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 携帯が鳴った。

 映し出されているのは、馴染みのブローカーの番号だ。

「……俺だ。……ああ……ふんふん……ベーシックな召使いタイプを1体だな?まっさらなやつでいいんのか?……で、べつに処女じゃなくていい、と。……そうだな、それなら少し余裕を見て1ヶ月半くらいあれば大丈夫だろう。……ああ……で、外見とかの注文は?……なるほど、で、身長や体格は?……わかった……ああ……取り分はいつも通り、俺が7でおまえが3だ、いいな?……じゃあ、そういうことで」

 話を切ると、俺は携帯をポケットにしまう。

 久々の仕事の依頼だ。

 俺の仕事は人形作り。
 それも、ただの人形じゃない、俺が作るのは生きている人形だ。
 女を、依頼主の要望に従って、従順な、人形のような人間に仕立て上げる。それが俺の仕事。
 別に、女でなくても人形にできるが、作る過程で俺も楽しませてもらうので女を人形にする依頼しか受けない。
 まあ、どのみちほぼ全てが女を人形にする依頼なので心配は要らないが。

 依頼主の要望どおりに、とは言っても、そのパターンは依頼の多いものから、召使いタイプ、恋人タイプ、秘書タイプなどに分けられている。
 一番ベーシックなものは依頼主に従順で、その言葉に素直に従うタイプだが、希望によって、行動や思考のタイプなどをオプションとして細かく調整することもできる。
 もちろん、手間がかかる分、加えるオプションに応じて料金に加算させてもらう。
 その中でも、よくある依頼で処女に限る、というものがある。
 これはかなり手間がかかるので料金はかなり割高になる。
 外見や容姿などに関しても依頼主の希望に応じるようにしている。
 依頼主の要望どおりに、完璧な人形を仕上げる。それが俺の腕の見せ所だし、人形作りとしてのプライドだ。
 当然のことながら非合法な商売なのでおおっぴらにはできない。
 だから仕事の依頼はこうやって、馴染みのブローカーを通じて入ってくる。

 1体の人形を仕上げる料金は、一番ベーシックなタイプで1000万円ほど。
 それに、細かな要望に応じて料金を加算していく。
 なにしろ、自分の理想どおりで、しかも自分に完全に従う女が手に入るんだ。高すぎるということはないだろう。
 実際、以前は理想の人形を手に入れたいという金満家はそれなりにいたし、その時は俺もだいぶ稼がせてもらった。

 とはいえ、このところの不景気で依頼の頻度は格段に落ちていた。

 ……前回仕事をしたのは1年ほど前だったしな、ちょっと道具の手入れでもしておくか。
 どのみち、 仕事にかかるのは日が暮れてからだしな。

 俺は、商売道具のチェックのために隣室に入った。

 作業机の上に置いてあるジュラルミン・ケースを開く。
 そこに入っているのは、携帯電話のような装置と、長さ1センチほどの小さな針の入った容器。
 一見、携帯のように見えるが、今どき見かけないような長めのアンテナが付いているところが普通の携帯とは少し違うところだ。
 もっとも、このアンテナは受信用ではなくて発信用だ。
 ここから発信した信号を、小さな針状の受信機で受け取る仕組みだ。
 そして、この受信機は無痛針になっていて、痛みもなく人の体内に埋め込むことができる。
 そうすれば、携帯状の機械で人を操ることができる。

 ほとんどの人間の行動や感覚、感情をコントロールしているのは、脳から発信される信号だ。
 それは一種の電気信号だといっていい。
 この装置は、通話のように装置に向かって話した命令を、脳が発信するのと同じ種類の電気信号に変換して発信することができる。
 通話だけでなく、ボタンの操作によっても感覚や感情をコントロールする信号を発することもできる。
 そして、脳からの信号を遮断し、携帯状の機械からの信号をそれに取って代わらせることで人間を操ることができるという仕組みだ。
 それだけではもちろん相手を人形にすることはできない。
 この装置には、まだ他にも重要な機能がある。
 まあ、それがなにかはすぐにわかるさ。

 俺は、動作に異常がないか入念に機械をチェックする。

 うん、特に異常はないな。
 後は、夜になるのを待つか。
 別に、昼からでもできない仕事じゃないんだが、人目につかない夜の方がなにかとやりやすい。

 装置のチェックを終えると、俺はタバコに火を付けて、読みかけの雑誌にぼんやりと目を通す。

* * *

 そして、日がすっかり沈むと、俺はあの装置をポケットにねじ込んで外に出た。
 注意深く、それでいて怪しまれないように周囲を観察しながら、盛り場の方へと向かう。

 依頼主の要望に近い容姿の女を捜しながら、俺は夜の街を歩く。

 ある意味、この仕事で一番時間がかかるのは、この人形の素材を探す作業だと言っていい。
 人形作りにかかる時間は、かかってもせいぜい2週間から3週間だ。
 だが、依頼主の希望どおりの女を捜すのに、時には2週間以上かかるときもある。
 だからこそ、仕事の期限は余裕を持って1ヶ月半にしている。

 今回の条件は、身長は160cmほどで、すらっとした細身の女。
 髪型はベリーショート……まあ、これは後から切ればいいか。
 それでいて、顔はやや丸みがあって目の大きな童顔……難しいな、これは。

 細身で童顔ってのはなかなかいないし、ましてや夜遊びしている女に童顔のやつはなかなかいない。

 それでも、こうやって夜の街で遊んでいる女は、一人暮らしか、遊んでいて毎日家には帰らないようなのが多いから、いなくなっても捜索願が出されるのが遅れるというメリットがある。
 そして、いったん人形を仕上げてしまえば、もうそいつが何者だったか絶対にばれることはないという自信が俺にはある。

 だから、ここらで見つけておきたいんだが、さすがに無理か?

 盛り場も外れにさしかかり、そこでの物色をあきらめようとした時のこと。

 ん?あれは?

 雑居ビルの谷間にある小さな公園でたむろしていた若い男女の一群が目に留まった。
 その中の、髪を金髪に染めた女……。

 身長は160cmくらいで細身。
 髪を染めて、かなりケバい化粧をしているが、丸みのある顔立ち。
 依頼の条件とほぼ重なる。

 商売柄、化粧を落とせばどんな顔になるか俺にはだいたいわかる。
 目はぱっちりとして大きめ、あの、濃いめの化粧さえなければ、童顔のかなり可愛らしい雰囲気になるはずだ。

 よし、あいつに決めるとするか。

 俺は、物陰に身を潜め、用心深く公園の方を窺う。

「じゃ、あたいコンビニでタバコと飲むもん買ってくる~!」

 不意に、あの女が手を挙げてふらふらと立ち上がった。
 すでにかなり酔っているのか、足元がふらふらとおぼつかない。

「ちょっと~、大丈夫、ミキ~?」
「だーいじょーぶだって!それじゃ、行ってくんね!」

 そう言って、よろよろと歩き出す女。

 この辺りでコンビニは……ちょっと離れてるな。
 よし、チャンスだ。

 俺は、ふらふらと歩く女の後からそっとついていく。
 たしか、ここから一番近いコンビニに行く途中で、暗くて人気の少ない貸し駐車場の前を通るはずだ。
 運が良ければ、そこで人目につかずにあの女を手に入れることができる。

 ……次の角を左に曲がれば、その貸し駐車場だ。

 俺は、指先で針状の受信機をつまむと、気配を殺して女の背後に近づく。
 そして、ふらりと角を曲がった女に続いて行く。

 案の定、そこには他の人影はなかった。

 よしっ!

