髪射へび少女 第十話

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暁子「真里ちゃん、お話って。」
真里「うふふふ。ほら。」
暁子「ああっ、芳美ちゃんに明美ちゃん、栄美子ちゃんも…。」
芳美「くくくく。」
明美「うふふふ。」
栄美子「くくく。」

暁子の兄である雅美也と真里の後からは、ツインテールにくくった髪をそれぞれ三つ編みにしている水無川芳美、三つ編みはしていないが耳の下のあたりにゴムをゆわえた二本のおさげ髪を前に垂らしている寺田明美、両サイドの前髪をいずれも三つ編みにして後ろの髪といっしょにおろしていた西崎栄美子も現われていた。

★ここで、ちょっと本話ストップ

エム・シー・エナジー・スクエア読者の皆様、いよいよこのたび最終回をお届け致します。また、感想掲示板上ではたびたび皆様の御教示ありがとうございます。ここで、いままでの登場人物と、話の筋を整理してみたいと思います。途中でいろいろ新たなメンバーも加わっていたので。なにやら、後から勝手につけ加えたような感もありますが。

内野暁子(うちの・あきこ)
義務教育の上のほうに通っているノーマルの少女。テニスが趣味(やっているのを見たことないが)。少しのことでは物おじしない芯の強い性格で、そのために恐怖の場面に出くわしても読者の方々からはあまり危機感が見られないような(違うって?)ところがある。

田崎隆博(たざき・たかひろ)
妖怪学を研究している博士。郊外のへんぴな場所に研究所を構えて単身赴任をしている。仕事と研究一筋の性格で女性には関心が薄く、夫人との結婚もいろいろ考えるのは面倒だからと1回で簡単に決めている。その割りに、研究の成果がいまひとつである。

コロ
田崎博士が研究のために探し出し、飼っている犬。もともとは盲導犬として訓練を受けていたが、身体が大きくならなかったため、保留になって訓練所にいたのを見こまれた。コロを産んだ親の犬は、コロを産んでからすぐに両方とも死んだという、天涯孤独だった犬。へび女の所在をつきとめるのに役立ち、暁子を慰めている。

女性助手
ほんとうは名前を考えておくべきだったが、この際これで通す(いいかげんな作者だが)。いちおう、田崎博士の研究所に三人ほど交替勤務で常駐している。暁子など、女性の来場があった時に親身に相談している。いずれも犬より猫のほうが好きなのでコロの相手はあまりしない。

尾藤真里(おふじ・まり)
暁子のクラスに転校してきた女子生徒で、恐ろしいへび少女に洗脳されている。転校早々に暁子の家に訪れて暁子の兄である雅美也を性行為に誘い、下僕のへびにしてべつの少女を襲わせている。学校でも仲間をふやすなど悪の中心的存在として暁子を恐怖に追い詰める。

内野雅美也(うちの・まみや)
暁子の兄で、義務教育は卒業し男子校に通っているため女の子との縁がなく、真里のような髪の毛を長くした少女を見るとヌード写真などより興奮してしまう髪フェチのため、悪魔にその心をつけ狙われ、ひと目で好きになった真里に襲われて下僕のへびとなってしまう。

松田良子(まつだ・りょうこ)
雅美也と義務教育の時に同じ学年だった。自慢の長い髪の毛にへび男の精液を注入されてへび少女化した最初の犠牲者で、通っていた女子校で大事件になり、麻酔銃を受けて田崎博士の研究所に保管された。いったんワクチンで回復するが雅美也の精液を再び髪に流されて狂いだし、再度ワクチンを打たれて助かる。また、雅美也が久々見かけた時に興奮させている。

荻野奈美(おぎの・なみ)
良子と同じクラスの女子生徒で、良子に襲われて仲間となり、いっしょに麻酔銃を打たれて田崎博士の研究所に保管されていた。ワクチンを受けて回復する。

水無川芳美(みながわ・よしみ)
暁子の同級生で、真里が夜中に連れ出した雅美也によって髪の毛を精液で汚され、へび少女にされる。

寺田明美(てらだ・あけみ)
同じく暁子の同級生で、学校でトイレにいるところを真里に狙われてへびの仲間にさせられる。

西崎栄美子(にしざき・えみこ)
また同じく暁子の同級生で、雅美也が襲った芳美によってへびの仲間にさせられる。のちにほかの仲間といっしょに男子生徒をも襲って下僕にしている。芳美、明美とともに髪の毛は長いがみんな顔はそれほどかわいいほうではなく、男女間もあまり仲がよいほうではなさそうな学校である。

