オイディプスの食卓 第27話

第27話 アナル教育(黄昏の三大美少女神編)

 体育館は興奮と期待に包まれていた。
 山下先輩の放送のとおり、全校生徒及び全職員のみなさんがこのイベントを楽しみに盛り上がってくれている。
 すでに僕は体育館の放送設備を使い、コンテスト開始にあたっての注意事項は連絡済みだった。
 あとはみんなと一緒に始まるのを待つだけ。
 何も知らずに集まったにも関わらず、その熱気とざわつきは体育祭以上だった。

「ねえねえ、誰が優勝すると思う?」
「B組の天崎さんとか、いいとこ行きそうじゃない?」
「生徒会の藤川副会長よ! それしか考えられない!」
「違うよ、三沢先輩だって。昨日、2年の女子トイレですごい騒ぎになってたの知らないの? あの人、天使のプラチナアナルの持ち主だって!」
「何それ、よくわかんないけど強そう!」
「うー、楽しみ-! 誰にも投票してないけど」
「一体誰が優勝するんだろうなぁ、俺も投票してないけど」
「つーかコンテスト自体が初耳だけど、こんだけ盛り上がってんだもんな!」

 ちなみにネタバレすると、天崎が3位で藤川先輩が2位、1位はもちろん花純さんだ。
 彼女たちは、僕の悪友が『三大美少女神』と崇めている我が校のトップ3だ。1位だけは決まってたけど、その他の順位がわからないので、彼の評価している2人で揃えてみた。
 でも、ここで名前が挙がっているのを聞く限り、その3名で校内の美少女ランキングは正解みたいだ。
 
「よし、蓮。俺の予想を聞かせてやる。3位結希たそ、2位藤川副会長たそ、そして1位は花純先輩たそで決まりだ!」

 結果、悪友の予想どおりになっちゃったっていうのが、ちょっと気にくわないけど。
 ていうか藤川副会長たそって、かなり言いづらいだろ、それ。

『はいはい、注目~。放送委員の山下でーす。今日のコンテストは私が仕切らせていただいちゃいますので、みなさんよろしく~!』
「やったぜ、山下先輩たそー! あなるたその声やって~!」
『あ、あなるっていうなぁ!』
「うおおおおおおッ、超似てる~ッ!」
『いえー! ありがとー!』

 一部固定ファン(この悪友も含む)の多いアニメ声優系のメガネ女子、山下先輩の張りのある声がマイク越しに響く。
 今回の進行は全て彼女に任せてある。僕は観客としてステージを楽しませてもらう予定だ。
 2年生の列で、不安そうに僕を探している花純さんと目が合ったので、とりあえず笑顔で手を振る。何か言いたそうに口を開いた花純さんだが、周りのクラスメートたちに肩を叩かれたり、声援をかけられたり、その盛り上がりように戸惑って動けずにいる。
 おそらく「花純ならいけるって」とか、「優勝間違いなし!」とか、そんな感じだろう。
 この会場で、花純さんだけが覚めている。昨日のアナル授業と同じ状態だ。
 でも彼女が意外と流されやすいタイプなのは昨日でわかった。そんな彼女が、周囲の盛り上がりだけで僕にアナルセックスを許すのかどうか、このステージに僕は賭けてみたい。
 つまりこれは、催眠ではなく洗脳。実験ではあるが、勝算もある。
 今は何が起こっているのかわからないかもしれないけど、昨日、みんなにアナルを褒められることで気持ちよさを感じてしまったみたいに、今日はさらにその一段階上、自分の意思でアナルセックスを求めるところまで行って欲しいんだ。
 必勝のプランはすでに出来上がっている。このイベントの影のプロデューサーは僕。
 そして、我が校のアナルヒロインは君なんだよ、花純さん。

『ではでは~、第1回アナル美少女コンテスト、まずは第3位アナルの発表でーす!』
「よし来い! 誰でもいいから来い!」
『どぅるるるるるるるるる、ジャジャン! 1年B組!』
「うおおおおおおッ!」
『天崎結希さん! 君が3位だーッ!』
「やったぜ、俺らの結希たそーッ!」

 うるさい。ホントうるさい。
 盛り上がれとは確かに催眠暗示で言ったが、逆にどうしてここまで盛り上がれるのか不思議なくらい盛り上がっている。特に悪友が。
 僕の後ろで大騒ぎする彼から少し距離を取る。
 天崎は、恥ずかしそうに、ちょこちょことお尻を押さえながらステージに上がっていく。
 
「か~わいい~!」

 昔、彼女にものすごく残酷にフラれたことがあるはずの悪友が、何事もなかったみたいに全力で声援を送る。そういうとこはちょっと男らしいと思わないでもない。

「結希ちゃーん!」
「かわいー! 俺の方も見てよー!」

 上級生にもファンは多いようだ。顔だけなら確かに可愛い方だし、彼女なら有名であってもおかしくはない。実際、かなりモテるのだろう。
 天崎は、まだお尻を隠してモジモジしている。でも、こうして注目されるのにも慣れているのか、ステージ上から手を振って声援に応えたりしている。袖がちょっと長めなあたりもさすがあざといって感じだ。
 まあ、あざといっていうか、うん。普通に可愛いよね。普通に見るとね。ちゃんとしてれば彼女も普通に魅力的っていうか、ああいう明るくて可愛い子がクラスいたら、ついつい気になっちゃうのもわかるよねっていう気持ちにも……
 いやいや、花純さんの方がずっと可愛いけど!

『それでは、第3位の天崎さんに喜びのアナルを披露してもらいましょう!』
「うおおおおおおおッ、今日休まなくて良かったぜー!」
「あの天崎アナルを拝めるなんて!」
「なんで撮影禁止なんだよ、いいかげんにしろ!」
「天崎は俺が育てた! 俺が育てたんだ!」

 全生徒どころか、B組の担任までもが大興奮に湧き上がる。育ててはいないだろうに。
 でもそりゃ盛り上がるだろ。学校で有名な美少女が、アナルを見せてくれるっていうんだもの。
 花純さんは、「え?」という顔で、この騒ぎを見回して青ざめる。
 そう、表彰者には、当然ながらステージ上でのご開陳が待っている。
 覚悟して、よく見ておけよ、優勝候補。
 これがアナル美少女コンテストだ!
 
『えっと、じゃあ、結希のアナルを見せちゃいますけど……みんな、引かないでくださいね?』
「引くわけないじゃん、見せて見せて-!」
「ア・ナ・ル! ア・ナ・ル!」

 マイクを渡された天崎が恥ずかしそうにコメントし、全生徒及び男性教師たちまでもがアナルコールで盛り上がる。
 天崎はくるっと背中を向けて、スカートの中に手を入れる。

「うおおおおおおおッ、ピンクだ!」

 ピンク色の下着が膝のあたりまでずり下ろされ、体育館が揺れるほどの絶叫に包まれる。
 そして次に、天崎自身の手でスカートが持ち上げられた。

「お尻だああああああああッ!」

 真っ白いお尻がステージライトの下で露わになる。爆発的な熱狂。興奮は最高潮まで引き上げられる。
 天崎はそのとき、チラっと後ろを振り返って微笑んだ。なんとなくだけど、こっちを見ていた気がする。
 
「結希たそ、今俺の方見た!? 俺にアナルスマイルくれたッ!?」

 知らないし、そんなの。
 後ろの悪友を無視してステージを見守る。
 天崎はお尻を見せたまま、もったいつけるように、少しずつ前傾姿勢になっていく。

「ア・ナ・ル! ア・ナ・ル!」
「ア・ナ・ル! ア・ナ・ル!」
「ア・ナ・ル! ア・ナ・ル!」

 真っ白いお尻の中に埋もれた、赤茶色のホール。
 おっぱい、アソコ、お尻にばかり興味が行きがちな中学生男子にとって、それは想像を超える女の子の秘中の秘。
 学校を挙げてのコンテストというビッグイベントで、他人に見せるなどとは考えらない部位が、メインとなって公開される。
 全生徒を熱狂させているのは、催眠術による盛り上がり暗示だけではないだろう。
 心のどこかで、想像したこともない非日常を求めてきた中学生の性が、未知への好奇心が、我が校3番目に可愛い女子、天崎結希のアナルで爆発する。
 
