黄金の日々 第2部 第18話

第2部 第18話 残党狩り

 アブディエルの部隊の壊滅後、アーヤたちがどうなったかというと……。

 結局、追撃を振り切ってエリアナの分隊に合流できたのは、アーヤも含めて100名ほどだった。

「そんなっ……では、隊長も副隊長も死んでしまったというのっ?」 

 報告を受けたエリアナの顔がみるみる蒼ざめていく。

 むろん、アブディエルとイェキエルの死は彼女に動揺を与えるのに十分だった。
 しかし、それ以上にショックだったのは、囚われていたサラが敵となって現れたということであった。

 エリアナとサラはアブディエルの信任が厚く、共に切磋琢磨し合った仲である。
 サラのことをよく知っているだけに、彼女が悪魔の手先になったという話はにわかには信じられなかった。

 もちろん、それを報告するアーヤも、自分の身に起きたことを信じたくはなかった。
 しかし、あの時たしかにサラはイェキエルに刃を向けたのだし、その姿は間違いなくサラなのに、その言動はアーヤのよく知る姉とは別人だった。

「それで、副隊長の最後の指示ですが、この分隊に合流した後でニップルに向かい、シャルティエル隊の助けを仰げとのことでした」
「しかし、それでは私たちの助けを必要としているここの人たちが……」

 アーヤの告げた、イェキエルの最後の指示が適切なものだということはエリアナにも理解できた。
 逃げてきた者たちを含めても、こちらの戦力は250人を少し超えた程度だ。
 この人数では、敵に襲われた場合ひとたまりもないことはわかっている。
 しかし、いま自分たちがここを去れば、悪魔に抗して立ち上がった人間たちは瞬く間に蹂躙されてしまうだろう。
 天使としては、自分たちに縋る人間を見捨てる決断はやはり下しがたかった。

 そして結局、エリアナが決断を先延ばしにしたことが命取りになる。

* * *

 ――3日後。

「敵襲! 敵襲です! 悪魔どもが攻めてきました!」
「……くっ! もう来たというのっ!?」

 予想よりも早い魔界軍の来襲に、エリアナはやむなく全軍に迎撃を命じる。
 しかし、地上でも空中でも防衛線を維持することはできず、たちまち押し込まれてしまう。

「このっ……せやぁっ……!」

 乱戦の中、必死に剣を振るいながらアーヤは周囲を見回していた。
 今、自分に襲いかかってきているのは悪魔と有翼の騎士だけだが、きっと姉もここに来ているという確信があった。
 今のサラは、悪魔によってなんらかの洗脳を受けている。
 その状態から、なんとしても救い出さなければならない。

 しかし、戦況はあっという間に圧倒的不利へと変わりつつあった。

「くぅっ……このままではっ……」

 さすがにこれ以上の戦闘は無理だと判断したアーヤが、血路を切り開いて逃げだそうとしたときのことだった。

「見つけたわよ、アーヤ」

 背後から呼び止める、聞き慣れた声に振り向くと、そこに探していた姉の姿があった。
 そして、その傍らには何度か苦杯を舐めさせられた、あの黒髪の悪魔の姿も。

 しかも、それだけではなく……。

「そんな、ヘレナさん、ダチュラさん……それに……ユディスさんまでっ!?」

 かつてともに戦った仲間たちが、いつの間にか自分を取り囲んでこちらに剣を向けていた。

「エリアナももう捕らえたわ。あなたも諦めて投降しなさい。そうだわ、あなたも剣を交えたことがあるからこの方は知っているはずね。このお方はシトリー様、私たちの新しいご主人様よ」

 降伏勧告を突きつけながら、サラが悪魔に体を寄せてしな垂れかかる。

「そんな……姉さまっ!」
「あなたはかわいい妹だもの、悪いようにはしないわ。ね、お願いします、シトリー様…………あんっ、シトリーさまぁ……ん、んふ……」

 サラが甘えたような視線を向けると、悪魔の手がサラの胸当ての下に潜り込み、顔を寄せて唇を奪った。

「んっ、れろっ、じゅばっ、ちゅるっ、んふ…………あぁん、シトリーさまぁああ……」

 見せつけるように舌を絡ませ、胸をまさぐられながらサラがいやらしく腰をくねらせる。

 そんな淫らな姉の姿は、これまで見たこともなかった。
 いや、そもそも天使としてあるまじき姿だった。

 アーヤは、目の前の姉の姿を信じがたい思いで見つめていた。

 彼女はもちろん、サラの能力のことを知っていた。
 だから、サラが悪魔の手に堕ちてしまったなどということが信じられるはずもなかった。

 それなのに……。

「んふぅうん、シトリーさまぁ……そんなにおっぱい揉まれたら、私のおまんこ疼いてしまいますぅ……」

 あの、悪を憎む気持ちの人一倍強かった姉が、悪魔の愛撫に身を委ねて悩ましげな吐息を吐き、いやらしく体をよじらせて破廉恥な言葉を口にしている。

「姉さまっ……! このっ、卑劣な悪魔がっ……貴様が姉さまたちをこんな風にっ! 許さない、許さないわっ、貴様はこの私がっ…………きゃああああっ!」

 姉の痴態を見せつけられて逆上したアーヤが、悪魔を睨みつけて啖呵を切る。
 しかし、その言葉の途中で電光石火の速さでサラが斬りかかり、その一撃をなんとか受け止めたものの、そのまま撥ね飛ばされてしまう。

