へたれ悪魔と七英雄 へたれ悪魔、水車小屋で決意する

 ポンポンと情けない音を上げて花火が次々に打ち上げられる。昼の最中に見る花火はマヌケ以外の何ものでもない。
 抜けるような青空の下、わずかな煙を吐き出しすぐに消えていく人間の文明の利器とやらを眺めながら、俺は忌々しげに溜め息をついた。しかしこの場に居る奴らの中でそんな事を考えてるのはどうやら俺だけらしい。城に続く大通りは人ごみに溢れ、歓喜の雄叫びを上げている。肩がぶつかり、足を踏まれ、ひょろりとした体型の俺は右に左に揺す振られる。……このまま倒れたら、きっと踏み殺されるに違いない。大通りに出られなかった、若しくは大通り沿いに家のある幸運な人間は、二階のベランダや屋根の上に鈴なりになり、ジョッキや布製の国旗を片手に今日の良き日を祝っている。俺がもう一度溜め息をつこうとしたとき、高らかにファンファーレが鳴り響き人々のざわめきが怒号のような歓声に変わる。
 ……いよいよお出ましか。人々の崇拝に満ちた視線の先を追う。遥か彼方と言えばいいんだろうか、直ぐ目の前と言えばいいんだろうか、でかすぎて距離感の掴めない白塗りの城。陽光の照り返しを受け、燦然と輝くその城のテラスに6人の女性が姿を現す。人々の熱狂は一気に極限まで高まり、女の中には……いや、男もか……泣き出す者も出る始末だった。それも当然だろう、と思う。ここに集まってる人間は誰一人例外無く、あのテラスの上の豆粒のような女達を愛しているのだ。

 ―――――この混沌の大陸〝パンゲア〟の救い主、魔王を倒し世界を守った美しき六英雄達を―――――。

~へたれ悪魔と七英雄~

 辺境の地で自分のエロ奴隷に悪戯してた俺に、魔王様から最後の念話が届いたのはつい最近の話だ。そしてその内容は俺にとって非常に迷惑なものだった。

「…………聴こえるか……聴こえるか……我が眷族の者ども……」

 聞こえるっつーの。いつも無理矢理捻じ込んで来る癖に。つーかあんたまだ死んでなかったのかよ。…………もちろんこれは念話とは別系統の俺自身の心の声だ。こんなもん聞かれたら殺される位じゃ済まない。

「……これが最後の念話となろう……余の体になされた封印の術式は思いのほか強い……余は少々人間というものを侮っていたようだ……このままでは月が一巡りする頃には余は完全に地上から消滅するであろう……」

 ふ~~~ん。ま、あんたの愚痴はどうでもいいや。で、ご用件は?暢気に構えていた俺だったが、次の魔王様の言葉は俺を果てしない絶望の淵に叩き落した。

「……余は一つの方策を考えた……今からひと月の後、この地上に於ける全ての眷族の魔力を結集し、余は封印を破る術式を始める……無論、成功の保障などない……いや、限りなく低いであろう……失敗した場合、余も含めこの世から魔族という存在は完全に消え去る……」

 ……え?え?ちょ、ちょっと待って、なに勝手な事言ってんの?あんたが消えんのは勝手だけど、俺まで巻き込むなよ!俺の人生は?俺のビューティフル・エロライフは!?

「……言った通りこの方法は、リスクが余りにも大きい……できれば余もそうしたくは無いのだ……そこでだ、我が眷族どもよ……一つ提案がある……」

 ……あんたはいつもそうだ。絶望的な命令を出しておいて、こっちがオタオタする様を見て楽しむ。死の間際までその方針を変えないとは立派なもんだ。さすが魔族の総大将と言えなくもない。…………で、ご提案とは如何なものでございましょうか?

「……余の体に施された封印は、六英雄と呼ばれる女どもの体に呪印の形で刻まれている……どんな方法を使っても良い……その刻印を消し去れ……さすれば我が力は再び甦るであろう……」

 絶望の淵に叩き落された俺の上にドサドサと土が被せられる。おお、酷い人、あなた私に死ね言いますか。
 ……あの六英雄を倒す?数々の名だたる上級魔族を倒し、あまつさえ魔王様本人まで倒してのけた、あの六英雄を?……単なる中級淫魔に過ぎないこの俺が後、ひと月で?

「……無論、只でとは言わん……見事、余の願いを叶えた者には褒美を取らす……我が右腕として取り立て、世界の半分をくれてやろう……我が眷族どもよ、期待しているぞ……」

 一方的に念話は打ち切られ、俺は呆然と虚空を眺める。もちろん反論があっても言える筈も無いし、聞き入れて貰える訳でも無いんだが。
 俺の足下では美少女が俺の陰茎にむしゃぶりついている。俺のエロ奴隷のアリサだ。この近隣の村では群を抜いた可愛さで俺のお気に入りだ。

「ふみゅ、んっ、ちゅぱっ、んっ、んっ、……あれぇ?……マルコーダ様、元気なくなっちゃったよ……?」
「お、おう」

 返事も上の空だ。当たり前だ、この状況でチンポ立てれる奴は人間じゃねぇ。いや、俺は悪魔で淫魔だがそれでも無理だ。俺はビビりなんだ。
 アリサは悲しそうに瞳を伏せる。

