シルバーナイトの帰還

「シルバーナイト様…っ! ぐうっ…!」

 目の前にいた味方の兵士の体が、力なく崩れ落ちる。彼を倒したのは、敵軍の槍兵であった。
 味方の兵士を救えなかったシルバーナイトの瞳に、怒りの炎が燃える。邪悪なるダークキングに仕える者を、シルバーナイトは決して許さなかった。

「おのれっ!」

 シルバーナイトの剣が一閃すると、その槍兵は戦場の露と消えた。
 そしてすぐさま兵士に駆け寄り、地に伏した体を抱き起こす。白く細いながらも、鍛え上げたその腕で抱き起こすと、兵士は意識こそないものの命は失ってはいないようだった。
 彼女の、シルバーナイトの文字通り盾となって倒れた兵士の無事を確認し、シルバーナイトはほっと息をついた。
 シルバーナイトは歴戦の武人であった。『光の宝玉』を狙うダークキングの軍勢から、彼女は幾度も己の身を危険に晒して戦い、宝玉を続けてきた。それでいて白銀の鎧を身にまとうその美しさは比類なきものであり、兵士たちに慕われる存在であった。
 だが、ここは戦場である。一瞬の気の緩みが、いかに武芸に長けた者でも敗北を呼ぶ所なのである。

「…しまった!」

 シルバーナイトは見た。彼女の横合いに猛然と駆け込んで来るチャリオット(戦馬車)を。その動きは矢のごとくであり、もはやかわせないと彼女は悟った。
 乗車していたチャリオットの戦士が槍矛を薙いだ瞬間、彼女の意識は暗転した。

「うっ…、ここは…?」

 意識を取り戻したシルバーナイトは、自分が闇の中に「浮いている」ことを知った。あたりは全て闇でおおわれ、ここがどこなのか判然としない。先程発した声も、闇の中に吸い込まれて消えた。
 ただ一つわかるのは、自分が黒の軍勢に囚われたことである。「浮いている」のに、その体は十字架に張り付けられたかのように全く動かすことはできなかった。白銀の鎧も衣服も全て剥ぎ取られてしまっており、どことなく心細い。

「おのれ…、私にこのようなことをして、ただでは済まさんぞ…」

 彼女は歯噛みしたが、今はどうすることもできない。ただただ、時が流れていくのを待つだけであった。
 やがて、彼女は自分の前に何者かが近づいてくるのを感じた。その気配はあまりにも強大で、シルバーナイトともあろう者が気圧されるほどであった。
 シルバーナイトは、その気配から相手が誰であるかを悟った。

「…ダークキングか」
「さよう。よくぞ戻ってきた、シルバーナイトよ」

 闇の中に重厚な声が響き渡る。まるで周りの闇が王の存在を称えるかのように。
 ダークキングは彼女の視線の先にいた。その体は今まで戦ってきた誰よりも大きく、屈強であった。周囲の闇に覆われ、その姿を全ては見通すことができないが、シルバーナイトに向けてにやりと笑っていることはわかった。

「戻ってきた、だと…?」

 シルバーナイトは憎々しげに、しかし疑問を隠せずに問うた。黒の王に「戻ってきた」と言われる筋合いはないはずだ。

「そうだ。お前は『戻ってきた』。我が軍にな」
「馬鹿な事を言うな! 私は白の軍のシルバーナイトだぞ、敵に『戻る』ような場所なぞない!」

 威厳を保って答えたダークキングに、シルバーナイトは言葉をぶつけた。
 だが、ダークキングは低く笑うだけであった。
 彼女は不機嫌そうに問いただす。

「何がおかしい」
「そうかそうか。『忘れて』いるのだな。白の軍がそなたに何をしたのかを…」
「…なんだと!?」

 シルバーナイトが反論しかけた瞬間、ダークキングは彼女のすぐそばにまでやってきていた。あまりの出来事に彼女の背筋に恐怖が走る。
 そして、鼻同士が触れ合うかのような近さで、ダークキングは言った。彼女の目を見据えながら。

「では思い出させてやろう。さあ、目を見るのだ…!」
(いけない! この目を見ては…!)

