第一話 黒薔薇の一族LV1 覚醒
僕には本当の意味では両親がいない。もちろん生まれた時にはいた。
しかし、実の母は僕を出産するとき難産で亡くなり、父も去年、交通事故で母の後を追った。
といっても僕は天涯孤独という身の上ではない。
父の後妻である義母と、彼女の産んだ二人の妹がいるからだ。
『本当の意味では両親がいない』といったのはそういうわけだ。
誤解の内容に言っておくが、母は僕を実の子のように可愛がってくれた。妹も僕に懐いてくれている。(下の妹は生意気だが)
僕も彼女たちを大事に思っている。(愛してるなんて、恥ずかしいことはいえない)
今僕に残された家族は三人、そのうち血縁は妹二人のみ、そう思っていた。
今、僕は父の実家であるという家に来ている。来てみて驚いた。その家、というより屋敷は、先日まで僕の通っていた学校より広く、庭一面に黒薔薇が植えられていた。ところどころに、おそらくはレプリカだろう、ギリシャの遺跡を思わせる美しい裸の男性像、女性像が飾られていて、黒薔薇のツタが絡み付いている。どこかエッチだ。
正直、趣味がよいとはいえない、と思う。しかし何かがひきつけられる。
「……すごいお屋敷ですね」
僕は前を歩く執事服の女性に声をかけた。すらりとして均整の取れた体つきで、中性的な女性だ。切れ長の眼と紫のリップが色っぽい。つややかな黒髪は首もとで切りそろえられ、ゆったりと頭部をおおっている。クールビューティー、そんな言葉がよく似合う。
彼女が振り向いた。心臓が高鳴る。心持ち前かがみになる。
「御気に召しましたか?」
硬い表情。いけない機嫌を損ねてしまったか?
「え、その、ええと」
「いずれは貴方のものになるものですよ」
そう、僕がこの屋敷に来たのは、この家、夜神家を継ぐためである。
本来家を継ぐべきこの家の長男、すなわち僕の父はメイドの一人と駆け落ちしたらしい。その後、夜神家には男子が生まれなかった。現在この家を守っているのは、父の妹、すなわち僕の叔母だそうだ。
遺産に眼がくらんだと思われても仕方あるまい。しかし父が死んだ後、義母一人に苦労させるわけにもいかず、ましてや妹たちを不幸にさせるわけにはいかなかった。黒神家を継ぐなら、母と妹たちの面倒を見るといわれては断れなかった。
とは言うものの、渡りに船という感もなくはない。しばらく義母から離れたかった。あんな光景を見た後は。
『あん、ああ、はふう、犯して、うずくの…シンちゃん、ママを犯してぇ!』
全裸で、ベッドの上で、僕のシャツのにおいをかぎながら、自慰にふける義母を見たとき、僕は逃げ出した。今まで『ママ』が血の繋がらない『女』と考えたこともない、僕は動転したのだ。そのとき以来、母の目が気になった。潤んだ眼が。
「マコトさま?」
「あ、ごめんなさい、いまいきます」
あわてて、執事の後を追う。
初めて会う僕の叔母は美しい人だった。黒いドレス、くせのある長い黒髪、白い肌、赤い唇、大きな胸とくびれた腰の肉感的な体、吸い込まれそうな黒い瞳。
ゴージャス、ゴシック、セクシー、そんな言葉が浮かぶ。
年は30代半ばと聞いているが、20代といっても通りそうだ。かといって幼さは感じられず、大人の女性の落ち着きと妖艶さを併せ持つ。
まるでこの屋敷を圧縮して人の形にしたような女性だった。
「真君?」
「は、はい」
「ああ、お兄様そっくり……」
感極まったように叔母は僕を抱きしめた。薔薇の香りのする豊かな胸で窒息しそうになる。
「お、叔母…」
「いや、美夜と呼んで…」
「美、美夜さん…」
「ええ、そうよ」
あまやかな声だ。股間に血液が集中した。
「あ」
青くなる僕。赤くなった美夜さん。
「ご、ごめんなさい、年頃だものね」
名残惜しそうに僕を話す美夜さん。視線がちらりと僕の腰をなでる。
どうやら怒ってはいないようだ。優しそうな人だ。
「さ、そこに腰掛けて」
「はい」
「大事なことはあらかじめ要が話したと思うけど」
要さんとは僕をここまで案内してくれた執事さんだ。
「はい、新学期から、夜神家の経営する学校の寮に入る、夏休みの間はこの家のしきたりを学ぶためこの家で過ごすということですね」
「ええ、この家は古いだけに特別なしきたりとかが多くてね、次期当主として覚えてほしいことがあるの」
なんか大時代的だな。
「あ、大丈夫よ、確かに世間の目からすれば、奇妙に見えるかもしれないけど、そんな苦しいことじゃないわ」
「はあ」
じゃあなんで父は駆け落ちしたんだろう。
「まあ、今日はお疲れでしょうし、明日からね」
「は、はい」
「あ、そうそう、貴方ガールフレンドとかいる?」
「いえ……」
赤くなって横を向く。気になる娘は一人いた。義母を入れれば二人か。
「そう、よかった」
なにがよかったのだろう?
