3日目・??4 灼熱
「愛ちゃん」
改めて千晶に、後ろから抱きつかれた。
そのまま、千晶の手が、わたしのお腹に伸びる。すりすりとさすられた。
未だに膝立ちで身動きの取れないわたしは、千晶の言葉責めに、耐えるしかない。
今、ここには、わたしと千晶だけが残っていた。ミリアは、千晶と何かひそひそと話し込んだ後に、「私は先に、こっちの二人に用があるから」と言って、マコトと叶を連れてどこかに消えてしまった。
「ふふふ」
「千晶ぃ……」
「さっきも言ったでしょ? 愛ちゃんが自分を女の子って認めたら、してあげる」
「わたし、……女なんかじゃないっ!」
その言葉に、千晶の手が一瞬止まった。
どうしても、どうしても千晶の言葉を受け入れることはできない。
「……ふぅん、そうなんだ」
千晶はなぜか、思わせぶりな言葉をつぶやいた。
(――あれ?)
ふと、血の気が引いていくような、嫌な予感が、胸を襲う。
正体は分からないけど、何か、決定的な過ちを犯してしまったような、そんな予感だった。
「愛ちゃん、じゃあ代わりに、あたしにして欲しいな」
千晶はわたしの背中から離れて、代わりに右腕をとった。千晶に触られることで、どうしても動かせなかったわたしの両腕はあっけなく、だらりと下に下ろされた。
辛うじて動く首を右に回すと、千晶が右腕にすがりつくのが見える。
ぷに、と千晶の谷間が右腕に押しつけられる。つやのある肌に包まれた肉の鞠が心地よく変形した。
相変わらずわたしの意思では身体が動かせないのを理解しているのか、千晶は身体を調節し、わたしの指のうえに、ちょうど股間を乗せた。指先に伝わる感触は、水着の上からでもわかるほど、熱く湿っていた。
「して」
その言葉を聞いて、わたしはおそるおそる、指を動かす。果たしてわたしの指はちゃんと動いて、そこをゆっくり撫でる。
「あん、きもちいいっ」
それだけで感極まったように、千晶は啼く。指先に、じわぁっと、さらなる液体が溢れてくるのを感じた。
「ミリアさんに聞いたんだけど、あたしの身体、あっ、エッチなことがたくさんできるようになったんだってぇっ」
千晶はそんなことを言いながら、全身をわたしの右腕にこすりつける。なぜか少し挑発するような目で、わたしを見つめていた。
私の身体を、冷たい電流が奔る。
「…………そんな、千晶、」
「あたし、もともとエッチなこと大好きだったから、ん、すごくうれしい」
「やめて千晶。子宮で考えないで」
「子宮でなんて考えてないよ、頭で考えてるよ。気持ちよくなりたいって」
わたしの説得にも耳を貸さず、わたしの指の動きに合わせて、腰をくねらせる。だけど、しばらくすると、
「やっぱり足んない、ちょっと待って」
そう言ってわたしから離れる。何をするかと思ったら、千晶はスリングショットの肩紐を下ろした。
すぐにFカップのおっぱいが露わになる。続いて股間の布が、千晶の身体からゆっくりと離れていく。
千晶のマンコからは糸が引き、やがてぷつんと切れた。
「やっぱり直接の方がいいや」
全身の肌が紅潮し、両乳首は極限まで勃起し、マンコからは汁をあふれ出させ。
しかし、自らの発情を余すところなくさらけ出しているにもかかわらず、千晶は悪びれることなく、舌を出して笑っている。
目がキラキラしていた。
「淫乱……」
私の口から、思わず言葉が漏れた。その二文字を体現したような、千晶の姿だった。
「うん、あたし淫乱だよ。知ってたでしょ?」
くすっ、と千晶がからかう。
もちろん、知っていた。千晶自身も、なかなか口にはしなかっただけで、前からその自覚はあったはず。
でも、今の千晶は、自分の淫乱さを真正面から受け入れて、武器にしている。千晶がいやらしくなったのは、決して体つきだけじゃない。目の前の千晶は、別人ではないかもしれないけど、でもやっぱり、これまでの千晶とは違うイキモノになっている。
「あたし、サキュバスになれて良かった」
真紅の尻尾をぶんぶんと――たぶん、自分の意思で動かせるのだろう――揺らしながら、わたしの右腕に再び腕を絡め、全身を預けてくる。腕にはローションの被害がほとんどないので、直に素肌を感じる。千晶の肌は、まるでむきたてのゆで卵のようにすべすべで、そして何より、燃えるように熱い。
「アソコ、いじめて……」
その声に魅入られるように、わたしは千晶のマンコに指を這わせた。
「あくぅっ」
千晶の肢体が大げさに仰け反り、わたしの指先がぬかるみに填まる。
どろり、とわたしの手に液体が流れ落ちる。指が千晶の膣に入ったのだと気付いた。
「あぁぁぁぁ……っ」
千晶の表情が歓喜に歪み、全身をくねらせた。それほどまでに、マンコの快楽は強いらしい……
(ぁうっ!)
