最終話 前編 学園の支配者? 須藤悠
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今朝の話である。僕は朝起きたら、ダブルでフェラされていた。その感覚はもう日常みたいな感じなんだけど、やっぱり気持ちよすぎる。
「れろぉ、ちゅ、ちゅちゅるる、ん……んっんんん。……ん? ほひゃようほひゃいまふ、ふうひゃん。ほうはひうおおいれふお。……んふぅ。ひふんひゅんひへはうよ。じゅるるう。ひもひいいれふか?」
優子は日本語でおk。喋る時は口にモノを入れながらしゃべっちゃダメ、って小学生の時習わなかった? 僕は普通に興奮してますけども。気持ちいいです。
二人ともマッパでご奉仕してくれているけど夜はパジャマ着ないのかな? ……僕も裸でした。
「ぐじゅじゅじゅ……んっんんばぁ。ちゅ、ちゅちゅぅ。れろれろ、んん? おはよう悠、今日もいい朝ね。もう昼だけど。ちゅ。今日は終業式だから、私の中に出したいよね? 上でも下でも好きな方でいいわよ」
日本語でも理解が出来ない件について。なぜ終業式だとそうなるのか。
ここ一月怜と優子は早起きだ。だってどちらがより僕を気持ちよくさせることができるかという勝負をしているんだから。だから正直朝のご奉仕にも慣れて……ない。二人ともエロ過ぎるよ。怜はめちゃくちゃ上達してるし。
二人はターン制でお互い僕のモノを飲み込んだり、玉の方を舐めたりキスしたり竿をキスしたり。他にも胸で挟んでくれてたり太ももやら脇やら足やら。
時々朝起きたら一人が騎乗位でもう一人が僕にディープキス、なんてこともあった。
僕が寝ている間にやりたい放題だ。でも僕が起きててもやりたい放題だ。
「今日も私たちは悠が先に逝った方が勝ちっていう勝負をしてるから。今は優子のターン。結果は今のとこ1勝1敗ね。それで今回は勝った方が2時間ほど、悠の隣を独占できるってことになってるから、よろしく。まぁ心配はいらないと思うけどね。昨日以外は通算で全勝してるし」
僕、今日一日で何回出したんだよ。あ、2回か。でも、だってしょうがないじゃないか。こんな美女に奉仕されて、我慢できる訳がない。
ていうか二人は相手のターン中にもご奉仕してくれるんだよね。この人たち何で自分からハンデ背負っていくんだろう。
昨日の朝は優子に2回出したんだったっけ? 僕が誤認状態になったのはその後のお昼辺りだったから、怜は実力で負けたってかなり落ち込んでたなぁ。
昨日はギリギリまで怜を怜だと分からなかった。更にいえば、一昨日に関しては優子が調子に乗って誤認を解除して、僕を逆レイプするぐらいに、全然誤認が解けなかった。
毎日毎日誤認されていれば優子と怜どっちがどっちだか分かるだろうって突っ込み、半分当たってる。
昨日と一昨日以外は全部すぐ分かったよ。確かに、いつ誤認させるかのタイミングは優子だけが知っていて、僕と怜からじゃ分からなかったけど、3日前まではなんか知らんけどすぐに洗脳解けたんだ。
その……それで、今現在の話しに戻ります。めっちゃ優子にフェラされてます。
えーと、今では僕も、優子が大好きになっちゃったから、怜、ごめんね。
我慢できませんでした。
「んっんっじゅじゅっ。……ふうひゃん、ひゅひ、らいひゅひれふ。……んんん!? んー。んぐっ。んぐっぅ」
「は? 悠? はぁ!?」
僕は怜の顔を見ないようにして優子の頭を撫でました。昨日は優子も散々な目にあったからね。
昨日僕らが目覚めたのは深夜ぐらいだったかな。それまで優子はずっと僕でオナニーしてたもん。
急いで危険な状態だった優子を寝かせてあげて、怜と後処理をして、軽食とって、お風呂に一緒に入ってまた寝ました。昨日は色々思うところがあった。
そういえば、僕に対する洗脳だけど、昨日の夜中に解いてもらった。怜からしてみればただのプレイの一環だったみたいだ。逆に考えると洗脳解除しても、僕なんかいつでも洗脳できるという余裕の表れなんだろうけど。
怜の気分でいちいちドMになるのは流石に……アリですね。
あの時は怜が女神に見えたよ。今の怒ってる怜も可愛いよ、怜マジ女神様。
