放課後の催眠 第九話

充、鬼を引き出す

 明けて火曜の昼前、静香からメールが来た。

〈緊急の用があるから昼休みに電話して〉

 文面が素っ気ないだけに、ただ事ではない感満載だ。句点さえ打っていない。

「どしたの」

「あのね、相談に乗って欲しいんだ」

 充は、昼休みに入ってすぐ誰もいない屋上に上がって電話をかけた。コール一回で出たところをみると待っていたのに違いない。やはり、ただ事ではないとドキドキする。

「って、なんの?」

 緊張で声が裏返る。

「とにかく大変なの。緊急事態。何時に学校終わるの?」

「えっと、3時半に授業は終わるけど・・・」

「だったら、4時にたまプラーザに来て。駅前にある洋菓子屋さんのカフェで待ってるから」

 返事をする前に電話が切れた。

 充は通話終了の画面を眺めながら悪い予感に震えた。自宅で会わずに外を指定してきたということは両親にバレたか、それに近い状況を考えた方がいいのかもしれない。

 どうしたらいいんだろう? 事態の詳細がわからなければ善後策も思い浮かばない。昼飯を食う気もなくなってしまう。気を取りなおしたときには時間切れで購買でパンも買えなかった。落ち着かない気分のまま授業が終わり、充は大急ぎで駅へ向かった。

「アネキ・・・なにがあったの?」

 ハァハァと息を切らしながら席に座ると、先に来ていた静香に聞く。

「絵理が大変なの」

「へっ・・・?」

 理解できず、開いた口がふさがらないまま、充は静香の顔を見た。

「だから、絵理が大変なのよ。サークルの先輩と付き合っていたんだけど、それが非道い男だって今日わかって、なんとかしてあげなくっちゃ」

 静香は一気にまくし立てる。

「ちょ・・・ちょ~っと待った。事情はなんとな~くわかったけど、それが俺にどういう関係が・・・」

「私、わかってるんだ。自己暗示の方法教えてくれたとき、あんた、私にヘンなことしたでしょ。だから・・・でも、それはいいの。後悔してないから。それより、その力を使って絵梨を助けて欲しいの」

「アネキ・・・」

 静香にはバレていた。最悪の事態は免れたという安堵と想定外の提案に充は混乱してしまってまともな返事ができない。

「できないの?」

「い・・・いや・・・できると思うけど・・・その男のことを忘れさせればいいんだよね?」

 怒っている様子がない静香を前に、充はなんとか答えることができた。

「非道いんだ、藤本先輩。絵理からお金借りてギャンブルに使ってたんだって・・・それも闇の・・・で、お金がなくなったら、こんどは絵理を風俗で働かせようとして・・・」

「ヤクザみたいだね・・・」

「それ以下だよ。あんな男だと思わなかった・・・絵理は真剣だったのに・・・」

 静香はどこまで気がついているのか、それが充には心配だった。しかし、後悔はしていないと言っている。その言葉だけが充の心を支えていた。

「私の気持ちは、この前、充に言ったとおりだよ。だから、絵理を助けて欲しいの。あの子、取り乱しちゃって大変なの」

 充の気持ちを見透かすように静香が言った。

「あのさ・・・俺の催眠って独学で、どこまでできるのかわからないんだ。たとえば、その先輩に替わる存在として誰かを植えつけることならできると思うんだけど・・・単純に忘れさせるのは・・・どうかな・・・」

 充は浅田杏子のことを思い出していた。まさしく、あれは父親の呪縛だった。それを自分にすり替えただけだ。結果的にいい方向へ向かったが、あの強烈な情念を消し去ることは難しいだろう。絵理の場合も同様に思えた。

「どういうこと?」

「怒らないで聞いてくれる?」

「うん」

「アネキと俺が・・・その・・・ああなっちゃったのは、お互いにそういう気持ち・・・ってか、たとえばアネキが川に落ちた俺を助けてくれた気持ちの延長だったと思うんだ。俺もアネキのこと大好きだったし・・・半分くらいは、いたずらの気持ちもあったけど・・・でも、俺はうれしかったよ・・・」

「う・・・うん・・・」

「つまりさ、いくら催眠を使えても万能じゃないんだ。アネキが俺のことを心底嫌っていたら、誘導することは無理だし・・・それと、おんなじことで、好きな人を嫌いにさせることは、きっとできないと思う」

「あんた、誰かを植えつけるって言ってたけど」

「うん。一種のすり替えだね。気持ちの方向を別に向けるんだ。それならできるはずだと思う」

 思うどころではなく、実際に浅田杏子で実験済みだったが、そんなことを話せるはずはない。

「あっ・・・」

「なに?」

「それでわかった」

「なにが?」

「私・・・腐れ縁の不倫相手がいるって言ったでしょ?」

「うん」

「それを、きれいさっぱり忘れられたわけ」

「ごめん」

 反射的に充は頭を下げてしまう。

「いいの。むしろ感謝してるから・・・やっぱり、充に頼もうと思ったのは正解だったんだね」

「えっ?」

「あんた、絵理と付き合ってよ」

「そ・・・それは・・・」

「私、知ってんだよ。あんた、昔から絵理のこと好きだったでしょ?」

「あ・・・憧れてはいたけど・・・俺なんかガキだから・・・それに・・・」

「それに、なによ? 私にしたのに、絵理にはできないの?」

「だって・・・アネキは・・・」

「ばか。私たちの関係なんて続けられるわけないでしょ。あんたを他の女に取られちゃうくらいなら、絵理と付き合ってくれた方がずっといい・・・」

「もしかして・・・」

「なによ?」

「アネキって、その先輩のこと好きだったんじゃない?」

「・・・」

「・・・」

 しばらく気まずい沈黙が続く。催眠中に聞き出したことを言ってしまったのはまずかったかと思いはじめたころ静香が口を開いた。

「やっぱり・・・」

「えっ・・・?」

「姉弟なんだね・・・」

「なんで?」

「絆が深いっていうか・・・わかっちゃうんだね・・・頼むよ、充・・・あんたにしか頼れないんだ・・・」

 しんみりした口調で静香が言う。

「うん・・・アネキの気持ちもわかったし・・・とにかく、やってみるよ」

 そう答えるしかなかった。

 1時間後、静香と充は絵理の家にいた。

「そんなワケでさ。充が自己暗示の方法教えてくれるから、すこしは楽になると思うんだけど。私もビックリしちゃったんだけど、オーディションであんなに落ち着いていられたの自己暗示のおかげなんだ。それとも嫌?」