長原桂子(ながはら・けいこ)
雅美也がやはりひと目で見て興奮した学年が上の女子校生。夜中に真里に誘われて襲っている。両親も仲間にしたが、ワクチンを抱えて田崎博士とともに帰宅する途中の暁子によって回復する(実は私・編髪がモデルとして参考にした実在の女性を使っています。本当は年下でしたが自分より身長が高くて髪の毛がややルーズな感じの三つ編みをしていた超長いおさげでセーラー服のお尻のあたりまで届いていた姿でよく見かけるたびにムスコが立ってしまい、下着が精液で濡れたりしました。漫才のは○けいこという人に顔がよく似ていたどちらかといえばブスの子だったので、こういう名前にしています。雅美也はもちろん自分がモデルですが)。

尾藤留璃子(おふじ・るりこ)
真里の姉で二十歳近い女子大学に通う。小さい時に生まれたばかりの男の股間を蹴ったために、それが原因で死んでいたと思われたため、あとから生まれた真里が、留璃子が殺さなければ自分には兄がいたと言って、真里にいじめ続けられていた。しかし、雅美也を仲間にしたことでその苦しみからも…?

尾藤理美(おふじ・りみ)
真里よりさらにずっと年が下の妹。真里といっしょに長姉の留璃子をいじめ続けていた。

へび怪人(シーメンスネーク)
最初に松田良子を襲った妖怪。地中に生息していたのが、人間の持っている邪淫の心に誘われて現われたようである。精液を髪の毛に発射して、その精液に髪を汚された者は同じ怪人になる。

その他、少女たちの親、教師、警察官、学校の生徒多数出演。

次に、これまでの九回に分けられた内容についてもさらっと述べてみます。

第一夜
松田良子の家で夜中にへび怪人が出現し、良子の髪に精液を注入して良子を恐ろしいへび少女にしてしまう。良子の髪の毛を長くした姿を通学途中の電車で見かけたもと同級生の内野雅美也は、その姿に興奮してしまうが、悪魔がその瞬間をつけ狙っていた。雅美也の妹、暁子のクラスにやはり雅美也好みの髪の毛を長くした尾藤真里が転入してくる。いっぽう、良子のいる女学校では生物の授業中に実物のカエルを見た良子が興奮してしまい、へび女と化した姿を見せて校内がパニックとなり、隣のクラスで荻野奈美がつかまってしまう。

第二夜
良子によって奈美もへび女となってしまい、校庭にも出てきてしまったため学校は大至急警察を呼ぶ。麻酔銃の大砲を打たれてふたりとも倒れたためようやくその場はおさまったが、極めて異常な状況のため警察官が妖怪学を研究しているという田崎博士の病院を紹介され、ふたりの運ばれた研究所にほかの生徒たちも説明を受けるために訪れた。いっぽう、暁子の家にさっそく真里が訪れ、そこへ学校から帰宅した兄の雅美也が真里の長い髪の毛を見てやはり興奮してしまい、その後トイレに行く途中の洗面所でまた真里が髪を編んでいる姿を見てその場でもよおしてしまった。そのことを真里が感づいて…。

第三夜
真里のうしろ姿を見て興奮し、下半身を汚してしまった雅美也はふろ場で洗い長そうとした。ところがそこへ当の真里がやってきて自分のことを見ていやらしことを考えていただろうと雅美也に問い詰めたため、雅美也は真里におびやかされて仕方なく性行為を受けるはめになる。そのレイプの途中で真里がへび少女である正体を現わし、ついに雅美也をへびの仲間にしてしまう。この間、暁子は眠り薬を飲まされていた。夜中に雅美也は目覚めたが、自分の姿が恐ろしい妖怪にされていることに驚いてしまう。

