さよならウィザード 第4話

第4話

「トーマ起きろー」

 ルナの細い指が僕のペニスに絡んで、ぷるぷると振り回された。
 ぼんやりとした頭がゆっくり覚醒していく。さらに彼女はべとっと僕の耳に舌で触れて、チュウと耳たぶに吸い付いてくる。
 うとうとしていたところを強引に起こされて少し不愉快な気持ちになったが、陰嚢を優しく揉みほぐされ、耳の中に甘ったるい息を吹き込まれ、徐々に反応していく僕のペニスはその快楽を程良い倦怠感を全身に行き渡らせて、彼女を無碍には出来なくさせた。

「ていうか、今何時?」
「4時。もう夕方だよ」

 今日は春休み最終日。ルナから『今からあんたんちに行く』とメールが来たのが朝の10時前だ。
 彼女が急に訪問してくるのはいつものこと。目的もわかっていた。
 どうせ僕を犯すつもりなんだ。同人誌みたいに。
 うちの家族はルナのことを僕の恋人だと思ってるらしく、彼女もまた調子のいいことに僕の親の前では行儀良くしているので咎められることもない。彼女は自分がしたいときにやってきて、こうして僕とベッドを共にする。

「まだ出来るよね?」

 彼女に押し倒されてからもう6時間。ルナ持参のコンビニパンで昼食休憩を挟んだだけで、僕らはずっとエッチを続けている。
 中学も3年目を間近にした春休みは、まるでハリウッド映画みたいに唐突で脈絡のないセックスシーンで暮れようとしていた。
 
「ん-、ちゅ、ちろ、んちゅ、ちゅ、れろれろ…」

 固くなってきたペニスを擦りながら、ルナは僕の乳首をチロチロ舐める。ミルクを飲む猫みたい。あれだけやりまくったというのに、飽きるということを知らない彼女は丁寧に僕の反応を確かめながら、いやらしい目で僕を挑発してきた。

「おちんちん入れて?」

 勃起した僕のペニスに満足げに目を細めると、ルナは僕の横に寝そべる。
 やれやれと体勢を入れ替えて僕が上になると彼女は自分から膝を抱えてMの形に開いた。
 長い髪。整った顔。中学生には見えない体。大人のように蠱惑的な表情。
 彼女のソコはセックスし過ぎて赤くなって痛々しいのに、「まだ頑張るよ」とばかりに健気に濡れて誘っていた。
 僕らは疲れきったお互いの性器を再び重ねる。ヒリヒリとした痛みは快感と混じり合い、なにやら説明のつかない興奮をかき立てた。
 顔を寄せて、キスと舌を絡ませ、痛々しくセックスをする。何が僕らをそこまで淫らにさせるのか、必死になって快楽を探り合い、慎重に、乱暴に腰をぶつけ合ってベッドをきしませた。
 後先を考えない性行為。僕らは子供が遊ぶようにしつこくセックスをした。
 ルナは僕を気持ち良くさせる方法をよく知っている。彼女は僕のペニスを離そうとしなかった。スケベなアダルト女優のルナ。僕のセックスフレンドのルナ。
 僕もまあ、彼女とのセックスは嫌いじゃなかった。
 少なくとも、1日中してても飽きないくらいには。

「あっ、あっ、あっ、あぁーッ! チンポ気持ちいい! トーマのチンポ刺さって気持ちいいよぉっ! ルナのオマンコ、ぐちゅぐちゅしてるぅっ。エロい音させてセックスしてるの、トーマの親に聞かれちゃうよぉ!」

 はしたない声を上げて、ルナが下半身をバウンドさせる。
 お母さんも妹も家にいるけど、僕の部屋からセックスの声がしても気にしないように魔法はかけてあるから大丈夫。
 むしろ、僕らがセックスを始めてから、ずっと1人でゲームし続けているチカの方が気になった。
 昨日僕がDL購入したばかりの『ポートピア連続殺人事件』を勝手に進めているみたいだ。
 別にゲームくらい好きに遊んでくれてもかまわないんだけど、推理AVGなんだから、僕の見ていないところでセーブとかは勘弁して欲しい。チカはそのへん、ずっと僕とゲームを共有しているんだからわかってると思うけど。
 今日中にクリアしたかったのに、ルナのおかげでそれも持ち越しだ。先が気になって仕方ないのに。

「あっ、イク、イクッ。トーマ、きちゃう! あたし…イクぅ!」

 ぎゅ、ぎゅと彼女の膣が圧力を高めて、僕は急いで彼女の中から脱出する。弾き出た僕のペニスは、彼女のお腹の上に白く濁った色を垂らした。

「ふっ、あっ、また、イク…精液の匂いで、イッちゃう…」

 うっとりと蕩けた顔をピクピクと反応させ、ルナは甘い息を吐く。僕は弾力を失ったペニスを握り、残った精液を指で絞り出して彼女のおへそに向かって垂らす。
 ろくに体も拭かずにセックスを繰り返した肌は乾いた精液でピカピカになっていて、しかも何度も上塗りしたせいか固まりも出来ていた。
 ルナはお腹についた精液を指ですくって、ちゅ、と唇で吸い取る。
 
「ふふっ。私の体中トーマの精子でいっぱい。胸も顔も、お尻も背中もホラ、べっとりー」

 ルナはおへその精液をかき混ぜて笑った。
 シャワーでも浴びないと、このままじゃ服も着られないだろう。

「ね、あと出してないのはここだけだよ?」

 くぱっと、彼女自身の指で広げられるヴァギナ。真っ赤に充血しているそこは、確かに何かに飢えているようにも見えた。
 飽きもせず僕を誘惑する彼女の体に思わず喉を鳴らしてしまったが、そろそろいい加減にするべきだ。
 こつんと彼女の額を叩く。

「中に出すわけないだろ」
「いたーい」

 クスクス笑って、ルナは「ちぇー」と拗ねたふりをする。

「けちんぼ、ケチンポー。いいじゃん、中出しくらいー」

 いいわけないだろ。妊娠するつもりか。
 中学に上がったあたりから、ルナはやたらと中出しを迫るようになっていた。安全日とか危険日とかお構いなしにだ。
 もちろんいつも断っている。僕は真面目な中学生だ。無責任なことなんてしないさ。妊娠かっこわるい。ダメ、ぜったい。
 ルナは、「けちー」とか言いながら抱きついて押し倒してくる。
 まだするつもりかって思ったけど、僕の胸に顔を埋めて「ふぃー」と疲れた声を出しただけだった。

「今日はいっぱいしちゃったね?」
「君のせいだろ?」
「んふふー」

 ぐりぐりと僕の肩に髪をこすりつける。普段はツンツンしているくせに、エッチのあとはいつもお腹を空かせた猫みたいに甘えてくるんだ。

「もうすぐ修学旅行かー。ちょっと楽しみだね?」

 思い出したようにぽつりとルナは言った。
 チカはゲーム画面の中で相棒のヤスと一緒に聞き込み捜査を続けながら、「そうだねー」と、ルナに相づちを打って無視されていた。
 『空気』の彼女のことなんてルナには見えてもいないし、声は耳を素通りする。今、小学時代のアルバムを広げたとしても、隣に写っているチカのことは視界に入っても記憶には残らないだろう。
 ルナの中では、鏑木チカという女の子は最初から存在していないことになっている。チカは、それでもまだルナと友だちでいるつもりなんだろうか。
 まあ、それにしても来月は僕らも修学旅行だ。中学では最大のイベントと呼ばれている。
 春休み中に呼び出したり集めたりしてセックスした女の子たちも、みんなその話題で持ちきりだった。
 でも僕はそれほど興味を持てずにいる。

「旅行って言っても京都と奈良だし。僕はそんなとこ行きたくないけどね」

 京都も奈良も小学生のときに親に連れられて行ったことがある。映画村は少し面白かったけど、基本的には似たような寺社がたくさんあるというだけで、別に面白くも何ともないところだ。
 僕がそういうと、ルナは「ふーん」とつまらなさそうに返事した。

「じゃ、サボる?」

 そして僕の胸に顔を埋めたまま、ルナは意外な提案をしてきた。
 長い髪は彼女の表情を隠し、僕の体の上で広がっていた。

「サボるって、2人で?」

 僕がそう問い返すと、ルナは少し沈黙して、そして咳払いをした。

「まあ、別に私もそんなに修学旅行に行きたかったわけじゃないし。てか、別にどこでもいいし。トーマが違うとこ行きたいんなら、付き合ってやってもいいんだけど」

 ルナの手がくるっと丸まり、僕の胸をぽすんと叩く。
 彼女のほっぺたは僕の肌に張り付いたままで、妙に早口な吐息がくすぐったかった。あと、もぞもぞ落ち着きなく動く足も。

「南の方とかだったら、ありかなー。今年ちょうど水着買う予定だったし。まあ、どうせならね。どうせなら。あとは、その、別に2人だけでっていうわけじゃないけど、別に、なんていうか、ほら、こういうのって他の修学旅行楽しみにしてる子らを巻き込むのも悪いし出来るだけナイショで最少人数でギリギリまでバレないように行動した方がいいんじゃないかなって私は思ったけど。うん、まあ、いいんじゃないの。私もともと水着買うつもりだったし。あんまり深く考えるようなことでもないしー」
 
 南ねえ。
 確かにどうせ旅行するなら沖縄とかいいかもしれないけど、さすがにまだ泳ぎたい気分じゃないよな。
 というより、どうして『サボる=他の場所に行く』って話になっているのかわからないんだけど。

「いやどうせサボるんなら家でダラダラしてた方がいいよ。僕は旅行自体が面倒くさいって言ってんだ」

 わざわざ時間かけて行きたい場所なんてない。きれいな景色も美味しい空気も青い海も僕に必要なものじゃない。
 そんなのは年寄りの趣味で十分だと思う。積んでるゲームも結構あるし、セックスの相手もこっちで充実してるし。
 しばし沈黙したあと、ルナは「ふぅー」とため息をつく。

「一生ひきこもってろ、オタク」

 ゴロリとルナが背中を向けて、お尻でどすんと僕の体を押しつけた。
 チカまでなぜか「あーあ」とため息をつく。
 なんだよ。なんだこの空気。
 変な沈黙の中でチカがボタンを押す音だけが聞こえる。

「…学校、めんどくさ」

 ルナがため息まじりに愚痴をつぶやく。それには僕も同感できるけど、ルナがそういうこと言うのは少し意外だった。
 彼女は学校の女王様だ。たんなる揶揄でもあだ名でもなく、実際に王族1位の称号を持っている彼女は名実ともに「学校の女王」だ。
 もちろんそれは僕が女子の容姿とセックスで勝手に決めた称号で、エリがいないから暫定的にそういうランキングが生まれただけにすぎない。
 それでもルナは僕たちの中学校では僕を除いて最高の地位にいるし、全校女生徒の羨望を集めて憧れの的になっている。
 彼女はいつも学校では「クールな女子」を気取っているけど、じつは内心で自慢に思っていることを僕は知っている。
 ほっといても寄ってくる取り巻きや下級生の女子たちを、「うっとうしい」と言いつつも満更ではないようだった。むしろそんな立場を楽しんでいるようにも見える。
 なので、「学校が面倒くさい」もただのポーズだと思っていたんだけど。

「また竹田に会うのかー……」

 彼女の口から意外な名前が出てきて、僕も少し驚いた。
 竹田ノブテルは隣のクラスにいる男子だ。男子だから当然、僕らの学校では奴隷階級に属する。
 1年のときのイジメられっ子だけど、僕が魔法で学校を支配してからは他の男子と同じようにただのピラミッドの下支えにすぎない。平等に女子から蔑まれている存在だ。ルナの口から僕以外の特定の男子の名を聞くのも久しぶりだった。

「竹田がどうかしたの?」

 僕が尋ねると、ルナはピクっと肩を震わせ、少し間を置いてから「え、そんなこと言ってない」と答えた。
 自分が無意識に竹田の名前を口走ったこと気づいてなかったみたい。むしろ今のは失敗だったみたいだ。
 彼女が隠し事をしたいんなら別にそれでもかまわないんだけど、僕に支配されてるはずの人間関係に僕の知らない何かが生まれているのなら、それは魔法使いとしての沽券に関わる問題だ。