 静香は、これまでのことを、ざっと説明して、絵理に施術をすすめた。もちろん、二人の関係については話していない。

「うん・・・でも・・・そんなの・・・効くの?」

 ずいぶんと泣きはらしたらしく、絵理のまぶたは腫れている。

「このままでいるよりかは・・・いいと思うよ。気分が楽になるし」

「楽に・・・? こんなに悲しいのに・・・」

「大丈夫よ。ねっ、充」

 静香は話を充に振る。

「あの・・・絵理さん・・・もし、絵理さんが、いまの状態から抜け出したいっていう気持ちがあるんなら、きっと大丈夫だと思います。まだ、俺のこと子供だと思ってバカにしてるんだったら信じられないかもしれませんけど・・・幼馴染みじゃないですか。俺、絵理さんの役に立ちたいんです」

「ほんと・・・に・・・?」

 藁をもすがりたいという気持ちが絵理の目から伝わってくる。

「大丈夫です。安心してください。きっと楽になりますから」

 充は精一杯の笑顔で答える。

「わかった・・・」

 その表情に安心したのか、絵理は子供のようにうなずいた。

「じゃあ、はじめますよ。いいですか?」

 催眠には心の勢いが必要だ。歯車が回りはじめたと思った充は、たたみかけるように術へと移る。

「うん・・・」

「まずは、このペン先をじっと見つめてください」

 充はバッグの中から例の万年筆を取り出して言った。静香と充は、いったん家に帰り、着替えや準備を済ませてきたのだ。

「まだ、そんな気持ちにはなれないかもしれませんが・・・このペン先、金と銀とのコンビがきれいだと思いませんか?」

「充君・・・ありがと。あたしのこと気遣ってくれて・・・」

「だって幼馴染みじゃないですか。俺・・・絵理さんに元気になって欲しいんですよ」

 充はニッコリと笑って答える。

「うん・・・ありがと・・・」

 絵理はやっと少しだけ笑った。

「そうですよ。絵理さんには笑顔が似合ってます。さあ、ペン先を見つめてください。もっと、集中して」

「はい・・・」

 絵理は充に委ねる気持ちになったらしく指示に従う。

「そうです・・・ペン先を見つめていると、まわりのものがボヤけてきます。それでも、じっと見つめ続けてください」

「・・・」

 よほど真剣に男のことを忘れたいのだろう。絵理は返事もできないほどペン先に集中している。

 これなら簡単にかかりそうだ。充はこれまでの経験からそう思った。

 やがて、フランス人形のような瞳をした絵理の目つきが変わってくる。もう大丈夫そうだと判断した充は、ゆっくりと誘導をはじめる。

「ほ~ら・・・ペン先を見つめていると、気持ちがリラックスして身体が温かくなってきます。そう、でも疲れてきましたね。もう目を閉じてもいいですよ。それでもペン先は見えています。ペン先以外のものはなにも見えません。まるで、ペン先が暗闇の中に浮かんでいるように見えます。そうですね?」

 絵理がうなずく。

「あなたは、いま、自分の心の中へ旅をする入り口に来ています。ペン先が、だんだん暗闇に溶けていって、それと同時に心がリラックスしていきます。青い湖の水面をイメージしてみてください。あなたは湖の畔にいます・・・とても静かな湖で鏡のような水面です・・・水面はとても静かです」

 充は絵理の心を探るようにゆっくりとしゃべっていく。

「湖の水面に、一滴、一滴、しずくが落ちて丸い波紋を作っています・・・」

 iPhoneから効果音が流れる。

「この水滴はあなた自身。そして湖はあなたの心です。つらいことも、哀しいことも湖に拡散して心も身体も軽くなっていきます」

 誘導の言葉にアレンジを加える。

「水滴が落ちていくたびに暖かいなにかが、あなたを満たしていきます。そして、すべての水滴が落ち終わると、あなたは心の底にたどり着くのです。ほら、水滴が落ちていくたびに身体が軽くなって左右に揺れはじめました。まるでゆりかごのようです。とても気持ちがいいですね」

 充の言葉どおり絵理は上体を左右に揺らして微笑みを浮かべている。

 しばらく、その状態のままにしておくと、絵理は口を半開きにして、いまにも涎を垂らしそうな表情になる。

「もうすぐですよ。水滴の音が止まって、わたしがあなたの肩に手を置くと、あなたは心の底にたどり着きます。そこでは、わたしの声のほかは聞こえません。いいですね。わかったら、うなずいてください」

 絵理はコクンとうなずく。

「まるで宙に浮いているように身体が軽くなって、あなたはゆっくりと心の底に降り立ちます。ほら、もう。ここは心の底ですよ」

 充は絵理の肩に手を置いて揺れを収める。

「わたしは、あなたの心の声。ここには、あなたとわたしの他は誰もいませんし、誰も覗くことのできない、とても安心できる世界です。答えてください。わたしは誰ですか?」

「心の・・・声・・・」

「そうです。わたしは、いま生まれたばかりの心の声。いわば、あなたの分身です。目を閉じたまま、まずは質問に答えてください。話すことは解き放すこと。心がどんどん軽くなっていきますよ。いいですね?」

「はい」

 絵理はうれしそうに返事をする。

「では、あなたの名前と歳を教えてください」

「野中絵理。はたちです」

「学生ですね?」

「はい。青山学園大学の二回生です」

「男性経験はありますか?」

「はい」

 絵理は躊躇なく答える。

「何人ですか?」

「ふたりです」

「その二人の名前を教えてください」

「斉藤卓也と藤本良雄です」

「えっ・・・うそ・・・」

 横で見ていた静香が驚いたように言った。充は静香に催眠をかけていなかったことに気づく。

「斉藤君と・・・そんな・・・」

 静香はかなりショックを受けたように見える。

「導師降臨」

 このままではマズイと思い、充はキーワードを唱える。

「ねえ、どうして斉藤君と・・・どうして・・・どうしてなの・・・」

「あ・・・あれ・・・」

 充はちょっとパニくる。

「斉藤君と付き合ってたなんて・・・どうして私に話してくれなかったの?」

「アネキ・・・アネキの声は絵理さんに聞こえないから・・・」

 充は静香のそばに寄って小声でささやく。

「あっ・・・そうか・・・じゃあ、充が聞いてよ」

 そこではじめて静香の充はキーワードを変えていないことを思い出した。

「そんなに大切なことなの?」

「私たちにとってはね・・・」

「わかったよ。聞いてみるから、もう口出ししないでね」

 事情がありそうなので充は静香の言うことを聞くことにした。支障があることならば催眠で忘れさせてしまえばいいし、なんだか興味が湧いてきた。

「その斉藤卓也とはどれくらい付き合っていたんですか」

「付き合ってはいません」

「どういうことですか?」

「斉藤君は高校のとき演劇部で一緒で、静香とあたしと仲良しだったんです。でも、お父さんの仕事で海外に行くことになって、そのとき告白られたんです。でも、静香が斉藤君のこと好きだったの知ってたから断ったんです。だけど、思い出に一回だけって頼まれて・・・つい・・・」