「……ごめんね、アリサが下手くそだから……だよね?」
「いや、そんな事ないぞ。ちょっと考え事をしてただけだ……ほら見ろ」

 俺は自分の陰茎に魔法を掛ける。みるみる俺のモノがそそり立っていく。これ位の身体機能を操れないようじゃ淫魔jは務まらない。

「あ、ホントだぁ。じゃ、おしゃぶり続けていい?」
「お、おう」

 嬉しそうに俺の陰茎に頬擦りすると、アリサはするすると飲み込んでいく。俺はとりあえず考えをまとめようと……したが駄目だった。
 アリサの口淫が気持ちよすぎたからだ。……上手くなったなぁ……俺はアリサの髪を撫でながらぼんやり考える。教えの甲斐あってアリサは的確に俺の感じるポイントを攻めてくる。喉の奥まで飲み込んで舌でベロベロ舐め回すやり方も覚えたし、亀頭だけを口に含んで裏スジを舐めながら竿をしごくやり方も覚えた。かと思えば右手で玉をやわやわと揉みながら、左手の指を俺の尻の穴に這わせてくる。俺の為に奉仕する事が自分の存在意義だと固く信じ込んでるアリサの愛撫は熱烈で、俺ももう耐えられそうにない。

「いくぞアリサっ、いつも通り全部飲めよっ」
「ふぁいっ、あいさのおくちにいっぱいらしてくらさいっ」

 コツコツと先っぽに当たる喉の感触を楽しみながら、俺はアリサの口の中に大量の精液を放出する。

「ふああぁぁぁっっ!」

 俺の精液を飲み下しながらアリサの身体がビクビクと痙攣する。俺の精液は強力な媚薬だ。精液を飲んで絶頂するアリサを見るのはこれで何度目だろう……。
 アリサが敬語を使わないのは俺の方針だ。仲魔の淫魔には完全隷属を望む奴も多いが、俺は元の人格を残している方が好みだ。その方がより征服感が強い……と、思う。これは淫魔の中でも意見が分かれるところで、過去にはお互いがお互いを洗脳しあう『淫魔大戦』という事件が……いや、今はそんな事はどうでもいい。

「……気持ちいいよぉ、マルコーダ様の精液ぃ……」

 うわ言のように呟きながら、のろのろと身体を起こし尿道に残った精液を吸いだしていく。頬をへこませ一滴も漏らすまいと吸引を強め、その度にピクピクと痙攣している。
 
 ……その瞬間、俺の脳裏に去来したものをどう表現すればいいんだろう。とにかくソレの存在感は圧倒的だった。これが天啓とかいうやつだろうか。
 ………………俺は失いたくない。
 …………この光景を。この情景を。
 ……俺の魔力を……。

「アリサ、俺は旅に出る」

 俺の腿に頭を乗せ幸せそうに瞳を閉じていたアリサが跳ね起きる。

「……え、今なんて言ったの? マルコーダ様……」
「旅に出ると言った。……しばらく帰らない」
「え?……え? ……そんなのヤだよ!? お願い! 行かないでっ!」
「いや、駄目だ、俺は行く。……行きたくはないが……」

 只でさえ行きたくないんだ。これ以上引き止めないでくれ。そんな俺の思惑も知らずにアリサはなおも言葉を続ける。

「行きたくないんだったら、行かなくていいよ。……それにどうしても行くんだったらアリサも連れてって!」
「駄目だ。俺は行くし、お前は連れて行けない。……分かってくれ、アリサ……」
「やだっ、絶対ついてくっ、マルコーダ様が駄目って言ってもアリサ勝手についてくもんっ、……それならいいでしょ?」
「アリサ、それでも俺の牝奴隷か?」

 俺の冷ややかな声にアリサはびくりと身を竦ませる。こんな冷ややかな声久しぶりに出した。自分でも吃驚だ。みるみるアリサの目に大きな涙が溜まっていく。

「ごっ、ごめんなさい……。アリサ、マルコーダ様のエロ奴隷なのに我が侭言って……アリサ凄く寂しいけど我慢するから……でも絶対、絶対帰って来てね?……アリサのアソコ、マルコーダ様のが欲しくていつでも濡れてるんだから……」

 そう言うとアリサはするするとスカートを持ち上げ、火照った花弁を俺に見せ付けるように足を開く。言葉通りアリサのアソコからは蜜がとろりと流れ出し、太腿まで伝っていた。
 可愛いエロ奴隷のそんな姿を見せられ、興奮しないのは淫魔失格であります。俺はマジでこの計画を中止しようと一瞬考えてしまう。
 いや、今はそんな事よりアリサだ。俺は彼女を抱き寄せるとビンビンに反り返ったモノを躊躇無く肉壷に埋め込んでいく。

