番外編2 騎士と閻魔のR&R(前編)
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
単調な電子音によって、僕はいつものように、眠りの世界から引きずり出される。
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
身体は、少し重い。
そういや、昨日は寝るのが少し遅かった。
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
今年になって買った2980円の機械に急かされ、僕は布団から手を、
寒ぅっ!?
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
ぴぴぴぴ。
でも、うるせぇ。
思わぬ外気温にひるんだところで、機械音がうるさいのには変わりない。
そのまま思いっきり腕を伸ばして、
かちっ、と音を止めたところで、やっと思い出した。
あ、今日、土曜だ。
番外編2 騎士と閻魔のR&R(前編)
「おはよー」
誰もいないと思いつつ挨拶すると、やっぱり誰もいなかった。
――今日も仕事か、大変だな。
昨日のうちに聞いて知っていて今更ながらそう思う。
父さんも母さんも、8時過ぎれば既に仕事に出ている。
最近は景気が良くなってきたとかで結構忙しいらしい。
それでも夜は遅くないから、別に寂しいわけではないけど。
下らないことを考えつつ、さっさと台所で朝ご飯をこしらえる。
目玉焼き、トースト2枚にチーズとハム、んで冷蔵庫にはヨーグルト。
ヨーグルトは母さんだが、このくらいの準備なら10分もせずにできる。
テレビをつけると、もう9時を過ぎていた。
目が細長いおじさんの司会を聞きつつ、さっさと食事を口の中に放り込む。
15分くらいで食事をしたあとに歯を磨いて、顔も洗う。
次は、部屋に戻って布団の片付けだ。
片付けといっても、シーツを整えるだけだけど。
それが終わったら、自分の部屋に掃除機を掛ける。
自称「吸引力の変わらない掃除機」は、轟音をまき散らしながら部屋を闊歩していく。
丁寧に5分くらいもすると、部屋が大体綺麗になった気がする。
あ、そうだ、今日はリビングも掃除しとこう。
と思って1階に降りて、洋室のリビングも掃除機の餌食にする。
時間があるから、ついでにビデオデッキも整理。
うっわ、ぐっちゃぐちゃ。もうちょっと片付けてくれよ、と今ここにいない両親に愚痴る。
……あ、そうだ、念のためカーテンも閉めておくか。
残り20分になって、部屋に戻って着替える。
今日は寒いからセーターだな。
ああそうだ。
着替えてすぐに思い立ち、リビングの暖房をオンにする。
よし、OK。
ここ最近はほとんど「お約束」になった、土曜日専用の日課。
残り15分を切ったあたりで完了して、家を出る。
さて、今日も楽しみだな。
よろこんでくれるかな。
15分もあれば、1日の予定をもう一回おさらいできる。
そしてそんなことをしていれば、あっという間に駅前に着く。
5分前。高架駅の下で待つのは9時57分着、下りの電車。
時計とにらめっこをしながら、ホームのアナウンスが聞こえて、高架が揺れる。
独特のモーター音が響いて、高架を走り去る音が轟く。
それに合わせて、乗客がぞろぞろと、改札をくぐり抜けて。
その中で、僕のお目当ては、もちろんただ一人。
「よ」
と右手を挙げて、僕のところに駆け寄ってきたのは、僕の愛すべきお姫様、小田島 都ちゃんである。
「よ」
と挨拶を返す僕の目が、都ちゃんの姿を上から舐める。
相変わらず化粧気のない、それでも十分に可愛い顔。恋人になってから初めて見る上着は白のダッフルコート。これはきっと買ったばっかりだろう。中は黒いシャツ、多分身体の線が出るような。ああこりゃ間違いなく流さんの見立てだな。肩にはグリーンのショルダーバッグ、これはいつも通り。そして……