あぁ怜の料理美味しかったな。それと怜のおっぱい枕は最高だと思ってる。異論は認めない。
「ゆうさぁん」
そんなことを考えていたら、優子は僕の胸辺りに抱きついてきた。僕も応じて強く抱きしめて、頭を撫で続ける。怜がなんか言ってるけど僕にはなにも聞こえません。
「はぁぁん。悠さん、お姉様ったら酷いんですよ。昨日の私……」
「うん、言わなくてもいいよ。分かってるから。流石に怜はやりすぎだよ。今日は優子とずっと一緒にいようね」
「あぁ悠さん悠さん。私、貴方のために、生きます。あなたに精一杯尽くします。だからずっと側に居させてください。何度でも優子を洗脳してくださいぃ」
優子は可愛いなぁ。もっと撫でてあげる。優子は気持ちよさそうに目を細める。可愛いなぁ。
洗脳したほうが理性ある娘っているんですね。これってトリビアになりませんか?
二人からしたら凄い修羅場だったみたいだけど、僕はただただ優子と怜に骨抜きにされていた1ヶ月だった。最後の一日だけ命の危険を感じたけども。
まぁあの時は殺されちゃってもしょうがないと思っていたよ。ハカセがそれだけ酷い洗脳を優子に施していたと思ってたし。
その出来事もあったお蔭で、優子へ完全に情が移ってしまった。優子と初デートをした時からすでに、彼女に骨抜きにされていた感は否めないけど。
「ね、ねぇ、悠。私もやりすぎたわ。悠? ゆう君? 無視しないで? ね? ごめんね、ゆう君」
怜は僕にボディタッチをしながら早速折れた。速いなおい。でも謝る相手が違うと思う。
「優子でしょ?」
自分でも驚くぐらい冷たい声が出た。その一言で怜には伝わったらしい。僕が怜と顔を合わせようともしなかったのも効いたらしい。露骨にテンパって焦ってるのが怜を見なくても分かる。
「……なんで優子なんかに。だって優子は貴方を殺そうとしたのよ? そりゃ私は優子を愛人と認めたけど、私だって嫉妬心はあるし、大切な人を傷つけられたら怒るわよ。それに危うく私寝取られそうになったのよ? それはそれで興奮するけど、もしそんなことになったら、私だって貴方を殺そうとする……。あれ? いや、違うわ。決してそんなことはなくて、いやでも。……わ、私が言いたいのはそんな話じゃなくてね、お仕置きはあのぐらいが妥当じゃないかな? って思うの。あれぐらいで死ぬようじゃ悠を守れっこないわ。口先だけの女じゃなくて良かった。ね? 一件落着で、はいおしまい。……悠?」
「優子、朝ご飯が食べたいな」
「あ、もうお昼ですよ。」
「じゃあ優子のお昼ご飯が食べたい」
「ふふっ。分かりました。お姉様ほど上手ではないですが、愛情込めて作らせていただきます」
「優子の料理も好きだよ」
「いやん。もぅさっきから。私を発情させる気ですか? 優子は年中発情してるので、悠さんなら、いつでも……」
「じゃあお昼作ってる時でもいいかな?」
「!!? ああ、悠さんがそんな肉食発言をする時がくるなんて……夢みたいです。いっぱい優子をアヘらせてください」
この後滅茶苦茶セックスした。でも、やっぱり優子に主導権握られていた。え? 描写しろ? しょうがないな……。
「優子、何作ってるの? 背中側にいる僕の顔だけ見てて、手元を全く見てないんですが、それは大丈夫なんですか?」
「スクランブルエッグ程度なら見なくても作れます。あなたの素敵な御顔を見ながら作る方が余程おいしい御料理を提供できます。隠し味の愛情的に考えて」
すげぇなおい。怜は人間やめてるけど、やっぱり優子もチートだわ。隠し味が隠れてないのは、愛人として喜ぶべきところなんだろうか。
「もっと強く抱きしめて下さい。身体を密着してください。悠さんのチンポを私の太ももにこすりつけてください。ヤる気が起きません」
擦り付けます。
「はぁん……いい……」
「ぐすっ……ゆう君……ゆう君……。ナチュラルなゆう君にこんな酷い仕打ちされるの初めてで気持ちいいよぉ……はぁぁぁん……」
約一名は無視します。
怜の声に耳を傾けていたら優子が嫉妬したのか、料理を作りながらディープキスを仕掛けてきました。優子は可愛いなぁ!
