名もなき詩-シーソーゲーム- 第4話

4.

 結城君が帰ってきた。
「旨い!やっぱ料理は優嘉と狩野がいい勝負してるぜ」
 やっぱり。何だか許せないのよねぇ・・・
 何だろう。面倒見たがりなのかな?私は。
「結城君!私のことは「樹莉さん」とお呼びなさい」
(こいつ・・・おだてには乗らんタイプか)
「それに、心の中では大して興味持ってないじゃない!」
(うう、いちいち心を・・・付き合いにくい女だな・・・)

 付き合いにくい・・・
 たったその一言が、私の胸にグサッと突き刺さった。
 いつも何を言われても作り笑いをしてきた私・・・
 だけどどうしてもその悲しみは隠せなかった。
「!!?・・・ご、ごめん・・・」
 ただ何となく謝ってしまった・・・

 柚恵たちと飲むみたいに、ただ盛り上げ役をやっていればいいのかな?
 何でだろ・・・気持ちが空回りしちゃう。

「あ~おいし!樹莉さんが居なかったら今頃病院か外食だったよ」
 優嘉ちゃんがわざとらしく言う。
「どういう意味です?」
 すかさず麻衣ちゃんが反応した。

「あんたの地獄料理食って倒れるか、それを避けて外食にしてるって言ったのよ」
「酷い!あんまりです!私だって一生懸命・・・」
「ふ~ん・・・人に自分のオシッコ飲ませたのは酷くないんだ?しかもあんなに罵って」
「!!!それは・・・ごめんなさい・・・・・・許してっていっても無理ですよね?・・・」
「当たり前よ!りゅ~せ~とだってそんな変態プレイしないわよ!・・・ふん!覚えてなさいよ!」
「・・・ご、ごめんなさい・・・」

 喧嘩してる2人だけど・・・実際は見えない信頼関係があるのよね。
 私はどうかしら。ずっと無難な道を選んでいた・・・
 だから誰とも喧嘩することもなかったけど・・・
 きっとダメなのよ。それじゃあ。
 そう言えばバレーをやってるときは素直になれてたじゃない。
 みんなと衝突もしてたし挫折もしたじゃない。
 でもみんなが私を主将だと推してくれた時は、涙が出るほど嬉しかった。

 そうだ。本当の自分を見せなくちゃ・・・
 あの時のように、今度は自分から歩いてみよう。
 険しい道も良いかもしれない。
 私は意を決して口を開いた。
「あの~。結城くん」
「?・・・何です?」
「わ、私を仲間に入れてください!」
 私は決心して頭を下げた。
 そう。私は本気なのよ。
「「「え?」」」

(うそ~!ライバルが増える~)
(また年上ですか~?気苦労ばっかし・・・)
 2人が慌てている。

「私は!既に私では無くなってしまったんです・・・心の穴を埋める相手を選べるなら・・・自分で決めていいなら・・・その・・・結城君・・・龍正君がいいの・・・」
 私は龍正君の返事を待つ・・・大丈夫。きっと受け入れてくれる。

「た、確かに!樹莉さんの能力はこれから先大いに役立ちます。役立ちますよ?ですが・・・同じ様な境遇の人たちを寝取るなんて・・・貴女には出来るんですか?」
「・・・勿論よ?龍正君。『一度壊れてしまった心をどうしようが我々の勝手』が信念でしょ?今の私も同じ。だから私は仲間になりたいのよ・・・そして龍正君の仲間になりたい・・・龍正君の魅力に惹かれたのかしらね」

 私はきっと強がってる。
 でもこの笑顔に偽りはない。
 本当にあなたと一緒に居たい。

「樹莉さんも俺のことを?」
 う・・・本当のことを言ったら嫌われるかも・・・
 ダメだわ。最後の最後で一歩が出ないなんて・・・
 何でこんなに苦しいの?・・・どうして言えないの?
「まさか!仲間としてよ!勿論・・・」
((よかった~))
 2人の声・・・これでよかったのよね・・・
 私はただ龍正君と居られるなら・・・この気持ちを秘めて・・・
(・・・ちょっと残念だな・・・)
 ・・・え?龍正君。い、今・・・
 ちょっと残念・・・そう思ったの?
 私が好きになってもいいの?
 そんなこと言われたら・・・本当に好きになっちゃうわよ?

 私は龍正君の部屋に忍び込んだ。
 彼の寝顔を見る。
 胸がドキンと大きく鳴る。
 欲しい・・・繋がりたい・・・
 肉欲に突き動かされる。
 ダメ・・・こんなに一方的に・・・

 私はいつも作り笑いをして自分の気持ちを隠していた・・・
 それが皆の為だとも思っていたけど・・・
 違う・・・私はいつだって臆病なの・・・
 プロに転向しなかったのも・・・きっと負けるのが怖かったから。
 自信がなかったからなのよ。

 私は自分の本能に突き動かされた。
 龍正君のズボンに手が伸びる・・・
 夜這いの割にはやけに落ち着いた手でズボンを下ろす。
 だらんと龍正君のペニスが現れる。
 これがさっきの大きさになる・・・

 フェラチオなら私だって自信があるわ。
 飛騨にずいぶんと教え込まれたから。
 でも、私はこの事実を受け入れなければならない・・・
 私は飛騨に弄ばれた。
 だから・・・龍正君の手で私を上から塗り替えて。

 私は全裸になって龍正君の側に腰掛ける。
 心臓が酷くドキドキしてるのに・・・私の動きは落ち着いている・・・
 何故かしら。きっと凄く安心しているのよ。
 私は髪をかき上げて口を大きく開け・・・ペニスを含んだ。
-ピチャペチャ-
 ん・・・いつもとは違う・・・
 じわじわと不思議な感情が込み上げてくる・・・
 これが・・・本当の感じること?