「僕は魔法使いのトーマ。今からする質問には正直に答えること。それ以外の反応はするな」

 背中を向けたままのルナにキーワードをささやく。僕の被支配人間たちは、たったひとことで簡単に心の入り口を僕に明け渡す。

「君と竹田が何をしているか、僕に教えて」

 セックス以外のプライバシーに踏み込むのは趣味じゃないけど、仮にも王族1位のルナに僕以外の男の存在があることは、衛生的な意味で僕は心配だ。
 ルナは僕に背中を向けたまま、淡々とした声で答える。

「…竹田に、カノジョになれって言われてる…」

 それはますます意外なことだ。
 僕の作った階級制度は絶対だと確信している。あの日、魔法のメロディで学校を支配したあと、うちの中学のチャイムは同じメロディで統一されている。そして、自動的に毎日「階級制度」や「キーワード」について刷り込みが行われているシステムだ。
 単純だけどそれゆえに欠陥があるとも思えない。聴覚障がい者はうちの学校にはいないし、竹田だってもちろん違うはずだ。

「ルナに直接そう言ってくるの?」
「うん…学校でも迫ってくるし、休みの間も毎日ポストに手紙を入れられてた…」

 “男子は女子と直接会話してはならない”
 “必要があれば教師を間に介さなければならない”

 僕の決めたルールだけど、それ以前に、身分の違う彼らの間に恋愛感情など生まれるはずもなかった。
 ウソじゃないよね? と聞こうと思ってそれは愚問だと気づいた。僕は自分の魔法に自信を持っている。ウソのはずがない。
 チカの方を見てみると、彼女もこっちを見て首を横に振っていた。彼女も知らなかったみたいだ。いつもの無表情にも不安の色が映ってた。

「いつから?」
「2年の3学期頃から…」
「どうしてすぐ僕に言わなかったんだよ!」

 もしも本当に魔法が効かなくなったというなら大問題だ。さっさと僕に報告しろ。ホウ(報告)レン(連絡)ソウ(相談)も知らないのか、最近の中学生は。

「…だって知られたくなかったんだもん…」

 ルナが平坦な声で言う。「どうしてすぐに言わなかった」の答えか? でも今さらそんなことはどうでもいい。
 ていうか、知られたくないってなんだ?
 まだ僕に隠し事でもあるのか。ルナも魔法が解けているのか。2人とも裏切り者で、僕に隠れてセックスでもしてるのか。
 寝取られ野郎の僕のことを嘲笑いながら、激しいセックスをしている2人の姿を想像する。例えば、僕が学校行ってる間にこのベッドの上とかで。あるいは奴隷男子たちの教室で乱交なんかを。

「いえ、そういう意味ではないと思います」

 チカが、ため息まじりに僕に忠告する。なんだろう、その無表情の中にも明らかに浮かぶ「かわいそうな子」っていう視線は。
 ていうか、とうとう僕の思考も読めるようになったのかチカは。

「今、トーマ君が想像しているようなことを想像されるがいやだから言えなかったということをルナは言いたいんです」
「どうして僕が想像していることまでわかるのさ?」
「男の子が考えそうなことです。特にトーマ君はすぐにエッチなこと考えるからわかります」
「そんなこと考えてないよ。わかるはずないじゃん」
「わかります。トーマ君はエッチなことを考えると鼻の下がグ~ンと伸びますから」
「え、ホント?」
「ウソです。でもマヌケは見つかりました」

 プレイ中の推理AVGに意外とハマっているのか、チカはまるで事件解決編の探偵のように「証明終了」のひとさし指を僕に突きつけ、ついとゲーム画面に視線を戻した。
 鼻の下を隠した手のひらの後ろで、ロバのようにマヌケな僕の顔は熱くなっていく。
 よくわからないけど、ルナと竹田が無関係ならそれでいい。とりあえず。
 ルナのなだらかな背中を眺める。半分意識のない人形と化したルナは、ゆっくりとした呼吸で肌を揺らしていた。

「まあ、ようするに問題は竹田か。別にあいつだけならたいしたことじゃない。新学期が始まったら魔法をかけ直しておくさ」

 何かの拍子に魔法が解除されたっていうだけなら、あるいは起こりうることかもしれない。調べればすぐにわかることだ。難しい問題ではないだろう。
 取り繕うように格好つける僕のことを、チカは無視してゲームを続けている。
 ちょっとムカついた僕は、チカを呼び寄せ、服を脱いでベッドに横になるように命令する。

「はい」

 チカは嫌な顔ひとつせず、部屋着のスウェットを脱いでベッドにくる。うちの中学で最高の美少女であるチカルナのコンビ。それを裸にして転がせるのは魔法使いの僕一人だけだ。
 意識なく横たわるルナと、少し恥ずかしそうに僕を見上げるチカ。それぞれの胸に手を這わせて遠慮なく揉む。

「ん…っ」

 反応するチカと無反応のルナ。いつもと真逆の2人の感触を両手に楽しむ。
 コリコリ乳首を転がすと、敏感なチカは切羽詰まったように声を噛み殺した。

「チカ、お尻をルナとくっつけて」

 背中を向け合って転がる2人のお尻を合わせて、その間に僕のペニスを挟む。柔らかくてすべすべした感触がとても心地よい。軽く前後に揺さぶって女の子の柔らかさを実感する。
 少しずつ、僕のペニスにも固さがみなぎってくる。

「チカ、ルナの上にかぶさるんだ」
「……はい」

 ごろりと仰向けになったルナの上に、チカが四つんばいになって乗る。3Pではお決まりのスタイル。でも、いつ見ても贅沢な光景だと思う。
 ルナのスタイルがいいのはもちろんだけど、チカのぷりっとしたお尻の形もいい。大き過ぎず小さ過ぎない肉の付き方といい、張りのある感触といい、傷もニキビもないすべすべとした白さといい。

「チカのお尻っていいよね。うちの女子で一番かもしれない」

 思わず口に出してしまっていた。
 チカはちょっと目を大きくして、そして、ピクピクっと体を震わせ、「ほぉ…」とため息を吐いた。微かに震える肌の下で、とろ、とアソコから液体が滲み出た。

「ひょっとして、今イッたの?」

 少し間を置いて、こくり、とチカは恥ずかしそうに頷く。

「まだ何もしてないのに?」

 チカは、ふるふると首を横に振ると、「…トーマ君のせいです」と、抗議するように頬を染めた。
 僕がお尻を撫でると、チカはピクン、ピクンとお尻の肉を震わせる。僕が触りやすいようにと、お尻をツンと突き上げる。
 この2人は見た目が良いだけはなく、僕にとっても特別の存在だ。
 僕が最初に魔法を使って作った、最高のおもちゃとして。

「まずはチカ」
「んんんん…ッ!」

 ぐにゅにゅ、とチカの中に押し込んでいく。すごく濡れているのにきつい膣の感触。僕はその狭い中を押し広げるようにあちこちを突く。

「あっ、んっ、やっ、あんっ」

 ソプラノの甘い響きが耳に心地よい。いちいち大げさなくらい反応する声も体も気持ちいい。
 それに、この中のざらついたヒダの吸い付き方。彼女は本当によく出来たおもちゃだ。こんなとこまでも。

「次はルナ」
「……ふっ」

 ずにゅっと、一気に入ってしまった。反応を止められているルナの膣は、いきなり侵入してきた僕のに対しても拒絶も歓迎もせず、押し上げられた横隔膜が短く息を吐かせただけだった。

「ふっ、んっ、ふっ、んっ」

 セックスしてやってもいつものエロい言葉はなく、息を吐くだけ。きれいに整った顔がまるで本物の人形みたいで、変な感じだった。

「ルナ、口を開けて」
「はっ、はっ、はっ」

 僕が命令すると、ルナはパカっと口を広げる。
 それまで「ふっ、ふっ、ふっ」だった吐息が「はっ、はっ、はっ」に音を変えた。本当におもちゃみたいだ。

「チカ、ルナの口の中に唾を吐け」
「……はい」

 少し逡巡する間を持って、チカはとろりとルナの口中に唾を垂らした。ルナの舌の上にそれは落ちて、ゆっくりと彼女の喉に向かって落ちていった。

「チカ、もっとだ」
「はい」

 次にチカの垂らした唾は、ルナの唇の上に落ちた。そしてまた彼女の喉に向かって垂れていった。

「チカ、入れるよ」
「んんんんっ!?」

 ルナの中から引き抜いて、チカの中に挿入する。そしてチカのお尻を揺すりながらルナに命令する。

「ルナ、飲め」
「んっく」

 細い喉がコクンと動く。チカが恥ずかしそうにほっぺたを赤くした。
 ルナの視線から逃げるように首を横に傾ける。

「チカ、ルナにキスしろ」
「……っ」
「早くしろ」
「はい……」

 チカの唇が無表情のルナに重なる。僕に後ろから貫かれているせいで荒くなる呼吸を親友の口の中に押し込んで。

「んーっ、ふっ、んーっ、んー!」
「んっ…んっ、んっ…」
「舌も入れろ」
「…んっ、にゅる、んっ、ちゅ!」
「ん……ん、ん…」

 チカのお尻まで真っ赤になっていく。僕はそこに乱暴に自分の腰を叩きつけていく。
 そしてぐちょぐちょになったチカの中から抜いて、ルナの中へ。無反応な彼女の肉体は妨げることなく僕のを受け入れていく。

「んんんー」

 鼻のあたりを鳴らして、すとんと膣の奥で僕のをキャッチする。とんとんとその場所を叩くと、「んっ、んっ」とスイッチを押したみたいに音を立てる。その間も「くちゅくちゅ」とチカの舌がルナの口内をかき回している。
 セックスに最も重要なのは、女の子の見た目だと思う。
 その点でこの2人は申し分なかった。学校の女子でこれ以上の美少女はいない。顔も、スタイルも、個性はバラバラなのに甲乙を付けがたい魅力をそれぞれに放っていた。
 瞳が大きく、ほっぺもぷにぷに柔らかい少女らしい顔立ちで、あまり動かない表情が妙な色気を感じさせるチカ。
 大人っぽい美人顔なのに、たまに見せるあどけなさやエッチのときの乱れた表情のギャップがいやらしいルナ。
 見た目では文句のつけようもない。そして、次に重要な体の気持ちよさも2人は抜群だ。
 チカの体はまだ発展途上だけど、吸い付くような肌は抱き心地が素晴らしく良い上に、アソコの中も良い形をしていて何度でも射精できる。
 ルナの体は早くから成長していて、9頭身と噂のモデル顔負けのスタイルは脱がせると中学生離れした色気を発して、男を奮い立たせる。
 どちらの体も僕のセックスと相性がいい。こうして2人を並べると、いつも目移りしてしまって忙しいセックスになる。どっちの肉体も僕に最高の快感を与えてくれる。そして彼女たちも僕の喜ばせ方を熟知しているから飽きることもない。
 チカの膣、ルナの膣。チカの反応、ルナの無反応。少女たちの体を渡って、異なる感触と反応を楽しみ、僕の興奮がどんどん高まっていく。

「チカ、君の中に出すぞ」
「はい…ッ、あぁぁぁッ!」

 どぷ、どぷ、今日何度目かもわからない射精だけど意外に量も多く、チカの中からあふれてルナのアソコの上にも流れていく。
 何かを成し遂げたような不思議な爽快感すらあって僕は満足した。
 チカとルナ。
 小学生の頃から馴染んだこの2人の体が、僕にとってはベストな性処理手段だった。

「ふぅ、良かったよ。君たちは最高だ」

 そういって、まだ息の整わないチカのお尻を撫でてやる。「くん」と子犬のような息を吐いて、チカのお尻がぷるぷる震えた。桜色になった肌をつんと突き出し、喜んでいるように見えた。
 彼女も満足してくれたらしい。当然だけど。彼女たちの体は僕のセックスのためにある。感度だって抜群だ。

「ホント、最高のおもちゃだね」

 ピク、とチカの肩が変な反応をした。
 僕も最近は彼女の表情が少し読めるようになっている。
 ゆっくりと僕を振りかえるその顔は、いつものような無表情だけど、どこか冷たい色をしている気がした。
 僕の気のせいでなければ、チカの機嫌が悪くなった。
 どうしてなのかはわからないけど、唇がわずかに「への字」を描いている。とても微妙な角度だけど。

