第八話
待ちに待ったゲーム開始当日の朝、俺は東京のとある駅に来ていた。仲間内でサイバーの家の位置を知らない俺が万が一迷わないようにと、迎えをよこしてくれるそうなのでそれの待ち合わせをしているところだ。
さらに言うと、俺の『ゲームの駒』にもここに来てもらえるように他人史に書いておいた。彼女らにとって俺は友達であり、今日は俺と俺の友達と遊ぶ約束をしたと言うことになっている。普段なら服装や下着をあれやこれやと指名したり、色々悪戯するところだが、それはゲームのルールに反する。なので、それは別の機会にでもやろう。・・・たしか、2学期には学校行事が多いし。でも、文化祭や体育祭は人が多すぎるから、やっぱり狙いは修学旅行やスキー合宿だよな。ホテル内なら操作する人数も・・・。
っと、俺が今朝は一度も抜いていないため妄想に偏りがちな思考を働かせていると、ニコニコ笑顔のお姉さんが前方から寄ってきた。
「やっ、君も早いね。関心関心」
「・・・えーと、どなた?」
馴れ馴れしく声をかけてきたお姉さんに、俺は見覚えがまったく無かった。
推測すれば、このお姉さんは俺が呼びつけたゲームの駒なんだろうが・・・このお姉さんと見間違えそうなのは神楽坂真須美ぐらいだ。
しかし俺の記憶の中の加倉坂真須美は、黒のロングヘアーでタイトなスーツを着た大人しい美人OL。対してこのお姉さんはと言うと、印象が180度程異なる。
髪の色と背格好は同じだが、髪を背中でまとめていて活発な印象がある。格好がTシャツにジーンズなのもその印象を深めている要因だろう。OLと言うよりも、元気な姉さんってタイプだ。
「どなたって、友達に失礼じゃない? あたしよ、神楽崎真須美」
・・・どうやら、同一人物だったらしい。
「ごめん、第一印象と違ってて解らなかったんだ」
「ああっ、あの時はバイト中だったから・・・。いやー、やっぱりバイトは給料より内容よね。あんなOLみたいな格好するハメになるなんて知ってたら、他のバイト探したんだけど」
やっぱりバイトだったらしい。っと、言うことは大学生かフリーターだろう。
「悪いっ、待った?」
横からかかってきた声に振り向くと、今度こそ見覚えの無い人物が現れた。・・・いや、たしか見たことはあったような気が・・・。
「っ! 西倉茜の隣にいた・・・」
記憶の片隅に引っかかっていたのは、真須美と同じくゲームの駒の西倉茜を見つけたときに、その隣を歩いていた少年・・・それが今俺に声をかけてきたのだ。
「隣って・・・ボクがその西倉茜なんだけど?」
っと、訝しげに茜が言う。
俺はサイバーに西倉茜の事を指名したときの事を思い出そうとした。たしか、西倉茜を・・・正確には、西倉茜の隣を歩いていた少女に目をつけた俺は、指差して・・・一度視線をはずしたな、そう言えば。
そして、サイバーが見たときには俺の指の先にはあの娘じゃなくて茜がいたとしたら・・・だとしたら茜は女の子か。
もしも茜が、俺が思ったとおり少女ではなく少年だとすると、俺も困るがサイバーはもっと困る事になる。サイバーはゲーム自体には参加しないが、主催者だ。俺の勘違いをそのままにして、イベントに障害を持ち込ませたくは無いだろうし、勘違いに気がついた俺が『じゃあ、お前に下げ渡す』とか言い出したら、たまったものではないだろう。
実際、あの時は女顔の美少年としか見えなかったが良く見ればボーイッシュな女の子にも見える。・・・格好も男物の服だとか、一人称がボクだとか、突っ込み所はあるが。
その後、約束の時間ギリギリに宮本奈央がやってきた。
「・・・どうしたの? なんかあたし変?」
「いや、いつも通りで安心した」
現れた宮元奈央は、この前見つけたとおりの印象と大差無い格好だった。・・・さすがに、3度目のサプライズは用意されていなかったらしい。
・・・ゲームの駒の3人は、驚く俺と違って落ち着いたものだった。もちろん他人史で3人には俺に絶対的な信用を置いているので、何があっても落ち着いて俺について行くと書いているせいだが。
そして、俺が何に驚いているのかと言うと・・・サイバーの家、もとい屋敷についてだ。
