とある王国の悲劇 剣姫編6 前編

剣姫編 6(前編)

「姫様ぁぁっ! 御無事ですかっ!」
 剣姫が斬られたのを見た爺は、半狂乱で走り寄った。
「大丈夫だ」
 振り返った剣姫は血に塗れているものの、大して出血も無い様に見えた。
「まさか……そんな……」
 爺は怪訝に思った。
 爺とて一流の剣士である。
 あの一撃でどの程度の怪我を受けるかは、経験で分かる。
 だが、剣姫の怪我は爺の経験からすると軽過ぎた。
「爺」
 呼ばれて爺はハッとした。
「仕方が無い。この機に計画を実行するぞ」
 殿下の首を大事そうに抱えて言う。
「兄上の死を無駄にせぬ為にも……な」
 その目には深い後悔があった。
「……わかりました。すぐに皆を動かします」
「頼むぞ」
 爺が駆け出そうと踵を返す。
「爺」
 それを剣姫が呼び止めた。 
「――王の間には誰も近付けるな」

「来たか」
 王は玉座に悠然と座って待っていた。
 城内の騒ぎで事態は大方読み取れていた。
 王とて馬鹿では無い。
 こうなる事はとっくに予想していた。
「意外と遅かったな」
「私としては速過ぎるくらいです」
 対峙する剣姫は平服に剣を下げたまま、ゆっくりと間合いを詰めていく。
 そこには一切の油断も隙も無かった。
「ほぅ、どの道俺は排除するつもりだったのだろう?」
 そこで静かに立ち上がる。
「兄や隣国の王女、弟のように、な」 
 そしてゆっくりと剣を抜く。
「それは違います」
「ほぅ?」
 王が疑いの目を向ける。
「私としてはまず兄上に即位して頂き、正式に父上に隠居して頂くつもりでした」
「幽閉……の間違いだろ?」
 王が嘲る。
「それは父上の態度次第です」
 姫はあくまで冷静だった。
「その後、王子と王女は辺境の地ででも、静かに暮らしてもらうつもりでした」
 ゆっくりと王に近付いて行く。
「全ては弱い者の気持ちを理解出来なかった、私の過ちです」
 その瞳に悲しみが宿る。
 そして剣を王に向けた。
「その過ちを正す為にも、父上には今ここで退場願います」
 静かに宣戦布告した。
「出来ると思うか?」
 王も剣を構え、挑発的に問い質す。
「やってみせます」
 姫が一気に間合いを詰めようと、腰を落とした。
「……甘いな」
 王が足元にあった包みを蹴り上げ、素早く手に取る。
「俺が勝ち目の無い戦をすると思うか?」
 包みを剥ぎ取ると、そこにはやや小さめの壺があった。
「何を?」
 それを見た瞬間、姫の頭に直感が走る。
 ――躊躇するな。 
 ――あれを破壊しろ。
 壺を見た一瞬で姫の判断は下された。
 疾風の如く走り、壺に向かって一撃を放つ。
 達人であっても見切れない、恐るべき速度だった。
 だが王もまた、ただ見ていただけでは無い。
 壺の口を姫に向けた。
 ただそれだけだった。
 その為、速さで姫の一撃に勝った。
 壺の口が姫を捉えると、そこから闇が漏れた。
 いや、黒い光とでも言うべきか、それが姫に放たれた。
「なっ!」
 その光に姫は跳ね飛ばされ、床に転がる。
 そして、体から急速に力が抜けていった。
「これは……いったい?」 
 あまりの事に姫が動揺する。
「はははははは」
 王の嘲笑が響いた。
「俺がお前の正体に気付いておらんと思ったか?」
 王が壺を向けながら歩み寄る。
「俺が元冒険者だった事を忘れたか?」
 その間も姫から力が抜けていく。
「人間に憑依し、体を操る魔物や霊を何度も見たさ」
 姫が残った力を振り絞り、王を睨む。
「お前も、その類の魔物だろ?」
 王が姫の側に辿り着いた。
「この壺はな、そんな魔物を引き剥がす為の物なのさ」
 剣を床に突き刺し、倒れこむ姫の衣服を剥ぎ取った。
