メリーメリーネバーランド

 毎年きちんと枕元に置いてあったプレゼント。
 兄が用意してくれていたことを、私はずっと知っていた。
 私の家庭は所謂放任主義で、父も母も私達にはほとんど構わず、ずっと仕事ばかりしているような忙しい人だった。
 きっとプレゼントなど、二人は用意してくれたことすらないのだ。
 現に兄の枕元には、いつもプレゼントはなかった。
 兄はお小遣いを必死に貯めて、いつも私へのプレゼントを用意し、そっと枕元へと置いてくれていたのだろう
 私はそんな兄のことが好きだった。
 まぁ、ちょっと趣味が悪いのか、女心が分かっていないのか、プレゼントはいつも使い方の分からないようなおもちゃや、私の年齢ではかなり子供っぽいような洋服ばかりだったけれど……それでもピンク色を選んでくれていたのは、きっと兄なりの気遣いだったんだと思う。

 25日、朝目が覚めると、やっぱり枕元には『りかちゃんへ』というメッセージカードの付いたプレゼントが置いてあった。
 なんだかんだ、私はこのプレゼントを開ける瞬間が楽しみなのだ。
 クラスの友達は学校入学と同時にクリスマスプレゼントを貰わなくなった子がほとんどだったけれど、私は出来れば毎年、こうやって兄からのプレゼントを貰いたいと思っていた。
 だってこのプレゼントは、兄の私に対する優しさだから。
 そしてきっとプレゼントを受け取ることが、兄に返せる私の優しさなのだ。

「……今年は何をくれるんだろう」

 私はワクワクと今にも踊りだしそうな心を抑え、その箱をそっと開けた。
 そしてゆっくりと中を覗き込むと、そこには少し大きめの、メリーゴーランドがモチーフとなっているオルゴールが入っていた。
 今年のプレゼントはなかなかセンスが良い!
 私は「少しは兄も成長したなぁ」と上から目線に褒めてみる。
 きっと、私はいま上機嫌なのだ。

「さっそく流してみようかな?」

 後ろにあるゼンマイをキリキリと回すと、流れ出したのは可愛らしいクリスマスソングだった。
 音楽に合わせてメリーゴーランドも周りはじめ、そして馬たちも一斉に走り出す。

「……なんだか不思議、ずっと見て、聴いていたくなる」

 私はそのオルゴールが気に入ったのか、しばらくベットのうえでその音を楽しんでいた。
 だけどゼンマイがきれそうなのか、音が段々と遅くなっていく。
 その音はなんというか、不協和音のような、とにかくあまり心地が良いものではなく、私はその嫌なリズムと不安定さに酔ってしまったのか、頭が一瞬ぐらっ! となった。

『りかちゃん、プレゼントは気に入ってくれたかな?』

 何処からか声が聞こえて来る。

『りかちゃんは毎年クリスマスを楽しみにしてくれていたね』

 この声は、あぁそうだ、大好きな兄の声だ。
 そう、わたし、毎年クリスマスが楽しみだった。
 枕元のプレゼント、凄く楽しみにしていたの。

『僕もりかちゃんの為に、ローターやアナルビーズ、赤ちゃんプレイ用の衣装なんかを買うのが、毎年楽しくて仕方がなかったよ』

 ローター?
 ア、ナル……?
 よく分からないけど、どれも嬉しかったのは事実よ。
 結局いつも使えるものはなかったけれど。

『だけどねりかちゃん?りかちゃんはもう子供じゃないから、そろそろプレゼントは渡せなくなってしまうんだ』

 え……?
 それって、もう今年が最後ってこと?

『そう、りかちゃんはもうプレゼントは貰えない、これが最後のクリスマスプレゼントなんだ』

 ……最後、本当に、これで。

『僕からの優しさは……もう受け取れない』

 ……!
 そんな!
 わたし、毎年クリスマスだけはひとりじゃないって思っていたのに!
 お父さんやお母さんがいなくても……お兄ちゃんが優しくしてくれるから、て。

『でも、りかちゃんはもう大人になってしまった』

 …………っ。

『だけどもしも、りかちゃんがまだ子供でいてくれるなら、最後にする必要はないね』

 え?
 どういう意味?
 私、子供でいられれば良いの?
 どうすれば、どうすればいいの?