元々ゲームの会場になるくらいだから、結構な大きさのあるちょっとした屋敷ぐらいに俺はサイバーの家について考えていた。だが・・・リムジンの窓から見えるのはちょっとしたどころか、立派な屋敷だった。一等地とはいかないが、東京にこんな屋敷を持ちリムジンを足に使う・・・どうやらサイバーは、俺の想像以上の金持ちのようだ。
「驚いたみたいだね。ちなみに言っておくけど、これは僕が能力で稼いだ物じゃなくて、僕が生まれる前に両親が建てた家だから」
向かいの席に座っているサイバーが、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「両親が建てたって・・・何をやってるんだ? 両親は」
「会社社長。今は、リキやノイジーの協力で『空気の良い別荘で療養中の妻の居る別荘から通勤する、良い夫』をしてもらってるけどね。ゲームの邪魔は出来ないから、安心していいよ」
「そ、そうか」
・・・俺って、家族に優しい能力者なんだなと、実感する瞬間だった。
屋敷の中は外見通り立派で、趣味の良い家具や装飾品があったが、それ以上に目立つのはメイドさんだ。ほとんどはリキやノイジーからの下げ渡しだろうが、そのため十代や二十代のメイドをよく見かける。何でも昔から屋敷に居る使用人はほとんど解雇されていて、今の使用人は9割方下げ渡しなのだそうだ。・・・そのため、使用人としての技能育成に苦労したらしい。
サイバーの屋敷に入って、とりあえず俺はプレイヤー用控え室に、そしてゲームの駒はゲーム会場に通された。
控え室と言っても、どうやら両親が居なくなって使わなくなったシガールームを改装して作ったものらしく、やはり何処か豪華さのような物を感じさせる。・・・ちなみに、俺は劣等感を刺激されたりはしていない。何故なら都会に出て来た田舎者のように、回りを見渡すので忙しかったからだ。
「ようっ、お前がミドーか」
控え室に俺が入って、最初に声をかけてきたのは逞しい大男だった。アメフトの選手のような体格の良さで、いかにも体育会系の汗の臭いがしそうな笑顔を俺に向ける。
「もしかして・・・君がリキ?」
「おうっ! 俺が肉体操作能力者のリキだ。
お前の他人史の力も便利だが、俺の肉体操作も負けちゃ居ないぜ。なんたって・・・」
っと、続けながらリキはポージングを決める。逞しい筋肉が、ぼこりと盛り上がって存在を強烈に主張した。
「貧弱な坊やと嗤われていた俺も、毎日5分の肉体強化でこのナイスバディに大変身っ! 遠視も失神癖も完全回復して、今じゃ誰もが俺を一人前の男として認めてくれているぜっ!」
「そうだな。俺の他人史じゃあ、肉体操作には限界があるもんな」
まるで怪しげなトレーニング機器の宣伝文句のようなリキの言葉に、俺は素直に頷いた。実際、俺の他人史の肉体操作には限界があり、逆にリキの肉体操作はそれだけに特化している分強力なのは、俺も知っていたからだ。
「リキ・・・少し横にどいてくれませんか? お前の大きな身体で私が彼には見えないようだから」
「ん? そうか? 悪い悪い」
ひょいっと、リキが横にどくとその後ろに対象敵に細身の男が俺の視界に入った。
現れたこの男は口調こそ柔らかいが、目がまったく笑っていない。鋭い眼差しに、神経質そうな印象を強める細いフレームの眼鏡をかけた、ただものではなさそうなこの男がノイジーなんだろう。
「始めまして、ミドー。私がノイジーだ。・・・ところで、何だか君が私にビビッているように見えるのは、気のせいかな?」
「いやっ、だって全然目が笑ってないし・・・」
はっきり言って、やのつく自由業の方に脅されている気分だ。
「まあ、仕方ないよね。ノイジーは口調が柔らかいくせに、顔が真顔だから」
「たしか、その口調になったのは能力に目覚めたからだったよな?」
口々に言われたノイジーは、頷くと小さく苦笑いを浮かべた。
「私の能力『命令』は、能力の発動条件がこの場の誰の能力よりも手間いらずです。目標の耳に入ればいいんですから。しかし、能力に目覚めた当初は上手くコントロールが出来なくて、命令口調で話しかけると無意識のうちに能力を使用してしまうことが、たびたびあったんですよ。