「そら、正体を現せ」
 その言葉と共に、壺の周囲に文様が浮かび上がり、光が一層強くなった。
「ァァげッァアァァごッァあぁがァァぁァァアァかァアぁぁァァカァっ!」
 姫の口から人間とは思えぬ絶叫が上がる。 
 ――次の瞬間。
 姫の口から黝い、液体とも固体とも見えるモノが噴出した。
 遅れて秘部からも大量に溢れ出す。
 それらが全て壺の中に吸い込まれて行く。
 小柄な姫の体の何処に入っていたのか、信じられない程の量が吸い込まれた。
「っごはぁぁっ!」
 姫の苦しげな叫びと共に、黝きモノは止まった。 
 姫はぐったりと仰向けに倒れたまま、その目には力が無かった。
「全部出し切ったか?」
 王が言い、姫の裸身を舐めるように見る。
「魔物に1つ感謝しないとな」
 下品な笑みを浮かべた。
「こいつに女の色気を与えてくれた事にな」
 舌なめずりをした。
「それとな、この壺には面白い機能があるのさ」
 姫に意識がある様には見えない。
 王は1人喋り続けた。
「限定的だが、奪った力を使えるのさ」
 そう言うと、壺から数本の触手が噴出した。
「……ほう、こういう力か」
 王は楽しそうに言う。
 触手は姫に殺到し、抵抗を見せない美しい体を這い回った。
 胸、頬、腰、腹、脇、腕、髪、足、耳、背、肩、尻……。
 触手はその凶暴な外観に似合わない、優しげな動きで姫を愛撫した。
「あ……あぁ……あぁあぁぁ……」
 姫が僅かに反応する。
 王は暫くその様子を眺めていたが、そろそろ飽きてきた。
「ほら、いい加減起きろ」
 そう言うと、王は姫の側にしゃがみこみ、頬を張り飛ばした。
「がっ!」
 衝撃で姫が目を覚ます。
「こ……これはっ!」
「ようやくお目覚めか」
 王が顔を寄せて言う。
「良い夢見られたか?」
「貴様っ!」
「親に向かってその物言いは何だ?」
 王は下品に笑う。
「躾が必要だな」
 その言葉と共に触手が動きを変えた。
 触手の1つから針が飛び出し、姫の首筋に突き立った。
「あぁっ!」
 姫が悲鳴を上げる。
 ――次の瞬間。 
 姫の体がビクッ、ビクッと震える。
 体を焼くような熱さ、痺れるような衝撃に翻弄されるばかりだった。
「まさか……これは……!?」
 体の中で何かが蠢き、圧倒的な快感が生まれる。
 甘く蕩ける快感の波。
 その波が姫の中にどんどん広がっていく。
「ぁあ……あぁっぁぁ……」
 姫の口から甘い声が漏れる。
 だが、精神を集中し全身に力を込める。
 そうする事で、何とか流されそうになるのを堪えていた。
「……ほぅ、そこまで耐えるか。流石は我が娘だな」
「なぁ……ぁぁっにぃ?」
 姫は王を睨みつけた。
 その刺すような視線を王は平然と受け流す。
「そんな色っぽい顔で睨まれても、な」
 王が手を伸ばし、姫の肌に触れる。
「誘っているようにしか見えんぞ」
 王の指が、気持ち悪いくらいの優しさで愛撫する。 
「やぁぁっめ……ろおぉおぉぉ! さ……わぁ……ぁるぅぅうっなぁぁ!」
 姫が絶叫する。
 が、激しい嫌悪感も、すぐに甘い快感に変えられてしまう。
 王の指が全身を這い回る感触に、腰がひとりでにくねり声が漏れる。
 押し寄せる信じられない快感に、我を忘れそうになる。
「こぉんなっ! ことでぇぇ! ま……けぇ……るぅ……わけぇにぃぃぃ……わぁあ!」
 そんな姫の抵抗を楽しむように、王が愛撫を続ける。
「そろそろ楽になっちまえよ」
 そう言うと、触手がするすると姫に伸びる。
 そして姫の首筋に細い針を刺し、何かを注射した。
「ああぁぁあああァアアァァッぁぁァァアァアぁぁぁぁあっァアアァァあっァァァあ」