 「―――でたあああああああああああッ!」

 つん。
 最後は突き出すようにして、天崎はみんなに見えるように、両手を添えてお尻を広げた。
 後ろで悪友がひっくり返った音がした。飛び上がって喜ぶ男子がいた。瞳を輝かせて「かわいー!」と絶賛する女子がいた。
 喜んでいない者などいなかった。うちの中学には、これだけ顔とアナルの可愛い女子がいる。そのことをこの場にいる誰もが感謝した。
 ただ一人、花純さんだけが片眉を上げて、天崎と全校生徒の反応に不信感をあらわにしている。しかしそんな疑問など、熱狂に包まれたこの場で口にも出来ずに沈黙している。
 すでに3位の時点で、会場は歓喜と興奮の坩堝だ。僕もこのコンテストの成功を確信し、ほくそ笑む。
 小さなお尻の奥にあるアナルが全校生徒の前で開かれ、割れんばかりの喝采と雄叫びに体育館が揺れる中―――しかし山下先輩は、『え!?』とマイク越しに大きな疑問符を浮かべた。
 その声に水を打たれたように、会場の熱狂は徐々に静まり返っていく。
 
『え? え? ちょっと待って下さい。天崎さんのアナルから、なんか出てきます?』

 顔を近づけていく山下先輩。ざわめく場内。
 アナルから何か出てくるって、どういうこと? アナルから出てくるものなんてあるの? アナルは入れる用の穴なのに?
 いや、違う。
 彼女の穴から垂れてくるモノの正体なら、僕はよく知っている。
 知っているだけに、動揺してしまう。

『白くて、なんかドロっとしたものが……ウンチでもなく、イカというか栗の花というか、独特の匂い……ま、まさか、私、本物見たことないのでよくわかりませんが……せ、せーえきでは!?』
「なにぃぃぃぃいいいいッ!?」

 興奮が動揺に変わった。
 悪友が僕の耳元で迷惑な大声を出す。
 天崎は、笑顔で会場を振り返り、ぺろっと舌を出す。
 
『てへッ! やっぱり引いちゃいました? そうでーす、結希、アナルえっちしてから来ましたー!』

 本人の能天気な笑顔とは裏腹に、会場は絶望の悲鳴にどよめく。
 僕は、おでこをバチンと叩いた。
 
「やだーッ!?」
「どうなってんだよ!?」
「コンテスト荒らしの仕業じゃない!?」
「警察呼べよ、警察をぉ!」
「結希ちゃん、ウソだよね!? ウソだと言ってよーッ!?」
「天崎は俺が育てたのに!」

 歓喜に包まれていた空気も一変。
 全校生徒が動揺し、男子たちは泣き崩れ、女子たちは青ざめ、B組の担任は床を叩いて慟哭する。
 第3位から、まさかの大波乱。
 怒濤の展開に荒れる会場の中で、心当たりのある花純さんが真っ赤な顔して僕を睨む。
 僕だって顔真っ赤だよ。
 まさか天崎が、精液をお尻の中に入れたままステージに上がるなんて思ってなかったんだ。
 こんなに残念なヤツだとは思わなかったよ……ッ。

『ま、まさか、まさかの展開です! アナル美少女第3位は、すでに使用済みでしたっ。私、山下もどん引きですっ。せーえきを見るの初めてなのに、めっちゃ近くで、しかも他人のアナルから出てくるとこ見ちゃいました。あぁ、なんか、どんどん出てきます。夢に見そうです、この光景!』
『てへッ! 2発分でーす!』
『最低です、この女っ。コンテストを舐めてます、今年の1年生! では、どこでどうやって、コイツはせーえき溜め込んできたんでしょうか、もう本人に聞いちゃいましょう! 私を初めとする処女童貞のみなさんは、爆死の覚悟で聞いてください!』
『えっとぉ、さっきの授業、さぼってぇ、てへへっ、ダーリンとぉ、トイレで2ショット(性的なカウントとして)しちゃいました~っ』
『死ねコノヤロー! 聞きましたか、みなさんっ。中間テスト前のクソせっぱ詰まったこの時期に、このメスアナルは授業さぼって2発もヤッたそうですよ! 1-Bの担任は仕事しろ!』
「おおおおおお~! そんな、そんな~ッ!」

 山下先輩がドスの効いたボイスで絡み、B組の担任が血涙を流す。
 あの担任は大丈夫なのか?。

『もうこいつアホだから、どんどん聞いちゃいましょうっ。では、そのダーリンとは誰ですか!?』
『えー? 言っちゃっていいのかなぁ。えっと、1年A組のぉ……三沢蓮くんが、結希のダーリンです!』
「うっそぉおおおおおおッ!?」

 僕の後ろで悪友がひっくり返る。
 いや、僕もひっくり返りたい気分だよ。

「ど、どういうことだよ、蓮ッ!? 本当なのか、あれ!?」
「うん、まあ、本当」
「マジかよ、お前のチンポしゃぶっていい!?」
「いいわけないじゃん!?」

 動揺しすぎて混乱しているのは、悪友だけじゃなかった。
 僕の周りにむさ苦しい集団が群がってくる。
 
「ちっくしょおおおおおッ! 誰だ、三沢って! お前か、お前なのか!」
「1年A組の三沢! 今すぐ先生と勝負しろ!」

 男子たちが狂ったように叫び、B組の担任には勝負まで挑まれる。
 でも大丈夫。今日のコンテストはそもそも荒れる予定だった。僕が全校生徒に嫉妬されるのも織り込み済みのイベントが目白押しだ。
 万が一のことを考え、『僕には誰も危害を加えられない』と暗示をかけておいてある。
 騒ぎをよそに、僕は平然とステージを見守る。
 
『では天崎さん、最後に受賞の喜びを一言でどうぞ!』
『ねえ、ダーリン。結希、3位でごめんね? 卒業までには絶対絶対1位になってみせるので、これからもたくさん結希のアナル可愛がってくださいっ。ダーリン好き好き、超愛してる! ダーリンのおちんちんは結希の陽だまりアナル棒だよ! 結希たちの永遠を、アナルリングで誓ったトイレでのこと、絶対に忘れな―――』
『お前もう黙れ! それじゃ、3位の天崎さんはアナル出しっぱなしでステージのすみっこに移動してください。次はいよいよ、2位アナルの発表です!』
『あ~ん。そんなに押したら、ダーリンの精液全部出ちゃうってば~!』

 予想外の展開で終わった3位発表が、このコンテストの波乱の予感を盛り上げる。
 次は全校アナル美少女第2位。
 僕は藤川先輩だと知ってるし他の生徒もだいたいそう予想してるみたいだけど、いよいよ発表だ。

『どぅるるるるるるるるる、ジャカジャン! 3年D組!』
「おおおおおおおおッ!?」
『藤川咲! あんたが2位だーッ!』
「きゃあああああああああッ!」

 男子たちの盛り上がり。
 そしてそれ以上に、女子の黄色い声が体育館に響き渡る。
 
「やった、やった、私たちの咲お姉様が2位アナルよ!」
「おっしーい! でもいいっ、2位でも全然いいっ。咲お姉様だもの!」
「副会長のアナルを拝めるなんて、今日はなんて素晴らしい日!」