 俺は、一気に距離を詰めて女のうなじに針を刺し込む。

「ん?なんだ?」

 受信機は無痛針になっているから痛みはないだろうが、なにかが首に当たった感触に女が振り向いた。

「なんだっ、てめえはっ!?」

 俺を睨みつけて女が怒鳴りつけてきた。

「なんなんらようっ、てめえはっ!いまなんらしたらろーがっ!」

 ……まったく、ガラの悪いやつだな。
 それに、どんだけ飲んでんだよ。呂律だって完全に回ってないし、わめいた勢いでふらついてるじゃないか。
 まあ、これだと人に見られても酔っぱらいの諍いだと思われるだろうが、それでもこれ以上騒がれると面倒だな。

 おれは、ポケットから本体を取り出すと、携帯で話をするように顔に当てた。

「黙れ、声をあげるな」
「なっ……んぐっ!?んんんっ!?」

 目を丸くして女が呻く。
 そりゃそうだろう、いきなり、声を出したくても出せなくなったんだから。

「静かにしろ。そのままおとなしく俺についてこい」
「ぐむむっ!……!」

 俺が命令すると、女はふらつきながら、それでも素直に後についてくる。
 呻く声も急に小さくなり、周囲に聞かれる程じゃなくなっていた。

 これが、この装置の威力だ。
 いったん受信機を埋め込まれた人間は、発信器からの信号に抗うことはできない。

 俺は、女を連れたまま薄暗い路地に潜り込む。
 そして、路地裏づたいに仕事場へと向かう。
 別に、腕を掴んで無理矢理連れて行ってるわけでもないし、女の方からついてきているんだから人に怪しまれることなく仕事場に着くことができた。

 中に入ると、俺は女を連れて地下への階段を降りていく。
 そして、通路の奥にある一室に入る。
 そこは、コンクリートの壁が剥き出しになった殺風景な部屋。
 中には、簡素なベッドがひとつと、丸テーブルがひとつあるだけ。
 ドアが3つ。ひとつは今入ってきたもので、後のふたつはトイレとシャワー室のドアだ。

 頑丈な鉄扉を閉めると、俺は装置を顔に当てた。

「よし、もう声を出していいぞ」
「……てっ、てめえっ、あたいに何をしたっ!!」

 強制されていた沈黙から解放されて、女が大声でわめく。

「何って、おまえはもう俺の思いのままだってことだ」
「ふざけんじゃねえよっ!そんなことっ!」
「おっと、暴れるなよ。じっとしてろ」
「なっ、くっ、体がっ!」
「だから言っただろ。おまえの体は俺の思いのままだって」
「そっ、そんな馬鹿なことがあってたまるかよっ!」

 女は歯ぎしりながら俺を睨み付けてくる。

 あーあー、怖い目しちゃってさ。
 それに、なんて言葉づかいだよ。本当にガラの悪い女だな。

「それがあるんだよ。現におまえは俺の言いなりじゃないか」
「くっ!」
「無駄だって。指1本動かすこともできないから。ああ、でもおまえはかなりがさつで荒っぽいやつみたいだから、一応言っておくか、おまえは俺に暴力を振るうこともここから逃げ出すこともできない」
「な、なに言ってやがる!」
「うん、これでおまえは逃げることも俺に傷ひとつつけることもできなくなるってことさ。ほら、自由に体を動かしてごらん」
「ふっ、ふざけるなあああっ!」

 そう叫んで、俺に向かって平手打ちが飛んできた。
 しかし、その手はぐんぐんと勢いを落として、そっと撫でるように俺の頬に当たっただけだった。

「そ、そんな……どうしてっ……?」
「な、俺が言ったとおりだろ」

 女が、怯えた表情を浮かべた。

「て、てめえっ!あたいをどうするつもりなのよっ!?」
「そうだな、とりあえずはおまえの名前を聞いておこうか」
「誰がてめえなんかにっ!」
「言うんだ。おまえの名前は?」
「ミキ……タケダ…ミキ……はっ、あたい、また!?」
「いいかげん状況を理解しろよな。おまえは俺の言うことには逆らえないんだって」
「だって、そんな馬鹿なことがっ!」
「さてと、それじゃ次は体のチェックでもさせてもらうとするか。ほら、服を脱いで、下着もな」
「なに言ってやがるっ!あああっ!?」

 口では俺の言葉を突っぱねながら、ミキの体は勝手に服を脱いでいく。

「いやあっ!なんでっ、なんでよっ!?」
「だから、俺が脱げって言ったからだよ。……うん、全部脱いだな。こら、腕で体を隠すな」

 やっぱり思ったとおりだ。
 すらりとしたボディーライン、ほっそりとして長い手足。それでいて、胸はそこそこある。
 これなら、依頼主の希望にも添うだろう。

 素っ裸で突っ立ったまま、怒りからか、それとも恐怖のためか、ミキは体を小さく震わせていた。

「てめえっ、こんなことしていいと思ってんのかっ!?」
「それは何に対してだ?おまえは俺に対してどうすることもできないし、まあ、犯罪行為なのは確かだろうが、だからといってどうってこともないしな」
「今頃みんながあたいを探してるに決まってるっ!」
「ああ、でも、ここら辺の路地は入り組んでるから、そいつらはおまえを見つけることはできないだろうがね。それに、ここは地下で周囲は分厚いコンクリートの壁だ。おまえがいくら泣こうが叫ぼうが助けが来る見込みはないね」
「そ、そんな……」
「ま、そんなわけだ。じゃあ、俺は仕事に取りかからせてもらから動くんじゃないぞ」
「し、仕事って……?」

 恐怖に顔をひきつらせるミキの股間に黙って腕を伸ばすと、無造作にその裂け目の中に指を突っ込む。

「いやあああああっ!なっ、なにしやがるっ、てめえっ!」
「うん、処女じゃないんだな。まあ、別に処女じゃなくていいっていう注文だったからな」
「注文?注文ってなんなんだよっ!?」
「ああ、依頼主からのね」
「わかったぞっ!てめえ人身売買やってるだろ!女の子を海外とかに売り飛ばすって、噂で聞いたことがあるわ!」
「あー、そうだな、形だけ見たら人身売買みたいなもんかな。でも、海外じゃないしな。それに、今のおまえじゃ商品価値がない」
「そ、それも聞いたことがあるよっ!ちょ、調教とかいうんだろ!言うことを聞くように、無理矢理おとなしくさせるんだって!」
「うんうん、まあ、似たような感じだな」
「あたいは絶対にそんなんにならないからね!助けが来るまで、てめえの言うことなんか絶対に聞かないからなっ!」
「心配しなくても大丈夫。そのうちおまえはおまえじゃなくなるから」
「どっ、どういうことだよ!?いやっ、やめろっ!」

