馴奴 二 前編

前編 検診は裸で……

「ふう、今日はこのくらいにしておこうかしら」

 木下佐知子(きのした さちこ)は放課後、整理していたファイルを閉じると軽く肩を揉みほぐす。
 もう、3階にある国語科準備室には夕日が射し込んできていた。ついさっき、今日の司書担当の図書委員が国語科準備室に隣接する図書室を閉め、鍵を佐知子に返却して下校したので、今は佐知子の他にはあたりに人はいない。

「お疲れのようですね、木下先生」

 不意に声をかけられて、佐知子が入り口に目を向けると、そこには佐知子が担任するクラスの栗原由佳(くりはら ゆか)が立っていた。

「あら、まだいたの、栗原さん?」
「はい、竜泉寺先生に頼まれて保健室で用事をしていたので」

 竜泉寺岳夫(りゅうせんじ たけお)は、この春からこの学校に赴任してきた保健医、そして、栗原由佳は、佐知子のクラスの保健委員だった。この学校では2年から3年に上がるときはクラス替えがないので、昨年保健委員をしていた由佳に、今年も引き続き保健委員をやってもらっていたのだ。

「そうだったの。こんな時間まで大変ね」
「いえ、私は。それより、先生の方がお疲れみたいですよ。ほら、こんなに肩がこっているじゃないですか」
 由佳は、歩み寄ってきて佐知子の背後に立つと、佐知子の肩を揉み始める。

「いや、私のことはいいから。あなたも早く下校しなさい」
「少しだけです。竜泉寺先生に、肩のこりによく効くマッサージ法を教わったんです」
 そう言って、佐知子の肩を揉み続ける由佳。たしかに、その力加減は絶妙で、ツボとでもいうのだろうか、押さえるポイントも的確にこり固まった場所を捉えていてとても気持ちがよかった。

「ああ、気持ちいいわ栗原さん。とても上手よ」
「ありがとうございます先生。ほら、ここなんかどうですか?」

 会話をしながらも、由佳は手際よく佐知子の肩を揉みほぐしていく。
 そのあまりの気持ちよさに、佐知子は肩こりだけでなく、心までほぐれていくような気分だった。

「もっと楽にして、力を抜いて下さい、先生」
「ええ」
 佐知子は由佳の言葉に従って肩の力を抜き、椅子の背もたれに寄りかかる。
 その目は静かに閉じられ、由佳のマッサージに身を任せている。

「どうです先生、気持ちいいですか?」
「気持ち……いい」
 そう答えた佐知子の声は少し気怠げで、抑揚が失われていた。

「ほら、どんどん気持ちが楽になって、まるでふかふかの雲の上に乗っているみたいでしょう?」
 マッサージを続けながら囁く由佳の言葉に、佐知子は目をつぶったままで頷く。
 本当に、由佳の言う通り、ふわふわとしてとてもいい気分だった。

「さあ、先生の乗った雲がふわり、ふわりと、ゆっくり下に降りていきますよ」
 目を閉じて黙ったまま、佐知子はコクリと頷く。
「ふわーり、ふわり、ほら、とても気持ちよくなっていくでしょう?さあ、もっと力を抜いて下さい。ふわーり、ほら、ゆっくり、ゆっくりと深く降りていきますよ」

 いつの間にか、佐知子は由佳の言葉に、ただ頷くだけになっていた。
 由佳のマッサージが本当に気持ちよくて、起きているのか夢の中にいるのかもわからない。

「さあ、ここが先生の心の一番深いところです。ここには先生にとって大切なものが沢山しまってありますよ。何が見えますか、先生?」
「……小さい頃、誕生日にもらった絵本。ボロボロになるまで何度も繰り返し読んだわ。それに、高校の頃憧れていた先生。とても素敵な人で、私が教師になろうとしたきっかけ……。」
 由佳の問いかけに、佐知子はポツリポツリと答えていく。
「ね、ここには先生にとって大切なものがいっぱいしまってあるんですよ」
 耳元に口を寄せて由佳が囁くと、佐知子はゆっくりと頷く。

「それでは先生。これから私が言うことは、先生にとってとても大事なことです」
「……私にとって、とても、大事な、こと」
「そうです、とっても大事なことです。だから、私の言うことを、この、心の一番深いところに大切にしまい込んでくださいね」
 由佳の言葉に、佐知子は黙ったままコクリコクリと頷く。

「まず、明日の放課後、先生は保健室に行かなければいけません」
「明日の、放課後、保健室に」
「そうです、保健室でしなければいけない大事な用があるんです」
「大事な、用が」
「ええ。そして、保健室で先生が見たり、されたりしたことは、すべて先生にとって当たり前のことで、いわば常識みたいなことです」
「保健室で、見たり、されたりしたことは、当たり前の、こと」
「それと、私や、竜泉寺先生の言うことは、すごく当然で、もっともなことなので、先生は言われた通りに行動してしまいます」
「栗原さんや、竜泉寺先生の言うことは、当然の、こと」
 佐知子は、抑揚のない声で由佳の言うことを繰り返し、ひとつひとつに頷いていく。