 藤川生徒会副会長は、特に女子人気が高いことで有名だ。
 テニス部のキャプテンで、成績優秀スポーツ万能で知られている。近隣や遠方の小学校からその手の万能タイプがこぞって進学してくる私立中学にあって、全校に名前を知られるくらいに飛び抜けるのは並大抵のことじゃない。
 さらに、そこに「容姿端麗」の評判が加わるのは稀といっていいくらいだ。
 藤川先輩は、稀にしかいないそういうタイプだ。なにしろ、あまり学校の女子に興味のない僕でも、前から彼女のことは知ってたくらいだ。
 しかも本人はそのことを鼻にかけないというか、むしろ爽やかな気っ風と面倒見の良さで、女子から圧倒的な支持を受けている。
 もちろん男子人気が低いわけではない。が、やはりちょっと異性として気が引けちゃうというか、花純さんのように「容姿・運動神経は抜群、でも勉強の方はちょっと苦手」くらいがウケるのが現実だ。
 しかし、藤川先輩のスター性はもちろん僕も認めるところ。
 なので演出にも、ちょっと凝ってみたんだ。
 
「……で、咲はどこ?」
「知らない。さっきからいないよ?」
「ちょっと3年の人たち、咲お姉様はー?」
「早く出てきてくださーい!」
「3-Dの藤川ー! 先生、待ち焦がれてるぞー!」

 ざわつき始める生徒たちと1-Bの担任。ていうか、いつまでしゃしゃり出るのかな、あの先生は。
 担任からしてあれだから、天崎もあれなのかな。
 そのとき、ダカダン! と、スネアドラムの音が響いてみんなを黙らせた。
 続いて後ろの扉が開き、吹奏楽部のマーチングバンドが入場してくる。銀河鉄道スリーなんとかのテーマ。一糸乱れぬ見事な演奏と行進だ。
 よくわからないまま、みんなも手拍子する。中央を通ってステージの前。そこでバンドは両翼に広がり、観客に向かって演奏を続ける。
 手拍子を続けながら、首を傾げるみんな。やがて演奏が終盤になり、最後の和音を奏でて終了する。そしてそのときになって、みんな気づく。
 いつのまにかステージにスクリーンが下りていることに。
 照明が落ちた。このためにじつは最初から体育館にはカーテンが引かれていた。
 そして、山下先輩が落ち着いたナレーション声で原稿を読み上げる。

『―――藤川咲』
「きゃああああああッ!」

 それと同時に、スクリーンに彼女の微笑みが映し出され、主に女子の黄色い声が体育館に湧き上がる。
 
『3年D組、出席番号21番。この学校で彼女のことを知らない者はいない』
「もっちろーん!」
「咲お姉様ーッ!」
「藤川副会長たそ~!」

 スクリーンの彼女に向かってみんなが声援を送る。
 肝心の彼女はまだ姿を現していないというのに、すごい盛り上がりだ。
 
「超美人! 本当に、なんてお美しいの!」
「きらっきらしてる! 瞳、超きれい! マジ、神レベルの顔だよぉ!」
「ちょっと、みんな静かにして。咲先輩のお顔は、静かに遠くから眺めるものなのよ」

 確かにきれいな顔だと思う。学校一美人といって差し支えない。はっきりとした瞳が印象的で、きれいな黒髪。少し長めの前髪をサイドに流したクールなショートヘアが、大人っぽい顔立ちをくっきりと際立たせている。
 でも花純さんの方がもう少し柔らかくて女の子っぽい顔してるし、瞳だって花純さんの方が全然きれいだし。
 さっき藤川先輩に催眠かけたとき、ちょっとグラってきちゃったのは事実だけど、僕は断然、花純派だね。
 ちょっとグラってきておっぱいとかも触っちゃったしキスもしたけど、花純さんの方が全然可愛いからね。

『生徒会副会長。そのリーダーシップと決断力は、影の薄い現会長よりも生徒の支持を集め、今日も彼女に救いを求める迷える子羊たちは後を絶たない』

 生徒会室で書類を眺めるメガネ姿の藤川先輩。
 女子生徒がそこに近づき、なにやら切羽詰まった様子で語りかけると、彼女はメガネを外して立ち上がり、優しい言葉をかけ、そして女子生徒の頭を撫でた。

「きゃ~ッ!?」
「誰よ、アイツ!? 私の咲になれなれしいのよ!」
「撫でられたい! 咲お姉様に全身を撫でられたい!」
「俺も俺も!」
「先生もだ!」

 女子生徒が元気になって立ち去ったあと、藤川先輩はカメラに向かってウインクする。
 また黄色い悲鳴で体育館が揺れた。
 
『女子テニス部。1年生の時からエースとして部を支え、現在はキャプテンとして後輩の育成に力を注ぐ。中学生離れしたパワフルなサウスポースタイルはテニス界でも評価が高く、いくつかの高校からスカウトを受ける』

 前髪を額でゴムでまとめ、ボールをバウンドさせる藤川先輩。
 彼女のテニスウェア姿にまた体育館が黄色く響く。
 カメラは足元から舐め上げるように全身を映し、そして高く投げ上げたボールに向かってラケットを振り下ろす。
 強烈なサーブが対面のコートに向かって飛んで行き、ラケットを体の前に構えていた女子(どうやらさっきの生徒会に来た女子と同じ)がそれを受け、後ろのネットまでワイヤーアクションで吹っ飛んでいった。
 おぉ、と驚きの声が上がる。
 そしてスクリーンの中の藤川先輩が、スクリーンに向かって指ピストルでBANGする。

「きゃあああああッ!?」
「もう咲お姉様ったらお茶目!」
「あのヘアゴム、私同じの持ってるし!」
「みんなとっくに持ってるわよ、常識じゃん!」
「あぁん、もう、お姉様のヘアゴムになりたい!」
「私はラケットでもいい!」
「俺はアンスコ!」
「先生、ブラジャー!」

 会場は完全に藤川ワールド。女子も男子もスクリーンに映る先輩の姿に夢中になって盛り上がる。悪友と1年B組の担任が妙にノリが合ってるのがうざかった。

『そして今日、藤川咲の新たな伝説が生まれる―――』

 ホワイトライトの中で、藤川さんのアップ。
 濡れた髪ときれいな鎖骨。閉じられた瞳。セクシーなその姿に会場はますます盛り上がる。
 このPVは、放送部とご本人に催眠依頼して作らせた。
 内容は完全に丸投げでやってもらったんだけど、思ってた以上にちゃんと作られていた。午前中のほんの数時間しか製作期間はなかったはずなんだけど、さすがといえるレベルだ。
 スクリーンの中の藤川先輩が目を開ける。
 そして、彼女自身の声でささやく。

『―――藤川咲、脱ぎます』

 スクリーンが消え、会場が暗くなった。
 ギューンとギターの音がしたと思ったら、スポットライトがステージ中央の演壇に集中する。
 そしてその後ろからテニスウェアの藤川先輩が飛び出し、演壇の上に登り、ラケットをギターにように弾いてポーズした。

「いやあああああああッ!?」
「お姉様! お姉様!」

 地響きがするほどの歓声だ。
 ボルテージ上がりまくりの生徒たちが一斉に叫び、自然と手拍子が発生し、咲コールで会場が埋まる。
 
『ワオッ!? 咲お姉様、いつの間にそんなところに!? まさに咲イリュージョン! お姉様タイムの始まりね!』

 ステージの隅でアナルを見せたままの天崎が、それこそいつの間にか自分用のマイクを確保して喋ってた。
 何コイツ、さらっとこの流れに乗っかろうとしてるんだよ。
 お前の位置からだったら、先輩が隠れてるのずっと見えてただろうが。