・・・一度、私をからかってきたクラスメイトに『やめろ』と言ったら、そのクラスメイトが身動きどころか呼吸まで止めた時は、私の心臓まで止まるかと思いましたよ」
「それで、口調に気をつけている間にその口調が癖になったのか。・・・俺、発動条件に手続きがいる能力でよかったな」
「まぁ、サイバーがいなければ君も情報収集に手間取ったでしょうけど。これからも持ちつ持たれつ、仲良くやっていきましょう」
ノイジーの、『お互いの利益のために、協力し合おう』と言う言葉は、安っぽい友情の文句よりもよっぽど説得力があった。
ゲーム会場は、ちょっとしたVIPルームの様相だった。座り心地の良さそうな椅子に、プレイヤーの得点を示すための大きなテレビジョンに、アルコール類は無かったがドリンクバーも完備。そして、その印象を強めているのが、ゲームの駒達との間の仕切りであるガラスだ。その向こうで、俺の連れてきた3人を含めた計9人が立っているのを見ると、それだけで興奮が湧き上がってくる。良い雰囲気作りと言えるだろう。
実際には接触しなければ能力の使えないリキや、話しかける必要のあるノイジーの為に、ガラス戸が設けられているが。
ゲームの駒達はそれぞれのプレイヤーを見つけると、安心したように息をついたり、手を振ったりしている。この時点ではプレイヤーを信用させる以上の事は誰もしていないので、全員服を着たままだ。
そのゲームの駒の中で、目を引くのはやはりリキのつれてきた3人だろう。ブロンドとブルネットの髪の白人女性が2人に、エキゾチックな雰囲気の黒人女性が1人。名前くらいはと、教えてくれたリキによると順に、ケイト、ニナ、ドロレスだという。3人とも共通しているのは、長身で巨乳の持ち主だということだ。
一方、ノイジーが連れて来た3人は当然だが全員日本人のようだ。素直そうな二十代前半の女性に、十代半ばの気が強そうで胸がそこそこ大きそうな少女と、逆に胸の膨らみがあまり無さそうな大人しい少女。名前は順に、弘美、早織、理子。どうやら、ノイジーは平均点を狙ったらしい。
「じゃあ、これからゲームのルールを改めて説明するから、よく聞いて」
サイバーが、手元のプリントを読み上げる。
「1っつ、他のプレイヤーの駒には能力を使ってはならない。
2っつ、指示された事以外の操作をしてはならない。
3っつ、他は指示に従うこと。
以上」
ルールは基本的にシンプルだ。パチパチと、俺たちが拍手すると駒達がそれぞれ怪訝な顔をし出す。いくら信用させているといっても、誤魔化せる限度と言うものはある。
そこで、まず第一種目だ。
「第一種目、ベルが鳴ってからゲームの駒に絶対服従を強いること。方法は自由っ!」
その言葉と同時にリキは椅子から立ち上がり、ノイジーは咳払いをして喉を整え、俺は3人の他人史とペンを取り出す。
困惑した駒達が何かするよりも早く、ゲーム開始のベルが高らかに鳴り響く。その瞬間リキはガラス戸にダッシュして、ノイジーは自分へ服従を誓うように命令し、俺はペンを走らせる。
・・・一番早かったのは、ノイジーだった。行動はリキも迅速だったが、つれてきた駒・・・特にドロレスが意外に素早くその手を避けたのだ。
そのため、ノイジーの早口の方が速く言い終わった。その次が俺で、最後がリキ。ノイジーには10点、俺にはその半分の5点、そしてリキには1点を獲得した。
「むぅ、柔道を始めるべきか・・」
「それより、気合の入った顔で突然掴みかかるのをやめるべきだと思いますよ? そんな事されたら、誰でも必死で逃げるでしょうから」
口々にそう言いながら、二人がこちら側に戻ってくる。
次はゲームの第一部。連れてきた駒の品質を競う種目だ。駒の何をどう競うのかは、ランダムに決まるので、品質を競うと言っていいのか、わからないが。
そう言えば、どうやってランダムに種目を決めるんだろうと俺が思っていたら、くじ引きの箱をサイバーのメイドが持ってくると、サイバーの前に置いた。
どうやら、くじ引きで決めるらしい。機械を使うと、イカサマしているんじゃないかと勘ぐられると思ったのかレトロな方法にしたようだ。