 問答をやめて裂け目に突っ込んだ指で中をかきまわすと、嫌悪感丸出しでミキが叫ぶ。

「嫌なんかじゃないだろ?ほら、こうしてるとすごく気持ちいい」

 そう言いながら、俺は装置のキーを押してミキの感度を上げて快感をより強く感じるようにさせた。

「そんなはずあるわけがっ……ああっ!?あっ、いやっ、なんで?いあああああっ!」

 すりと、ミキの目が驚愕で見開かれた。

「そっ、そんなバカなあああっ!こんなのが気持ちいいわけがっ!」
「でも、すごく気持ちいいだろ?ほら、腰が抜けそうなほど気持ちよくて、もう立っていられない」
「いいいいっ!あっ、きゃあっ!」

 ミキの膝がガクガクと震えて、そのまま尻餅をつく。

「ふん、いやらしい体してやがるな。もうこんなにぐしょぐしょになってるじゃないか」
「いやっ……違うっ……」
「違わないさ。じゃあ、俺も本格的に取りかからせてもらうからな」

 そう言うと、俺は装置のハンドフリー機能を起動させて胸のポケットに入れる。

「本格的にって、いったい……」
「こういうことさ」

 俺は、ミキの裂け目のより奥深くまで指を突っ込み、もう片方の手で肉芽を弾いた。
 すると、その体がぎゅっと反り返った。
 
「いぎいいいいいっ!いああああああっ、やめてっ、やめてえええっ!」

 すると、俺の手に生暖かい感触がしたかとおもうと、ミキは派手にお漏らしし始めた

「いいいいいいいっ、だめっ、だめええええっ!あがっ、あああああっ!」
「まったく、酒臭い小便漏らしやがって。どんだけ酒飲んでたんだよ」
「うぎいいいいいっ!いいいっ、いはああああっ!」
「なんだ、言葉にならないくらい気持ちいいのか?じゃあ、いっぺんイっとくか?」
「ひいいいっ!いぎあああっ!ああっ、いぐっ、もういぐっ、いいいいいいいいいいいぃっ!」

 俺が、激しくそして大きく指を出し入れさせると、ミキの体がきゅっと硬直した。
 裂け目からは、愛液なのか小便なのかわからない汁が溢れてきて、コンクリートの床を水浸しにしていた。

「……あぁああ……ううっ、はあああぁ……」

 絶頂して、ぐったりとしているミキの膣に突っ込んだままの指を俺はまた動かし始める。

「まだまだいけるよな、ほら」
「ひあああああっ、やめてっ、もうやめてええええっ!ひぐうううううっ!」
「今度はこっちなんかどうだ?胸を触られるだけでイキそうなくらい気持ちよくなるぞ、ほら」
「ひぎあああああああっ!らめえっ、そんなのらめえええっ!」

 さっきまでクリを弄っていた方の手で、胸を掴むと、ミキの体がバタッと大きく跳ねた。

「そんなに気持ちいいのか?おまえの体は本当にいやらしいな。どこをさわられても性感帯のように感じてしまうんだろ?」
「あぐうううううっ!いあっ、いあああああああっ!あひいいいいっ、いいっ!」

 そう言って俺が体を撫で回すと、ミキは床の上をのたうちまわってよがり狂う。

「じゃあ、もう一度イっとくか」
「あああっ、あぎいいいいいいいいいっ!」

 また、体を大きく跳ねさせてミキの体が固まった。

 それを繰り返して、ミキは5回目の絶頂を迎える。

「いはああああああああっ!いぐっ、またイクううううううううううぅ!」
「いいイキっぷりだな。でも、まだまだやり足りないだろ?」
「……んんん……むり……これいりょうは、むりいいいぃ……はうっ、うああああっ!」
「ほら、まだ元気じゃないか。ここもこんなに指を締めつけてるしな」
「はあああああああっ!やめれっ、もう、ほんろうに、むりなのっ!ひいいいいいぃ!」

 俺が膣の中を掻き回し始めると、すぐにミキの体がビクビク震え始めた。

「なんだ、もうイキそうなのか?」
「ら、らっれ、もっ、もう、なんろもイカされひぇ、きもひいいの、ろまらないいい……んんっ、んはあああああっ!」

 そう言っているミキの瞳は虚ろに蕩け、全然舌が回っていない。

「本当にしようのないやつだな」
「らっれ……んんんっ、あひっ、らめっ、あらい、も、もう、いっひゃうううううううううううっ!ううっ、あ……」

 ミキが、白目を剥いて体を反らせたかと思うと、そのままがっくりなって意識を失った。

「ふう、6回か、なかなか粘ったな」

 俺は、気を失っているミキを床に寝かせたまま、シャワー室の方に向かう。
 そこから大量のタオルを持ってくると、まず乾いたタオルで、小便と愛液でぐしゃぐしゃになったミキの体と床を拭いた。
 次に、水で濡らせたタオルでミキの体を拭いてやり、床も丁寧に水拭きする。

 まあ、ミキの体は後でシャワーを浴びさせればいいんだが、部屋もきれいにしておかないとな。
 なにしろ大事な商品だ、小便臭い部屋で過ごさせるわけにもいかない。

 
「ん、んんん……」

 床をきれいにして、トイレから持ってきた消臭剤を吹きかけていると、ようやくミキが目を覚ました。

「あ、あれ、あたい?……あっ!」

 寝ぼけたようにぼんやりしていたミキが、俺を見て怯えた表情を見せる。

「やっと目が覚めたか」
「て、てめえ……」

 なんとかそれだけ言ったものの、その唇は真っ青になってぶるぶると震えていた。

「今日のところはこれまで。続きは明日だ」
「つ、続きって!?」
「あっちの、右側のドアがトイレで、左側がシャワールームになってる。シャワーは1日に最低1回は必ず浴びておけ。ちゃんと体をきれいにしておくんだぞ。食事は1日3回持ってきてやる、あと、換えのタオルもな。それと、ここでは何も身につけるな。裸で過ごすんだ」
「なっ!」
「嫌なら普段は毛布でも被っておくんだな。じゃあ、俺は行くぞ。また明日な」

 それだけ言うと、俺は部屋を出て外からドアに鍵を掛ける。
 ドンドンッ、とドアを叩く音と、なにやらわめいているような気配がするが、分厚い鉄の扉に阻まれてほとんど聞こえない。