「ああっ、嬉しいよぉっ、マルコーダ様にズボズボして貰えるの、嬉しいっ」

 すっかり俺の体に馴染んだアリサの体は、俺の一突き事にイってしまう。俺もなんだかいつもより興奮している自分を感じていた。これはアレか?死の緊張感が性衝動を高めるとかいう例のアレか?くっそ、俺はまだまだ死にたくない。
 俺の考えなど知る由も無く、アリサは絶頂を迎え続けている。瞳は淫蕩に染まり、潮を噴き出しながらも、その両足は俺の腰に巻きつけられ離すまいと必死だ。

「ああんっ、マルコーダ様、アリサの大好きなご主人様っ、はぁっ、アリサの全部はマルコーダ様のモノだからっ、ああっ、アリサずっとずっと待ってるからっ」

 可愛くてエロイ俺の奴隷。アリサの熱気にあてられるように、俺も本音をぶちまけていた。

「行きたくない、本当は俺も行きたくないんだ、アリサっ。もう本当に行きたくない、絶対行きたくない、金輪際行きたくないっ。……でもな、アリサ……男にはっ、いやさ悪魔にはやらねばならん時があるんだっ!」

 アリサは絶え間なく襲って来る絶頂の波の中でエロい事しか考えられない筈だが、なんだか妙に優しげな目をすると、俺の首に両腕を回し耳元で囁いてきた。

「大丈夫、絶対上手くいくよ……アリサはマルコーダ様を信じてる……」

 ヤバい。俺はもう限界だった。

「アリサ出すぞっ、しばらく会えないご褒美だっ、お前の身体の中に一滴残らず出してやるっ!」
「ああっ、ありがとうございますっ、一生懸命搾り出すから、マルコーダ様の精液でアリサの中一杯にしてぇっ」

 俺はアリサの中に思い切り放出した。うねうねと蠢く膣内の蠕動は、言葉通り俺の精液を一滴たりとも逃さずに吸いだそうとする。

「ああっ、はぁぁっ、いくっ、いくぅぅっっ!」

 激しい絶頂を向かえ忘我の状態のアリサに俺は言葉をかける。ご主人様たる者、最後はカッコいい言葉で締めくくらないとな。

「俺は必ず帰ってくる。その時まであばよ、だ」
「……ん、ぅん、マルコーダ様……愛してる……」

 ……なんだかカッコつけすぎて最後おかしなテンションになってしまったが、俺にしては上出来な別れだろう。ねぐらにしていた使われてない水車小屋を出ると、いつまでも手を振り続けるアリサを背に俺は颯爽と歩き出す。この辺境の地から大陸の中心にある最大の国、〝プレゲトン〟その首都の〝ディーテ〟まで一週間程だろうか。
 ………………悪魔が皆飛べるなんて思ってる奴は大バカだ。

 ディーテに着いたのはきっかり一週間後だった。つまり俺に残されたタイムリミットはあと三週間しかない。思わず絶望的な気分になる。大体が土台無理な話だったんだ。相手は伝説の英雄6人、かたやこちとらエロ能力しか持ってない中級淫魔。ほとんど徒手空拳だ。この戦力差を一体どうしろと?
 因みに俺は最終戦争には参加していない。だって死ぬの嫌だし。
 俺は辺境の地で2~3人のエロ奴隷に囲まれてるだけで、充分満足だったんだ。それがなんでこんな事に……。
 どんどん気持ちがやさぐれていく。このまま帰ってアリサとエロい事したい。
 不毛な考えに取りつかれていた俺は首都に近づくにしたがってどんどん増えていく人波に気づかなかった。てゆうか大国家の首都ともなればこの程度の人ゴミは当然なのかと思っていた。
 首都に到着し、あまりの人の多さを流石に不審に思った俺は町を守るようにそびえ立つ城塞、その門を守る番兵に尋ねてみた。

「なんだあんた、知らないのかい。今日は六英雄の方々が魔王を討伐して、一周年、その記念式典とお祭りの日だよ」

 人間の青年の姿に変身した俺に兵士は親切に、しかしちょっと小馬鹿にしたように教えてくれる。一体どこから来た田舎者だとでも思ってるんだろう。
 まあ確かに全く知らなかった。いや、道中でそんな話を聞いた気もするが全く頭に入って来なかったと言った方が正しいか。
 そして現時点でも俺はノープランだ。人波に逆らえず、俺は白亜の城〝ケテル城〟の正門前大通りまで押し流されていく。

 ポンポンと間抜けな花火が上がり、ファンファーレが鳴り響き、人々の怒号のような歓声の中…………俺は初めて伝説の六英雄を目撃した。
 
 ……見たままを正直に言う。全員が全員信じられない位の美女、美少女だった。これなんてエロ……いや、なんでもない。
 俺は伝説の英雄を生で見るのは初めてだった。美女ぞろいだという噂を聞いてもそれを頭から信じる程愚かでもない。
 噂なんてのは尾ひれが付き物だし、美人なんてのも自分達の英雄を、人間が贔屓目に見て言ってるだけだと思ってた。……正直スマンかった。このレベルは半端じゃない。美しいを通り越して神々しい位だ。そこにこいつらが居るだけで場のステージが五段階はアップした感じだ。存在だけで五つ星……こんな人間がいるのか……。