「さて・・・第一種目は・・・・・・」
くじ引きの箱を労いの言葉も無く受け取ると、サイバーはがさごそと中を探り一枚の番号札を引いた。その番号をあらかじめ作っておいた表に当てはめて、種目を発表する。
「第二種目は、非処女かどうか。非処女一人事に5点追加、処女は1点」
その種目に、リキは笑みを深くして逆に、ノイジーは渋い顔をする。おそらく、偏見かもしれないがアメリカは進んでいるからだろうし、ノイジーが渋い顔をしたのは連れて来た駒に非処女が少ないと考えているからだろう。
俺は微妙だったがおそらく、今時の大学生かフリーターである真須美は非処女だろう。奈央が非処女である事は確実だ。援助交際中に俺が目をつけたんだから。茜は多分処女だろうが・・・それでも俺の得点は11点。まずまずの得点だ。
「では、私から確かめましょう。・・・お前たちの中で非処女の者は手を上げろ」
心なしかドスの効いているように聞こえる声で、ノイジーが命じると・・・全員手をさっと上げた。
「・・・お前ら、経験があったのか・・・・・?」
カクンっと顎を落としてノイジーが訊くと、3人は頷いてそれぞれ口を開いた。
「あたしは、前の彼氏と何回か」
「弘美・・・お前、彼氏いない暦ノンストップだと言っていなかったか?」
「それは・・・彼氏に浮気されてその上振られたなんて言うよりは、格好つくかなと思って」
「あたしは、彼氏と別れる前に1回と、学校の先生と何回かかな。単位くれるっていうし、初めてじゃないし意外と上手いし」
「わっ、私は出会い系サイトであった人と。その、勢いで」
早織と理子が、続いて告白する。
「・・・予想外に高得点だが、あんまり嬉しくない」
本当に嬉しく無さそうに、ノイジーが呟く。しかしこれでノイジーの得点は、25点。
「次は俺だな。君たちの中で、非処女の人は手を上げてくれ」
この種目で逆転がなくなったのに、リキが変わらない笑みのまま質問すると、ケイトとニナの2人が手を上げるがドロレスは手を下げたままだ。どうやら、日本語が3人には通じるようだ。元々日本語が話せる3人を連れてきたのか、リキが命令に服従させるついでに、脳を日本語が話せるように調整したのかは不明だけど。
「ん? 君は処女なのか?」
「それは・・・まだママが早いって言うし。あたしも、そう思うけど」
「早いって・・・君年はいくつ?」
ドロレスはその質問に何故かやや躊躇した後、答えた。
「・・・ハ○スクールに、入ったばっかり」
『なにぃっ!?』
リキばかりか、その答えに俺やノイジーも思わず驚愕の叫びを上げた。
長身で胸も確実にE以上はある巨乳。これで○イスクール入学したて・・・俺とほぼ同い年だとは誰も夢にも思わなかっただろう。『分析』の能力を持つサイバーだけは、知っていたため俺達の驚く顔を笑っているが。
「予想外の事態だが・・・まぁ、ラッキー?」
そう言うリキの得点は11点。
そして、今度は俺の番だ。
「この中で処女じゃない人は手を上げてくれ」
そう言われて手を上げたのは・・・0。思わず俺は3人の他人史を確認するが・・・ミスは無い。『御堂誠二の質問には、例外無く正直に答えなければならない』・・・ちゃんと書いた時間にも間違いは無い。
「茜は良いとして、君たち2人も処女なのか?」
我ながら失礼な質問だ。訊かれた真須美と奈央も同感だったようで、むっとしたようだ。
「まあね。言っとくけど、あたしが男の子にもてなかったんじゃなくて、恋愛よりもバイトとかの方が楽しかったからだからね」
どうやら真須美は、大学生ではなくフリーターのようだ。
「奈央は、たしか年上の男と歩いてなかったけ?」
あれが平日早めに帰宅した父親とかだったら、彼女に対する印象を改めたほうが良いだろうな。
「年上の男って・・・あれは『3万でどう?』って、誘って・・・」
やっぱり援助交際、はっきり言ってしまえば売春だったようだ。しかし、だとしたら何で処女なんだ? 相手にした男が、アナルセックスにしか興味が無いとか、変わった性癖の持ち主だったのだろうか。
