とある王国の悲劇 剣姫編6 中編・正

剣姫編 6(中編・正)

「ふふっ。楽しんで頂けましたか?」

 不意にかかった声に、王が振り向く。
 そこには乱れた髪を纏めながら立つ、剣姫の凛とした姿があった。
「馬鹿なっ!」
 王が驚愕した。
「お前の力は奪ったはずだっ!」
 壺を指差し怒鳴る。
「……力?」
 姫が小首を傾げる。
「あぁ、これの事ですか?」
 その言葉が終わると同時に、姫の体から触手が生えた。
 壺には何の変化も無い。
「そんな……馬鹿な……」
 驚き後退る王に、姫が語りかけた。
「……良い想いができたでしょう?」
 姫は笑う。
「あまりにも有頂天でしたので、私も思わず合わせてしまいました」
 子供のように無邪気に。
「私からの手向けです」
 触手が急激に伸び、王の体に絡みつく。
 茫然自失となっていた王は反応できなかった。
 四肢を拘束され、姫の元に引き摺られていく。
「は、放せっ!」
 王は足掻くが、触手はびくともしない。
「何故だっ! 何故壺が効かないっ!」
 王が喚く。
「いえ、効いていない訳ではないですよ」
 姫が壺を持ち上げ、落として割る。
 すると中から黝きモノが這い出てきた。
「あぁ、ん!」
 それはズルズルと蠢き、姫の秘部より侵入して行く。
「ただ、父上は勘違いをなされていただけです」
「勘違いだと?」
「はい」
 姫は静かに語る。
「私の中にあるモノは、純粋な、ただの『力』なのです」
「……何?」
「そこには自我もありません」
 王は信じられないといった顔をした。
「力は最早私そのもの。吸い込まれたのは表層の極一部だけです」
「……では何故、お前や前の剣士はあんな行動に出たのだ」
「人は力を得たらどうします?」
 姫は問いに問いで答えた。
「本来の自分では決して為し得ない事が出来る力ですよ」
「それは……自分の欲望の為に使うだろう」
「正解です」
 姫は微笑んだ。
「剣士とは腕を試したいものでしょう? 爺も言っていました」
 それは王も理解出来た。
 かつての自分もそうだった。
「それに男子足る物、一度は一国一城の主を夢見るものだと聞きました」
 それも理解出来た。
 だからこそ王になったのだ。
「なら剣士が父上に挑んだ理由は分かりますね?」
 王は言葉も無い。
 そんな理由で、たった一人で城に乗り込んで来たのか。
 あまりにも無謀だった。
 だが、心のどこかでは理解もしていた。
「……力とは、そういったものなのでしょう」
「……では、お前はどうなのだ」
 王は問う。
 剣姫の行動は王の理解を越えていた。
「私の目的は、この国の弱者の救済です」
 姫は応える。
「何だと?」
「私は許せませんでした。支配階級に生まれただけで、弱者を虐げる者達が……」
 その目に憎しみが宿る。
「何故生まれた場所が違うだけで、ああも他者に対して非道になれるのか……」
 又、その目は悲しみにも濡れていた。
「それを私は何とかしたかった……ですが、きっと無理だったでしょうね……」
 姫にどこか自嘲するような笑みが浮かぶ。
「私に出来る事は、精々政治に首を突っ込み、弱者に施しを与える程度……」
 父である王を見る。
「貴方達の支配を覆す勇気はありません。夢のまた夢だったでしょう……」
 姫の目が諦めで曇る。
 姫の独白に王は口を挟めなかった。
 こんな力の無い姫は見た事が無かった。
 今目の前に居るのは、何処にでも居そうなただの小娘だった。
「そうして諦観しそうになった時、この力を手に入れたのです」
 その目に力が宿る。
 その目で王を見詰めた。
「最初は恥辱に感じましたが、すぐに力の本質を理解し、狂喜しましたよ」
 満面の笑顔が浮かぶ。
「これで私の望みは全て叶う、と」
 その笑顔は、どこか人間離れした物を含んでいた。
 王は本能的に恐怖した。