第四夜
夜中に真里に誘われて雅美也は家を抜け出し、やはり妹・暁子の同級生である水無川芳美の家に入りこんでしまう。芳美の長い髪と寝間着姿を見た雅美也がその場で興奮してついに心もへびのようになり、芳美を襲ってへび少女にしてしまった。襲われた芳美は真里の下僕となって両親を襲った。翌日、何ごともなかったように雅美也はいつも通りに学校に行っていたが、通学途中で学年が上の女子校生である長原桂子の超長い三つ編み姿を見て興奮してしまい、そのことを真里につけられて次の夜中にも雅美也は真里に誘われ、桂子をへびの仲間にするためにその家に入りこんだのであった。

第五夜
真里が芳美といっしょに一日だけ学校を欠席して、翌日に現われると仲間をふやすために活動を始めた。同じクラスの寺田明美を真里が襲って芳美の前でへび少女の仲間にする見本を見せると、その芳美に西崎栄美子を襲わせて仲間をふやしていた。だが、その行為が実施された女子便所に偶然暁子がいて、真里たちがへび少女であることがわかってしまった。しかし、自分の兄もその仲間になっていることを知らない暁子は、兄の夜中に突然いなくなる行動にも驚くようになる。兄である雅美也はまたも真里に誘われ、この夜は真里の母親や姉妹、さらにはその日に加わった仲間の少女たちといっしょにレイプパーティーのターゲットにさせられていたのであった。いっぽう、研究所で田崎博士は襲われた少女たちを元の人間に戻すため毎夜方法を考えていたが、思うように進まないようすであった。

第六夜
暁子はパソコンのホームページで、気になった同級生の問題を解決するために田崎博士の研究所があることを見つけた。しかし、その間にも妖怪の侵略が忍び込んでいて、前夜に雅美也が襲っていた年上の長原桂子が暁子の両親を洗脳していたのであった。自分の両親も恐ろしいへびの仲間になってしまったことがわかった暁子は夜中にもかかわらずあわてて家を出て、タクシーで田崎博士の研究所に向かっていった。その間にも兄の雅美也は、真里の家で少女たちのレイプを受けていた。翌日、学校では真里の仲間にした女子生徒たちによって、暁子を除くクラスの女子全員がへび女になってしまったが、暁子が欠席して田崎博士の研究所に行ったことを悟った真里は、へび穴をつたって雅美也を研究所の一室に誘ったのであった。その一室に寝かされていた雅美也のもと同級生だった松田良子の髪を汚させて恐ろしい計略がこうして進んでいくのである。

第七夜
田崎博士がようやくへびになった者を元に戻すことのできるワクチンを開発し、さっそく最初に運んでいたふたりのうちの荻野奈美に注入して回復に成功させた。しかし、もうひとりの松田良子が雅美也の精液でまた髪を汚されたために目覚め、へび穴に入って抜け出してしまった。研究所に着いて寝ていた暁子は田崎博士の車で、へび女の所在を探せるという犬のコロといっしょに出発し、研究所を抜け出していた良子の姿もつきとめることができた。さらに暁子の両親を襲っていた長原桂子の一家も探し当て、いずれも家にいた者にワクチンを注入して元の人間に戻していった。しかし、その間にも暁子の学校では汚染が進み、ついには雅美也が暁子のクラス担任である若い女教師を襲ってへび女にしてしまい、クラスでは残っていた男子生徒たちもへび女になっていた女子生徒や女教師らの毒牙にかかってみな堕ちていったのである。

第八夜
女子生徒によってひとりずつ男子生徒も洗脳されてみなへび少女の仲間になっていった。その間、暁子は自分の家に田崎博士やコロといっしょに戻ってきたが、両親が雅美也といるのを目撃した。しかし、髪の毛が長くなっている兄の姿に暁子はまだ気づいていなかった。雅美也が暁子の姿を見て逃げ出したため、暁子は両親に向けてワクチンの薬液が入った銃を発射させ、両親も無事に元に戻ることができた。次は学校へ行こうとした暁子だったが、その間にも学校では汚染が広がって全生徒がへびと化していった。暁子は途中でコロの叫びによって兄がいるのを見つけ、しかも幼女を襲ってへび少女に洗脳している場面を見てしまい、変わりきってしまった兄の姿にぼうぜんとする。