「咲お姉様ー!」
「きゃああああああッ!」

 ステージでは藤川先輩がジャンプで演壇から飛び降り、音楽に合わせて踊り出す。
 両袖からテニスウェアを着た女子が数名出来てて、さらに彼女とフォーメーションで踊り出す。
 女子テニス部のみなさんにも協力を頼んでいた。
 午前中の数時間しか準備できなかったはずなのに、さっきのPVと合わせて本当によくやってくれた。これも藤川先輩の多才とカリスマと指導力の賜物だろう。
 適当に丸投げしてしまった張本人として、申し訳なく思うくらいのクオリティ。笑顔でキレの良いダンスを披露する藤川先輩はさすがというか、ドキドキしちゃうくらいチャーミングだった。
 
「あぁ、お姉様すごい! すごいよぉ! 今日は何の日なの、一体!」
「瞬きしたくない……この光景を、網膜に埋め込んでしまいたい……」
「藤川副会長キャプテンたそ~!」
「藤川ーッ! 先生をそのラケットみたいにしごいてくれ~!」

 急ごしらえとは思えないダンスのレベル。
 テニスの動きを取り入れたち、ラケットをギターやスティックに見立てて振り回したり、わりと高度なフォーメーション移動も使ったりとか、期待以上のステージに仕上がっている。
 
『ゴォ! ゴォ! ゴォ! ゴォ!』

 天崎もちゃっかりマイクパフォーマンスで加わりお尻をぷりぷりさせて踊り、ブラスバンドも音楽に参加し、生徒たちも跳ねたり踊ったりの大盛り上がりだった。
 やがてラケットを他のダンサーテニス部員に渡し、藤川先輩がステージ前方へ。テニススコートの中へ手を入れ、アンダースコートをずり下げていく。
 
「んほおおおおおおッ!?」
「きゃああああああッ!?」
「お姉様ダメ! それはダメ! でも……見せてぇ!」
「抱いてぇ、お姉様ぁッ!」

 笑顔でアンスコを足首から抜いて、部員に持たせる。そしてくるりとターンしてステージ後方へ。
 周りからダンサーが集まっていく。背中を見せる彼女の腰あたりに人の壁。そして、それが散ったあとには何事もなかったような彼女の背中。でも、その手に小さな布のようなものを持っている。指先でくるりと回してそれを投げ捨てた。
 下着だ。彼女は今ノーパン。短いテニスウェアの下は、何も穿いてない。
 
「いやああああああッ!?」
「今だ吹け、ブラバン! 風を起こせ!」
「どうしよう、濡れた。あたし濡れちゃった!」
「私も、私も脱ぎます、お姉様! だから、一緒に連れてってぇ!」
「いやぁ! やっぱり脱いじゃいや、咲っ。私、本当はずっと前からあなたのこと……ッ!」
「せ、先生もッ、先生もな、実は前から藤川と天崎と2年生の三沢とあとそれから……」

 ダン!
 激しい音と同時に音楽が止まった。
 静まりかえる体育館。
 いつの間にか下げられていた演壇の代わり、長テーブルが運ばれてくる。
 テーブルの脚の転がる軋む音。そして、ゆっくりとその前に立って、みんなに背中を向ける藤川先輩。
 彼女はテーブルに手をついた。ごくりと誰かが息を飲んだ。山下先輩がハンディカメラを持って彼女のお尻の前にしゃがむ。
 女子はもう泣いていた。
 男子は息をするのも忘れていた。
 藤川先輩は、その姿勢のまま、一度だけ深呼吸する。
 そして、ゆっくりと、じっくりと溜めて、彼女自身の手でスコートが持ち上げられ、お尻の上に乗せられる。
 
 巨大スクリーンに大写しになった、藤川咲のアナル。
 
 白く引き締まった双丘の中心で、濃く塗りつぶされたような皮膚の中心。誰もがそこに視線を奪われた。そして、息を飲んで沈黙した。
 藤川先輩が全校生徒の前でアナルを見せたとき、体育館に訪れたのは、それまでの一致団結したバカ騒ぎをウソにしてしまうかのような、静寂と戸惑いだった。
 まるで、長い夢から覚めたみたいに。あるいは夢の中で夢と気づいたみたいに。
 藤川咲がすごい生徒であることを、この学校で知らない者はいない。たった今も素晴らしい才能と実力を見せつけられたばかりだ。
 そんな彼女が、みんなの前でお尻の穴を見せるなど、ある意味でそれは裏切りだった。
 スターが絶対にやってはいけないこと。今日はそういうコンテストなのだと、催眠暗示で信じ込ませていてもなお、信じられない出来事だった。
 目の前の光景を、どう受け止めていいかわからずにいる。それがこの静けさの正体だ。司会である山下先輩ですら、喋ることを忘れていた。
 そして、彼女のアナルが、長い沈黙に耐えかねたかのように、キュッと縮こまる。
 可憐な少女を思わせるその仕草は、引き金となった。
 藤川咲はスターではなく、一人の女の子であるということ。その発見が彼女に対する愛おしさに変わり、そして新しいカリスマへと昇華される。
 次の瞬間、体育館は絶叫と興奮に爆発した。
 それを合図とするように、吹奏楽部も段取りを思い出して演奏を再開した。
 熱狂と感動が音の洪水となって、体育館を揺るがした。

『みなさん、ご覧下さい! あの藤川咲が、生徒会副会長が、ついにそのアナルを我々の前に、みなさんの前に晒しました! この美しさ! 神々しさ! とても不浄の場所とは思えません! これが我が校の第2位のアナル、藤川アナルでございます!』

 マーチが鳴り響く中、ただ立ち尽くし涙を流す者、泣き崩れる者、ズボンのポケットに手を突っ込んでモゾモゾさせる者、誰もがスクリーンの中のアナルに釘付けになり、見とれる。
 確かに見事な美アナルだった。お尻もきれいだった。オマンコは大きな絆創膏で隠してるあたりが、逆にエロい。中学生にしては成熟したお尻を突き出し、カメラに撮らせているあのポーズも本当にエロい。

「俺……ウンコでいいや」

 後ろで悪友がポツリと呟く。
 君がそれでいいなら、僕もいいと思うよ。
 やがて吹奏楽部の演奏も終わり、山下先輩のマイクに再びスイッチが入る。

『では、このアナルをご覧いただきながらインタビューしていきたいと思います。まずは藤川さん、おつかれさまでした。ダンス、キレキレでしたね』
『はい、ありがとうございます。ダンスは小学生のときに習ってたので、それを思い出しながらやりました。でも本番まで時間がなかったので、出来なかったこともたくさんあるのが、ちょっと残念です』
『そしてダンスはキレキレでしたが、アナルはキレもイボもない見事な美穴です。美しさの秘密はズバリなんですか?』
『あはは。まあ、そうですね、食事のバランスにはちょっと気を使ってます。あと、ウォシュレットのないトイレと肌に合わない石けんは使わないこと。それと、他にも理由があるとするなら……たぶん、私がまだ処女だからだと思います』
「うおおおおおおおッ!?」
「きたッ! 処女宣言きた! 天使はやっぱり実在するんだ!」
「お姉様、ありがとうございます! ありがとうございます!」
「信じていいんですよね!? 咲お姉様はミカエルの生まれ変わりだって、これからも信じていいんですよね!」
『きました、藤川咲の処女宣言! ものすごい反響です! 歓喜の嵐です! あのッ、その処女というのは、つまり後ろの穴も前の穴もってことで、よろしいんですね?』
『はい、そういう意味です』
「ぎゃああああああッ!」
「咲お姉様、好きです! マジ愛してます!」
「一緒に妖精に目指しましょう、お姉様ッ!」
「俺もお付き合いしますよ、先輩方!」
「先生ももちろん、魔法使いだッ!」
『大反響です、大熱狂です、これこそが本物のスター! スターのバージンアナル! とっくにヤられ済みだったアバズレ3位とは大違いです!』
『ゆ、結希のことはどうでもいいけど、ダーリンの悪口は言わないでくださいっ』
『あんたの悪口しか言ってねーよ! では藤川さんッ。最後にみんなに向かって一言お願いします!』
『えーっと、ごめん。さっき私のアナルはバージンだって言ったけど、それも出来れば近いうちに捨てたいなって思ってます』
「えええええええええええッ!?」
「ウソですよね、お姉様! 天使をやめて人間になりたいとおっしゃるんですか!?」
「それもまたよし! お姉様、不肖私でよかったら双頭バイブでお付き合いいたします!」
「ラケットですよね!? 咲お姉様のロストバージンは愛用のテニスラケットですよね、もちろん!」
「藤川副会長たそ~! 俺は準備万端たそ~!」
「藤川ッ! 先生も初めてだから、優しくしてくれよなッ!」
『あぁ、もう収拾のつかない騒ぎです! バージン宣言からまさかのロストバージン宣言とは、どこまで話題を独占するつもりでしょうか、この2位アナルっ。さすがにどっかのバカ3位が霞みすぎてかわいそうになってきました! 藤川さん、では、その、ロスト相手は、一体誰にっ!?』