 さてと、俺も一風呂浴びて寝るか。

 明日からは、いよいよ本格的な人形作りの始まりだ。
 それに備えて俺も体を休めることにした。

* * *

 ――2日目。

 部屋に入ってみれば、ミキはベッドの上で毛布を被って蹲っていた。

 入ってきた俺に気づくと、一瞬、怯えた視線をこちらに向ける。
 だが、すぐにその目は怒りに満たされた。

「てめえっ、あたいをここから出しやがれってんだ!」
「ふん、まだそんな悪態をつく元気があるのか」
「やかましいっ!あたいは絶対にあんなのに負けねえからなっ」
「せいぜい頑張るんだな。じゃ、始めるとするか」
「始めるって……まさか、また……」
「決まってるじゃないか。さあ、毛布をとってこっちに来い」
「だ、誰がっ!」
「こっちに来るんだ」
「……あ、ああ、いや、また体がっ!?」
「いいかげん理解するんだな、おまえの体は俺の言うとおりになっちまうんだって」
「いやだっ、やめろぉっ!」

 悲鳴をあげてもどうにもならない。
 ミキの体は、一歩ずつ俺の方に近づいてくる。

 そして……。

「いやあああああっ、イクっ!あたいっ、またイクうううううううううううううっ!」

 ぎゅっと体を固まらせて、ミキは盛大にイってしまう。
 これで、今日だけで4回目だ。

 やっていることは基本的に昨日と同じだ。
 装置を使ってミキの感度を上げて、何度もイカせてやる。
 しばらくは、これが作業の中心になる。

「ううう……本当に、もうやめてくれよぉ……」

 ミキが、その大きな瞳に怯えと恐怖を浮かべて見上げてくる。

 今日、部屋に入って驚いたことがひとつあった。
 俺の言ったとおりにシャワーを浴びたんだろう、メイクが落ちてすっぴんのミキの顔立ちが、想像以上に整っていたことだ。
 さすがに化粧の落ちた眉は細すぎる感じもするが、やや丸顔でくりっとした大きな瞳、鼻筋もすっきり通って少し小ぶりの鼻、ちょっと薄めの唇。
 昨日、化粧をしていたときからそんな感じじゃないかと思っていたが、それ以上の可愛らしさだ。
 なんであんなケバいメイクをしていたのか理解に苦しむくらいだ。
 また、その童顔が金色に染めた髪と似合わないことといったら。
 でも、この分なら依頼主も満足してくれるだろう。

 それはともかく……。

「まだだ。まだ、俺が気持ちよくしてもらってないだろうが」

 そう言うと、俺はベルトを緩めてズボンを脱ぐ。

「な、何をしようってのよっ?」
「ほら、俺のこれをしゃぶってくれよ」
「そんなことできるわけがないだろうがっ!」
「しゃぶるんだ」
「いやだっ!……あ、ああ!?んっ、んぐっ!」

 嫌がっていても、ミキの顔は俺の股間に近づいてきて、肉棒を口に含んだ。
 俺の肉棒が暖かくて湿った感触に包まれる。

「んぐっ、んむっ!んむむっ!」

 嫌そうに顔を顰めて、ミキは肉棒をしゃぶっている。

「なに嫌そうな顔してるんだ?全然嫌じゃないだろうが。男のチンポはおいしくて、しゃぶっているとおまえも気持ちよくなってクセになりそうなくらいだろうが」
「んぐぐっ、むっ、むむっ!?」

 俺の言葉に、その目が狼狽えたように見開かれた。

「ぐむむっ、んんっ、んむむっ!」

 戸惑いながら、ミキは肉棒をしゃぶり続ける。

「どうした?気持ちいいんだろ?おまえの思うようにしゃぶってみろよ」
「んんっ、じゅるっ、あふう……いやっ、なんでっ、こんなのがおいひいの?んむ、ちゅる、んふ」
「ほら、おいしくて気持ちいいだろ?」
「あふっ、えろろっ……そ、そんなはずじゃないのに、きもひいいよっ、あむ、じゅるる……ああ、おいひい、おいひくて、とまらないようっ、あふ、れるっ」

 涙を浮かべて肉棒をしゃぶるミキの目尻がトロンと緩んできた。

「んむっ、んふ、あふう、じゅるっ、ちゅるるっ……あふ、あ、ああ、こ、こんなに大きくなってる、ん、れろ……」
「ほら、こうするともっと気持ちいいだろ」
「ぐっ!んぐっ、んっ、んぐぐっ!」

 俺が頭を押さえつけてやると、ミキは目を白黒させて肉棒を口いっぱいに飲み込む。

「喉の奥を突かれると、アソコでやってるみたいに気持ちいいだろうが」
「んぐっ、ぐむむっ!むむーっ、んっ、んんっ!」

 頭を押さえ込むたびに、肉棒の先がごつごつと喉に当たる。
 ミキは、されるがままに頭を前後に動かしていく。

「そら、イってもいいんだぞ。出してやるから、全部飲み込め」
「んぐっ、ぐくっ、んぐぐっ!?ぐぐぐぐぐぐっ!ぐむむーっ!」

 思い切り頭を押さえつけると、喉の奥深くまで肉棒を突き入れて中に精液を放つ。
 それを、苦しげに呻きながらミキは飲み込んでいく。

「んっ、んぐっ!んくっ、んくぅ!」

 精液を嚥下するミキの喉が、こくっ、こくっと震える。

「んっくっ……ごほっ、うっ、げほっ、けほっ!」

 ようやく口を解放されて、手をついて咽せるミキ。
 口の端から、白濁した雫が滴り落ちている。

「どうだ、気持ちよかっただろうが?」
「こほっ、けほっ!……ふ、ふざけるなっ!誰があんなのでっ!」
「そうか?俺にはずいぶんと気持ちよさそうな顔に見えたんだけどな」
「くっ、てめえ、こんなことしていいとおもってんのか!」
「そのセリフは聞き飽きたよ。さてと、次はこれを使わせてもらおうかな」

 そう言うと、俺はバイブレーターを取りだした。

「なっ!?それでどうしようって……」
「決まってるだろ。こうするのさ」

 俺は、ミキのまたを広げさせると、ぐしょぐしょに濡れたそこにスイッチを入れたバイブを無造作に挿し込む。

「ひあああああああっ!やめっ、やめろおおおおおっ!」
「なんだい?気持ちよさそうじゃないか」
「てっ、てめえっ!ああっ、あうっ、あひいいいいっ!」

 バイブの端を掴んでぐりぐりと中を掻き回すと、ミキが体を仰け反らせて悲鳴を上げる。

「やめろっ、ああっ、あくうっ、あひっ!」
「ほら、こうやって奥に押し込んだら、こっち側の突起がクリに当たってもっと気持ちいいだろ?」
「いいいいいいいいいいっ!いやっ、それ以上はっ、だめええええっ!」
「なんだ、もうイキそうなのか?」
「だ、だってっ、イキ続けて、そこっ、敏感になってるっ、ああっ、イクイクイクっ!いくうううううううううううううっ!」