第九夜
兄の姿を見つけても、驚くばかりの暁子は結局逃げられてしまった。学校へ行くことにしたが、その学校に行ってみると全員がへびになって車に襲いかかったため、田崎博士が警察を呼んで生徒たちを麻酔銃で鎮めさせた。ひとりずつワクチンを入れても足りなくなると判断した田崎博士は、いったん生徒を研究所に運んでその間に助手にワクチンの薬液をふやすよう頼んでいた。だが、全員が倒れたはずと思われたなかで、真里などは寝ていたふりをしていたのであった。そのまま研究所に乗りこんでワクチンをすべてなくしてしまおうと計略していた。研究所に着いて急遽追加されたワクチンを使って暁子は生徒たちを元の人間に戻そうとしたのだが、真里や兄の雅美也を見つけて打っても彼らには通じなかった。その通じなかった謎とは…。

さて、お待たせ。これより本文に戻ります。

真里「わたしたちはこれから、寒くなるから土の中に入って冬眠するのよ。みんなへびだからね。」
暁子「冬眠って、へびになったままなの?おにいちゃんも。」
真里「ばかね。わたしたちはへびになってよかったと思っているのよ。そりゃあ、襲われた時はみんなこわくて気持ち悪いと思ったわ。でもね、心の中では人間、だれもが持っているものを、へびにした相手はしっかり見分けをつけているのよ。この人はへびにしたほうがいいと思う者、この人は向かないと思う者というようにね。」
暁子「いったい…。」
真里「暁子ちゃんの場合、はっきりあとのほうだということがわかったわ。でも、おにいちゃんは人間のままだと女の子にはもてなかったのに、へびになってこうして女の子に囲まれたり、男の子なのに長くしてみたいと思った髪の毛を長くできるようになって、いちばん気にいっている三つ編みの姿になっているでしょう。人間に戻ったら髪を切るのはいやだから、へびのままでいたいって。」
暁子「おにいちゃん、本当なの。」

首をたてに振って雅美也が答えるだけであった。

真里「ほうら。それに、わたしのおにいちゃんになることで、暁子ちゃんはいちおうずっといっしょに暮らした妹なんだから襲わないでほしいっていうおにいちゃんの希望をきくことにしたの。だから、おにいちゃんはこれからわたしたちと暮らすことになるのよ。」
暁子「ちょっと、待ってよ。真里ちゃんがおにいちゃんのこと好きだったら時々わたしのうちへ遊びに来ればいいじゃない。それに、大きくなったらおにいちゃんと結婚してその時にいっしょになれるんだし。」
真里「それはできないわ。わたしはおにいちゃんの妹だから、結婚できない。おにいちゃんが結婚できるのは後にいるうちの誰かよ。この子たちもみんなおにいちゃんを好きになっているし。」
実際には、レイプの遊び相手にしているだけであるが…。
暁子「真里ちゃんがおにいちゃんの妹なんて、勝手にそんなこと…ああっ。」
まぶしい光りが放たれていた。真里たちへび女の髪の毛が舞い上がって、その毛先がへびの顔になり、毛先からいっせいに光線が発されたのである。
真里「暁子ちゃん、研究所に戻ってそこにいる人達に逃げるように言うのよ。研究所をわたしたちは爆発させるの。あなたと同じように、へびになりたくないと思っている者だけはもとに返してあげるから、ワクチンなんて必要なくなるわ。そのかわり、ついてくるという者たちはいっしょにつれて、これからやることがあるの。」

芳美たちのほかにも、芳美らが学校で襲ってへびにした男子生徒や、さらにその男子生徒がへびにした相手の女子生徒の姿もほかに何人か立っていて、いずれも髪の毛を長くしていた。彼等はみな手になにかを抱えていたが、実は田崎博士の研究所を爆発させるための道具だったのである。

暁子「みんな、どこへ…。」

暁子もあとを追おうとしたが、へび少女たちの髪の毛の先にあるへびの口からまた光線が吐き出されて行く手をさえぎられてしまった。

真里「じゃ、おにいちゃんは留璃子ねえちゃんのところへ、先に帰っていって。この穴もなくなるから。」
雅美也「うん。」

三つ編みの髪の毛を大きくはねあげながら、雅美也はへび穴に潜っていた。

暁子「おにいちゃん、待って。行かないで。ああっ。」

またも、へび少女たちの髪の毛から発された光線にさえぎられて暁子はその場に転倒してしまった。

真里「博士とかに伝えてみんな逃げたほうがいいわよ。」
暁子は起き上がり、仕方ないからと田崎博士の研究所にコロといっしょに戻ることにしたが、へび少女たちもその研究所に裏側から入っていた。