「ゆう……ひゃぁん……れろぉ……わらひを、もっひょ……みへぇ……」
伝え忘れていたけど、優子は裸エプロンです。
ううん。このままじゃ、また女性上位展開になってしまう。僕がこれまで上位に立ったことはあるだろうか。
今回は優子からの快楽に身を任せなかった。こんなこともあろうかと、洗脳スマホを僕は持っていたのだ。
少し補足をするけど洗脳スマホの所有権は、基本的に優子だった。昨日勝負が着いてからは、なんとなく怜が持っている。そういう訳で、怜から失敬してきた。
ふふーん。さぁ、どういう逆転劇を見せてあげようか。優子の体が動けないようにする? 優子は料理を作ることが快楽になるとか! もしくは僕の存在を消して、透明人間的に犯す? ふひ、ふひひひ。
さぁ、優子をどう料理……。
「じゅるる! ん……。ぷはぁ。そうですね。悠さんにはもう一回、ドMになっていただきましょうか。私は昨日、見ているだけでしたし」
なぜ、優子が洗脳スマホを持っている。そんな僕の疑問が顔に出ていたのか、優子がにやりとしながら、フライパンを見ずにフライパン返しをする。優子はもうプロの料理人になるべきだよ。
「けーさつ」
へ?
「私、警察の方をノシたじゃないですか。私、結構強いんですよ。スリの技も習得しています。金庫を開ける時になったら呼んで下さい」
やっぱ優子ってチートだわ。それを上回る怜って一体……。ぞくっ。
「さ、気分はどうです? 私の、悠さん」
「は……ふぅ……」
体が火照る。感覚が敏感になる。優子様にいじめて欲しくなる。
僕は、優子様の顔を見る。
「くす。悠さん、目が蕩けていますよ。本当にマゾになってしまったんですね。悠さん、がっかりです。お姉様だけでなく、私に罵られても感じちゃうんじゃないですか?」
「はぁ……はぁ……優子……様……」
「やばっ……。悠さん可愛すぎです。とりあえず、首筋舐めて下さい。んっ……はぁぁ」
当然言われた通りにする。激しく息を漏らしながら、優子様を舐める。更に強く抱きしめる
何度か舐めると、優子様がキスを求めてきた。僕は応じる。僕達の距離はゼロ。その後、優子様が誘導して、胸を撫でたり、オマンコをさすったり。
その内、前戯だけで、料理が出来てしまった。
「はぁぁ! 悠さん、いいですよ。上手です。私の、乳首を優しく……っ! はぁぁ。そうですぅ……いいです……。ああぁ、髪の毛、もっとキスしてくださいぃ! 頭の奥までとろけるキスしてください! 次はオマンコ指でしてぇ!……優子をイかせて!」
「ぐす……優子。料理食べたい」
僕は優子様の頭にキスしながら、指を鉤爪のように曲げて優子様の中を刺激した。
「勝手にぃ……取り分けて……食べて…………っぁ!……んあぁあぁあ!!」
優子様は激しく震えて、力が抜けた。優子様は料理を全部、怜に任せて、僕をリビングに連れ込んだ。
僕を押し倒し、少し焦らされる。優子様の手が僕に触れるたびに、僕に電流が走る。
「優子様ぁ! だめです! イかせて下さいぃ!」
「そんな口調されると、洗脳解けちゃいますよぉ! あああ我慢できないです! 私は優しいですから、逝かせちゃいます!」
そういうと、優子様のオマンコが僕のチンポを食べた。
「悠さん、お好きな時に逝ってください! いっ! あっ、あああっ!!」
数回上下運動を繰り返しただけで、激しくよがる優子様。僕たちの体の相性はかなりいいみたいだ。
だから、僕もあっさりと精液を出す。