「口を慎みなさい、アーヤ。シトリー様を侮辱することは私が許さないわ」
「しっかりしてくださいっ、姉さま! 姉さまたちはこの悪魔になにかされて正気を失っているんです! 私たち天使の務めは……きゃあっ!」

 必死に姉を説得しようとするアーヤに向かって、もう一撃。
 手加減なしの重い攻撃を、ギリギリのところで剣で受け止める。

「私は正気よ、アーヤ。私たちは今まで、自分が本当に為すべきことに気づいていなかっただけ。それを私は見つけたのよ。シトリー様という、仕えるべき真の主に出会ってね」
「真の主であるものですか! 姉さまたちはその悪魔になにかされているに決まってます!」

 今の姉さまは完全に正気を失っている……それをなんとかしないと。
 この距離なら……うん、もう少し……!

 鍔迫り合いを演じながら、アーヤはチャンスを窺っていた。

 サラとアーヤは姉妹だけあって、その能力も精神に関するものという点で共通点があった。
 サラの能力が己の精神の完全防御なら、アーヤのそれは他者の精神を護り、傷つき狂わされた精神を修復すること。
 だから、自分のその力を使えば、サラたちを正気に戻せるのではないかという希望を持っていた。

 ただ、その能力を使うためには相手と体が接していなければならない。

 互いの剣で押し合いながら、アーヤはその機会を探す。

 あっ……今ならっ!

「姉さまぁああ!」

 サラの体勢が僅かに崩れた瞬間に、能力を発動させながら肩で押し込む。
 ほとんど捨て身の攻撃だった。

 アーヤの体が光に包まれ、それが、肩が触れた場所を通じてサラの体へと流れ込んでいく。
 しかし、次の瞬間、サラの体が発した光によってアーヤの力は霧散してしまった。

「そんなっ!? ……きゃぁあああああっ!」

 サラの剣が唸りをあげ、アーヤを吹き飛ばす。

 アーヤには、何があったのか理解できなかった。
 もし、サラの精神が悪魔に操られて正気を失っているのなら、アーヤの能力が効果を及ぼしてサラの心を正気に戻すはずだ。
 それが、サラの精神防御の能力が発動したということは、今のサラは正気のままで、アーヤの能力を己の精神への干渉と見なして能力が発動して拒んだのだ。
 しかし、今の姉の言動は、彼女をよく知るアーヤにとってはとても正気とは思えない。

 シトリーによって、サラの魂が根底から書き換えられてしまっていることを、そのために今のサラはそれが正気であることを、アーヤが知る由もなかった。

「そんな……どうして?」
「だから言ったはずよ、私は正気だって。だいいち、私があなたの能力のことを知らないはずはないでしょ。だけど残念ね、あなたの力は通用しないわ。だって、今の私は完全な正気、これが正常な状態なんですもの」
「そんなはずはないわ! きっとなにか仕掛けがあるのよ! その悪魔が、なにかおぞましい手段で姉さまたちを狂わせてっ……きゃっ! きゃあっ! あああっ!」

 アーヤの言葉にますますサラの目尻が不機嫌そうに吊り上がり、続けざまに強烈な攻撃を見舞う。
 そして、アーヤに向かって剣先を突きつけると冷酷に言い放った。

「まったく、あなただから苦しまなくていいようにしてあげようと思ったのに……。聞き分けのない子にはお仕置きが必要なようね」
「そんな……姉さま……」

 もう、自分がなにを言っても姉には届かない。
 自分の能力も、姉には通用しなかった。
 大切なものを全て奪われたというのになにもできない、この無力感。

 ショックに言葉を失い、形ばかり剣を構えているだけで茫然としているアーヤを取り囲んだ天使たちが、じわじわと距離を詰めてくる。

 アーヤが絶体絶命の危機に陥ったその時、金色の風がその場に舞い降りた。

「……え? あなたは?」

 抱きすくめられて思わず見上げると、穏やかな笑みを湛えた天使がこちらを見下ろしていた。

 太陽の光を受けて金色に輝くその翼といい、漂わせている雰囲気といい、初めて会う天使だが自分よりずっと格上であることだけはわかる。

「しっかり掴まってなさい」
「……ええっ? ……きゃあああああっ!?」

 そっと囁くと、アーヤが腕を掴んできたのを確かめてからはるか上空に飛び上がる。
 その速度は、アーヤがこれまで見たどの天使よりも速かった。

「あの天使……何者だ?」

 瞬く間に芥子粒ほどの大きさになったアーヤたちの行く先をじっと見つめて、サラが悔しそうに呟く。

「知らない相手か?」
「はい。少なくとも私はあの天使にはこれまで会ったことがありません。……あの、今からでも追いかけましょうか?」
「いや、無理だろう。それよりも、さっさとこの場を制圧してラドミールに戻るぞ」
「わかりました」