「ゴメン、寒くてさ」
僕が突っ込む前に、都ちゃんが弁解する。
都ちゃんはジーンズを履いてきていたのだった。
いつぞやに都ちゃんが僕のモノになったとき、僕は都ちゃんを女の子らしくするため、デートにジーンズを履いてくるのを禁止した。そのことを都ちゃんは覚えていたのだろう。
えー? と、とりあえず不満を表明する。もちろん冗談。
「だ、だって寒いんだぞっ! お前スカート履いたことないからわからねーだろうけどっ」
「でも、ストッキングとかそれなりに暖かいんじゃないの?」
「無茶言うな! あたしがそんなの履いたこと無いことぐらい知ってんだろっ! 持ってねーって!」
と、顔を真っ赤にする都ちゃん。
うーん、楽しい。やっぱり都ちゃんは遊びがいがある。
「まーいいや、今日はしょうがないし」
「……むぅ」
あっさり切り上げると、都ちゃんは遊ばれていたことに気づいたのか、ちょっぴりむくれた仕草をする。
あーもう、かわいいなぁ。
せっかくだから、耳元で追い打ちを掛ける。
「でも、家の中で履くの禁止。玄関で脱ぐこと」
「――――――っ!!!!!!」
僕がそう言った途端、都ちゃんは僕を睨みつける。そしてすぐに耐えられなくなって目をそらし、顔を真っ赤っかにする。
か、かわええ……
1週間に何度も見るその仕草を、それでも飽きずに、また何度でも見たくなる。
都ちゃんは都ちゃんで、とっくに慣れててもおかしくないのに、それでも僕の恋人的セクハラに顔を赤くする。
「バカップルーっ」
頭の奥で響いた「閻魔」の言葉に、弁解の余地はどこにもなかった。
都ちゃんの左手を握って、いつものように家にエスコートする。
さすがの都ちゃんも、このくらいは全く抵抗しなくなった。
冷え切った都ちゃんの手を暖めるように、優しく手を添えて、大通りから左に曲がる。
「そういや都ちゃん、見たいって言ってた映画あったでしょ? あれ、借りてきたよ」
「え、ほんと?」
「うん、レンタルショップ行ったらあってさ、ほらあそこの」
「へぇ」
「だから、見よ?」
「ん」
こく、とうなずいた都ちゃんの顔が、自然にほころんだ、ように見える。
その顔を見るだけで嬉しくなるのは、やっぱり都ちゃんが僕の彼女だからなのだろう。
そして、僕が何か企んでるかも、とかいうことは考えそうにないところも、やっぱり都ちゃんだ。
都ちゃんの2歩後に家の中に入って、がちゃっ、と後ろ手で鍵を閉める。
都ちゃんはさっさとスニーカーを脱いで、玄関を上がる。
こういうところで、見るごとに遠慮が無くなっていくのは、彼氏としては嬉しい。
「いい?」という無言の合図に僕がうなずくと、都ちゃんはコートを脱いで、玄関のハンガーに掛ける。
やっぱり。下に着ていたシャツは、都ちゃんの身体のラインをバッチリ映し出していた。
つきあい始めに比べて明らかに一回り大きくなった乳房、一回り細くなった腰。
都ちゃんが大人のオンナに近づいている気がして、胸が少し熱くなる。
そして……一転して、僕を恥ずかしそうにちらっと見て。
「……だめ?」
「ダメ」
今さらの仲なのに、こんなところで恥ずかしがる都ちゃんは、不思議なほど初々しい。
……都ちゃんやめなその顔。もっとイジめたくなるから。
とは、絶対に口に出して言わない一言だ。
「寒いのにっ……」
口を尖らせながら、それでも都ちゃんはジーンズのボタンを外し、ゆっくりとファスナーを下ろしていく。それも、わざわざ僕の方を向いて。
――本当は、見られたいくせに――
自分で気づいてないあたりが真性マゾだよな、とちらっと思う。
元々、都ちゃんがマゾだと見抜いていたのは流さんだ。最初の時も、「都ちゃんは絶対マゾだからー、都ちゃんが嫌がらない程度にいじめてあげなよー」とぬかしてたし。
まさかここまでドMになるとは思わなかったけども。
僕がそんなことを考えてるとは気づかない都ちゃんは、そのままジーンズを下ろす。
