もったいない魔王 第二幕 その1

第二幕 その1

 カンディスが修道院と七人のシスターを手中に納め、禁欲生活に豪勢な決別をしてからすでに半日がたった。その間カンディスは、クレア達の肉体を間断無く味わい続けていた。本当なら、このまま後七日七晩続けることが出来るがその前にクレア達全員がダウンしてしまったのだ。

 いくらカンディスの精液に肉体を賦活させる効果があるといっても、限界がある。人間には食事や睡眠が必要不可欠だし、連続する快楽は精神を磨耗させる。
「ミーシャをまるで妊娠しているように見えるほど、腸内射精をすると言う約束を守れなかったのは残念だが・・・それは我輩のせいではないし、また機会はあるのだから、良しとするか」

 そういいながら、カンディスは空腹を紛らわせる事しか出来ない味気ない硬いパンをかじり、井戸水でそれを胃に流し込んだ。
 これはもちろんカンディスの食事だが、いくら清貧を美徳とするクロス教の修道院と言えどこんなわびしい食事を主となったカンディスに進んで出しはしない。これはカンディスが自ら望んだメニューなのだ。

「我輩は下手に栄養のあるものを摂取してしまうと、せっかく消費した魔力の回復スピードが飛躍的に上がってしまうからな。・・・女の生気以外は出来るだけ食事を取らん方がいいんだが、難儀な事に受肉した肉体では腹に何か入れないと落ち着かんからな」
 色々苦労して手に入れた絶倫体質なのである。

「なんにしても、拠点と食事の元も手に入れたことだし、これで腰を落ち着ける事が出来るってもんっスね」
 主人よりも少しだけ豪華な食事・・・自分の体積以上の野菜スープを飲んでいるザジの、のんびりとした言葉に、しかしカンディスは首を横に振った。

「ザジよ、東洋の島国の漁法で、鵜飼と言うものがあるんだが知っているか? 飼い慣らした鵜と言う鳥に魚を採らせて、飼い主が後で腹の中の魚を吐き出させると言う漁法だ」
「知らないっすけど・・・なんでそんなマイナーな事知ってる癖に、基本的なこと知らないんですかい? ダンナは」

「それはともかく・・・我輩は我輩以外の兄弟姉妹達にとって・・・他の九十九のプレイヤー達にとって我輩はその鵜なのだ。
 ルールを思い出して考えてみるがいい」
「ルールって、魔界から部下を一匹しか連れて来れないのと・・・ポイントを手に入れるには知的生物を支配するか破滅させるか・・・ああ、そう言う事ですかい」

 ザジが察したのは、プレイヤーも支配するか破滅させればポイントになるのではないかと言う事だった。
 人間界で知的生物と言えば人間がまず頭に浮かぶが、ルールでは人間と明記されていないどころか人間界生まれのとも書かれていない。
 ただ人間界に存在している知的生物でいいのなら、たしかに人間界に受肉したプレイヤー自身も確かに知的生物の範疇に入る。

 その推測を肯定するように、プレイヤー同士の衝突を規制するルールは無い。

「奴らは我輩が稼いだ一ヶ月分のポイントごと、我輩を支配するか破滅させようとしている訳だ。・・・九十九人のプレイヤーの中には、戦いに向いている武闘派もいればその逆もいる。戦闘力で言えば、中級悪魔にも劣る者も中にはいる。しかし、その中の誰一人我輩より弱い者はおらんのだが」
「・・・事実でも情けねぇったらもう・・・・・・」
 心底情けなさそうに、ザジが嘆息した。

「プレイヤーの誰も彼もが我輩よりも強いこのゲームで、生き残るためには戦力を増強し密やかに動く事だ。幸な事に、手に入れた知的生物を駒にして戦わせてはならないというルールもないからな」
 カンディスの精液にブレンドされた魔力は注がれた人間の肉体を徐々に変異させる。だんだん悪魔に近くなっていき、最後には悪魔そのものになる。

 今のカンディスにとって女を犯すということは食事と魔力の消費、さらに女の悪魔化と一石三丁な行為なのだ。
「さて・・・新たなアイテムの製作でもしながら、次の女を捜そうか」

 そして一週間後、カンディスの姿は人ゴミの中にあった。
「さすがは都会だな。人間が際限なく群れておる」
 あの修道院から人の足で十日の距離にある、交易の拠点であるため栄えた大きな町だ。しかも今日は特に大きな市が建つ日なのでよけいに人も増えている。

 ちなみに、カンディスは普段体内に収納している翼を使ったので片道に半時もかからなかったが。
「で、何処から女を手に入れるんですかい? 旦那はこの七日間慎重に獲物を吟味してやしたが・・・やっぱり市にも顔を出すんで?」
 ザジがカンディスのマントの中から囁く。

 この町は交易の拠点の一つであるため人の出入りが激しく、もちろん人口も多い。そのため修道院を手に入れた時のように、『偽善者の聖典』で町ごと手に入れるといったことは不可能。その上、あまり派手なことをすればクロス教に目をつけられ悪魔祓いの専門家のデリバリーをくらってしまいかねない。

 そのためポイントが高そうかとか、容姿とか以外に手に入れた後の事までカンディスは考えなければならなかったのだ。おかげで、何人もの女をカンディスは諦めねばならなかった。
「その分市場で獲物を探すとしよう。・・・大きな隊商ではなく、個人で商売をしている行商人や作物を売りに来た農民なら、我輩が手に入れてもそう目立つまい。
 新しく作り出したアイテムで、存分に楽しませてもらおう」

 ちなみに、今回のカンディスは女に飢えてはいない。この七日間と言うもの、一日一回は修道院に必ず戻りクレアやランシャを犯していたからだ。なので、じっくりと楽しむ事が出来る訳だ。
「で、今回の珍アイテムはどんな効果があるで? なんか色々部屋に女と篭って作っていたようでやしたが」
「・・・まあ、見ていろ」
 カンディスはこの前使っていた『分析魔』と禍々しいデザインの燭台。『正直者の片眼鏡』によく似た片面が白、もう片面が黒に塗られた片眼鏡を取り出した。
「この燭台は『昼の傍観灯』は使えばこの燭台の半径十メートル内での出来事は、人の記憶にはまったく残らなくなる。・・・目の前で何が起きても、取るに足らない事にしか思えなくなるのだ。・・・無論、対象は選べる。
 この片眼鏡は『正直者の片眼鏡』を改良して作った『双子の片眼鏡』と言って、これの白い面を表にしてかけるとたちまち・・・」