「おい優!・・・嘉?・・・・・・・・」
 龍正君が目を覚ました。
 今の私は何故か自信に満ちている・・・
 彼はきっと私を受け入れる。何でそう思うのかは分からない。

「じ、樹莉さん!?なにやってるんスか!」
 龍正君の驚いた顔が見えた・・・・・・かわいいっ♪
「実はねぇ・・・お姉さん君のこととっても好きなのよ・・・助けてくれたときから、もう私にはこの人しか居ないんだ!って思ってて・・・でも2人に遠慮しちゃって嘘ついちゃった。私はこの気持ちを隠してここに居ようってね。そしたら君が心の中で残念がってくれたじゃない?・・・それでお姉さんもうハートをズキュ~ンってやられちゃった♪両想いなら問題は無いわよね?」

「あのねえ・・・2人が見たら黙ってないですよ!?」
 2人・・・優嘉ちゃんと麻衣ちゃんか・・・
 ごめんね。でも私だって幸せになりたいの!!
「大丈夫。今日はする気無い様だし・・・この『リード』って能力便利ね。例えば・・・龍正君はなんだかんだ言ってしたがってるじゃない。その冷静な顔と心のギャップがたまんないわ!」
 これは本当。今日はしなくていいかなって思ってたから。

(やっかいな能力の人を引き入れたもんだ・・・でも・・・フェラの腕なら優嘉と互角ぐらいかも・・・見分けがつかなかったぐらいだし)
 龍正君の本心が聞こえてくる。
「え?嬉しい事考えてくれるじゃない!ん~かわいい!今日はお姉さん張り切っちゃうから!」
 私は龍正君をしっかりと抱きしめた。
 龍正君の匂いがする・・・身体ががっちりしている・・・
 ・・・好き・・・これが恋・・・これが愛・・・

 私は龍正君のペニスをおっぱいに挟んだ。
 龍正君が喜ぶかは分からないけど。
 とりあえずはいろいろ試してみないと。
「パイズリなんてあの二人じゃ出来ないでしょ?」
 龍正君の心の声を読む・・・
「う・・・た、確かに~・・・・」
 う~ん・・・いまいち・・・
 やっぱりフェラチオの方がいいみたい。優嘉ちゃんには負けないわよ!

-バンッ-
 私がフェラをしていると、勢いよくその優嘉ちゃんが入ってきた。

 龍正君は驚くどころかやっぱりといった顔をしている。
「ほら、来たじゃないですか」
「ウソ。だって寝る前は・・・」
 そうよ。確かに今日はするつもりがないって・・・
「こいつは勘が異常に鋭いんですよ」

 優嘉ちゃんが状況を判断した。
「あ~っ!やっぱり!なんだかんだ言って樹莉さん!りゅ~せ~の事食べてるじゃない!」
 まさか勘だけでここまでくるなんて・・・
「あ、あなたよっぽど勘がいいのね」

「そこどいてよ!」
 優嘉ちゃんがパジャマや下着をその辺に脱ぎ捨てる。

 今日の私は強気。ここは退かない!攻める!!
「大丈夫よお嬢ちゃん。お姉さん一人の物にはしないから」
「共有も嫌よ!これ以上私のエッチを減らされてたまるもんですか!」
 それはそうよね・・・彼女だもの。
 でも、どこかに攻略方法があるはずよ!!

「じゃあ・・・どうしたいのかしら?」
 やっぱり今の私は自分でも信じられないぐらいに自信がある。
 小悪魔的な意地悪をしたくなる・・・
「な、何?・・・」
 優嘉ちゃんの心を読む・・・

 見つけた!攻略法!
「・・・お嬢ちゃんは3Pがやってみたいんですって!龍正君」
「な!?・・・こ、心を読まないでよ!!」
 優嘉ちゃんの顔が真っ赤。

(2人同時~?優嘉と麻衣ではあり得ない行為だ・・・新鮮かも・・・)
 ふふん。龍正君の許可も得たわ。
「・・・龍正君もいいって思ってるわよ。決定ね・・・・・・じゃあ私は十分濡れてるから本番をいただくわよ。お嬢ちゃんは口でやってもらうといいわ」
 私は龍正君に跨ろうとした。でも優嘉ちゃんがそれを遮った。
「ちょ、ちょっと!何で彼女のアタシが本番を譲らないといけないのよ!」

 ここは我慢。譲歩しないと。だからまずは・・・優嘉ちゃんをメロメロにする!!
「・・・それもそうね。じゃあ龍正君。ちょっと待っててね」
 私は優嘉ちゃんの顔を両手で挟み、ディープキスをする。
 ふふっ。ぷっくりした唇ね。
「ん・・・む・・・ふぁ・・・・」
(何これ・・・すっごい手馴れてる・・・)
 優嘉ちゃんが感じてるのが分かる。
「ふ・・・いい声ね・・・」
 次第に優嘉ちゃんの抵抗が無くなっていく・・・

 あらあら。いつの間にか龍正君ったら寝ちゃってる。
 気にせず優嘉ちゃんがフェラチオをする。
「って寝てんのにジャマすんじゃねえよ!!この淫乱どもが!」
 あ、起きた。かなり機嫌が悪いわね・・・
「ふえ?」
 それでも優嘉ちゃんはお構いなしみたい。きっと自分のフェラが一番と思ってる。
(まだ昨日の疲れが残ってるんだよ!元はといえば貴様のせいだろうが!)
 それもそうね。確かに優嘉ちゃんのせいね・・・

 どうやらかなり頭にきているみたいよ。
「りゅ~せ~。もうたまらないのぉ。樹莉さんったらすごいテクニシャンなのよぉ?それにあのおっぱい・・・反則級よねぇ・・・」
 甘ったる~い声でペニスに吐息をかける優嘉ちゃん。
(く・・・相変わらずこいつは・・・)