綺麗な脚と、ライトグリーンのショーツが露わになる。
その美しさに自分の股間が熱くなるのを感じながら、僕も靴を脱ぐ。
都ちゃんは何も言わずに、ジーンズを僕に差し出す。
さすが、僕のモノ。意思疎通はバッチリだ。
ジーンズを受け取った勢いで、都ちゃんと唇を合わせた。
ちゅっ。ぷちゅっ。
僕が舌をねじ込むと、都ちゃんがそれに応じて僕の舌を舐めにくる。
その感触がこそばゆくて、さらに激しく舌を絡めていく。
と同時に、両手で都ちゃんの尻たぶをつかみ上げる。
「ふぅっ」
都ちゃんから出る、あえぎ声ともつかない音。
都ちゃんのおしりは小さめで、そしてとても柔らかい。
……そろそろかな。
口を離す。
離して一瞬、都ちゃんの動きが名残惜しそうに止まり、
少し太めのまゆ。可愛いまつげに、瞳はうっすらと湿って。
化粧の臭いが全然しない肌はすべすべで、ほんの少しのニキビ跡。
唇だけがリップでほんのり赤い。
そんな姿を目に焼き付けて、
「ラストカードは私に」
魔法の言葉を唱えた瞬間、都ちゃんの顔から全ての表情が消え去った。
半分閉じかけていた瞳は急速に焦点を失い、恍惚とした表情は呆然とした抜け殻に変わる。
腕は積極的な力を失い、動きを止める。
…………ぞくぞくぞくっ…………
いつものこと。いつものことながら、この瞬間には寒気のような恍惚感を感じざるを得ない。
都ちゃんが人間としての尊厳を「強制的に」奪われ、生殺与奪の権利を僕の手に預ける、この瞬間。
都ちゃんが本当の意味で「モノ」になる、この瞬間。
生ける人形と化した都ちゃんに、もう一度キスをする。
さっきと違って、都ちゃんの口は全く反応を返さない。
――このまま犯してやりたい。
凶悪な欲望に襲われる。
でも、今から始めちゃったら、ビデオはゆっくり見られないし。
都ちゃんも楽しみにしてたので、ここは我慢。
さて、と……。
借りてきた映画は、ガンアクションがメインの洋画だ。
僕は洋画はあんまり見ないんだけど、CMで何度か見覚えがある。
始まって20分ぐらいは、主人公が颯爽と登場して、黙々と情報収集をしているシーンが続く。
「涼、ポーカーってこんなん?」
「ん? 賭けるタイプは多分。コールとかよく知らないけど」
「ふぅん……」
どうでもいい会話を振ってくる都ちゃんは、僕の隣に座って、概して画面に見入ってる。
さすがに下半身ショーツ1枚なのも慣れたらしい。
そのうち、主人公の元に、今回のヒロインである女性が登場する。
「……」
「どう見てもヒロイン」が登場してから、都ちゃんの様子にほんの少しずつ変化が訪れる。
多分それは、事前に知ってなければ分からない変化で。
事前に知っていた僕は、すぐに分かった変化だった。
「…………」
都ちゃんはさっきと違って無駄口を叩くことすらなく、画面に見入って……魅入られている。
今の都ちゃんは、主人公とヒロインとの会話を、「自然に」僕と都ちゃんとの会話にオーバーラップさせているはずだ。
思春期の男の限界というか、都ちゃんにはちょっと悪いとは思ったけど、やっぱり獲物を目の前にして2時間も我慢するのは考えるだけで拷問だった。
そこで、都ちゃんには普通に映画を楽しんでもらう代わりに、僕はその都ちゃんを見て楽しむことにしたのだった。
ヒロインとの冷静で激しい探り合い(エロい意味じゃなくてピリピリした会話だ、念のため)を終わらせた主人公は、襲撃を受けてホテルの高階から脱出する。
その様子を隠れて見ていた敵のエージェントは、だだだだ!だだだだ! と銃声を鳴り響かせ……その瞬間、都ちゃんの身体がぴくん、と反応する。
催眠に囚われた都ちゃんは、銃声のような爆撃音に、身体の敏感なところを突かれるような刺激を感じている。
それも激しいやつじゃなくて、2時間かけてゆっくり、都ちゃんの理性を蕩かしていくような。
もちろん、映画を楽しみにしてた都ちゃんのために、「最後まで映画を集中して観られる」、とまで条件付けて。