 そう言いながら、カンディスは自分の横を歩いていた中年の男の頬を、突然軽くつねった。続いて耳を引っ張り髪を何本かまとめて引っこ抜く。
 突然のちゃちだがむかつく暴行を、驚いたことに中年男性は微笑みを浮かべて抵抗すらしようとしない。髪を抜かれたときはさすがに痛そうにしたが。

 この仏のような中年の胸倉を掴み上げながら、カンディスはなんと暴言を吐いた。
「これで貴様の見苦しい面も、少しはましになっただろう」
 ぶん殴られても仕方ないような一言だ。
「いやー、助かったよ」
 しかし中年の男はぶん殴るどころか礼を言って立ち去った。

「このように、使用者の行動や言動が善人の行いのように認識されるようになる」
「・・・つまり、白昼堂々強姦しようが何しようが、咎められるどころか相手に感謝されて周りからは尊敬されると。でも、何で試す相手が通りすがりのオヤジなんですかい?」
「似たような事は、『偽善者の聖典』で散々やったからな。・・・っと、そろそろ時間だな」

 その時カンディスのすぐ前を、二人組みでパトロールをしている役人が通り過ぎていった。二人の片方は珍しい事に女性だ。
 『セリカ・アンダーソン。成人して三年。両穴とも処女。正義感が強い』
 解説魔の情報に付け加えるなら、その正義感が強すぎて同僚の間でやや孤立気味である事。これはザジが調べ上げた事だ。

 何故ザジが調べたかと言うと、それはもちろんセリカがカンディスの獲物の一人だからだ。彼女は蜂蜜色の金髪を肩でそろえてスタイルも容姿も優れているが、役人と言う立場は面倒だ。しかし、幸いな事に彼女はエリートコースにいる訳でもなく、職場に親しい友人もいない。
 突然行方不明になった訳でもなく、辞職して町を出るのならそう目立たないだろう。

「この片眼鏡のもう一つの機能は、あのセリカで試してやろう」
 カンディスはセリカに素早く近づくと、彼女の腕を掴んでそのまま裏路地に引っ張り込んでいく。今だに『善人』のままのカンディスにセリカは抵抗しない。止めるべき同僚もニコニコ微笑みながら二人を見送るだけだ。
 そして、その記憶も『昼の傍観灯』によって頭の中には残らない。同僚の記憶にはカンディスの姿は無く、セリカとは何時の間にかはぐれた事になっていた。

「それで、私に何の用かしら」
 セリカは柔らかい微笑みを浮かべて、目の前の男を見つめた。ドクロのピアスに白い片眼鏡をかけた不審な人物だ。しかしこの男は、関心にも勤務中の自分を目的も言わずに路地裏に連れ込んだのだ。不審人物どころか、今時珍しい出来た人物だと言える。

「実は・・・おっと、忘れるところだった」
 男は片眼鏡をはずすと、表裏を反対にひっくり返してかけ直した。白い片眼鏡が、黒い片眼鏡になった。

 それを見た瞬間、セリカの中に男に対する不信感が芽生え、急速に成長してそれは確信に変わった。この男を野放しにしてはいけないと、彼女の正義感が警鐘を響かせる。
「もう一度訊くけれど・・・私に何の用なの?」
 自然、表情は硬くなり視線も鋭くなる。口調はすでに容疑者に対する物になっている。

「実は・・・我輩は貴女には何の用もない。裏路地に連れ込んだからといって、貴女に猥褻な行為も何もするつもりはない。貴女の尊厳を最大限尊重すると共に、自らの軽率な行動を謝罪しよう。
 つまらない事につき合わせ、本当に申し訳なかった」
 カンディスが、深く頭を下げる。その後頭部をセリカは険悪な眼差しで見つめた。

「・・・あなたは今、どれだけ不道徳な事を言ったのか理解しているの? 人を裏路地に連れ込んでおいて、猥褻な行為も何もせず、私の尊厳を尊重したばかりか謝罪するなんて・・・法律でこそ禁止されていないけれど、許されることじゃないわっ!」

 セリカは自分の中の燃える正義感の命じるままに、カンディスの胸倉を掴みあげた。しかし、カンディスはそれに動じるどころかそっぽを向いてしまう。
「しかし、そう言われても我輩にはこれ以上貴女を見るつもりも、触れるつもりもないので・・・」
「な、なんて奴なのっ!」

 セリカは目の前の男に、戦慄を覚えた。法に触れてこそいないものの、こんな巨悪を頬って置いたら将来何が起こるかわからない。この邪悪な行為をなんとしても止め、自分に猥褻な行為をさせ自分の尊厳を否定させなければ。
 思い立ったら即行動。セリカは一端カンディスの胸倉から手を離すと、間を置かず抱きついた。硬い革の制服の上からだが胸を押し付けるようにして。

 その行動にもかかわらず、カンディスは顔を逸らしたままでセリカを見ようともしない。
 こうなればなりふりなんて構っていられない。何が何でもこの男の悪行を止めなくては。
 セリカは急いで制服を脱ぎ始めた。

 制服を脱ぎだしたセリカの方に向きそうになる眼球を、どうにか押しとどめてカンディスはマントに向けて囁いていた。
「こういったように黒い面を表にしていると使用者のやる事も言う事も、全てが悪事のように受け取られるようになる。老人の荷物を持とうが、子供を助けようが全てが不道徳で悪辣な事だとしか思われない訳だ。
 一言で言うと、白とは真逆の効果がある」

「でも・・・それだと困りませんかい? いざ事に及ぼうとしても、それも悪事に感じられるんじゃあ・・・」
「その通り。ついでに言うと、悪事だからといって全ての人間が同じ反応を返すとは限らん。セリカのように止めさせようとする者がいれば、反対に怯えるばかりで何もしようとしない者もいるだろう。
 それらの問題をクリアーしていくのが、面白いのだ。トラブルやイレギュラーのない人生なぞ、退屈なだけだ」

 基本的にカンディスは貧乏性で合理主義だが、悪魔らしく混沌を好む所もある。どちらも程々が一番と言う主義なのだ。

 カンディスとザジが話している間に、セリカの準備は終わったようだ。下着姿になると、ややぎこちないもののカンディスの前でセクシーなポーズを取ってみせる。それでカンディスの目を自分に向けさせ、猥褻な行為をさせようとして誘っているのだろう。
 堅い仕事をしているセリカが普段から色っぽい下着を着けている訳は無いので、やや地味な下着だがそこはプロポーションでカバーするつもりらしい。