 今がチャンスみたいね。便乗する。私は龍正君の上半身を撫で回す。
「どお?龍正君。あなたが一番だと認める技を持った彼女と・・・その彼女が認める技を持ったお姉さん・・・同時にされたらどうなのかなあ?」
 さあ、お姉さんの甘い誘惑にメロメロになっちゃいなさい。

「それはマズい・・・そうだ。料理対決とかにしたらどうだ?」
 ふっふっふ・・・私は騙されないわよ。
「それじゃあ龍正君の思う壺じゃない。『リード』があればそんな手は通用しないわよ。的確に龍正君の弱点を突いてあげるから・・・」
(最大のピンチだ~。こういうときに麻衣が来てくれれば・・・)
 麻衣ちゃんなら止めてくれるって?じゃあそれを逆手に取っちゃいましょう。
「あら?4Pがいいの?呼んで来ようかしら」
「そうじゃないっつーの!!」

「りゅ~せ~ウルサイよっ」
-ヌプッ-
 龍正君のお尻を攻める優嘉ちゃん。さっそく実践してるわね。
「ぐあ・・・貴様どこでそんな技を!」
「どこって・・・その樹莉さんよ」
 ふふっ。私も攻めようかな?
「じゃあお姉さんも始めるわよ・・・ここがいいのかなぁ?龍正君」
 私は龍正君の乳首を重点的に攻める。
 私ってこんなに積極的なんだ。知らなかった。
(そこは人類共通だ!・・・恐らく)
 そうよ龍正君。それでも言葉攻めって言うのがあるでしょ?

「りゅ~せ~。もう快感に身をゆだねなよぉ・・・えいっ!」
-グリグリ-
 うふっ。優嘉ちゃんったらいきなりフル回転してるわね。
「!うおぉぉぉっ!」
(ぐう・・・やばい・・・何かが爆発しそうだ・・・・お、俺が俺で無くなる・・・この感じは・・・)
 龍正君が龍正君で無くなる?どういうこと?

「た、頼む・・・もうやめ・・・・」
 龍正君の顔が汗だくになってる・・・
「りゅ~せ~の感じた顔!そそるわね~」
-グッ-
「!!うあっ!」
 ??・・・何か・・・越えてはいけない一線を越えたような・・・

 どことなく龍正君の雰囲気が変わった。
「・・・お望みどおり相手してやるぜ・・・」
 そんな異変を優嘉ちゃんは気がついていない・・・
 大きくなったペニス・・・それだけ見てる。
「う、うそ・・・さっきより大きくなってる・・・」
 龍正君の目が変わった。怪しい笑みがこぼれている。
「どけ・・・」
 ぼそっと呟く・・・多分私に言ったと思う・・・
「え?」

 龍正君は両手で私の身体を持ち上げ、体を起こして座った。
「どうしたの龍正く・・・ん?・・・」
 こ、心が読み取れない!なんで!?
 ま、まるで別人格・・・交代人格ってやつかしら・・・
 龍正君が強引に唇を奪い、舌を絡める。
「っ!!!あ・・・ふ・・・・ふあ・・・・」
 何これ!すごい力・・・だけど全身を包まれるような優しさ・・・

「っはっ・・・はっ・・・んっ・・・」
 やばい・・・気持ち良い・・・蕩ける・・・

 龍正君は私の頚動脈を締め上げる
「・・・・っ・・・っ・・・く・・・」
 ぁ・・・力が抜けてく・・・
 このままじゃ死んじゃうかも・・・
 でも・・・すぅってなるのが・・・きもちいい・・・

 龍正君は首から手を放し、背後に回り、私の乳首に刺激を与える。
「はぁっ、はぁっ、はああぁっ!!?」
 何で?さっきとは快感が段違い・・・

 四つんばいの私の後ろから一突き・・・・
-ズンッ-
「っっ!!!??・・・・うああぁぁぁああぁぁぁっっっ!!!!」
 さっきから何が起きてるのか良く理解できない・・・
 龍正君が別人のようになって・・・
 いきなり愛撫してきて・・・
 凄まじく大きな快感の波に飲み込まれる・・・
 私は身体を限界まで弓なりにそらし、恥部からは潮を吹き、暫く硬直していた・・・
 心地よい脱力感が襲ってくる・・・もう何もかもどうでもいい・・・

「起きろ樹莉!」
-パアン-
 私は頬を叩かれた。その痛さで目が覚める。
「ん~・・・あ!」
 私・・・こんな子供にわずか1分でイかされたの!?でも気持ちよかったわぁ・・・
 そういえば優嘉ちゃんは・・・
 私は、真っ赤になって倒れている優嘉ちゃんを見てゾッとした。
 この子・・・キレさせるとヤバイ・・・
「お前には地獄のような天国を味わわせてやるよ!」
 それって結局天国なの?・・・地獄なの?・・・

 私の中にたっぷりと熱い精液が流れ込む。
「!!!!」
 何!?ああ!!
 身体中が快感に包まれ、衝撃に包まれた。
「イくうううぅぅぅっっっ!!!」
 快感はまだ溜まる・・・早くイキたい・・・イキたいの!!
 だ、ダメ・・・頭がしびれてきた・・・おかしく・・・なる・・・
 い、いつまでたまるの?はやく・・・らくに・・・して・・・
 そして、突然その快感が爆発した。
「あっ!ああっ!!あああああぁぁっっ!!!」
 私の身体にはいつまでも心地よい余韻が走っていた・・・
 今度こそ・・・何もかもどうでもいい・・・このまま快楽の中で死にたいぐらい・・・

 ・・・だいぶ時間がたった気がする・・・今・・昼?
 私は目が覚めて夜の記憶を手繰り寄せる。
 龍正君に凄まじい勢いで犯された・・・
-ざわっ-
 そうだ・・・龍正君と交わったんだ・・・
 それを実感しただけで身体が痺れる。
 とりあえずシャワーを浴びて食卓に向かう。