「それで処女をあげてしまったんですか?」

「あたし、流されやすい性格で・・・あんまり斉藤君が真剣だったから・・・」

「ひどい・・・」

 静香がつぶやくように言った。

「もう絵理なんて助けなくていいよ。充、催眠かかってるんでしょ?」

「うん」

 押し殺したような、本当に怒っているときの静香の口調だった。あまりの剣幕に充は気圧されてしまう。

「やっちゃいなよ・・・こんなやつ・・・メチャクチャにして捨てちゃえばいいんだ・・・」

「えっ?」

「親友だと思ってたのに・・・許せない・・・でも、こいつに充はもったいないか・・・」

 静香は目に涙をためている。こうなると手に負えないは子供のころからわかっている。静香はそういう性格なのだ。

「本当の気持ちを教えてくれよ」

 充はキーワードを唱えた。

 静香の顔から怒りが消え、目が虚ろになる。

「シズカ」

「はい・・・」

「あなたは高校時代に好きだった斉藤君が絵理さんと関係を持っていたのを知って怒っていましたね?」

「はい」

「そして哀しかった。そうですね?」

「はい・・・」

 静香はポロリと涙を流した。

「自分の性格だと、このままでは友だちの関係を続けられない。そう思ってますね?」

「そうです・・・」

「でも、親友だったのに悔しい、このまま別れたくないという気持ちもある」

「そうです・・・どうしてそれを・・・?」

「わたしは、あなたの心の声ですよ。忘れましたか?」

「あっ・・・いえ・・・」

「あなたは充君と絵理さんを付き合わせようとした・・・・そしてメチャクチャにしろとも言った・・・どちらも本心だということはわかります。でも、いまのままでは、どちらを選んでも問題は解決しません。わたしが解決策を教えてあげましょう」

 充に悪計が浮かんだ。

「充君と付き合わせるのではなく、あなたが絵理さんを支配すればいいのです。謝らせて支配して充君とともに絵理さんを共有しましょう」

「どうやって・・・?」

「あなたが絵理さんを好きな気持ちと、憎む気持ちを掛け合わせてぶつければいいのです。これを使って」

 充がバッグから取り出したのは浅田杏子が使っていたバイブレーターだった。別れ際に支配の象徴として取り上げてきたものだ。なんとなく予感がして持ってきたのだ。

「・・・」

 静香は驚いた顔をして答えられない。

「あなたは充君に絵理さんをメチャクチャにして欲しいと言った。それは、あなた自身がそうしたいという願望の表れです。そして、その願望は愛情の裏返しでもあります。ならば、あなたがこれを使って絵理さんを悦楽の縁まで堕としてしまえばいいのです。それで、あなたの憎しみは消え愛情に変わり、絵理さんはあなたを裏切ることがなくなります」

 絵理の両親は父親の赴任先で一緒に暮らしていて2年間は帰ってこない。絵理は大学があるので自宅でひとり暮らしをしている。この先、静香と楽しむのにも、この家が使えるなら好都合だと充は思った。それに、絵理も含めて楽しめることを考えると興奮が収まらない。

「嫌ですか? このまま絵理さんと別れてしまうことを選びますか?」

「いえ・・・」

「絵理さんと性的な関係になることに抵抗がある?」

 できれば静香と絵理のレズシーンが見たいと思っている充は期待を込めて言った。抵抗があるなら、なにかしらの暗示をかければいい。

「じつは・・・驚いてます・・・」

「なににですか?」

「漠然とですが・・・絵理を抱きたいと思ったことが何回もあって・・・」

「親友ですからね。ごく自然なことです」

 充はゾクゾクする気持ちを抑えながら言う。

「いまが、そのときです。もう心の中にタブーはありません。充君と一緒に絵理さんを共有しましょう」

 充は静香にバイブレーターを手渡す。

「まずは、わたしが絵理さんに事情を納得させるので、それまで待っているのですよ。わたしの言うことをよく聞いておきなさい」

「はい」

「わたしの声が聞こえますね?」

 充は絵理の方を向いて言う。

「はい」

「これからは、あなたのことをエリと呼びます。いいですね?」

「はい」

「エリは静香さんが斉藤さんを好きだったことを知ってましたよね?」

「はい・・・」

「そして藤本という先輩もそうでしたね?」

「はい・・・」

 催眠状態なのに絵理はちょっと困った顔になる。

「今回、エリがひどい目に遭ったのは、ある意味、報いだとも言えます。ただ、それだけじゃ足らない。もっとひどい地獄がこの先待っているかもしれません」

「えっ・・・」

「藤本という先輩はあなたを売ろうとしました。そんな男が、この先、なにをするのか考えてごらんなさい。彼は女の血を吸って生きるダニです」

「ど、どうすれば・・・?」

「エリは、あなたを救ってくれる唯一の存在を裏切っていました。試練を受けなければいけません」

「唯一の存在・・・って・・・静香ですか?」

「そうです。なのに、エリは続けて親友を裏切ってしまった。

「どうすれば・・・?」

 絵理は不安な顔になる。

「かんたんです。吉川姉弟の愛を受け入れて支配下に収まればいいのです」

「支配下・・・?」

「まずは、二人からお仕置きを受けなくてはなりません。それが第一歩です。あなたは藤本先輩とのエッチに満足していましたか?」

「はい・・・」

「ほんとうに? 不満はなかった? 小さなことでもいいから言いなさい」

「あ・・・ちょっと自分勝手で・・・やさしかったんですけど・・・あたしを満足させるより自分が出す方が大切みたいで・・・その・・・」

「その?」

「あたしがイク前に・・・早くて・・・」

「ほら。満足してなかったんですね。わたしにウソをついても無駄ですよ」

「はい・・・すいません・・・」

「さて、エリはわたしが『わたしに還りなさい』と言うと、この夢の底へたどり着くようになります。反対に『あなたに戻りなさい』と言うと、夢の世界から現実に戻ります。わかりましたか?」

「はい・・・」

「これからエリは目を覚まして静香さんと充君によってお仕置きを受けます。どんなことをされても逆らえません。それどころか、静香さんや充君のすることは何でも気持ちがいい。たとえば、ぶたれても性的な快感を得ます。それは、いままで経験したことがないほどの快感です。あなたは逃れることができません。絵理はそういう女なのです。何度も絶頂を迎え、性的な快感に溺れるだけの存在となります。死んでしまうほどの快感を経験しないと、あなたは救われないのです。ですから、静香さんや充君のしもべとなり、身を委ねなさい。これが通過儀礼です。そうすることでエリの魂は救われて高みに行くのです。わかりましたね?」