 ちょっと奥まで押し込んで掻き回しただけで、ミキはあっけなくイってしまった。

「う、ううう……うああ……あふっ!」

 バイブを入れられたままで、ミキはぐったりとしている。

「うん、いい格好じゃないか。よし、今日はこのくらいにしておこうか。……そうだ!そのバイブはずっと入れっぱなしにしておくこと」
「……なっ、なんだってっ!?あうっ!」
「ああ、トイレに行くときだけは外してもいいから」
「そんなっ!?シャワーを浴びるときも外すなって言うのかよっ!……あああっ!」
「だって、シャワーを浴びるのにバイブがあっても問題ないだろ?」
「ふざけるなっ!……あっ、待てっ、こらっ!」

 ミキの抗議には耳も貸さず、俺は身を翻して部屋を出ていった。

* * *

 ――3日目。

 その日、中に入るとミキはベッドの上にぐったりと体を横たえて小さく体を震わせていた。
 そして、ドアの閉まる音に、弱々しく頭をもたげて俺の方を見る。

「ううう……ああ、お願い、助けて……」
「なんだ?昨日までの元気はどうしたんだ?」
「もうだめ、あたいずっとイキ続けて……もうやめて、イカせないで……」
「ふーん。じゃあ、おまえの名前を言って見ろ」
「……え?ミキ、ミキだよ。この前も言ったじゃないか」

 ミキが、訝しそうな表情で答える。

 ……まあ、まだそんなもんだろうな。

「そうか、じゃあ、だめだな」
「なっ、なんだよっ、それっ!」
「だけど、イカせるのはやめてやろう」
「ほっ、本当にっ!?」
「ああ、おまえはもうイケない」
「い、イケない?」

 一瞬、ぱっと表情を輝かせたミキが、すぐに怪訝そうな顔になる。

「ああ、おまえはどんなに感じてもイクことはできない」
「ど、どういう……あっ、あああっ!」

 近づいて行って、挿し込まれたままのバイブを深く押し込むと、ミキが苦しそうに喘ぐ。

「いやあああっ、もう気持ちよくさせないでっ!あああっ、イクっ、イっちゃうよ、あたいっ!」
「心配するな、大丈夫だ」
「何がっ!?いああああっ、だめっ、イクうううっ……あふ?あ、あれ?あうううっど、どうしてっ!?イケないっ!?」

 ミキが、信じられないといった表情を浮かべた。
 しかし、俺はかまわずにバイブをぐいぐい押しつける。

「だから言っただろうが。どんなに感じてもイケないって」
「そんなっ!それって……くあああっ、イクっ!」
「まだわかってないのか?」
「いっ、イケないっ!?こんなに激しくされてるのに!?あっ、うあああああっ!」
「でも、もうイカさないでくれって言ったのはおまえだからな」
「そ、それはっ!ひぎいいいいいっ!いやっ、熱いっ、頭の中が熱いいいいいいっ!」

 悲鳴を上げているミキの瞳孔がめまぐるしく動き、焦点が合わなくなってくる。
 
 それもそうだろう。
 絶頂に達するのは、貯まりに貯まって限界に達した快感のはけ口だ。
 イクことができなければ、高まり続ける快感に神経がまいってしまうだろう。
 そもそも、人間はイクことによって受精をスムーズに行うことができるように体ができている。
 だから、イケないなんていう生物学的に矛盾した状況に、心も体も耐えられるわけがない。

「ひぐうううううううっ!ああっ、だめっ、もうだめっ、いあああっ、熱いっ、熱いいいっ!」

 そろそろ次に行くか。

 バタバタと頭を振って悶えているミキを眺めながら、俺はバイブを引き抜いた。

「いぎいいいいっ!ああっ、くあああああっ!……ああっ?」

 すっと挿し込んでいたバイブを引き抜かれて、不審そうな顔でミキが俺を見た。
 しかし、その瞳はどんよりとして、状況を把握しているのかどうかすら怪しい。

「まあ、おまえのアソコの具合も確かめないといけないしな、俺のこれで」

 そう言って、俺はズボンをずらして肉棒をさらけ出す。

「あ、あああ……いま、そんなの入れられたら……あたい、あたい……」
「なんだ?おまえの望みどおりにイケなくしてやったっていうのに。ほら、いくぞ」
「いや……だめ……ああっ!いいいいいいいいっ!」

 バイブを入れ続けられてドロドロに濡れている裂け目に肉棒を突き入れると、ミキは頭を後ろに反らせて叫んだ。

「うん、なかなかいい締めつけしてるじゃないか」
「いぎいいいいっ!そんな熱いの入れちゃだめええええっ!」
「じゃあ、動くぞ」
「ひぐううううううっ!激しいっ、いあああああっ!だめっ、だめええっ!熱いっ、全部が熱くて、あたいっ、あたいいいいっ!」

 俺が腰をグラインドさせ始めると、ミキが体を激しく悶えさせる。
 そんなミキの中は、普通じゃないくらいに熱くなっていた。
 まあ、いつものことだがイケないようにさせてよがらせまくった時の女の中っていうのはこのくらい熱い。

「ひぎいいいいいいっ!お願いっ、もう許してっ!イカせてっ、お願いだからもうイカせてくれよおおおっ!でないと、あたい、おかしくなっちゃうううううっ!」

 とうとう、ミキは自分からイカせてくれるよう懇願してきた。

「いいのか?もうイカせるなって言ってきたのはおまえの方なんだけどな」
「ひいいいいいいいっ!そんな意味で言ったんじゃ!あああっ、お願いっ!もう本当に壊れちゃうっ!イカせてっ、イカせてええええええっ!」

 必死の形相でイカせるように請い願うミキ。
 まあ、確かにこれ以上放置しておくと本当に壊れてしまうだろうな。

「しかたないな、いいだろう。イってもいいぞ」
「ああっ、ふあああああああああああああっ!」

 俺がイクことを許可すると、ひくひくと体を痙攣させてミキは絶頂に達した。

「ひいいいいいいっ、イクっ、またイクうううううううっ!」

 休む間こそあれ、ミキは立て続けに2度目の絶頂に達する。

「あぐうううっ、またイクっ、らめえっ、イクのが止まらないっ!ひいいいいいいいいいいっ!」

 イクことを許されないまま貯まりに貯まった快感を一気に放たれて、ミキは体をひくひくと震わせて何度もイキ続ける。

「ひぎああああああっ!らめっ、もうらめえっ、いあああああっ!イっちゃうっ、イっちゃううううううっ!」

 絶頂の波に翻弄されたミキのアソコがずっと締めつけてくるもんだから、俺も限界が近づいてきた。

「あひいいいいいっ、チンポが、中でびゅくびゅくってしてるっ!あひいいいっ、またイクっ、イクうううううううっ!」
「くううっ、そらっ、全部飲んでイってしまえっ!」

 俺は、肉棒を引き抜くと、ミキの口に突っ込んで射精する。

 いくら処女じゃなくていいと言われていても、さすがに中に出すのはまずい。
 俺が商品を妊娠させたんじゃシャレにならない。
 そんなことで商品を台無しにするのは俺の人形作りとしてのプライドが許さなかった。

