突いた。
「あーっ!」
電流が全身を巡り、真梨江は体を仰け反らせた。そして、条件反射で脚を閉じた。
「あ、ダメですよ。楠町先輩」
何時の間にか側に来ていた清華が、閉じた脚を無理矢理開かせた。
「く、栗橋さん・・・」
真梨江は訴えるような目で清華を見るが、それは無視された。
「やっぱり淫乱だな。こんなに濡れてるじゃないか」
啓人は、グショグショになった真梨江の下着をまじまじと見つめていた。それを知った真梨江の感情は、一気に爆発した。
「い、いやああああああっっっっっ!!!!!」
悲痛な叫び声を上げると、死に物狂いで手足をバタつかせた。そしてその次の瞬間、真梨江を抑えようとしていた清華が吹き飛ばされた。
「きゃあ!」
清華は悲鳴を上げ、大きな音を立てて近くの机へ倒れ込んだ。啓人は信じ難いその光景に、硬直してしまった。
(錯覚・・・じゃいよな?退魔士が一般人に力負けするか・・・?)
油断していたとしても、普通では有り得ない事である。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
その‘有り得ない事’をやってのけた真梨江は、清華が机に激突した音で落ち着きを取り戻したらしい。
「凄かったなぁ」
啓人がポツリと言った。半分は真梨江をからかう為だが、後の半分は本音であった。
「イッター・・・」
清華は二、三度首を振ると、そう言いつつ起き上がった。
「今のはちょっと痛かったですよ、先輩?」
そう言って真梨江を見ると、清華は微妙な笑顔を作った。真梨江は怯えた顔になると、椅子に座ったまま後ずさりをした。
(マズイな・・・)
啓人は心の中で舌打ちをした。清華から只ならぬ雰囲気を感じ取れた為である。口元に微笑みが浮かんではいるが、清華のめは笑っていなかった。恐らく嵐の前の静けさという表現が、一番近いに違いない。
「待て清華」
啓人の一言で、清華は悪戯を見つかった子供のような顔になった。
「な、何をですか・・・」
そうとぼけても声は震えており、動揺しているのは明らかであった。
(やっぱりか)
啓人は二人に気付かれないように、こっそりと溜め息をついた。例えどんな事が起こったとしても、千鶴なら啓人の意向を全て把握して行動する事が出来る。それを清華に望めないという事は、啓人も分かっていた。
(まあ良いか・・・‘切り替われ’)
啓人がそう思った次の瞬間、清華はその場に座り込んだ。
「はぁ・・・」
その頬は見る見るうちに赤く染まり、熱い息をし始めていた。啓人は最早合図をする事もなく、念じるだけで清華を操れるようになっていたのである。
「く、栗橋さん・・・?」
清華の豹変ぶりに驚いた真梨江は、思わず声を掛けていた。清華はそれに答えず、自分のスカートの中へ片手を伸ばした。
「ふんっ・・・」
清華は甘ったるい声を上げながら、もう片方の手を胸へと持っていく。
「はあん・・・気持ち良い・・・ん・・・」
真梨江に見せつけるように、白い乳房を露わにして揉む。
「い、一体どうしたの・・・?」
初めて見る同性の行為に、真梨江の目は自然と釘付けになる。頭では理性が第三者の目があると訴えかけてはいるものの、清華の行為はそれを吹き飛ばす程の効果があった。
「ふあっ・・・ああん・・・くう・・・」
細い眉をしかめ、悩ましげな声を上げる。胸へ伸びた手は乳房を揉みながらも、乳首を刺激する事も忘れない。
「あう・・・んん・・・良い・・・」
股間へ伸びた手は白い布を膝までずらし、傍目からでも分かる程せわしなく動いている。