「は・・・はい・・・」

 怯えた様子を見せながらも絵理は必死で返事をした。

「よし。いい子だ。エリは、もう充君の言うことに逆らえないのです。充君は、あなたの心の支えになりました」

 その言葉を聞いて、絵理は深くうなずく。

「シズカ」

 充は静香の方を向いて言う。

「はい」

「あなたも同じ。これからは『わたしに還りなさい』と言われれば心の底にたどり着き、『あなたに戻りなさい』と言われれば現実に戻ります。わかりましたね?」

「はい」

「エリに話していたことを聞いていましたね?」

「はい」

「それでは、目を覚ましてエリへお仕置きをしましょう。充君と一緒に。そうすればわだかまりが解け、三人の幸せな生活がはじまります。わかりましたか?」

「はい。わかりました」

「では・・・あなたに戻りなさい」

 充はすこし大きな声でキーワードを唱えた。

 静香と絵理が顔を見合わす。

「アネキ、はじめなよ。俺は最初は見ているから好きにしなよ」

「うん」

 静香の眼がキラリと輝いたのを充は見逃さなかった。

「絵理! 立ちなさい!」

 静香は絵理の前に仁王立ちになる。

「はい!」

 静香の剣幕に絵理はバネ仕掛けのように椅子から立ち上がった。

「よくも裏切ってくれたわね」

 その口調は炎のように鋭い。

「ご、ごめんなさい・・・裏切るつもりは・・・なかったの・・・ゆるして・・・」

「私のお仕置きに耐えられたらね。服を全部脱ぐのよ!」

「は・・・はい・・・」

 絵理は半泣きになって静香の指示に従う。しかし、かなりパニックに陥っているらしく、ブラウスのリボンを外そうとして手間取っている。

「ぐず!」

「きゃっ!」

 静香は絵理をベッドの上に突き飛ばした。

 花柄がプリントされたフレアロングスカートが捲れ上がり肉感的な太ももが露わになる。

「はやく脱ぎなさいったら」

 静香はロングスカートのホックを外し、ジッパーを下ろすと、一気にスカートを抜き取った。

「やぁっ! ゆ、ゆるして・・・」

「言ったでしょ。お仕置きに耐えられたらって」

 そう言った静香はメルヘン調というのだろうか、リボンがあしらわれたクラシカルなデザインのショーツに手をかける。

「言いなさい! 斉藤君とどこでエッチしたの?」

「ああ・・・ここ・・・ここです・・・」

「ゆるせない! じゃあ、ここで、あんたをメチャクチャにしてやる!」

 鬼気迫った顔で静香は絵理のショーツを剥ぎ取った。

「いやぁっ! こんなの・・・」

「やだ・・・もう、こんなに濡れてる・・・」

 絵理の脚を開いて秘所を覗き込んだ静香が言う。

「や・・・やだよぅ・・・」

 絵理は半泣きだ。

「そんなこと言って・・・こうされて感じてるんでしょ? 絵理って淫乱だったんだ。だから、私の気持ちを知りながら斉藤君ともエッチしたのね」

「いやぁ~っ!」

「嫌がる振りしても無駄よ。こんなに濡らしているんだから!」

 静香は蜜壺へ挿入した人差し指を絵理の顔の前に突き出した。その指先には蜜がベットリとついていた。

「舐めなさいよ。斉藤君のをしゃぶったみたいに」

 絵梨は首を振った。

「斉藤君のはしゃぶってないっていうの?」

 こんどはコクンとうなずく。

「じゃあ藤本先輩のは?」

「し・・・しました・・・」

「やっぱ許せない! はやく舐めるのよ!」

 そのやりとりを聞いて、充は静香の鬼を引き出してしまったのだと思った。しかし、動き出した歯車を止めることはできない。

 静香は無理矢理人差し指を絵理の口の中へ入れた。

「ぐえぇっ!」

 奥の方まで入れられて絵理はもどしそうな声を出す。

「ふん! いい気味。あんたは、いつもかわい子ぶりっ子して私のものを横取りしてた。子供のころからそうだった。藤本先輩に弄ばれたのはその報いよ。でも、そのままじゃかわいそうだから、私のものにして助けてあげる。感謝しなさい」

 静香の目つきはかなり危ない。

「充。見てないで手伝って」

 充の方を見て静香が言う。

「・・・」

 咄嗟に充は答えられない。どう返事をしたらいいのかわからなかった。

「服を脱がすの手伝って」

「わかった」

 充は絵理が着ているブラウスのボタンを外しはじめる。

「もっと乱暴に! 私の気持ち・・・わかるでしょ?」

「う・・・うん」

 充はボタンを外し終わると、ブラウスを強引に剥ぎ取った。美肌という言葉は絵理のためにあるのではないかと思えるほどで、縦ロールにした髪がかかった肩からバストにかけての滑らかな曲面が美しく目を奪われてしまう。

 絵理に見とれる充を見て静香の眼がつり上がった。指を強引に押し込む。

「あぐぅっ!」

 絵理は抗う言葉も口にできずにもがいた。その動きを利用して背中が浮いたタイミングで充はブラジャーのホックを外してしまう。

 露わになったバストを見て、充は「丸い」と思った。それほど絵理のバストはボリュームがあり肉感的だ。小ぶりな乳首がそそる。

「ぐうぅっ・・・んんん・・・」

 思わず両手でそのバストをつかむと、絵理は身体をくねらせてもがく。その動きが充の興奮を加速させた。浅田杏子のときは強姦ごっこのような感じだったが、いまは絵理を犯しているという実感がある。それに、絵理のバストは感動的に柔らかかった。充はその弾力に夢中になる。なにしろ子供のころから憧れていた絵理を自由にできるのだ。それだけでも昂ぶってしまう。