 食卓には龍正君の作った料理が並んでいた。おいしそうね。
「やってくれたわね龍正君・・・今日は無理そうだけど、明日は負けないから」
「すみませんね・・・でも何かウキウキしてません?」
 あら。顔に出ちゃってた?うふふふふっ。ダメだ。隠し切れないもの。
「だって・・・あんな凄いの初めてなんだもの。でもあれは一番最後にしてね。最初は私が主導権とりたいのよ」
「・・・まあ、そういうのが好みなら」

 そして・・・私達はチームとして出発する・・・
 龍正君を中心とした集まり・・・
「新たな仲間も加わり、これから本格的に商売しようと思う・・・我がグループの名前は!」
 龍正君はホワイトボードの上のほうに書いていく。
「「「DEPRIVE OF PUPPETS?」」」

「基本は樹莉さんのようなMC専門の寝取りだ。しか~し!復讐したいという依頼も大歓迎だ。だが!MC専門の寝取り!これは表向きには公表しない。何故なら、MCする側がこういう団体があったら警戒するからだ」

「で、隠す為にこのグループ名を縮めようと思う。DEOPETでデオペットとする。聴いただけなら、なんとなく寝取ってペットにするっぽいだろう?」

 私は決意した。
 退社して一生龍正君と添い遂げる。
 そして・・・親友とのお別れを告げようと電話をかけた。

 私の携帯が鳴る。
 折角の休日なのに・・・
 ディスプレイに樹莉の名前が表示される。
 樹莉か。今頃電話してくるなんてね。
 まあいいわ。何せおもちゃにしてることのほうが多いから。
「もしもし?」
「あ、琉璃?私。樹莉よ」
 それはディスプレイを見れば分かるって。

「ああ、樹莉。今日は連絡無かったけどどうしたの?」
 折角皆で集まろうって話しをしてたのにね。
「え?そうそう、実はね、私彼氏が出来たの」
 樹莉が照れながらそう言う。まったく。分かりやすい子。
 ついに飛騨と正式なお付き合いかしら?
「彼氏?・・・飛騨じゃなくて?」
「な、何でそれを・・・」
 いけない。ついストレートで聞いちゃった。

「聞きなさい樹莉・・・『真実が口から漏れる』」
「・・・うん。飛騨じゃない・・・結城、龍正君・・・」
 樹莉の返事がぼんやりしたものになる。
「・・・誰それ。飛騨の支配から解放されたの?」
「うん・・・」
 解放・・・あれほど長かった支配から?
 ・・・これは何かあるわね・・・
「それでその子と同棲するの?」

「それでさ・・・私退社することにしたわ・・・」
「退社?どうして?」
「え?だから・・・」
 何故そこで口ごもる。
「結婚するの?」
「そう・・・」
 結婚・・・まさか嘘で言ってるわけはないし。
 何より暗示で本心しか言えないはず。
 ・・・もしくは自分が勝手に一方的に思ってるとか・・・

「本気で好きなの?」
「そうよ・・・」
 さて・・・これはいろいろ不思議なことがあるわね。
 もっと深く聞いたほうが良いわね。
「じゃあ明日お別れ会を開くから、連れてきて。いつもの時間、いつもの場所で」
「はい・・・」

 ふう。さて、皆に知らせときましょうか。

「・・・樹莉さん。ちょっといいですか?」
 龍正君が私を部屋に誘った。
「え、ええ。もちろんよ」
 え?まさかこれから?

 龍正君のテレビがつけられる。
 そしてDVDを再生した。

「さあ、京徳東対秀創学院の全国大会への切符をかけた運命の試合が始まります。左に秀創学院、右が京徳東です」

「こ・・・これって・・・」
 私の目に私が映る・・・
 仲間と会話する私は凄く生き生きとした目をしていて・・・
 いったいこんな県大会の映像をどこから手に入れたのかしら・・・
 私はその『ジュリア嬢』に釘付けになった。

「・・・まだ未練がありますか?」
 龍正君がそっと私の横に座った。
「・・・そう。知ってるでしょ?私の記憶を見て」
「・・・今度行きましょうか?バレーをしに」
「・・・うん」

 龍正君はこれを見せてどうしたいのだろう・・・
 龍正君が一度トイレに行った。
 試合が第3セットに入る。
 そうか・・・他人には私はこう見えていたのか・・・

 そしてあのシーンが近づいてくる・・・

 そして龍正君が戻ってくる・・・
「・・・樹莉さん・・・今からでもバレーをするべきです。社会人でも出来ます。樹莉さんほどの実力があれば・・・」
「・・・買いかぶりすぎよ・・・」
「すみません・・・樹莉さん・・・こんなやり方は間違ってると思いますが・・・」
 何?その言い方・・・いやな予感がする・・・
 やだ・・・怖くて龍正君の顔を見れない。

「・・・俺の目をじっと見てください・・・」
 龍正君が私の顔を手で挟む。
 私は自然と龍正君と視線が重なる・・・
 龍正君の強い力のこもった瞳・・・
「・・・じっと・・・じっと・・・そうすると吸い込まれるような感じがしてきませんか?」
 私は・・・目が離せない・・・
 今までに飛騨によって催眠をかけられすぎた。

「そうです・・・疲れたら目を閉じて・・・身体の力を抜いて・・・」
 私の意識が朦朧とする。
 かろうじてわかる・・・そんな状態。
(・・・これで大丈夫だな・・・さて・・・やっぱり樹莉さんは夢を追うべきなんだよな・・・これで良いんだよな・・・)
 ドキドキする。いやな予感が近づいてきた。
 龍正君は・・・私の記憶を消して、夢に生きさせようとしている・・・

 違う・・・違うのよ・・・私の望みはもうそれじゃないのよ・・・
 お願い・・・私の気持ちに気づいて・・・それはあなたの誤解・・・
 もっと大切なものがあるのよ・・・
 ダメだ・・・力が・・・抜ける・・・
 握り締めていた手が解ける。