「あの、まさかすでに決まった、許婚がいるということですか?」
虚を疲れたような叔母。一瞬遅れて上品に笑い出す。
「うふふ、いないわよ、許婚なんて」
「そうですか」
ほっとした。
「でも花嫁候補なら何人もいるわよ」
「え」
「すべては貴方が選ぶもの。気に入った相手を、貴方のものにすればいいの」
怪しい目つきが気になった。
僕のために用意された部屋を見てまた驚いた。
4LDKの分譲住宅の一戸分が丸々入りそうな部屋だ。天蓋付ベッドに、暖炉まである。根が小市民の僕は、はっきり言ってびびった。
「こんな広い部屋、本当にいいんですか」
「すぐに慣れます」
要さんは相変わらず素っ気無い。机の上の鈴を鳴らした。
「失礼します」
メイド姿の女性が入ってきた。本物を見るのは初めてだ。
「はじめまして真様。メイド長の恵美です。よろしくお願いします」
「こ、こちらこそ」
僕の緊張をほぐすように、やさしく声をかけてくれる恵美さん。年は30前後、髪をまとめた落ち着いた女性だ。幼稚園の保母さんといわれても納得する。体つきは引き締まっていて、鹿を連想する。
「お屋敷に慣れるまで、私が専属でマコト様のお世話をいたします。何なりとお申し付けください」
そういって頭を下げる。
「!」
僕は一瞬眼を見張った。恵美さんの姿が一瞬、エプロンとヘアータイ以外何もつけていないように見えたのだ。だが次の瞬間にはちゃんと服を着ていた。
僕の態度がおかしかったのか、微笑む恵美さん。一礼して退室する。
「いたずらものめ」
ぼそりとつぶやく、要さん。
「あの、いまの」
「いえ、なんでもありません」
そういって、僕に向き直る。
「覚えておいてください。私は何があっても貴方の味方です」
「は、はあ」
要さんも出て行った。
部屋に残された僕が考えていたこと、それはこの屋敷で出会った女性のことだった。
みんなそれぞれ魅力的だ。美夜さんの胸の感触、恵美さんの裸エプロンの錯覚。
いかん、欲情してきた。しかしこんな広い部屋じゃ、落ち着いてオナニーもできない。
「庭を散歩するか」
色ボケ気味の頭もすっきりするだろう。
やはり庭は黒薔薇でいっぱいだった。
「確かこっちにプールがあるって聞いたけど」
道に迷ってへんなところに出た。まるで黒薔薇のジャングルだ。
「?」
人の声が聞こえた。
「薫!あんたって子はまたこんな粗相を!」
「聡美ぃ、ごめんなさいぃ」
こっそり覗くとメイドが二人いた。ツインテールの勝気そうな少女が、座り込んだサラサラのショ-トカットの少女の前に仁王立ちしている。
「ほら、処理してあげるから準備しなさい」
「うん…」
スカートをまくる薫。スカートの下から硬くなった『アレ』がでてきた。
「この女装趣味の変態野郎!」
「ああん、いわないでぇ」
とても正視できずその場を逃げ去った。
ナンなんだ、この屋敷はなんか変だぞ。
水音が聞こえた。プールに誰かいるらしい。
その姿を確認して息を呑む。そこにいるのは全裸の女性だった。それも普通の女性ではない。ボディービルでもしているのかと思うほど筋肉の発達した、それでいて女性の美しさを全く損なっていない、赤味のかかった髪の女性だ。
彼女がデッキチェアの腰掛け、背伸びした。いきなり脚を開く。
「ふ、く、はあん」
驚いた、いきなりオナニーを始めた。くっきり分かれた腹筋が上下し始める。
「うあ、いい、いいの、はんっ」