 追いかけようとしたサラを制止して、その場の収拾を命じる。
 シトリーも元天使だけあって、そんなスピードで飛べる天使がただ者ではないことはわかっていた。
 もちろん、気になることは気になるが、あの速さには並の天使は追いつけるはずもないことも理解していた。

* * *

 そして、アーヤはというと……。

「ふう……このあたりまで飛べばもう大丈夫でしょう」

 どれほどの距離を飛んだのか見当もつかないが、敵の姿を全く捉えられない場所まで来て、やっとその天使がスピードを緩めた。
 そして、抱いていたアーヤの体を離す。

「まずは、自己紹介しておきましょう。私の名前はミュリエルといいます。あなたは?」
「はいっ、あの、アーヤです」

 アーヤの危機を救った天使は、ミュリエルと名乗った。
 その名は、アーヤにとっても始めて聞く名前だった。
 もっとも、彼女のように今回の戦いが初陣の駆け出しの天使は、上位の天使とほとんど面識がないのも当たり前のことなのだが。

 しかし、相変わらず穏やかな眼差しをアーヤに向けているものの、ミュリエルは気遣わしそうにわずかに眉間に皺を寄せた。

「アーヤさん……ですか。この方面にいるということはアブディエルの部隊の者ですね?」
「そうです」
「アブディエルはどうしていますか? それに、さっきあなたを襲っていたのは天使でしたね。いったい、なにがあったというんですか?」
「それが、その……」

 ふたりで並んで飛びながら、アーヤはミュリエルに全てを話した。
 アブディエルの死と、部隊の崩壊、そして、サラや他の仲間たちが悪魔に洗脳されてしまったことを。

「そうですか、アブディエルが……。私はずっと昔、そう、あなたたちが知るよりもはるか以前に彼と行動を共にしていたことがありましてね、彼はよい男でしたし、よき友でした……」
「そうだったんですか……」

 感情を抑えた、物静かな口ぶりではあったが、アブディエルと自分との関わりを語ったミュリエルの顔には無念そうな表情が浮かんでいた。

「アブディエルの実力を私はよく知っているつもりです。彼を殺し、その部隊を壊滅させるとは向こうの力は侮ることはできませんね。私の得ている情報では、この方面の魔界の軍勢は魔に降った人間たちが中心で、戦力としては3方面の中で最も弱いという話だったのに……。これは、上に報告して敵の戦力分析を見直さなければいけない事案かもしれませんね」

 そう呟くと、ミュリエルは腕を組んで考え込む。
 どうやら、彼はかなり情報に通じているようだった。
 そのことも、その、天使としての地位が高いことを窺わせる。

 と、不意にミュリエルがアーヤに話を振ってきた。

「ところでアーヤさん、あなたはこれからどうするつもりですか?」
「え、あの、それは……」

 そう問われても、アーヤには即答できなかった。
 彼女自身、所属していた部隊が壊滅したばかりでどうしてよいのかわからなかったし、単身で天界に復命してもその後の処遇がどうなるのか予想がつかなかった。

「もしよろしかったら、私の仕事を手伝ってもらえませんか?」
「……えっ?」

 ミュリエルからの思いがけない提案に、アーヤは一瞬面食らってしまった。

「私の就いている任務は少し特殊なものでして。……アーヤさんは、モイーシアとヘルウェティアの国境に、地上で最後の世界樹が残されていることは知っていますか?」
「はい」
「あの世界樹の下には、太古の時代に封印されたある強力な魔物が眠っているのです。いえ、今となっては眠っていたと言うべきですね。私たちの任務というのは、その魔物の封印が解けないか監視することでした」
「強力な……魔物ですか?」
「そうです。もちろん、その魔物が封印されたのは私が生まれるよりもはるか昔、この世界が誕生して間もない頃の話ですから、私もその魔物がどういうものなのか具体的には知っていません。ですが、その魔物が復活すると地上はおろか、下手をすると魔界や天界すら吹っ飛んでしまいかねない力を持っているらしいのです」
「そんな怖ろしい魔物が……」
「ええ。それで、実は今回私がここにいたのは、その魔物を封印していた世界樹が枯れたという報告を受けたからでして。直接世界樹の森まで確認に行ったその帰りに、あなたの危機に遭遇したところを救い出したわけです」
「そうだったのですか……」

 ミュリエルが語った話は本来、彼女のような新米には知らされるはずもない話だった。
 初めて聞く話に、アーヤはただ頷くしかなかった。

「そこで本題ですが、私が確かめに行くと世界樹はほとんど枯死しかけていて、件の魔物の封印も解けていました。もっとも、その魔物には何重もの封印がかけられているはずなので、世界樹の封印が解けたからといって直ちに危険になるというわけではないのですが、今後は魔界を自由に行動できるようになったその魔物を見つけ出し、これ以上封印が解けないように監視していく必要があります。そのためには今の人員では足りないので、ぜひアーヤさんに私の下で働いてもらいたいのです」
「私に、ですか……?」
「ええ。ここで私があなたを救ったのも、もしかしたらアブディエルが導いてくれたのかもしれません。残された彼の部下を私が引き受けるのなら、彼の魂も安らかでいられるでしょう」