「いいですか先生。私が合図をしたら先生は眠ってしまいます。目が覚めたら、先生は、今言われたことを私が言ったということは忘れてしまいます。しかし、言われた内容は、先生の心の一番深いところに大切にしまってあるので、先生は必ずその通りに行動します」
 由佳の言葉に、佐知子は繰り返し頷く。

「はい、それでは私が手を叩いたら先生は眠ってしまいます。すぐに私が起こしますから、そうしたら、先生は疲れがとれて、とてもすっきりした気分で目が覚めます。それでは、はい」

 由佳がパチンと手を叩くと、佐知子の体は机の上に突っ伏す。

「先生、起きて下さい、木下先生」
 体を揺すられて佐知子が目を覚ますと、由佳が佐知子の顔を覗き込んでいた。

「あら、私、眠っちゃってたの?」
「ええ。気持ちよさそうに眠ってらしたんで起こしたら悪いかとも思ったんですが、もう時間も遅いですし」
「うん、いいのよ」
 そう言うと、佐知子は大きく伸びをする。
「ああ、本当に肩のこりがほぐれて、すごく体が楽になったわ。ありがとう、栗原さん」
「いえ、私は竜泉寺先生に教わったマッサージ法を実践しただけですから」
「そう。栗原さんはすっかり竜泉寺先生とうち解けたのね。どう?竜泉寺先生はいい人かしら?」
「はい!とっても!」
 そう言って、由佳はにっこりと微笑む。

「それでは、私はそろそろ失礼します」
「ええ。気をつけて帰るのよ」
「はい。それではさようなら、先生」
「さようなら、また明日、栗原さん」
 佐知子は、入り口で頭を下げた由佳に軽く手を振って見送る。

「さてと、私も帰り支度をしなくちゃ」
 そう呟くと、佐知子は荷物を整理する。

 もうだいぶ日も傾き、射し込んだ夕日が国語科準備室を真っ赤に染めていた。

* * *

「ええと、たしかに大事な用件のはずなんだけど、なんだったかしら?」
 翌日の放課後、保健室に向かう途中で佐知子は立ち止まる。保健室に、何か大切な用件があるはずなのに、肝心の用件がなんなのか思い出せない。
「まあ、行けばわかるわよね」
 そう思い直すと、佐知子は再び保健室に向かって歩きはじめる。

「あの、木下ですけど」
「どうぞー」
 保健室の前に立ち、ドアをノックすると、中から低い声が聞こえた。

「失礼します。あら、栗原さんもいたの?」
 ドアを開けた佐知子の目に飛び込んできたのは、竜泉寺と由佳の姿だった。

「ええ。だって私は保健委員ですから」

 うん、保健委員が放課後に保健室にいるのは普通のことじゃない。私ったら、なに当たり前のことを訊いてるのかしら。
 そう佐知子は思い直す。どうして自分が、由佳が保健室にいたことを不思議に思ったのかわからない。

「そうよね、栗原さんは保健委員ですものね」
 そう言うと、佐知子は照れ隠しのように微笑む。

「さあ、どうぞ中に入って下さい、木下先生」
 由佳が、佐知子に歩み寄って保健室の中に招き入れる。
 その時、保健室のドアを閉めた由佳が後ろ手に鍵を掛けたことに佐知子は気付かなかった。

「ええっと、今日は何か大切な用事があったはずなんだけど」
 保健室の中に入っても佐知子は用件を思い出せず、頬に指を当てて佐知子は考える。

「そうですよ、木下先生」
 背後からそう言われて佐知子が振り向くと、由佳が服を脱ぎ、裸になって立っていた。
「え?栗原さん?」
「だって、ここは保健室ですし、私はこれから竜泉寺先生の検診を受けるんですから裸になるのは当たり前じゃないですか」
 困惑している佐知子に、由佳は微笑みを浮かべて言う。

 そうだわ、保健室で裸になるのは不思議なことじゃないし、これから検診を受けるんだったら裸にならなくちゃいけないじゃない。今日の私、なんでこんな当たり前のことを不思議に思うのかしら?

