指と玩具 第九話

第九話

「・・・うぅ、ひっく、ひっく」

人の気配が消えた深夜の小さな公園。
そこには二人の人間がいたが、傍目にも一人は人間として扱われてはいなかった。
その内の一人は整った顔立ちの少年。

もう一人は眼鏡をかけた、衣服のほぼ全てを剥ぎ取られた少女。
身に着けているのは靴下と、首に巻かれた犬用の首輪と、犬のしっぽを催したバイブがまだ未発達のお尻に無理矢理に差し込まれている。
さらに首輪から伸びた綱の先は少年の手の中に納まっている。

「もう、嫌ぁ、誰かに見られたら・・・・・」
少女は本当の犬のように少年に哀願するが、少年は笑みを浮かべたまま何も言わない。

笑みが浮かべる意味は”NO”。

「どうせ酔っ払いくらいしか通らん。お前を見たら犯してくれるかもしれんぞ?良かったな」

ほんの数時間前までは友人であった関係。
ほのかながら恋心さえ持っていた。
しかし、今の状況は悪夢だった。
彼女は願う。
醒めるものなら早く―――――――――――――。

少年があずさと呼ぶ”犬”の尻を力を込めて引っ叩く。

「ひぐぅ!!」
「さっさと進め。またお仕置きされたいか?」

「はい・・・・」
泣きながら少年の言うとおりに前に進もうとしたが、少年は綱を思い切り引き上げる。

「っぐええ!!」
「はいじゃないだろ?・・・・・・・もう一度教え込むか?」
少年が漏らした言葉に、あずさの顔が恐怖に歪む。

「わ、わ、わん。わんっ!」
これ以上少しでも主人の機嫌を損なわぬように毛がついた尻を振りあずさは必死にアピールする。
バイブのサイズが大きすぎてお尻が裂けそうになったが、あずさは構わずに尻を振りたくる。

「まぁいい・・・次は許さないからな。行け」
「わ、わん・・」

深夜とはいえ季節的にまだ外は十分暖かいので風を引くことはない。
しかし、無服による変調が起こったのは公園を1週半ほどした頃。

(お腹・・痛い。お、おしっこ・・・・・・・・・・)
ぐるる、と獣が吠えるようにお腹が鳴る。

「止まれ」
不意に少年があずさに命令する。
ぴくっと、あずさは体を震わせてから少年の言葉に従順にその場に足を止めた。

少年は何をするわけでもなく黙ったままその場でじっとしている。
それは、尿意を体を動かしていることで紛らわせていたあずさには苦しいことであった。
意識しなくても、自然と足をもじもじと動かしてしまう。
皮膚の表面からじわりと脂汗が流れ出す。
膀胱がずきずきと痛み、何をするでもないのに息が荒くなる。

「ト、トイレに行かせてください、も、もう我慢できません」
とうとう我慢できずに言葉を発してしまった。
言って、しまったとあずさは思った。
しかし。

「いいぞ」
返ってきたのは予期せぬ返事だった。
少年は綱を引きあずさを公園の入り口へと連れて行く。

アスファルトで舗装され、白いポールが二本立てられた入り口。
少年はポールを指差す。
「ここでしろ」
「え、だってここはトイレじゃ」
「人間の、な。でも犬なら何の問題はないだろう?」
「そ、そんな!!」

少年はパチンと指を鳴らす。
その音が公園に、あずさの頭の中に響いたとたんお腹がむずむずとしてくる。
「え・・・嫌、嫌・・・・・・」

分かった。
先ほどまでは我慢していたんじゃない。
――――――――――――出せなかっただけなんだ。
(それを私、必死に我慢して・・・・・)

心がどんなに拒否しても、体は素直に”御主人様”の命令に反応する。
(ほんとに犬になったらこんな感じなのかな・・)

しゅわああああああ。
私が噴出した液体を白いポールが弾いていく。
――――――――――気持ち良い。
素直にあずさはそう思った。

これが作られた感情なのか、本当に気持ちいと思っているかは分からない。
けど太ももには違う液体も流れていて、感じていた。
放出する液体の量が減っていき、やがて止まる。

「犬がしたものは後片付けをしなければならないらしいな、あずさ?」
「・・・・・わん」

”聖夜君”が何を言おうとしているかはもう分かっていた。
「舐めろ。一滴残さず」

「・・・・・・・・・・・・わんっ」

●●●●●●●

食欲をそそるトマトソースの香りがダイニングルームに充満する。
今、俺の目の前のキッチンでは女性にしては長身の、そして細身の女がフライパン片手に手際よく次々と調理をこなしていく。
スラリとしてバランスの取れた体型。
もちろん里香である。

「ちょっとばかし多すぎないか?今日は一人しか来ないんだぞ?」
とどまること無しにテーブルへと運ばれる料理をよそ目に俺は里香へ尋ねる。

「後はデザートだけですから。・・・それに今晩のためにも御主人様に精力をつけていただきたいんです」
「ははは、心配するな。たっぷり可愛がってやるよ」

その言葉に里香はうれしそうに、そして少し恥ずかしそうにして顔を伏せる。

「それと、お聞きし忘れていたんですけど楠本さんは苦手な食べ物とかないのでしょうか?」
ふと俺の脳裏にあの殺人弁当を楽に完食していた梓の姿がよぎる。

「心配ない。あれより酷いものはこの世には存在せん」
「?・・・・そ、そうですか?」
「それと、楠本さんなんて呼び方しなくていい。・・・もう少ししたら同じ奴隷仲間だからな」