「ああっ・・・良いよぉ・・・はあぁ・・・」
清華から発せられる淫気が、辺りに浸透し始めた。啓人は眉一つ動かさずにその光景を見ているが、真梨江は何度か指を股間へ伸ばそうとした。
(ああ・・・何か変な気分に・・・で、でもダメよ・・・)
その度に理性が、自身の欲望を制止しようとする。
「ううん・・・くはあ・・・んん・・・」
清華の声はより色っぽく、より大きくなっている。それによって真梨江の官能も、更に刺激される。
(う・・・ダ、ダメ・・・だってば・・・)
清華が作り出した淫気は、やがて教室全体を包んでいく。それでもなお、自分を止めようとする真梨江の手は、自然と震え出した。
「はぁ・・・ぁ・・・」
真梨江は無意識のうちに息が荒くなり始めた。それでも手を何とかして止めようとする。
(楠町も頑張るねえ・・・)
啓人は美人だという以外は、何の認識も持たなかった、目の前で葛藤に苦しむ少女の評価を改めた。
「じゃあ清華、本気を出せ」
啓人がそう言うと、清華の体が脈打った。
「はあっ・・・はああんっっ」
啓人の命令を受けた清華の手は今まで以上に早く動き、神経は何倍以上の快感を受け取り始めた。
「す、凄いっ・・・あっ、ああっっ・・・」
清華の上げる声は、喘ぎというより叫びに近い。そして当然真梨江には、より淫らに映っていた。
(く、栗橋さん・・・す、凄い・・・)
真梨江はゴクリと唾を飲みこんだ。収まりかけていた自分の体が、再び熱くなってきているのは認識していた。
(あ・・・あぁ・・・ど、どうして・・・こんな・・・)
真梨江は自分で自分が分からなくなってきていた。
「あううっ・・・ふああっっ・・・くううん・・・」
焼き付くような快感の前に、清華は声を上げている。だが真梨江もそんな清華の喘ぎ声に、いやらしい姿に理性を麻痺させられていた。
(ダメッ・・・ダメなの・・・冴草君が・・・見てるから・・・)
真梨江はそう言い聞かせる事で、自分を抑えようとする。だが‘してはいけない理由’が、何時の間にか‘啓人が見ているから’に変わっている事を、自分でも気付いていない。
(で、でも・・・あ・・・う・・・)
真梨江にも少しずつ限界が近づいていた。体の疼き・渇望が段々と大きくなり、理性も抑制力を失い始めていた。
(あ・・・ダ・・・メ・・・は、恥ず・・・か・・・しい・・・)
羞恥心が最後の砦となり始めていた。
「そろそろか」
今まで二人の様子を見物していた啓人は、誰にも聞こえない大きさで呟くと、清華の方へ歩き出した。
「ふああっっ、ああっ、あああ・・・」
痴態に耽る清華も、それを凝視し揺れ動いている真梨江もそれに気付かなかった。啓人は音一つ立てず、清華の背後へ回った。
「頑張ってるな・・・別に恥ずかしい事じゃないからな・・・」
啓人は清華に語り掛けるように言った。
(あ・・・あ・・・恥ずかしい・・・事じゃ・・・ない・・・?)
その言葉は、真梨江の心の中へ入り込んできた。
「当たり前だよな・・・誰でもやるよな・・・」
(あ、当たり前・・・?誰でも・・・するの・・・?)
普段なら一蹴するその言葉も、今の真梨江にとっては免罪符も同然であった。
「むしろやらない方が恥ずかしいよな」
その言葉が頭に響くと、真梨江は動揺した。
(え・・・?し、しない方が・・・恥ずかしいの・・・?)
さっきまでは免罪符だったものが、真梨江の頭の中で更に変わっていく。
(しても良い・・・しないと・・・いけない・・・の・・・?)