 藤川先輩は、アナルを見せたままカメラを振り向き、ビッと人差し指を突きつけ、勝ち気そうな笑顔を見せる。

『1年A組の三沢蓮くん! 私のアナルバージンは君のものだよ!』

 会場が、割れんばかりの悲鳴と驚愕に響めいた。

『ちょ!? それ結希のダーリンだっつって紹介したばっかだし!? なんなのよ、この泥棒猫お姉様は!』
「おいおいおいおい、蓮、コノヤロウ! お前は本当にあの三沢蓮なのかよ!? いや、三沢蓮様でございましょうか?」
「アナル美少女3位と2位が、同じ男に陥落だとぉ? 公取委は何してんだよ!」
「お姉様ぁぁぁあああッ! ぅおねえざまぁぁぁぁああゲロゲロゲロッ!」
「保健委員、こっちにも担架急げ! 何やってんだよ、死人が出るぞ!」
「こっちにも、担架を頼む……ッ、先生、動悸とめまいと、NTRのゾクゾク感が止まらん……ッ」

 体育館は阿鼻叫喚の様相となっていた。
 藤川先輩は僕の方を見てニコリと微笑む。
 花純さんも不安そうに僕を見ている。
 僕はニッコリと微笑みを作り、藤川先輩と花純さんに頷いた。
 全て仕込みどおり。
 あとは、第1位の発表だ。

『藤川さん、ありがとうございました。そこのバカと一緒に1位の発表をアナル丸出しでお待ちくださいっ。みなさん、コンテストはまだ続いております! お静かに! お静かにィ!』

 いつまでも騒然とする会場に向かって山下先輩が絶叫する。
 今こそ、アナルで水戸黄門ネタをって急に思いついたんだけど、あいにくここからじゃ仕込みが間に合わない。第2回があれば絶対使おう。

『女子生徒たちの美とアナルを競うこのコンテストも、波乱に次ぐ波乱、ハプニングに次ぐハプニングで異常なまでの盛り上がりです! さあ、残るはいよいよ第1位ッ! この、上がるところまで上がってしまったハードルを越えてくるのは、一体誰だッ!?』

 ざわつきはまだ続いているが、話題は次の第1位にシフトしていた。
 第3位の精液アナル。そして第2位のショータイムと思いがけないネタが続き、会場の期待値は上限を振り切ろうとしている。

「……なんか、私じゃないのはわかってんだけどさ。ここで名前呼ばれるのは絶対いやだよね」
「呼ばれたら死ぬよ、マジで。想像しただけでお腹痛い」
「藤川先輩、やりすぎだもん」
「ハードルじゃなくて壁だよね。これ、誰が越えられんの?」

 しかし、その期待に反比例して、場内では1位の人への同情も集まり始めていた。
 花純さんの方を見ると、真っ青になっている。
 始まる前にはさんざん「優勝候補」などと煽っていた周りの人たちも、気まずそうに下を向いていた。
 確かに藤川先輩は期待以上にやりすぎだった。エンターテイメントもやれちゃう人とは僕も思わなかった。次の人が何をやっても、彼女ほど盛り上げるのはもう無理だろう。
 有能な人って、ほんと悪気もなく後続者を生きづらくしてくれるよね。優惟姉さんの弟を13年もやってる僕は身に染みて知っている。まさにハードルじゃなくて壁だよ。
 だからもちろん、花純さんのことだってほっとくわけがなかった。

『それでは、栄光の第1回アナル美少女コンテスト第1位は!?』

 吹奏楽部が本物のドラムロールを響かせる。
 スポットライトが会場を巡る。
 そして、すでに察した周りの人間が待避済みの2年C組上空にスポットが集中し、ポツンとうなだれた少女がライトに浮かび上がる。
 
『2年C組、三沢花純! あなたが神だーッ!』

 一斉に拍手と歓声が沸き起こる。
 自分ではなかったという安心感と、やっぱり三沢花純だったかという王道感。
 会場は優勝者への賞賛に湧いた。
 しかし、やがてその喝采も、輪の中央にいる少女の哀れな涙声に静まり返った。

「……ひっく」

 花純さんは、光と拍手の中、肩を振るわせていた。
 そして小さく丸めた手で、ほっぺたを拭う。
 
「えぐっ、うっ……む、無理です……辞退しますぅ……ひっく」

 無理だよね。
 こんなの無理だよね。
 わかるよ、本当によくわかる。僕が花純さんだったらって思うだけでお腹が痛くなるもん。今すぐ駆け寄って抱きしめてやりたいよ。
 シン、と会場も静まりかえった。花純さんの嗚咽だけが切なく響く。
 ……ぱちぱちぱち。
 だが、再び静かに拍手が起こる。
 徐々にその拍手の輪は広がり、花純コールに変わっていく。

『三沢花純さん! どうぞ、ステージまで来てください!』
「か、す、み! か、す、み!」
「がんばれ、花純! あんたが1位なんだよ!」
「そのままステージ上がればいいんだ、三沢! そのままでお前は俺たちの天使なんだよ!」
「えぐっ、そ、そうじゃなくって……なんでお尻の穴の順位なんて決めてるのよ、バカみたい……ひぐっ」
「あぁ、俺たちはみんなバカだ。そしてお前がバカの第1位だ! 堂々とアナルを見せてやれ!」
「花純なら出来る。だって私たちまだ中学生だもん! 可能性の卵だもん!」
『みなさん、三沢さんにもっと声援を! 私たちのアナルクイーンに勇気を!』
「か、す、み! か、す、み!」
「花純先輩たそ~、花純先輩たそたそ~」
「三沢ー! せめてアナルだけでも先生に見せてくれー!」
「な、なんなの? なんなのよぉ、これ……」

 遠目に見れば、中学生らしく純粋で美しい友情のシーンだと思う。
 でも、花純さんにとっては地獄の光景にしか映らないだろう。
 催眠暗示によりアナル大正義となった人類と、唯一まともな理性を持つ花純さんとの間にある認識差。
 どれほどの声援を受けようとも、花純さんが「よし、アナル出すか」なんて気持ちになるはずはない。
 彼女はまともだ。お尻の穴なんて人に見せるものじゃないし、セックスに使うなんてばっちいに決まってる。
 しかし、だからこそのアナル教育だ。
 その常識を教育と調教で歪めてやる。非常識で追いつめて、非常識に染めてやる。
 僕の次なる矢は、すでに放たれていた。

『花純ッ!』

 突如、マイクが割れるくらいの叫びが響き渡る。
 ステージには山下先輩と2位3位の藤川先輩と天崎。
 そしてもう1人、マイクを握ってお尻を向けている女子生徒がいた。

「お尻!? てか、鈴佳!?」

 本日2度目のお尻サプライズを、彼女は見事に成功させた。。
 鈴佳さんの長い髪と、長い足。そしてスカートを腰に巻き込んでパンツはすでに脱いでいる。
 僕の精液が、まだそこに生々しくこびり付いていた。