 寂しげな笑みを浮かべるミュリエルの口調からは、彼とアブディエルとの友誼が深く、それに基づいて心底自分のことを気遣ってくれていることが伝わってくる。
 そんな彼の心遣いはありがたかったが、アーヤはそれにすぐ答えることができなかった。

「ありがとうございます。本当に、私のような者にミュリエル様の申し出はありがたく思います。でも、私はみんなの仇を討ちたいのです。それに、姉さまをはじめ多くの仲間もあの悪魔の手に堕ちたまま、まだあそこにいます。私は、みんなを悪魔のところから助け出したいんです」
「しかし、あなたのお姉さんたちはもう……」
「いえ、きっと助けることができます! 私が、私がきっとみんなを助けてみせます!」

 目に大粒の涙を浮かべて、アーヤはミュリエルに訴えていた。

 彼女がそんなに必死になっていたのは、もちろんサラをはじめ悪魔の手に堕ちた仲間たちをこのまま放っておけないという思いからであった。
 しかし、幼子が駄々をこねるように、ただ感情的になってそんなことを言っているわけではなかった。

 自分の能力で皆を救える可能性を、彼女はまだ諦めたわけではない。
 たしかに、さっき自分の力は姉には通用しなかった。
 しかし、それにはなにか仕掛けがあるのかもしれない。
 それさえわかれば、姉を正気に戻すこともできるのではないか……。
 精神を修復させる能力を持っているからこそ、アーヤはその望みを捨てることができないでいた。

 しかし、ミュリエルは首を横に振るばかりだった。

「いいですか、よく考えてもみなさい。彼女たちを助けるといっても、あなたひとりでなにができるというんですか?」
「それでも……それでも私には、みんなをあのままにしておくことなんかできません……」

 ミュリエルに訴えかけるアーヤの頬を、涙が伝い落ちていく。

 その涙を困り果てたように見つめていたミュリエルが、嘆息して肩を竦めた。

「……わかりました。今回の魔界との戦闘に参加している他の部隊に編入できるよう、私から口添えしてみましょう」
「本当ですか!?」
「ただし、どの部隊に配属されるかはわかりませんよ」
「それでもかまいません。この戦場にいることさえできれば、機会はきっと訪れると信じていますから」
「それならもう、私にはなにも言うことはできないようですね」
「申し訳ありません、せっかくのご厚意を無駄にしてしまって……」
「いえ、いいんですよ。……あの、アーヤさん」
「なんでしょうか?」
「ひとつだけ約束してください、絶対にこの戦いを生き抜くと。死んでしまったらなんの意味もないですし、そんなことはきっとアブディエルも望んではいないでしょう。ですから、絶対に死なないでください。そしてもし、この戦争を戦い抜いて無事だったのなら、もう一度私を訪ねてきてください。あなたに私の仕事を手伝ってもらいたいという思いは変わりませんから」
「ありがとうございます。その時は、必ず……」
「では、一度天界に戻りましょうか。あなたを他の部隊に斡旋するにしても、手続きというものが必要ですし」
「はい」

 そうミュリエルに促されて、アーヤはいったん天界へと戻っていったのだった。

* * *

 一方シトリーは天使たちの部隊を殲滅させると、他の拠点の制圧は地上部隊に任せてラドミール城塞に戻っていた。

 そして、直ちに女天使たちを堕とし始める。
 なにしろ、ただでさえ牢獄に捕らえている女天使はまだまだ大勢いるうえに、今回新たに捕らえた者もいる。
 彼女たちを戦力に取り組むためにも、時間はいくらあっても足りなかった。

「さあ、おとなしくしなさいっ」
「くうっ……やめてっ、離しなさいっ、サラッ!」
「だめよ、ほら、こっちに来るのよっ! ……シトリー様、ご命令通りエリアナを連れてきました」

 縛られたエリアナが、サラに引っ立てられてシトリーの前へと連れてこられる。
 エリアナは後ろで纏めた明るい栗色の髪を振り乱し、大声を上げて抵抗しているがサラは全く意に介していない。

「ああ、ご苦労、サラ」
「エリアナったら、なにをシトリー様の前で突っ立てるの? ほら、膝をつきなさい!」
「くっ……誰がこんな悪魔に膝なんか屈するとっ!」
「シトリー様に向かってなんと無礼なっ! さあ、早く跪くのよ!」
「嫌よっ! ……きゃっ……やめなさいっ、サラ!」

 あくまでもシトリーに屈しないエリアナの頭を押さえつけて、サラが無理矢理跪かせようとする。
 しかし、それを見ていたシトリーが、手でサラを制止した。

「……シトリー様?」
「そのくらいにしておけ。ちょっと面白いことを思いついたんでな」

 そう言うと、シトリーは両手から一度に触手を5本伸ばすとエリアナの中に潜り込ませ、一気にその魂に絡みつかせた。

「ひぃっ……な、なにをしたのっ……っ!」

 心臓に爪を突き立てられたようなおぞましい感覚に、エリアナの表情が引き攣った。

(なに? なんなの、これは? 息が……苦しくて……背筋が凍るようなこの感覚……やだ……怖いっ……)