「そういえば、私もトーマ君に隠していることがありました」
「え、なに?」

 ルナだけじゃなくチカにまで秘密が?
 穏やかではないことを言って、チカはゆっくりと僕の耳に唇を近づけてくる。
 そして、羽毛のようにくすぐったい声でささやいた。

「犯人はヤスです」

 呆然としている僕を置いて、チカはさっさとシャワーを浴びに、裸のまま出て行った。
 

「……いーち、にーい、さーん」

 そうして新学期が始まり、新1年生の入学式から一週間が経った。
 僕は1年生の貴族っ子たちを体育館に集めて、体力測定を実施していた。
 入学して間もない彼女たちはランク付けがまだ途中で、王族を選抜するために僕もいろんなことを試しているところだ。こんなの適当に選んじゃえばいいって毎年思ってるけど、始めてみるといろいろとこだわりがでてきて、なかなか王族のラインは決定できずにいる。
 先月は今の2、3年生のランキングを修正したばかりだ。毎年のことだから仕方ないとはいえ、年度の変わり目は学校も僕も大変だ。
 入学式で除膜式を行い、何人かの処女はすでに奪っている。インスピレーションを信じるならその時抱いた子たちは王族にしてやってもいいレベルなのだが、第1印象だけでは計れないセックスの相性というものもあるし急いで決めることはない。
 それにまだ学校にもセックスにも慣れていない彼女たちに中学生活のルールというのを体で覚えてもらうためにも、試験期間にはそれなりの時間が必要だ。
 つまりは僕も、フレッシュレモンな1年生たちとしばらくは遊んでたい。
 学校の支配者だの魔法使いだなんて言っても、ひととおりの女子とセックスしてしまえば、後はそこらのアリの巣をかき回して遊ぶのとたいして変わらない。エリのいない僕には理解者も共犯者もなく、せいぜいたまにチカに手伝わせるくらいで、あとは孤独な王様を気取って退屈な学校生活をいじくるだけだ。
 それでも、1年ごとに女の子の入れ替わる学校というシステムは素晴らしい。少なくとも今月いっぱいくらいは退屈しなくても済む。人口の3分の1を毎年とっかえるなんて、地球規模で出来たらきっと楽しいだろうな。

「ごー、ろーく、しーち」

 体操着の下半身を裸にした女の子たちが、二人一組で背中伸ばしをしている。下の子はお尻を、上の子はアソコを僕に向かって丸出しにしてパックリと足を開いている。
 すでに発育が進んでいる子も、まだまだ子供の体をした子も、瑞々しい肢体を大胆に開帳して楽しそうに運動していた。
 眺めているだけでも結構面白い。
 処女や、非処女になったばかりのこの青い果実たちは、これからの3年間でどれだけの経験をして成長していくんだろう。全身が伸びしろである彼女たち1年生は、無限の可能性と吸収力に溢れている。
 僕はそんな彼女たちを、どこかまぶしく思いながら、心の中でそっとつぶやいた。

 \中学生って最高だな/

「トーマ先輩、準備運動終わりましたーっ!」
「あ、あぁ。了解」

 ボブカットの女の子が元気な声を出す。この子の名前はシイナ。入学式で僕が除膜した女子の一人だ。くりくりとした瞳が目立つ子で人懐っこい妹タイプ。処女を僕に捧げて以来、昼休みなんかも3年の教室に来て僕に甘えてくる。物怖じせずしない性格と見た目の愛らしさで、3年の王族や貴族にも可愛がられているようだ。

「先輩、つかれたー。体育なんてやめて遊びましょうよー」

 気怠そうにしゃがみ込んだのはコノハという子で、可愛い名前のわりに体の成長が進んでいて、1年生のわりに色気のある子だった。
 この子も入学式に抱いた。生意気そうだったから、まずはフェラをやらせてからバックスタイルで処女を奪ってやった。
 最初はわんわん泣いてたけど、発育が良いせいかセックスに慣れるのも早く、最後は自分からお尻を振って「中に出してぇ」ってせがんでたっけ。
 今も「つかれた」なんてわがまま言ってるふりしてるけど、僕にアピールするのが目的みたいで、こっちに向けてチラチラとアソコを見せて挑発しているんだ。
 毛も生えてないくせに生意気な。でも、こないだまでランドセルを背負ってたとは思えないほど大人っぽい顔立ちと体つきは、「2代目ルナ」と呼ばれているくらいで、今年の1年生の中ではダントツに目立って可愛いのが、このシイナとコノハの2人だ。
 今年の1年生はこの2名を中心に階級編成していくことになるだろう。あとはどこを王族の最低ラインにするかだ。
 多くて6、7人。少なくとも2~3人いればいい。学年に一桁くらいが王族の理想数だ。人数が多すぎるとレア感もなくなるし、競争意識も薄くなる。
 王族は女の子たちの目標でなければならない。だが決して頂点ではない。今はここにいないけど、エリがこの学校の支配者で、他の者は全員彼女の奴隷なんだ。
 僕だって例外じゃない。この学校は彼女のための庭で、僕は単なる庭師にすぎない。僕が描くのは彼女のための世界だ。
 今日も僕は、エリのために学校に秩序を作っていく。

「ダメだよ、コノハ。王族になりたいなら言われたとおりにしろ。今は授業中なんだよ」
「えー。コノハもっと楽しいことしたいな、せんぱ~い」

 そういってコノハは、三角に座った足をわざとらしく広げる。
 覚えたてのセックスと誘惑が楽しくて仕方ないんだろう。一度気持ちよさを知ってしまえば、エッチにハマってしまうのは女子の方だ。僕の魔法は最高の快感を彼女たちに与える。
 甘いお菓子を嫌う女の子はいない。それが麻薬であることも知らず、少女たちは僕のセックスに溺れていくんだ。
 そして子供だったかつての自分を急いで捨てていく。
 僕のお気に入りの娼婦になるために。

「じゃあ、コノハは平民でいいんだな?」
「……え?」

 でも、いつどんな風に遊ぶのか決めるのは僕だ。それがこの学校の秩序で、今は彼女たちにそのことを教える授業中だ。
 僕はパチンと手を叩くと、他の女の子たちに向かって宣言する。

「よし、それじゃ残りのみんなで授業を続けよう。成績の良い子は王族になれるからね。みんな、がんばって」
「はーい!」
「ちょ、ちょっと待って先輩、ずるい! あたし、やんないなんて言ってないもん!」

 コノハは慌てて立ち上がり、ピンと右手を立てて主張する。まだ子供っぽい丸みを残したほっぺたが、僕に無視された焦りと怒りで真っ赤になっていた。
 自分に自信を持つのはいいことだ。容姿に優れている女の子は、それだけで特別になれるルールがこの学校にはある。
 ただし、それを決めるのは僕だ。君たちの価値を決定するのは僕の魔法だ。
 そしてルールはエリのために存在する。
 生意気な女の子も嫌いじゃないけど、僕に逆らう子は好きじゃない。それはエリにしか許されない行為だ。

「……先輩、ごめんなさい」

 じっと睨みつける僕の視線の前で、コノハはしょぼんと小さくなって肩ををすぼめた。潤んだ瞳で見上げる仕草が僕に媚びる演技だとしても、それを「可愛い」と感じさせるんだから、彼女の容姿は十分に王族の資格を持っている。
 見た目がよければ誰でもいい。性格なんかはどうでもいい。僕の出してる条件はそれほど難しいものなんかじゃない。
 そもそも、僕のペニスを入れる穴の順位を決めてるだけのことだし。

「僕は魔法使いのトーマ」

 しん、と体育館が静まりかえり、色と光を失った瞳が僕に向かって固定される。
 上だけ体操着を着て、下半身裸のおかしな格好をした少女たちがマネキンのように並ぶ。

「君たちは貴族以上の女子に選ばれた。この学校内では特別な地位を保証されたことになる。誇りに思ってくれていいよ。でも、君たちの上にはまだ王族の女の子たちがいて、この中で誰をそれに選ぶのかはまだ決めていない。容姿とセックス。条件はそれだけ。でも僕の機嫌と気分で勝手に動かすこともある。つまり君たちがこの先、どのランクで学校生活を送るのか決められるのは僕一人だ。わかったね?」

 そのマネキンに長々と演説を聞かせてから、僕はバレーボールを一個掲げる。
 授業で使う普通のボールだ。

「まずは、ゲームで体をほぐそうか。このボールは『王様』だ。捕まえた人は『王族』の仲間入りだよ。一個しかないから早い者勝ちだ。みんな、がんばって手に入れなよ」

 そして、魔法を解除する。目をパチクリさせた女の子たちが、僕の持ってるボールに瞳を輝かせる。

「ゲームスタート」

 僕は天井高くボールを跳ね上げる。女の子たちがいっせいに歓声を上げ、一個のボールに向かって殺到する。
 まだ子供みたいに小さなお尻を丸出しにして、同じくらい白くて丸いボールを奪い合い、転んだり飛び跳ねたり髪の毛をひっぱり合ったり、無邪気な光景だった。
 シイナが一生懸命駆け回る。コノハがズベーンと転んでおでこを真っ赤にする。ボールを奪って揉み合う女の子たちのアソコがだらしなく僕に向かって開かれている。
 そういや、まだ処女の子も何人か残っているはずだけど、どの子だったか忘れたな。あとで全員お尻を並べてセックスしてやろう。
 今はもう少し、このバカげた光景を楽しんでからだ。
 やがてボールは一人の女の子に独占された。
 つんつん尖ったベリーショートの、凛々しい顔した子だ。ボールを体操着の中にしまって、お腹を妊娠状態にしてみんなから守っている。
 空手か何かをやっているらしく、ビシっと決まった構えに隙は見あたらないようで、他の子たちもジリジリと周りを取り囲むだけで近寄れないようだった。
 たぶん、まだ抱いてない子だ。なかなか美少女じゃないか。どちらかというと美少年に見られそうなくらいキリっとしているけど、ツンと尖ったお尻もつるんとした割れ目も可愛らしい。それがまるで「ボテ腹ファイター」って感じで構えをとっているのがおかしかった。
 僕は近くでぜぇぜぇと息を切らしているシイナに尋ねる。

「ねえ、あの子の名前はなんていうの?」
「1-Cの月浦ミナモです…ッ! 小学生のとき少林寺の全国大会で準優勝だって…ッ、もう、反則ですよ、あんな子…!」

 ボールは完全に彼女のものだった。遠巻きに包囲するしかできない女の子たち。輪の外から「ばーか、ばーか」と涙目で怒鳴るだけのコノハ。
 その真ん中でミナモという子はぺろりと唇を舐めた。

「へへっ、トーマ先輩の王様ボールは僕のものだ…誰にも渡さないよ!」

 ボーイッシュすぎるって感じはするけど、ああいう子にセックスを教えるのもきっと楽しいだろうな。
 シイナとコノハにも強力なライバルが登場だ。やっぱり、オリエンテーションは必要だよね。みんなの個性が見えてくる。

「僕は魔法使いのトーマ」

 でも、こんなに簡単に決まっちゃうゲームなんてつまらないだろ?
 僕は再び空間を止めて、指令をころっと裏返す。

「そのボールは『奴隷』ボールだ。触ると『奴隷菌』に感染して奴隷になっちゃうぞ。早く逃げた方がいい」

 そして魔法を解除する。
 しん、と体育館に沈黙が訪れ、そして全員の顔色が変わった。

「きゃ~~~ッ!?」

 いっせいに逃げ出す女の子たち。その中央で「え?え?」と戸惑っていたミナモが、お腹からぺろんとボールを出すと真っ赤な顔で放り投げた。

「わー! やだやだ! えんがちょ、えんがちょ!」
「きゃ~~~ッ!?」

 逃げ惑う女の子たち。指をクロスして泣き出すミナモ。
 転がってくるボールを、僕は女の子たちに向かって蹴り飛ばした。

「きゃ~~ッ!」
「やだ、こっちこないでぇ!」
「わー!」

 蜘蛛の子を散らすようだ。
 お尻をぷるぷる弾ませながら走り回る女の子たち。僕がボールをそっちへ蹴ると、また悲鳴を上げながらいっせいに逃げていく。
 羊の群れを蹴散らすオオカミは、きっとそれが楽しいからやってるんだろう。跳ねるお尻を追いかけて僕はどんどんボールをぶつけていく。