 気が付くと俺は痛いくらい勃起していた。淫魔の本能が俺の体を支配し制御する事が出来ない。……こんな女を抱きたい。俺の力を使って支配し、服従させ、俺無しでは生きられないようにしてやりたい。
 今すぐにでも飛び掛りたい衝動を必死で抑える。待て、落ち着け俺、あと俺の息子。相手は六英雄だぞ。俺が今、飛び掛った所で秒殺だ。見ろ、笑顔で手を振ってるように見えるが隙なんかどこにも無い。俺の人生の優先順位は一番が生き残る事、二番がエロい事だ。だからここは落ち着け。
 幸いにも俺の息子は聞き分けがよく、なんとか野獣のような性衝動を収めてくれた。……半勃ちで抗議はしてきたが。

 とりあえずは観察だ。生でみるのは初めてだが風の噂で誰が誰か位の見分けはつく。俺が人間よりは遥かに良い視力でテラス上の英雄達を見極めようとしていると、横一列に並んだ女達から真ん中に立っていた女が進み出てきた。頭に派手では無いがセンスのいい小振りの王冠を被り、金髪の髪を頭の左右でひっつめ、とぐろ状に編みこんでいる。

「今日、この日、集まって下さった全ての我が臣民達、そしてこの大地パンゲアに住む、あまねく善良な民に心から感謝します」

 狂気じみた大歓声が巻き起こる。女は両手を軽く上げそれを制するとさらに言葉を続ける。

「……知っての通り、我々が邪悪なる魔王を滅ばしてからもう一年が経とうとしています。各地で散発的な魔族との戦いは何度かありましたが、私の信頼する仲間達の働きによりその全てを鎮圧する事が出来ました」

 ……知ってるよ。その掃討戦で上級以上の悪魔はこの世からいなくなった。

「まだ、油断は禁物です。……ですが、魔王軍との激戦……それにケテル城の内乱……様々な苦難を乗り越え私達は今日の平和を勝ち取りました」

 ケテル城の内乱という言葉を女は一瞬言いよどむ。これも噂で聞いた。この城の過去の重臣達が魔王軍と結び、六英雄を暗殺しようとした事件の事だ。対魔王軍対策本部ともいうべきこの国がそれほど激しい攻撃を受けなかったのは、そんな裏もあるらしい。まあ、そういう意味では裏切り者でも役には立ったという事なのかもしれないが……。旧重臣どもが駆逐されたあと、要職には彼女の仲間達が就いたようだ。
 ここまで聞けば間違い無い。この女は王女……いや、二十歳そこそこの若さにしてこの国の女王、六英雄のリーダー、『英雄女王』イリーナ・ガウカ・ヴィルヘルム、だ。

 イリーナの演説はまだ続いていたが、俺はほとんど聞いていなかった。大声を出してる訳でも無いのに朗々と話す彼女の左側にいる人物が気になったからだ。その銀髪のエルフは目立たないように右手の指をひらひらと動かしていた。風魔法だ。……と、するとあいつが地水火風のエネルギーを自在に操る自然魔法の使い手で弓の名手、『歌声の君』サーフィアか。

 やっぱり六英雄は今、テラスの上に勢揃いしてるらしい。俺は彼女達の美貌に圧倒され欲情しつつも、これから自分がしなくてはならない難事を憂いてげんなりするという、なんだか複雑な心境のまま、一人一人顔を確認していく。

 一番左端は鍔広の三角帽子を目深に被ったどうみても十代前半に見える少女だ。あれが宮廷魔術師の『千年の大魔女』マグダレーネだ。その隣、一番の笑顔で民衆の歓声に応えているショートカットの赤毛少女が、蛮族出身にしてプレゲトン騎士団団長、『舞い踊る鬼神』ニャムカだろう。
 サーフィアとイリーナを飛ばした先にいる、ぎこちない笑みの女が遥か東方の島国から来たという『百人斬り』ハヤ・イケナミだ。近衛騎士団団長を務めている筈だ。最後の女は神官服を着ている。ハヤとは対照的に優美な微笑みを浮かべ柔らかく手を振っている。あいつが大司教、『神の慈愛』ソフィーヤ・レーシュに間違い無いだろう。

 どいつもこいつもいい女だ。……だがどう考えても俺の手には余る。というか巨大な岩山を持ち上げようとするようなもんだ。俺はその場にへたり込みそうになる。ああ嫌だ。もう嫌だ。早く帰りたい。
 ここに来るまでの道中で一人ずつなら、なんとかなるかも知れない。……なんて考えてた自分をぶん殴ってやりたい。彼女達の戦闘力は一人で俺百人分はあるだろう。ここにいるだけで白髪になり、その後毛が抜けて河童ハゲになりそうだ。
 だが、そんな中でも俺のエロリビドーは逃げ出すという選択肢を無理矢理押さえ込む。凄いな、俺のエロリビドー。
 とりあえず、作戦だ。良い案など浮かぶ予感は全くしなかったが、俺は熱狂に沸くやつらの壁をなんとかこじ開けふらふらと歩き出した。