しまった。
わたしにもマンコがあることを思い出してしまって、その途端、ガソリンに引火するように、全神経が炎に包まれた。
わたしのマンコはとっくに蕩けきり、パンツの中で、刺激を与えられるのを待ち望んでいる。
「愛ちゃんも、アソコいじって欲しいんでしょ?」
「うぅ……っ!」
図星をつかれ、思わず歯を食いしばる。しかし、それを見透かされたのか、千晶に追い打ちをかけられた。
「ねえ愛ちゃん、愛ちゃんのおっぱいがこんな風になったら、気持ちいいよ?」
千晶はわたしの右腕から少しだけ身体を起こし、千晶の両手を自らのおっぱいに近づけた。そのまま両手で双球を包み込み、ゆっくりと揉む。
「あんっ」
(!?)
千晶が快楽に目を閉じ、きゅっ、と千晶のマンコが収縮するのが、指に伝わる。
どきん、と、わたしの心臓が跳ね上がった。
今さら理解した。千晶は痴態をわたしに見せることで、わたしの思考を刺激して、女に堕とそうとしているんだ。
胸の鼓動が早くなる。ドキドキする。息が上がる。頭がぼうっとする。
見ちゃダメ。
でも、そうわかっても、顔が千晶から逸らせない。千晶の肢体から、目を逸らす気にはならない。
魅了――
その二文字が、ふと頭に浮かぶ。サキュバスだったら、そんな能力もあったりするのかもしれない。
もしそうなら、今のわたしはきっと、とっても危ない状態で。
それなのに。
それがサキュバスの能力なのか、そのサキュバスが、わたしのよく知る千晶だからなのかは、分からないけど。
千晶に魅了されつつある自分自身に、得体の知れない心地よさを感じるわたしが、頭の片隅にいて。
「愛ちゃんの乳首は、お豆さんみたいになったんでしょ? だったら、こうしたら、どうかなあ」
千晶は、おっぱいを揉む手から人差し指と中指を伸ばし、それで千晶の乳首を軽く挟んだ。
そして、くりくりっ、と乳首を転がす。「ゃぁん」って、微かなあえぎ声が上がる。
(あぁぁ……っ)
それイく。そんなことしたら絶対イッちゃう。
「普通の乳首だって、こんなに気持ちいいのに……お豆さんでやったら、どうなっちゃうんだろ」
「…………うぁぁぁぁぁっ……」
うめくような声が、喉から迸った。胎内をくすぶる、いやらしい熱がひときわ強くなって、わたしを苦しめる。
わたしを女の世界に誘い込もうとしているのが分かっているのに、その言葉で、正気が消し飛ばされそうになった。
気持ちよくなりたかった。イキたかった。快楽に溺れたかった。他のことが全部、どうでもよくなりそうだった。
「はぁぁっ……」
熱い、熱い吐息が、わたしの口から漏れる。胸がどきどきして、トキメキが止まらない。そんなわたしを余所に、千晶は目を閉じて、自分の快楽を堪能し始めた。指に伝わるマンコのぜん動だけで、わたしに語りかける。
『あたしみたいに、気持ちよくなりたくない?』って。
思わず、視線がわたしの身体に向いた。
ピンク色の可愛いベビードールに包まれたわたしのおっぱいも、快楽に飢えて、触られるのを今か今かと待っている。乳首は今にも破裂しそうなくらい大きくなって、クリトリスと同じ感度になったせいなのか、さっきよりも格段にいやらしく見えて。
そしてなにより、泣き叫ぶ子宮の訴えに、思考が引っ張られていって。
(オナニーしたい)
はっきりとした形で、わたしの脳がその思いに染まり始めた。
わたしのおっぱいを触りたい。擦りたい。乳首を、乳首を転がしたい。
「やん、だめぇっ……!」
わたしは声を上げて、わたし自身を戒める。ふるふる、と頭を振った。