「いたーい!」

 コノハがまたズベーンと転んで鼻を打ってた。
 運動ダメすぎるな、あの子。

「まだまだボールはあるよ。全部『奴隷』ボールだ。みんな、がんばって逃げなよ」

 用具入れからバレーボールを持ってきて、次々に投入する。
 体育館は混乱を極めた。
 可愛い女の子たちの悲鳴。走り回るお尻。僕にとっては楽しい授業だけど女の子たちは必死だ。転んだり泣いたり、まだまだ小学生上がりの彼女たちは簡単にパニックを起こしていた。
 お尻をぷりぷりさせて逃げるシイナ。やけくそになってみんなにボールをぶつけるコノハ。半裸の女の子たちが乱戦状態になった体育館には悲惨な泣き声がこだまするけど、それでも男子にとっては面白やらしいパラダイスだった。
 僕はそんな彼女たちのお尻を見ながら、唐突なアイディアを思いつく。
 今年の1年生の公式下着はフンドシにするっていうのはどうだろう。
 彼女たちの瑞々しいお尻の形をきれいに保つためにも、そして日本の伝統を今の子供たちに受け継いでいくためにも。
 悪くないアイディアだと思う。

「いたい、うう…もうやだ…やめてよぉ、えんがちょしてるのに…」

 などとくだらないことを考えているうちに、ふと悲しい光景を目にした。
 先ほどは呂布ばりの無双を見せていたミナモが、今度はみんなにマークされてしまったせいで、奴隷ボールを集中的にぶつけられていた。
 まるでイジメみたいで僕の胸も痛む。

「ミナモ、おいで」

 僕が声をかけると、ぴたと攻撃がやんで、ミナモに視線が集中した。
 泣きべそかいた顔を上げ、ミナモは逃げるように僕のそばにくっついてくる。

「君はもうかなり奴隷菌に感染してしまった。このままだと君は男子教室に入って彼らの慰み者になるしかないな」
「ふぇ…そんなぁ…」
「でも大丈夫。僕が君の治療をしてあげる。奴隷菌を退治する方法がひとつだけあるんだ」
「え、そ、それは?」

 もちろん、セックスに決まってるだろ。

「いっ…あぁっ、あぁぁぁッ!?」

 体育館の床にミナモを転がし、足を自分で抱えるように命令する。
 そして、ぱっくり開いた処女の幼いアソコに、僕のを強引にねじ込んだ。

「いっ、あっ、痛い! トーマ先輩、痛いよぉ!」

 引き締まった体が更に縮こまり、僕のをギリギリと締め付ける。結合部から流れる血が、乱暴に押し入った僕への苦情を必死に訴えていた。
 処女の1年生はだいたいこうだ。どっちが乱暴なんだっていうくらいキツく、青い果実をごりごり削るような固さ。まずはこれがオンナとしてほぐれるまでセックスしてやらないといけないんだ。
 魔法を使えば簡単なことだけど。

「僕は魔法使いのトーマ。この指を見て」

 甘い蜜をミナモにもあげよう。果実を熟す魔法の蜜だ。チカにセックスを教えたときと同じ魔法だ。

「この指から垂れる蜜が、君を最高に気持ちよくしてくれる」
「…え?」

 ぽた、ぽた、蜜が落ちる。もちろんこれは女の子にしか見えない魔法。僕の指から落ちる蜜を体に染みこませ、女の子はセックスを覚えていくんだ。

「はぁぁぁんッ!?」

 ビクン、と細いお腹を仰け反らせ、あばらをくっきり浮き上がらせてミナモがバネ仕掛けのように跳ねた。
 縮こまっていた体が僕に向かって開かれ、痙攣を繰り返す。蜜が彼女の肌から脳へ、快感を運んでいく。

「トーマ、先輩…すごい! なんですか、これ!? すごいよぉ!」

 僕が腰を揺らすとビクンビクン細い体がうねり、ミナモが甘い声を出す。
 体操着の下でツンと乳首が張っている。平べったいその先にちょこんと指先を置くと、たったそれだけのことで彼女はまた大きな声を上げ、快感に翻弄された。

「やぁ!? すごい、すごい! トーマ先輩、すごい! 僕、こんなの初めてですぅ!」

 男の子勝りだった表情がとろんと蕩けて、潤んだ瞳に情欲の光が灯る。
 彼女の中で眠っていた“オンナ”が、一気に花を開こうとしているのがわかった。

「あぁ! あぁ! トーマ先輩、僕、へんだよぉッ、こんな気持ち、知らないよぉ!」
「ミナモ、これがセックスだ。この学校のルールだ。君もようやく本当の入学式を終えたんだよ。これからは、このセックスが君の学校生活の全てだ。わかるね?」
「あぁっ、あぁっ、わかります! 僕、もうこんなの、勝てない! トーマ先輩、強すぎます! 僕はもう先輩には逆らえない! なんでも…僕を、好きにしてください!」
「当たり前だろ。君はもう僕のオンナなんだから」
「あぁ! 僕、僕、オンナになったんですかッ? 先輩のおちんちんに負けて、オンナになっちゃったんですね! 気持ち、いいっ。オンナ、気持ちいいです! 僕のアソコが、脳みそになったみたいに、もう、おちんちんのことしか考えられないです! これも、オンナだからですか! 僕が、オンナだからですか!?」
「そうだよ。君の体が女の子だからだ」
「あぁぁッ! 先輩! トーマ先輩って、かっこいいです! 僕、もっと、もっとオンナになりたいです! 僕のアソコを、先輩のおちんちん袋にしてください! 先輩のオンナになりたいです! 先輩のおちんちんになら、何をされてもいい! あぁ! あぁん!」

 僕に媚びるその表情にはもう女の色っぽさを感じさせた。
 ぐちょぐちょとアソコから流れる液体で体育館の床を濡らし、自らもお尻を振り、すっかり“オンナ”の感じ方を覚えたミナモの乱れっぷりに、同級生の女の子たちも息を呑んでいた。
 この子もなかなかオンナとして優秀だ。大器を感じさせる。僕がオンナのたしなみを教えてやるのも面白いだろう。

「顔に出すよ。口を開けて」
「ハイ!」

 目をつぶって、「あーん」と大口を開けるミナモの顔にありったけの精液をぶっかける。
 彼女は男の匂いのする液体をびしゃびしゃと顔と舌で受け止めて、そのまま舌を回して味を確かめる。
 ぺろりぺろりと唇を舐め回し、僕に向かって姿勢を正した。
 そして、ぱちんと拳と手のひらを顔の前で合わせて、ミナモは嬉しそうに微笑んだ。

「先輩の味、勉強させていただきました…。僕は、今日からあなたのオンナになります」

 まるで師弟の契りのような奇妙な宣誓。でも潔い言葉と真っ直ぐな視線が清々しい。
 頭をぐりぐり撫でてやると、ミナモは仔猫のように目を細めた。

「せ、先輩!」

 ピン、と背伸びしてシイナが真っ直ぐ手を挙げる。

「シイナも奴隷菌に感染しました! 先輩のセックスをお願いします!」

 そういってシイナは僕の足元で体を丸め、お尻をつんと突き出した。
 白い体操着と白いお尻。それがフリフリと揺れて僕を甘く誘惑する。すでに僕とのセックスを経験しているシイナのアソコは、ぷっくり濡れて光っていた。

「シイナずっるーい! あたしも超感染しちゃいました! 早急なセックスを必要としています!」

 コノハまで真似してお尻を並べる。ふたつのお尻がこっつんこ。どちらもその美味しさを競い合うように魅力的だ。

「わ、私もです先輩!」
「トーマ先輩、私の処女も!」
「あたしも先輩のオンナにしてくださーい!」

 丸いお尻が僕の前に殺到して並ぶ。
 やはり本気でフンドシの公式化を検討してみようかな。未成熟なお尻がぶどうのように連なる光景はとても愉快だった。そしてこれを全部、僕は好きにしていいんだ。
 さぁて、それじゃあ今日もいつもの連続処女破りで体育館を血の海にしてやろうか。
 などと考えていると、いきなり体育館の扉が開かれる。

 体操着を着たチカが、息を弾ませていた。

「……竹田君が、学校に来ています」

 僕は、1年生たちに教室に戻るように指示して、チカに続いて外に出た。
 彼女に連れられていったグラウンドでは、一人の男子生徒が、体操着姿の女子たちの中で水道のホースを構えていた。
 びしょ濡れになった女子たちはひとつに固まっている。
 そして先頭には全身を濡らしたルナが立って、みんなをかばうようにして男を睨みつけている。
 男は、竹田ノブテルだった。
 だらしなく崩した制服と、ガタガタに切った茶髪。ヘビみたいな目が異常に輝いていて、そして落ち着かなく揺れていた。

「ルーナー……遊びにいこうぜー……」

 粘っこくてか細い声。
 ルナが思いっきり嫌そうな顔をする。

「授業なんてやめてさー……俺とデートしよー……俺たち付き合ってんだからさー」

 竹田は少し普通ではない。
 小学生のころからイジメにあっていたそうだが、僕の魔法で男子全員が「平等」に「奴隷」になって以来、そのイジメという抑制がなくなった生活の中で、伸びやかに彼はその異常性を育てていった。
 ルナが自分のカノジョだという妄想と現実をない交ぜにし、ストーキングと嫌がらせのような告白を続けている。
 
「……トーマ?」

 僕に気づいたルナが、困惑したように頬を赤くする。

「あんたまで出てこなくていいってば!」

 濡れた髪が濡れた体操服に絡みつく。透けた下着と相まってスケベな感じだ。
 竹田も同感なんだろう。制服の下で膨らむ股間を隠そうともしていなかった。

「なんだよテメェ! 邪魔すんなよ! どけよ! どけよ! どけよ!」

 竹田の爛々と光る瞳がすぼまって僕を睨む。ニキビだらけの顔が真っ赤だ。
 僕よりも頭一つ高い上背に、異常性をプンプン臭わせる崩れた表情。

「うるさい、竹田! さっさとどっか行け! 今すぐ消えろ!」

 ルナも興奮してしまって、他の女子たちも、どうしていいのかわからないといった様子だ。
 じつは先週にも彼とはこうして対峙し、自分が「奴隷」であることと、女子には勝手に話すこともできないということを魔法で命令してあった。
 竹田にはもう何度も同じことを繰り返している。何度も、何度も。

「僕は魔法使いのトーマ」

 女子も、竹田も時間を止める。僕の魔法のキーワードは誰に対しても有効だ。
 そのことに変化はない。でも、竹田はそれを何度もリセットさせている。

「竹田、よく聞け。僕の魔法は絶対だ。お前を支配しているのは僕の魔法だ」

 無反応に鈍い光を放つ瞳。はたして僕の魔法は彼のどの部分にまで届いているのか。
 僕は、他人の心の中まで覗けるわけじゃない。でも何年も魔法使いをやっていればわかる。
 竹田には僕の魔法は深く食い込んでいる。それは間違いないと思う。
 でも、そんな自信も最近はなくなってきてるんだ。

「お前たち奴隷は、勝手に女子に話しかけていけない。近づいてもいけない。お前のそのルナに対する気持ちは忘れなければならない。絶対に……僕の命令には服従しなければならない」

 竹田の唇がぷるぷる震えている。だらしなく開いた口からよだれが落ちてくる。
 ひどくイライラする。まるで僕自身がバカにされているようで。

「二度と学校に来るな。僕は何度もそう言ったはずだぞ。いいか、うちに帰って二度と僕たちの前に顔を見せるな」

 同じ命令を、もう何度も彼にはしている。そして、何度も彼は僕の魔法を解除してこうして学校に戻ってきている。
 何がこうさせているのか僕にはわからない。彼が異常な精神状態にあるせいか。あるいは、彼が異常な方法で僕の魔法を解除しているのか。
 
「…わかったな? お前は二度とここに来てはいけない」

 竹田の口の震えは、同じ言葉を繰り返しているせいだ。
 彼に魔法をかけ、何度も心理状態を探ろうと試みたが、どんな言葉で彼に呼びかけても、竹田の回答はただひとつだけなんだ。

「……この街には、魔法使いが住んでいる……」

 この街には魔法使いが住んでいる。
 竜に乗って空を飛び、炎と水を操って、不思議なカードで未来を語る。
 魔法使いに出会ったら、願い事が叶う代わりに、大事なものを奪われる。
 この街には、とても強くて怖い魔法使いが住んでいる。