 夜まで時間を潰したがやはり妙案など浮かばなかった。それにしても祭りの乱痴気騒ぎというのは酷いものだ。真夜中だというのに通りには酔っ払いが肩を組みながら陽気な歌なんぞを歌っている。酒場からもひっきりなしに楽しげな笑い声が聞こえてくるし、人間の食い物の独特な香りは俺の気分をより一層滅入らせる。道端で大いびきをかいてるこいつは大丈夫なのか?まあ、それだけこの国が平和って事なのかも知れないが……。
 目立つのを避け、なるべく裏通りを通る俺だが、どうやらその選択が良くなかったらしい。思索という名の現実逃避をしながら歩く俺は、すっかり人影もなくなった下町の裏路地に迷い込んでいた。自分の靴が石畳を踏む音の他にいくつかの足音が聞こえる。自慢じゃないが俺は視力以外の五感もかなりいい。……ま、人間に比べたらの話だが。
 どうやら相手に地の利があり、俺の逃げ道を潰す陣形で徐々にその範囲を狭めて来ている。周りはボロいとはいえ、石造りの建造物だ。……話し合うしかないか。争い事は好きじゃ無いんだが……。

 狭い路地で俺の周りを取り囲んだのはボロボロの服を着た人間達だった。前に三人、後ろに三人。手にナイフなんか持ってやがるが、幸い法儀礼はされてないようだ。ま、当たり前か。前の方からフードを目深に被った女が進みでる。驚きだ。出来るだけ体のラインを出さないようにローブとフードを纏っているがこいつは女だ。俺には分かる。案の定、女の声で話しかけてきた。

「持ってるもの全部置いて失せな。そしたら後は何もしやしないよ」

 俺は嬉しかった。二つの意味で。
 どんなに平和で光に満ちた楽園でも必ず闇は生まれる。俺はこの国に来て初めて存在を肯定されたような気分だった。
 もう一つの理由はもっと大きい。昼間、六英雄なんていう極上の化け物に性欲をびんびんに刺激されて俺はもう限界寸前だ。やりたい、本当にどうしようもなく今すぐやりたい。
 俺は視線に魔力を込め女をじっと見つめる。もう女は俺から視線を外せない。ぶるぶると震える二の腕が可愛い。ああ、やっぱり俺は女が大好きだ。

「……あんた達、ここはあたし一人で充分だ。別の獲物を探してきな」
「え? でもよ、お頭……」
「あたしがこんな青びょうたんに負ける訳無いだろ。いいから、さっさと行っといで!」

 不振がる部下を追い払うと、彼女はまっすぐ俺の元に歩み寄るとダガーを取り落とし、首に両手を回すと濃厚なキスを始めた。
 正直彼女が部下を追い払ってくれて助かった。俺の魔力は男にも効くが女に比べて遥かに効きが弱いし、第一、俺自身男に魔力はあまり使いたくない。……なんか気持ち悪いからだ。

「どうした? 俺の金が目的なんじゃないのか? なんでキスなんかしてる?」
「ふぁっ、あたしにも分かんないよ、なんかあんたの目を見てたら、こうしなきゃいけないような気がして……」
「そうだな、俺のエロ奴隷なお前はそうするのが当然だ」
「はぁっ、エロ奴隷……? 馬鹿言ってるんじゃないよ、あたしが、ちゅぱ、したいから、んっ、してるだけっ」

 俺は女のフードをずらし顔を露わにする。おお、当たりだ。ラッキー。可愛いのはもちろんだが、身だしなみに無頓着なんだろう、ツンツン跳ねた髪の毛と右目の黒い眼帯がとってもワイルド。
 キスしながらの唾液交換は彼女の性感をますます高めているようだ。俺の体液は全て媚薬だしな。もじもじと太腿を擦り合わせる。目が潤み俺の口を求めて必死に舌を突き出してくる。

「俺はマルコーダ、お前は?」
「……本名はエリザベス、でも皆にはベスって呼ばれてる。……恥ずかしいだろ? あたしみたいのがエリザベスなんて……」
「そんな事ないぞ、エリザベス……とてもいい名前じゃないか。でもちょっと長いな。俺がもっと可愛い愛称を付けてやる。…………そうだな、リズってのはどうだ? もちろんそう呼んでいいのは俺だけだ」
「う、うん。……あははっ、なんだか恥ずかしいけど嬉しいね……」

 まあ、そう思うのは俺の<魅了>の視線の効果な訳だが……。
 俺の視線は解呪されない限り日が経つにつれ、効果を増す。この効きようだと明日までには大体完成するだろう。
 あまり目立つのは得策じゃないし、俺もそろそろ我慢の限界だ。リズだけが知る秘密の隠れ家に案内させ、そこで彼女を犯す事にした。
 粗末なベットに押し倒すように俺を突き飛ばすと彼女はもどかしげに下着を脱ぎ捨てる。
 うん、たまにはこういうのも悪くない。
 俺の上に跨ったリズは、息子を手に持ち自分の秘所に添えながら言い訳をしてる。