 触手を通じて、エリアナの意識が流れ込んでくる。

 さすがのシトリーも、サラ以外の天使が相手だとこうも簡単に力が通用するとなると、さすがに飽きが来はじめていた。
 まあ、実際にはまだまだ捕らえている天使たちを堕とさなくてはいけないので飽きたなどと贅沢なことは言っていられないのだが、それでもたまには趣向を変えてみたいと思ったのだ。
 それに、この触手でどんなことができるのか、もっと色々試してみたいという思いもあった。

“おまえは自分の意志とは関係なくサラの言ったとおりに行動してしまい、サラの望むままになってしまう”/p>

 絡ませた触手を通じて、エリアナの魂に思念を流し込んでいく。
 そして、触手はそのまま魂に絡みつかせたまま、傍らに立っているサラの方を向いた。

「サラ、今回はおまえに任せてみようと思うんだがな」
「私にですか?」
「そうだ。こいつはおまえの言いなりになるようにしてやった。たとえどんな命令だろうと、おまえの言ったとおりに行動するし、おまえが言ったような女になるから思ったようにやってみろ」

 はじめは意味がわからずに首を傾げていたサラが、シトリーの話を聞いているうちに満面の笑みを浮かべる。

「それは本当ですか、シトリー様?」
「ああ、本当だとも。こいつがどんな風に僕の下僕になるかは、全部おまえ次第というわけだ」
「わかりました。……ねえ、エリアナ、今のシトリー様の話を聞いてた? 私は、あなたの教育係を仰せつかったというわけよ。では、まずはシトリー様に向かって跪きなさい」
「何度も言わせないでっ! 誰がそんなことをっ……ええっ!? ええええっ!?」

 さっきまでサラが力尽くで跪かせようとしても屈しなかったエリアナが、あっけなく膝を折る。
 だが、本人の動揺ぶりを見ると、なぜ自分がそうしたのかもわかっていないようだった。

「どうしてっ……どうしてこんな悪魔にっ……!?」
「まったく、口の利き方がなってないわね。このお方のことはシトリー様と呼びなさい」
「なにを言ってるのっ……私が……シトリー様なんかにっ……いやっ、違うぅううっ!」
「なにが違うの? シトリー様はシトリー様でしょ。それに、シトリー様なんかですって? 自分がこれからお仕えする相手になんて失礼なことを言うの?」
「だからっ、私はシトリー様なんかに仕える気は……いやあっ、またっ……!」
「本当に目上の相手に対する態度がなってないわね。だったら、まずはその生意気なしゃべり方を直してあげるわ。……ほら、『どうかシトリー様にご奉仕させてください』って言って頭を下げるのよ」
「……っ! ど……どうかっ……シトリー様にっ……くっ……ご奉仕させてっ……くださいっ……!」

 サラに言われたとおりの言葉を口にして、エリアナが深々と頭を下げる。
 しかし、必死に抗おうとしている様子がありありと見て取れる。
 それが、サラには不満らしかった。

「まったく、なにが気に入らないのかしら、せっかくシトリー様にご奉仕できるというのに。……で、エリアナ、ご奉仕は?」
「ごっ、ご奉仕って……?」
「あなたがさせてくださいってお願いしたんだから、早くシトリー様にご奉仕しなさい」
「そんなっ……だいいち、私はシトリー様に奉仕する気なんかないわっ……いやっ、どうしてシトリー様のことをシトリー様って言ってしまうのっ!? ……ああっ、だから違うのっ!」

 どうしても目の前の悪魔のことを、そう思ってもいないのにシトリー様と呼んでしまうことに、エリアナは混乱を隠せないでいた。
 一方で、サラは不機嫌そうに鼻を鳴らし、吐き捨てるようにエリアナに次の行動を促す。

「ふん、わけのわからないことを言ってないで早くシトリー様にご奉仕したらどうなの?」
「奉仕って……そんなっ……」
「もしかして、ご奉仕のやり方もわからないの? あなたのその体はいったいなんのためにあるのかしら? シトリー様にご奉仕するためでしょ? まったく、これだから男を知らない女は役に立たないのよ」

 呆れたように肩を竦めるサラを見て、おもわずシトリーが横から口を出した。

「そうは言っても、ついこの間までおまえも似たようなもんだったじゃないか」
「ええ。あの頃の私は本当に愚かでした。シトリー様にお仕えする素晴らしさを知ろうともせずに反抗するばかりで……。それがどんなに愚かで、見ていて苛つくことかこの女を見ていてようやくわかりましたわ」

 シトリーに向かって恭しく頭を下げて詫びると、サラは跪いているエリアナを見下ろして忌々しそうに舌打ちをする。

「しかたないわね。だったら、ご奉仕のやり方を私が一から教えてあげるわ。じゃあ、まずはシトリー様のズボンを脱がせてさし上げるのよ」
「やだ……そんなこと……やぁっ! どうしてっ!?」

 戸惑いの悲鳴をあげながら、エリアナの手がシトリーのベルトへと伸びて、そのズボンを脱がせていく。
 自分の手が、自分の意志と関係なくぎこちなく動くのを止めることができない。