その台詞に里香の体がぴくんと反応した。
「なんだか今日は機嫌がよさそうですけど・・・・・・・・」

少しばかり声のトーンを下げて里香が呟く。

「そう見えるか?」
「・・・楠本さん・・・あずささんのせいですか?」
「いや、少しばかり面白くなってきたのさ。いろいろと、な」

俺がそう言ったところで客人を告げるインターホーンの音が部屋に鳴り渡る。

「・・・あずささんじゃないですか?私が・・・出ましょうか?」
「いや、俺が入り口まで迎えに行くさ。俺が向かったということだけ連絡しておいてくれ」

俺は薄い上着を羽織り目の前の鶏肉を一つ口に放り込み、駆け足気味でマンションの入り口まで向かった。

あずさは透明なガラスの扉越しに俺の姿を確認すると小さく手を振る。
俺はすぐさまエントランスの隅にある操作パネルで扉を開きあずさを迎える。

「すごいね~。聖夜君こんな大きなマンションに住んでいるんだね~。羨ましいな」
あずさの服装はオレンジのジェラバシャツにデニムスカート―――――――――――――それとこんもり膨らんだポシェット。
それから眼鏡も少しいつものと違うように見える。

(やっぱりあの中身は・・・・アレなんだろうなぁ・・・・・・・)

おそらくあずさはそこらの少女たちに比べれば非常に可愛らしいと言えるだろう。
ま、一点の毒物所持を除けばの話で、だ。

「あはは、親が残してくれたお金と姉さんが頑張ってくれているおかげだけどね」
「あ、さっきお姉さんと少しお話しちゃった。優しそうな声だよね」

「まぁ、会ってみれば分かるよ。それより・・・・そのポシェットの中身って・・・もしかして・・・・」
あずさは少し出しにくそうにしてビニールいっぱいに詰め込まれたクッキー”のようなもの”を取り出した。

「えへへ~クッキーだよ~。今朝のと合わせてまた焼いてきたの!!いろんな味があるんだよ!!」

「はは・・・やっぱり・・ね」
「少し食べてみる?」

あずさはきつく縛られたビニールの先に手をかけようとするが、俺は急いでそれを静止する。

「やめ!・・・あ、いやいや。それはまた食後にでも、ね。いや本当に。
とりあえずこんな所にいつまでもいてもなんだから、そろそろ部屋に戻ろうか」

「そう?・・・・まぁいいや。じゃ行こっか!」

●●●●●●●

パスタを中心とし、特製ドレッシングのかかったサラダ、鯛を使ったカルパッチョ、ブルスケッタなどのイタリア料理がテーブルに所狭しと並べられれ、
圧巻的な量に見える食事を囲んでの夕食会がスタートする。
席配置は俺の向かいに里香、隣にあずさという配置である。

どうやら里香はあずさと俺が部屋に向かうまでに着替えたらしく今はアイスグレーのノースリープセーターとベージュのロングスカート。
とりわけ着飾るわけでもなくそれでいて清楚な服装は見事に里香に合っている。
そんな里香に気圧されているのかあずさは先ほどからもじもじとしたまま何もしゃべらない。

湯気立ち、食欲を誘う料理を目の前をするのに空気は少しばかり重い。
いつまでもそうしていられないことを解してか里香が口を開く。

「えっと、自己紹介をしなきゃいけないわね。・・私は折笠里香です。知っての通り聖夜の姉です。
仕事は今は社長秘書を努めているの。自慢なんだけど、結構大きな会社なのよ?・・ふふふ。
それじゃ楠本さんのこと聞かせてもらってもいいかしら?」

「あ、はい・・。え、えっと楠本あずさです・・あずさは漢字じゃなくて平仮名であずさって書いて、えっと聖夜君とは同級生で、
いつもお世話して・・じゃなくてお世話になってます。あはは・・・。
あ、あと趣味は料理で、里香さんみたく上手なんかじゃないんですけど、けど何とか味になる程度で・・」
「ふふ、私も最初は全然上手じゃなかったけど頑張ればちゃんと上手になるわ。大丈夫。
・・・・・・良かったら今度教えてあげる」
「ほ、ほんとですか!?約束ですよ!?」
「ええ。約束」

と、料理の話で少し場が盛り上がったところで俺はやっと口を挟むことに成功した。
「あっと、そろそろ食べてもいいかな?冷めちゃうしお腹結構すいてるんだけど」

「ふふ、そうね。じゃあそろそろ食べ始めましょうか?」
「・・・あはは。実は私もお腹ペコペコで」
と、まぁそういう具合にして夕食会が始まった。

「どう、聖夜ちゃんと学校になじめているかしら?」
「ええ。授業なんかでもすごい難しい問題なのにすらすら答えちゃうし、私と違って運動神経もすっごく良いし。
でも、男の子より担任の先生や女の子の方が仲いいみたいですけど?」
「あらら、駄目よ?ちゃんと男の子とも仲良くしないと」