「やっ・・・やめて・・・ゆるして・・・ゆるしてください・・・ああっ!」

 静香が指を抜くと、絵理は悶えながら哀願した。

「ふんっ! 嫌がりながら感じてるくせに。この淫乱!」

「いやぁぁぁぁぁっ!!!」

 悲鳴とも言える喘ぎが部屋中に響く。

 静香は手にしたバイブレーターを根本まで一気に挿入していた。

 押さえ込むようにバストをつかんでいる充の手を持ち上げるように絵理は背中を反らせて痙攣を繰り返す。

 まるで釣り上げた魚が地面で跳ねているようだと思いながら充はバストの感触を楽しんでいた。

「あうっ! だめ! だめぇぇぇっ!!!」

 静香は目を血走らせてバイブレーターを激しく挿送している。

「あんっ! あんっ! あぁぁぁぁぁっ!」

 絵理が長く叫んで身体を硬くしたとき、静香はバイブレーターを引き抜いてしまった。

「あ・・・ああ・・・」

 気が抜けた声が絵理の口から漏れる。

「ふん。イかせてなんてあげないんだから」

 ものすごい眼差しで絵理を一瞥する静香。

「はぁん・・・」

 そんな静香を横目で見ながら、充が乳首を口にふくむと、たまらないといった様子で絵理は甘いため息を漏らした。

「そんなんじゃ、なまやさしい。充、もっと思いきり虐めなきゃ」

 静香がきつい口調で言う。

「う、うん・・・」

「あんたに言っても無理か・・・」

 生返事をする充を見て、静香は、なにかに気がついたように言うと服を脱ぎはじめた。そして全裸になるとバイブレーターを手にする。

「ひぐぅぅぅっ!」

 いきなり、またバイブレーターを挿入された絵理は言葉にならない悲鳴を上げた。

「こんなんじゃ気がすまない!」

 静香はそう言いながら激しくバイブレーターを挿送させた。

「んあっ! あぁぁぁぁっ! やめ・・・てぇっ!」

 絵理は身をよじらせて逃れようとする。

「充、しっかり押さえていて」

「やあっ! しず・・・か・・・ああんっ! や、やめてぇ・・・」

 激しく悶える絵理に、充は覆いかぶさる。

「んぐっ! んんんっ!」

 そして唇を重ねた。

 幼いときから憧れだった絵理。家族合同で旅行へ行ったのは何年前のことだっただろうか。姉と一緒に着替える絵理をひょんなことから覗いてしまったときから、充は絵理のことを異性として意識しはじめた、言わば初恋の女性だ。その絵理に、こんなかたちだがキスできたことに充は感激していた。

「んぐっ・・・うぅぅんっ!」

 跳ねる絵理の身体を押さえつけて充は舌を差し込む。

「そんなことしてないで、これで絵理を縛って」

 夢中になって充は気がつかなかったが、いつの間にかバイブレーターは引き抜かれ、静香の手にはカーテンをまとめるタッセルが握られていた。

「し、縛るって・・・どこを・・・?」

 充は静香の剣幕に押されて身体を離してしまう。

「手首。そうしてベッドに繋げるの」

「わかった・・・」

 絵理のベッドはパイプ製のもので拘束するには都合がいい。充が受け取ると、静香はもう一本のタッセルを持ってきた。

 ほとんど虚脱状態の絵理は充に手首を縛られ、静香にバンザイをする恰好にさせられてベッドに固定された。ボリュームはあるが伸びやかな肢体が強調されるポーズだ。荒い息で上下する下腹部が艶めかしい。

「うふふ」

 ふたたびバイブレーターを手にした静香の眼が妖しく光る。

「どう? 私と充に虐められる気持ちは?」

 静香はそう言いながらバイブレーターのスイッチを入れた。蜂の羽音のような音が部屋に響く。

「し、しずか・・・もう、やめて・・・おねがい・・・」

「だめ。こうしないと私の気がすまないの。それに、絵理だって救われないのよ」

 そう言いながら静香はベッドに近づいてバイブレーターの先端を乳首に当てた。

「いやぁぁぁっ」

 その瞬間、絵理の身体がビクンと跳ねた。

「感じやすいのね。そうやって斉藤君や藤本先輩をたらしこんだの?」

「ち・・・違うわ・・・そんなんじゃ・・・あああっ!」

 静香は空いた手で絵理のバストを握りしめるように揉んだ。

「まんまるで、かわいいおっぱい・・・男をたらしこむいやらしいおっぱい・・・」

「やっ! やめてぇぇぇっ!」

「私にこうされるのが嫌なわけ?」

「だ、だって・・・あたしたち女同士だし・・・親友でしょ・・・」

「裏切ったくせに」

「違う・・・違うの・・・聞いて・・・いやあぁぁぁぁっ!」

 静香はバイブレーターを一気に挿入した。そして、そのまま絵理に覆いかぶさって肌を合わせる。互いに潰し合って形を変えるバストが艶めかしい。

「絵理の肌・・・すべすべね・・・」

 そう言いながら、静香は男が挿送するような動作で肌をこすり合わせる。

「ああっ・・・どして・・・やっ・・・あああっ!」

 静香が手首のスナップでバイブレーターを小刻みに動かしているせいか、絵理は身体を震わせて登り詰めていく。

「そう簡単にはイかせてあげないんだから」

「ああん・・・」

 静香がバイブレーターを抜くと、絵理は落胆したようなため息を漏らした。

「いい気味だわ」

「どして・・・いじわる・・・しないで・・・」

「イきたいんでしょ? 縛られて感じるなんてヘンタイだね、絵理って」

 静香は絵理の耳を甘噛みしながら言う。

「くふん・・・そんな・・・あぁ・・・」

 耳も性感帯らしく、絵理は喘ぎながら答える。

「イきたいって言いなさいよ!」

「あうっ!」

 またバイブレーターが挿入されて絵理は背中をのけ反らせる。

「やっ! あっ・・・あんっ・・・あんっ・・・」

 手首の動きに合わせて絵理が高い喘ぎ声をあげる。

「だっ・・・だめっ! それっ! もう・・・あぁぁぁっ!」

 静香が乳首を強く吸うと絵理は震えながら絶頂を迎えようとした。

「へぇ。だめなんだ・・・」

 静香はまたバイブレーターを引き抜いてしまう。

「やん・・・いじ・・・わ・・・る・・・」

「私と充のドレイになるって言ったらイかせてあげるけど、どう?」

「あっ、あんっ! そんな・・・ああっ!」

 静香はバイブレーターの先端をクリトリスにあてながら言う。それも、触れるか触れないか微妙なところで焦らしている。その光景を見て、女じゃないとできないことだと充は思った。それに女同士のカラミはエロいという言葉を超越している。なにしろ憧れの絵理と特別な静香が絡んでいるのだ。興奮するなと言う方が無理だ。