『花純、おいで。こっちへ来て、アナルを見せなさい。私の、こんなアナルなんか比べものにならない本物のプラチナアナルを、みんなに見せてやって!』
『……ちなみに、彼女は2年C組の河島鈴佳さんです。なかなかの美少女っぷりとアナルですが……ひょっとして、またせーえき出てきてます?』
『はい、花純の弟とアナルセックスしましたから』
「うおおおおおおおおッ!? 蓮、お前、全然たそがれてねぇじゃないかよ、このアナルのエロ戦士が!」
「1年の三沢って何者なんだ!? ジャンプSQから来た転校生かよ!」

 会場はますます騒然となる。
 それは嫉妬というよりも、むしろ尊敬とか畏怖の感情だ。
 冷静に考えたら、確かに僕も自分の絶倫にちょっと引くな……。
 
『いつまでも泣いてんじゃないよ、花純っ。怖いなら、私が一緒にいてあげる。引き立て役でも何でもやってあげる。ズッ友じゃん、私たち! 弟とアナルセックスした私は、あんたの穴妹。穴姉ちゃんのためなら、私はいくらでも脱げるよ!』
「鈴佳……ごめん。ちっとも心に響かない……」
「カッコイイ、2人ともッ。ケータイ小説みたいだよぉ!」
「えぇぇ?」
「号泣だよ、もう、クライマックスだよ! 花純、ここで行かなきゃ、あんたもうヒロインじゃないよ!」
「か、す、み! か、す、み!」
「うぅ……」
「行け、花純! 私たちにいい場面見せて!」
「涙止まらないから、マジで! こんないい話ないから、マジで!」
「花純先輩たそ~! 鈴佳先輩たそ~!」
「三沢ーッ! 先生の嫁と娘と幼なじみになってくれーッ!」
「か、す、み! か、す、み!」
「う……うぅ……」
「か、す、み! か、す、み!」

 花純さんが、全校生徒の注目の中、真っ赤な顔をして少しずつ足を進める。
 この異常な場の中で、これが異常だということを知るただ一人となってしまった孤独は、十字架のように彼女の足取りを重くしていた。
 引きずるように歩く花純さん。
 それを上からアナルで見下ろす鈴佳さん。
 無知で感化されやすい大衆の愚かな熱狂と、真実を知る英雄の押し殺された絶望。誰かの手によって作られた偽りの正義の道を、それでも英雄は進まなければならないのか。
 僕の勝手な予想だけど、進撃の巨人のラストもこんな感じじゃないかなぁ、きっと。

『花純! もうッ!』

 よろよろになりながらステージに上がった花純さんを、鈴佳さんが抱きしめる。
 涙のハグに拍手が起こる。不覚にも僕まで感動しそうになった。
 でも、鈴佳さんや山下先輩に挟まれた花純さんは、いよいよ逃げ場を失った格好で怯えきっていた。
 
『さあ、花純、アナル出して! あなたのプラチナアナルで男子どもを失神させてやろうよ!』
『いやだよぅ!?』
『第1位なんですよ、三沢さんっ。名誉のアナルをご開陳する義務があなたにはあります!』
『もうやだぁ! 助けて、お兄ちゃん!』

 そしてその間に、こっそりステージ手前でスタンバイしていた僕がマイクの電源を入れる。

『花純、大丈夫。僕ならここだよ』
『お兄ちゃん!』

 体育館が再びざわついた。

『……え、お兄ちゃん?』
『い、今なんて言いました? 弟の三沢蓮くんを、お兄ちゃんって言いました?』
『そう、僕は三沢花純の兄です。年下で戸籍上の義弟だけど、彼女の兄なんです。なぜなら――、花純のアナルは僕が育てた』

 ざわっ。
 生徒たちに動揺が走った。
 そう、僕は弟にして兄である。
 アナルだけに兄である。
 
「一体どういうこと? 兄? 弟? どっち?」
「ひょっとして、アナルだけに兄であるってことじゃね?」
「え、アナル、あにある、兄であるって……? 聞き苦しいダジャレだな、それ。すげぇイライラする」
「本気で言ってるならセンス最悪だよね」
「でも私知ってる。花純、毎晩あの弟にアナルを洗ってもらってるんだって」
「マジか、弟になりてぇ」
「すげぇな、あの三沢蓮ってやつ」
「3位の1年と鈴佳はすでに貫通済みで、2位の藤川先輩からは逆指名。そして1位の姉にお兄ちゃんって呼ばせて毎晩アナル触ってるって、どれほどアナルに愛された男だよ」
「キングオブアナルだな」
「あいつ、俺の親友なんすよ」
「三沢ーッ! 先生のアナルも開発してくれーッ!」

 騒がしい愚衆どもは無視して、僕は花純さんに最大限の笑顔を向ける。
 大丈夫。君のお兄ちゃんはここにいる。

『花純、僕がついてる。怖がることないよ』
『お兄ちゃん。助けてくれるの?』
『花純のアナルは僕の大事な宝石だよ。どこに出しても恥ずかしくない。学校一のアナルだって僕も思ってる』
『……え?』
『出そう、花純。君のアナルがナンバーワンだってこと、みんなの前で証明するんだ』
『な、なんで? お兄ちゃんまでそんなこと言うの? 花純の味方じゃないの?』

 うん、まあ、味方は味方なんだけど。
 主犯もお兄ちゃんなんだよね。
 
『もちろん僕は花純の味方だよ。だから、花純のアナルをここまで育ててきたんじゃないか。大好きな花純のアナルだから』
『お兄ちゃん、でも』
『大丈夫。他のみんなだって思いっきりお尻の穴を見せてるだろ? 大丈夫なんだよ』
『ほんとに、大丈夫なの……おかしくないの?』

 花純さんは悪い夢でも見てると思ってるのかもしれない。
 それでも、僕のことは心から信頼している。最後の命綱となった僕の言葉を信じ、この非常識の海に飛び込む決心をつけようとしていた。
 僕は内心で、勝利宣言を上げようとしていた。

『じゃあ、お兄ちゃんも一緒にアナル出してくれる?』
『いやそれは違う。意味わかんない。出すのは花純のアナルだけだ。花純だけが出すんだよ』
『そんなぁ』
『僕がそばにいるから。一番近くで見ているのは僕だから。ね?』
『うぅ……わ、わかったよ……』

 観念したように花純さんはもう一度頷く。
 興奮に沸き立つ体育館。花純コールとスケベな野次。
 顔を真っ赤にして花純さんは俯く。僕はステージに上がり、彼女の背中を支える。

『さ、花純』
『うん……』
『お待たせしました、みなさん! いよいよ、ついに、ようやく、アナル美少女コンテスト第1位三沢花純が観念しました! 長かった! 待たされた! でも、脱ぎます! とうとうご開陳します、第1位の美少女アナルが!』

 長テーブルの前で背中を向かせる。鈴佳さんは目を細めて親指を立てる。花純さんはずっと僕の手を握っていた。汗ばんだ手はずいぶん冷えていた。
 怖いのだろう。恥ずかしいんだろう。この状況に納得もできてないはずだ。
 でも、それも実際にお尻を出してみれば納得できるよ。
 君が最高のアナルの持ち主であることは、揺るぎない事実だから。
 鈴佳さんが花純さんのスカートをめくる。
 淡いブルーの下着に、会場が「うおおおおおおッ!」と響めく。
 花純さんが僕の手を強く握った。