暁子「はあはあ。」
女性助手「暁子さん…。」
田崎博士「どうしたんだ、みんなを撃ちこめなかったか。」
暁子「たいへんです、へび女たちがこの研究所を爆発させようとしています。」
田崎博士「なんだって、ああ、こんなところに針金が…。」
女性助手「先生、いつのまにかこんなに、廊下にも…。」
田崎博士「しかたない、みんな命が大事だ。駐車場に降りて車を出そう。急ぐんだ。」
女性助手「はい。」

田崎博士の車にコロを抱えた暁子が入り、女性助手の車が先に出発したのを確認して、その後をついて研究所の駐車場をあとにしたのであった。

数百メートル逃げた先で、大きな爆発音があった。
ドッカーン!
田崎博士が車を止めて暁子とともに後ろのほうを見ると、研究所の建物が無残に崩れ去っていた。まわりに建物がなく、また風もなかったので火はそんなに燃え広がらなかったが、とりあえず田崎博士は消防車を至急呼んで鎮火させることにした。

田崎博士「どうやら、火は消えたようじゃな。戻ってみよう。」

女性助手の車にも無線で伝えて田崎博士の車と共に研究所のあった場所に来ると、建物は無残にも砕け散っていた。

女性助手「田崎先生…。」
田崎博士「だめだ、持っていかれたか、あっ。」
暁子「どうしたんですか。」
田崎博士「ワクチンの製造法を書いたはずのノートが…こんなに焼けこげていてはもう復元は無理だ。そのワクチンもみごとにみんな…ああ…。」
女性助手「はあ、わたしも念のために持っていっておけばよかった…。」
田崎博士「いいや、君が気にすることはない。死なせたら元も子もないからな。」
暁子「あら?あっちのほうで騒ぎ声が…。」

暁子たちが振り向いてみると、見覚えのある顔ばかりだと思ったら、自分の学校にいた生徒や教師たちであった。真里が言っていた、へびになりたくないと思った生徒たちはしっかり残して建物が爆発しても死なせないようにバリヤーを張っていたのである。

田崎博士「どうやら、みんな助かったらしいな。」
暁子「でも、芳美ちゃんや明美ちゃん、栄美子ちゃんなどはいないわ。髪の毛が長い子がほとんどいない、それに、おにいちゃんはやっぱり…、あっ。」
田崎博士「どうした?」
暁子「たしか、このへんに明美ちゃんと栄美子ちゃんは寝かされていた、ベッドの破片が、それに、ここらへんにあったはずの穴がふさがれている…。」

暁子はまたその場にひざまずいてしまうのであった。

田崎博士「暁子さん…、もう、だいぶ精神的に参っているようだ、君、車で送ってあげなさい。地図に書いて貸すから。」
女性助手「暁子さんの家にですね、わかりました。」

女性助手の車によって送られている途中、暁子は目覚めていた。

暁子「ここは、いま…。」
女性助手「暁子さん、気づいたようですね。もうすぐ、あなたの家に着くところですよ。」

暁子はややうつろな感じで車の外を見ていたが、まもなく大きな通りとの交差点で赤信号に変わったところで車が止まると、暁子は急に表情を変えた。

暁子「あれは、ママ、誰と話しているんだろう。すいません。ここで降ろしていただけますか。母もいっしょだから、あとは大丈夫です。」
女性助手「わかったわ、ゆっくり休んでね。」
暁子「はい、いろいろありがとうございました。田崎博士によろしくお伝えください。」

降りた場所は、偶然にも暁子が最初に田崎博士の研究所に行く時にタクシーをつかまえたところであったが、暁子にとってそれはどうでもよいことであった。暁子が見つけた母親の相手は、母親と同じくらいの年齢の女で髪をアップにした和服姿であった。

暁子「ママ、この人は…。」
暁子の母「あら、暁子、ちょうどよかったわ。この人はあなたの学校で同じクラスにいる、たしか尾藤真里ちゃんって言ったわね。その人のおかあさんよ。」
暁子「えっ?」