「あ、あのね。あたし誰とでもこういう事する訳じゃないんだよ……? 特別ってゆうか、その、す、好きなんだっ、初めて会った時から、その……」

 初めて会ったのは30分前だが。俺は分かってるという感じで頷くとリズの体の中に肉棒を突き入れる。

「あっ! はあぁっ!」

 軽く突き上げただけでリズはイってしまったらしい。同時に俺の体に女の精気が流れ込んでくる。俺達淫魔は食事も睡眠も基本的には不要だが、定期的に人間の精気を摂取しないと徐々に衰弱し、やがては死んでしまう。俺達は人間がいないと生きていけないのだ。
 一週間の強行軍でかなり消耗していた俺の魔力が回復していく。相手の生命力にもよるがこの女なら一晩中やり続けても大丈夫だろう。それでほぼ魔力は全快する筈だ。

「ああっ、すごいっ、すごく気持ちいいっ、だめっ、はじめてっ、こんな気持ちいいの初めてっ、あっ」

 がすがすと腰を打ち付ける度に、淫肉が俺のモノをきゅうきゅうと締め上げる。……まずは一回目だ。

「ああぁぁっ! 中っ、中にどくどく出てるぅっ、ああっ、気持ちいいよぉ……」

 蕩けた表情で俺の上にしなだれかかってくるリズだが、俺はかまわず腰を動かし続ける。

「あっ、まっ、まって、あんっ、まだイったばかりだからっ、はぁんっ、う、うそぉっ、さっきより、あっ、気持ちいいっ、はぁっ、あっ、だめってばぁ、ほんと、あっ、おかしくなっちゃうからぁんっ」

 俺の精液を流し込まれ、リズはさっきよりもさらに激しく乱れ始める。

「だめっ、こわれるっ、あっ、ああっ、あたしだめっ、きもちよすぎてぇっ、あんっ、好きっ、マルコーダっ、大好きぃっ、あんっ、おかしくなるっ、またイク、イクぅっ!」

 ……まだだ、まだだよ、俺の可愛いエロ奴隷のリズ、夜はまだ始まったばかりだ。俺がもっとおかしくしてやる、もっともっと俺の事を好きにさせてやる……。

 結果論だが、リズに出会えたのは幸運な事だったらしい。
 朝食を作ろうとするリズを説得するのは骨が折れたが、貴重な情報を入手出来た。毎朝貧民窟にパンを配りに来るシスターがいる。そしてそれは六英雄の一人、大司教ソフィーヤの意向によるものだという事だ。
 ……繋がった。酷く細く脆い糸だが、会う事すら困難だと考えていた、六英雄との僅かな接点が出来た。
 ……しかし大丈夫だろうか。六英雄とゆかりのある人間を堕とすという事は、バレる危険性がそれだけ高くなるという事だ。そしてバレたら俺は……。
 ……いや!ビビるな。頑張れ、俺!どうせこのままじゃ三週間後に死んじまうんだ。それなら精一杯気持ちいい事をして死んだ方がいいじゃないか!
 無理矢理自分を納得させると、俺は震える脚をなんとか動かしパンの配給場所に向かった。

 パンの配給場所は貧民窟の更地に偶然出来たちっぽけな空き地だった。配給作業はほぼ終っているようだ。人を疑わしげな目で見つめパンを素早く服の下に隠す浮浪者や、お互いのパンを奪い合い、大騒ぎをしてるガキども、雑多で混沌とした光景、その先に二人のシスターがいた。
 一人は太っちょのおばさん、もう一人は肩までの金髪が綺麗な若くて可愛いシスターだ。どっちを堕とすかなんて見て一秒で決めた。いや、おばさんの方が先輩だろうし、教会での立場も上なんだろうが、そんな事は問題じゃない……んだ、俺にとっては。

 俺は素早く右手の人差し指をアストラル化させると、可愛い方のシスターの耳に飛ばす。耳の穴に侵入した俺の指は一瞬で拡散すると彼女の精神を支配する。
 
 俺達淫魔の身体の組成は極めて精神体に近い。この特性があるから他人の夢や精神に容易く潜り込む事が出来る。普通の人間一人操る程度なら、指一本幽体化させて潜り込ませる位で充分だ。切り離すとはいえ切り離した指も【俺】なのである程度の念話も使える。

「ん、あっ」

 俺の指が侵入した金髪の可愛いシスターがぶるっと震える。おばちゃんシスターが怪訝そうに振り返る。

「どうしたの? シスター・ルカ」
「あっ、な、なんでもないです、シスター・ベティ。……あ、そうだ私、シスター・フローラにちょっとお買い物頼まれてたんだわ。……申し訳ないんですが、シスター・ベティ、お先に大聖堂に戻ってて頂けませんか?」
「え、あ、うん、それは別に構わないけど……。なるべく早く帰って来なさいね」
「はいっ、本当に申し訳ありません。すぐ戻りますっ」

 俺がルカというシスターに潜り込ませた指にあらかじめ念じておいた命令は〝今すぐ一人きりになること〟だ。
 それは彼女の中で自分で考えた絶対に逆らえない欲求になっている。その為には仲間に嘘をつく事も平気でやってのける。とりあえずは成功だ。俺はルカの後を追った。