正直俺はあずさと里香がこれほど意気投合するとは思っておらず、一人蚊帳の外に投げ出された気分だった。

「・・・んっ、ああはぁ」
突如里香が声を上げる。

「ど、どうしたんですか!?里香さん!!」
がたっと立ち上がったあずさを紅潮した顔で里香は制止する。
「な、何でも無いの、ほ、本当に、んっ、何でもない・・から」

実はこういうこともあろうかと里香には尻にリモコン式のバイブを入れさせている。
それはいつも使っていたものより一回りほど小さいがここしばらくバイブを使うことを禁止されていた里香にとっては、小さな刺激でも敏感に感じてしまう。
バイブのスイッチを中から強へ。

まともに椅子に座っているため尻に刺さったバイブは里香にさぞかし心地よい快感を与えていることだろう。
バイブが比較的音の立たないということと、ロングスカートが邪魔をしてあずさにばれるということはないとは思うが・・・。

「・・ふぅ、ふ、あはぁ、の、飲み物を持ってくるのを忘れていたわね・・・ちょっと取ってくるから、んぅ」
そう言って足元がおぼつかない様子で里香は席を立ちキッチンへと向かった。

「ちょ、あの、聖夜君、里香さん大丈夫!?」
あずさは心配そうな顔をして俺の服の袖を掴む。
その手を元の場所へ戻して俺は笑顔で答える。
「大丈夫。ちょっと姉さんの様子を見てくるよ」
バイブを強から切へ戻す。

「・・・はぁ、はぁ、あぁ・・・止まっちゃった・・・」
キッチンでは惚けた顔で里香が膝をついていた。

「飲み物を取りに来たんじゃないのか、里香」
「あぁぁ、た、足りないんです御主人様」
「グラスの数がか?」
俺はわざとはぐらかすように答え返す。

「バ、バイブが、ん、んっ、動かないんです、お願いですっ」
「何がお願いだって?」
「はぁっ、ああ、動かしてくださいぃ、お尻のバイブ動かしてくだ、さいっ」
「そんな小さなバイブじゃ動かしてもイけないだろう?」

事実、一回りほど小さいバイブでは焦らせる事は出来ても満足する振動は与えられない。
それでも里香は切なげに鼻を鳴らす。

「でも、辛くて、このままじゃおかしくなっちゃいますぅ」
「里香」
バイブを自分で触ろうとした里香を俺は静かに名前を呼ぶ事で制止する。

「あ・・だって、御主人様がバイブのスイッチを・・・・・お相手もしていただけないし、自慰もしちゃ駄目って・・」
膝をついたまま里香はスカートをめくる。
ロングスカートの中の黒い下着は、大事な部分を中心に濃い染みが出来上がっている。

「サイズも違うから・・イけませんけど、あ、はぁ、辛いです」
潤んだ瞳で俺のほうを見つめる里香はぞっとするほど色っぽかった。
一瞬この場で里香を抱こうかという気も起こったが、一つ溜め息をつきそれを振り払った。

「・・・心配しなくても夜には抱いてやる。さっきのはただお前で遊んだだけだ。
だから今抱く気はない。いいな?」
「はい・・・私は御主人様の玩具ですから。我慢します・・・・・でも、でも約束ですよ?」
少し不満そうにはしたが、しぶしぶ里香は俺に約束を取り付けることで我慢した。
「分かった分かった。さ、あずさがいらん心配をすると面倒だ。さっさと戻るぞ」
「・・・はい・・」

俺は三人分のグラスを胸に抱え、里香は冷えたビンジュースを持ちまたダイニングルームへと戻ってくる。
あずさは食事を取る手を止め、所在無くそわそわとしていた。

「ごめんね。またせちゃって」
「あ、ううん全然。・・・・あの里香さん大丈夫ですか?」
本当に心配そうに里香を見つめるあずさに里香は微笑を返す。

「ふふっ、ちょっと熱々のお汁が腕にかかっちゃって。少し冷やしていただけなのよ。
自分の作ったものなのにね。おっちょこちょいでしょ?」
「・・・そうだったんですか。でも私ももっとおっちょこちょいなんですよ」
「あら、一緒ね。うふふ」
と、里香のうまい切り返しであずさに悟られることなく食事に戻ることになった。
とは言ってもその後も何度か俺はバイブの振動を調節して里香をからかってはいたのだが。

「そういえば、どうかしらお口にあっているかしら?」
「はい!とっても美味しいです。そこら辺のレストランなんかじゃとても太刀打ちできないくらい」
「そう?お世辞でも嬉しい。ありがとう」
「お世辞なんかじゃないですよぉ。あ、このサラダあのドレッシングもしかして手作りですか?」
「分かる?」
「はい!市販のドレッシングじゃこんな味出せませんから」