思わず見入った。そのとき後ろから地面にたたきつけられた。
「動くな、不法侵入者」
「ち、違います、今日からこの家の住人です」
僕を踏みつけているのは、まるで刃物のような女性だ。日本人ではないのは、その金髪碧眼を見れば明らかだ。軍服のような姿がよく似合う。
「ナンだ、ナタ-シャ、そいつは」
プールにいた女性がやってきた。その体を隠そうともしない。
「冴子様、覗きの現行犯です」
「ほー、ずいぶんと可愛い痴漢だな、ちっちゃいし、女の子みてーな顔だし……って、もしかして、マコトか?」
「そ、そうです。あなたは?」
「あんたのはとこ。でもって花嫁候補の一人」
「ええ!」
「安心しろ、あたしだって好みがある」
ずいぶん失礼な言われようだが、正直ほっとした。確かに美人だけど、こんながさつなのは正直引く。
「失礼しました」
ナターシャが僕の体から脚をどけ、立たせてくれる。
「なさけねーなー、男だったら力づくで押しのけてみろよ」
「そんな、無理ですよ」
目をそらして答える。筋肉女でもやっぱり眼の毒だ。
「まあ、体を鍛えたかったら、あたしん所にきな。トレーニング手伝ってやるから」
「はあ」
「あたしより強くなったら、この体好きにしていーぜ。犯すなり何なり好きにしろや」
「はあ」
「はっきりしねーなー、ナターシャ、母屋につれて帰っちゃってくれ」
「かしこまりました」
「あの、ナタ-シャさん」
「ナターシャで結構よ。マコト」
「じゃ、ナターシャ、ナターシャは警備の仕事をしてるんですか?」
「ええ、仲間と一緒にね」
「あ、じゃあほかにもいるんですね」
聞きたいことはほかにあるのに、言い出せない。
「ここはおかしい。そう思っているでしょう」
図星をつかれた。
「ええ、でも出て行くわけにもいかないし」
「それは私も同様よ」
それ以上何も話せなかった。
次期当主の略式のお披露目を兼ねた、ささやかな僕の歓迎パーティーが始まった。出席しているのは夜神家の一族のみ。美夜さん、冴子さんのほかに数人の女性を紹介された。冴子さんを除けば美夜さんと同年輩のようだが、みな若々しい。
給仕しているのも使用人の中でも信頼が置けるものだけらしい。要さんと恵美さんはいても、ナターシャさんはいない。
ふと気付いた。ここには僕を除いて女性しかいない。それも、タイプは違うが、みな美人だ。
「楽しんでいるかしら?」
美夜さんが近づいてきた。
「え、ええ」
黒っぽいワインをすすめられる。未成年だから断ろうとしたが、断りきれなかった。軽くあおる。甘い。
「あの、冴子さんという人に、お会いしたんですが」
「あの子が何か?」
「僕の花嫁候補だって」
「うふふ、あの子はまだよく知らないから、一族の女はみな貴方のもの、いいえ、望むならすべての女を手に入れなさい。男の子だっていいのよ」
「え…それって」
世界が暗転した。
気がつけば、拘束されていた。
「こ、これは」
X字状の板に体を固定され横たわっていた。動くのは首だけ。服も脱がされているらしい。
「お目覚めですか。真様」
恵美さんだ。声のするほうに顔を向けて驚いた。彼女は黒いマントをはおい、蝋燭を手にしていたのだ。
あわてて、あたりを見回す。恵美さんと同じ姿の女性が僕を囲んでいる。よく見ると、パーティーに出席していた夜神家の女性たちだ。要さんもだ。