「鬼畜ー」
うるさい。
お前に言われたくない、と頭の内で反発する。
本人の前で口に出したらボコられそうだけど。
映画も中盤の盛り上がりどころにさしかかると、主人公とヒロインはどんどん近しくなり、ついに一晩を明かすことになる。
これはポルノ映画じゃないから「そのシーン」はないけれど、翌朝のシーンを観た都ちゃんはなかなか凄かった。
ベッドの上でシーツ1枚のヒロインを観るや否や、「はふぅ」と溜息をついて、顔をとろけさせたのだ。
あー、きっとコトが終わったあとの自分を思い出してるんだろうな。
そう思うと、ちょっと嬉しい。
都ちゃんには悪いことに、このあとはしばらく、ひたすらにガンアクションだった。
だだだだだだだだん!
マシンガンの音に合わせて、僕の隣にある都ちゃんの身体はぴく、ぴくぴく、と断続的に震えるようになった。
いつの間にか左手の指を口にくわえて、右手はしきりに僕の手を握ったり開いたりしている。手のひらはもう汗でじっとりだ。
都ちゃんの身体が何をして欲しいかは丸わかりなんだけど、それでも目は映画に集中している。
そのうち。
都ちゃんが僕の手を離したと思ったら、都ちゃんはゆっくりと、自分の脚を持ち上げる。
そのまま脚をソファーに載せて(右足は完全に僕の上に乗ってるんだけど、都ちゃんは気にする様子もない)、ゆぅっくりと、膝を開いていく。
あ。
「したかったら、オナニーしても良いよ?」
催眠をかけたときの一言を思い出す。予定になかったのに思わず言ってしまった一言。
右手が太ももの内側をなでつつ、そろそろと小さい布の部分に近づいていく。
その部分は、生地が水分を吸い込んで、完全にモスグリーンになっていた。
あ、ソファーまで濡れてる。
目をテレビに釘付けにしたまま、都ちゃんの右手は微妙なせめぎ合いを繰り返す。
そして。
どかーん。
「っ!!」
タイミングよく、画面は爆音を放ち。
都ちゃんの身体は一層大きく震え。
その瞬間、右手は最後の砦を失ったかのように、股間に押しつけられた。
「く、ふぅあぁっ!」
びくん。
都ちゃんは、自らが作り出した快感に犯され、おとがいを反らす。
目を画面に釘付けにしたまま、器用に快感をむさぼり出す。
テレビ画面に目を戻すと、ついに、ヒロインが主人公側に寝返った。
今までどっちつかずな行動をしていたヒロインは、意を決して主人公の側についたようだった。
ガンアクターとアクトレスが揃った戦場は、完全に二人の「愛の舞台」となって、何百といる敵が次々となぎ倒されていく。
相変わらず鳴り響く銃声に合わせて、都ちゃんの自慰行為もエスカレートしていった。
すっかり濡れそぼった部分に、都ちゃんがショーツの上から親指を押しつける。
「ふぅぅっ」
と艶めかしい溜息。
都ちゃんの目は画面に焦点をしっかり結びつつ、それ以外は完全にメスに堕ちている。
火照った顔に半開きの口、今にも垂れ出しそうな涎。胸は都ちゃんの左手が揉み掴んでるし、股間は大洪水。
腰をかく、かくっ、と振って右手指を迎える姿を見て、
――あー、都ちゃんも痴女が板に付いたなあ。
などとアホなことを考えてしまう。
……そんなアホなことを考えたくなるくらい、都ちゃんの姿がいやらしいのだ。
都ちゃんは本当に僕と同い年なんだろうか。
いや、こんなのにしたのは僕だけど。
「あ……あぅ……ぁぅ……」
映画もラストシーンに近くなると、都ちゃんの行為も少し落ち着いてきて、余韻を味わう感じになってくる。
とは言っても、イッてはいないはずだ。僕がイカせないようにしたから。
今、都ちゃんの身体の中には、(都ちゃんは気づいてないけど)快感のマグマがぐつぐつ煮えたぎってるはず。
都ちゃんは2時間かけて、身体の中に火薬をため込んだのだ。
最後のシーンが終わり、テロップが流れる。
「へぅぅ……」
満足そうに目を閉じる都ちゃん。
お疲れ様。
でも、本番はこれからだよ?