 性に関する体験が浅く知識も人から聞いただけのセリカがとった事を考えれば、充分色っぽいポーズなのだがカンディスは相変わらずそっぽを向いている。・・・いや、変化があった。カンディスがかけていた黒い片眼鏡をはずしたのだ。

 それが何を意味するのかセリカには解らなかった。解るのは、カンディスが相変わらず自分を猥褻な行為をしようとせず、触れもせず見ようともしないと言う悪事を継続中だということだけだ。

 セリカにカンディスの行動は理解できなかったが、その訳は単純明快。あの『双子の片眼鏡』をはずせば、いざカンディスが事に及んだ時もそれを悪事と認識されること無く、それどころかその反対に善行だと認識してくれる。だからはずしたのだ。

 『そろそろいただくか? ・・・いや、もう少し観察させてもらおう』
 そうカンディスがセリカの放置続行を決定している横で、セリカはどうしたらこの悪行を止めさせられるか考えていた。

 下着姿で誘ってみても、この男は見向きもしない。だとすればどうするか・・・。
 セリカ自身がカンディスに何かするのはもうできない。もう一度抱きついてしまっている。
 『私がこの男に猥褻な行為をしても、この男がしたわけじゃないからだめだわ。私がこの男に触れずに、この男から私に猥褻な行為をさせないと意味が無い・・・』

 いくらカンディスをその気にさせるためとは言え、セリカがカンディスに対して話に聞いたフェラやパイズリをする訳にはいかないし、逆レイプなんて論外だ。
 『いえ、手段はある。・・・やってみよう』
 かなり捨て身でしかもこの作戦が万が一効果なかったとき、正義と一緒に女としても失う物が大きいが正義を守るためには仕方が無いとセリカは作戦の実行を決定した。

 セリカは脱いだ制服と一緒に地面に置いておいた、木製の警棒を手に取った。
 『まさか実力行使っ!?』
 思わず一歩引きかけたカンディスの心配は、杞憂に終わったようだ。セリカは片手に警棒を持ったまま、ショーツに空いている方の手を入れて指を動かし始めた。

 次第にセリカの頬が紅潮して行き、その唇から喘ぎ声が漏れ始める。
「ねぇ、あなたはまだ私に何もするつもりはないのよね? それどころか触りもしないし、見るつもりもないのよね」
「もちろん」
 実際はセリカのオナニーを忍び見ているが、それは棚に上げておくことにする。

 そのカンディスの返事を聞きながら、セリカはショーツをずらして性器を露出させると、そこに警棒を擦りつけ始めた。無骨な警棒が、愛液に濡れてテラテラと光を反射する淫具になっていく。
 『・・・なんだ。ただ道具に使うだけか。脅かしおって』
 そうカンディスが胸を撫で下ろすのは、早計だったようだ。

 セリカは警棒の先を自らの膣口に当て、驚くべきことを言った。
「今から十数えた後、あたしはこの警棒で、処女膜を破るわ」
「なっ!?」
 ぎょっとして、思わず振り返ってしまうカンディス。

「・・・言っておくけど、んんぅ、これはあなたがあたしを無視し続けようがぁ、・・・関係ないわ。ただあたしが十数えてから、くぅぅっ、警棒相手に処女喪失する。それだけよ」
 不敵な微笑みを浮かべながら、セリカが軽く警棒を膣に出し入れする。クチュクチュと言う水音が、カンディスの唸り声と重なった。

 獲物の処女を、警棒に横取りされる淫魔。はっきり言って、聖職者に追っ払われて獲物を取り逃がす事の何倍も情けない。淫魔としてのアイデンティティ崩壊の危機だ。
 それも、どうでもいい獲物ではなく、セリカは数日かけて選別した獲物だ。それを棒っきれなんかに先を越される。カンディスにとっては、なんとしても避けなければならない事態だ。・・・そのためなら、獲物の脅迫に屈するなど些細なことだ。

「さーあ、数えるわよ。いーち・・・」
 カウントダウンがいよいよ始まり、カンディスは脅迫に屈することを選択した。
「お役人さん・・・我輩が間違っていました」
 と、涙ながらに謝罪するカンディス。嘘や演技の類はカンディスのプライドに爪の程の傷もつけないので、スラスラと言葉が出てくる。

「解ってくれたのっ!? ちゃんと私に猥褻の行為をして、私の尊厳を踏みにじるのねっ!?」
 彼女が正義の勝利に瞳を輝かせながら確認する。
「ええ。我輩・・・このカンディスが間違っていました。これから我輩は心を入れ替えて、貴女に・・・いや、お前に猥褻な行為を行い、尊厳を踏みにじってやる」
 大胆不敵な犯罪宣言だが正義の価値観(カンディスの行いに関する事限定)を変えられているセリカには、心を入れ替えこれからまじめに生きると言う真摯な真人間宣言にしか聞こえない。

 セリカはそれを聞いて、警棒を膣から抜くと地面に落とした。
「・・・なら、早速私に猥褻な行為をしなさい。もちろん、私の尊厳を踏みにじりながらね」
 言われるまでも無いと言うようにカンディスはまずセリカの制服から小型の手枷を取ると、それでセリカの両腕を後ろ手に拘束する。

「さてと、もうすっかり準備は整っているようだな。では・・・」
「待ちなさいっ!」
 早速処女を頂こうとするカンディスに、その処女当人から待ったがかかった。

「何なの、そのおざなりさは? あなた、本当に心を入れ替えるつもりがあるの?」
 路地裏で拘束してレイプするというだけでも充分に猥褻な行為だし、セリカの尊厳も踏みにじられるはずだがそれではセリカは不満なようだ。

「そこまで期待されては、応えねば我輩の名が廃ると言うもの。なら、徹底的にやってやろうではないか」
 そう言ってカンディスはセリカを地面に寝かせると、膝を立てさせて尻を高く突き上げさせた。愛液に濡れる性器と、菊を連想させる肛門が一度にカンディスの目に入る。

「・・・犬みたいに私を犯そうって言うのね。でも、これだけじゃあ生ぬるいわね」
「いやいや、これからさ」
 そう言いながら手に取るのは、セリカがついさっき落とした警棒だ。