「・・・ん?」
 よかった・・・龍正君がわたしのメッセージに気がついた・・・
 私はさっき龍正君が離れていたときに、とっさに紙にこう書いて握り締めていた。
「私の夢は龍正君と生きること」
 龍正君・・・伝わると良いけど・・・

「・・・バカだな俺は・・・俺の能力では細かな感情の変化はわからない・・・そうか。とんでもないバカなことをするところだったな・・・」
 良かった・・・伝わった・・・
「樹莉さん・・・もう記憶を消したりしないから・・・安心してください・・・」
 龍正君がそっと私を抱き寄せる。
「・・・力を抜いて・・・安心して・・・」
 龍正君が催眠術をかける・・・
 確かに技術はたいしたことがないかもしれない・・・
 でも凄く気持ちいい・・・私はすぐに沈んでいった・・・

 私の意識が戻る。
「・・・え?あ、あれ・・・」
 すごくすっきりとした良い気持ち・・・
「大丈夫です。害のある暗示はかけてません」
 大丈夫・・・そんなことあなたの心の声でわかってるから。
 信頼してるから。

 突然龍正君が真剣なまなざしで私を見つめてきた。
 おもわず胸が高鳴る・・・
「これからは俺が樹莉さんを守りますよ。だから樹莉さんは俺を守ってください」
 凄い力のある言葉・・・私はその言葉を聞いて涙が込み上げてきた・・・
 私を守ってくれる・・・私が守る・・・
 どちらかが守るんじゃなくって、お互いが守りあう。
 ・・・私は君が好き・・・とっても・・・
 私は龍正君に軽くキスをして答えた。

 翌朝・・・
「ねえ龍正君。今夜、私の同僚がお別れ会を開いてくれるの。一緒に来てくれない?」
「何で俺が?」
「実は言っちゃったのよ。彼氏が出来たって」
「・・・はあ?」
「いずれ結婚するために同棲してるってね」
「・・・はあ」
 龍正君がため息を漏らした。
 そんなに嫌?
 いえ、面倒くさいだけなのね。よかった。

「彼女はアタシだからね」
 ユウちゃんが嫉妬しちゃった。
「さすがにそんなことばかり言ってると重たい女だって嫌がられるわよ」
 私は少し意地悪をしてしまう。

-バンッ-
 ユウちゃんが机を叩く。嫌ねぇ。物に当たっちゃダメよ?
 ほら、スープがこぼれちゃったでしょ。
「ふんっ!りゅ~せ~とアタシの愛の物語も知らないでよく言うわよ!!」
「・・・だって事実でしょ?」
「く・・・りゅ~せ~はアタシのこと邪魔だなんて思わないわよ!!」
「・・・さあ?あ~『リード』って残酷なことを教えるわね~」
 ちなみにこれはウソ。龍正君は皆を大事にしてるわよ。
「っ!!・・・りゅ~せ~っ!?」
 ユウちゃんが龍正君を見る。まさかとは思うけどあり得なくないってことね。
 つまり不安に思ってる・・・世の中に絶対はないからね。

 その龍正君はずっと下を向いたままのマーちゃんを気にしている。
「・・・おい、麻衣・・・どこか悪いのか?」
「・・・あ、いえ。なんでもないですよ」
「おい、待てよ・・・」
 龍正君がマーちゃんの腕をつかむ。
「んっ!?・・・」
 マーちゃんが龍正君にキスをした。
「・・・いいんです。私は龍正さんがいればそれで・・・」
 照れたように笑って部屋に走っていった・・・
 マーちゃんは龍正君を必要としてる・・・
 恋愛感情はその次なのかもしれない・・・
(・・・悪いな・・・まだ俺にはやることがある・・・)
 龍正君のやること・・・それはきっと私のことだ・・・
 そして多分・・・今夜のこと・・・

 その夜、いつもの飲み屋で琉璃たちが集まっていた。
 特にいつも私の隣に居た柚恵は感慨深いみたい。
「いや~。樹莉が結婚するなんてね~」
 ふふっ。どうせなら泣いちゃってもいいのよ?
 何なら私に抱きついても・・・
 あれ?・・・意外とドライなのね・・・

「さて、龍正君に紹介するわね。こっちが朝野柚恵(あさのゆえ)」
「よっろしっくね~!」
 彼女は素直でいい子。時々ムッとするけど。
 あと責任感が強い。
「西岡琉璃」
「・・・よろしく」
 彼女は私と同じバレーボール選手だった子。
 無口だけど本心では思いやりのある子。
「慶田美咲」
「よろしく~」
 彼女はよく観察力のある子。
 そして、世話好きな子。
「そしてボスの蟹沢朱里(かにさわあかり)」
「誰がボスだコラ!よろしくな!青年!」
 彼女はまとめ役。
 みんなのリーダー的存在。
 そして容赦ないツッコミをする。

 美咲が勢いづける。
「さあ、今日は樹莉のために飲み明かすわよ!!結城君もじゃんじゃん飲んでじゃんじゃん食べてね!お姉さんたちの前祝よ!」
「・・・ども」
 龍正君もいい飲みっぷり。

 ほどよく酔いが回って、トークが際どいものになる。
「樹莉ってば初めてのとき緊張しちゃって挨拶すら噛んでたのよ」
「ち、ちょっと柚恵!!喋りすぎだって!!」
「そう言えば言い寄ってきたおっさんを蹴り飛ばしたこともあったな」
「朱里まで!!皆飲みすぎよ!!」
「へぇ~。そうだったんですか・・・」
 本当は龍正君も知ってたりするかもね・・・例のライブラリーで。

「・・・そろそろ頃合ね」
 琉璃が喋った。琉璃はあまりお酒に強くない。
「いよっ!待ってました~!」
 柚恵が盛り上げる。
 朱里も美咲も柚恵も拍手してる・・・
「・・・え?何何?」
 いったい何が始まるの?

