或る村の記録 第三章

(5)

「加奈ちゃん?」
 弘樹が、その名前を聞くのは、初めてだった。
 クラスの人じゃないはずだ、弘樹はそう思ったのだが。
「ひきこもり、になるのかな。教室には来てないんだ」
 委員長、恵美子の言葉に、弘樹は首をかしげる。
「なるほど。でも、なんでそんな話を?」
 あれから、何度も放課後のセックスミーティングに参加したが、まだ弘樹は参加していなかった。
 どうにもふんぎりがつかないのだ。
 別にやってもいい気がするが。
 それでいいのか、自分は、という感じもする。
 そうして一週間ほどが経ったこの日、弘樹は加奈のことを聞いたのだった。
「いやぁ、加奈ちゃんも、セックスしてないんだよねぇ。だから、気が合うかなって思ってさ。うちらとしては、気軽に気楽に楽しくセックスできればよくって、だれかを仲間外れにしようとか、そういうのはないから――」
「うーん、加奈ちゃんは、セックスしたくないからひきこもりなわけ? 違うんじゃない?」
「いや、それは正直、わからんけども」
 樺山さんと委員長が話し出す。
「まあ、あの子もわたしたちがセックスしてるのを見てから、学校に来なくなったわけでね。なんか、そこらへん通ずるものがあるんじゃないかと思わなくもなくってさ」
「俺の理解では、ひきこもりを無理に外に出そうとするのは逆効果なんだけど」
「あー、なんていうか、問題ないんならそれでいいの。様子を見てきてほしいっていうかさ。ほら、わたしたちのセックス見せたせいで対人恐怖症になってたら、後味悪すぎるし、でも、もしそうならわたしたちが行っても逆効果だしさ。そんで、うちらのセックスを見ても、逃げもせず参加もせず、ただ見ているだけの君にちょっと見てきてほしいんだよね。そういう人間は始めて見るよ」
 やっぱりここでも自分はなじめてないな、という想いが出てきてしまう。
 自分は自分なりに動いているだけなのに。
「基本的に学校の図書室にいるから、ほら、今日の課題。いつもはわたしが持って行ってるんだけど、今日は」
 もし受け取り拒否されたりしたら教えてね、五時くらいまでは学校にいるから。
 委員長はそう言って、教室を出ていく。
 今日もまた、セックスに励むのだろうか。
 とりあえず、弘樹は教室に行ってみることにした。

「つーわけで、課題を持ってきた」
 黙って受け取る加奈。
 かたわらに、読みかけていた「世界の風習 婚姻編」という本を置いて、弘樹の方を見る。
「話はだいたいわかったよ」
 メガネに腰あたりまで届く長髪。手入れが大変じゃないのか、と弘樹は思う。
「でも、本当かなあ? セックスに誘われてのらない男なんているの?」
「ちょっとした偏見だなあ。いるよ、そういう男も」
「もし本当だったら、けっこうおもしろい人だね、きみ」
「本当だって。なんなら自分の目で確かめてみるといい」

 と言ったら、本当についてきた。
 最初のころは、委員長もびっくりしていたが、しだいに慣れて、今では、クラスのみんながセックスしているのを、弘樹と加奈の二人が見ているという光景ができあがりつつある。
 そんなことが一週間くらい続いたある日。
「信じる」
「ん?」
 弘樹がよく聞き取れなかったので聞き返すと、
「きみの言ってたこと、信じるよ。本当にセックスに参加していないみたいだ」
「だから言ったろ?」
「意外だった」
「意外っていやあ、学校に来てないのに成績がいいきみも意外だよ」
「ちょっとした偏見だね。学校に来てなくても自分のペースで勉強はできるし、わからないところは先生に聞ける」
 なんの意外性もないと思うけどな。
 どことなくさみしさをその言葉に感じたのは、本当だったのかもしれないし、弘樹の似た者を求める気持ちがそう弘樹に聞こえさせたのかもしれなかった。
「あのさ、加奈ちゃん」
「なに?」
「よかったら、俺と、セックスしない? いやだったら、別にいいんだけど」
「はぁん?」
 お前なにいってんだ、という顔で弘樹を見る加奈。
