第02話
「脱ぐ……って、一体どうして?」
唖然として尋ねる私に、麻紀子ちゃんはもの分かりの悪い子を諭すように、やれやれといった表情で答えます。
「だって服が汚れちゃうでしょ? 知らないの? お洋服に付いたミルクって放っておくとすごーく臭くなるんだよ。さ、脱いで」
「で、でも……」
傍らで『牛』がこちらを眺めています。その顔にニヤニヤした笑みが浮かんでいるように見えるのは気のせいでしょうか?
このネットリとした視線に素肌をさらすのかと思うと、心底ゾッとします。
「あー、もう! お姉ちゃん、【男牛様のミルク】が飲めなくてもいいの?!」
(……う)
「それは、困る――わ」
弱々しく答えます。
麻薬やアルコールの禁断症状というのはこういうものなのでしょうか?
今もカラダの芯が震えるほど、私は【絞りたての新鮮なミルク】を欲しがっています。
正直、いつまで耐えられるかわかりません。
まして、【男牛様のミルク】――
ゴクリ。
「分かったわ」
(……そうよ。コイツはただの家畜――犬猫と同じよ。気にする必要なんか無いんだわ)
私は必死に自分に言い聞かせると、タンクトップとホットパンツを脱いで畳み、ブラとショーツだけの下着姿になりました。
たった布地一枚分しか違わないのに、なんだかとても心細い気分です。
(大丈夫よ。このくらい――)
「うわぁ、すっごおぉい! おっきなおっぱい!!」
麻紀子ちゃんが驚嘆の声をあげます。
「美弥お姉ちゃん、やっぱりスゴいねぇ! うちのママ、『前より大きくなったでしょ』って自慢してたけど、お姉ちゃんには全然かなわないよ!」
「やだわ。やめて……」
麻紀子ちゃんの惜しげもない賛辞に、気恥ずかしくなった私は両手で胸を覆いました。
「あ! ダメだよ、隠しちゃ! ちゃんと【男牛様】に見てもらわなきゃ!」
「えっ!? 見て……もらう?」
「うん。【男牛様】は、女の人のおっぱいが大好きなんだよ。それでね、気に入った女の人にしか【男牛様のミルク】を授けてくれないの。里の女の人は毎日大変なんだよ。でも、美弥お姉ちゃんなら大丈夫だね! さ、邪魔だからブラジャーも取って」
「そ、そんなっ!」
思わず、胸を覆い後ずさりします。
もう限界です。この、おぞましい生き物にそんなところまで見せるなんて――
「ねぇ、お姉ちゃん。ちゃんと【掟】に従わないと――【豚さん】にされちゃうよ」
これまで一度も見せた事の無い目付きで麻紀子ちゃんが私を見つめています。
侮蔑といらだちと――かすかな恐怖の籠った目。
(【掟】? 【豚さん】?)
意味はよく分かりませんが、麻紀子ちゃんが心底本気だというのは、ひしひしと伝わってきます。
「お姉ちゃんが【男牛様のミルク】を飲みたいって言うから、せっかく教えてあげてるのに――」
目を潤ませながら、麻紀子ちゃんが声を震わせます。
「ご、ごめんなさい。分かった……わ」
ククッ。
(えっ!?)
一瞬、小さな笑い声が聞こえました。
でも、麻紀子ちゃんは真面目な顔で私をじっと見つめたままです。
(まさか――)
『牛』の方に目をやると、少し慌てた様子で視線をずらしました。
不精髭に埋もれたタラコのようにぶ厚い唇が、ニヤリと歪んでいるのが分かります。
(コイツ……『牛』のくせに!)
急に激しい怒りがこみ上げてきました。
そうです、間違いありません。私は今、この『家畜』に馬鹿にされたのです!
(アンタなんかに嘗められてたまるもんですかっ!)
一瞬で沸きあがった怒りが嫌悪感を圧倒し、私はむしりとるようにブラジャーを外していました。
(そうよ、気にするからいけないのよ! 私が堂々とさえしていれば――)
「ふふ。くすぐったぁい」
(……え?)