「結城君。いいもの見せてあげる」
 琉璃が指を突き立てる。あれ・・・何か気持ちがざわざわする・・・
「樹莉・・・『ジュリア嬢の真実は私の中に・・・』」
「あ・・・」
 あ、あれ・・・私・・・
 琉璃?・・・ご主人さま・・・

「・・・樹莉、あなたのご主人様は誰?」
「・・・飛騨雄介と・・・西岡琉璃様です・・・」

「さあ樹莉、結城君の目の前で服を脱ぎなさい!」
 ごしゅじんさまがぬげというから・・・ぬぎたい・・・
 わらいごえがきこえる・・・よくわかんない・・・

「さて・・・樹莉さん・・・『遠く想い焦がれて』」
 したぎもぬがなきゃ・・・
 ・・・え?何で?何で居酒屋で脱いでるの?
 あ、あれ・・・私・・・え?もしかして催眠?
「あ・・・龍正君・・・」
 琉璃たちが裸でキスしあっている・・・
 よく状況がわからない・・・

 龍正君がこれまでにいきさつを話してくれた。
「すみませんね。琉璃さんの催眠までは手をつけて無くて。かかっているのは知っていたんですけど」
 なるほど・・・こいつら・・・私でばれない様に遊んでたのか・・・
「・・・いいのよ。こいつらにはちょっとムカついたけどね!」
 4人は龍正君の誘導でキスからプレイに発展している。
 !!そうか・・・龍正君の能力は絶対・・・

 龍正君が琉璃たちの処分を私に聞いてきた。
「・・・さて、どうしましょうか?」
 どうする?そんなの決まってるじゃない。
 彼女たちは親友・・・

 だからこそ私と同じ立場を味わってもらう・・・
 だって親友だから。そのぐらいじゃ友情は消えないわよ。
 ねえ?だって私の場合がそうだったから。そうでしょ?

「・・・そうねえ・・・デオペットで売っちゃう?」
「その理由は?」
「だって知りながらも助けてくれなかったのよ。友達としては最低じゃない。だから・・・私との友達関係はそのままで、誰かの奴隷になるっていうのがいいわ」
「・・・じゃ、復讐として受理しますよ」
「私も手伝うわ。電話だからリードが使えなかったのよね」

 私はきちんと自分の気持ちと向き合うことにした。
 怒りたかったら怒る。我慢しても誰も喜ばない。
 だから・・・真の信頼関係は龍正君と・・・ね?

 数日後・・・私の携帯に電話がかかってきた。琉璃からだ。
「さあ樹莉!『ジュリア嬢の真実は私の中に・・・』」
「あ・・・琉璃さま・・・『シーソーゲーム』」
「え!!?」
 琉璃が軽くうめき声を出す。
 いきなりキーワードを言うなんてね・・・今まで私はこれに何回引っかかったのかしら。
 まあいいわよ。恨んでないし。貴方達も頑張って奴隷してね。

「逆なのよ琉璃・・・あなたが催眠にかかってるのよ・・・今から言うことをよく聞いてね・・・友達のお願いよ・・・」
「・・・はい・・・樹莉さま・・・」
 これでよし。琉璃だけは・・・少し虐めておかないとね~。主犯だし。

「柚恵~。今までありがとうね」
 いつものように樹莉が私の横に座った。
「あ、樹莉・・・何か昨日の記憶が無いんだけど・・・」
 そんなに飲みすぎたっけなぁ・・・
「ええ?新しいご主人様が出来たんだって自慢してたじゃない」
「・・・はあ?奴隷なのはじゅ・・・」
「え?」
 あ、いや・・・うっかり喋っちゃうとこだった。

「柚恵~。ご主人様とはどんなプレイをやったの?」
 樹莉が私の目を覗き込んで聞いてくる。
「だから、私は・・・・・・私は?私は・・・」
 何だろう・・・変な感じ・・・
 ご主人様・・・そうだ・・・きのうはごしゅじんさまと・・・
「え~っと・・・ローションを塗りたくってべたべたしてた・・・」
「そう。気持ちよかった?」
「うん・・・とてもよかった・・・」
 べたべた~って塗られるとさ。全身がびりびり~って痺れるように感じちゃうんだよ?
 凄い凄い。私はご主人様の虜なんだよ。本当に愛してるんだから。

「あ、そうだ~。私が以前気になってた人を催眠で寝取ったんだって?」
 樹莉・・・そうだ。私の彼氏のことね。
「うん・・・催眠で樹莉の気持ちを変えたの・・・そして男の人が私を好きになるようにしたらしいわ・・・」
「そう。ありがとうね。もしそうじゃなかったら龍正君と出会えなかったかもしれないし。さっすが親友ね!」
「うん・・・どういたしまして・・・樹莉もお幸せにね」
 親友・・・そうだ・・・樹莉と私は親友・・・
 樹莉には全てを報告しなければならない・・・親友だから・・・

 私は彼氏とご主人様の二股をかけている。
 でもいいのよ。だって親友の樹莉がそれでいいって言ってくれたから・・・
 それにどっちか一方を取るなんてできないもの。

「美咲~お疲れ~」
 樹莉が近づいてきた。
「樹莉~おめでとう」
「ありがとう。美咲はどう?上手くやってる?」
「え?上手くやるってなにを?」
「何って・・・奴隷に決まってるじゃない」

 奴隷?いったい何を言って・・・・・・
 奴隷・・・あれ?・・・私は・・・奴隷だっけ?
 え~っと・・・うん。奴隷だ。間違いない。
 樹莉に見習って私も奴隷になることにした。
 だってご主人様を持つことが親友の証だもの。

「美咲のご主人様はどんな人なの?」
「え~?あのね。とっても不潔な人なんだけど・・・私はその匂いが大好きでね、だから・・・彼の身体を舐めて綺麗にしてあげるのが好きなの・・・きゃ、言っちゃった!内緒よ?」