 街に流れる僕の噂。
 この都市伝説を彼は延々繰り返し、それ以外のことは決して語らない。
 まるで壊れたオルゴールみたいに。
 
「帰れよ、竹田……二度と来るな」

 正直に言うと、僕は竹田が恐ろしかった。
 僕の命令を受けて、竹田は背を向けて学校から去っていく。ぎこちないロボットみたいだ。彼は壊れた人間だ。思えば最初から竹田はおかしかった。
 だからまたきっと帰ってくる。
 心の異常をどこかに増やして。

「――解除」

 服を濡らした女子たちが、フッと瞳に光を戻す。
 そして竹田が帰ったことを知って口々に安堵を漏らしていた。

「も~、なんなのあいつ。ルナ、大丈夫だった?」
「トーマ君が来てくれてよかったー。やっぱりトーマ君は頼りになるよね」

 ただその中で、ルナだけはなぜか不機嫌そうにしている。
 濡れた髪をギュッと絞り、水をポタポタ垂らしながら、まだ赤いほっぺで唇を尖らせる。

「……別に、トーマが来る必要なかったのに。私はあんなやつ、相手にしてないから。一人で追っ払えたから」

 下着の透ける背中を見せて、さっさとどこかへ行ってしまう。数名の女子が慌ててルナのあとを追うけど、僕とチカは彼女の後ろ姿を黙って見送っていた。

「やっぱり、ルナは竹田と何か関係があるんじゃないの?」

 不自然な彼女の態度に、やはり僕の疑念は間違いないように思える。ルナと竹田が僕に隠れてセックスする姿が浮かんで、吐きそうな気持ち悪さを感じた。
 しかし、チカはいつもと同じようにため息を漏らすだけだった。

「……トーマ君は、鈍感すぎます」
「何が?」
「知りません」

 僕の疑念は膨らむ一方だ。

 それから数日後、僕は3名の女子を保健室に呼び出していた。

「工藤シイナ」
「はい!」
「日高コノハ」
「はーい!」
「月浦ミナモ」
「はい!」

 今にも飛び上がらんばかりに表情を輝かせる3人の前で、僕は両手を広げて宣言する。

「おめでとう。今年の1年生女子の王族は、君たち3名にする」
「やったー!」

 シイナとコノハはぴょんぴょんと飛び跳ね、抱き合って歓喜していた。
 最初は合わないタイプと思われていた2人も、試験を共に戦い抜く中で互いをライバルとして認め合い、友情を芽生えさせていたようだ。
 そしてミナモは、ボロボロと涙を流していた。粗雑なように見えて自分の中に貯め込むタイプらしく、堰を切った涙はとめどなく流れ続けた。

「ば、ばっかじゃん、ミナモ。何泣いてんだよ~」
「そうだよ、ミナモ…どういう結果が出ても泣かないって3人で約束したでしょ…」

 といいつつ、ミナモを抱きしめて3人で声を立てて泣き出す。
 この数日間はよほど緊張と不安を抱えていたらしく、わんわんと声を張り上げ、互いを抱き合っていた。
 うるわしい友情だね。
 でも、僕は単純に見た目とセックスで順位をつけただけ。そこには情も感動もない。

「喜ぶのはまだ早いよ。君たちは2年や3年もいる王族の中の最低ランクにかろうじて入ったというだけだ。君たちのすぐ下は貴族の席で、僕はまだ春休み明けの貴族たちを抱いてないからね。近いうちにランキングは必ず動くよ。そしてそのとき、最初に王族から落とされるのは君たちだ。覚えておいて」

 コノハが、ぎゅっと口を歪めて僕を見る。

「……それじゃ、あたしたちの中では誰が1位なんですか?」

 友情を壊しかねない質問だけどいいのかな?
 プライドの高いコノハにとっては重要なことなのかもしれないけど。

「1年生の1位はシイナだ」

 コノハは唇の下にシワを作った。シイナは一瞬目を輝かせたけど、すぐに表情を引き締めた。

「でも、王族の中では下から3位なんですよね?」
「そうだよ。そして1年生の2位がコノハだ」

 コノハはシイナの顔をチラリと見る。シイナにも決して浮かれた様子はなく、コノハに向かって小さく頷いて唇を噛んだ。
 醜いライバル意識で友情が壊れる、なんてレベルではないようだ。今よりもっと上の順位をこの2人は目指しているし、モチベーションも高い。
 今の質問はスタートラインを確かめただけだ。ライバルは2年、3年の王族。彼女たちは先頭を目指して前を向いている。
 ミナモは、何も言わずまだ涙を流し続けていた。それはもう喜びの涙じゃない。だからあえて言う必要もないだろう。
 王族最下位は彼女だ。

「先輩。私、もう先輩の教室には遊びに行きません」
「どうして?」

 突如、シイナがそんなこと言い出した。
 すっかり「1年生の可愛いやつ」というポジションを僕らの教室に築き上げているシイナは、いつ遊びに来ても女子たちから歓迎されている。
 年上から無条件で可愛がられる無敵の妹属性。そこが小悪魔系コノハと違う彼女の武器だと思ってたけど。

「先輩の方から、会いに行きたくなるようなオンナを目指します」

 貴族や王族の暮らしの中にも、厳しい上下関係は存在する。そこで上を目指していくなら、自分にも厳しくならないといけない。
 子供だったシイナにも、その自覚が芽生え始めているようだった。ただの「可愛い妹」はもうそこにはいない。

「あぁ、がんばれよ」

 僕は彼女の真剣な気持ちを茶化したりはせず、しっかりと受け止めて声援を送った。
 なんだか、親の気持ちが少しわかった気がする。
 
「あたしもだよ、先輩。絶対、先輩のハートを射止めてみせるからね」

 ふわふわした茶髪をかき上げ、コノハが上目遣いで微笑む。男心のくすぐり方を天然で知っている彼女は、シイナとはまた違ったやり方でこれからも僕を楽しませてくれるに違いない。

「あぁ。……ミナモも、がんばれよ」

 ミナモは、ぐすぐすと震わせた声で、「…ありがとうございます」と頭を下げるだけだった。
 彼女はすぐに貴族に埋没してしまうかもしれないな。
 まあ、その代わりになる子が下から上がってくるだけだから、別にどうだってかまわないけど。
 なんにしても、この数日間でのさまざまなテストやセクハラを勝ち残ってきた3名だ。
 体育館での下半身裸の体力測定や、淫語書き取りテスト、創作フェラチオコンテスト、エロフォト撮影会、下着で踊ってみた動画やレズってみた動画の撮影、そして今日も午前中に『寒中スク水大会』を終えたばかりで、彼女たちもさぞかし疲れているだろう。
 なので今日はこれで解散しようかと思ったけど、少なくてもシイナとコノハは、「ご褒美欲しい」とキラキラして僕に目で訴えている。見えないシッポをブンブンと振り回してる感じだ。
 そうだな。可愛い後輩たちがここまで頑張ったんだから、先輩としてご褒美の一発や二発くれてやってもいいよね。

「それじゃ、さっそく4人でセックスしようか?」
「はーい!」

 いそいそと制服を脱ぎ出すシイナとコノハ。子供っぽいパンツのシイナと、小さな胸に生意気にも黒エロい下着を着けているコノハ。
 ミナモも遅れて制服のボタンを外し始め、僕も彼女たち一緒に脱ごうとしたとき、保健室の扉が開いた。

 息を弾ませているチカだ。

 不思議なんだけど、どうしてチカはいつも僕の居場所を正確に察知することが出来るんだろう?
 完璧ステルス仕様なくせに、さらにGPSより確かな位置情報システムを搭載しているというのか。そのうちロッキードあたりが彼女の買収話を持って来そうだな。
 そんなくだらないことを考えてる隙に、チカはズボン半脱ぎの僕の腕を引っ張って、保健室から連れだしてしまった。

「な、なに? ちょっと待って、僕まだズボンを……」
「竹田君が戻ってきてます。ルナが1人で彼を屋上まで連れだしました」
「なんだって?」
「早く。今日の竹田君はすごく変です。ルナが危ないです」
「またかよ…」

 あいつの青白い不気味な顔を思い浮かべて、僕も気分が悪くなる。
 本当になんなんだ、あいつ。頭おかしいヤツには僕の魔法は効かないのか?
 ありえない話じゃない。まともな理屈が通じない相手なら、僕の想像もつかない思考の中で命令が歪曲されてしまうのかもしれない。
 魔法とは、異常な命令を正当な理論や常識にして相手に解釈させ、従わせるものだ。
 だから、世間の常識を覆すほどの思考展開と異常な執念さえあれば、その逆を行うことも理論上は可能だろう。
 常識的な人間であることを捨ててしまったとすれば。
 竹田は、ルナに異常な執着していて、それ以外には何もない男だった。

「でも屋上だって? どうしてそんなとこに?」
「女子トイレにまで入ってきて『ルナはどこだ?』ってやってたんです。だから、ルナがみんなのいないところで話をしようって言って」
「二人っきりになろうって、自分で誘ったってこと?」

 ルナも、ひょっとして竹田とやりたいんじゃないの?
 あいつのことを僕に隠そうとしたり、助けてやったのに「余計なことするな」と言ったり、なんだか怪しいことばかりしているような気がするけど。
 他の男とはセックスできない魔法をかけているはずだけど、竹田のように魔法を無効にする何らかの方法があるのなら、ルナも同じように解除しているのかもしれない。
 あの二人がセックスしてる姿は気持ち悪いけど、それを知らずに僕もルナとセックスしてたんだとしたら、それは吐き気がするほど――

「いててて、何すんだよ」

 僕の腕を力強く引っ張ってたチカが、僕のほっぺたにジョイント部分を変えた。
 ずれたメガネを直しながら僕は抗議の声を上げる。チカは表情のない瞳をジトっと逆三角形にする。

「……トーマ君はおバカです。また変な想像してます」
「はぁ?」

 チカにしては珍しく、激しく怒っているようだった。
 表情が変わらないだけに怖い。嫌なオーラが感じられた。

「トーマ君は何にもわかってないんですね」
「む、何をだよ」
「ルナなんてモテモテだから、竹田君だけじゃなくて、他の中学の人とか近所の高校生とか、小学生から大人までいろんな人に言い寄られてますよ」
「え、そうなの?」
「当たり前です」

 そういや僕は、うちの男子には女子に話しかけるなって命令してるけど、学校外の男のことまで考えてなかった。ルナも最近、昔みたいに「ナンパされた自慢」もしなくなってたし。
 言われてみれば当然のことだ。そうなると僕の知らない男関係っていうのが彼女にはいろいろあるのかもしれない。
 ルナはスケベな女の子だから。

「……そういう誤解が、一番かわいそうです」
「かわいそう?」
「あの子は、ちゃんと全部断ってます。わざと冷たい言い方までして突っぱねてます。デートにも合コンにも一度も行ったことありません。友だちにも絶対行かないから誘うなって言ってます。1年のとき、女子トイレで『ルナは僕のもの』ってトーマ君に言われたからです」
「え、僕そんなこと言ったかな?」
「正確には、ちょっと違います。でもルナはそう言われたと思ってるから、そういうことにしてください」
「してくださいって言われても……」
「それ以来、ルナはどこかの鈍感さんに変な誤解されないように気を使ってるんです。自分が他の男にモテてることだって言いたくないんです。だから竹田君のことも、一人で解決しようと無理してるんです」
「んー……わかった。つまり、ルナには僕の魔法はちゃんと効いてるってことか」

 それなら何も問題ない。少しホッとした。
 しかし、チカは不服そうにさらに目を細めた。

「トーマ君がルナにかけた魔法って、『アダルト女優』と『他の男とエッチするな』っていうことだけですよね?」
「あぁ、そうだけど」
「他の男とデートするな、なんて魔法をトーマ君はかけてません」
「うん。確かにそうだね」
「それがどういうことかわかりますか?」
「え、全然?」

 僕が首を傾げると、チカは「はー」とわざとらしいため息をついた。

「……トーマ君のお嫁さんになる人って、胃がオカリナみたいになっちゃうんでしょうね」

 それ、どういう意味?
 しかし僕が彼女の発言を意味を知る前に、「もういいから早く」とチカは僕を屋上まで引っ張っていく。

 ――乾いた春風がゴウゴウと音を立て、4月の屋上はひどく寒々しかった。

 鉄柵際に立つ細い影が二つ。
 ルナの首に腕を絡ませ、竹田が何か光るモノを突きつけていた。

「邪魔をするな、魔法使い!」

 いつになく太く力のある声で、竹田が形相を歪める。口を開こうとするルナに向かって、手にしたナイフを突きつける。

「俺たちは、二人で元の世界に還る…。邪悪な魔法が支配する前の世界線へ! この聖剣と巫女ルナのアルカナで、宇宙の理を取り戻すんだ!」

 今日はずいぶんと素敵な壊れ方をしているな、竹田。
 ふざけたことを言ってるくせに、血走った目の異様な輝きはマジで自分に酔っているらしく、ルナに突きつけている聖剣という小さなナイフも、切れ味だけは本物らしく光っていた。
 じわりと、こめかみのあたりに圧迫を感じる。さすがに僕の血の気も引いた。