気が付くと、いつのまにか麻紀子ちゃんの胸元にのしかかるように『牛』が鼻先を寄せています。
「ま、麻紀子ちゃんっ!」
大丈夫――と聞きかけた口が途中で止まります。
ぺちゃ。ぴちゃ。ぺちゃ。ぷちゅ。
「あ……はあぁんっ! 【男牛様】ぁ……」
まだ膨らみかけてさえいない胸の小さな桜色の尖りを、『牛』のぶ厚い舌先がチロチロねぶっています。白い肌をネバネバした唾液が幾筋も伝い、まるでナメクジが這った跡のようにテラテラ光らせていきます。
「あんっ! そこ、気持ちいぃ……」
上気した頬、トロンとした目付き、かすかに開いた濡れた唇――麻紀子ちゃんの表情はゾッとするほど妖艶で、私はそのまましばらく言葉を失ってしまいました。
それはもはや少女の顔ではなく、妖しい“オンナ”の顔でした。
(そんな……そんな――)
「麻紀子ちゃん、やめなさいっ!」
ようやく叫んだ私に、ちらりと視線を向けた麻紀子ちゃんは、口元にうっすらと笑みを浮かべるだけで、『牛』から離れようとはしません。
「ふふっ」
麻紀子ちゃんは『牛』の顔に手を添え、自分の顔に近づけると、私に見せつけるようにゆっくりと舌を伸ばします。
ぬちゅっ。ちゅっ。ぴちゅっ。
ねだるように突き出された麻紀子ちゃんの舌先を、『牛』のぬらぬら光るタラコのようなぶ厚い唇が吸い上げ、舌を絡ませます。
「んっ、んふぅ、んうぅん……」
麻紀子ちゃんが甘えた鼻声をあげています。
犬や猫にするような軽い親愛のキスなどではありません。それは欲情に駆られたオスとメスの交わす淫らな期待に満ちたディープキスでした。
「ダメよ、麻紀子ちゃん! そんな事しちゃ!」
ああ、何て言えば良いんでしょう? まさか、*歳の子供に性の道徳や貞操の観念を説く事になるなんて――
「ねぇ、お姉ちゃん。コレ、ママに教えてもらったんだよ」
「えっ!?」
「ママはね、すごぉく上手なの。今じゃ、この里で一番だって。私も早くママみたいになりたくて、毎日、ママと一緒に裸になって【男牛様】の喜ばせ方を練習したんだよ。ねっ、【男牛様】?」
【んもおおおおーーーーーーー!】
(【男牛様】の喜ばせ方!? 毎日……裸で? まさか、京子義姉さんが、そんな――)
再び絶句する私の頭に一瞬、全裸の京子さんと、この生き物とが絡み合うおぞましい光景が浮かびました。
元バレリーナの京子さんは、子供を産んだ事のある女性とは思えない程、すらりと均整のとれたスタイルです。
あのおっとりと清楚な私の憧れの人が、しなやかで美しい肢体が、このいやらしい目をした『家畜』の舌でねぶられ、淫らな口づけを交わす――
「う……嘘よ! そんなハズないわっ!」
「ふーん」
必死で否定する私に、麻紀子ちゃんが微笑みます。
「別に、信じてくれなくてもいいけど……ねぇねぇ、お姉ちゃんは要らないの? 【男牛様のミルク】」
どくんっ!
「あ……」
麻紀子ちゃんの問いかけに、心臓を直接ギュッと握られたようなショックが私を襲いました。
「【絞りたてで、新鮮な】――すごくすごぉく美味しい【男牛様のミルク】」
(ああああああああああああああああああああああああああああ!)
腰が砕け、私はへなへなとその場にへたりこみます。
「んー、ホントに飲まなくていいのかなぁ? 【白くて濃ぉい男牛様のミルク】――カラダにもとってもいいんだよ」
麻紀子ちゃんが楽しげに笑います。
(どうして!? 私、どうしてこんな……)
まるで悪い魔法にでもかけられたように、全身にまったく力が入りません。
「あーあ。それじゃあ、私が全部一人で飲んじゃお……【男牛様のミルク】」
「いや! いやいやいや、いやああぁ!」
【男牛様のミルク】――麻紀子ちゃんがその言葉を口にする度に、私の中で何かが獣のように荒れ狂います。
“ソレ”は時間が経てば経つほど、どんどん激しさを増すばかりです。
(欲しいっ! 飲みたいわっ! ああ……今すぐ飲まなきゃ、死んじゃいそう!)