料理の話に花を咲かせるあずさと里香。
傍目から見れば別段おかしなところなく、むしろ微笑ましい会話なのだろう。

しかし、だ。
俺にはどうしても腑に落ちないところがある。
確かに俺はこの夕食会を通じて、ずれたあずさの味覚の感覚を知ろうとした。
だが一向にあずさはずれた味覚を出そうとしない。
それどころかむしろ里香の料理の味付けに過敏に反応する。
あずさにとって何が美味しくて、何が美味しくないのか。
(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・謎だ)

幸せそうに料理を楽しむあずさの顔を横目に眺めながら俺はますます頭を痛くするのだった。

●●●●●●●

「んぅ、ん、ん、んちゅ」
里香は咥えずに、まず味を味わうかのようにキスをする。
何度かそれを繰り返した後は頬を擦り付け、下から上へゆっくりと舐め上げる。

分かるとは思うが、里香は今俺に奉仕している。
あずさはというと今リビングルームの方で眠っている。

食事が終わった後、例のクッキー”らしきもの”を進めてきたのだが巧みな話術で交わし続け。
後片付けを終えた里香との会話に花を咲かせるうちに眠ってしまったというわけだ。
お腹がいっぱいになり満足したのか、緊張疲れしたのか、ただの子供なのかは知らないが眠ってしまったあずさを無下に起こすわけにはいかないので、
目で、体で、言葉で誘ってくる里香を断ることが出来ずに寝室で奉仕をさせてるといったわけだ。

「・・はぁ、はぁ、んんん、んんぅ、美味しいです、はぁ」
確かに昔俺の精液を里香の好物に変えたが、今となっては行為自体が気に入っているらしい。
そして俺のモノに奉仕している間にも耐え忍ぶように里香は尻を振る。
相当焦らされていた事が辛かったのだろう。
奉仕にもいつもより心なしか熱がこもっているように感じられる。

「ちゅぷっ、ちゅ、あむ、んんっ」
それからしばらくの間奉仕をさせていたが里香の動きが止まる。
全体に唾液をまぶし終えた頃、里香が上目遣いで俺を見上げる。

「あ、あの、今日は下の口にくだ・・さい、お尻が疼いて、我慢できませんっ。
もう、おかしくなっちゃう、くぅっ」
「・・・仕方ないな。俺の上に乗れ」
「は、はい!ありがとうございま・・ひゃううう」
俺は手を伸ばし里香の尻に刺さっているバイブを引き抜くとベッドに横になる。

すぐに里香は俺を跨ぎ、俺のものを尻にあてがうと―――――――――、一気に腰を下ろす。
「ふ、あああああああーーーーーーーーーーーー」
ぴゅっと違う穴から飛沫が飛び散り、ぶるっと身震いする。

「ひゃう、んんんあっ」
俺はすっかり動きが止まった里香を催促するように自ら突き上げる。

「どうした、動きが止まってるぞ?」
「ああ、すみませんっ、久しぶりだったからぁ、は、やっとイけたからぁっ」

「あぁあ、お尻、お尻気持ちいいです!!も、もっと奥まで入れてくださいぃ」
ここ暫くの性的干渉をしなかったことや、先刻の焦らしがよほど効いたらしい。
里香はあっという間に何度も波を迎えるが、けして俺を放そうとはしない。

「ふああ、また、またイきますぅっ!!!」
それだけではなく絶頂を迎えるたびに里香の腰の動きは激しいものへと変わっていく。
騎乗位の体勢で腰を振る里香の豊満な胸に涙がこぼれ、汗と交じり合い俺の体へと落ちる。

「ご、御主人様ぁ、あ、愛してます、里香は御主人様のことずっと愛してますっ」

――――――――――――――――――――――――――クシャ。
扉の方から何かが落ちる音が聞こえる。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あずさ・・ちゃん」
開いた扉からは信じられないといった顔をしたあずさの姿。
驚愕と、少しばかりの絶望が入り混じった表情で立ち尽くしている。
どうやら床に落ちたのはあずさが持ってきたクッキーの入った袋のようだ。

荒い息をした里香が支えを失ったように俺の胸元に崩れ落ちる。
誰も何を言うわけでもない。
ただ里香の荒い息遣いだけが言葉を失った部屋に木霊する。

その沈黙を破ったのはあずさ。
「あ・・あはは・・最低だ・・私。こんな夢見るなんて・・あはは、はは、はは」
震える声でそうあずさは呟く。

「夢だと思うか?”あずさ”」
俺はわざとあずさに見せ付けるように里香の頭を撫ぜる。

「え・・だって、だって、聖夜君と里香さんは姉弟なんだよ?だってそんな」
「里香と俺はご主人と奴隷の関係だ。姉弟の関係なんかじゃないさ」
きっぱりとそう言って俺はハハハと笑う。

里香をその場に寝かせると、俺はあずさの方へ歩み寄る。
ただならぬ俺の気配に押され、一歩近づくとあずさは一歩後ずさる。

「・・・・聖夜君?」
確かめるように俺の名前を呼ぶあずさの顔は恐怖で引きつっている。

「”あずさちゃん”こっちにおいで」
全く笑わない目とうわべだけの微笑を浮かべ俺はあずさに呼びかける。
もちろん本当に呼んでいるわけではなく狩りを行うための布石である。