今さら、首から上はちゃんと動くんだ、と思った。
「ふふ、愛ちゃん、やっぱりもう、すっかり女の子だね」
はっとした。
「ち、違うっ……」
「違わないよ。今の『だめ』って言い方、誰が聞いても女の子の言葉だって思う」
「…………っ!」
言われて気づいた。
言われるまで気づかなかった。
それは、全く無意識に出た言葉だった。
でも、あのときの声は、自分自身でも、まるっきり女の子としか思えない。
「そんなぁ……あっ」
「ほら、今のも」
言われるまでも無かった。そして、気づいてしまった。
わたしが犯していた、過ちの正体を。
わたしがさっきから、どんな言葉を発していたのかを。
やっぱりわたしは、根本的に間違っていた。
前に感じた、「メスにされる」というのとは、やっぱり全然違う。だけど、今のわたしがされたことは、予想していたものとも、全く違っている。
(「女になる」って、こういう意味だったの……!?)
サキュバスという言葉につられて、わたしはいやらしいことにばかり、気を張りすぎていた。
いつの間にか、もっと基本的な――言葉や仕草、そして思考が、女にされてしまうなんて、思っていなかったのだ。
「い、やぁぁぁ……っ」
思わず上がってしまった悲鳴も、やっぱり女のもの。
わたしの知らないところで、わたしが「女になっていく」ということがとても怖くて。
だけど、その恐怖感が、だんだんと弱まっていくのも、頭の片隅で感じている。
(やだぁ……っ)
それは、わたしが本当に、女になってきているから。
女になってしまえば、「女にされる」怖さが、分からなくなってしまうから。
「あ、あぶない」
千晶が自分の手を止めて、わたしから離れた。千晶のマンコから指が抜けて、ぬるぬるになった指に空気が触れ、少しすうっとする。
「また興奮し過ぎちゃうところだった」
千晶は照れ笑いをした。そう、千晶は身体を密着したまんまだと、興奮し過ぎちゃうのだ。やっぱりこの子は本当に千晶なんだ、と今さら思った。
わたしから離れた千晶は、わたしの正面、目と鼻の先に、わたしと同じように膝立ちになった。
「愛ちゃんが女の子になったかどうか、確かめてあげる」
そういうと、千晶は両手を頭の後ろに組んで、おっぱいを突き出した。ちょうど、さっきまでわたしがそうさせられていたように。
「あたしのおっぱいか、愛ちゃんのおっぱいか、どっちかだけ、触っていいよ、愛ちゃんの両手で」
次の瞬間、わたしの両腕が、見えない戒めから解放されたのを感じた。
「愛ちゃんが女の子じゃないなら、どっちをさわるか、分かるよね?」
口角を上げる、あまり千晶らしくない笑み。
その数十センチ下で、むき出しのままのFカップと、完全勃起した乳首が、わたしに向けてアピールしている。
(千晶のおっぱい、さわりたい)
ふわふわと、わたしの中を欲求が漂う。
千晶のおっぱいは大きくて、綺麗で、肌がすべすべしていて、ちょっと触るだけでも、手が幸せになってしまいそうな形をしてる。
この果実をぎゅっと摘めば、きっと千晶は、激しく啼くだろう。もしかしたら、あっという間に絶頂を迎えて、いやらしいイキ顔を見せてくれるかもしれない。
(……けど)
わたしが本当に求めていることが、今、はっきりと分かってしまった。
千晶のおっぱいは確かに魅力的なのだけれど、でもその欲求は、わたしの中に渦巻いている激しい情欲に比べれば、本当に小さいものでしかなかったのだ。
「……」
