好奇心の赴くままに プロローグ

~プロローグ~ 事のはじまり

 好奇心というものは、実に抗い難いものである。
 俺は今年で24になる、どこにでもいるようなフリーターである。
 いや、『であった』という方が正しいか。
 というのも今しがた、『行き倒れた、いかにもといった風貌の老人』を助けたところ、「おぬしにこれをやろう」といって『チカラ』をもらったのだ。
 その『チカラ』は宿主の最も願うカタチに変化するらしく、俺の場合は『他人に暗示を刷り込むチカラ』に変化したそうな。
 昔から他人が(特に女性が)操られる様に興味があったのは確かだが、まさかそこまで強いものとは自分でも思っていなかったから、案外驚いた。
 そんなわけで、この時から、俺は晴れて『フリーター』から『操れちゃう系フリーター』にマイナーチェンジしたわけである。
 先にも書いたが、好奇心というものは実に抗い難いものである。
 新しいものを貰うと、使ってみたくなる。
 ここで、よくある話だと街行く見知らぬカワイ子チャンに使ってみるみたいな展開になるのだろうが、俺にそんな度胸はない。
 そんな度胸があったら、フリーターやってない。
 というわけで、俺は知っている人にこっそり試してみることにした。
 といっても肉親には使いたくない。
 こういう能力を肉親に使うというのは、自分の中ではナンセンスなのである。
 まあ、好奇心にボロ負けして、たった今能力使う宣言したヤツが何を言うかとお思いになるだろうが、 そこだけは譲れないのである。
 それでは、誰にということだが、幸いにも試し相手には心当たりがある。
 俺は個人経営の小さな塾でバイトをしているのだが、そこの塾長が40代後半にも関わらず、ズバ抜けて美人なのだ。世間で言う美魔女というやつである。
 それでいて性格はさっぱりして姉御肌な感じの人なのだ。
 俺の塾での仕事ぶりは自分で言うのもなんだが真面目な方で、塾長からも信頼してもらっているし、仕事終わりには四方山話なんかもよくするくらい打ち解けているのだ。
 彼女にならそれほど用心されずに試せると思う。
 それに、初めて試すなら綺麗な人の方がモチベーションも上がるというものだ。
 そうと決まれば準備である。俺は『チカラ』をくれた老人からセットでもらった『バカでもわかる!使える!俺の能力取説』をめくりながら、次のバイト日まで作戦を練ることにした。

< つづく >

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