僕が2時間我慢した獲物は、自分でも知らないうちにぐつぐつぐつぐつ煮込まれて、調理完成の一歩手前。
最後の一手間をかければ、都ちゃんは美味しい料理になって、僕の目の前にその姿をさらすのだ。
そうなったら、僕が骨の髄まで食べ尽くしてあげる。
僕はライオンか。ハンターか。飢えたオオカミか。
自分でも分からぬまま押さえ込んでいた強烈な衝動が、
今、
押し倒す、
「都ちゃん」
「んあっ!?」
心の奥まで蝕む、
ちゅっ。
「んぅっ!!! んんんんんんんんんんんんん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
びくん! びくんっ! びくんっっ!!! と背中を反らして、都ちゃんは一気に絶頂を迎える。
「んんんんんふぁああっ!!! あああああっ!!!! うああああぁっぁぁぁぁぁあああ!!!! あああああああああああああああいくいくいぐいぐいぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!」
唇が僕の口から離れた瞬間、今度は高らかに陥落の叫びを放つ。
そのまま数秒。
都ちゃんはブリッジ体勢のまま、ソファーから転げ落ちた。
「うわっ! ちょ、都ちゃんっ!?」
都ちゃんをソファーと机の間から引っ張り出す。
とりあえず窓際に。
アクシデントに慌てたけど、頭はとっさに僕が抱えたから大丈夫なはず。
そう思っていると、
「涼ぉ……」
都ちゃんの声がする。
「ん?」
「……おま○こぉ……」
やっぱりだ、このお痴女さま。
「足りない?」
こくこく。
身体にほとんど力が入らないはずなのに、必死でうなずく都ちゃん。
まあ当然そうだと思ってはいた。都ちゃんは僕が挿入れないと満足しない。これは今までの経験からわかることだ。
僕だってもう限界。股間がギンギンに張っている。
急いでスラックスとトランクスを下ろし、続いて都ちゃんのショーツだった布きれを取り去る。
布きれはもう、腰の部分まで染みてドロドロだった。
自分の肉棒を都ちゃんのおま○こにくっつける。くちゅ、と音がして、都ちゃんが腰をくねらせる。
……まだだ。もう一回、イジめたい。
「……欲しい?」
聞かずもがなのことを、都ちゃんに問う。
「……犯してよぉ……」
泣きそうな声で都ちゃんが答える。
……やっぱ無理。
ぐちゅぅぅぅぅぅ。
「ひいいいぃぃぁぁぁあああああっ!!!」
入った瞬間、都ちゃんのそこは僕をきゅうっ、と食い締めた。
よっぽど待ちこがれていたらしい、などと考えるまでもなく、いきなり射精の衝動に駆られて何とかやり過ごす。
「ああぁぁぁぁ…………もっとぉ……もっとおぉ……」
一方の都ちゃんは一瞬の我慢もできないようで、自分から腰を振ってきた。
かくん、かくんと動く腰を見て、……その動きに合わせて、僕の腰を打ち付ける。
「うぐあぁぁあぁっ!!」
一発目で咆哮をあげて、都ちゃんの全身ごと、おま○こが痙攣する。と同時に、僕の肉棒から精液を吸い出そうとして、きゅぅっと収縮する。
ま……だまだっ!