 そう自問する佐知子に向かって、笑みを浮かべたままで由佳が続ける。
「それに、今日は木下先生も竜泉寺先生の検診を受けに来たんじゃないですか」

 そう!そうだわ。私は今日ここで検診を受ける予定だったのよ。なんでそんなことを忘れていたのかしら。

 佐知子は、ようやく保健室での用事を思い出し、心の中でポンと手を叩く。

「でも、木下先生はもう少し待っていて下さいね。私が先に検診を受ける順番になっていますから」
 佐知子に向かって微笑んだまま、由佳はベッドに上がると、両手両膝をついて四つん這いになる。

「それではお願いします、竜泉寺先生」
「うん」
 由佳に向かってひとこと頷くと、竜泉寺がベッドの上の由佳に向かって歩み寄る。

「じゃあ、始めるよ」
「はい。んっ、ああっ!」
 竜泉寺は、手を伸ばすと、おもむろに由佳の秘裂に指を突き入れる。
 すると、由佳の体がビクッと震える。

「あっ、んんっ、竜泉寺せっ、先生っ!いっ、いかがですかっ!?」
 由佳が、苦しげに息をしながら竜泉寺の方に顔を向ける。
「ああ、問題はないよ」
「そっ、そうですかっ!はうっ、あああっ!」
 落ち着いた声で竜泉寺が答え、手を動かすと、再び由佳の体が跳ねるように震えた。
「あうっ、あああっ、りゅっ、竜泉寺先生っ!」
 荒い息づかいの由佳の姿を見て、竜泉寺の検診はそんなに苦しいのかと佐知子は思う。

「それじゃあ、次に進もうか、栗原さん」
「はっ、はいっ、お願いしますっ!」

 竜泉寺の言葉に、由佳が大きく頭を振ると、竜泉寺はベルトを緩めて、下着ごとズボンをずり降ろしていく。すると、竜泉寺のいきり立った肉棒が露わになる。
 そして、竜泉寺は由佳の腰を掴むとその裂け目に肉棒を押し当て、挿し込んだ。

「くっ、ああああっ!」
 その瞬間、由佳の頭が引っ張られたように反り上がる。
「あっ、ああっ、んっ、あんっ!」
 竜泉寺が、腰を動かし始めると、その動きに合わせるように由佳の口から熱っぽい声が漏れる。

 そんな竜泉寺と由佳の姿を見て、佐知子は困惑する。
 これは、たしかに当たり前のことなんだけど。でも、でも、これって、ひょっとして……。

「そうですよっ、木下先生っ!これがっ、竜泉寺先生の”検診”じゃないですかっ!」
 その時、由佳が佐知子に向かって大声で叫んだ。

 そうよ、これは間違いなく検診じゃないの。私ったら、いったい何と勘違いしていたのかしら。
 由佳の声に、佐知子は我に返る。

「あっ、はんっ、ああっ」
「栗原さん、近頃、頭痛がすることがあるだろう?」
「あっ、はっ、はいっ、ときどきっ、頭がズキズキとっ!」
「目眩や目のかすみ、耳鳴りも?」
「んんっ、はいっ、それもたまにっ!」
「体が重く感じられる?」
「はいっ、そうですっ」

 さすが竜泉寺先生だわ。こんなに的確に診断ができるなんて。
 由佳を検診する竜泉寺を見て、佐知子は思わず感心する。

 でも、なぜかしら?この検診を見ていると、なんだか体が熱くなってくる……。

 いつの間にか、竜泉寺の検診の様子を眺める佐知子の顔は熱があるかのように火照り、内股になってももを摺り合わせるようにしていた。

「うん、君くらいの年頃にはよくある症状だね、栗原さん」
「あっ、ああっ、ではっ、どうしたらいいんですか!?」
 息を弾ませながら、由佳がすがるように竜泉寺に訊ねる。
「君の症状によく効く薬を処方するよ」
 由佳に向かって腰を打ち付けて検診を続けながら、竜泉寺がこともなげに言う。

 薬の処方って、一体どうするのかしら?
 竜泉寺が、いったいどうやって薬を処方するのかがわからず、戸惑ったようにふたりの様子を眺める佐知子。

「ああっ、下さいっ、お薬くださいっ!」
 由佳が、竜泉寺の方に振り向いて薬を処方するようせがむ。
「ああ」
 ひとことそう答えると、竜泉寺は腰の動きを大きくしていく。
「はあっ、ああっ、あっ、んんっ!」
 見れば、いつしか由佳も竜泉寺の肉棒を迎え入れるかのように前後に体を動かしていた。
「あっ、んんっ、あああああっ!」
 竜泉寺の動きはどんどん激しくなり、由佳の首がガクガクと震える。

 すると、竜泉寺が由佳に向かって一段と深く腰を打ち付ける。
「さあっ、投薬だよ、栗原さん」
「はいいいいっ!あっ、ああっ、来ましたっ!熱いお薬来ましたあああああっ!」
 竜泉寺の体がブルッと震えたかと思うと、体を支える両手が棒のように突っ張り、由佳の頭が再び大きく反り上がる。
「あっ、はああっ、んんっ、んっ」
 由佳は、竜泉寺の薬を一滴残らず受けとめようと、なんども体を震わせる。
「んん、はああぁ」
 やがて、腕から力が抜けたかのように、由佳はベッドの上に突っ伏す。