「俺は童貞なんだけどさ。正直、俺はこの村のだれとも、最初にセックスしたいと思えない。きみ以外は」
「そりゃあ、わたしとセックスしたい言い訳かなにか?」
「いや、そういうわけじゃなくて、なんかこう、最初にやる人は、この村の風習に染まっていない人がいいかな、と思って」
「ふうん」
 ちょっと考え込んだ後、加奈は言った。
「いいよ」

 二人で裸になって、弘樹の家に行く。
 親は二人ともいない。
「その……やるよ?」
「う、うん……」
 血が出たら流せるように、お風呂場に二人はいた。
 さっきからずっとキスしたり、性器をいじったりしていたために、お互いの性器は、十分に愛液で濡れているように思われた。
「い、いくよ……」
「う、うん……」
 やはり緊張しているのか、二人とも声に柔らかさがない。
 薬を飲んでいるので、別にコンドームをつけないで、弘樹は後ろから加奈に挿入する。
「えいっ!……ど、どう、痛い?」
「―――――」
 黙っている加奈に、不安になる弘樹。
「いや、入ってる? ホントに?」
「え、入ってるよ?」
 ためしに、ぐいぐい、と抜き差ししてみる。
「いや、あのさ」
「うん」
「ぜんっぜん痛くないんだけど」
 すぽんっ、とペニスを抜いてみる。
 見た感じ、血も出ていない。
 ペニスにも血がついてない。
「血が出なかったり、見えないくらい軽くしか出ない処女喪失もあるというけど……なんかめっちゃあっけないね」
「うん」
 お互いに顔を見る。
 次の瞬間、どちらからともなく、二人は噴き出してしまった。
「いや、ごめん、何がおかしいってわけじゃないけど、なんか緊張してたのがバカみたいに思えちゃって」
「あははっ、いや、わたしも、なんか緊張からの解放で笑いが、あははっ!」
 なんでもないことでも、他人が見ても何が面白いのかわからないことでも、当人たちの笑いが止まらないときというのはあるものだ。
 まさに今がそれだった。
「ね」
 すっ、と手を弘樹のペニスに這わせる加奈。
「ちゃんとしたの、しよ?」
 二人で敷き布団をしいて、正常位でいれようとする。
「あれっ、ん」
「入らない? じゃ、逆ね」
 しかし、何度やってもうまく狙いが定まらない弘樹に、弘樹を寝かせて、加奈が騎乗位で入れる。
 ペニスを加奈が持ち、加奈が狙いを定める。
「じゃ、行くね……んっ」
 軽いうめき声をあげて、加奈が腰を落とす。
 弘樹の性器が、ぬめぬめとした温かいものにつつまれる。
「あっ、これ、やばっ……!」
「えっ?」
 あっという間に、弘樹は果ててしまう。
「ご、ごめん……」
「い、いや、それくらいあたしの中が気持ちよかった、ということで、まぁ、許す」
 少し照れながら、加奈が言う。
「じゃ、今度はキミが上だね」
 大きく股を開いて、加奈が弘樹を誘った。
 なぜか、今度はスムーズに入れることができた。
「ああっ! はじめてなのに、気持ちいいね、なんかこれ……」
「ん、ああっ」
 二度目の挿入にも関わらず、生の気持ちよさに、もっていかれそうになる弘樹は、射精を懸命にこらえる。
「あっ、ああっ、なんか、来そう、来そうだよ……」
「い、いきそう?」
「た、たぶんっ、も、もうちょっと強くっ、んっ、そうっ、ああっ、いいっ、そこっ、んんんっ、んんんぁあっ!」
 加奈の体が、軽く震える。
 これが、女の子の絶頂なんだ。
 弘樹は、ちょっとした感動を味わっていた。
 弘樹は、二回目の射精はしていない。
 加奈の目にも、はじめて見る光がきらめいていた。情欲の光だ。
「まだ――できるよね?」
 二人の交わりは、まだはじまったばかりだった。

「これから、弘樹くんもみんなとのセックスに参加するわけ?」
 行為が終わって、片づけをしたあと、二人でのんびりと話をする。
「ああ、いっぺん試してみようと思ってね」
「戻れなくなるかもよ?」
「ま、そんときはそんときだ。俺はそっちの心配はあんまりしてない。むしろ」
「むしろ?」