「優子様! イきます! いくぅ!」
「来て下さい悠さん! ……んぁぁああぁぁ……っ!……っ」
優子様の体が大きく震える。また逝ったようだ。
その後、優子に元に戻してもらった。一日の始まりからこれか。絶対今日は良い日にならない。碌な日にならないぞ。
ところで、怜がお昼ご飯を泣きながら食べていたので、いい加減僕も許した。そしたら怜は嘘泣きだったみたいだ。
調子乗っている怜が、怜に心底惚れている僕ですらイラッときた。
こんな感じ。
「ところで怜、どうして怜の名前がないの?」
「はて? 何の事かしら? うん、このスクランブルエッグ美味しいわねぇ」
「何の事かしら、じゃなくて、洗脳スマホのリストだよ! 何回調べても怜の名前が出てこないし、怜の写真もないんだけど!!」
「ははぁー。そりゃぁー、まぁー。誰かがリスト一覧から私の写真を削除していた。ってこと以外あり得ないわねー。誰かしらー。もぐもぐ」
「れ・い!!」
「むぅ。悠が珍しくおこね。はいはい、私がやりましたー。すいませんでしたー」
「どうして消したの」
「だって悠に洗脳されるってなんだか癪じゃない。あんな盗撮で私を洗脳しようだなんて。せめてもっと美しく撮ってほしいわね」
言葉も出ない。確かに上手く撮れてなかったけど、あれから僕達の関係が始まったのに。
「悠って本当に単純よねぇ。私の事が好きで好きでしょうがないんだもん。優子はすぐ捨てられちゃうんじゃない?」
そんなことを言われたから、だろうか。流石に怒った。その怒りのまま、僕は昨日からずっと考えていたことを、衝動的に話すことになってしまった。
思わず、テーブルに手を叩きつけてこう言った。
「想像してみて欲しい。一か月ずっと僕を想い続けて、何度僕が洗脳から溶けても心が潰れる寸前まで諦めずに、僕を怜から奪おうとした優子の真っ直ぐな気持ちを。
僕はてっきりハカセの仕業で優子が僕を好きになってしまったのかと思ってた。けど本気で優子がそこまで僕を求めてくれているなら、優子を捨てられるわけない。ていうか捨てたら優子死んじゃうぞ。自殺しちゃうぞ。僕はそこまで冷酷じゃないんだよ。
……ただ、それでも僕は怜が大切だから。
もし仮に、怜が寝取られ属性に目覚めていなかったら。怜が優子を側に置くことを認めてくれなかったら。間違いなく、今とは全く違う結末になっていたんじゃないかな。
だって、そのための洗脳スマホがあるんじゃないか。僕は優子の全てを忘れさせていたと思う。僕への愛情も、今まであった出来事も、全部。
改めて、洗脳って残酷だって思ったよ。僕はもう、怜を洗脳した時点で引き返せないんだ。
それでも、それでも、僕は洗脳アイテムを使いたくない。人の自由意思を奪うだなんて、間違ってるよ。怜が幸せになれば問題ない。ってハカセは言っていたけど、多分洗脳前の怜がこの状況を予知することができたなら、その怜は全力でこの状況を回避しようとしたんじゃないかな。
更に言えば、優子は最後の最後まで自分が洗脳されていると思い込み、僕は殺されかけた。優子を殺人者寸前まで追いこんだんだ。
今回の優子の件で、人を洗脳してはいけない。そう思った。人を洗脳して最後に待ってるのは決してハッピーエンドなんかじゃないんだ。今の怜だって、偽物の幸せを感じてるに過ぎないんだよ。人を洗脳することは絶対間違いだ。
やっぱり、怜への洗脳も、優子自身がかけた洗脳も全て解いて、記憶も全てなかったことにして、肉体に及んだ影響もなるべくなかったことにして、二人を解放したい」