「あ、んん……」
 少しの間そうやって伏せっていた後、ゆっくりと体を動かして由佳はベッドから降りる。

「ああ、なんだか体が軽くなって、気分も楽になったみたい」
 裸のまま保健室の丸椅子に腰掛けると、由佳は佐知子に向かって艶然と微笑む。
 その笑みの、あまりの艶めかしさに佐知子は思わずドキリとなった。

「さあ、次は木下先生が検診を受ける番ですよ。服を脱いで下さいね」
「え、ええ、そうよね……」
 由佳に言われて、佐知子は服を脱いでいく。その手が、ショーツに掛かったとき、不意に佐知子の動きが止まった。
 佐知子のショーツは、触ってすぐにわかるくらいに湿っていたのだった。

 いやだわ、私ったらこんなにして恥ずかしい。

「どうしたんですか、木下先生?早く脱がないといけませんよ」
 しばし、躊躇うようにしていた佐知子を由佳が促す。
「う、うん」
 裸にならないと検診を受けることが出来ないので、佐知子は、しかたなく湿ったショーツをずらしていく。

「それでは、さっき私がしたようにベッドの上で四つ這いになって下さい、木下先生」
 一糸まとわぬ姿になったは、由佳に促されてベッドに上がり、四つん這いになる。
 
 すると、ベッドの上で待っていた竜泉寺が佐知子に声をかける
「準備はいいですか、木下先生」
「はい、お願いします。竜泉寺先生」
 佐知子が竜泉寺の方を向いて頷くと、竜泉寺の手が伸び、股間に当たるのを佐知子は感じた。

「はうっ、ああっ」
 裂け目から、自分の中に竜泉寺の指が挿し入れられたのを感じて、佐知子の口から熱い息が漏れる。
「うん、いい状態ですね、木下先生」
「あっ、ううっ、そっ、そうなんですかっ?」
「ええ、こんなに水分が溢れている。ここに水分が豊富なのはいいことなんですよ」

 竜泉寺にそう言われて、佐知子は安堵する。
 さっき、ショーツが湿っていたのを恥ずかしいと思ったけど、それは恥ずかしいことではなくて、むしろいいことだったのだから。

「ああっ、はううっ!」
 佐知子の中をかき回すように竜泉寺の指が動き、佐知子は思わず大きな声をあげる。
「うん、ここは問題がないですね」
 そう言うと、竜泉寺は佐知子の中から指を引き抜く。

「それでは、次に進みましょうか、木下先生」
 佐知子が竜泉寺の方を見ると、ズボンを脱いだままの竜泉寺の肉棒が屹立しているのが見えた。
「はあ、ああ、お願いします」
 最初の検診で、もう息を弾ませている佐知子は、肩で息をしながら竜泉寺に向かって頷く。

 竜泉寺の手が佐知子の腰を掴み、何か固いものが股間に当たるのを感じた、次の瞬間。

「あああっ、くあああああっ!」
 固くて大きいものが、股間の裂け目から佐知子の中に入ってきて、無意識のうちに佐知子の頭が跳ね上がり、喉の奥から絞り出すような声があがる。
「んくううううううっ!」
 まるで、お腹の中に固い物を充填されたようで、佐知子は息が詰まりそうだった。

「いいですか、木下先生、動きますよ」
「はっ、はいいっ」
 竜泉寺の言葉に、苦しげに佐知子は答える。
 そして、佐知子の中で、その固い物が動き始める。

「ああっ、んああっ、んくうっ、あうっ!」

 竜泉寺の検診は、想像以上に苦しいものだった。
 その固くふくらんだ肉棒で体の中をかき回されるたびに、佐知子は息が止まりそうになった。 

「ぐうっ、んくうっ、あっ、はあっ」
 しかし、検診が続くうちに、佐知子は次第に意識がぼんやりとしてくるのを感じていた。
「木下先生、だいぶ疲れがたまっているみたいですね」
「んくうっ、ああっ、そうですかっ!?」
「最近、肩こりや目の疲れがひどいでしょう?」
「はっ、はいっ!」
「手足の先が冷えて眠りにくいとかは?」
「あっ、ありますっ!」
「朝起きるのがつらくはないですか?」
「そっ、そのとおりですっ!」
 竜泉寺は、検診を続けながら、次々と佐知子の症状を言い当てていく。
 そして、いつしか、佐知子は竜泉寺の検診を苦しいと感じなくなっていた。
「やっぱり、木下先生は疲れがたまってホルモンのバランスが崩れているんですよ」