「んぐぐぐっ!ぐむむむむむっ、んくっ、んぐっ、こくっ!んんんっ、んんんんんんっ!」

 虚ろな目を見開いてミキは精液を飲み干し、最後の絶頂に達した。

「んぐぐぐっ!はああぁ……んんっ、ん……」

 そのまま意識を失って、ミキはベッドに倒れ込んだ。

 そろそろ効果が出てくる頃かな……。

 バイブを拾い上げると、またミキの裂け目に突っ込んでから俺は部屋を後にする。

* * *

 ――6日目。

 いつものように部屋に入ると、ミキはぼんやりと澱んだ視線を俺に向けてきた。
 そして、ふらふらと近づいてくると、ズボンをずらして嬉しそうに肉棒を握りしめる。

「なんだ?最初はあんなに嫌がっていたのに、今日はえらく積極的なんだな」
「いやがってた?……わからない。思い出せないよ」

 ミキはとろんとした瞳で俺を見上げると、肉棒を手で扱き始める。

 ……やっと始まったか。

「おい、おまえの名前は何だ?」
「……え?あたいの名前?あたいの名前は……」

 肉棒を握ったまま、ミキはしばしの間考え込む。

「……そうだ、ミキ。あたいの名前はミキだよ」

 やっと自分の名前を思い出し、そう言って、ニッと笑みを浮かべた。

 そんなミキの変化に、俺は驚きはしない。
 これも、この装置の効果のひとつだからだ。

 この装置は、常に微弱な電気信号を発信し続けている。
 その信号の効果は、受信する側の人間をその人間たらしめている人格や記憶を少しずつ削り取っていくこと。
 そうして、最終的にはその個人の自我を消し去ってしまう。
 それにかかる時間は10日ほど、効果が見え始めるのが1週間以内というところか。
 どんなに強固な自我の持ち主でも、10日もあれば自分の記憶を完全に失ってしまう。

 俺の人形作りは、単なる調教や洗脳の類とは違う。
 人形にする素材の人格を消し去り、人形としての新たな人格を書き込んでいく。
 だから、いったん人形にされた者は、もとの人格を思い出すことはない。
 そうでなければ、仕事に万全を期すことなどできない。

 その効果が、やっとミキにも現れ始めたというわけだ。
 この信号の効果には、俺の命令に従い、快感を感じるほど大きくなるという性質がある。
 だからこそ、この5日の間、俺はミキをイカせ続けてきたんだ。

「ん、んふ、ぺろ、あむ……」

 命令もしていないのに、ミキが肉棒にしゃぶりついてきた。

「あふ、じゅるる、んふ、えろっ……ねぇ、もっと気持ちよくさせてよぉ……」

 上目づかいで訴えてくるミキの、その恍惚とした表情。

 ……こうなれば、後はこっちのもんだな。

 経過は順調だ。
 あと2、3日もすればミキの自我は無くなってしまうだろう。

「ねぇ、はやくぅ……こんなおもちゃじゃなくて、チンポ入れてくれよぉ」

 大きく足を開いて、ミキがバイブレーターの挿さった恥部を恥ずかしげもなくさらけ出す。

「ああ、わかったわかった」

 俺は、そこからバイブを引き抜くと、代わりに肉棒を突き挿した。

「ふああぁ、うふううぅん……」

 ミキが鼻にかかったような声で喘ぐ。
 どことなく反応が鈍いのも、自我が崩壊しかけているからだろう。
 だが、問題はない。

「あふううんっ、いいっ、チンポ、おおきくて、きもちいいよう!」

 我慢しかねたように、ミキが自分から腰を動かし始めた。

* * *

 ――9日目。

「ンッ、ンックッ、ンフ、ジュルルッ、ジュボッ……」

 一心不乱に肉棒をしゃぶっているミキ。
 だが、その瞳は虚ろで、なんの感情も映していない。

「おい、おまえの名前は?」
「ンム、ンフ……アタイノナマエ?アタイノナマエハ……」

 ミキが、ぼんやりと見上げてくる。
 その口調もどこか機械的で、感情がこもっていない。

「……ワカラナイ」

 その口から、ぽつりと返事が返ってきた。
 しかし、その顔には悲しみの欠片もない。

「おまえはなんでここにいるんだ?」
「……ワカラナイ。デモ、チンポ、オイシイ」

 そう言って、ミキはまた肉棒にしゃぶりついてくる。

「ンッ、ジュボッ、ンンッ……ネェ、アタイニチンポ、イレテクレヨォ」

 ミキが、俺の方を見上げて、あへ、と呆けた笑みを浮かべる。

 どうやら本来の人格は消えたみたいだけど……。
 それにしても、この言葉づかいはいただけないな。

 いや、本当は、もっと完全に記憶や人格を消し去ることもできる。
 それこそ、言葉すら忘れてしまうほどに。
 ただ、そこまでしてしまうと、意味不明な唸り声をあげるだけの獣みたいになってしまって、人形に仕立て上げるどころじゃなくなってしまう。
 しかし、こうやって言語回路だけ残すと、もともとの言葉づかいが残ってしまう。
 特に、ミキの場合は話し方に難があってこのままでは商品にならない。

 まずはこれを修正していかないとな……。

 俺は、装置を強制モードから書き込みモードに切り替える。
 すると、一瞬、ミキの虚ろな目が大きく見開かれて、体がブルッと震えた。

 これが、この装置のもうひとつの機能。
 この書き込みモードによって、対象に新たな人格や知識を書き込んでいく。

「”あたい”じゃないだろう、自分のことは”わたし”と言うんだ」
「……ウン。……ワタシ」
「それと、返事をするときは”うん”じゃなくて”はい”だ」
「……ハイ。ネェ、ハヤク、ワタシニチンポ、イレテクレヨォ」
「”入れてくれよ”じゃなくて”入れてください”だろうが」

 ミキは、俺の言ったとおりに言葉づかいを変えていく。
 だが、その口調には抑揚が無く、どことなく機械的で無感動な印象だ。
 まあ、人格を無くした人間がこうなるのはいつものことだ。
 ここから、少しずつ新しい人格を書き込んでいけば感情も甦ってくる。
 なんにせよ、地道な作業ではあるが。