と、怜(と優子)に言ったらめちゃくちゃ怒られた。
今までのSな怜ではなく。つまり性的だとか、調教だとかではなく、ただただ、説教をされた。
ちなみに優子は、どっちでもいい。僕に任せるって言ってくれた。怜と対照的に余裕がある笑みが印象的だった。
ところで、うちの怜がすごい不機嫌なんだ(すっとぼけ)。どうしよう。やばい。僕がさっきから何を言ってもデレてくれない、許してくれない。泣きたい。
初めての夫婦喧嘩かもしれない。いやまだ結婚してないけど。怜が焼きもちを焼いてることも併せて、怒ってる。そんな怜も可愛いけど。
大体優子と僕のせいだ。……ごめんなさい。どう考えても僕が原因ですね。
さて再三言っているけど、今日は終業式。一応行くかということで、優子に急かされ制服を着た。久しぶりだなぁ。ここ40日ぐらい学校行ってないんだけど、僕大丈夫かな……。
そういやなんでウチに怜と優子の制服とか置いてあるかっていうと、二人の着こなし勝負の時に大体の私服や制服をウチに持ってきたんだよね。
……何さ、別に1月ずっとエロやっていたわけじゃないよ。じゃんけん勝負とかもやったよ。まぁ勝負事はほぼ怜が勝っていたんだけど。あんなに負けて1カ月間心が折れなかった優子を称賛したい。そういうのでも優子に惚れたかな。
いやーそれにしても久しぶりに制服姿の優子と怜を見たけど、やっぱりウチの制服エロすぎると思う。
ところで僕、ニーソフェチであり絶対領域フェチなんだけど、怜はデフォでニーソなんだよね。逆に優子はハイソックスがデフォなんだけど、今日は逆だった。
それで、マジで怜がブチ切れてるなって物量をもって実感した。ガッデム。紫のハイソックスってなんだよ怜!! それもいいけどさ!!
そんなわけで、黒ニーソを履いた優子に膝枕してもらったんだけどどうでも良い話だね。ごめん。
やっぱり怜は嫉妬して僕を責める。
「君の態度が変わったとニーソを避ける仕草で気づく。君のこと好きなんだから僕とまともに話してくださいお願いします」
って優子に膝枕してもらいながら言っても怜は暴言を履き……吐きます。まるで青いイナヅマのようだ。どうしたらええんや……。
ブチ切れ嫉妬をしている怜に呪詛を唱えられながら、僕らは遅い登校をした。
道中僕たちはキスをしながらのほほんと歩いた。あ、怜は凄い顔をしながら1メートルぐらい後ろから呪ってた。
今日は道行く人笑顔な人が多かったなぁ。僕は優子といちゃいちゃしてたからあまり気にならなかったけどね。電柱で壁ドンやったよ。ディープなキスをしましたとも。
学園の体育館に着いたけど終業式はもう終わりかけみたいだ。
なぜかうちの中学では卒業ソングであるはずの『旅立ちの日に』を事あるごとに、歌わされていた。校長の趣味だったんだとか。
いや、なんでいきなりそんなことを言い出したのかというと、なぜかこの舞専学園でも例の曲を歌う羽目になってしまったのである。まぁ僕は『旅立ちの日に』が好きだからいいんだけどさ。この状況でなければ。
マイクが音を拾って体育館全体に反響する。声の出し主は御存知、葉入怜生徒会長。
「悠、しっかり歌いなさい。手ぇ抜いたら分かってるわよね?」
「……はい。……白い光のなーかにー」
すっかり若い世代ではお馴染みとなったこの曲も、流石に終業式で歌う学校はないだろう。
ていうかこの状況凄く嫌なんですがそれは。
どんな状況かって?