 竜泉寺の言葉に佐知子は思い当たるものがあった。
 クラス替えがなく、去年と同じ顔ぶれとはいえ、教師になって6年目で、初めて3年の担任を受け持つことのプレッシャーは想像していた以上だった。
 普段はそんな素振りは見せなかったが、その重圧が、常に精神的にのしかかり、精神的な疲労が体調にまで影響を与え始めているのを佐知子は自覚していたのだった。だから、まだ5月だというのに、毎朝、体がしんどくて起きるのがつらい。夜は手足の先が冷え、目が冴えて寝付けない日々が続いていた。

「そっ、それでっ、私はっ、どうしたらっ!?」
「それはですね、竜泉寺先生にお薬をいただいたらいいんですよ、木下先生」
 不意に、耳元で由佳が囁く声が聞こえた。
 いつの間にか、由佳が丸椅子から立ち上がって佐知子のそばに寄ってきていたのだった。
「りゅっ、竜泉寺先生のっ、お薬をっ?」
「ええ、そうですよ。竜泉寺先生のお薬で、きっと良くなりますよ」
「そっ、そうなのっ?」
「そうですよ、竜泉寺先生のお薬は、女の人に特によく効くんですから。なにしろ、検診だけでも冷え症なんか吹き飛んでしまうくらいですから。ほら、もっと、竜泉寺先生の検診に意識を集中してみて下さい。熱くて固くて、体がポカポカしてくるでしょう?」

「ああっ、ふあああああっ!」
 突然、佐知子の口から甘い声が漏れる。自分の体の中をかき回す竜泉寺の肉棒がとても熱く感じられて、手足の先までカーッと熱くなるような気がした。
「あうっ、ふわあっ、あんっ、あっ、熱いいっ!」
 もう、佐知子には検診を受ける苦痛は全くなかった。むしろ、その熱さが心地よくすら感じられた。

「さあ、木下先生、竜泉寺先生にお薬をくれるようお願いしましょうね」
 裸のまま佐知子に体を寄せて由佳が囁く。
「あっ、うっ、うんっ!りゅっ、竜泉寺先生っ、どうか私にもっ、お薬を処方して下さいっ!」
「わかりました、木下先生。それでは」
「ああっ、んくううううっ!」
 佐知子の願いを竜泉寺が受け入れた途端、佐知子の中を出入りする固くて熱い棒の動きが激しくなり、引っ張り上げられるように佐知子の頭が反る。

「はあっ、ふあっ、んっ」
 佐知子の全身を痺れるような感覚が包み、それすらも気持ちよいものに思えてくる。

 そういえば、さっき栗原さんは竜泉寺先生から薬をもらうときに自分で体を動かしていたわ。
 あれはたしか、こんな感じで。

 さっき見た、竜泉寺から薬を処方されるときの前後に体を動かす由佳の姿を思い出して、佐知子も体を動かしてみる。

「ひあああああっ!」
 その瞬間の、全身の力が抜けそうな程の刺激に佐知子は悲鳴を上げた。
 体を支えかねるように、両手がブルブルと震えている。
「ああっ、ダメですよ、木下先生。慣れないうちは刺激が強すぎますから。今は竜泉寺先生に任せて」
「うっ、うん」
 由佳にたしなめられて、佐知子は自分で動くことを諦める。

「ああっ、ふわあああっ!」
 佐知子は体を動かしていないにも関わらず、刺激は強まっていく一方だ。心なしか、自分を検診する竜泉寺の肉棒がさらに大きく熱くなっているように感じられた。
「あっ、ああっ、あうっ!」
「さあ、もうすぐですよ、木下先生。すぐに竜泉寺先生がお薬を出してくれますから」

 もう、佐知子は竜泉寺から薬をもらうことしか考えられなかった。

「ああっ、お薬下さいっ!竜泉寺先生のお薬っ、私にもっ!」
「わかりました。それでは投薬しますよ、木下先生!」
 竜泉寺が叫ぶようにそう言うと、腰を思い切り佐知子に打ち付ける。自分のお腹の中で、竜泉寺の肉棒が跳ねたのを感じたかと思うと、熱いものがそこから迸ったのを佐知子は感じた。
「あああっ、熱いいいっ!お薬がっ、熱いいいいいいっ!あっ、ふああぁ、ぁ……」
 自分の中を熱いものが満たしていき、佐知子には、それが竜泉寺の薬だということまでは理解できたが、すぐに頭の中が真っ白になって何もわからなくなった。

「木下先生、起きて下さい、木下先生」
 体を揺さぶる感覚に目を開くと、心配そうな顔で佐知子を見つめる由佳と目が合った。いつの間に着たのか、由佳はもう制服を着ていた。
「あ、気が付きましたか?木下先生?」
「え、私、眠ってたの?」

 竜泉寺先生にお薬をいただいたのまでは覚えているけど、その後は?