 シルバーナイトはすぐさま危険を察知したが、その意志に反するようにダークキングの視線から目をそらすことができない。
 見れば見るほど、彼女は自分の意識がどこか遠くへ行ってしまうように感じた。
 落ちていく、どこまでも落ちていく。過去へ、過去へと…。

 シルバーナイトは見ていた。黒い肌をした女を。黒い肌は、黒の軍の者の特徴である。
 その女は裸に剥かれて、白の軍の兵士に両腕を掴まれて引きずられるように連行されていた。抵抗する気力が失せているのか、なすがままにされている。
 女は、目が痛くなるほどに燦燦と光あふれる場所へと連れて行かれた。そこで白の神官たちに引き渡される。神官は手早く女を後ろ手に拘束すると、髪を掴んで乱暴に上を向けさせた。

(ば、ばかなっ…!)

 シルバーナイトは驚愕した。その顔はまさに自分自身であった。肌の色こそ全く異なれど、彼女自身であることに間違いなかった。
 神官も女も、シルバーナイトのことは全く見えず、声も聞こえないようであった。シルバーナイトはもどかしくも、ただ様子を眺めていることしかできなかった。
 神官たちは、疲労と苦痛で顔を歪めている女の口に、むりやり漏斗のような器具を咥えさせた。女は嫌がってはいたが、頭の後ろを回して紐で漏斗を固定されてしまうと、腕が使えないのでどうすることもできない。

(何をする気だ?)

 シルバーナイトの疑問に答えるかのように、神官の一人が指示を下した。

「さあ、いつものように聖水を流し込むのだ。この女を『浄化』するのだ」

 別の神官が、水を湛えた壷を漏斗の上に持ち上げ、そしてゆっくりと傾けていく。
 周囲の光に晒されてきらきらと輝くその透明の液体は聖なる水であった。だがしかし、黒の軍の者には毒に等しいものである。

「ぐううううううううっっっ!!」

 女が苦痛に体をよじるが、周囲の者ががっしりと体を押さえて、上に向けさせた漏斗を決して横にはさせなかった。その間にも漏斗には聖水が次々と流され、そして女の意思に反して喉を通っていくその液体は、女の身を内から焼いていく。

(何てことを! やめろ、やめるんだ!)

 シルバーナイトは叫ぶが、神官たちには届かない。彼女には女の苦しみがわかる。なぜならその女は自分自身なのだから。無理に流し込まれた聖水による痛みも、嘔吐感も、全て自分のものとしてわかる。
 腹が膨れるほどに聖水が流し込まれると、口の器具が外された。女はもはや抵抗する気力も残っていないようだ。ただ力なく、地に伏していた。時折むせるような嗚咽の声が聞こえる。
 だが、神官たちはまだその手を止めなかった。

(そんな、まだする気なのか!)

 シルバーナイトの悲痛な叫びもむなしく、作業は続いた。今度は何も身にまとっていない尻を高く上げさせると、菊門に管を押し込む。そのおぞましさにシルバーナイトはうめいた。目をそらそうとしたが、そうすることはできなかった。
 そして管の先にはやはり漏斗が付いていて、先程と同じように聖水を湛えた壷を持った神官が控えている。

(まさかっ…!)

 シルバーナイトの意識を悪寒が包み込むのと同時に、一人の神官が言った。

「『浄化』を続けよ」

 だが、シルバーナイトの意志とは無関係に、その儀式は続いた。女の体には、本来入ることのない穴から聖水が次々と流し込まれていく。

「ぐぶぉおおおっっ! おおおぉぉっ! うぅぅぅっ!」

 女が獣じみた叫びを発する。それと同時に、体内を逆流してきた聖水が開いた口から溢れ出し、地面を汚す。そんな中でも、神官たちは機械的に聖水を流し込むことをやめない。
 やがて壷の中の聖水が空になると、神官は管を女から抜き取った。
 女は身を反らすようにして、両手で尻を覆った。乳房も、股間も全て露になってしまっているが、それ以上に、今の彼女には尻を覆うことが大事であった。その顔は恥辱にまみれ、体中が暑くもないのに汗まみれとなっていた。