「トーマ…ッ、なんで来るのよ…!」

 竹田の腕に爪を立て、涙に潤んだ瞳で僕を睨みつけるルナ。
 誤解して悪かったね。どう見ても君たちはカップルには見えない。

「今助けるよ、ルナ」
「来るな!」
「来ないで!」

 風の音がうるさくて声が通りにくい。
 でも、魔法が通用しない距離じゃない。僕は二人に近づきながらいつものキーワードを宣言する。

「聞け…僕は魔法使いのトーマだ」

 二人とも人形のように動きを止めた。
 そして、まずはルナを解放するように僕は命令する。
 竹田の腕が、ゆるりと落ちる。次に僕はルナに歩いてこちらに来るように命じた。
 一歩、二歩、ルナがスカートをはためかせて歩いてくる。チカが心配そうに彼女の名を呼んだ。

 そして、竹田がいきなり奇声を発する。
 見ると彼は自分の太ももにナイフを突きつけていた。半分ほどが埋まったナイフを握りしめて、竹田は鳥のような声を張り上げていた。
 そして、ナイフを引き抜いて顔の横に構える。僕は再び魔法を叫ぶ。

「僕は魔法使いのトーマ!」
 
 竹田の瞳の色が落ちた。だが、唇を震わせると、またナイフを構えて今度は自分の手のひらに突き立てる。
 彼の出す悲鳴にチカが耳を覆う。ルナが人形のように歩いている。
 僕は竹田に叫ぶ。魔法のキーワードを叫ぶ。

「僕は魔法使いのトーマ!」

 竹田はナイフを抜いて、もう一度手のひらに刺す。僕も思わず目を覆う。チカが「うー」と泣きそうな声を出す。

「俺は……お前を超えたぞ、魔法使い!」

 コンクリートに跳ねる竹田の血。
 濡れたナイフが、彼の狂気を反射して輝いていた。
 苛立つ。そして寒気がする。

「俺の流す血が、世界軸の本来の位置を教えてくれる。ゲートは俺の体内に取り込まれた。見ろ、この傷口こそお前の魔法を壊す円環だ! 俺は、世界を、あるべき場所へ連れていく唯一の存在! 神! 神!」

 設定が粉々だぞ、竹田。勝手に言ってろ。
 僕の魔法を超えることは誰にもできない。お前はまだ勘違いしている。
 痛みでは僕の魔法を解除できないんだ。僕が今までに何人の処女を抱いてきたと思ってるんだ。
 竹田の頭はどこかが狂っていて、それが痛みをスイッチに僕の魔法を解除させている。それだけのことだ。
 魔法が言語に頼っている限り、脳に伝達される限界というのはある。僕の命令を彼の独特の解釈で破壊しているというなら、痛覚で全身の感覚を鈍らせている間にそれを行っているのだろう。
 今、ここで竹田の思考メカニズムを理解する時間はないけど、その必要もない。
 世界で一番魔法に詳しいのは僕だ。鮮やかにこの場を切り抜けてみせるよ。
 この学校のセックスを支配しているのは僕で、そして僕らはセックスに支配されている。
 竹田。
 お前も神なんかじゃない。ただのスケベな中学生だ。

「いいもの見せてやるよ」

 僕は隣を歩いているルナのスカートを握り、一気にまくり上げる。
 彼女の履いているセクシーな下着に目を丸くした竹田に向かって、僕は魔法を投げかける。

「僕は魔法使いのトーマ。ナイフを捨てろ」

 竹田は完全に意表を突かれ、僕の魔法をまともに受け止めてナイフを落とした。
 あとは棒立ちの人形だ。
 あっけない幕切れだけど、まあこんなもの。どれだけの狂気を溜め込もうと男子なんてこんな程度だ。
 僕は誰でも操れる自信がある。ルナのパンツにはちょっとだけ感謝だけど。

「帰れよ、竹田。二度と来るな」

 そしていつもの退散命令だ。竹田の体がブルブル震える。唇がモゴモゴと動いている。

「帰れ」

 ゆっくりと竹田の足が動き出す。ゼンマイ切れのおもちゃの兵隊みたいに緩慢な歩み。

「ルナ、魔法解除だ」

 ぼんやりした目に光が戻り、少し呆けた顔でルナが僕を見る。
 僕はお腹の底から息を吐く。
 だけどそのとき、竹田が顔を上げた。
 爛々と輝く瞳が僕を見て、にたりと笑った。

「――アハハハハッ! 見ろ、魔法使い! 俺は魔法を攻略している!」

 太ももの刺し傷に突き立てられた指が、ぐりぐりと回っていた。
 僕は思わず目を逸らす。その隙に、竹田に首根っこを捕まえられていた。

「ッ!?」

 体を引っ張られる。竹田はその細い体からは想像できないほど強い力で僕を締め上げ、引きずっていく。

「――この街には、魔法使いが住んでいるッ!」

 高らかに響く竹田の声。
 僕はまるで捕らわれた獲物だ。竹田は鉄柵をよじ登り、その向こう側に立つ。僕の体もぐいぐい引きずられ、そっちへ持ち上げられていく。
 首が絞まって呼吸できない。声も出せない。

「やめて!」

 チカが叫んで僕の体にしがみつく。しかし竹田はぐいぐいと僕を引っ張り上げていく。

「竜に乗って空を飛び、炎と水を操って、不思議なカードで未来を語る。魔法使いに出会ったら、願い事が叶う代わりに、大事なものを奪われる! 俺たちは、コイツに全てを奪われたんだ!」

 圧倒的な狂気が、彼の腕を伝って僕の喉を締め付ける。足掻いても振り解けない。
 気が遠くなっていく。チカが必死に僕の名を呼んでいる。

「やめて、竹田!」

 目を覚ましたルナが、顔色を変えて叫ぶ。
 頭に血が昇って意識が薄くなっていく。ルナと竹田のやりとりもだんだん聞き取れなくなっていく。魔法が使えない僕はただのひ弱なメガネだ。

「魔法使いを殺して、世界を元の姿に戻す! 邪魔するな!」
「離せよ、竹田! あんた、頭おかしいんだって! トーマを巻き込むな!」

 揉み合いに振り回され、息も出来ない。もうじき意識も消えてしまうだろう。
 必死にもがいて、ルナが竹田をぶっていて、チカが竹田の腕を引っ張って、竹田が鉄柵の向こうで僕を引っ張って――そして、不意に体が軽くなった。

「……え?」

 ルナの驚いて丸くなった瞳が、僕の見ている前で真下に下がって、そして顔色を変えた。
 僕は、その場に尻餅をついていた。ルナもぺたんと腰を落として、真っ青な顔を僕に向けた。
 肺に、急に空気が入ってきてひどくむせた。
 風はゴウゴウと吹いていて、ルナは歯を震わせていた。

 竹田は……?

 と言いかけて、僕はさっきまで彼がへばりついていた背中の軽さにゾッとする。ルナは血の気をなくした顔を両手で覆った。続く言葉は出て来なかった。
 そして、ルナの知らないもう一人がこの場にいないことに気づいて、心臓がどくんと鳴る。

「チカはッ!?」

 屋上には僕とルナしかいなかった。
 いないのは、さっきまで僕の体にしがみついていた竹田と……チカだ。
 悪い冗談はやめてくれ。
 がくがく揺れる膝を叩いて、無理やり立ち上がる。
 鉄柵にしがみついて、意を決して覗き込んだ。
 風は、下からも強く吹きつけている。まるで嵐を運んでくるかのように。悪い予感を煽るように。

「……え?」

 でも、最悪の光景を想像しながら覗いた地上には何も落ちていなかった。
 その代わり、バシャバシャと水の音がしていて、僕は視線をそちらに動かす。
 僕らの中学のプールは、水泳部の活動のためにビニールハウスになっていた。
 そこはここのほぼ真下にあって、午前中は僕も1年女子と『スク水水泳大会』をやったりもした。
 でもそのぶ厚いビニールには、今朝にはなかった大穴が開いている。その穴の向こうには、プールのふちに捕まって、むせ込んでいる竹田がいた。

 そして――プールサイドで、濡れたスカートを両手で絞っているチカの姿も。

 あぁ。確かに、ここから鉄柵や壁を蹴って思いきり飛べば、女の子の足でもあそこまで届くかもしれない。
 屋上で足を滑らせたバカを抱えてそれをやっちゃうような、クールで無謀な女の子がもしもいればの話だけど。
 
「……無事だよ、二人とも」

 僕の言葉にルナは顔を覆った両手を外し、「二人?」と首を傾ける。
 
「竹田も…ルナも無事だった、って意味だよ……」

 チカは、いつものように何でもない顔をして、こっちに向かってVサインなんか送ってる。
 僕は、へなへなと力が尽き、屋上に仰向けになって曇り空に長い息を吐く。
 息を吐いたら、頬の緊張が弛んで、ようやく笑うことができた。

 ―――竹田ノブテルが病院の窓から飛び降りたのは、それから5日後のことだ。

 旅館の部屋にある備え付けの洗面台で顔を洗う。
 昨夜はチカと激しいことをしてしまったせいで、朝起きても匂いは残っていたし、指もべたついていた。
 軽くシャワーでも浴びたいところだけど、そこはチカが先に使っているようだった。
 僕が顔を洗っている途中で、シャワー扉が開く音がする。僕が顔を上げると、チカがタオルを持って待っていてくれた。

「ありがとう」

 チカは濡れた体を簡単にバスタオルで拭くと、くるりと体に巻いて僕の隣に並んで顔のチェックを始める。
 ちょっと日本人ぽくない、欧風な横顔。こうして改めて顔を眺めるたびに思うんだけど、きれいな子だな。今この瞬間を写真に撮れば「人魚みたい」なんて歯の浮きそうなこという男も多いだろう。
 昨夜の乱れっぷりがウソみたいだ。

「あ、そういや布団はジュリの香水かけて押し入れに突っ込んでおいたから」

 僕らの使っていた布団のことを思い出して顛末を教えてやると、チカは僕のお尻をバチンと叩いて出て行った。
 
 修学旅行は2日目の朝を迎える。

 竹田の自殺は生徒たちにも衝撃を与えはしたが、尾を引くようなことはなかった。
 もともと彼は男子の間ですら「厄介な変わり者」だった。悲しむ友人も学校にはおらず、飛び降りたのも措置入院後のことだったので学校問題として取り上げられることもなく済んだ。「不幸な病死のようなもの」だと、校長は生徒に説明した。
 僕は竹田の告別式にも行っていない。ほとんどの生徒がそうだったように。
 むしろ、3週間後に控えた修学旅行に水を差されることをみんな警戒していた。何もこんなタイミングでって、生徒も教師も最初からそういう雰囲気だった。竹田ノブテルの名前も事件のことも、積極的に話題から消されていった。
 いつもの日常がすぐに戻ってくる。そして僕らは、修学旅行を楽しんでいる。
 唯一、ルナだけを除いて。

「うっほほ~! バイキングだホー!」

 クミのテンションは朝から最高潮だ。
 早朝の温泉にも入ってさっぱりとした僕らを、山盛りの大皿が出迎えてくれた。
 中学生の旺盛な食欲を見越したのか、朝だというのに唐揚げやトンカツといった揚げ物がメインだ。食の細い僕は軽い胸焼けを感じる。食が太いクミは本物のバイキングのように肉を食いちぎる。

「ゆうべはおたのしみだったからお腹もすくよねー。ジュリ、私にもペペロン盛ってきて。メガだよ、メガ盛りでね!」
「自分でやんなさいよ!」

 僕はお椀に盛ってきた冷たいソバをすすりながら、朝から元気な女の子たちのやりとりを聞き流す。
 チカの姿が見えないと思ったら、中庭でパンをかじりながら石飛びをしている。けんけんと飛び跳ねる彼女はまだ浴衣姿で、あいかわらずマイペースに温泉旅館を楽しんでいるようだった。