「お兄ちゃぁん……」
「大丈夫。僕に任せて」

 涙目の花純さんに優しく微笑み、僕は彼女の下着に手をかける。
 ビクッと身を震わせてお尻が緊張した。宥めるようにお尻を撫でて、もう一度下着を引っかける。
 ぷるぷる震える太ももが可愛い。必死に恥ずかしいのを我慢する花純さん。2位3位の前例にならって、これが当たり前のことだと、必死で思い込もうとしているのだろう。僕に操られている鈴佳さんたちと違って、彼女だけが本当にまともなのに。
 でも、そうして常識的に怯えていられるのも、あと少しだけ。
 昨日の女子トイレのように、汚いと思っていた自分のアナルが、今度は全校生徒にいっせいに賞賛されたとしたら、はたして花純さんだって「まともな中学生」のままでいられるだろうか。
 ずりっ。
 僕の手が花純さんのお尻を露わにしていく。
 絶叫が体育館に響く。
 まともじゃない中学生たちの枯れた声が、必死になってこの小さな少女を追いつめる。
 キュッと固く緊張したお尻に、えくぼが浮かんだ。

『大丈夫、大丈夫』

 ちっとも大丈夫なことじゃないのに、僕はそうやって花純さんを宥めながら、下着をぺろんと剥いちゃって、丸い肌を全てみんなの前に晒した。

「おおおおおおおおおッ!」

 興奮に酔っている会場に、花純さんは「ひっ」と小さい悲鳴を上げた。
 あいかわらずきれいな肌。きれいな形。僕の自慢の義姉のお尻。
 僕は彼女の手を強く握り返す。震える背中をさすって、悪魔がそうするように彼女に囁く。

「少し前に屈んでみようか? アナルがみんなに見えるように」
「む、無理だよぉ」

 花純さんの目から涙が零れる。
 山下先輩がお尻の前にカメラを構え、スクリーンに映像が転送される。花純さんがしゃっくりみたいな声で泣く。

「三沢ーッ! 早く見せろよー!」
「花純! いっちゃえ、いっちゃえ!」
「三沢さん! あなたのアナルが本当に咲お姉さま以上だっていう証拠を見せなさいよ!」
「花純先輩たそ~! 俺が食い入るように見てる~!」
「先生は、その先のことをすでに想像している!」

 体育館は熱狂していた。
 花純さんの弱々しい涙は、男子も女子も興奮させた。
 まるで集団レイプ。
 彼女を追いつめ、アナルを開かせることに、生徒も先生たちですら立場を忘れて夢中になっていた。

「深呼吸して。ゆっくりでいいから、少しずつ体を倒すんだ」
「……うん」

 花純さんは震えていた。
 2度、3度深呼吸した。
 そして前傾した。
 ゆっくりではなく、ガバっといった。
 花純さんは、覚悟を決めたらあとは一気なタイプらしい。そういう男気はあるよね、前から。
 だけど、いきなりの開陳は、僕を含めた全校生徒のタイミングを裏切り、攻め攻めムードだったギャラリーを逆にショック死寸前に追い込んだ。
 巨大スクリーンの中で、花純さんのアナルがパクっと顔を見せた瞬間に。

「ぎゃああああああッ!?」
「うそおおおおおおおおおッ!?」

 コントみたいに、一斉に全校生徒がひっくり返る。
 衝撃が電磁砲のように会場を突き抜け、みんなを吹き飛ばし、腰を抜かす者や泡を吹く者たちもいた。
 そして、あらためてスクリーンに大写しになった、我が中学最高のアナルに、誰もが衝撃を受ける。

「なななんだこれ!? こ、これが1位のアナルなのか!?」
「これアナルなの!? 天使じゃなくって!?」
「てか、女神ッ、ゴッドレスアナル!」
「あれ……? どうして涙が出るの……?」
「あはは、おかしいよ、これ。アナルを見ただけなのに……震えが止まらないなんて……」
「私、私ぃ、アナルのこと舐めてたっ。1位とか言ったって、所詮アナルじゃんって、心のどこかでバカにしてた……ぐすっ」
「ううん、たかがアナルって気持ちは私にもあったと思う。愛情を持って毎晩お世話するだけで、こんなにも美しくなるなんて、思ったこともなかった。バカよね」
「バカバカ、私のバカ! 私のアナルに謝れ!」
「俺、中学出たら旅に出るんだ。今日見たアナルのことを、世界中の子供たちに語って聞かせようと思う」
「なんてものを……なんてものを見せてくれるんだよ……こんなの、ただの奇跡じゃねぇか」
「やっぱり花純はすごいよ。でも、弟もすごい!」
「毎日こんなすげぇアナルと向き合ってきたんだもんな。俺ならとっくにアナルに溺れて廃人になってんよ。どんなメンタルだよ」
「ていうかさ。俺、じつはずっと前から花純のこと好きだったんだ。気持ちの強さなら誰にも負けないって思ってた。でも……あ~あ、負けちまったなぁ!」
「ありがとう、花純! ありがとう、三沢兄妹!」
「すげぇぞ、蓮ッ! ひょっとして俺が一番愛してのは、じつはお前なのかも……」

 確かに女の子のアナルというのは魅力的だが、今のみんなは花純さんのアナルのことが人智を超えた芸術になって見えている。ミロのヴィーナスの腰布を開いちゃったような感覚だ。中学生には強すぎる刺激だ。
 目をつぶったままプルプル震えている花純さんに、「聞いてごらん」と促してあげる。
 この歓声。この感動。
 誰もが花純さんのアナルを絶賛し、心の革命と平和に安堵し、一体感に包まれている。
 そして、藤川先輩と天崎まで。

「おめでとう、三沢さん。さすが、私がアナルを捧げると決めた男の妹ね。自分の未熟さを思い知らされたわ」
「ゆ、結希は全然負けたと思ってませんけど! でも……ダーリンとは、花純さんのアナルの方がお似合いかもしれません……ま、負けませんけど!」

 2位と3位がそれぞれ賛辞を述べる。アナル丸出し少女たちの美しい戦いと潔さに会場も拍手に包まれる。
 恥ずかしそうにしていた花純さんの頬も、徐々に違う意味での赤みがさしていった。

「わ、私のお尻の穴って、そんなに……?」

 感動の涙、賞賛の拍手。
 たとえそれがアナルであろうとも、容姿を讃えられて嬉しくない女はいない。
 緊張がとけてきたのか、僕の手を握る指も緩くなっていき、おそるおそる会場を振り返り、嬉しそうに自分のアナルを見つめる生徒たちに不思議そうな顔をする。

「みんな、花純のアナルが素晴らしいって褒めてるよ。さすが僕の妹だ。僕の愛したアナルだけあるよ」
「お兄ちゃん……や、やめてよ、恥ずかしいってば」
「どうして? 僕は花純のアナルを愛してる。セックスしたいって前から言ってるはずだよ。この気持ちを告白するのを恥ずかしいなんて思ったことはない。だって、花純のアナルは世界一なんだからね」

 真っ赤な顔で花純さんは僕を見つめる。僕はその表情で確信する。
 堕ちた。
 うっとりと染まった頬と濡れた瞳。歓喜と発情だ。この異常な状況を、彼女は幻想的な恋心に消化して受け止めようとしている。
 つらく孤独な戦いを経て、手を取り合って超えた難関の先にあった祝福と勝利。それを作ったのは、長い間愛してきたこの兄だ。
 今なら花純さんは、僕が何を求めても差し出してしまうだろう。
 多少の疑問や理不尽だって、周りに背中を押されてしまえば簡単に忘れてしまうに違いない。
 それがいわゆる、洗脳状態ってやつだよ。
 たたみかけるなら今だ。僕は彼女の手を離し、マイクを握って会場に向かって宣言する。

『ありがとう、みなさん! 花純のアナルは世界一です。僕は彼女のアナルを心から愛している! だから、彼女さえ許してくれるなら、今すぐここで、彼女とアナルセックスをしたいと思っています!』
「お、お兄ちゃん!?」

