誘う女 第0、1話

第0話 狩る男

 世の中には、男を誘っているとしか思えない女がいる。

 俺は、正午過ぎの大通りをぶらついていた。ターミナル駅の近くだ。梅雨時だが、今日は太陽がぎらぎらと照りつけている。
 大学はサボった。今日の講義は出席点が付かないやつばっかりだし、面白くない。それに、今日はやりたいことがあった。「獲物」が欲しかったのだ。

 簡単に言えば、ムラムラしていた。

 「獲物」といっても、ナンパするわけじゃない。別に女と話せないわけじゃないが、面倒くさいからやらない。俺には特殊な能力があるから、それを使った方が早い。

 俺の特殊能力、それは――「獲物」に決めた女を自由に犯す能力だった。

 正面から女が歩いてくる。外回りなのか、スーツ姿だ。遠くから見ても顔立ちが整っている。おまけに長身でスタイルもいい。
 俺は一瞬、じろりと女をなめ回すように見る。そして――

 やり過ごした。

 俺の能力は、一旦「獲物」としてロックオンさえできれば、これまで失敗したことはない。ただ、女を「獲物」にするには、一つだけ、条件があった。

 それは、「女が男を誘っている」行為をしていること――だ。

 「行為」は何でもいい。一番わかりやすいのは服装だが、態度や、仕草でも、場合によっては醸し出す雰囲気だけでもいい。また、それは俺に向けてのものでなくてもいい。もっと言えば、俺から「男を誘っているように見え」さえすればいい。例えば、女がパンチラしていれば、本人が気づいていなくてもいい。その「隙」に付け入って、女を犯すのだ。

 しかし逆に言えば、俺が能力を使うには、そういった女の「隙」が必須だった。今の女は間違いなく魅力的だったが、「隙」がなかった。スカート丈も短くなかったし、後ろからも見たが、尻の形もはっきりとは見えない。俺の能力の強さはその時の性欲に比例するので、もっと性欲が強ければどれかを「隙」にできることもあるが、今日の俺はそこまで飢えてはいない。

 「獲物」にできない女をいくら眺めても仕方がないので、俺は別の女を捜すことにした。

第1話 修学旅行の女

 しばらく歩いていると、向こう側に制服姿の少女が3人歩いてきた。
 この時間帯に――と一瞬思ったが、素朴な雰囲気と、荷物が少ないところを見るに、修学旅行生のようだ。
 俺は真ん中の少女に目をつけた。夏服を着たその少女は、垢抜けているとは言えないがかわいらしい顔つきをしている。大人の階段を上り始めた、といった年齢の子だ。髪は肩に届くかどうかと言ったところで、黒々とした地毛だ。
 肉付きは悪くない。下半身には膝丈ちょうどくらいのチェックスカートに紺のハイソックスを身につけており、健康的な白い足が僅かに覗いている。
 上半身は学生らしい白の半袖ワイシャツ。首元にリボンやネクタイといったものはなく、簡素な印象を受ける。そして、
(よし)
 少女の胸に、ブラジャーが透けて見えた。少女の年齢と成長に見合った、フルカップで純白のブラジャーだ。どうやら、ブラウスも着ずに、ワイシャツの下に直接ブラジャーをつけているようだ。おかげで、くびれ始めたお腹のラインも、ワイシャツ越しにはっきりと見て取れる。
 まあ、今日は蒸し暑いから仕方がないかもしれないが――その格好は、俺にとって明らかな「隙」だった。

 俺は頭の中で、「ストーリー」を組み立てる。これは、「獲物」を犯す際の簡単な手順を描くものだ。ストーリーは、「獲物の隙を利用する」ところから始めなければならないが、そこさえクリアすれば、それ以降は好きなようにできる。予定変更はできるが、ストーリーを組み立てると獲物がその通りに動いてくれるので、話が早くなる。
 今日はさっさと終わらせたい気分だったので、それを踏まえてストーリーを組む。ストーリーは、見たことのあるAVやエロ漫画から寄せ集めて作れるので、基本的なものなら、慣れてしまえば1秒とかからない。