「……さて、少し話し過ぎましたね」
 優しげな笑顔。
 だが、逆にそれが恐怖を増大させる。
「冥土の土産には充分でしょう」
 触手が蠢き、王の衣服を剥ぎ取った。
「最後に楽しませてもらいますよ、父上」
 笑顔が妖艶なものに変わった。
「何をっ! 止せっ!」
 王が抵抗しようと足掻くが、触手はびくともしない。
「先程は自由にさせてあげましたから、今度は私の番ですよ」
 そう言うと触手が王の男根に近付き、針を伸ばす。
「何をする気だっ!」
 こんな状況である、流石の王も無論勃起等していない。
「……ふふっ、私からの贈り物です」
 針が男根に突き立ち、何かを注入する。
「ガアァァあアァァあぁぁぁァァああッァあっ!」
 王が絶叫した。
 男根がみるみる大きくなっていく。
「もっと素敵にしてあげますね」
 姫はうっとりと呟き、さらに巨大化させていく。
 それは最早、人間の性器では無かった。
「あ……あぁぁあ……ぅぁああ……あぅ……」
 王の喘ぎが続き、しばらくしてようやく止まった。
 そこにあったのは、余りに巨大で凶悪なものだった。

「では、楽しみましょうね、父上」

「くそっ! やめっ……ろぉぉ!」
 仰向けに転がされている王に、姫がゆっくりと這いよる。
 そして、巨大化した男根に口を寄せた。
「素敵ですよ、父上」
 姫はゆっくりと舌を這わし、口に含む。
 その動きに王は、この世の物とは思えぬ快感を感じていた。
「やっ! め……ろぉぉっ」
「あら? 口はお嫌ですか?」
 何処か見下すような、また、子供をあやす様な声で姫が言う。
「では、こちらでお相手いたしますね」
 そう言うと身を起こし、王の体に跨った。
 そして、自らの秘部に王の男根を宛がう。 
「よ……よせっ!」
「焦らしては嫌ですよ」 
 姫はゆっくりと身を沈めていった。
「あ、あぁん」
 みるみるうちに男根が飲み込まれていく。
 王はあまりの快感に言葉も出ない。   
 体が痙攣を起こしていた。
「こらっ! 駄目ですよ。挿れてる途中で大きくしたら……」
 無論、王が自分でしているのではなかった。
 姫から与えられる快感に、無理やり大きくさせられているのだ。
 その反動で体がびくりびくりと激しく痙攣した。
「自分から動くなんて、積極的ですね」
 姫がからかうように笑う。
 そしてその動きに合わせる様に腰を蠢かせた。
 それが更なる快感を生み、王を狂わせる
「がっ! はっっ! ァあぁ……アぁはぁぁぁあぉぉっ!」
 王が断続的に喚くが、それは最早人の声では無かった。
 凄まじい人外の快感に、流石の王も精神の限界に来ていた。
「もう終りなんですか? 父上」
 姫が残念そうな表情を作り、王の顔に寄せる。
 その間も腰は休まず蠢き続けた。
 王の呻きは叫びになっていく。
「……でも安心して下さいね」
 言うと叫びを塞ぐ様に、姫が唇を重ねた。
 そしてたっぷりと口内を蹂躙する。
 王の痙攣はますます限界に達しようとしていた。
「全て受け止めて上げますね」
 極上の笑顔で唇を離した。
 そして耳元で囁く。
「父上の王国は、私が立派に守って見せますから」
 その一瞬、王の瞳に光が戻ったように見えた。
「ふふっ!」
 姫が笑いながら体を起こし、深く体を沈み込ませた。
 引き摺られるように王の体が一層激しく痙攣し……止まった。

「あはははははははははははははははははははははははははははははは!」
 姫の高笑いが、王の間に響き渡った。

< つづく >

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