「い、嫌。違う、聖夜君じゃない。聖夜君はそんな顔しないもん!」
あずさは持っていたポシェットを俺に投げつけ、一目散に走り逃げる。
十分な鬼ごっこが出来るほど大きな家ではないが、それだけに逃げられない恐怖があずさに付きまとうだろう。

俺はわざと大きな声を出しあずさを追い込もうとする。
「何もしないよ?さぁ、出ておいでったら」

「あずさちゃん?早く出ておいでよ!」

ガチャン、ガチャン。
金属が打ちつけられるような音がどこかから聞こえる。
(玄関・・・・・か)

「あずさちゃん見つけた」
必死に玄関の鍵を開けようとするあずさに背後から急に声をかける。
まぁ前もってチェーンには南京錠をかけているために鍵どころかチェーンすら絶対に外れることはないが。

「ひっ!!」
出来る限り後ろに下がろうと努力はするが、けして開くことのない檻に拒まれそれは適わない。

「来ないで、来ないでよぉ!!」

「どうして?僕が何かした?」

「何かって・・・・里香さんと、その、エ、エッチなことしてたし、聖夜君はそんな顔しないし!!だ、だから来ないで!!」

「あずさちゃんだって人の部屋を勝手に覗き見したでしょ?あんまりいい趣味じゃないよな?
なんだったら夕食ついでに”躾”でもしてやろうか?あずさ。
――――――――――それにな、俺と里香は全くの他人だ。俺が”洗脳”した。覗き見していたんなら分かるだろう?
今やあいつは俺に従順な雌奴隷なのさ。何も言わなくても自分から俺のモノに奉仕する」

「な、何言ってるの。全然分からないよっ!!夢なら覚めてよぉ・・・・もう嫌だよ」

怯えるあずさのことなどお構い無しに俺は続ける。
「最近はすっかり忙しくなってな。そうでなくても学校なんかじゃ自由になる時間が少ないだろう?
だからお気に入りの”人差し指”が使えなくて、な」

さらに俺は付け加える。
「俺は普通の人とは違った体質でな。この五本の指にはそれぞれいろんな力があるんだよ。
この指のおかげで担任の光だって、同じクラスの秋穂も友美も俺の従順な奴隷だぞ?
・・・いや、友美は今秋穂に調教するように命じているんだっけかな。くくく」

あずさは相変わらず恐怖で歪んだ顔をしながら口をパクパクさせている。
おそらく頭がパニックを引き起こし、うまく言葉を紡げないのだろう。

「う・・・嘘・・・・嘘だよね・・?もう嘘って言ってよ・・私信じるから・・ね?」
たどたどしい口ぶりでようやくそれだけの言葉をあずさは紡ぎ出した。
この状況にあってもまだ俺のことを信じているらしい。
(とんだ・・・・・・・・・・・・・・・・・・笑い種だ!!)

俺はあっさりとあずさの期待を打ち壊す。
「本当だ。まぁやってみれば分かるよな?」
例の笑いを浮かべたまま俺はあずさの髪の毛を掴む。
「痛っ、は、離して!!」
全力で髪の毛を掴む手をはがしにかかるが、所詮は無力。一向にびくともしない。

そうこうしている内にも”人差し指”はあずさの額へと近づいていく。
髪の毛を掴む手から、人差し指を突き出す手へと抵抗を返るが結果は同じ。一向にびくともしない。

思い届かず、指は目の前に、そして額に触れる。
つぷっ。
「っやああああああああああああああああああああああああああ」
俺の腕を握り締めていた手からは力が抜け、だらりと垂れ下がる。
瞳からは一筋の涙が流れ、そして意思の光が消える。

「・・・・う・・・・・・・ああ・・・・・・・・・」
感情豊かだったあずさはここには居ない。
今ここに居るのは俺の新しい下僕の道を辿るもの。

「あずさ、俺の声が聞こえるな?」
「・・はい・・・・」
完全に生気のない声であずさは答える。

「あずさ、俺は誰だ?」
「聖夜・・・くん・・・でも・・違う」
「どうして違う」
「怖・・・い、だから違う・・・・」
(ふう、少々トラウマになってしまったかな?・・まぁいい)

俺は出来るだけ優しそうな声でもう一度あずさに語りかける。
「あずさはいけないことをしなかったか?」

そういうとあずさの体が少し反応した。
「いけないこと・・・・・・見た・・・」
「俺と里香がセックスをしているのを見たな?」

少しためらった顔になっても、従順にあずさはうなずく。
「覗き見はいけないことだ。だから俺が怒るのは仕方ないことだ」
「仕方・・ない・・・・」
「じゃあ何をしなければならないか分かるな?」
「謝る・・・・・・」
あずさはこくっと頷きそう答えた。

「でもただ謝っただけでは許してはくれない。許してもらうためには俺と里香の二人が言うことを何でもしなきゃならない。
お前が嫌と感じることでも何でもだ。そしてお前はそれをする義務がある。分かるな?」
「はい・・・します・・・何でも」
「じゃあ、俺が言った事は全部実行しなければならないし、それを実行しなければならないと感じるのは全部あずさの意思だ。
たとえおかしいと感じたことでも全部実行できるな?」
「・・・はい・・・」