 それを掴んで先をセリカがしていたように当てる。ただし、膣口ではなく肛門に。
「何を・・・っ!!!」
 セリカがカンディスの意図を察するより早く、警棒がグリグリと捻り込むようにして肛門に入り込んできたのだ。痛みと不快感と、ほんの少しの快感がセリカの肛門から頭まで駆け巡る。

「あっぐぅぅぅっ! いだぃぃぃっ!」
 そう悲鳴を上げながらもセリカの瞳には満足げな輝きがある。それは警棒の半ばが自らの肛門に潜り込み、カンディスが侮辱の言葉を吐いても変わらなかった。
「元々警棒相手に処女を喪失しようとしていたのだから、本望だろう? 肛門の処女だがな」

 セリカにとっての正義感は、カンディスが『双子の片眼鏡』使用していたときの影響を受けている。あくまでもカンディスの行動に関してのみだが。
 カンディスが自分に猥褻な行為をすればする程、自分の尊厳を貶めれば貶める程、セリカの正義感は満足を得ることができる。直接快感を得ている訳ではないが、擬似的なマゾヒストのような状態にセリカはある。

 尻尾のように肛門から警棒を生やしたセリカの尻を掴むと、カンディスは自分の腹に警棒が当たらないように体勢を整えつつ挿入の準備を進めた。
「うぅぅうぅっ、お、お尻に警棒がぁぁぁっ、こんなぁ・・・」
 セリカは苦しそうに喘ぎながらも、抵抗するような素振りも見せなかった。

 ズプリと、カンディスのペニスがとうとうセリカの膣に侵入し、そのままブツリと処女膜を突き破る。
「ひぎぃぃぃぃぃぃっ! いたぁぁぁっ!」
 背を弓なりに反らして、悲鳴を上げるセリカ。その彼女の熱い肉の締め付けを楽しみながら、カンディスは警棒に視点を合わせた。

 警棒はカンディスが腰を動かす度に、ビクビクと警棒が上下に動く。
「おやおや、悲鳴を上げている割にはご機嫌じゃないか。こんなにうれしそうに尻尾を振って」
 肛門に突き刺さっている警棒が動く様を犬が尻尾を振って喜んでいる様子に例えられて、セリカが目を僅かに細める。笑みの形に。

「私を犬扱いなんてっ、ぐぅぅうぅっ! なんていい人なのぉぉぉっ!」
 セリカはカンディスが改心した事を確信した。今までの人生で、セリカはここまでの辱めを受けた上に犬扱いをされた事は、一度たりとも無い。
 そこまでの事をこの男はしたのだ。この男の誠意は本物だ。

 もしセリカの両腕が自由であったら、そしてカンディスと向かい合っていたらこの瞬間カンディスを抱きしめてキスしたかもしれない。
「さ、自分で腰を振るメス犬に、種を付けてやるとするか」
 痛みを少しでも抑えるために無意識に腰を振っているセリカをさらに侮辱して、カンディスが言葉通りセリカの膣内に精液を放つ。

「あああぁぁぁあっ! 中に勝手に出して・・・それにそんな言い方ぁ」
 膣内に溢れる程注がれた熱い精液を感じながら、セリカはここに正義が全うされた事を確信した。

 放心状態のセリカを眺めながら、カンディスは幸先の良いスタートを切れた事に満足していた。セリカの脅迫に屈した事は、棚に上げたまま忘れるつもりらしい。
「・・・っと、このまま眺めている訳にもいかんな」
 自分が支配し穢した獲物の姿を見るのは、カンディスにとって自らを称えるトロフィーを眺めるような至福の時間だ。しかし、いつまでも浸っていてはいけない。

 カンディスは再度『双子の片眼鏡』の白い面をつけると、セリカの肛門に突き刺さったままの警棒を引き抜いた。
「んぐぅっ!」
 ビクンと身体を反らせるセリカに、カンディスが前もって考えておいた台詞を囁く。

「セリカよ、お前を我輩の奴隷にしてやろう。一週間後お前は今の職をやめ、この町から出て歩いて東に一週間程のところにある村に行きその近くにある修道院を訪ねるがいい。そこで我輩はお前を待っている。
 これはその約束の印だ」
 そう囁きながら、カンディスは『淫縛の手袋』をつけた手の指でセリカの尻に触れる。

 シュゥゥゥッと小さい音がして、指先程の大きさのカンディスの紋章がセリカの尻に刻まれる。
「我輩の言った通りにしてもらうぞ」
「はひぃ・・・もちろんですぅ・・・」
 息も絶え絶えのセリカは、それでもカンディスの命令に頷いた。

 それが正義だと信じて。

 セリカに元通り制服を着せてからカンディスは予定通り市場に向かい、女性で美人の行商人を探し始めた。しかし・・・そうそう都合良く見つかるはずがない。

「困ったな。こう言うシチュエーションにピッタリのアイテムをせっかく作ったというのに」
「まあ仕方無いんじゃないっすかね。旦那は日ごろの行いが悪いんだから」
 日頃の行いの良い悪魔なんて居るのかと、ツッコミをザジに入れもせず、カンディスは諦めて次の獲物を手に入れに行くべきかと考え始めた矢先、市場の出口で開いている一軒の屋台が目に入った。

 市場で店を出している商人や買い物客に軽食を出す屋台は、他にも出ている。この屋台もその中の一軒のようだ。もちろんカンディスは、軽食を売っているから屋台が目に止まった訳ではない。店を切り盛りしている店員と店長の二人が、共に女性で美人と美少女だったからだ。

「はいっ! ベーコンサンドお待ちしましたぁー! ラメラさんっ、野菜サンド三つお願いします!」
「あいよっ! キャナルッ、これお願いねっ!」
 明るく元気にハキハキと。接客業の基本だが、この二人は商売以外でもそうしていそうだ。

 『キャナル・パーダス。今年成人。両穴共処女。細身で胸も尻も控えめ。
 ラメラ・パーダス。成人して五年。後ろの穴のみ処女。胸のみ平均以上。キャナル・パーダスとは、従姉妹の関係』
 カンディスは太陽の位置を確認した。太陽の位置はまだ南。時間はまだまだたっぷりある。
「ザジ、あの二人を獲物にするぞ」
「ヘイヘイ、あっしはマントの中で見物させてもらいますから、道具の解説お願いしますぜ」

