ダンジョンマスターの日記帳 2ページ

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 レッドソニアは、いらいらしながら牢内を歩き回っていた。
 あの憎むべき魔道士が、自分を捉え連日にわたり陵辱を加えていたあの男が、食料調達に行くといって鎖をはずしたきり、顔を見せないのだ。
 一日目は疲労と心労からぐったりしていた。
 二日目は牢を破ろうとしたが、魔力によって閉じられた牢を破ることが出来なかった。
 そして今日、三日目。
 無性に誰かと会話をしたくて仕方なかった。だがいくら声を張り上げようと誰も答えない。
「くそ!」
 部下たちの顔を一人一人思い出す。
「くそ!だれかいないのかい!」
 あの男がいないのなら、魔法で支配されていたとしても、自分の様子を見に来ても良いだろうに。
 それともみなあの男が連れて行ってしまったのだろうか。奴隷として。
「ううう…誇り高き戦士の一族であるあたしらが、あんなやつに…」
 にっくきあの男の顔を思い出す。
 とくん
 心臓が高鳴った。
「え?」
 顔がほてってくる。
 あの男に組み敷かれたときの、身体の感触がよみがえってくる。思わずわが身を抱きしめる。
「ああ…」
 無意識に太ももをすり合わせる。指をしゃぶりだす。
「はん、ん」
 腰をくねらせる。心の奥から声が聞こえてくる。
(きもちいい、おかされてうれしい、つよいおとこがすき、つよいおとこのこどもをうみたい…)
「ああ、いや、だめ…」
 しゃぶった指がそろそろと股間へと行く。
「だめ、だめなのよう」
 しばらくそのままでいる。
(いまならだれもいない)
「だめ、だめえ!」
 ついに悪魔のささやきに屈し、オナニーを始めるレッドソニア。
 その痴態を遠くから魔法の水晶球で見ている者がいるとも知らずに。

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獅子の月 15の日
 やっと帰ってきた、狭くも楽しき我が家かな。
 獲物は熊が三頭、猪二頭、ウサギが八羽。食用茸の生えた枯れ木。
 なかなかの収穫だ。
 オーガーのメスの様子を見に行ったら、嬉しそうにクマの出来た顔を輝かせた後、つらそうに眼を背けた。
 理由はわかっているが。

獅子の月 16の日
 迷宮のそばの森に狩人らしき一団が現れた。
 それもこの迷宮へと続く道にだ。
 オーガーを引き連れ、狩に行ったのを見られていたのかもしれない。
 用心のため罠の確認をした。
 魔獣合成の書を解読。
 まず簡単なものから試してみよう。
 しかし本に書いてあるものそのままでは芸がないな。

獅子の月 17の日
 昨日の一団だが狩人ではなく山賊の一団だったらしい。
 新しいねぐらを求めてここにきたようだ。
 それなら遠慮は無用。
 “眠り“の呪文で眠らせたあと、オーガーやゴブリンに止めを刺させた。
 女が一人いた。ボスの愛人だったらしい、生かしてつれて帰る。
 オーガーどもが食べ残した死体に“ゾンビ作り”の呪文をかける。
 初めて使う呪文だが、うまくいった。
 オーガーのメスは最近素直になってきた。
 フィルタースライムは出来すぎのようだ。