 その瞬間、姫の中で何かが切り替わった。
「うぁごいてぇぇ……も……もっとぉぉ……もぉっ……とぉぉ!」
 表情が淫蕩に変わり、はしたない言葉と喘ぎが漏れる。
 もう抗えなかった。いや、抗おうとも思わなくなった。
 体を襲う感触が堪らなく心地良く、愛しく思えた。
「ほぅ。意識の表層を剥ぎ取り、性の衝動を高めるのか」
 王は姫の変わり様にやや驚きつつも、興奮を隠せないでいた。
 また、触手の力に驚嘆した。
 自然と笑いが込み上げてくる。
「ねぇぇ」
 姫が艶かしく動く。
「ぁあぁ……ちょ……っうだぁぁ……ぃいいぃ……」
 姫は自ら足を大きく開き、腰を揺らめかす。
 秘部はすでに潤いきり、求めるように口を開いている。
「はっはっはっ、素晴らしいぞ」
 王は自らの男根を取り出すと、姫の秘部に擦り付けた。
「はぁやぁ……っくぅ! じ……ぃらさっ……ぁなぁい……いぃ! でぇぇ!」 
 姫は狂おしいまでにそれを求めた。
 そんな姫を嬲るかのように、王はゆっくりと秘部へ突き込んでいく。
「はぁぁい……っる! はぁい……って……っく……るぅうぅぅ……!」
 姫は淫らな表情で体をびくん、と仰け反らせた。
 自らの膣内をゆっくり押し入ってくる男根の感覚。
 それが頭が沸騰しそうな程の快感を生み出していた。
「ぃ……ぃいいくぅぅっ! ぃいぃぃっ……っちゃあぁぁうぅぅぅっ!」
 虚ろなを泳がせ、快感に揺さぶられるかのように頭を激しく振る。
「そうだっ! 身も心も俺に捧げろっ! 快感に狂えっ!」
 最も奥まで押し入った男根は、今度は入り口付近まで戻り、また突き込む。
 ゆっくりとした動きだった男根が、徐々に激しさを増していく。
「ぃ……いいぃ……いぃいのぉぉ! すぅぅ……ってぇ……きぃ!」
 それに比例するかのように姫の快感も増していった。
 姫は圧倒され、快楽に啜り泣いていた。
「すうぅぅ……ってきぃぃぃい! さぁぁいぃ……っこぉぉぉ!」
「良い乱れっぷりだなっ!」
 ひくひくと体を震わせ喘ぎ声を漏らす姫を見て、王が満足そうに言う。
「そろそろ仕上げだっ!」
 そう言うと、今まで以上に激しく動き出す。
「あぁっが! ひぃぃ! おあぉぉっああぁぁぁああォオアォオォああアアアァァッァア!」
 姫が目を見開き、悲鳴を上げるかのように口を大きく開き喘ぐ。 
 全身ががくがくと有り得ない動きをする。
「さぁっ! 存分に味わえっ!」
 姫が限界に達しようとした瞬間、男根が姫の中に大量の精液を吐き出した。
 熱い液体は姫の子宮だけでは収まりきらず、逆流して体外に溢れ出す。 
「あぁあっ! ぁぁああぁ! しぬぅっ! しっんっじゃあぁ! うぅうっ!」
 それは今までの快感を、さらに凌駕する快感だった。
 体が粉々になったように感じ、精神もまたそうだった。
 姫は意識を失い、体から一切の力が抜ける。
 もはや凛とした雰囲気は微塵も無い。
 顔は淫らに呆け、だらしなく開いた口からは涎が垂れている。
 その姿は、黝きモノに侵蝕された時と同じだった。 
 王は立ち上がり、姫を見下ろした。
「お前はよくやってくれたよ」
 王が笑う。
「お前のお蔭で俺の時代はまだまだ終わらんよ」
 王の高笑いが王の間に響き渡った。
 
 どの位笑っていただろうか。
 王が居住まいを正すと、まだ倒れている姫を一瞥した。 
 そしてゆっくりと王の間から歩み去ろうと歩き出した。
 ……扉を開けようとした時。

「ふふっ。楽しんで頂けましたか?」
 ――ふいに声がかかった。

< つづく >

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