 途中で止まった弘樹の言葉に、加奈が続きをうながす。
「むしろ、戻ってこれたときの方が心配だ。心配っていうか、俺はここでもアウトサイダーなのか、みたいな」
「それはそれでいいんじゃない?」
 ぽん、と弘樹の肩が叩かれる。
「アウトサイダーにしか見えない世界もある」
 そう言って、加奈は笑った。
「わたしも、参加してみるよ。わたしは、戻れるかどうかは割とどっちでもいい気がするけど」
 なんていうか、周りにのれないなぁ、とつぶやいて、ちゅっ、と弘樹のくちびるにキスをする。
「でも、しばらくは、わたしの体がセックスになれるまで付き合ってよね。案外はじめてでも痛くなかったけどさぁ」
「オッケー」
 加奈がいるなら、別に戻ってこれてもそれはそれでいいかな、と弘樹は思った。

 しばらくして。
 加奈の体がセックスに慣れてきたころ、弘樹は、みんながセックスしているところに顔を出すことにした。
 昼休みに、委員長に弘樹は近づく。
「あのさ、委員長」
「ん、なに?」
「今日、参加してみようと思うんだけど、いい?」
「え?」
 ぽかん、としたあと、委員長は、
「参加って、わたしたちのセックスに?」
「う、うん」
 いざ、セックスという言葉を、クラスの女の子に言うのは、弘樹にはまだ恥ずかしかった。
「もちろん、いいよ、っていうかうれしい! 今すぐしよう?」
「え?」
 今度は弘樹がびっくりする番だった。
「おうおう、それは悪くない悪くない」
 佐竹が、ぽんっ、と肩を叩く。
 クラスのみんなが、こっちを見ていた。
 その視線に、弘樹は委縮してしまう。
「大丈夫だよ? 恵美子がちゃんと勃たせてあげる」
「う、うん…」
「緊張しなくていいからね?」
 そう言って、教室の真ん中で、委員長が服を脱いでいく。
 まだみんなごはんを食べていなかったみたいだが、もうだれも食事に、箸をつけようとはしていない。
 まず、くつを脱ぐ。
 白い靴下で、椅子の上に乗る。
「見ててね? 弘樹くん……」
 見ているのは、弘樹だけではなかった。
 みんなが、楽しそうに恵美子の方を見る。
 昼休みの教室は、ちょっとしたストリップクラブになってしまった。
 次は靴下は脱がずに、机に腰かけて、ブラウスを脱いでいく。
 すぐにブラジャーがあらわになって、弘樹はそこに思わず目をやってしまう。
「あはっ。どこ見てるの? えーっち♪」
 ぱっ、と胸のあたりを隠すが、その目は笑っていて、楽しそうだ。
 クラスのみんなも、楽しそうに笑う。
 机の上に立つ委員長。脱いでいるところが、まわりからもはっきりと見えることだろう。
 スカートに手をかけて、委員長は弘樹にウィンクした。
「ふふっ。街から来た子は、クラスで女子が一人だけ着替えたら、興奮する?」
 ゆっくりゆっくり、スカートをおろす。
 が、途中で手をとめて、にっこり弘樹に笑いかける。
 中腰で、後ろに大きくつきだしたお尻は、きっとパンティが丸見えで、後ろにいる男たちが、おぉと感嘆の声をあげる。
 あまり女子の着替えに興奮できない弘樹も、その笑みと、後ろの人たちにためらいもなく下着を見せる「異常性」に、ぞくっとしたものが走る。
 ぱさっ、と音を立てて、机の上にスカートが落ちると、今度は机の上にお尻をのせて、ゆっくりとパンティを脱いでいく。
「へへっ。こっち来て?」
 片足にパンティをひっかけたまま、弘樹を招く委員長。
 近づくと、もっとこっちに、と手招きされる。
「射程距離だよ」
 その言葉の意味を知る前に、片手でズボンのボタン外され、チャックをおろされる。
「えへへ。はずしやすいジッパーだね」
 すいっ、と下から上に、手をなであげる。
「あんっ。まだそんなに勃ってないじゃない。ショック~」
 ぽろんっ、と下着から半勃ちのペニスを取り出して、優しく触る。
「でも、けっこう大きいね、これ。きんたまも、なんかずっしりしてる……精子、いっぱいたまってるのかな?」
 その言葉に、きゃあきゃあと女の子たちが湧く。