「…………かはぁっ! らめぇ! おま○こ、もっとぉ! もっとしてぇ……!!」
またすぐに求め出す都ちゃん。
多分、もう記憶回路はショートしてるはず、と自分の限界を感じ取りながら思う。
腰の導管がぜん動を始めて、僕はラストスパートをかける。
ぱん! ぱん! ぱん! ぱんっ!!!!
「ああああああああああ!!! あああああああああああ!!!!! ああああああああああああああああっっっ!!!!!!」
出るっ!
最後の一撃を、ねじ込んだ。
びゅっ! びゅぅっ!!
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「きもひ……よかったぁ……」
すぅぅぅぅぅぅぅぅ。
都ちゃんは、最後の一言を残して、眠りに入る。これもいつものことだ。
多分、気絶したんじゃなくて、寝てるんだろう、と僕は勝手に思っている。
必ず一言残していくのはわざとだろうか。「気絶じゃないよ」というアピールかもしれない。
冷静に戻った僕は、独特のけだるい余韻に浸りながら、次の行動を考える。
動かない身体に鞭を打って、まずテレビとDVDプレーヤーの電源を落とす。
それからティッシュの箱を引き寄せて、都ちゃんのお掃除、と。
特に、上半身の服に精液がかかっていないかを確認する。
汗でじっとり濡れているのは……まあ許容範囲だと思っとこう。
ふと思い出してソファーを見ると、こちらも相当ビチャビチャなので、こちらはウエットティッシュでぬぐってから空布巾だ。
そういえば夢の中にいる都ちゃんに掛けるものがないので、押し入れからタオルケットを引っ張り出して都ちゃんに掛けておく。
……しまった。都ちゃんの下フローリングじゃん。都ちゃん身体痛くしないかな。
そんな、自分でも殊勝と思えるようなことを考えつつ。もう一方では、相変わらず鬼畜な自分に、ほんの少しだけぞっとする。
よほどのことじゃない限り、都ちゃんは悦んでくれる。
それも、これまでの経験から読み取ったことだ。
都ちゃんが本気で怒ったのは、外に連れ回したあの一回だけ。
それでも、自分でも抑えきれないドSぶりには、うんざりするというか、呆れるというか。
もし、僕が都ちゃんに振られたら、僕の性癖はどうなってしまうんだろう。
今のところはあり得ないであろう(と思いたい)仮定を考えつつ、僕は昼ご飯の準備に取りかかったのだった。
「鬼畜ぅっ」
開口一番がそれだった。
「あ、おはよう」
「おはようじゃないやいっ」
と毒を吐くそぶりを見せつつ、ぶちぶち文句を続ける。
「大体おかしいと思ったんだよ、涼がいきなり映画見ようって。
絶対いきなりやられると思ったのにっ」
ん?
それはとっととやって欲しかったってことか?
と思わず聞くと、
「ううぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
と真っ赤になって(しかも上目遣いで)唸ってくる。
ああもう可愛いぞあいかわらず、と思いながら
「映画くらい静かに観させろっ!」
と怒鳴られて、「ちゃんと見られたでしょ。面白かった?」とニヤつきながら返してやる。
かなりイジワルだけど、都ちゃんはこういう返しが好きなのだ。それは僕が一番よく知っている。
都ちゃんは「鬼畜っ!」ともう一回叫んだあと、数秒してやっと質問の答えを返してきたのだった。
「……楽しかった」
うん、よかった。
< つづく >