(そんな…、何てことを…)

 その光景を見ていた、見せ付けられていたシルバーナイトも、もはや叫ぶ気力をなくしかけていた。あの女は自分自身ではないはずなのに、なのに自分自身が辱められているように感じていた。それも他ならぬ味方の手によって。
 女は必死に耐えていたが、女の体は流し込まれてきた異物を吐き出そうともがく。固く肛門を締め付けようとしても、どうしてもちょろり、ちょろりと水が流れ出す。その感覚が、女とシルバーナイトにさらなる恥辱を与えた。
 その様子を遠巻きに見ていた神官たちは再び集まってくると、女を這いつくばせるような姿勢にして、尻を高く上げさせた。腕を取り、尻を隠せなくもさせる。

(待て…、やめろ…)

 シルバーナイトは、神官たちが女に何をさせようとしているか理解した。それは、最も恥ずべきことである。女は必死にそうなるまいと堪えていたようだが、もはや限界に見える。
 光の空間に、神官の声が響き渡る。

「さあ、体内の闇を吐き出せ。『浄化』せよ。そして…」
(やめろ…、やめてくれ…)
「白の軍の一員となるのだ!」
(やめろおおおおおおおおおおおっっ!!)

 シルバーナイトの悲痛な叫びと同時に、女の尻穴から聖水が噴き出した。
 何もかも、全て流し去るかのように…。

 シルバーナイトは闇の中でうなだれていた。ただうなだれていた。既に拘束が解かれているのに気づかないほどに。両手を地につけ、涙を流してうなだれていた。

「思い出したか、お前の過去を」

 ダークキングが低く、闇によく通る声で言った。その声は、今のシルバーナイトには救いの声のようにすら感じられる。
 だが、彼女の中には誇りがあった。白の軍の精鋭として戦った矜持があった。
 シルバーナイトは、気を振り絞るようにして顔を上げ、ダークキングを睨みつけた。

「私は…、私はそんな幻影などに惑わされはしないっ…!」

 その言葉をダークキングは意外に思ったのか、ほうと言葉を漏らした。そして顎に手をやり、再びにやりと笑ってみせた。

「まあよい。あれが幻影だと言い張るのなら別に構わん」
「なんだと…?」
「いずれにせよ、お前は我が軍門に下るのだからな」

 そう言うなり、シルバーナイトは両手首を何かに掴まれた。それは信じられない力で彼女の体を持ち上げていく。さらには足首にも何かが絡みつき、空中で彼女の足を開かせようとする。
 咄嗟の出来事に、シルバーナイトはただ叫ぶことしかできなかった。

「な、なんだっ!?」
「知れたことよ。染まらぬのなら染め直すのみ。白を、黒にな…」

 クククと笑っているダークキングを前に、シルバーナイトは本能的な恐怖を覚えた。もう一度、あの屈辱を味あわされるのではないかと脅えた。
 だが、ダークキングのしていることは彼女の予想を越えるものであった。
 シルバーナイトの裸体に、さらに何かが巻きついていく。腿、腕、首、そして腹と…。生暖かく脈動するそれは、ぬめぬめと闇の中で黒光りしている。
 まるで蛇のようだと彼女は感じたが、そうではないと勘が告げる。だがそうしている間にも、それはずるずると彼女の体を這い回り、肌にねばねばとした跡をつけていく。

「ひっ…!」

 そしてそれは、遂には彼女の乳房に到達し、双乳をこね回すように動き始めた。その感覚にシルバーナイトはどういうわけか、ただの乙女のように小さく悲鳴を上げることしかできなかった。先程まで「体験した」ことが心に枷をかけてしまったかのようだ。
 彼女は、乳首の先がそれに「吸われている」のを感じた。それは本来は嫌悪感を催すはずなのに、なぜか甘く痺れてしまう。