「いい子だ。じゃあ、俺と里香がセックスをしていてどう感じた?」
またもやあずさは心配そうな顔つきになり、そして告白し始める。

「夢だと・・思って、ます。ショックでした・・・」
あずさの頬に涙が流れ落ちる。

「そうか、でもあずさがどう感じようとものぞいてしまったことは悪いことだな?」
「はい・・悪いこと」
「じゃあ俺が三つ数えるとあずさは目を覚ます。だが俺から逃げようとしたこと、俺の指のこと、暗示を与えられたことは何も思い出せない。
俺と里香の関係には疑問を覚えても、そのことを考えると謝罪の気持ちで満たされる。だから疑問を追及は出来ない」

「でも首に首輪を付けられると催眠を掛けられたことも、逃げようとしたことも、すべてのことを思い出す。
但し体は動かない。どんなに動かそうとしても俺の言葉どおりに動いてしまう。いいな?」

あずさは虚ろな瞳のまま首輪、動かないなどの単語を何度か呟き、そして一言”はい”と言って頷いた。
それから俺はその催眠状態のまま寝室まであずさを誘導する。

寝室ではすっかり落ち着いてしまった里香がベッドに腰掛けていた。
「あ・・御主人様。・・・・楠本さんも御主人様の奴隷にしちゃうんですか?」
俺の指のことを知っている里香は笑顔でそう俺に問いかける。

「不満か?」
「いえ、御主人様が望むなら私は何も」
里香は少し悲しそうな顔をしてはいたのだが俺はあえて何も問いかけずにしておく。

「今からあずさに謝罪をさせる。お楽しみを邪魔されて気分が悪いだろう?好きにしていいぞ。
どんなに嫌と感じようが必ず行うようにしてやったからな」
「・・・ふふ、じゃあ御主人様のお言葉に甘えさせてもらいます」

俺は催眠状態に置かれたままのあずさの方に向き返り、人差し指を引き抜く。
「目が覚めて俺の言葉遣いがいつもと違っても気にならない。さあ今から三つ数える。・・・・・ひとつ、ふたつ、みっつ」
パチンッ。
”みっつ”の掛け声と同時に指をはじき鳴らすと、あずさがはっと目を覚ます。

「私・・?・・・・あっ、覗き見したこと・・・謝らなくちゃ・・・」
まだ意識が完全に目覚めないあずさにさっそく里香が声をかける。
(まずは里香に任せてみるか)

「楠本さん、私ちょっと気分が悪いの。――だって私本当に久しぶりに御主人様に抱いてもらっていたのよ?
本当はもっと抱いてもらえるはずだったのに・・・」
「抱いて・・・・」
案の定、普通に考えておかしすぎる里香の発言にあずさは多少困惑したようだが暗示通り謝罪の気持ちに満たされる。
途端にいかにもすまなそうな顔になり謝罪の言葉をこぼすが里香は受け入れない。

「言葉じゃ許してあげない。やっぱり行動で謝罪の気持ちを表してもらわないと、ね?」
そう言って里香は股を広げ、少し乾いてしまった”そこ”を指差す。
「あ、あの・・その・・」
「舐めて、でないと許してあげない」
「で、でも・・・そんな私そんなことしたことないし・・・」

「そう・・じゃあ、もう許してあげない」
里香のその一言にあずさの体がぴくんと跳ねる。
「あ、待ってください!その、あ、舐め・・ます。舐めますから・・・」
意を決したようにあずさは里香の元へと近づき―――――――――――――ひざまずく。

許してもらわなければならないという義務感が胸を満たすがなかなか行動には移すことが出来ない。
本当は見ることすら恥ずかしいが、舌を突き出し恐る恐るゆっくりと顔を近づける。
舌先が触れるか触れないか、という瞬間。

「あっ、ちょっと待って。私が裸なんだから楠本さんも脱いで?」

「・・・・・え?・・・・わ、私も脱ぐんですか・・。でも、でも聖夜君も見てるし・・・あの」
「あら、御主人様だって途中で中断させられちゃったのよ?御主人様なんか一度も出していないのに。
だったら御主人様が可哀想じゃない・・・」

「御主人様・・・・あ、分かり・・ました。脱ぎ、ます」
そう言ってあずさはとてもゆっくりとした動作で、羞恥に震えながらも義務感のためにスカートに手を伸ばす。
(子供っぽい下着だな。・・・・・まぁこれからは下着を着けられないかもしれんし構わないか・・・)

最後の下着に手をかけるが、なかなかその先に繋がらない。
「・・そう、楠本さんは別になんとも思ってないのね」
いかにも、な台詞を里香が悲しそうに目を伏せてポツリと呟く。

「んっ」
たまらず出した一言とともにあずさが一気に最後の一枚を下まで下げる。
「あんまり濃くないね、ふふっ」
わざと羞恥を深める一言にあずさの顔は真っ赤に染まる。