「ふふっ」
だらしなく床にへたりこんだ私の背後に回った麻紀子ちゃんが、私の肩に頭を載せ、楽しげに囁きます。
「ホントはお姉ちゃんも飲みたいんだよねぇ――【男牛様のミルク】。きちんと私の言う通りにするって誓える?」
目の前で『牛』が私を見下ろし、ニヤニヤ笑っています。今にも舌舐めずりしそうな、いやらしい目付き。ああ、こんなおぞましい生き物が【男牛様】だなんて。でも――
「ち……誓う! 誓うわっ! 何でも麻紀子ちゃんの言う通りにしますっ! だから……だから、お願い! 私にも【男牛様のミルク】を飲ませてっ!!」
「お姉ちゃん――可愛い」
そう言って私の頬に軽いキスをした麻紀子ちゃんは、背後から私の両手を取り、頭の後ろで組ませました。
「よいしょ」
「……あっ!」
そのまま背中を押され、私のむき出しの胸が前に突き出ます。
ふるんっ。
汗にまみれた私の大きな乳房は、心中の怯えと不安を映すようにフルフルと震えています。
「あ、あの……麻紀子、ちゃん? ――ひあっ!」
キュッ!
突然、白い指が背後から私の左右の乳首を摘みました。
「なっ?! いやっ!」
「ふふふふふ。いいなぁ……おっきなおっぱい」
「ま、麻紀子ちゃん、あなた何を……あああっ!」
コリコリクニクニと麻紀子ちゃんの細い指先が私の敏感な尖りを弄びます。
「ダメよ! やめてっ!」
慌てて頭の後ろで組んだ両手を放そうとすると――
「動かないでっ!」
するどい叱責が後ろから浴びせられました。
「お姉ちゃん、いい? 動いたら飲めなくなるよ――【男牛様のミルク】」
(ああぁ……そんな――)
まるで主人に一喝された飼い犬のように私の心が縮みあがります。
「いいなぁ。おっきいなぁ、柔らかいなぁ……羨ましいなぁ」
ふにゅ。むにゅ。くにゅくにゅ。
麻紀子ちゃんの両手に揉みしだかれ、私の乳房が様々に形を変えます。
「あっ! あっ! あっ! ああぁっ!」
時に強く、時に優しく、麻紀子ちゃんの巧みな指遣いが徐々に潤い湿った情感を引き出し始めているのを感じて、私は激しくうろたえました。
(……嘘っ!? どうして、こんな――)
「あはっ! 乳首、もうこんなにコリコリになってる! お姉ちゃん、気持ちいいんでしょ? そうなんでしょ? ねぇっ?!」
「う……」
恥ずかしさに頬がカッと染まります。
そうです。まだ*歳の姪に弄ばれるまま、私は感じ始めていました。
「お、お願い……もう、止めて麻紀子ちゃん。どうして、こんな事するの?」
くっくっくっ。
(……えっ?)
私の耳に届いた小さな含み笑い。それは正面から――
ぞくっ!
のそり、と大きな影がのしかかろうとしていました。
「……ひっ!」
必死で身をよじろうとした私を、細い手が後ろからはがいじめにします。
「ま、麻紀子ちゃんっ?!」
「やだなぁ、お姉ちゃん。もう忘れちゃったの? ――【男牛様のミルク】」
どくんっ!
(ああああああああああああっ!)