 会場に驚きとどよめきが走る。
 花純は僕を見つめたまま固まっていた。

『僕は毎晩、彼女のアナルをきれいに洗い、マッサージをして育ててきました。自慢のアナルです。そしてここに僕のオチンチンを突っ込みたいと思ったことも一度や二度じゃありません。毎回です。正直、限界です。今日、彼女は学校一のアナルだと認められました。もう僕だけのアナルではなくなったのです。でもそんなのはいやだ。みんなのアナルなんていやだ。僕は、全校生徒の見ている前で彼女のアナルを犯し、これは僕のアナルだと見せつけてやりたいんです』

 全員がポカンと口を開ける。
 無理もない。
 ある日、突然学校一の美少女アナルを決めるコンテストなどが開かれ、3位はセックス直後の精液だだ漏れで、2位はブラバンとダンサー従えて踊りながらアナルを開き、そして優勝者の肛門が弟にその場で犯される展開など、もしもこれがエロマンガなら、僕もシュールすぎてヌけないよって怒っているだろう。
 むしろアナルはもう飽きたって、とっくに見放してる。アナルへのしつこさが限界を超えてる。
 でも、彼らはみんな僕の催眠術でこのコンテストを心から楽しみ、盛り上がるようになっている。
 僕の兄妹アナルセックス宣言に対して、あっけに取られていたのもつかの間、まばらな拍手があちらこちらで起こり、やがて大きな声援となり、僕たちの応援となって帰ってくる。
 
「いいぞぉ、蓮ッ! それでこそ俺たちエロ戦士のリーダーだー!」
「花純ーッ! おめでとーッ!」
「やってくれ弟くん! 俺の愛した三沢を、俺の見ている前で犯してくれ! いっそ、その方が興奮できるかもしれない!」
「花純、がんばれ! ロストバージン、みんなで見てるよ!」
「三沢ーッ! 先生は2番目でもいいぞーッ!」

 簡単に盛り上がる生徒たち。
 花純さんはお尻をみんなに向けたまま、オロオロと視線を僕やみんなのところへ泳がせる。
 すでに状況に流され、お尻の穴をみんなに見せるとこまでやってしまった花純さんだ。
 このまま一気に持って行ける。

『花純。もし僕にヤられてもいいと思うんなら、自分の手でお尻の穴を開いてくれ。それを了解の合図にしよう』
「じ、自分で、なんて、そんな……」
「ますますいいぞ、蓮! お前は俺のアイドルだーッ!」
「三沢ーッ! 先生も瞳孔開いて見つめているぞーッ!」
「花純、いいじゃん、ヤらせてあげよう。今日がそのいい機会だよ」
「す、鈴佳。でも」
「三沢さん、して。最愛の人にアナルを犯してもらえるって、素敵な賞品じゃない。羨ましいけど、あなたにはその権利はあるわ」
「藤川先輩……」
「そうですよ、花純さん。結希、じつはダーリンの精液が乾いてきて、アナルが結構つらいんです。早くこれ終わらせてウォシュレット使わせてください」
「それは勝手に行けばいいじゃない……」
『花純。さあ、早く君の返事を見せてくれ』
「かーすーみ! かーすーみ!」
「かーすーみ! かーすーみ!」
「うぅ……」

 大衆は、他人事には無責任に盛り上がるものだ。
 どうすべきかわからなくなった花純さんは、やはり僕にすがるような視線を向ける。抱きしめたくなるくらい可愛い顔だ。
 僕はとどめの微笑みを浮かべる。
 
『愛してるよ、花純。他の子のアナルじゃ満足できない。僕が欲しいのは花純だ。学校で一番の花純のアナルだ。僕の自慢の妹アナルを、たっぷり愛させてくれ』
「お兄ちゃん……」

 瞳をうるうるさせて見上げる花純さんは、すっかり雰囲気にのぼせ上がっている。
 花純コールが続く中、見つめ合う僕らの間には言葉にならない甘い感情が行き交っていた。
 やがて、花純さんはそっと自分のお尻に両手を添える。
 山下先輩のカメラが待ち受ける前で、白いお肉に指が食い込み、そしてその中心で濃い色をして佇む少女の秘密の窄まりが、彼女自身の手で―――。

 開封された。

 男子生徒次々とその場にうずくまり、あるいはガニ股になって体育館のトイレに駆け込む。その後ろに、内股になって駆け込む女子生徒たちが続いた。
 心の弱さゆえに失神する者、感動の涙を流す者。彼らは互いに寄り添い、励まし合い、どこからか何故か「翼をください」の合唱まで聴こえる。
 藤川先輩からの乗り換えを宣言する新女神派と旧派たちの醜い争いも勃発したが、やがてそれも互いの女神アナルを褒め称えあう美しい終戦へと向かい、花純さんを頂点とする神話が学生たちの間で創作され、伝承されていく。
 今、アナルの伝説が誕生した。
 僕もさすがにここまで盛り上がることはないよなあと思うけど、とにかく僕たちの兄妹愛とアナルで学校は一つになったと、実感した。

『花純』
「お兄ちゃん……いいよ」

 とうとう、花純さんからお許しが出た。
 家でのアナル談義から始まり、アナル授業とか同級生との見せっことか、結構な無茶もしてきたけど、必死でここまでお膳立てして、ようやく花純さんのアナルが自身の手で開かれた。
 家族のみんな、先生、花純さんの友だち、ありがとう。
 まさに努力と友情の勝利だ。王道を行くフィナーレだ。
 僕は、初めてのセックスの時のように、激しく勃起している。
 全校生徒の前でペニスを晒すことすら快感に感じるくらいに、激しく僕は興奮していた。

『ご、ご覧下さい。三沢弟くんは本気です! 全校生徒、全校教師が見守る中、とうとう男性器を露出しましたっ。私、恥ずかしながら初めて目にするのですが……め、め、めっちゃ本気が伝わってくる形態です!』

 山下先輩は火照った顔でメガネを曇らせ、藤川先輩も真っ赤になり、天崎はぺろりと唇を舐め、鈴佳さんは気まずそうに視線を逸らし、花純さんはうっとりと目を細める。
 ギャーギャーうるさい観衆をよそに、僕たちは愛の世界に没頭する。二人だけの夢の舞台だ。でも、せっかく魅力的な女性がこんなに壇上に揃っているんだから、僕らの愛に花を添えてもらってもいいんじゃないだろうか。
 僕は、2位と3位の子にも、そして鈴佳さんにもテーブルに並んで手をつくように言った。
 会場はカオス的な絶叫と怒号に包まれたが、それもまたすぐに祝福と応援に変わる。
 学校はどこまでも僕たちの味方だ。

「わ、私はいいよっ。全然、圏外だし……」

 鈴佳さんは真っ赤になって手を振る。
 でも、それを遮るように花純さんが言った。
 
「鈴佳も来てよ。あたしをここに上げたのは鈴佳じゃん。一緒にしてもらお?」
「花純……いいの?」

 すでに花純さんは僕の洗脳にトロトロになっていて、どんな異様な状況も兄の愛だと受け入れる状態だ。
 不安そうな鈴佳さんに、花純さんは力強く頷く。そして僕も、仲の良い二人に微笑みを返した。
 鈴佳さんは恥ずかしそうに微笑み、彼女の隣で一緒にお尻を並べた。4つの桃尻中学生。いよいよアナル美少女コンテストも佳境だ。
 壮観。圧巻。大興奮。
 誰も踏み込んだことのない秘境の天然桃林のように、中学生女子たちのお尻がそれぞれの瑞々しさを誇って並んでいる。そして彼女たちの正面に回れば、選りすぐりの美少女フェイスが、初々しく頬を染めて僕を見つめ返してくれる。
 鈴佳さんも天崎も藤川先輩も花純さんも、文句のつけようのない美少女だ。もちろん、何も知らずに司会に徹している山下先輩のことも、僕は秘かにメンバーに入れてる。
 彼女たちこそ、我が中学の誇る三大美少女神(3人しかいないとは言っていない)
 そして女神たちを抱くのは、この僕だ。

< 続く >

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