「トーマ君、いい?」

 ジュリが僕の隣に体を寄せ、構えたケータイで自撮りする。そしてすぐにちまちまとメールを打ち出す。写真を撮る時だけ楽しげに、そしてメールを打つ横顔はむしろつまらなさそうに見えた。

「……ルナ、何か言ってきた?」

 むにゅっと唇を突き出して、ケータイ画面を睨みながら彼女はつぶやく。

「なーんにも。生意気だよね、ルナ。本当はくやしーくせに」

 色の白いジュリは頬の色の変化がすぐにわかって、本気で怒ってるときとそうでないときの違いも簡単に見分けがついた。
 ずるずるパスタをすするクミも、もうジュリをからかうのはやめたようだ。フォークを置いて、「よし!」と立ち上がって自分の大盛り皿を僕の方に寄せる。

「みんなで撮ろうぜ! めっちゃ盛り上がってるとこ!」

 びっくりして目を丸くしていたジュリも、すぐにクミの言わんとすることを察して、にやりと唇を上げた。

「よーし、こい! みんな集まれー! トーマ君と写真撮るよー!」

 僕の前にたくさんの皿が盛られ、なぜかナイフとフォークまで持たされ、女の子たちが集合してべったりとくっつき、まるでハーレムの王様か大食いチャンピオンみたいな格好で写真を撮られる。

「はい、送信っ」

 ジュリはさっそくそのケータイを掲げ、「くやしがれー、ルナ」などと言って笑う。
 それからなぜか僕とイチャ写を撮ってルナに送るのがブームになったらしく、マナホが唇に咥えて差し出すポテトなんかをかじりながら、にぎやかな女の子たちに囲まれて朝食をすごす。
 チカは、スズメにパンをあげていた。

 国宝や文化遺産や仏像を眺め倒して、京都タワーに到着。
 レトロな佇まいなのに、寺社関係ばかり見てきたせいか近代的な建物に思えた。
 モエミの解説によるとタワー開業は昭和39年。ゆるキャラのたわわちゃんは色白のおっとりした女性。少しモエミに似てるねと言ったら嫌がっていたけど、あとでたわわちゃんストラップを買ってきて僕のケータイにも付けて欲しいと言ってきた。
 ストラップって邪魔くさくて好きじゃない。でもせっかくのお土産だし僕も少しは修学旅行のテンションというやつだし、たまにはこういうのも付けてみようかと思ったら、バッグの中に僕のケータイが見あたらなかった。
 あれ? 最後に確認したのっていつだっけ?
 今朝、妹のメールに返信して、手荷物用のメッセンジャーバッグにしまって、それきり見てはいない。
 別になくても困りはしないが、学校の女子をランクごとにフォルダ分けして、さらに校外のセックスフレンドに関してはもっと露骨なフォルダ名(「おっぱい」とか)で分類しているあのアドレス帳を他人に見られたら、また僕の黒歴史に余計な1ページが増えることになる。
 魔法使いは、意外と恥が多い仕事だ。

「モエミ、ごめん。ちょっと僕のケータイ鳴らしてくれる?」
「え、なくしちゃったの。大変」

 モエミが僕の番号にコールしても、バッグの中にもポケットの中にもない。旅館に忘れてきたのかな。
 そのとき、ツンと誰かに背中を引っ張られた。
 チカが「話があります」と僕の顔をじっと見上げている。チカが『空気』にしか見えないモエミは、僕が何を見て固まっているのか理解できず、僕の視線の先を探して戸惑っていた。
 僕は、チカが掲げる震える携帯電話を見ている。

「…なんで僕のケータイをチカが持ってるの?」
「そのことで、話があります」

 チカは僕のケータイを操作して、メールの画面を開いた。
 受信トレイには、今朝見たときにはなかったルナの名前が表示されていた。

『橋のところにいる』

 意味不明なメッセージに首を傾げると、チカも僕と同じ角度に首を傾ける。
 そして、淡々と答える。

「ゆうべトーマ君の携帯でルナにメールしたら、京都に来ちゃったみたいです」
「なッ!?」
「えと、トーマ君、どうしたの?」

 心配そうに後ろを付いてくるモエミに「ちょっと出てくるだけだから」と言って、僕はチカに引きずられるままタワーの外に出る。
 古都とは言っても、駅前は十分に都会だ。まだ出来て新しいという駅ビルを中心に、人だかりはにぎやかだった。

「なんで勝手にメールしてんだよ。しかもルナを呼び寄せるなんて」
「勝手じゃないです。ちゃんとトーマ君にお願いを聞いてもらう約束はしました。お願いするのを省略しただけです」
「そこが肝心の約束した部分だろ! ていうか、昨日の勝負なら僕の圧倒的勝利だったじゃないか?」

 ゆうべのセックスは激しかった。
 チカは何度も絶頂したし、最後はお尻の穴でイかせて失神させてやった。
 どう考えても僕のパーフェクトヴィクトリーだった。 
 なのに、チカは平然とぬかしやがった。

「ゆうべのアレなら、演技です。私は一度もイキませんでした。でもトーマ君は私のお尻の中にイッた証拠を残してましたし」

 汚い。女ってホント汚い。
 誰だよ女なんて作ったやつ。変態か?
 僕はしらっとした顔のチカに向かって、鋭く指を突きつける。

「ふざけるなよ! 君だってあんなにヒィヒィ言ってイキまくってたじゃないか! 潮だっていっぱい吹いてさ! あれが演技なら君はAVでアカデミー賞を獲れるよ! 主演女優賞だよ! まさに体当たりの演技だったね、お尻の穴まで使わせるなんて! あぁ、確かに君は最高の女優だったよ! そして最低のビッチさ! 君が恥ずかしいだろうから黙っててやったけど、あのときちょっぴりおしっこ漏らしてたことだって知ってるんだぞ、僕ぁ!」
「……トーマ君」

 チカは、つるつるしたおでこにシワを寄せて言った。

「京都の人たちに、どえらい変態がきたと思われています」

 空気のチカは誰の目にも映っていない。
 彼女の背後で、たまげた顔をして固まっている行きずりのお婆さんをAVアカデミー賞に推薦している僕は、確かにどえらい変態中学生だった。

「……で、ルナはどこ?」
「大丈夫です。この近くにはいないみたいです。とりあえずここから離れましょう」

 僕の黒歴史に、余計な1ページが増えた。
 チカには今晩男湯でセックスしてやることを心に誓いながら、僕は彼女と一緒にその場を逃げる。

「どこに行けばいいんだよ!」
「ルナは橋のところにいるって言ってます。そのあとメールを送っても返事がありません。探しましょう」
「あてずっぽうか。そんなので見つかるわけないだろ。土地勘もないし」

 京都なんだし、その辺に寝転がってる妖怪に団子でもあげれば親切に教えてくれるかも知れないが、クミたち妖怪ハンター班もまだ発見できていないと言っていた。
 しかしチカは目を細め、自信ありげにキラリと光らせる。

「大丈夫です。ルナの行方なら、そのへんの男の子の会話を聞けばだいたいわかります」
「え?」

 川沿いを歩いている僕らの横を、自転車に乗った同い年くらいの男の子2人組が通り過ぎていく。

「あかん。やっぱ引き返そう。マジで惚れてもうたわ、俺」
「だから無理やて。あの子は素人ちゃうやろ。撮影で来たモデルかなんかや。見たことないオーラ出とったやん?」

 チカは、すかさず振り向いて「こっちで合ってるみたいです」と僕の手を引いて足を速める。
 いつもの無表情の中に、なぜかちょっと自慢げな感じが見え隠れしてた。
 そのまま、川沿いを進んで何本目かで、髪の長い女の子を見つける。
 こっちに背中を向けているけど、すぐにルナだとわかった。
 彼女も僕に気づいて、軽く片手を上げた。

「うっす」

 中学生のくせに、よくもまあ、ここまで自分に似合う服を揃えられるもんだなっていつも感心するんだけど、考えてもみればオシャレな服なんてスタイルの良い子に合わせて作ってるんだから、何を着てもルナには似合ってしまうのは当然だ。
 などと、どうでもいいことを考えて僕は誤魔化す。
 ひさしぶりに会った彼女に、なぜか一瞬、うろたえてしまったことを。
 長い髪をゆっくりかき上げる。たったそれだけの仕草でも、慣れない男なら勝手な期待と深読みをしてしまうだろう。そして気がつけば彼女のことばかり考えてしまうんだ。
 確かにこうして外でルナに会ってみると、あの男の子たちの言ってたことも頷ける。
 コイツ、見たことないオーラ出とるやん。

「ごめん、探させちゃった? ジュリとかバカみたいにメール寄越すからさぁ。途中で電池なくなっちゃった。バッテリーも忘れてきちゃったし」

 ひらひらとケータイを振って、ルナはわざとらしく笑う。返す僕の笑顔もきっとぎこちないのだろう。

「あー…なんか久しぶりだね」
「そうだね、そんな感じだ」

 僕らの会話は、どこかよそよそしかった。
 上滑りしてる会話の合間を縫って、チカが後ろから僕の耳に口を寄せる。

(メールのことを言われたら話を合わせてください)

 そういや、ルナになんてメールしたのか僕は聞いていない。妹にメールしたときには、とっくに削除されていた。
 チカはルナにどんなメールして、そしてルナはどうしてわざわざ京都まで来たんだ。
 それをこっそりチカに聞こうと思ったら、その前にルナが意外なことを言う。

「ところでさ…あんたの名前で私にメール送ってきたの、誰?」

 僕はチカに向かって目配せをする。
 チカは、彼女にしては珍しく、はっきりと驚いた顔をしていた。

「あんたが、あんな甘ったるいこと言うはずないもんね。どうせ誰かに言われてメールしたんでしょ? ジュリ? それともクミ? バレバレだって」

 みるみるチカの顔が赤くなっていく。
 どんなことを書いたのか知らないが、彼女をここまで赤面たらしめる名文をこの目で見れなかったのは残念だ。
 僕はどう反応していいのかわからず、とりあえず苦笑を浮かべてごまかした。
 ルナは、「…やっぱりね」と俯いて笑った。

「ま、わかってたし、いいよ。新幹線代はもったいなかったけど」

 長い髪が風になびく。
 ルナは少し痩せていた。それとも、「また大人っぽくなった」というのが正解なのかもしれないけど。
 僕はなんだか、うまく言葉が出てこない。魔法の必要ないこんな場面で、なぜか緊張している。

「みんなと合流するの?」
 
 ルナはクスッと吹きだして、「着替えも何にも持ってないし」と笑う。
 確かに小さなバッグがひとつ、彼女の横に転がっているだけだ。
 じゃあ、どうするのと、僕は尋ねる。
 彼女の答えは明確で、いつもどおりの提案を、いつもと同じ笑顔で言った。

「まあ、とりあえずセックスしようよ。――今すぐ、ここで」

 それはちょっと、ありえないと僕は答えた。
 でもルナは「どうせ京都だし」と、よくわからないことを言って、僕にしがみついてキスをしてきた。
 いつもの彼女のいやらしいキス。京都の風と、京都の川。
 すぐに頭がのぼせていく。確かにここは僕らの街から何百キロも彼方で、どうせたった一度の修学旅行じゃないか。
 僕とルナはキスをしたまま呼吸を激しくして、互いの服を脱がせていく。ジーンズを下ろすと、薄い下着に包まれた彼女のお尻があらわになった。
 その張りのある丸い形はよく知っているはずなのにどこか懐かしい。薄暗い橋の下で、ほんの少しの物陰で僕らは下半身を裸にする。
 体に触れることで、ルナとの間にあったわずかな緊張はなくなった。長年触れあってきた肌に安心する。幼い頃からセックスだけで繋がってきた僕らは、会話より雄弁に愛撫し合うことができた。
 橋の上では車も通るし、そのたびに不愉快な音が響いた。河川敷はいつ人が通るかわからず、僕らはとても無謀な裸体を晒していることを自覚している。
 しかしそのことがさらに興奮を加速させた。久しぶりのルナの肌、唇、吐息、濡れたアソコの毛の感触。舌を絡め合うだけでそこはどんどんと溢れてきた。そして僕も痛いほどに張り詰めていた。