麻紀子ちゃんに耳元で囁かれ、ほんの一呼吸のうちに、私のカラダは私のものでは無くなってしまいました。
全身からグニャグニャに力が抜けた私は、だらしなく麻紀子ちゃんにしなだれかかります。
「ぜーんぶ、【男牛様】に喜んでもらうためだよ。たくさんたくさん【男牛様】に喜んでもらって、いっぱーい【ミルク】をもらおうね、お姉ちゃん。さぁ、【男牛様】――存分にお楽しみ下さいませ。ふふふっ」
「や、止め――ひいぃっ!」
ちゅぷっ。
――ヌラヌラとよだれにまみれたぶ厚く生温かな肉の感触。
「いやああああああああああああぁっ!」
ザラリとした表面が敏感な突起を的確に捉え、チロチロと小さく円を描きます。
「いやいやいや! あっ! ダメっ! いや……あぅっ! だ、ダメエエエェっ!」
ふーぅ。ふーっ。ふぅーっ。
なまぐさい鼻息を漏らしながら、『牛』の舌先が蠢く度、私はこらえようもなくビクビクと痙攣してしまいます。
全身に鳥肌が立つほど、おぞましいのです。嫌悪感で気が狂いそうなのです。
なのに――
「あっ! あっ! あーーーーっ! あーーーーーーーーーーーーーっ!」
悦楽の叫びが止められません。上体をのけぞらせ、まるで獣のように私は叫び続けます。
(嘘よっ! 信じられない! 私、どうして……)
「あははははっ! すっごく敏感! やっぱり、お姉ちゃんは素質充分だねっ!」
嬉しげに笑った麻紀子ちゃんが、唾液でぬるぬるの私の乳房を鷲掴みにします。
「あぅっ!」
「ねぇねぇ、お姉ちゃんがこんなに感じやすいのは、やっぱり、カレシとたくさんエッチしてるから?」
「……えっ!?」
「そうなんでしょ? このすごーいおっぱいをカレシに毎晩モミモミしてもらってるから、こんなにいやらしくなったんだよね? ね? いいなぁ、妬けちゃうなぁ」
(麻紀子ちゃん、何を……)
「ねぇ、【男牛様】! お姉ちゃんをいっぱい感じさせてあげて! もうカレシとじゃ全然物足りなくなっちゃうくらいメチャクチャにして、別れさせちゃおっ!」
「そ……そんなっ! イヤよ! やめ……はうぅっ!」
ちゅぼっ!
乳首に吸い付かれ、私はのけぞりました。
「あひっ! そ、そこ……ダメっ! ひゃぅっ! いやああっ!」
敏感な胸の先端を無遠慮な『家畜』の舌がベロベロ舐め回します。
「ほらほら【男牛様】、ちゃんと舐めてあげなきゃ。女の子はココが弱いんだよ」
【んおおおおおおーーーーーーー!】
麻紀子ちゃんの指図に従って『牛』が舌を躍らせます。恐ろしいほど的確に弱い部分を探り当てられ、私はビクビク痙攣しながら叫びます。
「いや! やめ……あっ! あんっ! はあぁっ!」
「あはっ、可愛い声! 私も手伝ってあげるね!」
『牛』に攻められているのとは反対の乳房を麻紀子ちゃんが優しく愛撫し始めました。
片方は無遠慮に激しく、片方は優雅に繊細に――これまで一度も感じた事のない快楽に私は怯えすくみあがりました。
「だ、ダメっ! いやいやいや、助けてっ! 山沢さん、助け――むぐっ!」
思わず恋人の名を叫んだ私の唇が、柔らかいもので塞がれます。
(麻紀子ちゃん?!)
「んっ。んふっ。んくっ。んんぅ!」
私の唇を奪った、まだ*歳の姪は合わせた唇の隙間から強引に舌先をねじこんできます。
「い……いやっ!」
慌てて首を振り、顔を背けると、耳元に――
「【男牛様のミルク】」
どくんっ!
「ああ――いやああぁ……」
麻紀子ちゃんの言葉一つで、どんどんカラダの自由が奪われていきます。
ついに首の力さえ失った私は脱力しきったカラダを布団の上にあお向けに寝かされました。もう、手を持ち上げる事すら出来ません。
「ふふ。大丈夫だよ、お姉ちゃん。もうじき、カレシの事なんか忘れちゃうくらい、すごーく気持ち良くなっちゃうんだから」
「イヤよぉ……やめてよぉ……」
こらえきれず、ついに泣きだした私を麻紀子ちゃんは冷たく勝ち誇った表情で見下ろします。
「ほら、【男牛様】もすっかりその気になってくれたみたい!」
ぶるんっ!
(えっ!? 何……コレ?)
寝転んだ私の頭上に突然、異様な“肉の棒”としか表現しようの無いものが現れました。
血管が浮き出て節くれだった“ソレ”は、キノコのように笠がグンと張りだし、ヒクヒクと脈動しています。
本能的に怯えを感じる、凶々しくおぞましい形――そのあまりの迫力に、私は一瞬我を忘れ、ただ呆然と“ソレ”を見つめました。
無理に例えてみると、盲目の蛇のような、あるいは巨大なミミズのような……私はその見た事も無い物体に――
(違う! 知ってる! 私、“コレ”を知ってるわ! ああ、だけど――)
私は絶対に“コレ”の正体を知っています。なのに、どうしてもそれを表現する言葉が思い浮かびません。
ちょうど『牛』を初めて見た時と同じ、もどかしさと激しい違和感とが私を包んでいます。
早く私は気付かなくてはいけないのです。そうしないと――
「良かったねぇ。お姉ちゃんはきっと【新鮮で濃ぉい男牛様のミルク】をたっぷり注いでもらえるよ」
「……えっ? きゃあっ!」
ずんっ!