 ストーリーが組み上がったのを確認し、俺は少女を見る。少女は両隣の友達としゃべるのに夢中で、俺には全く気づいていないが、問題ない。

 ぐっ、と目に力を入れて、能力を発動する。その瞬間に、俺と少女を除いて、周りの景色がセピア色に染まった。

 突然、周りの景色が――友達も――セピア色になったけれど、私は驚かなかった。
 ふと、立ち止まって左を向くと、男の人が立っていた。多分、大学生くらい。容姿は可もなく不可もなく、目を逸らしたらあっという間にその顔を忘れてしまいそうな、そんな人だった。

 私は、この人を誘惑して、この人に犯されるんだ。

 当然のように、そう思った。

 朝には一瞬だけ気になったけれど、それからは今まで気にもしなかった透けブラ。しかし今は、その透けブラと、その奥にある小さな膨らみが、目の前にいる男の人の目を楽しませることを完全に理解していた。
 セピア色の友人達は、道をどんどん進んでいく。でも、友人達は私を気にも留めなかったし、私も気にしなかった。

 私は少し前屈みになって、男の人に向けてのぞき込むような体勢になる。ワイシャツ越しだし谷間もないけど、精一杯おっぱいを強調するには、これしかない。そう思っていると、男の人がニタリ、と笑う。アピール成功したみたい。
 そう思った途端、私のあそこが急激に熱くなる。エッチなことなんかしたこともないけど、あそこが濡れるのは知っている。だから、もうすぐそうなるんだろうと思った。

 気がつくと、男の人がゆっくり近づいてきた。
「動かないで」
 と一言残して、男の人はするりと後ろに回る。特徴のない声だった。独特の空気が鼻をかすめる。デオドラントの匂いに混じって、クラスの男子からも感じる、男の匂いがした。
 男の人は、私の脇の下から両手を差し入れて、おっぱいにゆっくり手を伸ばす。余裕のある手つきで、シャツの上から私の両胸をそっと揉んだ。
「はぁんっ」
 私の口から、聞いたこともないような声が出る。私の胸はまだ小さいので、手のひらというよりは指先で揉まれた感じ。それでも頭に突き抜ける刺激があった。その刺激はほとんど「単なる刺激」だと思ったんだけど、それが「エッチな快感」であるということは、すぐに分かった。だって、すぐに乳首が固くなってきたから。
「Aカップ?」
「うん。もうすぐBだけど……はんっ」
 男の人からの質問に答える。男の人はおっぱいを強くつかんだけど、なんでか全然痛くなかった。今朝ブラをつけたときは、おっぱいに固い芯が入っているような感じがしたのに、今はすごく柔らかいみたい。かわりに、乳首がカッチカチになってくる。それに、
(あそこ、濡れてる……)
 熱くなったあそこから、ぬるぬるがあふれてくるのも感じる。おっぱいを揉まれて1分も経ってないのに、パンツがぐしょぐしょになってるのが分かる。
 別に、変だとは思わなかった。こういうもんなんだ、と思った。

「おっぱい見せて」
 後ろから声がかかって、男の人は手を引き抜く。私はくるりと向き直って、ワイシャツのボタンを上から外していった。
 ワイシャツを脱ぎ捨てて、男の人を見つめながら、もう一度前屈みになる。手を後ろに回して、パチン、とブラのホックを外すと、あたしのおっぱいと、完全に固くなった乳首が、男の人の前にさらされた。
 私の裸の上半身が、太陽光に照らされる。もちろん、手でなんて隠さない。
男の人の目が、「隠すな」と言っていた。