僕はステージ上の演台の所で単独で歌わされています。アカペラです。独唱です。虚ろ目状態の全校生徒先生の前で、だ。
何この罰ゲーム。僕が怜に洗脳スマホを使われている、とかそういうんじゃない。生徒会長に、本気で歌えば許すと脅されただけだ。
生徒は全員、あぐらとか、女の子座りとか体育座りとか、正座とか。各々好きな座り方をしている。かと思えば、たまに立ったりしたり、寝っ転がったり。恐らく肉体に負担を掛けないようにという怜の配慮だろうが。シュールすぎる。
皆、時々まばたきをしながら僕を視姦する。コミュ障の僕にはきつ過ぎる。
それで怜はステージ下にいる。僕の真正面の位置に陣取り、正座をして真顔でこちらを見ている。なので僕は、目を合わせないようにしている。恐い。
優子は怜の隣で体育座りをしている。ちょっと足の角度が違うんだよなぁ。健全な絵を描くときにできる不自然なエロみたいになっている。絶対わざとだろ。計算してパンツ見せてないだろ。優子、もうちょっと太ももを開いて。
「悠声小さい!!」
はい。
ハカセが大勢に洗脳かけんな、って言ってたの、怜は怒りのあまり忘れているんじゃないかな。いい機会だし、ハカセの洗脳アイテムが爆発しても構わないんだけどさ。
今冷静に歌いながら考えてみると、今の怜は洗脳された後の怜な訳であって。
怜の立場から言えば、ヤルだけヤッテ、私を捨てるのか! っていうことなんだよね。今の人格を完全否定したようなものなのかな。そう考えれば怜のブチ切れっぷりにも納得が出来る。でも、僕だって譲れない。人は自由に生きるべきだと思うんだ。
一時の甘言に乗せられて、怜を汚したことは認める。怜に嫌われていた数十分の間に、この国の法律を少しだけ調べた。こういうのは、準強姦罪、っていうんだって。
僕は散々楽しんだ。もう法の裁きを受けて、然るべき刑を受けるべきだ。それが僕の罪であり、僕なりの責任の取り方、ケジメだ。きっと元に戻った彼女達もそう考えるはず。全てをゼロにしよう。
勿論、こんな機械を造ったハカセも一緒に投獄されようね。散々僕達を実験台にしたんだから、僕より酷い刑罰を受けて欲しい。
さ、今日が洗脳の終業式だ。
だから、この式が終わるまでは、いいよね。後もう少しだけ、この夢の世界を楽しませてください。ごめんなさい、優子、怜。
「おおーぞらへー」
歌い終わった。
うぅ。1000人以上の虚ろ目に見守られながらの独唱って辛すぎる……。あ、虚ろ目なあの子可愛いな。あっ、あの先生綺麗……いや、駄目だ。こんな意思が弱いから僕はハカセに乗せられるんだしっかりしろ悠!
今日から警察に厄介になるんだから気を引き締めて。
「うぅん……くぅん……。やっぱり悠さんの歌はサイコーですね……はむ。はふぅ。うっとりします。私の、何色でした? はむ」
「薄ピンクでエロかったよ優子」
「んっ。悠さんセックスしたいです」
ステージ下の特等席で、体育座りをしつつパンチラをしてくれていた優子さんが、すぐに駆け寄り感想を聞かせてくれる。この娘もぶれないな。全身を僕に擦り付けてきているんだが。耳をはむはむしてくるんだが。なんか、ぐちょぐちょ言っているんだが。僕は好きなんだが。
それにしても僕、カラオケの採点でも80点ぐらいしか出ないんだけどなぁ。ハカセもそうだけど、優子は僕の歌声のどこがいいんだろ。僕の股間があっという間に大きくなる。優子が厭らしく笑う。優子はゆっくりと、僕の膨れ上がった制服に手を伸ばし……。
「ふん。心がこもってないわ。真剣にやりなさい! この馬鹿者が! やり直し!!」
同じく特等席で正座をしていた怜さんが怒鳴る。こめかみに、青筋立てて怒っている怜さんが恐すぎる。マイクのせいでちょっとキーンなってる。僕の股間はシューンってなった。
なんでだ、優子が僕から半径0メートル地点の場所に入ったからか。優子、怜が恐くないのか、よく僕に抱きつけるな。僕は優子に抱きつかれて嬉しいけども。僕は怜が、恐可愛くて何も言えないぞ。間違ってもパンチラ期待してたとか。