(ぐっ!)
突然、大きな影が私の全身に覆いかぶさりました。
「……何!? 今度は何なのっ?!」
“何か”が私のカラダの上に乗っています。
重くじっとりと湿った大きな肉塊のような“ソレ”は、私の胸からお腹にかけての素肌にブヨブヨと密着し、さらにちぢれた剛毛に覆われた“何か”で私の顔全体をがっちり挟みこんでいます。
そして、気が付くと、つい先程まで中空にあった“肉の棒”が、私の頬をこすっていました。腐ったチーズのような腐敗臭とツンと目に染みるアンモニアの匂いに吐き気がします。
(これって、まさか……『牛』?!)
「い……いやああああああああああっ!」
そうです。やっと気付きました。
私は今、あの『牛』の巨体にのしかかられているのです!
全身の力が抜けた私に一切抗う術はありません。押し潰され、窒息する恐怖に心が縮み上がります。
「た、助けてっ! 麻紀子ちゃ……むぐっ!」
叫ぼうと大きく開いた口の中に、何か熱く大きなものがねじこまれました。
それは口の中に収まりきらないほど大きく、熱く堅く、かすかに脈打っています。
「~~~~~~~!!」
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。心配しないで」
(麻紀子ちゃん?!)
「お口の“ソレ”は【男牛様のミルク】の【注ぎ口】だよ。【男牛様のミルク】は空気に触れるとすぐ悪くなっちゃうから、そうやって【注ぎ口】から直接絞り立てを飲むのが一番なんだよ」
(【注ぎ口】?! ……まさか?!)
ビクビクンッ!
口の中を占拠した肉塊が脈動し膨れ上がります。
そうです。あのおぞましい形状の肉の棒を口の中に押し込まれてしまったのです!
(いやいやいやいやあああああっ!)
半狂乱になった私は、なんとか口から【注ぎ口】を外そうと懸命に身をよじります。
けれど、がっちりと顔を挟まれているため、全く身動き出来ません。
【んもおおおおおおおおおーーーーーーー!】
「ぐぶっ!」
喉の奥まで肉の棒を突き降ろされ、私は吐き気で顔を歪めました。
「ほらほら、暴れちゃダメだよ、お姉ちゃん。キチンといい子にしてないと【男牛様のミルク】がもらえないよ。いいの? 【男牛様のミルク】が飲めなくなっちゃうよ?」
きゅうううううううっ!
「う、うううううううううぅ……」
私はおぞましさとこみあげる強烈な切望との間に挟まれ、涙を流して呻きました。
(ああ、飲みたい! 飲みたい飲みたい飲みたい! 飲みたいいぃっ!)
そうです。【男牛様のミルク】が飲めなかったら、本当に死んでしまいそうです。
けれど、こんな醜い生き物にいいように弄ばれるなんて――
べろおぉんっ!
「――ひっ!?」
太腿を何か生温かいものがかすめました。
それは生温かく、濡れた生肉のような――
(まさか?!)
「ああ、【男牛様】……そんなにお気に召しましたか? それじゃあ、たくさん舐めて可愛がってあげてくださいね」
(――舐める?!)
ぬろん。
「っ!!」
ぺろぺろ。べろん。ちゅぷっ。ぬりゅんっ。
(いやあああああああああああああああああああっ!)
むきだしの太腿を『牛』の舌が舐め回しています。
ダラダラとよだれが腿を伝って、流れていくのが分かります。
ただ舐め回すだけではありません。その舌は太腿ぞいに徐々に下に降りています。
このままだと――
はむっ。
「ひっ!!!!!」
もふっ。もにゅ。べろん。べろべろべろっ。じゅじゅじゅるっ。
私の一番敏感な場所、一番恥ずかしいカラダの中心にショーツごとむしゃぶりつかれ、私は喉深くまで【注ぎ口】くわえたまま、恐怖と嫌悪の絶叫を上げました。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!」
ふうーっ! ふっ! ふふーっ!