 それにしても……。

「ハヤクゥ……ワタシニチンポ、イレテクダサイ。ネェ……」

 ……はぁ。
 これは根気のいる作業になりそうだな。

 腑抜けた笑みを浮かべてこっちを見上げているミキを見下ろしながら、俺は内心ため息をついた。

* * *

 ――13日目。

「んふ……気持ちよろしいですか、ご主人様」

 肉棒を両の乳房で挟んで扱きながら、ミキが俺の顔色を窺ってくる。
 その言葉づかいは、完全に召使いのそれになっていた。

 ミキのアソコに挿しっぱなしにしていたバイブレーターはとっくに抜いている。
 あれはもう必要ないからだ。

 そして、俺の用意したメイド服の胸をはだけさせてパイズリをしている。
 まあ、いつまでも裸というわけにもいかないだろうし、召使いとしての身なりを整える練習もさせないといけない。
 とりあえず、話し方は直したが、いったん人格を失ったミキは、いやらしい体を持っているだけで、ほとんど真っ白な状態だ。
 そこから必要なことを書き込んでいくのだから、まだまだ身につけさせないといけないことは山ほどある。

 依頼のフォーマットパターンは召使いタイプだ。
 だから、書き込み作業の間、暫定的に俺のことを主人だと思わせている。
 まだまだ修正点はあるが、話し方はだいぶ板についてきた。

「いかがでしょうか、ご主人様。わたし、ちゃんとご奉仕できていますか?」

 うん、言葉づかいはもう問題はないな。
 だけど、表情が今ひとつかな……。

「……だめだな」
「ええ?ご主人様?」
「主人に奉仕するのはおまえにとって最大の悦びだろうが、もっと嬉しそうな顔をしたらどうなんだ」

 装置の書き込みモードの出力を少し上げてそう言ってやる。

「……はい。……ん、ああ、ご主人様にご奉仕するのがわたしの悦び……んっ、こうしてると、わたし、とっても幸せな気持ちに……いかがですか、ご主人様?」

 そう言って浮かべた、ミキのいかにも嬉しそうでいやらしい笑顔。
 口許をだらしなく綻ばせ、瞳をとろんと潤ませて俺の顔を見つめている。

「ああ、だいぶ良くなったぞ」
「ありがとうございます、ご主人様」

 ミキは、ニッコリと、いままでに見せたことがないくらいに眩しい笑みを浮かべる。

「で、おまえはどうなんだ、気持ちいいか?」
「わたしのことはよろしんですよ。ご主人様が気持ちよくなられるのがわたしの幸せなんですから」

 そう言ってミキは熱心に肉棒を扱きあげてくる。

 うん、受け答えとしては申し分ないけど、それじゃまだまだ不十分だな。

 だいたい、こんな依頼をしてくる客は、従順なだけではなくて、いやらしい人形を求めている。
 人形制作者としては、そのニーズに応えなければいけない。

 俺は、装置を使ってミキの胸の感度を上げる。

「ほら、そうやってるとおまえも気持ちよくなってくるだろうが」
「……あっ!んんんっ……ほ、本当です……こうしてると、わたしもとっても気持ちよくてっ、ああああっ!」

 途端に、ミキが激しく喘ぎ始めた。
 両手を使って乳房で肉棒を扱きながら、腰をもぞもぞとくねらせている。

「あんっ、あはぁ……ご主人様のおちんちん、こんなに熱くて……ああ、わたし、本当に幸せですぅ……」

 ここまでくればもう少しだな。
 うっとりとしてパイズリをしているミキを見下ろしながら、俺は作業が完成に近づいていることを感じていた。

* * *

 ――18日目。

「あああああんっ!ご主人様のおちんちんが熱くてっ、わたしのお尻の奥に当たってますううううっ!」

 アナルを犯されながら、ミキは涎を垂らしてよがり悶える。

 この5日間は、普通の召使いとして必要なひととおりの家事の知識と技能を身につけさせ、性人形としてのひととおりの性技を仕込むことに費やしてきた。
 今や、ミキは一人前のメイドにして、アソコも尻も、胸も、口も、十分すぎるほどにいやらしく、男を満足させる人形になった。

「あふうううんっ、ああっ、いいですっ!ご主人様のおちんちん、とても気持ちよくてっ、わたしっ、わたしいいいいいいっ!」

 ミキの足がガクガクと震える。
 しかし、アヌスはぎっちりと肉棒を締めつけて離さない。

「いあああああっ!出てますううううっ!熱いっ、ご主人様の精液が熱くてっ、ああっ、わたしっ、イってしまいますうううううっ!」

 ミキのアヌスが、俺の精液を搾り取っていく。

 もう、ミキは体のあらゆる場所で男の精液を搾り取る術に長けている。
 俺ですら、アソコでやるときはゴムを付けていないとあっけなく中に出してしまいそうなほどに。

「んふうううぅ……あ……ん、んむ……」

 ぐったりとしているミキに顔を近づけると、ミキの方から唇に吸いついてきた。

「……おい、もっとちゃんと舌を動かせ。どんなに疲れていても舌を使うことを忘れるな」
「あ、ふぁいぃ……んふ、んむ、んむむ」

 いったん顔を離して命令すると、それに素直に従って、ミキは俺の舌に自分の舌をねっとりと絡めてくる。

「んむむっ、んんっ、んんんーっ!」

 口づけを交わしながら体をまさぐると、ミキは敏感に反応して体をびくつかせた。
 そして、我慢できないというように両足を俺の体に絡みつかせてくる。

 ……今日が最後だ。
 出荷までに、とことんまでいやらしい体にしてやる。

「ん、んん……」

 その日、限界までイカされ続けて、半ば気を失っているミキが足元に転がっている。

 よし、完成だな。
 明日、最後の仕上げをして出荷するとするか。

 その日、ミキを閉じ込めている部屋を出ると、俺は携帯を取りだしてブローカーに人形の完成を告げた。

* * *

 ――19日目。

「さあ、ここに座るんだ」
「はい、ご主人様」

 その日、俺は持ってきた椅子にミキを腰掛けさせる。

 
「じゃあ、少しの間じっとしてろよ」
「はい」

 俺は、道具箱から理容鋏を取り出すと、ミキの髪を切り始める。

 人形作りたる者、作り上げるのは中身だけではだめだ。
 だから、俺は女の外見を整える術もひととおり身につけている。

 特に、今回は髪型がベリーショートという注文がついていた。
 依頼主の好みなのか、それとも、別な髪型のかつらでも被らせて楽しもうっていうんだろう。
 こんな人形を手に入れたいって言うやつの趣味だから、おおかたそんなところだろう。

 しかし、そんな詮索はどうでもいい。
 俺は、依頼どおりに人形を仕上げるだけだ。

 髪を短く切りそろえると、今度はその金髪を黒く染めにかかる。
 特に注文にはないが、やはりミキのこの童顔に金髪は似合わない。

 色がなじむと、俺はミキに命令する。

「よし、もういいぞ。ちょっとシャワーを浴びてこい」
「はい、ご主人様」

 素直に返事をして立ち上がるミキ。
 ミキがシャワーを浴びている間に、俺は切り落とした髪を掃除する。

「あの……ご主人様、シャワーを浴びてきましたけど」
「よし、じゃあ、これに着替えろ」

 そう言って俺が取りだしたのは純白のビキニ。
 まあ、特にこだわりがあるってわけでもないが、俺はいつも自分の作った人形にはこれをつけさせて出荷している。

「はい」

 素直に白のビキニを身につけていくミキ。

「よし、じゃあ、もう一度ここに座れ」
「はい」

 椅子に座ったミキに、俺はメイクを施していく。
 とはいえ、素材がいいので、素のままでも十分可愛らしいし、若くて肌に張りがあるのであくまでも薄く、ナチュラルな感じに仕上げていく。
 口紅も艶を出す程度の淡い半透明のものを使う。
 後は、少しばかり剃りすぎの薄い眉を自然な感じで引いていき、ビューラーを使って睫毛を立たせ、大きな瞳を強調する。