「勿論よ。そう。とっても幸せなのね?」
「うん。また行き詰ったらアドバイスしてね。先輩奴隷さん」
「ええ。喜んで」

「ボス~」
 お、幸せいっぱいの樹莉が来たぞ。
「・・・誰がボスじゃ!!」
「あ、そうだった。ボスじゃなくて奴隷なのよね?」
 ?ど・・・れ・・・い・・・
 全身を衝撃が走る。
 そうだ・・・私は奴隷だ・・・

「朱里はご主人様と何してるの?」
「そうだな~SMプレイだな。だいたいは私がMだけど、たまにS側もやらせてくれるんだよ」
 ゾクゾクする・・・鞭で叩かれるときの快感・・・叩くときの快感・・・

「へぇ~。思いやりのあるいいご主人様ね」
「そうだろ?樹莉の飛騨とは大違いだぜ」
「ははは・・・うっさいわボケ!!」
「ぐおっ!い、いつの間にツッコミを覚えた!?」

「じゃ、元気でね」
「おう、たまには奴隷話で盛り上がろうな!!」

「琉璃~」
 く、し、信じられない・・・
 私がまさか催眠で落とされるなんて・・・
 う、樹莉が来た・・・
 は、早く逃げなきゃ!

「どうしたの?『琉璃様』戻ってきて!!」
 う・・・こ、これがキーワードなの?
 に、逃げたいのに・・・
 抵抗しようとすると・・・
 どんどん心臓がバクバクする・・・
 息がしにくくなる・・・
 頭がガンガンする・・・
 気持ち悪い・・・吐きたいけど吐けない・・・
 こ、これ以上は・・・逆らえない・・・く、苦しい・・・

「あら。戻ってきてくれたのね?」
「し、白々しい!!あんたねぇ!!」
「何よ?私たち親友でしょ?『琉璃様』は親友を殴らないわよね?」

 ぐう・・・ま、まただ・・・
 手を出そうとするとさっきみたいに苦しくなる・・・
 こんなに強力な暗示なんて・・・
 他の3人は表層意識まで変えられちゃってるし・・・
 深層心理だけを強力に支配するなんて・・・
 あの龍正って子は・・・何者なの?

「『琉璃様~』ご主人様と遊んだの?正直に説明して・・・」
 く、口がわなわなと震える・・・
 ま、また息苦しい・・・
 こ、これも・・・抵抗できないの?
 い、言いたくない・・・い、いや・・・
 わ、分かったわよ!言うから!言うから楽にさせて・・・

「い・・・行ったわよ!!行かなきゃ苦しくなるようにしたんでしょ!!あんな奴大っ嫌いなのに!!見ただけで吐き気がするのよ!!分かる!?いやいやさせられるこの気持ちが?」
 まくし立てるように言うとスッキリする。
 ダメよ・・・これは罠なのに・・・

「・・・だって琉璃を買った人がそういうのが好みだって注文したんだもの・・・心配しなくても私は親友よ」
 親友・・・そういわれると怒りが消えていく・・・
 な、何でよ・・・私・・・こんな短期間でここまで変えられちゃうなんて・・・ありえない・・・

「で、どうだったの?セックスは?どんなプレイ?」
 ダメ・・・抵抗できなくなってくる・・・
「く・・・メイド服やらスク水やら着せられて・・・」
「待って?着せられたの?」
「ぐう・・・そ、それも許してくれないの?・・・き、き・・・着ました・・・私から・・・ご主人様に命令されて嫌々・・・」
「そう。着てみてどうだった?」
 一度栓を開けたら流れ続ける・・・栓が閉まらない・・・
「うぅ・・・き、着たら・・・なんだか気分がおかしくなって・・・なりきっちゃって・・・自分をメイドだと思い込んで奉仕したり・・・学生だと思って先輩に抵抗できずに犯されたり・・・風紀委員だと思ってどんなおかしなことでもしてあげたり・・・」

「ふうん。ノリノリだったのね?」
 何よ!その笑顔は!!
「ちくしょう!!貴方達が制服を着たらその人格になるようにしたんでしょう!!」
 また怒りが込み上げてきた・・・

「警官とかナースとかCAとかもやったの?」
 ダメ・・・言いたくない・・・言いたくないっ!!
 うぐっ・・・・・・い、いや・・・いいたく・・・ない・・・
「うあ・・・ああ・・・ああ・・・や・・・やぁっ!・・・やったわよっ!!」
「どうだった?コスプレ・・・」
「・・・もう・・・やめて・・・」
「何で?親友じゃない。話してよ。どうだった?」
 親友・・・まただ・・・抵抗が薄れてく・・・
「・・・着ていて・・・なりきってると・・・た、楽しい・・・うああぁぁぁっ!!」
「ほらほら、泣かないの。子供じゃないんだから・・・」

 ち、ちくしょう!!何でこんな目にあうのよ!!
 3人はまだ幸せそうにしてあるから良いわよ!!
 私は嫌々なのよ!!しかもコスプレ好きに変えられていく・・・
 だって・・・やるたびに・・・変な快感が・・・
 樹莉に手を出すんじゃなかった・・・
 大会のときのことを悪いと思う気持ちがあれば・・・手なんか出さなかったのに・・・
 樹莉が私を恨んでないと思って・・・調子に乗っちゃった・・・

「はい・・・『琉璃様』泣き止みましょうよ。ほら。プレゼント」
 頭に何かが乗せられた・・・ま、まさか・・・
 心臓がバクバクと激しくなる・・・
 私の頭の中で2つの意思が闘っている・・・