 路地裏で途方にくれた様子のルカを捕まえると、親しげに声を掛ける。

「やあ、どうしたんだい? こんな所にシスターが一人で」
「それが……私にも何がなんだか……」
「あれ!? よく見たらルカじゃないか! 久しぶりだね」
「え?……あの……」
「忘れたのかい、俺は恋人だよ。君の恋人のマルコーダ……忘れるなんて酷いなぁ」
「え……あ、ああ、そうね。どうして忘れてたのかしら。ごめんなさい……恋人を忘れるなんて最低よね」

 中央の本殿に勤めるようなシスターはその身を神に捧げ一生独身を貫くのかと思ってたが、恋愛に全く興味が無い訳でもないらしい。
 俺は魔力の影響下にあるルカを言いくるめ、リズの隠れ家に連れて行く。

「……誰、その女」

 ルカを見つめるリズの剣呑な表情に俺は一瞬ビビってしまう。全く毎度毎度の事ながら、この瞬間はあまり好きじゃない。

「えーと、新しいエロ奴隷のルカだ」
「え、エロ奴隷ってそんな言い方、酷い……」

 間違えた。全く面倒くさい。

「いいか、ルカ。シスターとはなんだ。人々に神の教えを広め、幸福へと導く事だろう。……だがそれだけでは不十分だ。神の教えに背く奴、教えに耳を貸さない奴、そういう奴を正しき道へ導いてこそ立派なシスターだ。しかし、そういう奴は一筋縄ではいかない。なぜなら人生に於いて優しくされた事が無いから神の慈愛が理解出来ないんだ。そういう時はどうする?   そう! 神の信徒たるシスター自らがその手本を見せなければならない。深い愛でささくれた男性の心を溶かさねばならない。その為に必要なのは奉仕の精神だ。たとえエロ奴隷と言われようが、神の深き愛による奉仕の精神の前では取るに足らない事だ。男の欲望を喜んで全て受け止め浄化した時、お前は晴れて一人前のシスターになったと言えるだろう。…………リズ、水を一杯くれ」

 喉が渇いた訳では無いが、喋りすぎて口の中がカラカラだ。ルカの様子を窺うと感極まったようにふるふると震え、目に涙が浮かんでいた。

「……分かったわ、マルコーダ。私、やる。神様の為に、ソフィーヤ様の為に、エロ奴隷として立派なシスターになる!」
「分かってくれて嬉しいよ、ルカ。ところで俺の欲望がちょっと神の教えに背きそうなんだが」
「任せて、マルコーダ。私初めてだけど一生懸命頑張るから。えーと、どうすればいいの?」

 そのやりとりを冷めた視線で見つめていたリズが口を開く。
 
「なんだか分かんないけど、あたしは邪魔みたいだね。ちょっと出てくるよ」

 今度はこっちかよ。本当に面倒くさい。

「いや、リズお前はルカにいろんなやり方を教えてやってくれ。……これはお前にしか出来ない事なんだ」
「えー、そう? ほんとに? あたしにしか出来ない? しょうがないなぁ……」

 妙にニマニマ笑いながら、リズは俺のズボンをゆっくり脱がすと反り返ったイチモツに優しく指を這わす。

「いいかい、よく見とくんだよ。こうやって触れるか触れないかってとこで竿を撫で回す。で、先っぽから汁が出てくるから、顔を近づけて……ん~、いい匂い……あっ、で、舌先でそれをすくって……はぁん、美味しいぃ……」
「貸してください! 私もやってみます!」
「だめ、あんたにはもったい……いや、まだ早い。で、先っぽをベロベロ舐めてぇ……」
「練習しないと上手くならないじゃないですか!」
「うるっさい女だねぇ、じゃ、あんたは後ろの穴でも舐めてな。そこも重要なポイントだからね」
「うし……って、ええっ!?」
「男の欲望を全部受け止めるのが立派なシスターなんだろ? パン配る位しか能の無い癖にいきがってんじゃないよ」

 ルカが来るまではパンの配給は貧民窟の全員が感謝してるとか言ってたんだが。女の嫉妬っていうのは怖いもんだ。

「うう……マルコーダ、本当にあの、この……穴で欲望から開放されるの……?」
「ああ、本当だ。完全に邪悪な思念などかき消えて、俺は非常にスッキリするだろう」
「……分かりました。神の御名の下、このシスター・ルカが邪悪な穴を成敗します」

 言うが早いかルカは俺の尻を割り広げると、顔を突っ込んできた。舌を出来る限り伸ばし、肛門のしわを丹念に舐め伸ばしていく。リズの方は俺のチンポに夢中だった。唇を狭め、顔の形が変わるほど前後に激しく頭を振っている。裏スジに当たる舌の感触が気持ちいい。
 気がつくとルカの息遣いが荒くなっていた。尻の穴を舐めてる最中に俺の汗まで一緒に舐め取り、欲情したらしい。