『……そうだな、じゃあ、まずはゆっくりと目を開けてみようか、そしたら僕が、りかちゃんを子供にしてあげるから』

 ぼんやりと麻酔にでもかかったような、そんな不思議な感覚のまま、私はゆっくりと目を開ける。
 目の前にいるのは……兄だ。
 私は重たい瞼をなんとか持ち上げ、兄の顔をじっと見つめた。

「りかちゃん、気分はどうだい?」

「……ん」

「まだ状況をよく分かっていないみたいだね? さぁ、まずは今着ているお洋服から確認してみようか?」

「……およう、ふく」

 ゆっくりと目線を下にずらしてみると、私はとても可愛らしい、いや、可愛らしすぎるお洋服を身に着けていた。

 ふりふりの付いた袖に、首元のこれは、よだれかけだろうか?
 スカートはピンク色でウサギ柄。
 そしてそのスカートの中は、おむつを履いている。
 子供のような、いや、赤ちゃんのようなその姿に、私は自分に何が起こっているのか、全く理解が来なかった。

「可愛いよりかちゃん、まるで赤ちゃんみたいに、可愛らしくて愛らしい」

「……こ、れって」

「さっき僕が言ったことを忘れちゃったかな? 僕はりかちゃんを子供にしてあげたんだ」

「……子供」

「そうさ、だってりかちゃんはプレゼントが欲しいんだよね? だったらプレゼントが貰える子供になりきらなきゃ、サンタさんはやって来ないだろ?」

 プレゼント。
 子供。
 サンタさん。
 あぁそうだ、私はお兄ちゃんからプレゼントを貰いたいんだった。
 子供でいればサンタさんが、兄、いいえ、お兄ちゃんがプレゼントをくれる。
 その為に……りかは、もっと子供にならなくちゃいけないんだ!

「お兄ちゃん、りか、プレゼント欲しい!」

「おっ、その口調はなかなか子供らしいね、でもサンタさんは良い子にしている子供のところにしか来ないんだよ?」

「良い子……りか、良い子になったらプレゼント貰えるの?」

「あぁ、きっと貰えるさ、じゃあまずはお兄ちゃんが喜ぶことをしてみようか、人の為に何かをする子はとってのお利口さんだからね」

「うん! りか、頑張る! お兄ちゃんの為に喜ぶことなんでもする!」

「そうか、じゃあまず……そのおまんこを見せて貰おうかな?」

 お兄ちゃんはりかのおむつをゆっくりと外して行く。
 なんだかくすぐったいけれど、こうやっておむつを替えられるのは、とっても久しぶりでなんだかちょっとだけ楽しい!
 だけどお兄ちゃんはりかのおむつをはずしたあと、少し悲しそうな顔をした。
 お兄ちゃん?
 りか、何かいけないことでもしちゃった?

「りかちゃん、おまんこに少しだけ毛があるみたいだね、これだときっとサンタさんはりかちゃんが本当は子供じゃないことに気が付いちゃうよ」

「え、え?りかのとこ、サンタさん来ないの? やだ、やだぁ!りかプレゼント欲しい!」

「そうかぁ、でもこれじゃあきっとプレゼントはもらえないなぁ……あ、そうだ! サンタさんに子供だって思って貰う為に、ここの毛を剃っちゃえばいいんだ!」

 お兄ちゃんは奥の棚をごそごそして、何かを探し始めた。
 それからすぐに探し物が見つかったみたいで、りかのところに戻ってきて「それじゃあちょっとだけじっとしててね?」とりかのあそこに何かを当てた。

「ひゃっ……!」

 ショリ……ショリショリ、ショリ……

「ほら、じっとしてて? りかちゃん」

 りかは頭が真っ白だった。
 ショリ、という音と一緒に何かがあそこの上を滑っていて、それがなんだか変な感じだし、何だかとってもくすぐったくて、ぞくぞくする。

「おにい、ちゃ……これ、やだぁ」

「大丈夫、もうすぐ終わるから」

「ん! ふぅ……ぅうあ! ひゃあ!」

「もう、少し……」

「やぁ! う、ふぇえ、くすぐ、たぁいぃ……っ!」

「大丈夫……ほら、出来たよ!」

 そう言ってお兄ちゃんがあそこに当てていた手をどけてくれたから、りかはゆっくりとそっちのほうを見る。
 りかは凄く驚いた。
 だってりかのあの部分が、綺麗なつるつるになっていたから。
 毛が1本も生えてなくて、本当に小さい子供になったみたい。