 片足を机の上にあげて、自分の性器を見せる委員長。
「こっちおいで」
 左手をつかまれ、委員長の方に弘樹が引き寄せられる。
「生ハメ、しよっ?」
 パンツから飛び出たペニスが、生の性器に、ぐちゅりと押し当てられる。
 その感触で、あっという間に弘樹のペニスは勃起を取り戻す。
「んんっ、これじゃあ、すぐに入っちゃうね……よっ、と」
 いつの間にか後ろに回されていたもう一方の手で、腰をひきよせられる。
 ペニスを委員長の手で性器へと誘導されながら、弘樹は挿入した。
「んっ、はぁっ……い、いいね、これ……弘樹は、どう?」
「すごく、熱くて……きもち、いい……」
 その声に、クラス中から、どよめきがあがる。
「す、好きに、動いていいよ……」
 恵美子の言葉で、教室のど真ん中で、下着をつけたまま、ブラジャーと靴下をつけた同級生の女の子を犯す。
 それが、この村での「ふつう」なのだ。
 ぞっとするほどの背徳感を、弘樹は感じてしまう。
「んっ、んあああっ、あああんっ、おおんっ」
 徐々に恥じらいをなくしていく喘ぎ声を出す委員長に、弘樹は興奮する。
「委員長、靴下残しといてくれるとかわかってる~」
「つーか、見てたら俺もやりたくなってきたんだけど」
「ぼくはもう、フェラチオしてもらってるよー」
「じゅっ、じゅぷっ、じゅるるるっ、じゅぽ、ずるるるるる!!」
「くっそエロイ音出すなよ、あー、もうだれか俺ともやろうぜ」
 二人の交わりを見て、クラス中が乱交状態へと突入していく。
「んんっ、昼間っから教室で生ハメ、気持ちいいっ!」
「あー、スカートはいたままでバックからガンガンつくのもいいよなぁ」
「あんっ、ああっ、そこっ、そこいいよおっ!」
「おおっ、締め付け強すぎ、興奮してたのかよ、ああっ、出ちまうだろーが」
「じゅるっじゅっ、じゅるるるるっ!!」
 卑猥な音が響く教室で、恵美子がそっと囁く。
「加奈ちゃんも、教室に来てくれたみたいだし、ありがとね、弘樹くん」
 そう言った瞬間に、弘樹の限界が来て、恵美子の中で射精してしまう。
「んっ、あっ、もしかして出ちゃった? あーん、他の女の子の話をしているときに出すなんて、ひどいなぁ」
 全然ひどいと思っていないような口調で、委員長が笑いかける。
 そのとき。
「ちょっとあなたたち! 何やってるの!」
「美香先生…」
 美香先生が、教室に入ってきたところだった。
 さすがに、教室でするのはまずかったのかな、と弘樹が思った次の瞬間。
「先生もまぜなさい! ずるいよ!! 次の授業は自習、ううん、保健体育の実習授業にします!」
 そう言って、美香は、つかつかと、弘樹と委員長のほうに、まっすぐやってくる。
「さ、弘樹くんは先生としましょ?」
 ぎゅっ、と手をにぎられる。
「ちょ、先生ずるいよ、あたしまだいってない!」
「でも、弘樹くんはいってるよ? 次は先生の番でーす」
 女子たちからブーイングが来る。
 わたしも早く試してみたい、とみんなが口ぐちに言う。
「もう、教え子とセックスするのが教師であるわたしの最高の楽しみなんだからっ!! 早く弘樹君のオチンポ欲しくて、今朝だって弘樹くんをオカズにオナニーしてたんだから! 年長者を敬って、先生にゆずって? ね? ね?」
 ぶー、ぶー、という声はやまない。
「じゃ、じゃんけんでどうです?」
 弘樹の言った言葉に、女子が集まってくる。
 そして――。
「えへへ。教え子とセックスするのって、すごく好き……んっ、はあんっ!!」
 授業は、本来ならとっくにはじまっているはずだが、弘樹は教壇の上で、みんなに丸見えの形で、先生を後背位で攻めていた。
「んっ、んんっ、後ろが先生、一番感じるの、ああっ、そこっ、いいっ」
 黒板を背にして、美香先生は、教室のみんなに、自分が性的に感じている顔を見せる。
「先生の顔エロイよなー」
「メスの顔って感じ」
「チンポに屈服しました、みたいな感じだよなぁ。チンポ以外は要らない、みたいな」