暁子はすぐに母親の手首をつかんで横道に入ってつれこんでいた。

暁子の母「どうしたの?暁子。」
暁子「あの人はへび女よ。真里ちゃんもへびだし。ママもパパといっしょにへびにされたこともあるんだからわかるでしょ。」
暁子の母「あのね、暁子。ちょっと重大なお話があるの。そのことで、いまの人とも話してたのよ。」
暁子「重大なことって。」
暁子の母「いままであなたには隠して申し訳ないと思っていたけど、おにいちゃん、雅美也はね、わたしが産んだ子でなくてあの人の子供だったのよ。」
暁子「ええっ?ということは、真里ちゃんの実のおにいちゃんだったってこと?おにいちゃんは、実の妹に襲われてへびにされていたの?」
暁子の母「わたしとあの人は同じ病院にいて同じ日に子供を産んだわ。ところが、名前をつけないうちに助産婦さんがふたりをいっしょにおふろにいれた時にまちがえたらしいの。しかも、わたしの産んだ子のほうは身体が弱くて数日後にあの人のところで死んじゃったし。」
暁子「そ、そんな、わたしが生まれる前に死んだおにいさんがいたなんて…。」
暁子の母「そうよ。それで、わたしは気づいてたけれど、どうしても子供のほしかったわたしは、そのままだまって自分の子供にしたのよ。暁子も小さい時にいっしょにおふろ入ったことがあるはずだから覚えているでしょう?おにいちゃんの股のところにあざがあったのが。あれが、向こうの、もうひとりいた子供で女の子だったらしいけれど、その子がけとばした跡というのでわかったのよ。」

もちろん、その女の子とは真里の姉、尾藤留璃子のことである。

暁子「でも、死んだ赤ちゃんのほうは…。」
暁子の母「女の子がけとばしたぐらいでそんなあざなんてできるわけないだろうと思っていたようね。わたしはなぐさめにも行ったけど、その時はあのおかあさんももうひとりいた子供で手がかかっていたからほんとうはいらなかったからって。でも、その後に生まれた子がね。」
暁子「その子って、つまり真里ちゃんのことね。」
暁子の母「ええ。ほんとうはいたはずのおにいちゃんが、そのおねえさんのせいで死んだからと言って、いつもおねえさんのことをいじめておねえさんがおとなしくなったみたいだけれど、雅美也を返すことできょうだいげんかもこれでなくなるだろうと、わたしも肩の荷が降りるし、雅美也ももうすぐおとなだから、わたしと一緒にいなくてもとお互いに思ったから…。」
暁子「でも、それじゃあ、おにいちゃんを失うわたしの立場は…。」

暁子はそう言い残すと、その場から急に走り去った。涙も止まらなかった。

暁子の母「暁子…。」

無理もない、突然のことをきかされて仕方ないと思った母親であった。

そのころ、暁子の兄、というより真里の兄といったほうが正しいことになるが、雅美也は留守番をしていた留璃子のところに戻っていた。留璃子も髪形を変えて二本三つ編みのおさげにしていた。その姿を見て雅美也はまた興奮しているのであった。

留璃子「うふふふ、おかえり。」
雅美也「あっ。」

留璃子は雅美也のはいていた服をぬがせて、ぼっきしていた雅美也の性器に自分の三つ編みにしている髪を左右からそれぞれ巻きつけようとしたのであった。

雅美也「あの、おねえさん、女の命である髪の毛汚したら…。」
留璃子「いいのよ、わたし、あなたのおねえさんじゃないって、感想掲示板に書かれてしまったから、罪を償いたくて…。」
雅美也「はあ?」
留璃子「じゃなくて、夢に出ていつもうなされているのよ。天の声がしてこうしなさいって言われてるの。」
雅美也「じゃあ、お姉さんがそれで気がすむなら、あっ、そしたら、おふろ場に行こう。それに、正面からじゃなくて、後ろのほうからやったほうがより興奮するから…。」
留璃子「わかったわ。」