「どうした、ルカ? 興奮してるのか?」
「私はぁ、一人前のシスターになる為にやってるだけで、はぁっ、興奮なんてしませんっ」
「いや、興奮していいんだぞ、ルカ。お前が興奮していやらしい言葉を並べる事で男の興奮は増す。そうすることで毒素の排出が早まり、お前は神の道に更に近づく事が出来る」
「……はぁ……神の道……」

 うっとりと呟くとルカはもじもじしながらも、なんとか解説を始める。

「……あ、あの、本当は……興奮……して……ます。あの、お尻の穴……舐めてるだけで……気持ちよくなって……あ、あの、ア……アソコがその……濡れちゃって……その……」
「ルカ、お前は俺の恋人で、エロ奴隷シスターだ。はっきりと伝えろ。そうすればお前の快感はもっと高まる……あ、あと、穴の中に舌も入れてくれ」
「あ、はいっ、ぴちゃ、んっ、お尻の穴凄く美味しくてぇ、ああっ、ほんとに気持ちいいですっ、ちゅうぅっ、Hなお汁も止まらなくてぇ、れろっ、んあんっ、ポタポタ垂れてますぅっ、あっ、お尻の穴舐めてるだけなのに、ちゅばっ、私、もういっちゃいそうですっ」
「よし、イっていいぞ、ルカ。しかし、男より先にイクのはエロ奴隷シスターとしてだらしない事だ。これからはもっと修行に励め。……リズ、いいか喉の奥に出してやる、根元まで咥えろ」

 美女が二人掛かりで俺の前後に取り付き熱烈な奉仕をしている。ダメだ、もう限界だ。俺が射精を告げるとリズは俺の太腿を抱え込むように抱きしめ、陰茎を喉の奥まで飲み込み一滴も零すまいとする。ルカも後ろから腹に手を這わし、尻の割れ目に深く顔を突っ込んで来た。相変わらず舌は健気に俺の穴を穿っている。
 二人の愛情に溢れた行為に俺も大量の情欲で応えてやった。

「ぁあっ、イクっ、イっちゃいますっ」
「んっ、ごくっ、こくっ、ああっ、ごくっ、はぁぁ、……気持ちいいよぉ……」

 同時に崩折れる二人だったが、リズはのろのろと立ち上がり、残った精液を吸いだそうとする。俺はそれを手で制するとルカに残りの精液を分けてやる。不満そうなリズをエロ奴隷同士仲良くしろと言って叱り、ちゅうちゅうと美味しそうに俺の子種を吸いだしては絶頂を迎えているルカの髪を撫ぜながら、大変な事に気づく。

 ヤバイ、夢中になりすぎた!

 ルカはちょっと買い物に行くと言って抜け出してきた。そろそろ戻らないと怪しまれるだろう。くそ、もっと俺に依存させるつもりだったが、俺の悪い癖だ。非常に残念だが、今日は本番が出来ない。
 いや、またいつかチャンスはある。エロに関してだけは、俺は絶対諦めない。
 それに完全じゃないにしろ、今ルカを堕としたのは無駄では無い。淫魔は徳の高い者や僧侶の精気を吸収する事でかなりの魔力を回復出来る。俺の右手の人差し指はすっかり復元していた。
 俺はルカを起こすと服や髪の乱れを直させ、言い含める。

「いいか、ルカ。お前は何一つ間違った事をしていない。ただお前はご主人様より先にイクというミスを犯した。これはエロ奴隷シスターにとって非常に恥ずべき事だ。だからお前は恥ずかしくて、自分がエロ奴隷シスターである事を誰にも伝えられない。……シスター・フローラには花でも買って行け。もし、怪しまれたら自分の勘違いだったと言うんだ。あと、俺からの念話は絶対だ。それをよく覚えておけ」
「はい、いう通りにします。……あの、今日は本当にすみませんでした。今度こそ必ず私の体で満足して頂けるよう頑張りますので、よろしくお願いします」

 ああ、期待しているぞ……ってゆうか本当は今すぐやりたいんだが、仕方ない。
 ルカを送り出すと俺はリズの身体にのしかかった。リズは笑顔で俺の体を迎え入れる。

「あ、してくれるの? 嬉しい! 口でも胸でもアソコでもお尻でも好きなとこ使って、気持ちよくなって。……あたしの心も体も全部マルコーダ様のモノなんだから……」

 甘えるように身体を任せて来るリズの体を弄りながら俺は考えていた。
 大司教に関係のある人間を早い段階で堕とせたのはかなりのラッキーだ。
 勝てる勝てないに関わらず最初のターゲットは大司教ソフィーヤ・レーシュに決めていたからだ。
 というか、そうしなければならない。
 彼女の編み出した究極の白魔法、魔族からの精神攻撃を全て無効化する<絶対聖域>の呪文。あれをなんとかしない事にはいかに淫魔でもどうしようもない。
 ……しかし、俺があの呪文を破れるのか?数々の上級淫魔がなす術もなく消し去られたあの破邪呪文を……・?

 自らの体に襲い掛かって来た悪寒を振り払うように、俺はリズの身体に肉棒を沈めていった……。

< 続く >

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