「言いなさい! ドレイになるって!」

「いやぁっ!」

 またバイブレーターが挿入され、絵梨は叫びにも似た声をあげる。

「いやなら、こうしてやる!」

 静香はバイブレーターを激しく動かす。

「ああっ! だめっ! こわれ・・・ちゃうぅぅっ!」

「こうされるのが、いいくせに! 絵理の淫乱!」

「はうっ! お・・・奥に・・・あああああっ!」

 静香は根本まで挿入したバイブレーターを、さらに突き上げるように押し込んでいる。

「だめ! だめぇぇぇぇっ!」

 絵理はいままでにないくらいの激しさで背中をのけ反らせた。

「あぁぁぁぁ・・・」

 しかし、その直後に気が抜けたような声を出す。またバイブレーターが引き抜かれてしまったのだ。

「おね・・・がい・・・いじわる・・・しないで・・・」

「ドレイになる?」

 静香が凄味のある笑みを浮かべて言う。

「あたしが・・・わるかったから・・・」

「だから?」

「なる・・・なるから、おねがい・・・」

「ちゃんと言いなさい!」

「ああっ・・・ド、ドレイに・・・ドレイになりますから・・・おねがい・・・」

「私と充のドレイになるって、はっきり言いなさい!」

 獲物を追い詰めるような静香の口調には迫力がある。

「あたし・・・静香と充君のドレイに・・・なるぅぅぅぅっ!!!」

 言い終わる直前に静香はバイブレーターを挿入した。

「あうっ! ううんっ! ああっ! あぁぁっ!」

 女だけにツボを心得ているらしく、静香が手首を微妙に動かすだけで、絵理は蕩けたような表情になって悶えた。

「らめぇ・・・奥・・・来る・・・来ちゃう・・・うあぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 甘さを通り越した声で絵理はオーガズムを訴える。その光景を目の当たりにした充は我慢の限界だった。

「ア、 アネキ・・・俺・・・もう・・・」

「絵理としたいんでしょ?」

「う、うん・・・」

 充は生返事をしながら服を脱ぎはじめる。

「順番。まずは私を満足させなきゃだめ。絵理に見せつけてやるの」

 その言葉を聞いて、絵理は余韻で呆けたようになった目を静香に向ける。

「姉弟でエッチするなんてヘンタイだって思ってるんでしょ? でも、充は特別なの。どんな女でも虜になっちゃうんだ。私の後でしてもらえればわかるよ」

 血の繋がりのせいなのか、静香は充の能力をかなりのレベルで理解しているらしかった。

「充、来て。私が絵理を責めるから・・・後ろから・・・」

 静香は絵理に覆いかぶさって脚を開く。充は、その秘部がぐっしょりと濡れているのに驚いた。絵理を虐めてこんなになっちゃうなんてアネキってドSだったのかも、なんてことを考えながらも興奮が収まらない。

「アネキ、こんなになってるよ」

 ふとももの内側に蜜が垂れるほど静香の秘部は潤っていた。

「ああんっ! 自分でもわかんないの・・・すごく興奮して・・・」

 秘肉にすこし触れただけで静香は甘い声をあげた。

「どうせなら絵理さんに俺たちのエッチを見せながらオモチャでオナニーさせようよ」

「あんっ! 充の・・・言うとおりにするから・・・おねがい・・・」

 静香は、もうたまらないといった様子で身体をくねらせながら答える。絵理を責めたことで燃え上がってしまったらしい。

「絵理さん、俺の言うことが聞けるね?」

 もし言うことを聞かないようだったら、キーワードを唱えようと思った。

「これから、俺とアネキのすることを見てオナニーするんだ。そのオモチャを使って。できなかったらお仕置きだよ」

「ええっ・・・?」

 絵理は表情を凍りつかせた。

「できないの?」

「・・・」

 答えられずに口をパクパクする絵理。

「ふ~ん、そうか。まだ、その藤本とかいう先輩の方がいいんだ。だったら、お仕置き・・・いや、もう絵理さんを助けるのはやめるよ。アネキ、続きは家に帰ってやろう」

 充はそう言ってから静香の方を向いてウインクした。

「ほんと。やっぱり私を裏切るだけあるわね。ドレイになるって言ったくせに。嘘つき。こんな女だと思わなかった。いいわ。充の言うとおりにする」

 勘のいい静香は吐き捨てるように言う。

「や・・・お、おねがい・・・行かないで」

「だって、充の言うことが聞けないんでしょ?」

 生まれたままの姿で仁王立ちに冷たく言い放つ静香の背中から威厳というか、女王のようなオーラが放たれているように見える。これが演技なら役者としてひと皮剥けたんじゃないかと充は思った。

「だ、だって・・・」

「せっかく私たちが、あんたを助けようと思ったのに、これでお終いね。充、行きましょう」

 静香はそう言いながらショーツとブラジャーを着けはじめた。

「待って・・・おねがい・・・」

 絵理は涙を流しながら哀願する。

「ふんっ!」

 静香はにべもない。

「ごめんなさい・・・あたしが悪かったから・・・ゆるして・・・」

「あんた、自分の立場忘れてるよね?」

「い、いえ・・・もう・・・」

「だったら言ってみなさいよ。あんたは私たちのなんなの?」

「ど、奴隷です・・・」

「ふ~ん。なのに充に逆らったんだ。だから、もうお終い。縛られたままにして藤本先輩でも呼んであげようか?」

「します! しますから・・・ゆるして・・・お願いします!」

「なにを?」

「オ・・・オナニーです・・・」

 絵理の声は震えている。

「どうする? 充」

 静香は充の方を向いて言った。

「これだけ逆らったんだから、ただのオナニーだけじゃ許せないな」

 その言葉を聞いて絵理が青ざめる。

「ねえ、だったら私に任せてくれない?」

 静香の眼が光る。

「いいよ」

 静香に考えがありそうなので充は任せることにした。

「絵理! それ持って!」

 静香は絵理の縛めを解いて、ベッドの上に落ちているバイブレーターを差し出す。

「は、はい」

 諦めたようにバイブレーターを受け取る絵理。

「あんたがドレイだってこと思い知らせてやる!」

 静香の激しい口調に絵理は身を震わせる。

「四つん這いになって! そう・・・脚拡げて!」

 ついさっきまで静香に責められていた蜜壺がぐっしょりと濡れ、そのまわりにうっすらと生えている柔らかそうなヘアーが大陰唇にへばり付いているのが見える。その光景を見ただけで反り返った屹立の先端から先走りの汁が漏れる。