「うあ…あっ…」

 宿敵の前で罵りでも悲鳴でもなく、甘い声を思わず漏らしてしまったことに、シルバーナイトは深く恥じた。だがその恥じる感情も、なぜか心地よく感じられてしまう。
 体中にまとわりつくそれが与えるものも、いつも間にかおぞましさから快感へと変わっていた。にゅるにゅると動かれるのが気持ちいい、もっとしてもらいたい。
 だが、最後の理性が快感に流されることを拒んだ。シルバーナイトが首を強く左右に振って、ダークキングをきっと見据えた。

「おのれっ、何をするか…! 離せっ!」
「ほう、いいのか? これからが本番だというのに…」
「なっ…むぐうっ!」

 反論しようとした矢先、彼女の口が何かに塞がれた。いや、ねじ込まれた。それは今まで味わったことのないものであった。かぐわしいほどに臭く、吐きたくなるほどに甘い。

(こんなもの、噛み切ってやる!)

 理性ではそう思った彼女であったが、

(でも、もっとしゃぶっていたい…)

 と感情がそれを邪魔をし、なかなか実行することができなかった。矛盾した感覚が矛盾した感情を引き起こし、それが彼女の思考をどんどんと奪っていった。
 シルバーナイトは、体が火照ったように熱くなっているのを感じた。頭もだんだんとぼうっとしてくる。毒が回っているのかもしれない、と思ったが、このままでもいいのかもしれない、と熱っぽい頭で今まででは考えもよらないことを思ってしまう。

「さあシルバーナイトよ。我の慈悲だ。とくと受けるがいい…」

 何をされるのだろう、とぼんやり考えていると、今まであえて避けていたかのように何の感触もなかった股間と臀部に、あの感触がつっ…と伝わってきた。さすがの彼女も、この刺激には頭と背筋が瞬時に冷えた。

(……!)

 そして彼女は知った。これは、これらは、ダークキングのペニスなのだと。自在に伸び、動き、拘束し、這い回り、何本も何本も彼女を責めさいなむこれら全てのものが、ダークキングの股間から伸びる性器なのだと。
 そして、股の間で蜜をたらしてまで、彼女自身がそれを望んでしまっていることを。
 シルバーナイトはじたばたと身をよじり、首を振った。だが体中に巻きついた触手のようなペニスは彼女を空中でがっちりと捕らえて離さず、彼女を逃がしはしてくれなかった。
 彼女の心を恐怖が包む。体を奪われることだけではない、快感で心まで奪われてしまうことへの恐怖が。
 だがダークキングは、そんな彼女に無情にも最後の宣告をした。

「さあいくぞ。快楽の果てに、我への忠誠を誓うのだ!」

 次の瞬間、彼女の下半身には2つの触手が突き刺さっていた。
 目を見開き、強張った表情をしたのもつかの間、すぐにシルバーナイトの全身から闘気が失せた。きっと結んでいたはずの目尻が下がり、抵抗をしていたはずの手足もされるがままに、進んで優しく宿敵の物を握りさえしていた。
 体を貫かれた彼女は、すでに心まで融かされていた。

「むぐぅ、むっ、むふぅっ、ううっ…」

 口から漏れるのも苦悶の響きではない。彼女は悦んでいた。心の底から悦んでいた。
 性器でも尻穴でも口でも暴れ回る触手が愛しかった。的確に胸の先をいじり、へそをくすぐり、腰を撫で回すその動きが心地良かった。手の平に伝わる雄々しい脈動が誇らしかった。

(ああ、すごい…。こんなにかき回されて、前も、後ろも、気持ちいい! 口の中が、らめぇ、このままじゃ、奴のなすがままに…されたいっ…! もっと、気持ちよくなりたい! 気持ちよくしたい! してさしあげたい!)

 シルバーナイトの心の中に、服従の心が沸き起こった。快感を与えてくれる者に対する、当然の態度であるかのように。それほどまでに、彼女はダークキングの与える快楽の前に蕩けきっていた。自ら両手を動かし、両足で触手を挟んでしごき、舌どころか喉も使って奉仕する。その奉仕がさらなる快感となって、ダークキングから送り返されることに彼女は酔いしれていた。
 あの武人、シルバーナイトはもういなかった。

(ああ、もっとしてください。もっと、ああ、もっと…!)
「いい顔だ。我の下僕に相応しい顔だ。さあそろそろ仕上げに入るぞ」
(こうしていただけるなら下僕になります。だから、だから!)