「ズボンの次は下着もよ」
「そんな……こんなことっ! ああっ……いやぁあああっ!」

 サラの言葉には逆らえずに、エリアナがシトリーの下穿きも脱がす。
 すると、エリアナは悲鳴をあげて剥き出しになった股間のものから顔を背けた。

「なにをしてるの? しっかりと見なさい。これが、これからあなたがご奉仕するシトリー様のおちんぽなんですから」
「……っ! そんなっ……やぁああっ!」

 見えない力に頭を押さえつけられて無理矢理方向転換させられたかのように、背けていたはずの顔がゆっくりと前を向き、正面からシトリーのペニスを見つめる。
 そのまま、エリアナは目の前のものから視線を逸らすことができなくなった。

「ほら、これがシトリー様のおちんぽよ。まだ少し萎れているけど、このおちんぽにご奉仕すると素晴らしく立派になるのよ」
「やめてっ……そんなこと言わないでっ、サラ! そんな、はしたない言葉っ……」
「はしたない? なにがはしたないっていうの? 私たちシトリー様の下僕にとって、このおちんぽにご奉仕して、おまんこに入れていただくのが喜びなんじゃないの。ほら、ぼやぼやしてないで、まずはこのおちんぽを大きくしてさしあげるのよ。……そうね、シトリー様への親愛の情を深めるために、おちんぽに頬ずりをしなさい」
「そんなことするわけがっ…………ああっ、いやぁあああっ!」

 拒絶の声をあげながら、エリアナの顔がゆっくりとシトリーの股間に近づいていく。
 そして、手のひらで押し頂くようにしてペニスを持ち上げると、それに頬をすり寄せた。

(いや……なんて気持ち悪いの。それに、おかしな臭いまで……こんなこと、したくないのにどうして?)

 魂に絡みつかせた触手を通じて、エリアナの心の声が伝わってくる。
 嫌悪感丸出しの心の声を証明するように、ペニスに頬ずりするエリアナは不快そうに顔を顰めていた。

 一方のシトリーは、まんざらでもなかった。
 女天使の頬の、柔らかく滑らかな感触が適度にペニスを包みこんで気持ちよくすらある。

「どうですか、シトリー様、この女の頬の感触は?」
「うん、なかなかいいぞ。さすがに天使の肌といったところか?」
「それはようございました。さあ、エリアナ、もっと熱心に頬ずりをしなさい」
「くっ、いやっ……うううっ……」

 気持ち悪さと屈辱に打ち震えながら、エリアナは頬をペニスに押しつけて扱くように頬ずりをする。
 すると、見る見るうちにペニスが固くそそり立っていく。

(いや……こんなに大きくなるものなの? くっ……どうして? こんなに気持ち悪いのに、体が言うことを聞いてくれないの……)

 屈辱のあまり、固く熱を帯びてきた肉棒を擦りつけているエリアナの頬を涙が伝っていく。

「あら、どうしたの? 涙を流すほど嬉しいのかしら? だったら、今度はその大きくなったおちんぽを舐めるのよ」
「くっ、誰がそんなっ……うっ、いやっ……えろ、べろぉ……」

 サラの命令通りにエリアナは頬ずりを中断すると、今度はすっかり勃起した屹立に舌を伸ばした。

「えろろ、れるっ、ぺろ、れろれろっ……」

(すごく臭くて、おかしな味……嫌っ、気持ち悪い……こんなの嫌なのに、なんで止まらないのよっ……!?)

 目から涙を流し、心では嫌悪しながらも、エリアナはペニスに舌を這わせることを止められない。

 そんな彼女を見下ろしながら、サラがサディスティックな笑みを浮かべる。

「美味しそうに舐めてるわね。いいわ、じゃあ、次はおちんぽを口の中に頬張って、舌で転がすように舐めなさい」
「あふ……はぐっ、んっ、んちゅ、んふっ、ちゅぱっ……」

 またも言われるままにペニスを口に含み、舌を纏わりつかせる。
 かと思うと、次の命令が飛んだ。

「ほら、口をすぼめて、唇でおちんぽを扱くのよ」
「……んぐっ、んくっ、しゅぽっ、んぷっ じゅるるるっ、ぶふぉっ、じゅむむっ!」
「そんなのじゃまだまだよ。ほら、もっと奥まで深く!」
「……っぐ! ぐくっ、んぐっ、んっきゅっ、ぐぐっ、ぐくぐぐっ!」

 自分ではそんなことをするつもりはないのに、エリアナはディープスロートをさせられていた。
 自分の体が、自分自身の意志とは関係なく、ただサラの言葉通りに動くだけの玩具になってしまったみたいに思える。
 もちろんこんなことをしても、ただただ苦しいだけだった。

(くっ、苦しいっ! それに、気持ち悪い……嫌っ、もうこんなの嫌ぁああああっ!)

 望まない奉仕をさせられるエリアナの心の悲鳴が聞こた。
 ペニスを喉奥に押し込まれる苦しみと、屈辱、嫌悪がごちゃ混ぜになり、ボロボロと涙が零れ落ちていく。

 しかし、サラの次の言葉によってその状況が一変する。

「ほら、そうしておちんぽを喉の奥まで咥えこむと気持ちいいでしょ。ほら、どんどん気持ちよくなって、やめられなくなるわ」
「んぐっ……!? ぐっ、んっくっ、ぐくっ、んぐぅううう!」

(やだ……どうして? そんなはずないのに、気持ちいい。やだっ、こんなのおかしいのに……こんなの、苦しいだけのはずなのに……気持ちよくて、止まらない!)