僕の頭上に奇妙な石像が見えた。冴子のような、筋肉質な女性像で、股間から蛇が鎌首を覗かせている。まるでペ〇スだ。いやもしかしたら、乳房のある男かもしれない。どち」らにしろ淫らな像だ。
この異様な状況を一言で言い表せる言葉は、ひとつしか知らない。
黒ミサだ。
「僕を殺す気ですか!そのために呼んだんですか!」
「いいえ、ちがうわ」
人垣がわれ、美夜さんが現れた。状況を忘れてその姿に見とれた。彼女は全裸だった。熟れすぎて、腐りだす寸前の果実のような美しさに満ちたその姿は、まさに闇のビ-ナスと呼ぶにふさわしい。
「まあ、この子ったら」
恥ずかしさで顔を逸らす。美夜さんを見て、僕の愚息は直立したのだ。
「手間が省けたわ」
「さすがは、聖母様」
「恵美」
「はい」
恵美さんが僕の愚息を縛った。
「い、いたいよ」
「大丈夫ですわ」
「さあ、『転生の儀』をはじめましょう」
美夜さんが僕の体をまたいで腰を落とす。縛り付けられた僕の愚息は美夜さんの体内に納まった。
「ああ、ついに」
感きわまったような美夜さん。すぐに無表情になる。
こんな形で童貞を失おうとは。正直、気持ちよくもなんともない。
そのときからだの中で熱いマグマのようなものが動き出した。
「あ、あつい、あついよ」
美夜さんはまったく動かない。何か呪文のような言葉を唱えているだけだ。
「く、くううう」
暴れても、拘束は解けない。手首、足首から血が流れ出す。
まわりの女性たちに変化が現れた。あるものは身をくねらせ、あるものは我慢できないようにオナニーを始めた。美夜さんは動かない。
「う、うおおおおおおお!」
僕の中で何かがはじけた。拘束が吹き飛び、自由になった。僕の体が一回りも二回りも大きくなった。
「せ、成功よ!」
歓喜の声を上げる美夜さんを押し倒す。そのままグラインドをはじめた。
「ああ!アアン!まっていたの!これがほしかったのよ!」
僕の髪が長く伸びた。数本が抜け落ちると、蛇になった。蛇は残らず回りの女性に襲い掛かり、その鎌首を股間に突っ込んだ。
「あひいいい」
「あああ」
「あたし、へびにおかされてるうう」
「もっと、もっとよお」
快楽の阿鼻叫喚図。
「あひい、アン、きてえ、もっとう、私の坊やあ!」
美夜さんが歓声を上げる。美しい顔が、鼻水と涎を垂らしてみっともない。
もっと、彼女を乱れさせたい、彼女を壊したい。そんな思いが僕を加速する。
「あひいいいいいいい」
美夜さんがいった。
気絶して白目をむいている彼女を放り出し、周りで蛇に犯されている女たちに向かった。
あたりに僕の吐き出した精液の匂いが充満する。体の熱が収まり、僕も正気に戻った。
自分のやったことが信じられない。
人の気配。見ると美夜さんが僕のまえで三つ指を立てている。
「わが御子様」
「美夜さん、これはいったい、僕に何をしたんですか」
「…やはり星辰の位置が悪かったようですね。完全には復活されていないようですね」
「復活?」
「わかりました、ご説明いたします、あら?」
僕の股間を見て微笑む美夜さん。全裸で僕に礼を尽くす彼女をまた犯したくなった。
二度目のセックスは落ち着いたものになった。僕に抱かれながら夜神家について彼女の説明があったからだ。
その昔ある邪神がいた。性欲と快楽を力の源とする彼を人は淫魔王と呼んだ。
「私たち、ハウ、夜神家は、ああん、淫魔王様におつかえする神官の家計だったのです」
淫魔王とその眷属は手当たりしだに女を襲い、犯し、時には清らかな少年もその餌食にした。