 そして、彼女の体にまとわりつく触手が、一斉に硬さを帯びた。突然の感覚に、シルバーナイトはびくりと痙攣させた。

「受け取れ!」

 ダークキングの叫びと共に、全ての触手の先端から黒い液体が発した。

「んんんんっっっーーーーー!!」

 びゅくん、びゅくんと何度も降り注いだそのどろっとした粘液は、彼女の膣を、体内を、口内を、肌を汚し、黒く染めていく。
 そして身体だけでなく、心も黒く染まっていく。黒の王に仕えるに相応しい心に…。その証拠として、彼女の純白だった肌は徐々に、確実に黒く変化していった。
 それを見届けたダークキングは、触手をするすると集めて戻し、彼女を地に下ろした。シルバーナイトは荒く呼吸をしたまま動くことができなかったが、やがて自らの力で起き上がった。
 少しおぼつかない足取りでダークキングの前にやってくると、その場にひざまずき、王の足に口付け、舌を這わせた。そして、上目遣いで言う。

「ダークキング様、ありがとうございました。このシルバーナイト、ダークキング様のために命を賭して仕えさせていただきます」

 そう言ってシルバーナイトは微笑んだ。以前の彼女からは想像もつかない、妖艶な微笑みであった。
 もはや彼女にとって目の前の王は敵ではなかった。忠誠を誓う、素晴らしき王であった。
 彼女に熱い視線を送られているダークキングが、彼女の頭に手を置いて言う。

「そうか。ではその忠誠の証し、見せてもらおうか」
「なんなりと」
「あの兵士を、手駒にしてみせろ」

 そう言ってダークキングが指差したその先には、兵士が一人いた。彼女の目前で敵兵の槍に倒れたあの兵士である。シルバーナイトと同じように全裸で、後ろ手に拘束されて座らされている。
 そして実は今までのこの光景を見せられていたのであろう、彼の性器が硬く立っているのが見受けられた。シルバーナイトは、内心くすりと笑って、ぺろりと舌を動かした。

「お命じのままに。そこでご覧下さい」

 シルバーナイトは一礼すると、兵士の下に歩み寄った。その動きは武人ではなく、まるで娼婦のように蠱惑的であった。

「シ、シルバーナイトさま…」

 兵士が震える声で言う。信じられないのであろう、彼女が変わってしまったことを。敵の言うがままになっているのを。
 だが、ダークキングの言うがままになること自体が、今のシルバーナイトにとっては当然のことなのである。
 シルバーナイトは腰に手を当てると、座ったまま動けずに震えている兵士を見下ろしながら言った。

「ふふっ…、私が怖いのかしら…?」

 さらにシルバーナイトは、すっと黒くも美しい足を前に出すと、兵士のペニスをそっと踏みつけるようにした。本来なら屈辱的な行為であるはずだが、兵士は抗議するどころか困惑し、そして軽くぐっぐっと押さえつけられる度に喜悦の表情すら見せ始めていた。
 彼女の背筋を嗜虐の快感が走る。シルバーナイトは満足げに微笑んでいった。

「こんなことされて喜んでるなんて…、そんなに私と…し・た・い・の?」

 その声はあまりにも魅惑的であった。黒い肌を手に入れたシルバーナイトの体はより艶を増し、体全体が相手の欲情をかきたてさせる要素となっていた。

 兵士は口をぱくぱくとさせていたが、やがて、

「…はい」

 こくりとうなずいた。
 シルバーナイトは、流し目を返事代わりに送ると、腰を下ろして兵士の体にしなだれかかった。形のいい胸が、自らの体重に圧されてその形を変えていく。

「いいわ、好きなだけさせてあげる…」

 しなやかな指が、兵士の性器に絡みつく。それだけで、兵士はたまらず白濁液を出してしまう。
 情けない顔をして何か言おうとした兵士の唇を、シルバーナイトの唇が塞ぐ。ねっとりとした交接が唇同士で行われた後、彼女は鼻を触れ合わせながら、蕩けるような声で言った。