 おざなりなザジの返事を聞き流し、カンディスは『真昼の傍観灯』の対象にキャナルとラメラを入れてから、カンディスは屋台の前に立った。
 途端、周りの通行人が屋台とそこで働いている二人に関心を払わなくなる。
 昼時で繁盛していた店に、いきなり閑古鳥が鳴き出した事にラメラとキャナルが戸惑って顔を見合わせている。
 それを見ながらカンディスは懐から、一枚の何も書かれていない白紙のメニュー表を取り出した。

「これは『搾取のメニュー表』と言ってな。一度で二度美味しい、お得なアイテムだ。
 具体的な効果は・・・」
「ヘイヘイ、見てのお楽しみなんでしょう?」
「その通りだ」
 カンディスはそう答えて、突然の閑古鳥の襲来に戸惑っている二人の店のカウンターの前に立ち、声をかけた。

「注文を良いかね?」
「あっ、はいっ! 何にしましょうっ?」
 応対するキャナルにカンディスは店に置いてあるメニューではなく、自分が持っている白紙のメニュー表を見せた。すると何の前触れも無く、白紙だったメニューに文字が突然浮き出て来た。

 文字は、『陰毛十本 1・・・』と書かれている。つまり、陰毛十本を注文すると、何かを1払うと言う事だ。
 突然見覚えの無いメニューでとんでもない物を要求されたキャナルは、しかし笑顔のままで注文を繰り返した。
「かしこまりましたぁっ! ラメラさーんっ! 陰毛十本入りまーすっ!」
「いっ、陰毛っ!? キャナル何言ってるのっ!?」
 だがそれを受けたラメラはいつも通りとは行かなかった。飛び上がらんばかりに驚いて屋台の厨房から顔を出した。

「ダンナ、あっちには効いてないみたいですぜ」
「まだ見せていないからな」
 カンディスは顔を見せたラメラに、『陰毛十本 1・・・』と書かれた『搾取のメニュー表』を見せる。その途端ラメラの顔から驚愕の色が抜けていく。
「あっ、陰毛十本ねー、すぐ作っちゃうから」

 そう言うと、ラメラはズボンの中に手を入れる。その様子を見ながら、ザジはカンディスに囁いた。
「この『搾取のメニュー表』ってアイテム・・・直接見せないと効かないんじゃ、不便なんじゃないですかい? ここみたいな屋台で使うならともかく、大きな店だとウエイトレスやウエイター、コックが何人もいますぜ」
「・・・未完成なのだから仕方あるまい」

「未完成って言えば・・・この前精神だけじゃなくて、肉体も操作するアイテムを作るって言ってやしたが、あれはどうなったんで?」
 ザジの問いにカンディスは遠い眼差しを空に向け、答えた。
「ザジよ・・・未来と言う言葉には、希望が詰まっていると思わんか?」
「つまり、まだ出来てないって事ですかい」
「フッ、優れた発明には時間が必要なのだ」

 そう二人が話している間に、カンディスの注文した『陰毛十本』は完成したようだ。
「・・・っ! はいっ、陰毛十本っ!」
 と言ってラメラが出したさらには、たしかに陰毛が十本程乗っている。しかし、カンディスとしては目の前で抜いてもらわないと、あまり楽しくは無い。

「新しいメニューを出すか・・・。」
 この『搾取のメニュー表』は、自分の思った通りのメニューを出現させ、それを見せた相手に要求できるというアイテムだ。その反面、注文した相手に必ず何かしらの代償を支払わなければならないと言う特性がある。
 カンディスが次に出したメニューは『陰毛抜き百本 10・・・』だ。

「次はこれを貰おうか。三千本程」
「三千ですか? ラメラさん、そんなに生えてます?」
「多分生えてない。・・・キャナル、こうなったらあんたも手伝ってっ!」
「はいっ!」

 もちろんこの展開を狙って三千なんて無茶な数字を言ったのである。
 二人は『真昼の傍観灯』によって、すでに人の寄り付かなくなったテーブルを全てまとめて、ギリギリ二人が乗れる台を作ると、下半身に着ているもの全てをその場に脱ぎ捨てて、それから台に乗ると股をカンディスに向けてM字型に開きその前に皿をそれぞれ置いた。

「お客さんっ、あたし達二人合わせても三千本も生えてるか分からないけど、あるだけ抜いちゃってよっ!」
「遠慮せずに思いっきりむしっちゃってくださいっ!」
 ほんの少しだけ頬を赤く染めて、股間を丸出しにする二人の陰毛をカンディスは見比べた。ラメラは取り立てて濃いという事も無く、平均的。キャナルは・・・あまり生えていない。産毛程度と言ったらオーバーだが、それより少しましといったぐらいだ。

「たしかに三千本あるかどうか疑問だな。・・・ま、そんなに無くても良いのだが」
 後半は二人に聞こえないように呟いて、カンディスはまずラメラの陰毛を何本か掴むとブツリと引き抜いた。
「ひぎっ!」
 ビクンと身体を震わせて悲鳴を短く上げるラメラの反応を楽しみながら、キャナルの薄い陰毛にも手を伸ばしプツプツと一本ずつ連続で引き剥く。

「っ! んっ! んんっっっ!」
 痛みで上げそうになる悲鳴を、歯を食いしばって堪えているキャナルの陰毛がパラパラと皿の上に積もっていく。
「・・・ところでその毛、どうするんですかい?」
「知らんのか? 処女の陰毛とその血縁者の非処女の陰毛を焼いて灰にすると、アイテムの良質の材料になるのだぞ」
 そうザジに答えながらも、カンディスの手は一瞬たりとも止まらず二人の陰毛を引き抜き続ける。

「ひっ! ぎゃっ! いだぁぁぁぁあぁぁっ!」
「っ! ひっっっ! いたっ!」
 キャナルはそれでも悲鳴を堪え続けているが、常に何本かまとめて抜かれているラメラは悲鳴をこらえる事も出来ないでいる。

 速いペースを維持し続けたおかげで、二人の陰毛が全て皿の上に乗るまで、そう時間はかからなかった。
 抜かれている二人はもちろん、抜いているカンディスも数えていないが、おそらく三千本はさすがに無いだろう。
「全て抜いたが、やはり三千本には足らんな。一千本程」
 正確な数が分からないので適当にカンディスが言うが、二人共抗弁する気力は無いようだ。

「す、すみません。他のもので良ければ・・・」
「陰毛はもう一本も無いんです」
 涙目で荒い息をしている二人の股間は、真っ赤に腫れている。特にラメラは血が滲んでいる。その二人の様子にカンディスはもちろん罪悪感は覚えず、嗜虐の快楽を覚え追加の注文を行った。