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 ジャミナは牢内で眼を覚ました。
 少しトウのたった、それでもまだ色気のある女だ。
 瞬時に意識が鮮明になり、状況を確認する。
(みんなはいないね、殺されたかね)
 仲間の生死について大して感慨はない。組んだのも寝たのも相手を利用するためだけだ。
 衣服と武器、特に隠し武器を点検する。すべて異常はない。
(さて、どうするかね)
 敵は全く正体不明の妖術師である。
(ま、男ならなんとでもできるさね)
 自分の体を武器に荒くれ男どもの中を泳ぎきってきた自分である。
 どんな男でも篭絡できる自信がある。
 やがて足音が聞こえてきた。
 急いで寝た振りをする。
 足音がすぐ間近で止まった。
 自分の胸や太ももがあらわになるように寝返りを打つ。
「無駄なことはやめておけ」
 鉄格子の向こうから若い声が響く。
「おや気付いていたかい」
 苦笑して起き上がるジャミナ。
 魔法が使えても相手は若造だ、なんとでもなる、そうおもってしなを作る。
 しかし返ってきたのは冷笑だった。
「年を考えろよ、ばあさん」
「んな!」
 平均寿命の長くはないこの世界の常識から見れば、自分は若くない、それでも年寄り扱いされるほどではない。
「なんだってえ!」
「あんたに欲情するほど飢えちゃいないさ」
 プライドに傷をつけられ激高するジャミナ。
「このやろう!あんたインポかい!」
「いいや、北の魔女の不肖の弟子さ」
「!」
 北の魔女と聞いて凍りつくジャミナ。
 北の魔女ゼノビアの名前は裏稼業に生きるものに有名な名前だった。
 ただし魔法使いとしてではない、彼女の仕事によって有名だったのだ。
 彼女の仕事とはどんな清楚な乙女でも、貞淑な人妻でも、淫乱な性奴隷に調教する調教師だった。各国の貴族や大商人を顧客とし、その仕事により莫大な富を得ていたのだ。当然暗黒街でも『顔』であった。
 しかし一年前、ゼノビアは殺され、その財産は根こそぎ奪われたはずだ。
 同時に助手を務めていた人物(男か女かはわからない)が行方不明となっている。
 もしやこの男が…
 ジャミナは自分が思っていたより危険な状況にあることに気付いた。
「あ、あたしをどうする気さ?!」
 ゼノビアの弟子を自称するこの男。まともな魔法使いであるわけがない。
「こうするのさ」
 男が手に持った甕のふたを開けた。
 中からとろりと粘液がたれる。
 地面に落ちたその粘液はジャミナに向かって流れ出した、生き物のように。
「!」
 いやこれは生き物だ。魔法で作られたスライムという不定形な生き物。
 それがジャミナの全身を包んだ。
「ひいいい!なにこれえ!」
 スライムに全身を包まれたジャミナ。服や鎧、武器がぼろぼろになっていく。同時に皮膚に痺れるような刺激を感じる。全身が熱くなってゆく。
「新種のポイズンスライムさ。普通は毒と酸で作るんだが、こいつは毒の変わりに媚薬を使っているんだ。だからフィルター(媚薬)スライムってとこかな」
 またたく間に一糸まとわぬ裸身となるジャミナ。
 そしてその彼女の体内に侵入しようとするフィルタースライム。
 口、鼻孔、耳、へそ、膣、肛門、毛穴まで全身の穴という穴を犯されるジャミナ。
 その彼女を今まで感じたこともない快感が襲う。
「~~~~~~~~~~~~~~!」
 透明な粘液の中で暴れるジャミナ。しかしだんだんとその動きが緩やかになっていき、まるで見えない男に抱かれているような動きとなる。

 そのまま半時間もしただろうか、いきなり口笛を吹くエロル。
 その口笛で瓶に戻るフィルタースライム。
 魔法で作られた生物にとって、創造者の命令は絶対なのだ。
 あとには白目をむき、舌を出し、全身の穴という穴から粘液をたらす、人間としての尊厳を全て失ったような、かつて狡猾な女盗であった廃人が残された。
「いい、きもちいい、もっと、もっと、ほしいのぉ、もっと、ちょうだいぃ・・・」
 その姿を見てエロルは心底楽しそうに笑った。

 ジャミナの牢の後始末をした後、エロルはレッドソニアの牢を覗いてみた。
 エロルの顔を見てはっと顔を輝かせるレッドソニアだがすぐ眼をそらす。
 その顔には間違いなく涙の痕があった。
「なんの用だよ!」
「うん?」
 やや意外な顔になるエロル、最近このオーガーのメスは、エロルが姿を見せれば、あきらめたように素直に犯されるようになった。
 昨日などは積極的に快楽をむさぼっていたものだ。
「もう、他の女で楽しんだんだろ!あたしに用なんかないだろ!」
 そこでふと思い出す。ジャミナにスライムをけしかけているとき、レッドソニアの牢から壁を叩くような音がしていたことを。
「なんだ、妬いているのか」
「!そ、そんなわけあるか!」
 動揺するレッドソニア。
 よく見ればレッドソニアの座り込んでいる床が、水をぶちまけたように濡れている。
「なるほど、俺に抱かれているほかの女を想像して、オナニーしていたのか」
 真っ赤になって眼を背けるレッドソニア。図星をつかれたのだ。
 ジャミナの上げる声を聞いて、エロルに抱かれている女の姿を想像し、激しく欲情し、同時に嫉妬の念に駆られたのだ。
「まあ、安心しろ。あの女には手を出していない」
「え?」
「正直魅力を感じなかったのでな、薬を盛っておかしくしてやっただけさ」
「ほんとに?」
「ああ、何なら証拠を見てみるか?」
 エロルはそこで服を脱ぐ。魔道士とは思えない鍛えこまれた身体と、臨戦態勢でなくともオーガー並みに大きい巨根があらわになる。
「舐めてみろ、他の女の味がするかどうか」
 鉄格子の間に巨根を差し込む。
「うん」
 ひざまずき、素直に、母の乳を吸う赤子のように、エロルの巨根を口にするレッドソニア。
 そのうち巨根が大きくなるにつれ、興奮してきたらしく、太ももをすり合わせだした。
「ほら、他の女の味なんかしないだろう」
 口一杯にほおばりながら、コクンとうなずくレッドソニア。その眼はもう濡れている。
「さ、もういいだろう」
 牢から離れ服を着だすエロル。
「え?」
 信じられないようにエロルを見るレッドソニア。
「どうした?」
「どうしたって、その、やらないの?」
 その一言に冷たく笑って返すエロル。
「やられたいのか?」
「!」
 真っ赤になるレッドソニア。
「どうした?」
 意地悪く聞いてくるエロル。
 その声を聞いてエロルの魂胆がわかった。言わせたいのだ、犯してほしいと。
「ううう」
 懊悩するレッドソニア。
 今までは薬のせいだと、あるいはもうどうしようもないのだと自分に言い訳が出来た。
 だが一度自分から求めてしまえば、二度と引き返せない、最後の守るべきものが壊れてしまう気がする。
「やられたくないんだな?」
 そのエロルの問いに、全身の力をこめて首を縦に振る。
「そうか」
 そのまま関心を失ったように立ち去るエロル。
 思わず手を伸ばすレッドソニア。しかしそこから先は最後の自制心が許さない。
 エロルの姿が見えなくなったあと、レッドソニアは吼えるように泣きながら自分を慰めだした。
「エロルゥ!エロル様ァ!犯してェ!好きなのぅ!」
 その悲しき痴態は意識を失うまで続いた。