「そうっ! まさにそうなの!!」
 その言葉を聞き付けて、美香先生が教室中にとどろきわたる大声でさけぶ。
「先生、生徒のオチンポが一番大好きで、でも、男のだったらだれでもいいの。オチンポの魅力のとりこなのぉ……」
 自分で言っていて興奮したのか、声にどんどん甘さが混じっていく。
「オチンポが一番大事なのっ、んんっ、オチンポがあれば何もっ、ああっ、深いぃ! だめ、いきそうっ、わたしはっ、あっ、おおっ、オチンポのためにっ、そのためだけにっ、生きてるっ、んんっ、メス教師なのよおお!!! あっ、あああぁんん!! いくっ、いくっ、いくああああああああっ!!」
 美香の絶頂と一緒に、弘樹も射精した。
 先生の中にたっぷりと精液を入れたという背徳感と征服感が、弘樹を満たす。
 他の男子をすでにいかせていた女子たちが、舌なめずりをして、こちらにやってくる。
 その日、弘樹は、さらに五回射精した。

(6)

「つっ、あぁ、出るっ……」
「いいよ、弘樹、出してっ、わたしの中にっ……」
 乱交教室で、恵美子の上になって、腰を振っていた弘樹に限界がくる。
 べっとりと自分のペニスにまとわりつく粘液が、摩擦でこすれて、えもいわれぬ快感を叩きこんでくる。
 ぶぴゅっ、ぶびゅるるるっ!!
 しっかりと最後の一滴まで恵美子の膣内に注ぎ込んで、荒い息をついた弘樹は、委員長の上にゆっくりと覆いかぶさる。
 よしよし、と言うように、優しく髪がなでられる。
 気持ちよくって暖かい。
 恵美子の上で横になったまま、横を見る。
 加奈が、別の男の上で腰を振っていた。
 性の快楽に染まった顔で、欲望をむさぼっていた。
 たぶん、俺もあんな顔をしているんだろうな、と弘樹は思う。
 あれから、一度も加奈と弘樹はセックスしていない。
 でも、それでいいのだと思う。
 ずいぶんとセックスにも慣れた。クラスでセックスの相手をしたことがない女の子は、もうひとりもいない。
 加奈もみんなとセックスするようになって、みんなもそれを受け入れていた。
 慣れたけれど、どことなく、これでいいのかという気持ちも残る。

 そんなある日。
 放課後、保健室に弘樹は呼び出された。
「弘樹くん、最近はどう?」
「ええ、まあ、元気でやってます」
「最近は、みんなとセックスしてるみたいね」
 軽くうなずくと見える、あいかわらず見せている大きな胸の谷間から、意図的に弘樹は視線をそらす。
「実はね、いくつか言いたいことがあるの」
「なんですか?」
「あの写真集で、オナニーした?」
 恥ずかしくなって、弘樹は下を向く。
 しばらくの沈黙のあと、弘樹は答えた。
「……しました」
「ふふっ、ありがと」
 小枝子が艶めかしく笑う。
「ありがとう?」
 なぜ感謝されたのかわからず、弘樹は聞き返す。
「だって、あれ、わたしの写真だから。コラージュなんかじゃないのよ」
 ぞくぞくっ、と弘樹の背筋にあやしいものが走る。
 目の前で、オナニーのおかずに使った女の人がいる。
 しかも、自分に使われるために、あんなにエッチな恰好をしていた。
 写真でしか見たことのない小枝子の性器、あれは本当に、目の前にいるこの女性のものなのだ――。
 一瞬でそんな考えが、かけめぐり、そのほかにも言葉にできない色々な思いが心の中で渦を巻く。
 弘樹は、勃起しないようにするのに、信じられないほどの精神を集中しなければならなかった。
「それとね。実は、性欲を高める成分は、食事の中に含まれているわけじゃないの。わたしたちが、薬を入れているのよ」
 弘樹は、小枝子を見つめる。
「もしかして、とは思ってました。でも、なんでです? それに、『わたしたち』って、何人くらいいるんです?」
 小枝子は、軽く溜息をついて、足を組む。黒いミニスカートから出る、紫の網タイツにつつまれた、白くて綺麗な足が、弘樹の目に入る。
 この村に来てから、ずっと高まったままの性欲が、じりじりと刺激されてゆく。