「では・・・追加でこれを二つ頂こうか」
 カンディスが指差したメニューは『フェラ・・・20』。
「あ、フェラですかっ? かしこまりましたっ!」
 まだ涙が浮いているが、それでも営業スマイルを浮かべ接客するキャナル。

「もちろん割り引いてくれるのだろうな?」
「割引は出来ないんだけど・・・その代わりに今ならあたしのパイズリと、キャナルの玉舐めもつけますからそれで勘弁してください」
 ラメラの口からスラスラとパイズリや玉舐めと言った言葉が出てくる。性に関する経験はしっかり積んでいるようだ。

 なお、割引が出来ないのはラメラの経営方針のせいではなく、他でも無い『搾取のメニュー表』のせいだ。要求に
 逆らえないだけでなく、使用者に設定された代償にも逆らうことが出来ないのだ。

「あの、ラメラさん。玉舐めってどうすればいいんですか? あたしやったことなくて・・・」
「お客さんの玉を、口に入れて優しく舌で転がすの。いい、優しく、丁寧にやるのよ」
「はい、失礼しますっ!」

 キャナルはラメラの指導に従って、台から降りると地面に座り込み、カンディスの睾丸を頬張って舌でコロコロと転がし始めた。
 そしてラメラがそのキャナルの後ろから豊かな胸でサオの部分を挟み、ムニュムニュと動かしながら亀頭を咥え、舌を這わせる。

「たしかに、なかなかのサービスだっ!」
 元々勃起していたカンディスは、高まる射精感を抑えることができず、ドクドクと溢れんばかりにラメラの口内に精液を放出する。
 それを躊躇わずゴクゴクと飲み下すラメラに、カンディスは最後の注文をした。

「では、最後にこれを頂こうか」
「ぷはっ、・・・これですか。いやー、お客さんお目が高い」
「え・・・本当っ! お買い得ですよっ! お客さんっ!」
 カンディスの注文を口々に褒める二人。それこそがこの店最高のメニューだと言わんばかりだ。

 二人が褒めちぎったカンディスの注文は、次の通り。

 『ラメラ 先払いで100・・・
 キャナル 先払いで100・・・』

 カンディスは二人自身を注文したのだ。
「キャナルは器量も良いし、何と言ってもあたしと違って処女だしね。あたしと同じ値段なのが不思議なくらいさ」
「何言ってるんですかっ、ラメラさんだって美人だし、胸だってあたしと違って大きいし、色々知ってるじゃないですか。あたしなんて処女だって事だけしか売りが無くて・・・」
 自分ではなく、お互いを売り込む二人。その様子に満足しながら、カンディスはここでの締めにかかった。

「では、早速会計にしよう。いくらになるかな?」
「はいっ、陰毛十本で・・・」
 会計をしようとして、キャナルが首を傾げる。それはそうだ。メニューはまだ未完成なのだから。

 そして、『搾取のメニュー表』に新たな文字が浮き出る。すでにあるメニューの後ろに、短い文章が。

 『陰毛十本 1スパンキング。
 陰毛抜き 百本 それぞれ10スパンキング。

 フェラ 20アクメ。

 ラメラ 先払いで100アクメ。
 キャナル 先払いで100アクメ。
 ただし、オマンコ使用不可 』

「陰毛十本と陰毛抜き二千本、フェラとラメラとキャナルで・・・合わせて21スパンキング。それに220アクメになります」
 ・・・これが一度で二度おいしいとカンディスが言っていた『搾取のメニュー表』の効果だ。注文すれば代価を対象に支払わなければならないが、その代価ですら使用者が自由に設定することが出来る。例えどんなに不平等で理不尽な物だったとしても。

「では、早速支払いを済まそう。まず陰毛の分からだ」
「あいよっ! 最初の十本はあたしのだから・・・あたしに11スパンキング、キャナルに残りの10ね。さっ、あたしのお尻に」
「あたしにもやっちゃってください」

 二人は進んで、うれしそうに尻を差し出す。上機嫌な客から代価を受け取るのは、商人の喜び。喜ばないはずが無い。
「では早速。・・・まずっ、一回っ!」
 ぱあぁんっ! とカンディスの『淫縛の手袋』が何時の間にかはめられた右手が、ラメラの尻に振り下ろされる。
「いったあぁぁぁ!」

 続いて同じ右手でキャナルの白い尻を叩く。
「んっぐぅぅっ!」
 二人の尻には、同じ大きさの赤いもみじマークとカンディスの紋章が刻まれた。
「・・・あっ、しまった。セリカも紋章を刻んだのは尻だったな・・・まあいいか。次の獲物は他の場所に紋章を刻めばいいのだし」

「・・・またいい加減な・・・・・・」
 マントの中から聞こえるザジの呟きは、例によって無視してカンディスはさらに両手を使って二人の尻にスパンキングを繰り返す。

 パァァァンッ! パァンッ! パパパパァアァァァンッ! リズミカルにカンディスの平手がラメラとキャナルの尻を叩き、白かった二人の尻はたちまち赤くなっていく。

「ヒッ! いだっ! お客さっ! あっひぃぃぃぃっ!」
「キャァァァっ! おしりあついぃぃぃいぃぃっ!」
 陰毛を毟られた時よりも、二人は激しい悲鳴を上げた。だが、違いは悲鳴の激しさだけでは無かった。二人が上げる悲鳴には、悦びが隠しようも無いほどブレンドされている。二人共尻を叩かれて感じているのだ。

 それはカンディスが尻とのインパクトの瞬間のみ、『淫縛の手袋』で二人の性感を強化していたからだ。・・・そんなに大したことではないが。

 合計二十一回のスパンキングが終わった時には、二人の尻は赤く腫上がり、それに負けないくらい頬を赤くしていた。
「お客さん、気前がいいねぇ。あんなに遠慮なくお尻を叩かれたのは、あたし初めてだよ」
「あたし、こんなにお客さんによくしてもらったの、初めてです」
 ラメラもキャナルもカンディスの行為を褒めちぎる。それが商売上のお世辞では無い事は、性器の濡れ具合を見ればわかる。

「それで残りの220アクメだけど・・・お客さん、もちろんこっちを使うよね?」
 期待に瞳を輝かせたラメラはカンディスの答えを待たず両手で尻の谷間を開いて、その奥の瞳同様に期待で疼いている肛門を剥き出しにする。