「パイパンおまんこ、とっても可愛いよ、スジもとっても綺麗だし、さすがはりかちゃんだ」

「さすが? りか、良い子ってこと?」

「あぁそうだ、こんなにも可愛いおまんこなかなかいないぞ、りかちゃんはお利口さんの赤ちゃんだ」

「やったぁ! りかお利口さんだぁ! じゃありかのところにサンタさん来る? お兄ちゃん、またプレゼントくれる!?」

「全くりかちゃんはせっかちだなぁ、でもそうだな、良い子にしていた子供には、ちゃんとプレゼントをあげないとね」

 そういってお兄ちゃんはりかの足を持ち上げる。
 何をしてくれるのかな?
 これをするとプレゼントが貰えるのかな?
 そんなことを考えてると、お兄ちゃんがりかのほうをチラッとみて「今からプレゼントをあげるからね」そう言ってりかのあそこに、お兄ちゃんは自分のおちんちんを……挿れてきた。

「!!!?」

「りかちゃん、ちょっと痛いかも知れないけど、我慢したらとっても素敵なプレゼントを出してあげるからね?」

「!? !!? おにいちゃっ、りか、りか、これ、怖い!」

「大丈夫だよ、だってりかちゃんはプレゼントが欲しいんだろ? だったらこれくらい、我慢できるよね?」

 りかは一瞬頭がズキンとして、目の前がくらくらとした。
 だけどすぐにまた意識がはっきりして、お兄ちゃんのことをじっと見つめる。
 あれ?
 さっきまであんなに怖かったのに、今は全然怖くない。
 それになんだか、りかのあそこがうずうずしだした。
 おしっこがしたいような……キュンキュンする感じ。
 りか、おかしくなっちゃったのかな?
 そうやっておしっこを我慢してると、お兄ちゃんのおちんぽを入れたり出したりする動きが速くなって、凄く気持ちよさそうな顔になった。
 それと一緒に、りかのおしっこがしたい感じも強くなって、だけどそれがちょっとだけ気持ち良くて、りかはよく分からないこのぞくぞく感に、ハマっていくような気がした。

「りかちゃん、プレゼント、欲しいか?」

「ほ、ほしぃ! りか、ぷれぜ、んと! ほし!い!」

「よし、じゃあ、お兄ちゃんのこと、もっとぎゅっと抱きしめてごらん、そしたら、きっとしっかりりかの中に、プレゼントが届くから!」

「ふ、ぅあ、お、おにいちゃ、りか、りか、おにいちゃんの、こと、だいすきぃ! おにいちゃんのプレゼント! ほし、ぃ!」

 ドピュピュピュ! ビュクン! ビュクビュクン!

 りかの中に熱い何かが入って来る。
 ドクドク言いながら、中に何かが溢れてる。
 これが、お兄ちゃんからのプレゼント?
 りかは頭がぼんやりしたままお兄ちゃんに聞いてみると「これはお兄ちゃんの優しいを液体にした物なんだよ」って教えてくれたから、りかはとっても嬉しくなった。
 お兄ちゃん、だいすき。
 りかはお兄ちゃんの優しいが、だいすきだよ。
 そうしているうちに段々と瞼が重くなって来て、りかの意識は段々と遠くなって、カクン……と眠りについた。

「……ん」

 私は二度寝をしてしまったのか、気が付くとベット上で横になっていた。
 今は、いったい何時だろう。
 私はいつもより重たい身体をゆっくりと起き上がらせ、時計が11時を指していることを確認した。
 おかしいな、普段こんなに眠ることなんてないのに。
 そんな疑問を持ちつつも、きっと12月の寒さのせいだろう、と適当な理由を付けて自分自身を納得させてみる。
 なんだか長い夢を見ていたような気もするけれど……思い出せそうもないので考えることもやめた。
 1階からは暖かい料理の香りがする。
 きっと兄がリビングにいるのだろう。
 私はパタパタと階段を下り、リビングの扉を開けた。

「あ、りかちゃん、おはよう」

「おはよう、お兄ちゃん」

「今日はずいぶん良く寝たみたいだね、朝食、いや、昼食は何が良い?」

「とりあえず、スープで良いかな? 昨日の残りがあったはずだし」

「了解、あぁ、そうだ、りかちゃんに言おうと思っていたことがあるんだけど……」

「なぁに? どうかしたの?」

「うん、あのね、多分来年のクリスマスプレゼントは、いつもより早く届くと思うんだ」

「……どういうこと?」

「まぁ色々あってね、あ、あと段々と体調を崩すかも知れないから、冷えには特に注意してね」

「……? よく分からないけど、分かった」

 私は兄がテーブルに置いてくれたスープをゆっくりとくちへと運んだ。
 そういえば、子供の頃兄によく読んでもらったのはピーターパンの絵本だったな。
 クリスマスの話でもないのに、そんなことを私は何故だか思い出した。
 ネバーランドに憧れたあの頃を、何故だか急に、思い出したのだった。

< おわり >

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