「あ、靴下は脱がなくてもいいわよ?じゃあ舐めて、楠本さん」
「・・ぅ・・・はい・・・」

もう一度ひざまずき、今度は目を閉じて舌を近づける。
ぴちゃ。

「・・・んっ!」
里香が声を発すると、咄嗟にあずさは顔を離す。
しかし里香は物足りなそうな声でまた舐めることを催促する。

「・・・ん、ちゃぷ、んん」
「んん、もっと舐めるだけじゃなくて奥まで舌を、あっ、そう、そうやって丁寧にっ」

言われるがままにあずさは小さな舌で単純なピストン運動を繰り返す。
「駄目、同じ動きじゃちっとも満足できないわ。いろんな動きを混ぜて・・手も使っていいから・・・あ、そう、ちゃんとお汁も飲んでっ」
「ちゅぷ、っはぁ、あ、んんっ、こく、こく」
「楠本さんっ、お尻も、お尻の穴も舐めてっ、ああっ指、指も止めないでっ」
すっかり淫靡な気に当てられてしまったのか興奮しているのか、あずさは従順に里香の尻に下を這わせる。

しわの一本一本を丁寧に舐めあげ、その小さな舌を出来るだけ奥深くへと差し込む。
指の方もクリトリスを弄ったり、周辺を撫で上げたりと動かすことを忘れない。

「んあっ、あん、あっ、いいっ、も、もうイっちゃうっ!」
ぴくっと少しだけ体を震わせ里香は絶頂を迎える。
お尻のほうまで垂れてきた愛液を沿うように舐め上げると、里香の指示通りに苦しそうな顔をして嚥下する。

「・・・はぁ・・はぁ・・あの、これで許して・・くれますか・・?」
あずさは怯えた小動物のように里香を見上げ許しを請うが、里香は笑顔で首を横へ振る。
「まだ駄目。私もそうだけど御主人様も満足していないって言ったでしょう?」
「でも、ど、どうしたら・・・」
「当然、御主人様の精を受けることでしょう?私のは駄目だけど楠本さんなら大丈夫かもしれないわね」
「大丈夫って・・・何がですか・・・・?」
「ふふふ、処女を奪ってくれるかもってことよ」

里香は笑顔であずさに非情な事を告げる。
当然のごとくあずさは蒼ざめた顔になり、不安げな顔で俺のほうを振り返る。

「聖夜君・・・」
そんなあずさに俺は笑顔を浮かべて返す。

「俺は無理矢理するのは好きじゃないからなぁ。でも満足していないって言うのも事実だ。
あずさが自分から”処女を奪って欲しい”なんて言うんなら話は違うんだけどなぁ」
「え・・・・・・・・」
「ああ、ちなみに俺は満足するまであずさのこと許せそうにないなぁ。・・・・・ああ困った」

とても白々しい台詞。
最初の俺の言葉に一瞬でも安心そうな顔を浮かべていたがそれもすぐに元へ―――――――いや元以上の絶望的な表情に変わる。
あずさはもう自分がどうしなければならないのかは分かっている様子である。
でもその一言はなかなか言葉に出ては来ない。

「あ・・・ああ・・・・あ、あの、他のことなら何でもするから・・・だから、だから・・・」
今にも泣き出しそうな顔であずさは懇願をする。
だが―――――――――――――。

「それじゃあもういいや」
俺は笑顔を絶やさずに冷たく言い放つ。

あずさの目から零れ落ちる涙。
「あ・・・・ああ・・・・ああ・・・・・・・・」

「無理矢理っていうのは嫌だからリビングで寝るから。”じゃあな”」
「・・・・ま、待って!!」
部屋を出ようとする俺をあずさは制止する。

「しょ、処女・・・・・奪って、ください・・・」
諦めたのか、とうとう蚊の鳴くような声でほそぼそと呟く。

「別に無理に言わなくてもいいんだぞ?」
「・・・・・無理にじゃないから・・・大丈夫だから・・・だから・・奪ってください」

羞恥のせいか、肌は紅潮して小刻みに震えている。

「くく、あずさは本当に淫乱だな。そこまで言うなら入れてやるよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ。
里香、俺があずさの中に入れたらこれをあずさの首につけろ」

俺が里香に手渡したものは犬用の真っ赤な首輪。
何かの機会に使おうと買っていた物を先ほどのあずさと里香の行為の間に用意しておいたものだ。

「首輪・・ですか?」
刷り込まれた暗示によりその首輪が何を意図するのか分からないあずさは不安げに里香の手に渡る首輪を見つめる。

「じゃあ入れるぞあずさ」
「んっ、はい・・・お願いします」
そして俺は何の前戯もなしに一気にあずさを貫く。
みしっと骨がきしむ音がし、侵入者を排除しようとあずさの膣が俺のモノを押し出すように締め付ける。