真梨江は今度は進んで指を股間へ伸ばし、もう制止しようとは思わなかった。グショグショになったまま放置されていた、自分の割れ目を直接なぞる。
「んっ・・・」
そこはすっかり敏感になっており、軽く触れただけで真梨江の全身に快感が走った。今度はクリトリスを軽く触る。
「はあっ・・・」
今度は電流が駆け巡る。ここまで来たら後戻り出来る筈もなく、自然ともう一方の手が胸へ伸びていく。
「ふうんっ・・・あぁ・・・」
真梨江は徐々にだが、喘ぎ声を上げ始めた。
(良し・・・次にいっても良いだろう)
真梨江の様子をずっと見ていた啓人は、そう判断を下した。
「清華、今の気分はどうだ?」
啓人はそう言うと、ようやく視線を清華へ遣った。
「あふんっ・・・け、啓人様ぁ・・・イ、イきたいんです・・・」
快感に浸り切っていても声は聞こえるのか、清華は啓人を見上げて哀願した。
「触って欲しいのか?」
分かりきった事を、敢えて尋ねる。当然清華は頷く。
「じゃあまずは立たないとな」
啓人は清華の腕を掴み、立たせてやる。そしてワザと真梨江から少し離れたところで立ち止まった。
「清華」
啓人がそれだけしか言わなかったのに、清華は頷いて机の上に仰向けになった。二人はまず軽いキスをした。
「ん・・・」
唇同士が触れ合うと、直ぐに舌を絡ませ合う。
「ん・・・あ・・・」
ねっとりと脳を蕩かすようなディープキスに、清華は声をもらす。
(あ・・・ん・・・はぁ・・・)
濃厚なキスシーンを見せ付けられ、真梨江の動きは止まった。それを見計らったように、啓人は真梨江の方を向いた。
「お前も欲しいのか?」
露骨な問いに、真梨江は顔を背けてしまった。
(ふん・・・)
啓人は今度は清華の胸へ手を伸ばし、胸を揉み始めた。
「はっああんっ・・・ふっあ・・・ああっ・・・」
その快感に清華は、今までの中で一番大きな声を出した。
「気持ち良いのか?」
落ち着いた声で啓人は問い掛ける。
「はあっ、き、気持ち・・・気持ち良いですっ・・・」
清華は押し寄せる快感の中、無我夢中で答えた。
(す、凄い・・・)
真梨江は呆気に取られてその光景を見ていた。
「自分でするのとどっちが良い?」
啓人はあくまでも落ち着きを払っている。清華が気持ち良いと言っても、少しも表情を動かさなかった。
「け、啓人様・・・啓人様に・・・くうんっ・・・された方がっ・・・はあっ」
清華はそう言いつつ、首を反らした。
(そ、そんなに・・・良いの・・・?)
真梨江から見て、啓人は特別な事をしてはいない。優しく丁寧に揉んでいるようにしか見えないのである。
(そ、それなのに・・・)
真梨江は首を振って次に浮かんだ事を消した。それでも真梨江の体は快感を求めて熱くなり、頭は淫らな事を考えて体を熱くする。
(私・・・どうしたのかな・・・)
一瞬だけその考えが浮かび、あっさりと消えた。淫気に絡め取られてしまった真梨江は、逃れるのが不可能になりつつあった。
「んああっ・・・」
清華の声に誘われたかのように、真梨江は再び二人の方へと視線を遣った。啓人は胸への責めを止め、清華を真梨江と正面から向き合わせた。
「はあん・・・」
喘いでいる清華の下着を取り、真梨江の方へ投げる。そして真梨江に見せつけるように、清華の脚をM字に開いた。
(あ、あんな事も・・・)
真梨江は何時の間にか、二人がする事に驚かなくなっていた。真梨江の視線を感じながら、啓人は清華の股間に舌を這わせた。
「ひゃああんっ・・・」
清華は今まで以上に大きな声を上げた。啓人は真梨江に聞こえるように、ピチャピチャとワザと音を立てて舐める。
「ああっ・・・いいっ・・・ああっ・・・」
清華は両手を固く握り締め、襲い来る快感に身を委ね、真梨江は食い入るようにそれを見ていた。
(あ・・・あんなに・・・悦んで・・・)
清華の反応を見ているうちに、自分のに物足りなさを感じ始めた。そして段々と、清華が羨ましくなってきた。
(・・・良いな・・・)
そんな考えが浮かんでも、今までみたいに否定しなかった。胸や股間を刺激しても、何故かほとんど感じない。
(ど、どうして・・・?)
刺激すればする程、逆に渇望が襲ってきた。そしてその近くで、清華が喘いでいた。
「あああっ、あああっ・・・」
清華の声や姿が、真梨江の感情に影響を及ぼしてくる。
(わ・・・私も・・・あんな風に・・・)
されたいという衝動が湧き上がってくる。手にも自然と力が込められる。
「ふう・・・」
清華がされている事に比べれば、自分がしている事が児戯にも思えてきた。
「ああ・・・ん・・・」
クリトリスを触れても、以前のような悦びを感じられなかった。
(ダ、ダメなの・・・?)