「…私は誰? 言って」

 コンクリートの壁に手をつき、僕にお尻と切羽詰まった顔を向け、ルナは唇を舐める。

「言って、めちゃくちゃに犯して」

 心臓がばくばく鳴っている。
 見慣れたはずのルナのお尻が、まるで初めての獲物のように僕の欲求をかき立てる。

「君は“アダルト女優のルナ”だ」
「はあぁぁぁんッ!?」

 シチューのように熱いルナの中へ挿入する。ぐちゅり、と音を立てて彼女の中が締まり、汁を吐き出して絶頂した。
 でも僕は、彼女に休む間もなく腰を動かす。我慢するつもりも余裕もなかった。

「んぐぅっ! あぁッ! 突いて、る! 私のオマンコ、トーマに突かれてるぅ!」

 膝を震わせるルナのお尻を支え、そこへ角度を付けてペニスを突き立てる。
 ルナはそのたびに体を痙攣させて、アソコから潮を飛ばしていた。

「あぁっ! オマンコ、止まんないよぉ! いきなりすごいの、きてるっ。チンポ気持ちいい! トーマのチンポ、気持ちいい!」

 彼女の快感は激しく、僕にも伝わってくる。
 ルナは、セックスの間を空けるほど感じるんだ。僕らはもう何日もしていなかった。彼女は飢えている。セックスに。僕のチンポに。

「はぁっ、はぁぁっ、いいっ! いいっ! 狂っちゃうよ、私…チンポに狂っちゃうっ! もっと、して、もっと、乱暴でいい!」
「声、大きくない? 人が通ったらバレるよ?」
「どうでもいいの、そんなの! チンポ、もっと動かして、私のオマンコ、壊してよぉ! あぁっ! あぁっ!」

 やがてルナが立っていられなくなって、地面に手と膝をついた。それでもセックスを止めるわけにはいかず、僕は彼女のお尻を抱えて激しく運動する。
 ルナは長い髪に土をつけ、涙とよだれに乱れた顔に草を飾る。
 本当にレイプしているみたいだ。僕は彼女の服とブラを強引にたくし上げ、胸をあらわにして揉みしだく。
 ルナは悲鳴を上げて腰を振った。「犯して、もっと犯して」と泣いてアソコから潮を吹いた。
 通りかかった誰かが、僕らを指して声を上げる。

「えっ、何やってんの、あの人たち!?」
「うそっ、あれ…本当にやってない?」

 ルナは「やめないで」と叫ぶ。「このまま続けて」とお尻を振る。
 ケータイを出した彼女たちを意識するなと言われても無理だけど、僕はセックスを続行する。
 他のことはどうでもいい、と思えるくらい気持ちの良いことも世の中にはある。僕らのセックスはその場所に届いていた。ルナの中を往復して、そして彼女が何と言って泣くのか、今は気持ちのいいことを続けたかった。
 そのとき、僕の耳が温かいものに包まれる。

「んっ、くちゅ、ちゅぷ、んっ…んっ…」

 チカが僕の耳たぶを甘噛みして、舌を動かしている。
 ぞくぞくとしたくすぐったさと快感が背中にまで伝って、思わず腰も痺れた。

「続けてください…トーマ君…」

 くちゅくちゅ舌の音と一緒に、チカの声が耳に溶ける。

「やだ…やめないで、トーマ…」

 ルナのお尻が器用に動いて、僕のペニスを締め付ける。

「…あれ? なんだっけ?」
「え、なにが?」

 川原の女の子たちは、自分たちが足を止めた理由を忘れて歩き出す。
 空気のチカが何かを自分の中に入れれば、それも『空気』に感染する。彼女に耳を吸われている僕も、僕と繋がっているルナも今は空気だ。
 それを知らないルナは、まるで彼女たちに見せつけるつもりでやってるのかと思うくらい、激しく感じ始めた。

「あぁ! あぁ! このまま、やめないで! オマンコいい! 犯されて気持ちいいの! 知らない人の前で、犯されてるのに、頭おかしくなるくらい、気持ちいいのぉッ!」

 すけべな女の子。
 いやらしくて、どん欲で、とてもきれいな僕のアダルト女優。
 
「んっ! ふっ、ちゅっ、んっ、れろっ、んんっ」

 チカも興奮してきたのか、息が熱くなっていく。
 僕もこの異常な場所でのセックスに興奮しすぎて、軽く目まいを起こした。
 ルナのお尻。顔。おっぱいを汚して橋の下で犯す。ルナは獣みたいな声を出して、目の玉を半分ひっくり返した。
 さっきの男の子たちは、こんなルナに一目惚れしたんだ。モデルみたいだって言ってた。
 もう一度彼らがルナに会いに戻ってくればいいのに。そうしたら、チカに命令して、僕に犯されて喜ぶルナをたっぷり見せつけてやるんだ。

「死んじゃう! 死んじゃう! トーマのチンポで、私のオマンコ死んじゃうぅぅ!」

 そして、こんなにすけべな女子中学生、他にいないぞって言ってやる。
 僕の魔法が彼女をこういう女に変えた。彼女は僕のものなんだ。
 ルナの体を押さえ付けるようにして、叩きつけるように腰を動かす。彼女は顔を地面にこすりつけ、「もっと乱暴にして」とねだった。
 ルナはレイプされたいんだ。外で、乱暴に犯されたいんだ。
 僕はますます興奮していく。さかった犬みたいに繋がって、速くうるさく腰を突き動かす。

「あぁっ、あぁっ、あぁっ、あぁっ、きちゃうっ、大きいの、きちゃうっ!」

 身震いをしてルナが叫ぶ。付き合いの長い僕には、彼女の反応を見れば次来るのが最高の絶頂だということはわかる。
 ぎゅうぎゅうと締め付けが厳しくなる中をスパートしていく。ペニスの耐久力を削っていく快楽。僕の背中に胸を押し当て、耳の中をくちゅくちゅ動くチカの舌も、僕たちを守るためなのか、それとも自分の切なさを伝えるためなのか、わからなくなっていく。
 出る。もうすぐこのセックスが終わる。そのことが本当に惜しまれるくらい、僕の頭は快楽に埋め尽くされる。

「いくよ、ルナ! もう出る!」
「あぁっ、出して、トーマ! 中に出して!」
「な、中は、ダメだって…外に出すよ」
「やだぁ! 中がいい! 絶対に、中がいい! 外になんか出さないでぇ!」

 きゅーっと彼女の奥から降りてきた子宮の入り口が、僕の先端を捉えて締まる。
 少し漏れてしまったかもしれない。でもそれをぢゅうぢゅう吸うみたいにルナの中が蠢いて、僕の射精を誘う。
 女の子のメカニズムには本当に驚嘆する。理性まで溶かされてしまいそうだ。考えるのが面倒になっていく。
 このまま、彼女の中で全てを失ってしまいたいという誘惑に、くらくらする。

「中は…ダメ、だって…妊娠しちゃうよ…」
「いいじゃん、産ませてよぉ! あぁっ、あぁん! 赤ちゃんくらい、産むよぉ! 私の、オマンコで、トーマの赤ちゃん産んだら、きっと、気持ちいい! チンポで、こんなに気持ちいいなら、赤ちゃん、絶対気持ちいいから! 産ませて! 私が、育てるから、産ませてぇ!」

 ルナはますますお尻を激しく振った。
 彼女を野外でレイプして妊娠させる。彼女のオマンコから僕の赤ちゃんが出てくる。
 そんなことを想像して僕も興奮した。頭がどうにかなっていた。
 早く出したい気持ちだけで腰を乱暴に動かし、ルナのお尻にパンパンと音を立て、後先のない射精に向かって全身を没頭させて―――

 かりっ。

 そのとき、僕の耳たぶを囓ったチカの歯が、最後の理性を繋ぎ止める。
 小鳥の羽音みたいなささやきが、頭の奥で鳴った。

「中はダメです」

 我ながら、よく脱出に成功したなっていうくらいギリギリで、僕はルナのお尻から離れた。
 バネのように跳ねた僕のペニスから、大量の精液が飛び出してルナのお尻の上にかかる。
 どく、どく。精液が尿道を通るたび、僕の心臓も跳ねた。軽い貧血を引き起こしながら、僕の性欲がルナのお尻に襲いかかる。

「あぁぁ、あぁ…はぁぁぁ…ッ…」

 泣いてるみたいな声を出して、ルナの体がくんにゃりと崩れ、お尻だけ残して力尽きた。
 ルナのお尻やお尻の穴にかかった僕の精液が、彼女の肌にたっぷりと溜まっていた。

「はぁー、はぁー、はぁー…っ」

 僕もその場に尻餅をついて、深呼吸をして息を整える。まだお尻の辺りまで痺れるような快感の余韻があって、動く気にはなれなかった。
 京都の街で、野良犬みたいに野外セックスするなんて変な修学旅行だ。
 でも気持ちよかった。ペニスがじんじんする。

「……ねえ」

 地面に伏せたまま、ルナが呟く。

「私たちって、なんなの?」

 僕の方からは彼女のお尻しか見えない。
 彼女はそのだらしない格好のまま、言葉を続けた。

「セックスして、フェラチオして、アナル舐めて、学校でも家でも外でもそんなことして…ま、それはそれで楽しいけど」

 僕は何も言わず、彼女の言葉を待つ。
 彼女のお尻に、ゆっくりと僕の精液が流れ落ちる。

「…別に、それでいいと思ってたんだけどさ」
 
 ぽたり。
 精液がルナの下着に落ちた。彼女の内股を伝って、筆でなぞったような跡を残す。

「竹田は死んでも、私たちは変わらずセックスしてる。それが何だか…すごく、不思議なことに思える」

 僕はセックスしながらルナを自慢したいと思った。彼女のすけべな乱れぶりを、いやらしい顔をみんなに見せてやりたいと思った。
 竹田にも見せてやりたいと、思うかもしれない。

「…竹田は、死ぬ前にどんなことを考えたんだろ。死んでどうするつもりだったんだろ。そんなことばっかり考えてたら、学校行くのも修学旅行に行くのも、面倒になった。なんだか…怖いことばっかり考えて」

 風はさっきよりも冷えている。僕の精液もすぐに乾いてしまいそうだ。
 竹田の死が今もルナの心に引っかかっているんなら、それを解き放つのも簡単のこと。
 僕の魔法で忘れさせればいい。竹田ノブテルの記憶ごと。
 彼女が苦しんでいるのなら、僕はそれをしてやってもいいと思った。彼女のセックスに免じて。
 
 ――だけど続くルナの言葉に、逆に僕が縛られる。

「竹田の言ってた魔法使いが本当にいるなら、会ってみたいよ。竹田の魂を救って…私も助けてほしい」

 それは一瞬にして僕の最も古い傷口に届いた。
 夕暮れの屋上に記憶は落ちていく。
 ポツンと灯る一番星。
 寝そべって見上げる僕ら。
 繋がった小さな手。
 殴られたアザのある唇が緩やかに動く。

 “魔法使いに会いたい”

 僕は雷に打たれたように動けなくなる。
 何度もリフレインする同じシーンが、頭の中を真っ白にした。

「…ごめん。バカなこと言った。今のナシ」

 立ち上がって、僕の精液がついたお尻をそのままジーンズの中にルナはしまった。ぎゅっと、濡れた音をさせて狭いジーンズの中にルナのお尻が収まった。

「もう帰るわ。あー、明日、映画村なんでしょ? お土産にあれ買ってきて。印籠? じいちゃんと約束してたんだよね」

 背を向けたまま指で四角い形を描くルナ。さくさくと草を踏んでいく。
 チカが僕らの間で視線を交互させる。だけど僕は、声をかけることも、追いかける気にもなれない。

「あと、ジュリのバカにもうメールすんなって伝えといてくんない? じゃね」

 チカが数歩、ルナを追いかけ、そして迷い犬のように僕のところに戻ってくる。
 橋の上を大きな車がゴウゴウと走り抜け、冷たい風が川面と僕らの間を渡る。
 薄暗い橋の下で、僕はあの日の一番星を探している。それは遠い国の出来事みたいだった。
 自分のいる場所が、もうわからない。

「…トーマ君?」

 チカが僕の手を握る。強く僕を繋ぎ止める。
 僕はゆっくり思い出す。チカの不格好な前髪が揺れる。彼女は魔法の匂いをさせていた。
 そして僕は、彼女の腕を振り払う。

「なんでもない。行こう」

 修学旅行は、残りの日程を消化して終わった。

< つづく >

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