「パンチラは?」
本音出た。あかん。怜の目がうつろになった。MCっぽくって興奮した。うわー保護色だ。怜が約1000人の中の一人になった。僕は悪くない。反省はしていない。後悔もしてないけど公開はして欲しかった。多分水色かな。
「一から教育し直さないといけないみたいね。大丈夫よ、0歳児から育て直してあげるから。私、ママになってあげる。悠、後ずさりしなくていいわよ。すぐ、何も分からなくしてあげるから。恐がらなくていいわー。私以外の女なんてどうでもよくなるからね。私だけしか考えられなくしてあげる。愛してるわ、悠」
などど訳の分からない供述をしており……あ、これはいかんやつだ。マジ切れしてる。殺気で人を殺せる奴だ。おいおい人斬りか。
こういう時に頼りになるのが僕のボディーガード、小宮山優子。助けて。
「優子……助けふは!?」
「優子はお姉様の味方です」
あの野郎もう怜の後ろにくっ付いて……。いつの間に僕から離れた。
いかん怜のオーラがどす黒い。怜は、ステージに上るためにある、あのちょっとした階段を丁寧に一歩一歩上っている。かなり様になっていて惚れ直した。けど、恐い。正直漏れそう。
余りの絶界っぷりに思わず後ずさる僕。いつから怜は墨村家の人間になった。これが噂に聞く、人気がないからテコ入れをしてバトル展開をする奴か。
「? どうしてこわがるの? だいじょうぶ。いっしゅんだよ?」
なななな何が? 何が一瞬? マジでぞっとした。
更に僕は後ずさる。けど、怜の歩みの方が速く、僕たちの距離が確実に狭まっていく。
――残り、3メートル――
……終わったッ。第一部完!
そう思ったら丁度僕達の間の床から、ハカセが出てきた。ハカセ!?
「床でもドア~。……よっこらせっと。ふぃ~。年取ると足腰が弱くなってたまらんのう。……む。ふはははははは! なんか久しぶりじゃのう! 悠! お主の歌に惚れ惚れしたわ!! 儂はお主が歌うこの曲が好きでのぅ」
ハカセが3日前『濃か! 甲羅』を僕に、押し付けに来た時に会ったと思うよ。
ハカセ、なぜ、床から出てきた。ていうか、床でもドアーも伏線かよ。
あのコーラ……じゃなくて、甲羅を飲むと一日中性欲が止まらなくなるから嫌なんだよ。怜と優子は喜んでいたけど、僕は……あ、僕も喜んでいたわ。
ハカセがちょうど真正面に立ったことで怜の姿が視認できなくなった。決して現実逃避をしているわけではない。だから僕は一応ハカセに突っ込んでおく。
「あんたなんて所から出てきてんだよ」
「いいところに気が付いた悠よ! これは『床でもドアー』じゃ! これはもう本当にすごくてのう。聞け! 説明しよう! 我が、床でもドアーは、ただのマグネットに見える。そうじゃろう? この装置じゃ。見えるか悠。これじゃよこれ。マグネットっぽいじゃろ? これを床に装着するだけで、あら不思議。床が長さ約1メートル、幅80センチほどの扉に変化するぞい。取っ手も金具も自動で付いて更にお得じゃ! じゃが普通の地面は無理じゃのう。こういう体育館のステージの板とか、そういうなんとなく薄めな感じの木の材木じゃないと扉にならんのじゃ。だからー。うーん。例えば金属の板にこの装置くっつけても意味ないぞい。くっつくかも分からんが」
とりあえず空気読もうか。この前と全く同じ説明だよ。つうか聞いてないよ。長いんだよ。
「いや~こういう展開になると思って、悠たちが来るちょっと前にスタンバッといて正解じゃったわい。絶好のタイミングじゃな!」
最悪のタイミングだよ。
「ハカセ、分かったから、帰ろうか。今ハカセに構ってるところじゃないの。僕は少し前からね? ハカセの後ろの御方から、自分のLIFEをGUARDしててさ」
「連れないのー。ろいやるじぇらしーじゃ」
ロイヤルゼリーだろ。炭酸飲料買い直して来い。
口を尖らせながらハカセが一眼レフを取り出した。