「うふふ…、何度でも出させてあげる…。何度も、何度でも…」

 彼女は兵士を地に仰向けに寝かせると、その体を跨いで膝立ちになった。兵士の視線には、欲情に満ちた笑みも、吸い付きたくなる胸も、どろどろに濡れぼそっている秘所も、全て露になっていた。
 シルバーナイトはその秘所を、あえて指で割り開きながら言った。

「好きなだけ出していいのよ…、ここに…。したかったんでしょう? 私と…」

 シルバーナイトはゆっくりと腰を下ろしていった。兵士の雄の先端が彼女の雌の部分に徐々に吸い込まれていく。

「だから、堕ちなさい。白い液を全て吐き出して、闇に堕ちなさい…!」
「うあ…っ!」

 彼女は自分の中に白い精が吐き出されたのを感じた。
 でもまだだ。まだ足りない。こんなものでは堕ちやしない。
 彼女は容赦なく腰をくねらせ、動かし、兵士の精を搾り取っていく。

「いいでしょう? 私の中は。だから、忠誠をお誓いなさい。ダークキング様に忠誠を誓えば…」
「ああっ、う…っ! ダーク、キングさま…ばんざい…!」
「そう、そうよ。好きなだけ抱いてあげる…。あんっ、さあ、もっと出して…。ああ…」

 兵士の上で体を上下にゆするシルバーナイトの膣内に精が流し込まれる度に、兵士の瞳がどんよりと曇っていく。その顔は欲情に緩み、意志のかけらも見当たらなくなっていった。
 そしてシルバーナイトも、ダークキングの下僕として堕ちていった…。

 白の軍勢は劣勢であった。堅牢を誇った囲いも破られ、自陣は既に壊滅的な状況であった。『光の宝玉』を近くで守っていたゴールドナイトも倒され、その姿は既にない。
 宝玉を手にした白の巫女は、必死に中原を逃げていたが、敵軍の兵に次々と行く手を阻まれては別に方向に逃げることを繰り返していた。
 だが、その逃走劇も終わりの時がやってきた。巫女の斜め後ろに、不意に敵兵が現れたのである。
 巫女は驚いて振り返った。そして、その顔を見て驚きに目を見開く。

「シルバーナイト…」

 白の軍の守護者であったシルバーナイト。だが今は漆黒の鎧に身を包み、心から堕落した敵の尖兵であった。
 シルバーナイトは邪悪な笑みを浮かべて、かつての主君に剣を向ける。

「『光の宝玉』は我らが王、ダークキング様がいただこう。巫女よ」
「シルバーナイト…。どうやら私たちの負けのようですね…」
「そういうことだ」

 諦めたように静かに話し出す巫女に、シルバーナイトは剣を向けたまま答えた。
 巫女はそっと宝玉を抱きかかえ、そしてシルバーナイトの目を見て言った。

「ですが、この戦いはここで終わろうとも、また戦いが起こるでしょう。その時は、あなたとは味方として会いたいものです…」
「言いたいことは、それだけか」

 今のシルバーナイトに、巫女の言うことはただの戯言にしか聞こえなかった。何の感情も見せず、彼女は巫女にゆっくりと歩み寄っていく。
 返事はなかった。返事の代わりに、巫女はすっと目を閉じた。
 シルバーナイトは、剣の切っ先を天に向かって上げた。そして………

「…ここに銀打ちで王手、と。いや、これはもう詰みじゃのう、熊さん」
「あいたたた…。ご、ご隠居ぉ、ま、待った!」
「熊さんや、待ったはなしだと最初に言ったじゃろう」
「そんなぁ。こう負けっぱなしではあっしも…、よし、ご隠居もう一勝負!」
「懲りない人だねぇ。まあ付き合ってあげるとしますかの…」
「そうこなくっちゃ! さあさあご隠居、今度こそはあっしが…」

< 本当はエロかった将棋 完 >

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