「うふふ、充ったら、そんなに欲しいの?」

「だって・・・」

「順番よ。もっと興奮させてあげる」

 静香が妖しい笑みを浮かべながら言う。

「絵理! ぼんやりしてないで、バイブのスイッチ入れて自分で一気に入れなさい!」

「は、はい・・・・あっ・・・あうぅぅっ!」

 静香の指示に従った絵理はバイブレーターを挿入して激しく喘いだ。

「どう? 見られながらオナニーするの。感じるでしょ?」

「ああっ・・・いわないで・・・ください・・・ああんっ・・・」

「これくらいで済むと思ったら大間違いよ。こんどは左手の指をお尻の穴に入れなさい。バイブはそのままで」

「そんな・・・ああっ・・・」

「あんたドレイなんでしょ? 口答えするんじゃない!」

「ああっ・・・はい・・・わかりました・・・ああっ・・・いやぁっ!」

 静香に言われたとおり左手を背中側にまわして中指をアヌスへ挿入した絵理は身体をくねらせながら喘ぐ。

「もっと深く! バイブも動かすのよ!」

「そんな・・・いやっ・・・ああっ・・・あぁぁぁぁっ!」

 下地ができていたせいか、見られることで感じるのか、それともアナルも開発済みなのか、絵理は一気に登り詰める。

「充」

「はい」

 充も思わず「はい」と返事をしてしまう。

「後ろから来て」

 静香はベッドの縁に両手をついてヒップを突き出した。

「う・・・うん。わかった」

 充は屹立の先端を蜜壺にあてがって静香の腰を両手でつかむと一気に挿入した。

「あぁぁっ! いい!」

 濡れきった蜜壺は限界まで膨らんだ充のものを容易に受けとめてしまう。

「す、すげぇ・・・アネキ・・・こんなになって・・・中が動いてて気持ちいいよ・・・」

 リズミカルに肉を打つ音が部屋に響く。

「あんっ! あんっ! あんっ!」

 それにシンクロして静香も甘い声を上げる。

「ああんっ! す、すごい・・・みつる・・・いくっ! いっちゃう!」

「絵理さんを虐めて、そんなに興奮してたんだ?」

 呆気ないほど早く登り詰めてしまった静香に充は驚いていた。

「そう・・・おねがい・・・だから・・・もっと・・・ああっ!」

「アネキってドSだったんだね」

「あんっ・・・そ、そうかも・・・でも・・・ああっ・・・充は別・・・もっと・・・あああぁぁぁぁっ!!」

 律動しながら両手でバストをつかむように揉むと、静香は激しく身体を震わせて絶頂を迎えた。

「アネキ! 俺も!」

 充は律動を速める。

「だめ・・・絵理に・・・」

「え・・・っ?」

「絵理に・・・飲ませないと・・・」

「う・・・うん・・・」

 どうやら静香に考えがあるらしいことを察した充は律動を止める。

「私のあれが・・・たっぷり付いた充のものを舐めさせたいの・・・」

「そ・・・そっか・・・」

 充が屹立を引き抜くと、静香はベッドの上に移動した。

「絵理、充の方を向いて」

 静香は手を添えて絵理を充の方へ向かせる。

「バイブは私が持ってるからお尻から指抜いちゃダメよ」

「あうんっ!」

 静香がバイブレーターを押し込むように持つと、操縦桿のように動かして喘いでいる絵理の向きを変える。

「充、こっち来て・・・そう・・・おちんちん持って絵理にくわえさせるのよ」

「うん」

 充は静香の言うとおりに屹立に手を添えて腰を突き出す。

「ほら、絵理。私のエッチな汁がいっぱい付いたおちんちんしゃぶりなさい!」

 静香の強い口調に一瞬ビクンと身体を震わせる絵理。その小さく開いた口に充は屹立の先端を持っていく。

「うはっ」

 テラテラと光る蜜を長い舌で絡め取るように舐める絵理の姿に、充は思わず歓声を上げてしまう。

「そう。いい子ね。私のエッチな汁、おいしいでしょ?」

「んぐっ・・・ぐぅっ!」

 屹立を口にふくんだタイミングで静香はバイブレーターを押し込んだ。

「充のおちんちんをこうしてあげなさい!」

「んあっ! ぐぅぅっ!」

 バイブレーターを激しく動かされて、絵理は身体をよじらせながら悶える。

「充、どう? 出ちゃいそう?」

「う、うん・・・すげぇ気持ちいいよ・・・」

「絵理! もっと奉仕するのよ! 充の精液一滴残らず飲み干しなさい。こぼしたら許さないからね!」

 そう言う静香の眼はかなりアブナイ感じだ。

「うわっ・・・すげぇ・・・」

 静香に言われたからか、屹立を転がすように舐める絵理の舌使いがいっそう早く、激しくなる。

「も、もう・・・出る!」

 そう叫んだ充は絵理の頭をつかんで引き寄せながら思いきり放出した。

「んんんっ!! げほっ! げほっ!」

 喉の奥に奔流を受けた絵理は咽せてしまう。その勢いで口の中に放出された精液が床の上に飛び散った。そして、絵理はベッドの上に突っ伏してしまい、バイブレーターもアヌスに入れていた指も抜けてしまった。

「だめじゃない! ぜんぶ飲めって言ったのに!」

「ご・・・ごめんなさい・・・でも・・・」

 絵理はまだ咽せながら涙目で答える。

「口答えは許さない! お仕置き決定ね」

「そ・・・そんな・・・」

「充」

「な、なに?」

 静香の口調にちょっとビビりながら充が答える。

「まだ元気そうね」

 静香の視線は、まだ萎えきっていない屹立に注がれていた。

「うん・・・」

「絵理とやりたいんでしょ?」

「うん・・・」

「やってもいいよ。お尻の穴にだけどね」

 静香は凄味のある笑みを浮かべながら言う。

「ええっ・・・」

「そんな・・・ゆるして・・・」

 充と絵理は同時に声を上げる。

「なによ。自分の指入れてあんなに感じてたくせに。藤本先輩にされたことあるんでしょ?」

 絵理はブンブンと音がしそうな勢いで首を振る。

「じゃあ初めてなの?」

 こんどは首を縦に振る。

「なのに、命令されたからってお尻の穴に指入れて感じるなんて、絵理って淫乱だね。充、犯っちゃいなさいよ」

「いや・・・こ、こわいの・・・」

「ほら、また四つん這いになって・・・お尻を持ち上げて・・・」

「いや・・・いやぁっ・・・」

 抵抗の言葉を口にしながら、静香に促されるまま膝をついてヒップを突き出す絵理を見て、充は催眠の効果で絵理のM性が覚醒したのだと思った。だったら、静香の言うとおり後ろの処女を奪うことが隷属の証になる。そこまで考えると屹立が天を向いた。

「うふふ。充ったら元気ね。そんなに絵理のお尻に入れたいんだ」

 甦った充のものを見て静香が笑みを漏らす。

「アネキも見てるだけじゃつまんないだろ? 絵理さんに、あそこを舐めてもらえばいいよ」

「それ、いいわね。どうせなら、絵理のあそこにバイブ入れながらやっちゃうのはどう?」

「う、うん・・・」

 浅田杏子にしたことを静香は知らない。なのに、昨夜と同じことをこんどは絵理にすることになった。もしかしたら、やっぱり姉弟の間で通じている何かがあるのかもしれないと思って、充はちょっとびっくりした。