「まず、最初の質問から。みんなと楽しくセックスするためよ。二つ目。わたしたちっていうのは、主に村長さんとわたし。仲間っていう意味なら、この村の人、全員よ」
「でも、なんでみんなと楽しくセックスするために、性欲を高める薬を使ったりするんです? それに、もしかして、薬以外にも何かしてるんじゃないですか?」
「鋭いわね。そうね、村長もわたしも、この村の出身なんだけどね。もともと、ここは性に寛容な村だったの。わたしたちのおじいちゃんおばあちゃんの世代では、子供でも性行為を楽しんでいたらしいわ。でも、そういう文化はどんどんすたれていった。だから、わたしたちが、復活させようと思ったのよ。たとえ、多少人為的だと言われようともね」
「でも、薬を使って無理やりっていうのは、どうなんですか?」
 少しだけ、小枝子が眉根を寄せる。
「無理強いはしてないわ。性欲を高ぶらせて、まわりでセックスをして、こっちに来たいなら来ればいいっていうだけよ。無理やりだったら、あなたも加奈ちゃんもレイプされてるわ」
 やっぱり、ある程度目立っていたのかと思うと同時に、弘樹は監視されていたかのような気持ちで、ちょっとだけ気分が悪かった。
「人為的な性感上昇って、十分無理やりに思えますけど」
「それは違うわ。そんなことじゃない」
 きっぱりと、小枝子は言った。
「わたしたちは、みんなを解放してあげているだけ。きっかけは与えているけど、最終的にどっちを選ぶかは、一人一人の人間にゆだねられている。だいたい、もうほとんどの人の食事に薬は入ってないわ。明日からきみへの投与もやめるつもりよ。みんな、自分からセックスしつづけることを望んでいるの。あなたのご両親も、もうそちらを選んで、そして選び続けている」
 親のことは、もしかしたらそうかもしれないと思ってはいたが、弘樹には、やはり多少ショックだった。
「確かに私たちのやり方には、多少人為的なところはあるかもしれない。でも、それは、他の文明だって同じことだと思うわ。たとえば、子供とセックスしたらダメっていうのも、人為的な規範でしょう? 十二歳で妊娠する女の子、つまり十代前半でセックスする女の子なんて、過去にはたくさんいたし、現代でも地方によってはまだまだあるわ。第二次世界大戦後のイギリスで、十二歳の女の子が買春してたって話も読んだことある。買春はともかく、子供とセックスするのがダメっていうのは、社会規範だし、普遍的なものじゃないわ。わたしたちがセックスしたって、それはいいじゃない。それで、きちんとこの村のバランスは取れているんだから」
 そうなのかもしれない。
 しかし。
 なんとなく、言葉にできない、わだかまりのようなものがある。
 議論に勝ったからといって、それが正しいことにはならないし、論破した相手を納得させ、説得したことにもならない。
「あなたも――こちら側を、選んで、くれるんでしょう?」
 気づいたら、扉の前にいた小枝子先生が、保健室のドアに鍵をかける。
「わたしも、あなたが欲しいの」
 ぐいっ、とミニスカートをあげると、シースルーの紫色の下着が見える。
 陰毛が透けてみえて、いやらしい。
「聞いたことあるかしら? 紫色って、性欲を刺激する色みたいよ?」
 スカートを軽々と脱ぎ捨て、ブラウスの前を開ける。
 すると、かわいさなんてかけらも考慮していない、雄に喜ばれるためだけに作られたような下着があらわれる。
「紫のセクシーランジェリーって、わたしすごく好きなの。これみた男が、みーんな勃起してくれるから」
 じっ、と小枝子が、弘樹の下半身を見つめる。
「あなたも、例外じゃないみたいね」
 うれしそうに笑うと、そのまま強引に弘樹のくちびるをうばう。
「んじゅっ、じゅっ、じゅるるっ、じゅっ、じゅるるるっ」
 まるで激しいフェラチオにも似た品のない音をたてて、男の唾液を飢えたように求める。
 その間に、片手で、てばやく、ズボンやパンツを下す。
 ぼろちと小枝子の手にこぼれてきた陰茎は、ガチガチに勃起していた。