「くぅっ、痛・・・・」
「嫌なら別に抜いてもいいんだぞ?」
「だ、大丈夫、嫌じゃないからあっ!」

「くく、そうか。里香、もう首輪をつけてもいいぞ」
「はい。御主人様」
俺の指示通りに里香がかちゃかちゃと音を立てあずさの首に奴隷の刻印を付ける。

「・・っ!?い、痛いいいいいいいいいいいいいいいい」
ここぞとばかりに俺も動きを激しくする。

「な、何で、やめてっ!!痛いいい」
概ねの状況がはっきりとしないままあずさは俺のモノを引き抜こうと必死に抵抗する。

「せっかくの脱処女だろ?”もっと腰を振れ”」
「え・・・、ちょっと、やっ体いう事きかな」
まるで何かに操られるかのようにあずさの体は俺の言うことに従順に腰を動かす。

「動かないでっ、痛い痛いいい、うっぐうぅ」
「くく、動いているのは俺じゃないお前だ。お前の意思だ」

目のふちに涙をため、どんなに抵抗しようともあずさの体は何一つ自分の意思通りには動こうとしない。
唯一の抵抗の手段の口も里香の股間に押し付けられ、息をすることすら危うい。

「んぐぐぐっぐ、むーっむぅーっ!!」
「里香もまだ満足していないと言っていただろう?さっきやっていたみたいに里香を満足させてやれよ」

「ん・・・嫌・・・んんっ、ちゅぱ、んちゅう」
「んあっ、あ、ありがとうございます、御主人様ぁ、気持ちっいいです」

あずさが息をすると鼻の穴にも里香の愛液が入り込み苦しかったが、それでも彼の言葉どおりに動く自分の体が情けなく、そして苦しかった。
鼻で息が出来ない以上、口で息をするも口の中にも愛液が流れ込んできて空気を体内に取り込むことが出来ない。
水中に頭を突っ込まれているかのような苦しみはあずさを呼吸困難に陥らせるに十分だった。

「・・ぶはっ、はぁはぁ、ごほっごほ!!――――――――――んんむううう」
もう駄目だと思った瞬間に顔が股間から離れ、無意識に空気を掻き込む。
そして気づく。
顔を押し付けられている力はとても弱く、自分の体がそう動いているのだと。

顔だけでなく勝手に腰を動かしている自分の体。
冷静に今の状況を見つめることが出来ない。
淫逸な空気がそうさせているのか分からないが、まるで本当に自分がエッチな子になってしまったような気がする。
彼のモノが出し入れされている”そこ”では湿った音が増えてきたような気がする。
(・・濡れてるんだ・・・・・私・・・)

どんなことをすれば彼は喜んでくれるのだろうか?
どんなことをすれば彼に近づけるのだろうか?

少しだけ残った冷静な部分でふとそんなことを考える。

背中から声が聞こえる。

「さてと、時間はたっぷりあるんだ。じっくりと今から躾をしてやるからな」

顔を振り、声を上げ、必死の抵抗を示している反面思う。
”私は本当に嫌がっているのか”と。
”もしかすると私は望んでいるんじゃないか”と。

●●●●●●●

薄明かりがカーテン越しに部屋をぼんやりと照らし出す。

「夢・・・・・・・・・・・見ます・・・・・」
まだ首輪をつけたまま、あずさは俺が言ったことを反復する。

「夢の中での俺はお前に快感を与えてくれる。そしてあずさは俺に奉仕すること、俺にすること全てが喜びとなるんだ。
お前が奉仕すればするほど夢の中の俺はお前に快感を与えてくれる」

あずさは虚ろな瞳のまま俺の言うことを聞き入っている。
また――――――――――人差し指で催眠状態に落としたのだ。

「夢から覚めた瞬間はその快感が続いているが、時間が経つにつれ収まってくる。いいな」

「はい・・・・・・」

正直今はゆっくりと調教する時間がない。
だからといって一気に奴隷にしてしまうのも俺の趣味ではない。

このまま家であずさを飼い続けてもいいが、それだと後々に不都合が発してしまうかも知れない。
だからあずさには夢の中で、”夢の中の俺”にあずさを調教してもらうことにした。
ゆっくりと時間をかけて調教してもらうことにしよう。

日に日に見える調教の成果が楽しみだ。

「この家で食事を済ました後のことは覚えていない。楽しく会話をしてそれから俺に送られて家へ帰った。
今日起こったことは夢の中で見る。それには恐怖は何もない。お前の願望として夢に見るんだ」

「・・・・願望・・・・・・見ます・・・・・・」

「じゃあ、家に帰ったらすぐに寝ろ」

「・・・・・・・・はい・・・・・」

つぷ。
人差し指を抜いて数十秒、あずさは立ち上がり夢遊病者のように歩き出す。
”散歩”から帰ってきた汚いあずさの体は里香に風呂で洗わせている。
服装は来た時と同じようにして、ポシェットにはきちんとあの悪魔を詰め込ませている。
(これで安心というもんだ)

あずさが出て行くのを確認した後、里香が俺の体に擦り寄ってくる。

「なんだ寝ていなかったのか?」
「だって・・まだ・・・出していただいてませんから・・・床に落ちたのじゃ嫌です・・」

俺はふぅと一つ溜め息をこぼし一人独り言つ。
(やれやれ・・・・・・・困ったもんだ・・・・・・・・・・)

< 続く >

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