「そのつもりだが・・・ずいぶんと積極的なことだ。前々から興味でもあったのか?」
「気持ちいいって話をこの前友達に聞いてね。ほら、キャナルもお尻の穴お客さんに見せてっ」
「・・・はい・・・・・・」
 数瞬躊躇してから、キャナルもラメラに倣って恥ずかしそうにカンディスの目に肛門を晒した。

 目の前に無防備に晒された二人の肛門に指を伸ばすのかと思いきや、カンディスは調理場を見回し蜂蜜を見つけるとそれを手に取った。
「それ・・・舐めるんですかい?」
「我輩は熊か。これを混ぜるのに使うのだ」
 カンディスの言うこれ・・・小瓶の中の真紅の液体をザジは見つめた。

「そいつは・・・もしかして『淫花の香水』じゃあ?」
「正解。ただし、九割だけな」
 『淫花の香水』はカンディスの初期の作品であり、その香りを嗅いだ者の性感を過敏にし、激しい発情状態に出来ると言う効果のあるアイテムだ。しかし、カンディスが修道院を手に入れた時には、そのシンプルな効果と一度に複数の対象には効果が無い事を理由で、カンディスが使用を見送ったのだ。

「これは、正確には『淫花の香水』のエキス。
 我輩は肉対を操作するアイテムの開発以外にも、実は『淫花の香水』の改良にも着手していたのだ。成分を分離させ新たな材料を混ぜ加えることで、効果の異なるいくつかの新たな香水を作り出すことに成功したのだ。
 その過程で出来た副産物がこのエキスだ。このエキスは強力な媚薬だ。悪魔には効果が無く、直接触れなければ効果は薄いが香水の状態とは比べようも無いほど強力だ。
 「見ていろ」

 カンディスは小瓶のコルクを抜き、真紅の液体を一滴だけ蜂蜜に垂らした。それを軽く指で混ぜ、一滴のエキスと蜂蜜一瓶分の混合物が出来上がる。それをローションの代わりと言うように、ラメラの肛門に向けて垂らしゆっくりと丁寧に塗りつけて行く。

「んっ、冷た・・・・・あっ、ああっ、ああぁあぁぁぁっ!」
 最初はただ冷たくむず痒いだけだったが、カンディスの指が蠢くたびに肛門が、そして身体が熱く疼き始めるのを感じる。そしてそれは、際限が無く高まっていく。

「どうだ、強力だろう」
 その言葉に同意するように、ラメラの腰がピクピクと上下に動き愛液を流す。軽く絶頂に達したらしい。
 例え副産物でも作品は作品。カンディスはエキスの効果に大きな満足を得ていた。
「アクメに達したのなら、ちゃんと言ってくれなくては困るではないか」
「は、はいぃぃぃっ」

 ラメラの返事を聞きながら今度はキャナルの肛門に蜂蜜を塗り付けようとして、何かを思いついたようにニヤリと笑った。そして、ラメラの時よりもかなり多めに手に取る。
「おっと、手がすべった」
 などと白々しい事を言いながら、蜂蜜を垂らす。肛門にもだが垂れた蜂蜜の多くはそのまま性器まで流れていく。

「お客さんっ、まだオマンコは困りますっ!」
「そう硬いことを言うな。蜂蜜が垂れただけで、我輩は触れてもいないではないか」
 エキスの事を知らないキャナルにとっては、カンディスの言ったとおり。カンディスは蜂蜜を垂らしただけなので支払い義務を破ったわけではない。
 しかしエキスの効果は、すぐに発揮された。

 『あれ? 蜂蜜がかかっただけなのに・・・』
 性器がまるで熱を持ったように熱い。カンディスの指にゆっくりとマッサージされている肛門もだが、それとは比べようも無いほど、熱くなっていく。

 『ダメッ、まだ支払いが済んでないのにッ!』
 支払いが済まなければ、まだ自分はお客さんのものではない。なのにオマンコを差し出すことはダメだ。許されない。従妹の店のアルバイトとは言え、お給料を貰っている以上先払いの220アクメを貰い終わるまで我慢しなければ。

 この時は、まだエキスのもたらす発情効果よりも『搾取のメニュー表』の操作が上回っていた。

 ニチャニチャと音を立てて、カンディスは二人の肛門を弄りだした。
 ラメラの肛門には、指を一気に深く挿入し、グリグリと指で円を書く。
「ひぐっ! あぐうぅぅぅっ! ぐひぃぃぃっ!」
 キャナルの肛門には、挿入した指を素早く出し入れを繰り返す。
「あひぃっ! あっ! あっ! あぁぁぁああぁあっ!」

 絶頂に達したら言えとカンディスは言ったが、二人にその余裕は無さそうだ。指を出し入れされただけで二人ともすでに何回も達している。仕方が無いのでカンディス自身が適当に数える事にした。
「・・・もう少し、代金を少なくするべきだったか」
 いい加減な事を言う訳にもいかない。少なくとも、二人が確かに代金を受け取ったと納得するぐらいには説得力が無ければならない。

 面倒だとも思うが、たったそれだけでこの二人が手に入るなら、安い物だ。
 カンディスはそう思い直すとラメラの肛門から指を引き抜き、今度はペニスをゆっくりと押し入れていく。
「今は『淫縛の手袋』の効果はほとんど切っているが、エキスの効果があるからな。問題あるまい」
 エキス入りの蜂蜜のついた指で直腸を弄られたせいで、二人の体内にエキスはより深く浸透していた。今なら何をしても快楽にしか感じられないかもしれない。

 蜂蜜のぬめりも手伝って、大した抵抗も無くカンディスのペニスはラメラの中に入り込んでいく。
「あはぁあぁぁぁっ、太いぃぃぃっ! ふといのがはいってくるのぉぉぉっ!」
 挿入する分には抵抗は少ないが、締まりは申し分ない。カンディスのペニスをぎゅうぎゅうと締め上げる。

 肛門で性交を行う場合、ペニスを挿入されるときは力を抜き、逆の場合は力を入れると痛みが少ないとされているが今のラメラには関係が無い。括約筋を押しのけて進入してくるペニスも、そしてこれから始まるだろう激しいピストン運動も、ただ快楽を彼女に与えるだけだ。それらによって感じるはずの痛みすら、快楽をより深い物にするスパイスでしかない。

