クチマンコノサヤカ
独白1。
中村沙耶香。業界2位の中村建設社長令嬢。5年前に家出をしてそのまま失踪。当時は身代金目当ての営利誘拐と考えられ、捜査もすすめられたが結局発見できず。
『ゴシュジンサマ』の通っていた学校の近くの名門女子校に通っていた。
2校の間には学園祭・文化祭などで交流があり、その際に『ゴシュジンサマ』に目をつけられたと考えられる。
催眠度の最も深い数人のうちの一人であり、『ゴシュジンサマ』の『お気に入り』であったものと推定される。
失踪前は苛烈な性格をしていたらしいが、今は見る影もない。
ほとんど全ての自律的な行動を放棄しており、栄養剤の点滴によって命を永らえている。
・・・あれからどれくらい経ったのだろうか。
ご主人様が突然いなくなってしまってから。
ここはどこなのだろうか。
どこでもいい。
ご主人様がいないのならどこでも同じことだ。
ご主人様・・・。
でも、いつか、きっと、ご主人様は迎えに来てくれる。
そう、もう、二度と、会えないと、決まったわけではないのだ。
そして、その時、あの時から満足に食事もとらずに痩せ細ったこの身体を、ご主人様に見せて心配させるようなことがあってはならない。
以前と変わらず、笑顔でご主人様を迎えなければならない。
その事に気づいた3日前からちゃんと食事を摂るようにした。
ご主人様の精液のかかっていないパンはパサパサして食べにくいが、それは仕方のないこと。
それよりもこの痩せ細った身体を、以前のようにご主人様に自信を持って愛でられるように磨きなおさなければ。
衰えてしまった舌技も鍛えなおさなければ。
そう!
そうなのだ!
まだすべてが終わったわけではないのだ!
ご主人様ともう二度と会えないというわけではないのだ!!
ああ、ご主人様、サヤカはご主人様が戻ってくるまでお行儀よくしています。
大人しく、いい子にしています。
身体も磨きなおします。
ご主人様を悦ばせる舌技も鍛えなおします。
以前と同じ笑顔でご主人様に笑いかけます。
だから、だからご主人様。
早く迎えに来て・・・。
(中村沙耶香は保護されたときから、食事も満足に摂らず栄養はほとんど点滴で摂取しているような状態であった。
身動きすらほとんどせずベッドの上で目を開いているだけ。
そのため頬はこけ、身体は痩せ細り、肌はツヤを失い、筋肉は落ち、輝くばかりの美貌は見る影もなかった。
しかしその内面で何か変化があったのか、三日ほど前からまだ量は少ないが食事を積極的に摂るようになり、ストレッチなどの運動も始めたようだ。
また、好物なのかキュウリを1本まるごと食事につけるよう要求してきたため、そのように手配した。
他にも、いつも口がもごもごしている奇癖が見られるようになったことなど気になる点はあるが、全体的には快方に向かっていると言えるのではないのだろうか)
< 続く >