「気が付かれましたか、木下先生」
 佐知子が目を覚ましたのに気付いた竜泉寺が、考え込んでいた佐知子に歩み寄る。
「あの、竜泉寺先生……」
「ああ、あの検診と薬は初めての人には刺激が強いですから。でも大丈夫。明日にはだいぶ体も楽になって気分もすっきりしているはずです」
 ベッドの上の佐知子を見下ろしながらそう言うと、竜泉寺は微笑む。

「さ、木下先生、いつまでも裸のままだと風邪を引きますよ」
 そう言って、由佳が佐知子の服を差し出す。
「あ、ありがとう、栗原さん」
 佐知子は、それを由佳から受け取り、身につけていく。

「それでは木下先生、次の検診は来月ですから」
 服を着て立ち上がった佐知子に竜泉寺が声をかける。
「はい。今日はどうもありがとうございます」
 佐知子は、竜泉寺に向かって頭を下げる。
「木下先生、私はまだ、保健室で用事がありますから」
 由佳が、佐知子を保健室の出口まで送り出しながら言う。
「そうなの。でも、栗原さんも気をつけて帰るのよ」
「はい」
 由佳は笑顔で返事をすると、手を振って佐知子を見送る。

 その後、保健室の方に振り向いた由佳の笑みが淫靡なものに変わっていたことに佐知子が気づく由もなかった。

* * *

 翌朝、目を覚ました佐知子は最近なかったくらいに体が軽く感じられることに驚く。
 こんなに清々しく目覚めることができたのはいつ以来だろうか。心も体もリセットしたみたいにすっきりしている。

「やっぱり、竜泉寺先生のお薬のおかげかしら」
 そう呟きながら、佐知子は身支度を整える。
 昨夜は、ずっと悩まされていた手足の冷えを感じることもなく、スッと眠りに就くことができた。そして、朝は目覚ましが鳴るよりよりも早く、気分よく目を覚ますことができたのだった。

 今度、竜泉寺先生によくお礼を言わなくちゃいけないわね。

 服を着ながら、そんなことを佐知子は考えていた。

 それからしばらくは、佐知子は心身共に充実し、溌剌としてすごすことができた。
 しかし、初めて3年生を受け持つ重圧はやっぱり佐知子に重くのしかかっていたのだった。そして、10日もたつ頃には、日々の仕事の疲労と心労が蓄積して体が重くなり、佐知子は次の竜泉寺の検診を心待ちにするようになっていた。

 それは、佐知子が竜泉寺の検診を受けてから2週間後のこと。

「木下先生、失礼します」

 夕方、図書委員が下校して佐知子ひとりになった時間帯に、また由佳が国語科準備室を訪ねてきた。

「あら、どうしたの?栗原さん?」
「いえ、今日の授業中、木下先生が少し疲れているように見えたので」
 そう言うと、由佳は佐知子に歩み寄り、いつかのように肩を揉み始める。

「そう、疲れてるように見えたの……」
「私は、保健委員ですから、そういうことには敏感なんですよ」
 手慣れた調子で、由佳は佐知子の肩から首にかけて揉みほぐしていく。

「ありがとう、栗原さん。ああ、気持ちいいわ、とっても」
 相変わらずの気持ちのよさに、佐知子は目を閉じる。
「やっぱりお疲れみたいですね。こんなにこっていますもの」
 由佳は、肩と首を揉みほぐすと、背中から腰にかけて揉んでいく。
 佐知子は、目をつぶったまま体の力を抜いて由佳のマッサージに身を任せる。

 由佳のマッサージが気持ちよくて、佐知子がうとうとしかけていた時、由佳の手が佐知子のスカートの中に忍び込んできた。

「え!?く、栗原さん?」
 驚いた佐知子が目を開いて由佳の方を振り向くと、由佳は微笑みを浮かべて囁く。
「これは、”触診”ですよ、木下先生」
「しょ、触診?」
「ええ。竜泉寺先生ほどではありませんが、私もこのくらいはできるんです。竜泉寺先生の検診にはおよびませんが、私の触診も、木下先生の疲れを和らげるくらいはできますよ」
 そう言うと、由佳はスカートの中に入れた手でショーツをずらし、佐知子の秘裂に指を潜り込ませてくる。
「はうっ、ああっ、んっ!」
「気持ちいいでしょう、先生?」
 指を巧みに動かしながら、佐知子の耳元で囁く由佳。
「気持ちっ、いいっ!ああんっ!」
 佐知子の口から甘い声が漏れ出る。
 たしかに、由佳の触診には、マッサージとはまた違う気持ちよさがあった。