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獅子の月 18の日
 昨日の山賊を追って兵士の一団が来た。
 オーガーの歯形の残った死体を見て、それ以上調べる気がなくなったらしい、すぐに帰った。
 お役所仕事には腹が立つが、正直助かった。
 それにしても兵隊とは何時見てもいやなものだ。
 おかげで昔のことを思い出してしまった。

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 聖都ホーリーンは祭りのさなかだった。
 戦神に愛されし姫将軍・セレアの軍勢が凱旋したのだ。
 その祭の灯で、真昼のように明るくなった街を少年――エロルは走っていた。
 傭兵である魔物使いの一族は市外で待機しているように命じられたのだが、どうしても見たかったのだ、セレアの姿を。
 その女神のような姿を一目見て魂を奪われた。
 初恋、いや恋どころか崇拝といって良いだろう。
 いまだ鳥や虫などしか操ることの出来ぬ彼だが、族長の跡取りとしての修行という名目を楯に、無理やり父についてきたのも、ただひたすら彼女のそばにいたいためだ。
 今日もしかられるのは覚悟の上で見に行ったのだ、凱旋するセレアの姿を。
 いつか一流の魔物使いとして彼女の力となる、それが彼の夢だ。
 その思いを強くしながら、仲間のいるキャンプへと急いでいた。

「?なんだろう?」
 街を出て森への道を走るエロルの眼に映ったのは燃え上がる森だった。
「いけない!山火事だ!」
 足を速めるエロル。
 その彼の眼に信じられない光景があらわれた。
「な!なんだよ!これ!」
 仲間たちがホーリーンの騎士団と戦っていた。いやそれは戦いではなく一方的な虐殺だった。土気色で血を吐く魔物使いたちが、僕を呼べずに殺されていく…
「父さん!」
 父の姿を見つけ駆け寄るエロル。
「しっかり!父さん!」
「エロル…無事だったのか、よかった…早く逃げろ、ホーリーン軍が毒を…」
「ええ!?なんで?姫様がそんなこと…」
「逃げろ!エロル!」
 父が自分を指差す。その頭上に巨大蝙蝠が現れた。
「うわあ!」
 こうもりがエロルをつかみあげて飛び去る。
「逃がすな!殺せ!姫将軍の命令だ!」
 地上から矢と魔力の雷が跳んでくる、翼を射抜かれた大蝙蝠はエロルを落としてしまった。
(なぜ!姫様!なぜ!)
 河へと落ちていくエロルは胸の奥でそう叫び続けていた。

 九死に一生を得て、飢えと傷の痛みに耐えながら故郷に帰った彼を待っていたのは、焼き払われた村と、埋葬すら許されず木から吊るされた村人たちの死体だった。

 極めれば一人で軍隊並みの武力を有しうる魔物使い。
 それゆえ魔法使いの中でもおそれられてきた。
 セレアの『聖戦』において主力として活躍し続けてきた彼らだったが、勇猛な戦神の娘すら魔物使いの力を恐れたのだ。
 後には祭りの夜に、魔物だけでなく人間すら操って、祭りに沸くホーリーンを蹂躙しようとしたため、成敗されたという、もっともらしい理由が作られ、それが信じられた。
(でたらめをいうな)
 残飯をあさりながら街のうわさを聞き、エロルは怒った。
 魔物と同様に人間を支配することは、一族のなかでも外道として、堅く禁じられていたことなのだ。
 もともと魔物使いとは、魔物が人間を襲うことを防ぐために編み出された術。
 世人が言うような邪悪な術ではないのだ。
 ホーリーンは、セレアは、彼らの命だけでなく誇りまで踏みにじったのだ。

(ならば本当にしてやるよ…その嘘を)

 こうして夢見る少年は復讐の鬼となった。

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獅子の月 19の日
 昨日は結局何事もなかったが、用心のため罠を増やす。
 奥の広間とゴブリンの詰め所の間の通路に飛出る槍の罠を仕掛けた。
 逃げるゴブリンを追ってきた侵入者を串刺しにしてくれることだろう。
 ゾンビをすべて焼却した。
 もったいないが臭くてたまらない。
 今度はスケルトンにしよう。
 戦力を補充する必要がある。
 食料も足らなくなってきたことだし、また狩に行くか。

< 続く >

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