「その後、シャワーを浴びている間に飲み物に睡眠薬を入れて、寝たら財布の中身を取って逃げただけ。だから、処女だって言うのは本当」
・・・援助交際より性質が悪かった。まさか睡眠薬強盗だったとは。
思わず顔が引きつりかけたが・・・被害者は大抵泣き寝入りするしかないだろうと言う事に気がついて(警察に知らせると自分も逮捕されることになるので)、安堵した。もし裁判沙汰になっても、他人史で被害者や検事に裁判官を操作して、何とかすれば良いだろう。
「これで俺の得点は8点・・・。トップとの得点さは17点だけど、何だか悔しくないなぁ」
トップのはずのノイジーが悔しそうな顔で俺を見ているのも、そう思える一因だろう。
「次の種目は・・・6番か。『胸がどれだけ大きいかを競う。A1点 B2点 C3点 D4点 E以上5点』リキにとってラッキーな種目だね」
巨乳好きなリキにとっては、たしかにラッキーな種目だ。ノイジーの駒しだいでは、逆転も狙えないとしても差はだいぶ詰めることはできるだろう。
ノイジーはそれに動揺せず駒たちに何カップか聞いていく。弘美 B 早織 C 理子 A。合計6点の追加。
「やっぱり、胸の大きい娘は連れてこなかったんだね」
「・・・胸の大きい女よりも、尻の大きい女の方が私の経験では犯した時に快楽に深みがありますからね」
どうやら、リキとは逆にノイジーは尻重視な考え方の持ち主のようだ。
一方リキは相変わらず自信満々な笑顔で、質問する。ケイト D ニナ E ドロレス E。合計14点の追加。
そして俺だが・・・真須美はEカップ。思ったより大きかった。奈央はC。これも思ったより大きかった。そして茜は・・・Dカップと自己申告した。
「・・・今日は何回サプライズが用意されているんだろう?」
茜が着ている服は身体の線が判りにくいものではなく、見た限り胸の膨らみはそうあるようには見えなかった。
よほど着痩せする体質なのか・・・いや、そもそもその年齢でDカップってすごくない? とか俺が考えているとリキが俺を笑顔で見ながら肩を叩いてきた。いや、俺は巨乳重視な人では無くて・・・そりゃああの感触は好きだし現在義妹の胸を育成中だから説得力無いだろうけど。ノイジーは『お前もあっち側か』とか言いたげな視線を向けてくるし。
「えーと、次はいよいよ第2部・・・操作を競ってもらうんだけどいいかな? 進行しても」
とりあえず、気を取り直して俺たちは頷いた。現時点での得点は・・・ノイジー 31点 リキ 26点 そして俺 20点。だいぶ離されてはいるが、これからの展開しだいでは俺にも充分逆転のチャンスはある。
「まずは駒達を裸にしてもらうことから始めようか。ちなみに、ここからは僕が10点~1点の間で採点する事になるからね。どんな操作で課題を達成したか、駒達がどんな様子で課題に取り組んでいくかで採点に差がでるからその点注意してね」
サイバーがそう言うと、リキもノイジーもそれぞれ行動を開始した。俺も開始したいところだが・・・どうするかな? 操作のスピードではノイジーにはかなわないだろうし、強制力ではシンプルな分リキの方が上だ。
よって俺は小手先の技術で勝たなければ逆転は無い。なので、急いでもあまりいい事は無いのだ。
まず、真須美についてだが・・・これは簡単だ。新しいバイトを始めたことにすれば良い。業務内容は俺の言うことを実行する事。そして『このバイトはやりがいのある楽しい仕事だと感じる』と現在に書けば、完璧だ。これで彼女は熱心に自分から言うことを訊いてくれるだろう。
次に茜だが・・・今は彼女に対する情報が少なすぎる。今は現状維持で俺の言うことに服従してもらうしかないだろう。逆に奈央はある程度解っている。俺を催眠強盗の獲物とでも思わせればいいのかも知れないが・・・それは俺のプライドが傷つくので却下。なので、やはり現状維持とする。
どうやら、リキとノイジーも駒にかけた操作はとりあえず現状維持のまま脱ぐように命令したようだ。リキの場合は能力がシンプルなので、下手な工夫よりは種目に応じた臨機応変な対応に向いているという判断だろう。