「この気持ちよさが効くんですよ、先生」
 由佳は、佐知子に囁きながらもう片方の手で器用に佐知子の服のボタンを外し、胸に手を滑り込ませる。
「えっ!?ああっ!」
「ほら、ここもこんなにこって固くなっているじゃないですか」
 そう言うと、由佳ははち切れんばかりに張りつめた佐知子の乳房を揉み、固くなった乳首をつまむ。
「あうっ、あふううううっ」
 すると、佐知子の口から熱い吐息が漏れる。
「さあ、このこったところを揉みほぐしましょうね、先生」
「あっ、うんっ、お願いっ!あふっ、ふわああっ!」
 由佳が、佐知子の胸のこりをほぐしていく気持ちよさに、佐知子はとろけそうな気分になってきていた。

「ふああっ!あああああっ!」
 突然、下半身に強い刺激を感じて、佐知子は大きな声をあげる。
「うふ、ここもこんなにこってますよ、木下先生」
 由佳が、佐知子の裂け目の中に入れた指で、肉芽を弾いていた。
「はうううっ、あっ、ああっ、あうんっ!」
 由佳の指が動くたびに、佐知子の体がビクビクと震え、喘ぐような声が響く。
「この、こったところをほぐすと、明日にはだいぶ楽になりますよ、先生。だから、もっと気持ちよくなってください」
「はううっ、あっ、ああーっ!」
 由佳の言葉に、佐知子はただただ喘ぐだけで、もう返事をすることもできない。
「じゃあ、一気にほぐしていきますね」
 そう言うと、由佳は片手で佐知子の肉芽を、そしてもう片方の手で佐知子の乳首をつまむ。
「んくううっ!はああああっ!」
 上と下の敏感な部分をコリコリと刺激され、佐知子の体が反り上がって跳ねる。その目は見開かれて、ガクガクと震えるあごから涎が滴り落ちる。
「はうううううっ、ふあっ、ああっ、あああああああああっ!」

 弓なりに反らせていた佐知子の体が固まったかと思うと、由佳に抱きかかえられるような格好で佐知子は絶頂に達する。

「あっ、あああっ、あふう、ふわあぁ」
 何度か跳ねるように体を震わせた後、佐知子の体から力が抜けて、机に突っ伏してしまう。

「あうぅ、ふああぁ」
 トロンとした目で机に頭を乗せ、言葉にならない呻き声をあげる佐知子。机の上には佐知子の涎が小さな水たまりを作っている。

「これで触診は終了です、木下先生。きっと明日にはだいぶ楽になっているはずですよ」
「んん、ありがとう、栗原さん……」
 頭を持ち上げることすらできず、机に伏せたままで佐知子は答える。
「それでは、私はこれで失礼しますね」
「うん、さようなら、栗原さん」
 だらしなく机に伏せっている佐知子に一礼すると、由佳は振り返って国語科準備室から出ていく。
 佐知子からは見えなかったが、由佳の顔には、あの淫靡な笑みが浮かんでいたのだった。

 由佳の触診は、たしかに効果があった。
 翌日、佐知子はだいぶ疲れがとれて気分がすっきりしているのを感じていた。

 栗原さんったら、大したものだわ。
 佐知子の疲れをとった由佳の触診の見事さに佐知子は感心する。

 しかし、せっかく由佳に楽にしてもらったというのに、それも1週間と続かず、翌週にはもう竜泉寺の検診が待ち遠しくなる。

 1週間後。

「先生、今週も触診をしましょうか?」
 その日も、夕方、佐知子がひとりになった頃合いを見計らって由佳が国語科準備室にやってくる。
「うん、お願い、栗原さん」
 由佳の言葉に頷くと、由佳は微笑みながら佐知子の背後に立つ。

「悪いわね、栗原さん。あなたにこんなことまでさせて」
 いつものように肩のマッサージから始める由佳に向かって佐知子は言う。
「いいんですよ。私も、木下先生が元気だと嬉しいですから」
 そんな由佳の返事に、佐知子は嬉しくて涙が出そうになる。

「それでは、触診を始めますね」
「うん」
 佐知子が頷くと、由佳の手が佐知子の秘裂と胸に伸びる。

「あふ、ふわあああ」
 由佳に触診をされて、佐知子が甘ったるい声をあげる。
「ふふ、可愛らしいですよ、先生。どうです、気持ちいいですか?」
 由佳も、佐知子の耳元に口を寄せて甘く囁く。
「うん、気持ち、いい。ああっ、んふうっ」
 佐知子の目はすでにトロンと蕩け、由佳のするがままに任せている。
「もっと気持ちよくなって下さいね。触診は気持ちよけば気持ちいいほど効果があるんですから」
 そう囁きながら、由佳は佐知子の敏感な部分をまさぐり続ける。
「はうっ、ふわあ、あふうん」
 もう、佐知子は由佳の触診に体を任せ、そこから得られる快感に心を委ねきっていた。