「じゃあ決まり。絵理、自分でバイブ入れながら、私のここを舐めなさい。気持ちよくしてくれなきゃ許さないからね!」

 静香は秘部を突き出すように大きく脚を開く。

「ほ・・・ほんとに・・・?」

「イヤなの? あんたドレイでしょ?」

 静香の眼は、舐められたいのではなく、絵理にかしずけと語っているようだった。

「わ・・・わかりました・・・」

 まるで五体倒置のようなかたちで絵理は静香の股間に顔を埋める。

「んんっ・・・そう・・・うまい・・・じゃない・・・」

 その光景を見ながら、充は絵理の長くて尖った舌先を思い出していた。あのとき、亀頭のまわりを這いまわっていた舌が、こんどは静香の秘部を彷徨っているのだ。

「んあっ! そこっ・・・クリ・・・よわいの・・・ああっ!」

 静香の身体がブルブルと震え出す。

「ああんっ! ゆび・・・入れ・・・ちゃ・・・あんっ! ああんっ!」

 静香が悶えるのがおもしろくなったのか、それとも奉仕に目覚めたのか、絵理はクリトリスに舌を這わせながら中指を挿入した。

「くっ・・・くうっ!」

 痙攣しはじめた静香を見て、興奮した充はバイブレーターのスイッチを入れて絵理の蜜壺に突き刺した。

 絵理は身体をくねらせながらも静香への愛撫をやめない。

 ちょっと悔しくなった充は、浅田杏子の乱れ方を思い出しながら、バイブレーターを挿入したまま絵理のアヌスに屹立をあてがう。

「ひあぁぁぁっ!!!」

 ズブリと先端が潜り込んだとき、絵理は背中をのけ反らせて不思議な叫び声を上げた。

「絵理・・・犯られちゃったんだ・・・お尻の穴・・・いい気味・・・これで、もう私たちから離れられなく・・・なったんだよ・・・」

 まだ指を入れられているアヘ顔で、静香はうれしそうに言った。

「んあっ! あぁぁぁぁっっっ!!」

 結合が深くなっていくたびに絵理は悲鳴にも似た喘ぎをあげる。

「うふふ・・・後ろと前に入れられて、そんなに感じるの?」

 静香は絵理の髪を撫でながら股間に顔を引き寄せる。

「もっと舐めて・・・イかせてくれなかったら承知しないから・・・そうよ・・・あんっ・・・じょうず・・・」

 二穴に挿入されながら必死で静香をクンニする絵理。なにをされても感じてしまうという暗示をかけてあるから大丈夫だろうと思って、充は屹立を根本まで挿入する。

「いやぁぁぁぁっっっ!」

 たまらず絵理は悲鳴を上げた。しかし、その声は甘い。

「絵理ったら、お尻がそんなに感じるんだ。すごく淫乱なドレイだね」

「ああっ! 知らなかったの・・・こんなの・・・だめ! こわれ・・・ちゃう・・・よぅ・・・」

「充」

「なに?」

「おちんちん入れたまま横になれる?」

「こう・・・かな・・・?」

 充は絵理の腰を両手でホールドしながら正座するような恰好になって寝そべった。両足を伸ばすと、絵理は後ろを向いたかたちで騎乗位になる。

「そう・・・」

 静香は充の脚に跨って絵理の上半身を起こす。そして両手で絵理のバストを持ち上げるようにして揉みはじめる。

「あうぅっ! そんなにしたら・・・ああんっっっ!!」

 絶妙なタッチで乳首をつままれ、絵理は身体を震わせて悶える。

「うふふ・・・かわいいドレイ・・・ねえ、キスして欲しい?」

 静香の言葉に絵理がうなずくのを見て充は驚いた。

「だったら、もう一度言いなさい。絵理は私たちのドレイだって。そして、なんでも言うことを聞くって」

 静香は自分が術師になったつもりなのか、自己暗示をかけるような言葉を口にする。

「あたしは・・・奴隷・・・もう・・・静香と充君の・・・奴隷・・・です・・・」

「エッチしてるときは私たちのことを様を付けて呼びなさい!」

「ああんっ・・・わ、わかりました・・・静香様・・・あうっ!」

 静香はバイブレーターを深く押し込んでいた。

「ほら、言いなさい!」

「ああっ・・・静香様・・・キス・・・して・・・」

「いい子ね」

 静香は絵理を抱き寄せて唇を重ねた。そして右手でバイブレーターを激しく挿送させた。

「んんんっっっ!! んんっ!」

 絵理の身体が跳ねるように痙攣する。

 その刺激が充にまで伝わってくる。

「で、出る!」

 ひとこと叫んだ充は絵理の肛内に思いきり放出してしまう。

「んんんんんっっっ!!!」

 声にならない叫びをあげて身体を硬直させた絵理は、次の瞬間、ぐったりと脱力してしまう。崩れ落ちる身体を静香が支えた。

「絵理・・・気絶しちゃったみたい・・・こんなになっちゃうんだ・・・」

 ゆっくりと絵理の身体を前の方に横たえた静香は驚いたように言った。

「だいじょぶかな?」

「いいな・・・」

「えっ・・・?」

「だって、気絶するくらい感じるのってどんなだろ?」

「だって、ふたりから責められて、おまけに道具まで使われちゃったんだから」

「なんか悔しい・・・」

「アネキ・・・もしかして・・・」

「・・・」

 静香は顔を赤くしてうつむいてしまう。

「俺・・・アネキのためだったら・・・まだ、できるよ・・・」

「えっ・・・?」

「アネキも、おんなじにしてあげるよ」

「充のせいだからね」

「なにが?」

「私がヘンタイになっちゃったの・・・」

「うん。俺のせいかも・・・でも、もう一線を越えちゃったから・・・」

 催眠で隠れた欲望や感覚を呼び起こしたに過ぎない。でも、ここは自分のせいにした方が丸く収まる。充はそう思った。

「洗ってきて」

 静香は充の股間を見て言う。

「わかった」

 たしかに萎えたものから匂ってきそうな気がして充はバスルームに向かった。

 まだ気を失っている絵理の隣で絡み合う静香と充。

 バイブレーターを挿れられた静香の乱れ方は凄かった。絵理にしていたことを、そっくりそのまま充にされることを静香は望んだ。

 蜜壺にバイブレーターを、アヌスに屹立を挿入されて、静香は「私も充のもの」だと繰り返しながら絶頂を迎えて意識を失った。

 それは対抗意識からなのか、それとも催眠をかけられた副作用なのか、充にはわからなかった。いずれにせよ、自分もおかしくなってしまったのだと充は思った。しかし、だからといって後悔の念はない。

 考えてみれば、まだ絵理とはちゃんと結ばれていない。こんどは二人きりで思いきり楽しんでやろうと考えている自分に、充は苦笑いするしかなかった。

< つづく >

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