「んっ、ぐむっ、んぐっ、ぐぐっ、んごっ、ふぐっ!」

 さっきまで苦しそうに涙を流していたエリアナの顔が、ほんのりと赤く染まっていく。
 サラが手を離しても、エリアナは自分から深く肉棒を咥え込んで、口をいっぱいに使って扱き上げていた。

「ね、気持ちいいでしょ? そんなに気持ちいいのは、それがシトリー様のおちんぽだからよ。ほら、そうやって喉の奥までおちんぽを入れるたびにどんどん気持ちよくなって、シトリー様のことが愛おしくなるわ」
「んぐっ、むふうぅ……んっ、んっきゅ、ごふっ、ぐきゅっ、んぐぐっ……」

(ああ、気持ちいい……。こんなに気持ちいいのは、この方のおちんぽだから……でも、この方は悪魔、私の敵なのに……でも、気持ちいい、気持ちよすぎて、この方のことを敵だと思えなくなってくるわ……)

 ディープスロートを繰り返しながら、エリアナが上目遣いにシトリーを見上げてくる。
 その瞳は緩んで潤み、いつの間にか微笑みすら浮かんでいた。

 そして、触手を伝わってくるエリアナの心の変化を象徴するようにその精神世界にも変化が起き始めていた。
 別にサラの時のように触手で操作したわけでもないのに、彼女が自ら肉棒を咥え込んで喉奥を突くたびに、その精神世界の中にシトリーの姿が浮かび上がる。
 それがどんどん膨らんでいき、反対にそれまで精神世界に点在していた仲間の姿が小さくなっていく。

「ぐくっ、んっふ、ぐくっ、んぐぐぐっ……」

(ああ……気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい……こうしてると、体が熱くなって、頭がぼんやりしてくる……)

 すっかり蕩けた表情で一心不乱にペニスをしゃぶるエリアナは、いつの間にか両足をもぞもぞと擦り合わせるようにくねらせていた。

 その激しいディープスロートに射精感を抑えきれなくなったシトリーが目配せすると、その意を汲んだサラが次の命令を出す。

「もうすぐシトリー様のおちんぽから熱い精液がいっぱい出てくるわ。それは絶対吐き出さないこと。精液を口いっぱいに受け止めたら、あなたはこれまで感じたことないくらい気持ちよくなれるのよ」
「ぐぐっ、ふぐっ、ぐぐっ、んぐぅっ……」
「ううっ、そらっ、出すぞっ!」
「……ぐふっ!? ぐむむむむむむぅうううっ!」

 限界を迎えたシトリーがエリアナの頭を抑えこみ、その口の中に精液をぶちまける。

(熱いっ、熱いのが口の中いっぱいに……だめっ、吐いたらだめっ、気持ちいいけど、でも、少し苦しいわっ、だめっ、咳き込んでもだめよっ……ああっ、なにっ!?、目の前がふわふわしてっ、なにかすごいの来るぅうううううっ!)

「ふごっ、んぐっ、ぐむむむむむっ! ぐふっ、ぐっ……んっむぅううううううううううううっ!」

 涙目になって精液を吐き出すまいとしながら、エリアナは絶頂に達する。
 その頃には、その精神世界はシトリーの姿でいっぱいになっていた。

「そうそう、偉いわ。じゃあ、おちんぽを離して、口の中の精液を飲み込みなさい」
「ん、むふううぅ……んくっ、ごきゅっ……んんっ、ふぁああああっ!」

 サラの言葉に従って精液を飲み込み、エリアナは再び軽く達してしまう。

「どう? シトリー様のおちんぽにご奉仕するのは気持ちよかったでしょ?」
「うん……気持ちよかったあぁ……」

 絶頂の余韻でぼんやりしたまま、エリアナは耳許で囁くサラの言葉に素直に頷く。
 その姿に満足そうに目を細めると、サラは次の命令を出した。

「じゃあ、着てるものを脱いで裸になりなさい」
「ふえ? ふぁあい……」

 まだ夢うつつの状態のエリアナは、ぎこちない手つきながらもサラの言うとおりに肌当てを脱いで裸になっていく。

「次は、そこに仰向けに寝転がって大きく足を広げて、あなたのおまんこにシトリー様のおちんぽを入れてもらうのよ」
「ふぇええ……? そんな……でも、それだけは、だめぇ……」

 快感で靄のかかったエリアナの頭にわずかに残った理性が、躊躇いの言葉を言わせる。
 しかし、体の方は言われたとおりに仰向けになり、両手で膝を抱えて大きく股を開いていた。
 どのみち、彼女がどう思うが、その体はサラの言ったとおりにしか動かなかったのだから。

「駄目なことなんかないわよ。いい? おまんこにおちんぽを入れてもらうと、さっきよりももっと気持ちいいのよ」
「さっきよりも……」

 トロンと蕩けたエリアナの瞳が、気持ちいいというサラの言葉に反応する。

(さっきよりも気持ちいいなんて……悪魔とそんなことするなんて、そんなこと、本当はあってはならないことだけど、お口であんなに気持ちよかったんだから……。あれより気持ちよくなれるんだったら……)