絶望に似た感覚が、真梨江の意識を覆い始める。
「ああああっっっ」
不意に清華が絶叫し、ぐったりとなって倒れた。それを見て、真梨江は思わず手を止めた。
「はっ・・・あぁ・・・」
清華は荒い息をしたまま起き上がると、啓人にもたれかかった。
「け、啓人様・・・」
縋るように啓人を見上げる。
「イかせて下さい・・・」
そう言った清華の髪を撫でると、啓人は清華から離れた。
「じゃあいくぞ」
啓人は真梨江に分かるように、ゆっくりと清華に挿入した。
「くうう・・・」
清華は至福の色を浮かべて受け入れる。いつもなら赤面して顔を背けるシーンを、真梨江は瞬きもせずに見つめていた。
「ああ・・・んんっ・・・くっ・・・ああ・・・」
清華は啓人のしがみつきながら、喘いでいた。
(こ、これが・・・)
当たり前だが、真梨江は生で見るのはこれが初めてである。その二人に完全に呑まれていた。
(良し・・・MAXにするか)
啓人のその決断で、清華のギアが変わった。
「あああっ、良いっ、良いのっ」
清華の口調が明らかに変わり、これには真梨江も目を丸くした。
「あんっ、ああんっ、ああんっ」
そんな清華の様子を見ていると、真梨江の体は更に疼き出した。
(どうして・・・どうしてなの・・・ん・・・)
「ああ・・・」
真梨江は声をもらすと、手をせわしなく動かし出した。
「んん・・・はあ・・・」
多少は感じるものの、やはりそれは物足りなかった。
(もっと・・・どうすれば・・・もっと・・・)
真梨江の頭は一つの事だけを求め始めた。
「はああっ、凄いっ、ああっ、あんっ」
清華を見ていると、頭がボウッとなってくる。
(栗橋さん・・・気持ち良さそう・・・)
真梨江の心に、清華が羨ましいという気持ちが芽生える。
「これならイけそうか?」
啓人は白々しく清華に尋ねる。
「ああんっ、はっ、はいいっ、イ、イけそうですっ」
その言葉を聞いて、啓人は初めて笑みを見せた。
「ならイけ」
そう言うと同時にスパートに入った。
「ああああっっっっ、イッ、イクウッ」
清華は絶叫すると、倒れ込んだ。その様子を、真梨江は呆然として見ていた。
「さて・・・お前はどうするんだ?」
啓人は真梨江の方に向き直ると、前を隠そうともせずに尋ねた。
「わ、私は・・・」
真梨江の目は、啓人の股間へ吸い寄せられる。
(か、隠してよ・・・)
そう思っても、目を反らす事は出来なかった。
「何だ咥えたいのか?」
啓人は真梨江の視線に気付くと、意地の悪い言い方をする。
(や、やった事ないけど・・・)
真梨江はフラフラと啓人へ近づいていく。
「そんなに欲しかったのか?」
啓人の意地の悪い言葉が、真梨江の胸に刺さった。
(そ、そんなわけないじゃない・・・)
ここまで言われると、真梨江の羞恥心は嫌でも復活する。
「どうなんだ?」
啓人は容赦なく真梨江を追い詰める。
(ダ、ダメ・・・限界・・・)
真梨江は自分の中で、何かが消えた気がした。
「そうよ・・・欲しいの・・・」
一度そう言うと真梨江は吹っ切れたらしく、キリッと前を見た。
「私に貴方を頂戴」
少し頬は赤らんでいるものの、そう言った時の目はいつも通りになっていた。これには逆に啓人が驚いた。
(まさか真顔で言うとはな・・・絶叫か哀願かのどっちかだと思っていたんだが・・・)
これまでとは違ったパターンの反応に、新鮮ささえ感じられた。
「そうか・・・」
啓人がそう言うと同時に、真梨江の体がドクンと鳴った。
「じゃあ咥えてくれ」
真梨江は言われた通りにしたが、それ以上は何もしようとしない。
(これからどうすれば良いの・・・?)
咥えてはみたものの、した事もないので何をすれば良いのか分からないのである。
「俺の言う事を良く聞くんだ。それが、お前の望みを叶える事になる」
啓人の言葉が、自然と真梨江の心に入ってくる。
(冴草君の言う事を聞くと・・・私の望みが・・・)
「じゃあ歯を立てずに、ゆっくりと口を動かせ」
真梨江はおずおずと口を動かし始める。
「そうだ・・・お前は俺の言う事を何でも聞け・・・」
(ん・・・冴草君の言う事は・・・何でも・・・)
「俺の言葉は絶対で、俺の言う事が最優先だ」
(・・・冴草君の言葉は絶対で・・・最優先・・・・)
稚拙極まりないフェラチオをしながら、真梨江は啓人の言葉を無意識のうちに反芻していた。
< 続く >