わたしは、茫然とした。
全身の力が抜けるような感覚。そこにあるのは、不安でも、恐怖でも、絶望でもない。
(やっぱり……オナニーしたい。わたしのおっぱい触りたい。……イキたいっ)
女としての欲求不満と、興奮。そして、諦めだった。
もう、抗いきることはできなかった。
だって、わたしの心の中に、男という核心が、確信が、なくなっていたことに気づいてしまったから。
男「だった」、とは素直に思えるのに、今も男なんだ、とは、わたしの心がうなずいてくれなくなっていたから。
「っ!!」
気づいたときには、わたしは仰け反っていた。
わたしの両手が、わたしのおっぱいを包んで、乳首を優しく、一回だけ擦る。
「……ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっっ!!!!!!!!」
うめき声のような音が漏れて、目の前が真っ暗になった。
イッていた。
あまりにも激しすぎて、最初、気持ちいいかどうか分からなかった。ただ、爆発するような感覚だけがあった。
「あ゛っ、あ゛お゛っ」
それでも、わたしの指だけが辛うじて動いて、両胸にできたわたしのクリトリスをなで続けていた。
それだけで、わたしの身体は何度も絶頂を迎えた。
(き、もち、いい……)
そしてだんだん、そのクラクラする感覚が「気持ちいい」ということなのだと、わたしの脳が理解するようになってきていた。
わたしは、乳首オナニーで、イキまくっているのだ。
バチバチバチ、と頭の中で火花が飛び続ける。
「あっあっあっあっあっぁっぁぁぁぁっ」
声がやっと普通に出るようになって、わたしはいやらしい声を目一杯響かせていた。二つのクリトリスはとても敏感で、ちょっと強く触るだけで、わたしの頭が真っ白になる。
(はげし、すぎる……のに……っ)
苦痛に限りなく近い快楽は、それでもやっぱり気持ちよくて、止める気が起こらない。わたしは両胸のクリトリスを、また擦り上げようとして……
(そういえば……)
さっき千晶がやっていたことが、脳裏によぎった。
ふと魔が差した。わたしは両手の人差し指と中指を伸ばし、頂をそれぞれ挟む。
そして、ひねる。
「あイクっっっっっ!!!!!!」
わたしの腰が前後に揺れ、身体が勝手にマンコを突き上げながら、わたしはイッた。だけどそれだけでは飽き足らなくて、わたしはくりくりと、両方のクリトリスをいじめ続ける。
「きもちいいよぉ……っ」
泣きそうになった。わたしの身体、なんて気持ちいいんだろう。さっきまで我慢してたの、ばかみたい。
あれ、なんでわたし、我慢しようとしてたんだっけ。……ああ、マンコも熱い。でもわたしの両腕は上半身で忙しくて、マンコに回す指がない。手が足りない。
そうだ、千晶にしてもらえないかな、と思って、目を開いた。
目に入った。
わたしがすがるまでもなく、千晶が立ち上がって、わたしにゆっくりと近づいてきていた。
そして、千晶の胸の谷間が、わたしの目に映った。
「……いやああああああっ!!」
快楽に蕩けた考えが一瞬で吹き飛んで、わたしの本能が甲高い悲鳴を上げた。
下半身がガタガタと震え出す。腰が抜けそう。
「や、やめて、千晶っ!」
「あはは、すっごい、リアクションさっきと全然違う」
わたしの拒絶にも、千晶は余裕のある表情を浮かべていた。
「せっかく、気持ちよくなる匂い嗅がせてあげようと思ったのに」
「やだぁっ!!」
「えー、そんなにいや?」
「やだ! 絶対いやっ!!」