 もう、魂から伝わってくる声にもほとんど抵抗する意志は見られなくなっていた。
 それどころか、胸が高鳴っているような鼓動が伝わってくる。

「ね? もっといっぱい気持ちよくなりたいわよね?」

(どうしよう……もっと気持ちよくなるなんて。さっきより気持ちよくなったら、私、どうなるんだろう? ……でも、気持ちよくなりたい)

「エリアナったら、もうシトリー様のことを好ましい方だと思ってるんでしょ? でも、そのとおりよ。シトリー様のおちんぽがおまんこに入ると、本当に気持ちいいんだから。この世に、これ以上素晴らしいものなんかないと思えるほどの快感なのよ。私はあなたにもそれを味わってもらいたいの。ね、あなただって気持ちよくなりたいでしょう?」

 畳みかけるサラの言葉が、どんどんエリアナの心を絡め取っていく。

「うん……気持ちよくなりたい」

 そしてとうとうエリアナの心は、サラの言葉の前に陥落してしまった。

「いい子ね。じゃあ、自分からシトリー様におねだりしなさい。私が言うとおりのことを言うのよ」

 そう言って、サラが耳打ちをする。
 それに耳を傾けていたエリアナが頷くと、潤んだ瞳でシトリーを見上げた。

「うん。……シトリー様、どうか私のおまんこにシトリー様のおちんぽを入れてください。私の初めてを、シトリー様のものにしてくださぁい……」

 蕩けた笑みを浮かべて大きく足を広げ、エリアナがまるで子供のような甘えた口ぶりでねだってくる。

 その姿に、シトリーとサラは目配せし合ってほくそ笑む。
 そして、エリアナの足に手をかけると肉棒をその未経験の秘裂に宛がい、そのまま一気に押し入れた。

「ふぁあああああっ! きっ、きもちぃいいいいいいい!」

 太く固いもので貫かれた瞬間、エリアナがきゅっと背筋を反らせて快感に喘ぐ。
 実際には痛みもあったのだが、その痛みすらより大きな快感を得るための隠し味と思えるほどに気持ちよかった。

 そして、突き入れられた肉棒が、遠慮会釈なしにエリアナの中で動きだした。
 するとたちまち、エリアナはその動きに合わせて甘い喘ぎ声をあげ始める。

「ふぁああっ、いいっ、おちんぽいいっ! 固くて熱くてっ、おまんこの中いっぱいになってっ、おちんぽ気持ちいいっ!」
「どう? 私がいったとおりでしょ?」
「うんっ、うんっ、サラが言ったとおりだわっ、おちんぽ気持ちいいのっ、おまんこの中おちんぽでズブズブされるとすごく気持ちいいのっ!」
「あなたがシトリー様のために働けば、もっとそのおちんぽで気持ちよくしてもらえるわよ。あなたがシトリー様の、このおちんぽの奴隷になるって誓えばね」
「うんっ、誓うわっ、私、シトリー様の奴隷になるっ! ……シトリーさまぁっ、私、シトリー様のっ、このおちんぽの奴隷ですぅううっ!」

 自分からも腰をくねらせながら、エリアナはシトリーへの隷従を誓う。
 はじめは真っ白だったその魂の色は、ただサラの言葉に従っているだけだったというのに、その時にはまるでニーナの瞳のような淫靡なローズピンクに染まっていた。

「私もうっ、シトリー様のおちんぽの奴隷なのっ! だからっ、ふぁっ、もっといっぱいっ、気持ちよくしてくださいぃいいいっ……ああっ、あんっ、シトリーさまぁっ……」

 体を起こすのを手伝うと、エリアナは自分からシトリーの首に腕を絡めて抱きついてくる。
 そのまま踊るように腰を上下させて、シトリーのペニスを貪り続けたのだった。

* * *

 その日も数人の天使を堕として、シトリーが休憩を取っていると。

「シトリー様。少しよろしいですか?」

 ノックをして入ってきたのはクラウディアだった。
 物腰は普段通りの落ち着いた様子だったが、透き通るほどに白い肌をほのかに紅潮させて、少し興奮しているようにも見える。

「どうした? なにかあったのか?」
「はい。本日、抵抗運動を起こしていた人間たちの拠点を制圧した部隊が戻ってきたのですが、捕らえた者の中に、シトリー様の耳に入れておくべき者がおりましたのでご報告に上がりました」
「人間の捕虜で? いまさらそんな、しかもおまえが報告しないといけないような者がいるのか?」
「はい。その捕虜は……現イストリア王の妹で、この国の王妃だったテオドーラです」
「なんだと? 生きていたのか?」

 やはり興奮しているのか、そう告げたクラウディアの声はうわずっているように思えた。

 たしかに、クラウディアの告げたその名は少なからずシトリーを驚かせた。
 しかし、その人物を捕らえたことがなぜそこまでクラウディアの心を昂ぶらせたのかまでは、彼はまだ知らなかった。

< 続く >

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