ふたりとも裸になってふろ場に入り、留璃子がマットの上に背中を向けて横になると、雅美也がその身体にまたがって馬乗りになり、性器を留璃子のおさげ髪を分けているうなじのところに先をあててそこへ左右から留璃子の三つ編みの髪を巻きつけていき、思い切りしばるのであった。ここぞとばかり雅美也は欲望むき出しにして思いをこめ、精液を出していくのであった。

どくどくっ、じゅるじゅるじゅるーっ、びゅーっ!
流れ出た精液が留璃子の後頭部を覆い、顔や首にもかかってきたのであった。

雅美也「おねえちゃん、だいじょうぶ?」
留璃子「気のすむまで、わたしのこと汚していいわ。」
雅美也「ということで、読者のみなさん、おねえさんのこと許してあげてくださいね。」
留璃子「なんだ、あなたも、さっきわたしの言いかけたことを…。」

これで、本当に晴れて姉と弟になったようである。

いっぽう、暁子のほうは数日間すっかりふさぎこんでいた。学校は、臨時休校の状態が続いていたので家から出る必要もなかったが、母親もどうしてよいか途方に暮れていた。
出張から暁子の父も帰った時であった。

暁子の母「暁子、パパも帰ってきたし、三人いっしょに食事しましょう。」
暁子「うん。」

力なく、返事するだけの暁子であった。
食卓に並べられる頃、家の外で自動車の警笛が大きく鳴っていた。そして玄関のベルを押す者がいた。

暁子の母「誰かしら。」

母親が玄関をあけると、姿を現わしたのは田崎博士であった。

田崎博士「こんばんは、突然ですが。」
暁子の母「まあ、あなたはたしか…。」
田崎博士「あれから暁子さんはどうしているか、ちょっと気になっていたんですが…。」
暁子の母「いま、やっと食事につこうとしたところですが、いちおう呼んできましょうか。」
田崎博士「恐れ入ります。」

母親に呼び出されて、暁子がようやく姿を現わしたが、そこへまた突然飛びついてきた者がいた。

コロ「ワン、ワン…。」
暁子「まあ、コロ、ふふふ。」

暁子の腕に入ってきたコロを暁子は持ち上げ、暁子の顔に近づくとコロが舌を出してなめ始めた。

田崎博士「それでですね、実はあの犬を、もし、あなたがたがよろしければこちらに置いていっていただかこうかと思ったもので。」
暁子の母「それは、どういうことですか?」
田崎博士「実は研究所もいまこわれて建て直しのためいられなくなり、ずっと研究所にいたコロももちろんいるところがなくなって、私も家に戻らなければならないんですが、家では妻が猫を飼ってやはり犬は苦手で一緒に置いていけないと思ったもので、厚かましい話で恐縮ですが…。」
暁子「えっ?じゃあ、コロをうちに…。」

その話を聞いて、暁子の父親も出てきた。

暁子の父「わたしたちのことを助けてくれた、賢そうな犬だ、よろしいでしょう。」
暁子の母「そうね。これでおにいちゃんの代わりになって、暁子に恨まれずにすむなら…。」
暁子「いいの?パパもママも。」

両親ともに首をたてに振った。

田崎博士「どうやら、コロを見て元気になったようですな。」
暁子の母「まあ、ほんとうにうれしそう。」
暁子「わあー、コロったら。」

暁子は本当にこれまでにない喜びを表情に出してコロを抱えたまま自分の部屋に戻っていった。

暁子の父「暁子が本当にお世話になったようで…。」
田崎博士「いえいえ、やっぱり暁子さんは元気をなくしていたみたいですな。あなたがたもおにいさんがいなくなったことは残念でしょうが、どうか気を落さずにお過ごしくださいませ。」
暁子の母「心づかい、ありがとうございます。」

暁子の学校も、臨時休校からようやく体制が整って、翌日から再開できるという日になった。
その前夜、しばらく天気の悪い日も続いていたが、ひさびさ暖かくなったので暁子は夕食後にコロを散歩に連れ出していた。

コロ「ワン、ワン…。」
暁子「どうしたの?コロ。」

急に走り出したため、暁子も急いでコロのあとを追っていた。それでも車の多い交差点の手前ではいったん停止して、尾を振って暁子を制止するほどであるから、やはりパパの言っていたように賢い犬なんだと暁子は感じていた。