「ふふっ、もしかして、朝一発目? キンタマ、重いわぁ」
 うれしそうに、玉の重さを指で量ると、お互いのよだれで濡れた赤い口元をにやりとゆがませる。
「ね、朝一番搾りのくっさいオチンポエキス、小枝子先生のぐちょぬれおまんこの中に注いで? 思春期のオスザーメン、わたし大好物なの。きっつい雄のにおいと、からみつくような粘度と、新鮮なプリプリの粘液の中を元気に泳ぐ精子……んんっ」
 自分で言いながら、興奮してしまったらしく、パンツも脱ぎ捨てて、足を大きく広げ、弘樹を誘う。
「見えるでしょ? おまんこがパクパクしてるの。あなたのオチンポ食べたいよ~って、メス穴が閉じたり開いたりしてるのよ? ほら、我慢しないで早く頂戴?」
 小枝子自身の指で押し広げられたそこは、確かに、本人の言う通り、黒々とした小さな穴が、大きくなったり、小さくなったりしている。
 まわりの肉も、ひくひくと痙攣し、てらてらと愛液で濡れていた。
 イソギンチャクか食虫植物のように、まわりの卑肉がうねるように動き、中心の穴へと雄器官を誘う。
 見ているだけで性臭が立ち上ってくるような眺めに、ふらふらと弘樹は近づく。
「つっかまえた~!」
 急にがばっと立ち上がると、ひろきをがっちり抱きしめて、ベッドへと引き倒す。
 小枝子のほうが下になっているが、どちらが主導権を取っているかは明らかだ。
 くちゅり、と音を立てて、先端が小枝子の中に入る。
 おそるべき速さで、小枝子の両足が弘樹の腰をがっちりと抑え込み、そのまま強く抱きしめられて、あっさりと根本まで勃起したペニスが入ってしまう。
「んふうっ! いいわよ、若い子のオチンポって元気で好きよ」
 そのまま、キスをしながら、腰を振る。
 もちろん、愛情をたしかめあうようなキスではなく、お互いをむさぼりあうような、性本能に従った荒々しいキスだ。
「んっ、じゅるっ、んんっ、ああんっ、じゅるっ、じゅぽっ、おほおっ、じゅるっ、あああんっ、おおんっ、いいっ、じゅるっ、じゅぷっ、すてきよおおっ!!」
 今日は一回もまだ射精していないうえに、生での挿入で、あっさりと弘樹は限界を迎えようとする。
「あっ、先生、もう、いきそうですっ……」
 それを聞くと、小枝子は妖しい笑みを浮かべた。
 弘樹の腰をつかんで、一時的に腰の動きを止めさせる。
「わたし、実はね、今、避妊してないの」
「――――!?」
 弘樹は、あわててペニスを引き抜こうとするが、小枝子のがっちりとからみあった足がそれを許さない。
「ふふっ、避妊してないって聞いたとき、オチンポがびくんっ、ってなったのが、膣内に入っていてもわかったわ」
 そっ、と手を弘樹の頬にあて、小枝子はなまめかしい笑みを浮かべた。
「孕ませたいって思ってるのよね?」
「そ、そんなこと――」
「一瞬だけでも、思っちゃったでしょ? おばさんマンコに種づけしたい、って。無責任に精液びゅーびゅーだしたいって。自分の精子で妊娠させたいって」
 ちゅっ、とぞっとするほど優しく、くちびるにキスをして、小枝子は言った。
「いいわよ。責任はとらなくていいわ。あなたのことが気に入っちゃったの。本当は村長さんと恋人同士なんだけど――小枝子の浮気オマンコ、きみの若くてたくましいオスチンポで、寝取っちゃお?」
 ずんっ、と両手で弘樹の腰をひきつけ、さらにがっちりと足でホールドする。
「ああんっ。ビクビクしてるわぁ、おちんちん。もう、限界よね? 我慢できないわよね? 年上の先生を孕ませたいわよね? 恋人がいる女のオマンコに新鮮なザーメンをいっぱい注いで、マーキングしたいわよね? だって、こーんなに気持ちいいんだもんね? いいわよ、小枝子先生が許しちゃう」
「だ、だめ、ですっ……」
 小枝子先生は、本当に楽しそうに笑った。
「本当にしぶといのね。そういうとこ、好きよ。でも、だーめ♪」
 だが、その笑顔はすぐに消える。
「とどめ、さしてあげる」
 じゅるるるるるるっっっ!! じゅぷぷぷっ!!