「よし、どうだ、ちょっと鏡を見てみろ」
「はい……あ…可愛らしい…です……」

 少しの間、ミキはぽーっと頬を赤らめて鏡の中の自分に見とれていた。

 中身はあくまでも従順で愛らしく、そしていやらしく、そして外見は徹底的に美しく、もしくは可愛らしく、それが俺の人形作りとしてのモットーだ。
 だから、メイクの技術も、そこらへんのメイクアップアーティストよりも上だという自負はある。
 もちろん、出来上がり具合は素材にも左右されるが、素材を選ぶ目にも自信はあった。

 だから、ミキが鏡の中の自分の姿に見とれるのも無理はない。

 と、いきなりミキがハッとした表情でこっちを向いた。

「あっ、も、申し訳ございません」
「ん?なにがだ?」
「わたし、ご主人様に髪を切ってもらって、そのうえ、お化粧までしていただくなんて……」
「ふ……。ああ、それならいいんだ」

 初めはあんなに口汚く悪態をついていたミキが、あんまりにも申し訳なさそうな表情でしおらしいことを言うので、思わず口許が綻んでしまった。
 もともとが、本来の人格を消して新たな人格を書き込んでいくのだから、その過程で誰でも性格が変わってしまうし、もう慣れているはずなのに。
 やっぱり、あの言葉づかいを直すのに手こずったからだろうか。
 とはいえ、笑みがこみ上げてきたのもミキのことを可愛らしいと思う感情からよりも、人形が上手くできあがったという満足感からだ。それ以上でも以下でもない。
 なにしろ、こいつは商品にすぎないのだから。

「とにかく、今は、俺が一番似合うと思う感じにしてるから。メイクのやり方はこの間教えただろう?次からは自分でするんだぞ」
「はい」
「後はおまえの本当のご主人様の好みに合わせて調整するんだな」
「わたしの、本当のご主人様?」

 不審そうに首を傾げるミキには構わずに、俺は装置の書き込みモードの出力を最大にする。

「あっ、うあああっ!」

 すると、ミキの瞳から光が消えて体が硬直した。

 いよいよ、最後の仕上げだ。

「いいか、これから俺が言う言葉を忘れるな」
「……はい」
「ANH246KMK832BBT2262」
「……ANH246KMK832BBT2262」

 ミキが、抑揚のない口調で俺の言葉を繰り返す。
 意味のないアルファベットと数字の羅列だが問題はない。
 最大出力の書き込みモードで送られる言葉は、対象の脳に深く、強く焼き付けられる。
 それが、どんなに覚えにくい言葉でも決して忘れることはない。

「よし、次におまえがその言葉を聞いて、最初に見た相手がおまえの本当のご主人様だ」
「……はい」
「おまえにとって主人の言うことは絶対だ」
「……ご主人様の言うことは……絶対です」
「主人に奉仕し、気持ちよくさせるのがおまえの最大の幸せだ」
「……ご主人様にご奉仕して、気持ちよくしてさしあげるのが……わたしの最大の幸せです」
「よし。で、おまえの名前だが、ご主人様につけてもらえ」
「……はい」
「もし、名前を聞かれたらこう答えるんだ。どうぞご主人様の好きなようにお呼びください。ご主人様が付けてくださった名前がわたしの名前です、と」
「……はい」
「よし。じゃあ、眠れ、深く、深く。眠っている間におまえは俺のことを全て忘れる。そして、次にあの言葉を聞くと目を覚ます。その時目の前にいるのがおまえの本当の主人だ」
「……はい、眠ります。そして、忘れる……すべて……わすれ……」

 椅子に座ったまま、ミキは目を閉じてぐったりとなった。
 そして、俺はそのうなじから受信機の針を抜く。
 ずっと刺したままになっていたけど、もうこれは必要ない。

 それを収めてから、俺は時計を確認する。

 ふう、ちょうどいい時間だな。

 もうすぐ、ブローカーとの約束の時間だ。
 俺は、仕事をやり終えた満足感に浸りながらタバコに火を付ける。

 そして、ちょうど1本吸い終えた頃に携帯が鳴った。

 助手をひとり連れてきたブローカーが、人ひとり入れる大きさの箱の中に手際よくミキの体を横たえる。
 白のビキニだけを身につけて眠っているその姿は、本当に人形のようだ。

「これでよし、と。相変わらず仕事が早いな」
「ふ、そうでもないさ。それと、これを依頼主に。こいつの起動パスワードだ」

 そう言うと、俺はあのパスワードを書いたメモを渡す。

「おう。……なあ、ひとつ聞いていいか?」
「なんだ?」
「どうしていっつもこんなに覚えにくい数字とアルファベットの羅列なんだ?もっと覚えやすい言葉にすれば面倒がないんじゃないか?」
「ああ、それはな、意味のある言葉をキーワードにすると、何かの拍子でその言葉を聞いて、間違って人形が起動することがあるかもしれないだろ。それを防ぐためにも、普通まず耳にすることのない意味のない記号の方がいいんだ」
「ほぉ、そこまで考えてるとはな。やっぱり大したやつだよ、おまえは」
「なんだ、今日はやけに褒めるな。……それより、ちゃんとこいつを依頼主に届けてくれよ」
「任しとけって。それと、金は例の口座でいいんだな」
「ああ」
「よし、じゃあな」

 ブローカーが、ミキの横たわった箱に蓋をすると、ストレッチャーに乗せて運び出していく。

 それを送り出すと、俺はもう1本タバコを取りだす。
 ひと仕事終えた充実感に満たされて俺はタバコをくゆらせる。
 いつものことだが、仕事の後の一服は格別だ。

 それにしても、確かにミキは依頼どおりの素材だったし、仕上がりも上々だった。
 だけど、俺の好みじゃなかった。
 俺は、あんなガキっぽい女よりも、もっと色気のある女の方が好きなんだけどな。

 ……仕事も終わったし、気晴らしに好みの女でも漁りに行くか。

 街で俺の好きなタイプの女を見つけてちょっと遊ぶ。
 この装置があれば簡単なことだ。
 別に、人形にしなくても、これがあれば、好きな相手を思い通りにして、一日二日遊んだ後、その間に記憶を消して街に戻すなんてこともできる。

 灰皿にタバコを押しつけると、俺は立ち上がる。
 そして、階段を上がると夜の街へと踏み出していった。

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