そういえば、怜が口を挟まない。怜に目線を合わせないように怜を見ると、先ほどまでの怒りの表情とは違う。怜は真剣な面持ちで僕らのやり取りを見ていた。腕組みしている怜エロいな。胸が強調されている。
怜の後ろに隠れていた優子が青ざめた表情で僕たちの会話に割って入る。
「ダメです富川さん!! 悠さんにはまだ早すぎます! ……お姉様、どうして止めるんですか」
そう。怜が優子を抱きついて止めた。キャットファイトみたいでエロいな。
「いくら、お姉様が相手でも……容赦しませんよ?」
「やってみなさい」
「……ごめんなさい、お姉様。…………!? う、動かない…!」
「昨日私が『格闘技を、私が教えてあげるから』。って言ったこと、もう忘れたの? そんなんじゃ私の悠は守れないわ。もっと精進なさい」
「っくぅ……このおぉぉおお!! ……なんで! なんで動かないの!? お姉様! お姉様は本当にそれでいいんですか!?」
「……覚悟の上よ。私は、悠を、信じてる。少なくとも優子よりはね」
「……っ」
あっちがなんか熱い展開してる。僕にとってはなぜか嫌な予感しかしない。
「じゃが儂としても、そろそろ悠には過去へのけじめを付けてもらわねば困るんじゃ。大丈夫、この一学期で悠は強うなった。なんせ殺されかけても相手の事を慮れるようになったんじゃからのう。今の悠は、もう儂だけじゃないんじゃ」
ケジメを付ける? さっきから僕にとって不穏過ぎるワードが頻発している気がする。
この熱い展開に、僕だけ周回遅れな感じがするのはなんでだろう。僕、別におかしなこと言ってないよね?
……ううむ、意味深なことを言ったなハカセ。こういうことを言い出す時のハカセは、大概碌なことをしない。思わず身構えた僕。そういやハカセって写真の趣味あったっけ?
「はい、チーズ。……悠、儂もお主を信じておるよ」
ハカセが僕を撮った。
そして。
全てを思い出した。
「ぁ……あぅ……ぁ……」
頭の痛みはない。だけど、胸が痛い。
思わず僕は、ぺたんと床に座り込んだ。足が、全身が震える。過去のトラウマが一気に蘇る。汚物を食わされた。刃物で傷つけられた。……そんなのはいい。
僕が、一番嫌だったこと。一番傷ついたこと。
……僕は、優子の顔を見ることができない。
ずっと俯く僕。目の前に僕を裏切った女がいる。僕の全てを傷つけた女がいる。
ふと怜の言葉を思い出した。
『はやく私を思い出さないとあなたの事捨てるわよ。優子はまたあなたの事裏切るわ。思い出して、あなたが優子にリンチされたこと。一度悠の事を深く傷つけておいて、また優子はあなたを傷つけた。そんな酷い女にたぶらかされてんじゃないわよ』
怜が僕を……捨てる? 優子が僕を……裏切る?
恐い。恐いこわいこわいこわい……。がちがちと歯が震える。体の震えが止まらない。
記憶が混濁していた。僕は冷静に今の事態を飲み込めていなかった。
だからか、分からない。自分の身を守るための防衛本能だったのかもしれない。
僕は、この時、僕の人生を振り返っていた。
ハカセのせいで、ずっと一人だったこと。
同年代の男友達なんて、いなかったこと。
両親も、どこか腫れ物に触る感覚で僕を育てていたこと。
そして、優子に、騙されたこと。
その後の、記憶を改変されて、舞専学園に奇跡の合格が出来た事。
「ははは……」
僕は、笑った。それは、破滅的な笑いではなく、投げやりな笑いでもない。
「そうだよ……」
僕は、つぶやく。舞専学園に入学してからのとっても、とっても濃い、数か月間を噛みしめる。
僕はたくさん愛されたじゃないか。
僕と、生徒会長と、委員長と。
優子の中学生時代の笑顔が全部嘘だったなんて、信じない。僕は、洗脳されることを望みつづけて来た優子を信じる。多分、優子は思い出しているんだ。だから、優子は、ずっと。
僕の中であえて考えてこなかったことが、パズルのピースのように嵌っていく。
……うん、僕はもう、大丈夫だ。
気づけば、体の震えも止まっていた。
過去を受け入れて、大切な人たちを守るんだ。
< 続 >