荒い鼻息が股間にかかります。
舐め、吸い付き、舌先を荒々しく突き立て――『牛』は興奮しきった様子で私の秘部をショーツの上から蹂躙し続けます。
【んもおおおおおおおおおーーーーーーー!】
(いやいやいやいやいやいやいやああああああああああああっ!!)
「ねぇ、お姉ちゃん。あんまりうるさいと、もらえないよ――【男牛様のミルク】」
(!!!!!!)
麻紀子ちゃんの冷たい声が、一瞬で私をパニックから引き戻しました。
「せっかく、こんなに【男牛様】が喜んでいらっしゃるんだよ。少しくらい静かに我慢していられないのかな?」
(だって……だって――)
あまりに理不尽な言葉に涙が浮かびます。
口の中におぞましい肉の棒をねじこまれ、汗ばんだ巨体にのしかかられ、一番恥ずかしい敏感な場所を無遠慮に舐め回される――まるで生き地獄です。
【むおおおおおおおおおーーーーーーー!】
『牛』の声の調子が変わりました。
ぐいっ! ぐいっ! ぐいっ!
「ぐぶっ!」
せっぱ詰まった様子で【注ぎ口】を私の口の中に突き入れてきます。
(何なの――これっ!? 一体……どうしたの?)
何かが迫っています。私は本能的に怯えを感じ、固く身をすくめました。
「ああ、良かったねぇ。もうすぐだよ、お姉ちゃん」
(もうすぐ?)
私の表情から疑問を読み取ったのでしょうか?
麻紀子ちゃんはかがんで床に手を突くと、横たわった私の耳元に囁きます。
「そう。もうすぐ飲めるんだよ――【男牛様のミルク】」
きゅううううっ!
(ほんと――に?)
涙にかすんだ目で問いかける私に、麻紀子ちゃんが頷きます。
「飲みたいよね、【新鮮な絞りたてのミルク】。【白くて濃ぉい】、世界で一番美味しい【男牛様のミルク】」
コクリ。
私は小さく頷き返します。
「もうすぐ【男牛様】が、お姉ちゃんのお口の中の【注ぎ口】から【男牛様のミルク】をたっぷり注いでくれるからね。頑張ろうね、お姉ちゃん」
(ああ。もうすぐ……飲めるのね? 【男牛様のミルク】が――)
【オ! オオッ! オオオオオオッ!】
じゅぼ! じゅぶ! じゅぼじゅぶっ!
『牛』の声の響きがどんどん切迫したものになるのに合わせて【注ぎ口】の動きも激しくなっていきます。
私は恥辱と苦痛と激しい欲求の狭間で、ただただ、麻紀子ちゃんの言葉だけを信じて耐え続けました。
(もうすぐ、ここから……この【注ぎ口】から【男牛様のミルク】が――)
まるで苦行の果てに訪れる極楽浄土を信じる修行僧のように、私は全身全霊で【男牛様のミルク】を待ち焦がれました。
【ウオオオオオオオオオオッ!】
やがて、ひときわ大きな声で呻いた『牛』が限界まで膨れあがった【注ぎ口】を深々と突き入れ――
どぷっ!
(――あっ!)
どぷっ! どぷっ! どぷっ! どぷっどぷっ!
(あああああああああああああああああああああああああああああああっ!)
頭の芯まで響くような勢いで、次々と喉奥に射込まれる【男牛様のミルク】――それはとても言葉で表せないほどの感動と幸福感を私にもたらしました。
(ああ。こんな……こんな――)
――それは『至福』でした。
――それは『喜び』でした。
――それは『愛』でした。
もはや、『美味しい』という言葉さえ陳腐に感じます。
これと比べられるようなものを、私は今まで体験した事がありません。
自分の人生がいかに薄っぺらいものだったのかを思い知らされました。
どぷっ! どぷっ! どぷっ!
(【男牛様のミルク】……何よりも美味しい【絞りたてのミルク】!)
「んっ! んくっ! んぶっ! んふうっ!」
一口飲み込む毎に自分が生まれ変わっていく気がします。
ああ、今までの苦しみは何もかもこの瞬間のためだったのです!
今なら分かります! 全てが必要な事だったのです!
数秒前までは想像も出来なかった深い法悦の中、ぼろぼろと大粒の涙を流しながら私は――
しょわあああぁっ。
「……あーあ、やっぱりお姉ちゃんもお漏らししちゃった。ママと一緒だね。ふふっ」
< 続く >