コロが暁子を誘うようにして出てきたところは空き地だった。そこは、実は尾藤真里の住んでいた家があったところですっかり消えてなくなっており、しかもそこには沼ができていたのである。

暁子「ここは…。」

その時、月の光が反射して沼には異様な光景が映し出されていた。

暁子「あ、あれは、もしかしておにいちゃん…。」

まさしく、沼に映し出されたのは雅美也の顔であった。やがて拡大して全身が見え、前には暁子が先日母親と話し合っているところを見かけた時の女、つまり真里の母親がすわっていた。もちろん雅美也を直接産んだ実の母親なのだが、その母親がアップにしていた長い髪をおろしていて雅美也がヘアブラシでていねいにとかしていた。

暁子「まあ、あんなに髪の毛が、もうお尻をこえていて、なんてきれいなおかあさん。」

そして、雅美也の後ろにも、雅美也の髪の毛をさかんにいじっている、前髪を束ねて後ろの髪といっしょに背中におろしていた姉の留璃子とポニー・テールをさらに一本の三つ編みにしていた妹の真里の姿があった。雅美也の髪を耳もとに白いヘアゴムをくくってツインテールにしており、ヘアーカーラーを使って西洋のお姫さまのようにその髪をくるっと巻いていたのである。

真里「ほら、おねえちゃん、もうちょっとこうやってゆっくりめにね。」
留璃子「あんがい、むずかしいわね。」
真里「できたわ、おにいちゃん、鏡見て。」
雅美也「ええっ、こんな、どこかの国の王女さまみたいに。」
留璃子「そうよ、すごくきれいよ。女の子よりも。」
雅美也「おねえちゃんたちにもしてみようか。」
留璃子「だめよ。わたしは似合わないし。」
真里「いいじゃない、やってもらったら?」

そこへもうひとり、いちばん下の妹である理美もツイン・テールの三つ編み姿で現われていた。

理美「わたしも雅美也おにいちゃんにしてもらいたい。」
真里「いいわよ、ほら。」
真里の母「まあ、みんな、雅美也が来てくれたおかげで仲良くなれたようね。」

笑っているへび女たちの姿は、どことなく明るく見えた暁子だった。

暁子「おにいちゃんは、本物の親やきょうだいといっしょに、幸せに暮らしているんだわ…。」

やがてまた雲が月にかかってきて、沼に映し出されたへび女たちの姿も見えなくなってしまった。

暁子「帰ろうか、コロ。」
コロ「ワン。」

もはや、納得してしまった暁子には雅美也のことはすっかり消え去ったようであった。

雅美也も真里も、へびになった者はみなこうして暁子の前に姿を見せることは二度となかった。
数年たって田崎博士の研究所も再建されたが、博士は息子たちの就職も決まってしかも遠い赴任先で勤務し、出世して現地の女性と会って結婚したために実家に戻らなくなったから、妻ひとり残せないということで助手に管理を委ねた。あれほどがんばって考えたへび女を退治するワクチンの製造法も頭に残っておらず、老齢化してやや勘が鈍ってきたから自分は隠居したほうがいいとも考えてのことであった。このため、コロも返されずにずっと暁子の家で死ぬまで飼い続けられ、そのために暁子は田崎博士とも再会することがなかった。
女子校、短大、女性ばかりの職場に進んだ暁子はほとんど男性との縁もなかったが、コロが死んでまもなくしてようやく良縁に恵まれ、結婚することとなった。これもコロが引き合わせてくれたおかげと暁子は思っていた。

こうして、田崎博士や暁子の前にへび女が現われることも全くなくなったが、へび女たちは決して滅んではいなかった。
なかには、日本ではなく東南アジアなど特に長い髪の者が多い外国に出現して少女たちを襲って仲間にしたりするなど、恐ろしい魔の手はあいかわらず残っていた。そうした事件は少女たちが単に行方不明になるというニュースだけが暁子たちには入ってきても、それがへび女たちのしわざであることに気づくことはまずなかった。
へび女の事件は、実際にかかわった人達にとってもみなおとぎ話として処理されてしまったようであるが、最初に松田良子が襲われていたように、地中のどこかに生息していて、人間の邪淫が呼び出して現われる可能性は残っているのである。

< おわり >

「髪射へび少女」御愛読いただきありがとうございました。=編髪(あみ)=

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