「パンツも脱いでよ。あ、スカートはいいや」
 私はスカートの中に手を入れて、パンツに手をかける。にちゃ、とした感触を残して、パンツが離れていく。靴下とローファーをくぐり抜け、私の白いパンツは投げ捨てられた。クロッチは濡れているというより、ビチャビチャという感じだった。

 私がパンツを捨てたのを見計らって、男の人はまた、私の後ろに回る。今度は左手をあたしの乳首に、右手をスカートの中に回した。
「はうっ!」
 乳首をつままれて、あそこを擦られた。腰が抜けそうになった。
 そして、その途端、あたしのおなかの中が熱くなった。さっきとは違う。数秒後、お腹の中に何かが――おちんちんが欲しいんだって理解する。
「あっ! ひあっ! あっ! あそこ、あそこがいいっ」
 男の人が乳首を、あそこを擦るたび、びちゃっ、びちゃっ、とぬるぬるが出てくるのが分かる。そのたび、どんどんあそこが開いてくる。おちんちんが欲しくなる。初めて感じた「飢え」の感覚は、私のオンナの本能が刺激されてる気がして、とても心地よかった。あそこを初めて触られたとか、そういったことは、本気でどうでもよかった。
「あ、あっ! あうっ!!」
 ほんの少し後、私は耐えられなくなって、腰が砕けた。
 そのまま、歩道に四つん這いになる。アスファルトの上だったけど、別に膝も手も痛くはなかった。今さらだけど、周りを見るといろんな人たちが道を行き来している。でも、誰も私達の姿を気にしていない。

 カチャカチャ、と音がする。見なくても、男の人がスラックスを脱いでいる音だと分かる。首だけ振り返ると、男の人はトランクスも脱ぎ捨て、大きくなったおちんちんを露出させていた。

 お父さん以外のおちんちんを見たのは初めてだけれど、何も怖くない。
 それがあたしを犯すのも知っていたけれど、当たり前だと思った。
 とっても、欲しかった。

 男の人があたしに覆い被さって、すぐにあたしのあそこにおちんちんが入ってきた。
「あっ、イク!」
 びくん! として、私の頭が真っ白になる。と思ったら、真っ白になっている私と、それを見ている少し冷静な私がいるのに気づいた。これがイクってことなんだって、そこでやっと理解した。何で「イク」って言葉が口をついたかは、全然分からなかったけど。
 真っ白な私は、背中をのけぞらせて、道の人達に小さいおっぱいと乳首を見せつけるような格好になっている。冷静な私は、処女膜が破れた、と思っていた。痛くはなかった。すごく気持ちよかった。
「イクッ! またイクッ! ああああああっっ!!」
 男の人が動くたび、私はイッた。おちんちんは大きくてたくましくて、私はさらに真っ白になっていく。あ、またイク。
「あ、あ、ああああっ! あああああああっ!!!」
 イク。イク。イク。気持ちいい。気持ちいい。気持ちいい。
「出すよ」
 男の人が無感動に言う。私は少し寂しかった。出されたら、そこで終わりだから。
「出して、出して、こわれる、こわれる、こわれちゃうううっ! …………イッくうううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!」
 あそこの中で、何かが出される感覚がある。そこで初めて、避妊されなかったことに気づいた。

 自分だけ身支度を調え、能力を解除する。
 少女の着衣や姿勢は自動的に元に戻り、棒立ちになっていたが、友達がいなくなっているのに気づいて、慌てた様子で走り出した。
 もちろん、少女にセピア色の世界での記憶はない。セピア色の世界から戻ってくると、大体の状態は能力発動前に戻っている。もっとも、全部元通りではなく、何か影響が残っていることが多い。現に、走り出した少女は、しきりに股間を気にしていた。
 俺はそれを確認して、きびすを返す。行きずりの「元」獲物には興味がなかった。二度と会うこともないだろう。
(腹減ったな……)
 そう言えば、まだ昼飯を食ってない。
 それに気づいた俺は、駅の地下にあるショッピングモールを目指し、歩を進めたのだった。

< 続く >

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