 キスでこんな音が出るのかというくらいの音をたてて、くちびると舌が吸われる。
 そのうえ、下のほうでは、腰を小刻みに動かして、膣内の陰茎を搾り取る。
 その熟練の技に、経験の少ない若い男が耐えられるはずもなく。
「おっ、あああああっ!!」
 どぴゅっ! どぴゅるるるるるうるるう!!!
 さっきまで我慢していた反動か、信じられないほどの精液が小枝子の膣内へと吸い込まれていく。
「きゃはぁ!! これこれ、これよおお! 若い男の我慢したザーメン、勢いよくビュービューするの、さいっこう!!」
 がくがくと体を震わせて、心底うれしそうにまゆをゆがめる。
 なんとかペニスを引き抜こうとする弘樹に対して、最後までその締め付けを小枝子がゆるめることはない。
「あっ、はぁ……これで、ゲームオーバー、よ? んー、ちゅっ」
 力いっぱいキスをして、小枝子がやっと弘樹を離す。
「ふふふっ、すっかりオチンポ萎えちゃったわね。やっぱり怖くなっちゃったかな?」
 ぐちゅぐちゅと、自分の性器の中に指をつっこんで、よくかきまぜながら小枝子は言う。
 それは精液をかきまぜるというよりも、精液をぬりこみ、なじませるような手つきだった。
「う・そ・よ」
 ぎょっとしたように弘樹が顔をあげる。
「避妊してないなんて、う・そ」
 へたりこんだ弘樹に、ゆっくりと近づく。
 抱え起こして、保健室のベッドにねかしてくれる。
「でも、興奮したでしょ? 女を孕ませるってわかったときは。ごまかしてもだめよ? わたしのオマンコ、しっかり感じたんだから。避妊してないって聞いたときのあなたのオチンポが、うれしそうに一回り大きくなるのをね」
 どこから取り出したのか、手錠でがっちりと弘樹をベッドに固定する。
 そして、おいてあった霧吹きを、弘樹の顔へとかけてゆく。
 ぷしゅ、ぷしゅぷしゅ。
 その匂いに、萎えていたペニスがまたたちあがっていく。
「若いから必要ないと思ったのよ? でも、もっと楽しめるかなって」
 そう言いながら、ペニスを割れ目にはわせて、前後に動かす。
 ちゅるっ、ぴちゃっ、と卑猥な音がするが、その気持ちよさに耐えている弘樹には、耳に入ってこない。
「生オマンコに生オチンポこすりつけられちゃったら、気持ちよくなっちゃうわよねぇ。わかるわぁ。わたしだってそうだもの。もう我慢できないわ」
 そう言って、ぐいっと腰を下ろす。
「ん、ふうっ……」
 巨乳が、枕のせいでななめに持ち上がった弘樹の目によく見える。
「いい眺めでしょう?」
 そう言いながら、腕を頭の後ろでくんで、巨乳とワキがよく見えるようにして、ゆっくりと腰をふる。
 弘樹を見つめるその顔は、獲物を見つけた興奮と、性的な悦びでとろけている。
 ちょっと見ないくらいに卑猥な顔だった。
 目の前にいる若い男から精液をしぼりとることしか考えていない顔。
 セックスとチンポのことしか考えていない顔。
 早く自分の膣内で出してほしいし、自分も気持ちよくなりたいと考えている顔。
 ずっぼ、じゅっぽ、ずるっ、ずっぽ、ずる……。
 ゆっくりと腰を振るが、小枝子は、きっとこれ以上早くなるとすぐに果ててしまうだろうという絶妙のタイミングで、腰を上下させている。
 弘樹の顔を見ながら、動きを調節し、たまに抜いたり、また入れたり、じわじわといたぶって、追い詰めていく。
 くちゅ、と先端が小枝子の中に入りかけたところで、動きを小枝子は止めた。
「ね、もし、さっきの避妊してるわよ、っていうのも、うそだったらどうする?」
「え?」
 次の瞬間、力強く落とされた腰の刺激で、だらしなく精液をまきちらしてしまう。
「んんんんんっ!! たまんないわね、この元気な射精っ! 百点満点だわっ!!」
 最後の一滴まで搾り取ると、またすぐに腰をふりはじめる。
 何か言おうとする弘樹の口も、くちびるでふさぐ。
「ふふっ、今日は帰さないわよ?」
 その日、弘樹は一日七回射精した。
 そして、そのすべては、小枝子の膣内へと注ぎ込まれたのだった。

< 続く >

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