(かわいければなんでもよしか、変態だぁ)
淫魔王に犯されたものは、魂すら陵辱され、淫魔王の僕になる。そうやって、世界を手にしようとしたとき、『ナナカミの使い』があらわれ、淫魔王を封印した。
「しかし淫魔王様は封印される前、予言を、アン、残しました」
『星が指し示すとき陰と陽の枝が交わりし時、われは転生する。されど、復活するには二度目の誕生をえなければならない』
「私たち、フウ、一族は、長年の研究の末、予言を解き明かしたのです。すなわち、特定の日に、兄妹が交わり、生を受けた子供こそが淫魔王様の生まれ変わりであると、そして完全、ひん、復活にはそのこが、アン、母親と交わらねばならないことを、アン」
「じゃ美夜さん、貴女は、僕のお母さん……」
僕は実の兄妹の間に生まれ、今母親を犯している。
「美夜と呼び捨てにしてください。私たち一族はみな貴方様の僕、好きなように呼び、好きなように犯してくださってかまわないのですよ」
「で、でも」
「…それに、いまさらやめられるのですか?」
「う」
この期に及んでも僕の腰は動いていた。
こんな気持ちのいいことやめたくない。
「気にせずに犯してください、貴方に犯される日をずっと待っていたのです」
あまやかな声が脳に響く。背徳感が僕に火をつけた。
「ああ!また!激しい!いっちゃう!いっちゃうの!」
「いくんだ、ママ!」
「ああ、ママと呼んでくれるのね、私の坊や!」
「ママが変態だから、息子に犯されて喜ぶ変態だから!僕は魔王なんかになったんだ!責任とってよ!」
「とるわ、とるわ、だから犯してええ」
「犯してやるよ!ほら、いくぞ!」
「あひいいいい!」
最後の射精。すっと眠りに落ちる。
「貴方が完全な淫魔王になるまで育ててあげる。まだ残っている人間の心もすぐ消してあげる。絶対貴方を世界の支配者にするわ」
母の言葉を聴きながら眠った。
朝だ、ベッドの上で眼が覚めた。昨日のことは夢だったのか?夢ではない証拠が目の前にあった。
「おはようございます。御子様」
ヘアタイと、エプロン以外何もつけていない恵美さんが三つ指ついて頭を下げる。湧き上がる、征服欲。
「まあ、朝からお元気ですわ。ぜひ、恵美を精液便所にお使いください」
ゆがんだ期待感に紅潮する顔。
「尻をこっちに向けて」
「はい」
前戯抜きで突っ込む。そこはすでに濡れそぼっていた。
「はううう、ご立派ですわ。恵美はもう坊ちゃまなしでは生きていけませんん!死ぬまで精液便所としてお使いくださいいい」
「恵美と楽しんだようね」
「え、ええ」
人目につきそうなときは、叔母と甥の関係でいこうと釘を刺された後だ。
「いいのよ、あの子を仲間にした甲斐があったわ」
「はあ」
どうも一晩あけたら元の自分に戻ったようだ。
「見たところ、貴方はまだ初歩的な魔法しか使えないようね」
「魔法?」
「淫魔王様としての力よ」
「そんなものがあるんですか?」
「ええ、まあ、練習することね、ここのメイドたちも。聖夜神学園の生徒も貴方のために用意した生贄なのだから」
「それって」
「世界征服のための予行練習よ。みんな貴方のものにしてしまいなさい」
「な…」
このとき僕は想像してしまった。世界中の女性が僕の前で三つ指を立てているところを。それはたまらなく愉快な光景だった。
そんな僕を母は頼もしげに見ていた。
< 続く >