「では、いいですか、先生?」
 そう言って、クス、と笑うと、由佳は、両の手で佐知子の乳首と肉芽を激しくいじり始める。
「あううううううっ!」
 座っている佐知子の背中が反り、ビクンと跳ねる。
「気持ちいいんですね、先生。いいんですよ、もっと気持ちよさに身を任せてください」
 耳元で囁く由佳に、もう佐知子からまともな返事は返ってこない。
「ああっ、ふあああああっ!」
「うふ、本当に可愛らしいですよ、先生。あむ、くちゅ」
 由佳が、耳元に寄せた口で、佐知子の耳たぶを甘噛みする。
「ひっ、ひあああああああっ!」
 すると、佐知子の体が大きく跳ね、そのまま硬直する。
「ふふ、まだまだですよ、先生」
 由佳は、すぐにクタッと体の力が抜けた佐知子の体を支え、愛撫を続ける。
「あぐうっ、う゛あ゛あ゛あ゛っ!」
 力なく由佳に抱きかかえられている佐知子の体が震え、呻きとも喘ぎともつかない声が漏れる。
「もっと、もっとですよ、先生。この気持ちよさが先生を元気にしてくれるんですから」
「あ゛う゛う゛っ、ん゛ん゛ん゛ん゛っ!」

 背後から抱きかかえる由佳の腕に体を預けるようにして、ビクビクと体を震わせる佐知子。その秘裂からは、暖かな液が止めどなく溢れ出して、ポタリ、ポタリと椅子から滴り落ちていた。

「ああ、いいですよ、木下先生、こんなに水分を溢れさせて。ここに水分が多いのはいいことだと、竜泉寺先生も仰っていたでしょう。この間の検診の時よりも木下先生の体調が良くなっているのは間違いありませんよ」
 由佳は囁きながら、ぐいと佐知子の奥深くまで指を挿し込む。
「あ゛う゛っ!ふああっ!」
 返事が返ってこないのがわかっていながら、由佳は楽しげに話を続ける
「さあ、木下先生。ここをよくほぐして今日の触診を終わりにしましょうね」
 甘い声でそう囁くと、由佳は佐知子の肉芽をつまみ、軽くつぶすように指先でこねる。
「ひぐうっ、ふあっ、はぐうううううううっ!」
 佐知子が、その体を抱く由佳の腕の中で体を跳ねさせる。
「はうううっ、はあっ、ああぁ……」
 そのまま、グッタリとして動かない佐知子の頭を、由佳は静かに机の上に乗せる。

 肩で大きく息をしている佐知子の目は開いているものの、その瞳から光は失せ、像を結んでいるのかどうかもわからなかった。

「先生、竜泉寺先生からの伝言です。来週の火曜日に検診をするから、放課後に保健室に来てくださいとのことです」
 机に伏せたままの佐知子が、検診、という言葉にピクンと反応したのを見て、由佳が淫靡に微笑む。
「それでは、私はこれで失礼します。いいですか木下先生、来週の火曜日、放課後ですよ」
「ん、んん、ふぁい」
 佐知子の瞳にわずかに光が戻り、力なく返事をする。
 その声に、国語科準備室の入り口で頭を下げていた由佳がほくそ笑むように口許を歪める。

 しかし、思考がほぼ停止した状態の佐知子はそれに気付くはずもなく。背を向けて部屋から出ていく由佳の後ろ姿を力なく見送るだけだった。

「ん、ああ?」
 ようやく、佐知子の意識がはっきりしてきた頃には、外はすっかり暗くなっていた。
「あ、そうか、栗原さんに触診をしてもらって、少し眠っちゃったのね。ああっ」
 顔を起こした佐知子は、机も自分の頬も、おそらく自分の涎でベタベタなのに気付いて、小さな声をあげる。
「やだ、私ったら!」
 恥ずかしそうに顔を赤らめて、ハンカチで頬と机を拭いていく佐知子。
 しかし、佐知子には由佳を怒る感情は全く湧いてこない。なぜなら、由佳は佐知子のことを気遣って触診をしてくれたのだから。
 実際、今、佐知子はとてもすっきりした気分だった。まだ少し体がだるいが、それも明日の朝になれば疲れがとれて体が軽くなっているはずなのは、先週の触診の時に経験済みだ。

 これで、あと1週間頑張れるわ。そうしたら、竜泉寺先生の検診を受けられる。

 帰り支度をしながら、佐知子の心は、もう来週の竜泉寺の検診のことでいっぱいになっていたのだった。

< つづく >

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