「う・・・うう・・・樹莉ぃ・・・」
 苦しい・・・凄く苦しい・・・
 もう楽になりたい・・・
 だ、ダメ!!このまま負けちゃダメ!!
 で、でも絶対に勝てるわけ無いわよ・・・
 そ、そうであっても!!闘わなきゃダメなの!!
「じゃあ尻尾もつけちゃおうか」
 樹莉が私のお尻に何かを貼り付けた。

-ドクンッッ!!-
 あ・・・ああ・・・・・・
 1つの意思が負ける・・・
 嫌よ・・・私は人間なの・・・
 私は・・・私は・・・

「琉璃~。可愛いわよ~」
 樹莉が頭を撫でる。気持ちいい・・・
 私は樹莉が好き。1番のお友達なんだよ。
「にゃうん・・・な~お」
「じゃ、このままご主人様の家に行けるかな?」
「にゃ~~ん」
 私は樹莉に言われたようにご主人様の家に向かって歩き出した。
 う~ん。二足歩行は慣れてないから歩きにくいや。

 ご主人様。早く琉璃の火照りを覚まして。

 私は私の新たな家に帰ってきた。
「龍正君。辞表出して来たから。年休もあるし、今日で終わりよ」
「そうですか・・・」
「あと、私のお給料と貯金」
「そうですか・・・・・・ってちょっと待った!!なんスかこれは!!」
「どうせ私は龍正君と共に生きるんだから。それに私の部屋もちゃんと作って欲しいし」
 ちなみに借りていたアパートも解約したからね。
 荷物もとりあえずダンボールに詰めて会議室に入れてあるから。

「・・・じゃあありがたく受け取っておきます」
「で・・・」
「分かりましたよ。その代わりにセックスして欲しいんでしょ?」
「そうよ。さすがライブラリーね」
「ふん。リードには負けますよ」
 私はこの能力をもっともっと強くしなくちゃ。
 なんたって私が龍正君を守るんだから。
「・・・頑張りましょ!」
「ええ」
 私達はがっちりと握手を交わした。

 私は知ってるわよ?龍正君・・・
 あなたは様々な形の愛を売ろうとしている・・・
 それは尽きることの無い人間の欲・・・そして争いの源・・・
 DEOPETはそんな欲を理想的に叶えるための組織・・・

 MCされた者をそれ以上に幸せにする絶対の自信・・・作られた幸せでなく本物の幸せにする自信・・・そしてそれを成しえる絶対的な能力があなたにはある・・・断ち切る力と生み出す力・・・

 寝取る相手は『悪』・・・それは正義の餌・・・そして自らも悪に染まっていく・・・

 そしてお金を払えば自らの手を汚さずとも手に入る欲望の結晶・・・代わりに手を染めるのは龍正君・・・

 奪う過程では誰も傷つかない・・・そして究極のペットを提供する・・・

 龍正君の心にある男の人・・・龍正君が超えようとしている相手・・・

 そして商売にはうってつけの力が私にはある・・・
 さあ、龍正君。あなたのために私は力になるわよ!

「うははははっ!あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」
 樹莉さんはまたいっぱい酒を飲んだ。
 そしてさっきから笑い続けている・・・

「ほれほれ~。ユウちゃんも飲め飲め~」
「う、うっぷ・・・も、もうムリです・・・」
「ああん?私の酒は飲めないってぇ??」
「い、いただきますよ・・・う、うえっ・・・んぐっんぐっ・・・」
 見たら麻衣は酔いつぶれて突っ伏して眠っている。
 うなってるからかなり気持ち悪そうだ。

「ぷは~っ!!・・・あ、ありぇ?ふりゃふりゃ~っと・・・れれ?・・・ととと・・・あう~・・・」
 お、ついに優嘉もダウンした。
 床に大の字になってくかーっと眠っている。
 お前ら・・・そこでお漏らしするなよ?

「ささっ!龍正ちゃんも飲んだ飲んだ!!」
 樹莉さんは笑いながら俺に酒を飲ませてくる。
 もうどれほど飲んだろうか。
 小さい頃からあの人にさんざん酒を飲まされていた俺はまだまだ耐えられるけども・・・

「もう飲みすぎですよ」
「ありゃ~。怒られちった~。えへへへへ~」
 完っ全に酔ってる・・・
 何でこんなに飲んでるんだ?
「にゃんで?龍正ちゃんがしゅきだかりゃでしょ!!んもう!!」
 うわ、今度は怒ってきた。

「・・・・・・安心できるのよ」
「え?今何て?」
 聞き取れなかったその台詞を確認しようと樹莉さんに尋ねる。
「こら~坊主!!あんみゃり年上をからかうんじゃにゃいわにょ!!」
 今度は絡んできた・・・酒臭い・・・
 その豊満な胸が押し付けられる。
 顔を近づけて誘惑してきた。熱い吐息がかかる。

「うっふっふっふ~ん。この身体がほしいのかにゃ~?ん?ぼくちゃん~?お願いしてみなしゃ~い?」
 あ~あ・・・これじゃあみんな3日酔いぐらいしそうだな。後でライブラリーで治してやるか。

 ん~。昨日は良く飲んだわ。
 龍正君の能力のおかげで飲み過ぎても快適快適!
 そして今日は・・・

「んもう!!何でアタシ達がつき合わされるのよ!!」
 ユウちゃんが嫌々やってきた。
「遅いぞ~。さあ、位置に付け!」
 龍正君に言われてユウちゃんとマーちゃんがコートに入る。

「・・・何でバレーなの?」
「あれ?言ってなかったか?樹莉さんはプロ並の腕前なんだぞ?」
「ふうん・・・それでバレー・・・・・・・・・・・・えっ??」
「ほら、行くぞ!」
 龍正君がボールを上げる。

 私はタイミングを合わせてジャンプする。

 龍正君。私は貴方をアシストするし、私がアシストしてもらうこともあるから。
 ただ、アシストしてもらうときは絶対に私が決める!!
「はっ!!」
 私はタイミングよく腕を振りぬいた。

< END >

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