ノイジーの駒は本人の選考基準通り、どれもバランス良く肉がついているラインの綺麗なヒップの持ち主が揃っている。これを服の上から見て判断したのなら、かなりの眼力だ。
そしてリキの駒は当人の拘りがよく表現されている。たしかに胸は大きいが、形も抜群だ。
そして俺の駒達は・・・真須美は肉体労働系のバイトもやっているのか、全体的に引き締まっているが出るところは出ている。奈央は俺より年下なのに大人びてバランスの良いプロポーション、リキは『胸が若干足りない』とか言い出しそうだが、俺的には文句無しだ。
そして茜は・・・驚いたことにさらしを胸に巻いていた。これでは服の上からDカップの膨らみを、当然察することは出来ない。
「何でそんな物を巻いて、胸を小さく見せているんだ?」
「それは・・・女の子に見られるのが嫌だから」
「それは、男の子に見られたいって事かな?」
俺がそう聞くと、茜は頷いた。てっきり、自分の大きな胸にコンプレックスがあるのかと思ったが、まさか性別にコンプレックスがあったとは。
これはまずい。茜にコンプレックスがある以上、もし種目で『色っぽくプレイヤーにセックスをねだる様にする』とか出たら、不利になる可能性がある。他人史で強制は出来ても、やはり『やらされている』のと『やっている』のとでは、違いが出てしまう。どうにかして、茜に自分から喜んで課題に取り組むようにしなければならない。それも上手く。
ふとアイディアが思い浮かんだ俺は、茜の他人史に新たな記述を書き込む。もちろん、コンプレックスを消してしまうような事はしない。まず、俺と茜との関係を『友達』から『最愛の兄貴と弟分』に書き換える。そして、『御堂誠二に男らしさについて勉強させてもらっている。御堂誠二の指導はどれも正しいので喜んで実践する』と過去の記述に書く。
これで茜は、身体は女だか精神的にはホモになった。これで、プレイヤー(つまり俺)を誘うような事も恥ずかしがる事はあっても、実行するだろう。
「これからは、さらしを巻いたりするなよ。自分を偽るなんて、男らしくないからな」
「はいっ、兄貴っ!」
この種目での得点は、ノイジーが5点。リキが手際を評価され7点。そして俺が10点。どうやら、他の2人が駒の選考に偏りがあるのに比べ、バランスが取れているのと真須美と茜にした工夫が評価された結果だ。
「次の種目は・・・12番。『駒達にプレイヤーの精子を飲ませて欲しいと哀願させ、精液を飲ませる』か。ちなみに、この種目も速さを競う物じゃないから焦らず工夫した方が良いよ」
サイバーがそう言い終わった途端に、リキが動き出した。焦っているようには見えないが・・・ただ単に自分の駒に奉仕させたいと言う欲望に耐え切れなくなっただけかもしれない。
3人にリキは近づくと、次々に触れて操作し始める。すると、3人は喉を抑えたり俺やノイジーの手元にあるドリンクを見つめたりし始める。喉が急に渇いたように。
「リキ・・・私喉がかわいちゃっタんだけど、何かもらえない?」
「ワタシも。水でもイイからもらえないかしら」
ケイトとニナが、それぞれ飲み物を要求する。ドロレスも「わたしも」と言って、それに続く。
「・・・喉が渇いたように『脳』に勘違いさせたみたいだね」
サイバーが『分析』の能力で実況してくれる。うーん、推測しなくていいから楽だ。
リキは3人の要求に、ズボンのジッパーを下ろすことで応じた。
「水は無いが・・・俺のザーメンなら好きなだけ飲んでいいぜ。お前らがどうしても飲みたいって言うんならな」
どうやらリキは、大胆にも直球で種目に望むようだ。
リキの肉体操作は精子に対して感じる味覚は操作できるから、精子をご馳走に感じさせる事は可能だが・・・水の替わりに精子を飲ませる事には、それでは足らないんじゃないだろうか? 特にまだ処女であるドロレスの嫌悪感やら何やらを軽減させなければ、成功はかなり難しいはずだ。
「いいのっ!? ならお願イ、あなたのザーメンを飲ませてっ!」
「わたしもっ。ザーメンを飲むなんて久しぶりっ!」
「えっと、あたしもいいかな? ザーメンを飲むのにするマナーのフェラチオとかパイズリって、やった事無いんだけど・・・」