「お客さぁんっ! あたしのお尻にもオチンチンくださいっ!」
「すまんが、いくら我輩といえどもこれは一本しかないのでな。代わりと言っては何だが・・・」
 キャナルの肛門から一度指を引き抜いて、今度は指二本で出し入れする。指の先を軽く鉤のように曲げながら。
 それとほぼ同時に、カンディスは腰の前後運動を開始する。

「あひゃあがぁああぁぁぁうっあぁぁぁあぁっ! お尻の穴いいのぉおぉぉっ!」
 壊れかけた喘ぎ声を上げながら、ラメラは知り合いの言っていたことが嘘だと確信した。何故なら、これは気持ちいいなんてもんじゃない。頭の中が全て白くなりそうな、激しい快楽を味わえる。知り合いが正直なら、こう言ったはずだからだ。

「うひぃぃぃっ! 指があっ! 指がお尻の中擦ってるぅぅぅっ!」
 キャナルの頭の中は、すでに快楽一色に塗りつぶされていた。いや、他にあるとすれば自分の将来に対する希望だけ。
 指を二本お尻の穴に出し入れされているだけで、こんなに気持ちいい。なら、オチンチンを入れられたら? 入れてもらうのがオマンコなら? どれほど気持ちいいか想像もできない。
 それを考えるとキャナルの中の支払いを受け取ることへの硬い義務感は、真夏の太陽の下の氷のように溶けていった。

「・・・これで、およそ半分だな」
 ずいぶんペースが速いが、ラメラはカンディスのペニスが直腸の奥を突くたびに絶頂に達したし、キャナルも十秒に一回は達していたので、おそらくカウントは正しい。
 それを自分に確かめてから、カンディスはラメラの肛門からすでに三回腸内射精したペニスを引き抜いた。
「はひぃっ、まだ焼いへぇぇぇっ、お尻の中、あついの出してやいへぇぇぇっ」
 呂律の回っていない舌で、ラメラが肛門性交の続行を懇願するがカンディスは取り合わない。

「続きはお前が我輩の物になってからだ。
 さて、待たせたな。今度はキャナル、お前の肛門を頂こうか」
 カンディスの予想では、キャナルは喜んで肛門を差し出すはずだった。
「やあぁぁぁっ、お尻じゃいやぁぁぁっ! オマンコにオチンチン突っ込んで欲しいのおぉぉぉっ!」
 しかし、現実はカンディスの思い通りにはならなかった。

 普段ならそれもまた一興と思うのがカンディスだが、今回はそうも行かなかった。眉間にシワを寄せカンディスは素早くキャナルの状況を確認する。
 見てみると、変化が顕著なのは性器だった。処女とは思えない程激しい愛液の分泌はラメラと変わらないが、膣口はピクピクと小さく蠢きながら男性器を誘い、クリクトスは皮から解放され破裂しそうなほど勃起している。ためしに『解説魔』に情報を探らせると・・・。

 『激しい発情状態。性欲に『搾取のメニュー表』の操作が負けている』だった。
「これはちょっと問題じゃないっすかね?」
「たしかに問題だ。発情させられても、他のアイテムの効果を打ち消してしまうようでは・・・・・・。バランスの取れた使用法の確立が今後の課題であるが・・・それは置いておいて」
 深刻な顔で言いながらカンディスはキャナルをひっくり返して仰向けにすると、脚を掴んで大きく開かせた。

「今は今を楽しもう」
「ダンナ・・・それ、前向きって言うのとは絶対違いますぜ」
 ザジに呆れられつつも、カンディスは自身のペニスをキャナルの性器に触れさせた。
「ああぁぁぁっ、オチンチンッ、オチンチンそのまま入れてぇぇぇっ」
 カンディスはキャナルの願い通り、ペニスを挿入した。そのままではなかったが。

 ペニスを肛門に突き入れると、そのまま根元まで挿入したのだ。
「あがぁあぁぁぁぁっ!? そこ違うぅぅぅっ! オマンコにっ、オマンコに入れてぇぇぇっ!」
 そういいながらもキャナルの腰はすでに浮いており、ピストン運動を始めたカンディスの腰の動きに合わせて動き始めている。
 さらにカンディスのペニスが直腸の奥をつくたびに、キャナルの身体が上下に痙攣し性器からはぴゅっぴゅっと、愛液が噴出す。一突き毎に絶頂に達しているのだ。

「オマンコォッ! お尻じゃなくてオマンコグチャグチャにしてぇぇぇっ!」
「じゃあ、あたしがしてあげるよ」
「えっ?」
 そう言ったのは、今までキャナルとカンディスのアナルセックスを傍観していたラメラだった。

 言うが早いか、ラメラはキャナルの返事を待たずキャナルに跨るとキャナルの性器を弄り始める。
「・・・おい、たしかに賞品同士が弄りあってはならないとは無いが」
「大丈夫だって、ちゃんと処女膜は破らないからさ」
 ならいいかとカンディスが腰の動きに集中し始めると、ラメラの指の動きが本格的に激しくなってくる。

 指を膣の中に浅く入れて出し入れし、空いているもう片方の手でクリクトスを挟みグリグリと動かし始める。
 もちろんその間もカンディスの激しいピストン運動は止まらない。
「あぐひぃぃぃぃっ! クリクトスつぶれるぅぅぅっ! お尻壊れるぅぅぅっ!」

「いいのっ! これはお仕置きなんだから。まったく、支払いも済んでないのにオマンコにチンポを入れてもらおうだなんて・・・。しかも、お客さんに迷惑までかけて。あたしはそんな子に育てた覚えは無いよっ!」
 一際強く、ラメラが本当につぶすつもりのようにキャナルのクリクトスを摘み上げる。
「ぎゃひぃぃぃっ! クリがぁぁぁあぁあっ!」
 キャナルが悲鳴とも快楽の嬌声ともつかない声を上げると、肛門がより強くカンディスのペニスを締め上げる。

「では、我輩も罰を与えてやろう」
 ドクドクと愛液を注ぎ込むと、また大きくキャナルの腰が跳ねた。
「お尻に出てるぅぅぅっ! オマンコに出して欲しいのにぃぃぃっ」
「そんなに出して欲しいか。だが、まだ支払いがまだ少し残っているのでな。さて、どうしたものか・・・?」

 カンディスがそう言うと、ラメラの瞳が期待に輝いた。
 こうして、二人はカンディスから充分な支払いを受け取ったのだった。

< 続く >

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