とにかく、とにかく嫌だった。
千晶の胸の谷間から漂う香りは、本当に甘くて。
わたしの頭の中が、蕩け堕ちてしまうくらいに、甘くて。
千晶の香りを嗅いだわたしは、千晶になすがままにされるしかなくなって。
あんなわたしは、もはや、人間じゃない。きっと、ヒトの形をした肉人形か、肉奴隷と呼んだ方がふさわしい。
それなのに。
「でもね」
千晶は、不敵に笑う。やっぱり、千晶らしくない笑みだった。
「もう『覚えちゃってる』んだ、愛ちゃんの頭が」
つんつん、と千晶が自分の頭をつつく。
それは図星で、わたしは言葉を失った。
そう。
わたしの脳が、子宮が、身体が、完全に覚えてしまっていた。
「サキュバスの匂いって、瞬間的な依存性が強いんだって。
一回だけでも吸い込んだら、数日は気持ちよさが忘れられなくなるって、ミリアさんが言ってた」
わたしの目の前が一瞬、真っ暗になった。
「愛ちゃんはもう、二回も吸っちゃったよね」
わたしを見下すように、千晶は事実を口にした。
もう、言い訳もできなかった。
わたしの右手が、いつの間にか、ヘソの下を触っている。
あの匂いのことを考えるだけで、わたしの子宮が、キュン、と啼き声を上げている。
とっくにぐちゃぐちゃになったマンコが、さらにマン汁をとめどなく溢れさせていく。
「愛ちゃん」
一転して、優しい声だった。
「ちゃんとおねだりしたら、もう一回、匂い嗅がせてあげるよ?」
悪魔のように優しい声で、千晶はわたしを誘った。
(ああ……わたし……)
嫌なのに。
ダメなのに。
わたしの脳の片一方が拒絶しようとしているのに、もう片一方では、必死に、おねだりの言葉を考えてしまう。
どう言ったら、千晶の許しをもらえるだろう。
わたしをどういう風に貶めれば、千晶は歓んでくれるだろう。
考えたくないのに、わたし自身の溢れる思いを、止めることができない。
(だめ……ホントにだめ……っ)
わたし自身に訴える。いや、それはもう祈りに近かった。
思いつかないで。千晶が納得するようなおねだり、思いつかないで。
だけど。
無駄なのは分かっていた。
だって、おねだりにお誂え向きの事実が、今のわたしにあるから。
それを幹にして、わたしの降伏宣言は、不幸にもまとまっていく。
「ゎ、わ……」
「うん」
喉、からからで。
胸、どきどきで。
「わたし、は、」
わたしの欲求に、もう抗えないことを認めた。
「わたしは、愛は、女にされて、いやらしいことしか、気持ちよくなることしか、考えられないから――ご、ご主人様の匂いを、もう一度、ぜひわたしに、嗅がせてください……」
さぁっと、血の気が引いていくのを感じる。
(言っちゃった……)
もう、取り返しはつかないかもしれない。
わたしにご主人様と呼ばれた千晶は、一瞬、目を見開いていた。
そして、ほんの少しの静寂の後、口角を吊り上げ、目を一際輝かせた。
「百点……ううん、百五十点かな。今の、あたしもゾクッてした」
どきん。
笑顔に、嗜虐的な色を載せて。その表情に、わたしもときめいてしまう。
「じゃあ、嗅いでいいよ」
そしてご主人様は、わたしの後頭部を両手で持って、胸の谷間に優しく、わたしの顔を押し当てた。
許しをもらったわたしは、とまどうことなく、思いきり、息を吸い込んで。
わたしの頭の中一面を、埋め尽くさんばかりの桜吹雪が舞って。
(あ、あ……)
どんなに頑張っても動かなかった身体から、急激に力が抜けていく気がしたのを最後に、わたしの意識は途切れた。
< つづく >