「何言ってるノ、ドロレスには立派なティッツ(乳房)があるじゃない」
「そうよ、このボリュームと張りがあれば、リキだってたくさんザーメンを出してくれるワ」
「そう? ・・・じゃあ、がんばってみようかな」
俺の予想を反して、3人はいきなり精子飲みに乗り気だった。
「肉体と精神は、パソコンに例えるとソフトとハード。
おそらくリキは脳の中の記憶を操作し、精子を呑むことへの抵抗感や嫌悪感を無くし精子をご馳走のように認識させ、さらにはフェラやパイズリを飲むためのマナーだと認識させたんでしょう」
肉体と精神には、密接な関係がある。抵抗感や嫌悪感、羞恥心でさえも育った環境と文化によって培われた経験によって後天的に育まれるものだ。そして、経験は脳に蓄積される。・・っと、ノイジーは言いたいんだろう。
リキはその脳を操作することで、蓄積された経験を書き換えたと言うことだろう。
「腕を上げましたね、リキは。この前のゲームではここまでの短時間で記憶を操作することは出来なかったのに」
「そうだね。リキの集中力が上がってるのもあるけど、能力自体もレベルアップしてる」
・・・色々腕が上がっているらしい。
「・・・負けてはいられませんね」
ノイジーは作戦が纏まったのか、3人の巨乳美女&美少女のパイズリを楽しむリキをこれ以上見ていたくなかったのか、自分の駒の下へ向かう。・・・俺は奈央の記述をどうしようか考えているので、様子見だ。
「お前たちは、俺にフェラチオがしたいだろう」
疑問ではなく、完全に決め付けるようにノイジーは駒達に言葉を叩きつける。これが『命令』の能力なんだろう。
しかし・・・何だか脅迫のようにしか見えない。
「そう言えば・・・何だかしたくなってきたかな?」
早織が首をかしげると、弘美がぺろりと舌をだす。
「うん、実はフェラしたくてたまらなかったのよ。良く分かったわね、もしかして顔に出てた?」
「ちょっと継美さん・・・そんな事言わないでよ。せっかく私せっかく我慢してたのに」
恨みがましく理子が言う。・・・意外とすんなり能力は効果を発揮したようだ。
「だけれど、私はお前たちにフェラチオをしてもらいたくない」
そうノイジーが宣言すると、3人は慌てた様子で口々にフェラチオをさせてもらおうと、アピールやお願いを始める。
「ねぇ、あたしフェラ上手いんだよ。前彼もあたしの舌使い褒めてくれたし、一生懸命舐めるから気持ち良いよ。そんな事言わないで、あたしの口試してみてよ」
「私も・・・フェラの経験は少ないしおっぱいで挟めないけど、この前出会い系であった人に『理子ちゃんはチンポをしゃぶる才能があるね』って褒めてもらったから、きっと上手いです。だからフェラチオさせてください」
早織と理子が、自分がいかにフェラチオが上手いかをアピールするが、ノイジーはまだ見向きもしない。
「あたしは、ちょっとフェラチオに自信ないけど・・・そうだっ、あたしの口をオマンコ代わりにオチンチン動かして構わないから、あたしの口使ってみて。喉の奥をオチンチンで突かれても、あたし我慢するし、口の中に射精されても我慢して飲むからっ!」
「飲んでくれるのか? 俺の精子を」
弘美の必死のお願いに、初めてノイジーが反応を示した。・・・若干わざとらしかったが。
「あたしも飲むっ! フェラチオさせてくれればいくらでも飲むよっ!」
「私も飲みますっ、いえっ、飲ませてくださいっ!」
遅れまいと早織と理子が慌てて、弘美に続く。
「なら、私にフェラチオをすることを許可しましょう」
そう言うと、早速弘美がノイジーのチャックを下ろしにかかる。早織も理子も、速くフェラがしたくてたまらないようだ。
「種目の課題を操作だけじゃなくて、言葉で誘導したのは良いけど・・・微妙に課題と違う結果になってるのがマイナスだね」
サイバーにはフェラが主役で精子を飲む事が脇役になってしまった結果に、納得しかれるようだ。結構辛口の採点になりそうだ。
・・・そろそろ俺の動くべき時だろう。奈央の記述も、もう書き終わった。先輩達に負けないところを、見せてやろう。
< つづく >