私は運が良い。
この幸運を手放さないようにしなくては。
入社式を終えて、私はしみじみとそう思った。
ふと周りの新入社員たちの顔を見てみると、みんな同じことを考えているようで、揃って顔がキラキラと輝いている。
それを見て私は、あぁ、やっぱりこの会社はとても良い会社なんだ、という思いを強くした。
私たちが晴れて就職することができた会社……ベストクロップスカンパニーは、その業界では知らない人はいない有名企業だ。
農業を屋外でやるのではなく、完全に環境をコントロールした室内で行う、いわゆる『植物工場』の運営ノウハウは、このベストクロップスカンパニーが最も優れたものを持っていると言われている。
その『植物工場』で生産された農作物はなかなか市場に出回ることが無いが、ひとたび売りに出されればかなりの高値で取引されているらしい。
そんな優れた技術を持つ優良企業に就職できたのは、私にとってはこれ以上無いほどの幸運だった。
(よし、がんばらなくちゃ!)
先ほど入社式で聞いた社長の歓迎の言葉を思い出しながら、拳を握りしめて気合を入れる。
会社の素晴らしさに負けないくらい、社長の言葉もまた素晴らしかった。
じんわりと心に響くような声に、頭がクラクラとして身体が熱くなってしまったから、本当に最高の演説と言う他ない。
感動しすぎたためか、よく内容が思い出せないけれど……とにかく、自分自身の心構えをとても良い方向に変えることができた気がする。
たぶんこれからどんなことがあっても、会社に尽くして誠心誠意、働くことができる自信がついた。
「……では、新入社員の皆さん。これから早速仕事を始めて頂きます。付いてきてください」
「はい!」
先輩社員の男性が、少し大きな声で私たちに呼びかける。
私たち新入社員は、それに従ってぞろぞろと入社式の会場を後にした。
今年の新入社員は全員女性。
でも、男性にだって負けないように、しっかり働かなくちゃ。
◇◆◇◆◇
入社式の会場から歩いて5分ほど。
私たちはベストクロップスカンパニーの核とも言える、植物工場に入った。
(わぁ……こんな風になってるんだ……)
この植物工場の内部はベストクロップスカンパニーの秘中の秘。
世間には一切公表されず、前にインターンシップで訪れた時も見せてはくれなかった。
しかし今、私たちはもうこの企業の一員。
やっと工場内を見ることができるというわけだ。
とりあえずいま足を踏み入れた部屋は壁が一面真っ白で、広さは20畳ほど。
ロッカーが壁際にずらっと並んでいて、入り口の向かいには物々しい扉があった。
監視カメラが四隅に設置されているのは、警備を厳重にしているためだろうか。
「それじゃあこれから植物を育てているエリアに入ります。その扉の向こうからは非常に細かいレベルで環境を調整しているので、この注意事項を必ず守ってください」
先輩社員の男性は、そう言って手に持ったプリントを一枚ずつ私たちに配っていく。
やはり良い作物を育てるには、色々と注意が必要なようだ。
私はプリントを受け取り、そこに書かれている注意事項に目を通した。
……うん、書かれていることはどれも当たり前といえば当たり前のことで、おかしな所は無い。
ちょっと恥ずかしいし嫌だけど、でも、こういう規則は社会人として守るのが当然だ。
私ももう一人の社員なのだ。
これくらい守らないと、みんなに迷惑がかかる。
周りを見渡すと私以外の新入社員も同じように思っているようで、頬が染まっているものの拒否するような人は一人もいなかった。
「はい、ではそのプリントに書かれているように、服を全部脱いでください。ロッカーは空いている所ならどこでも使って構いませんので」
「……はい」
私たちは言われるまま、その場でスーツを脱ぎ始める。
『植物工場内の環境が乱れないよう、工場内に何かを持ち込むことは一切禁ずる。これは衣服も含む』……そういう注意事項がプリントにあったのだ。
もちろん男性の目の前だし、監視カメラの目もあるからとても恥ずかしいが、だからといって規則を破るわけにもいかない。
個人的な羞恥心と会社の規則……どちらを優先しなければならないかなんて、明白だろう。
(うぅ……)
ブラジャーもショーツも、できるだけ隠さないように意識して服を脱ぎ捨てていく。
注意事項には『植物工場内においては警備上問題があるため、何かを隠すような行為は厳禁とする』という一文もあったのだ。
今日は入社式ということもあってお気に入りの可愛い下着を着けてきたから良かったが、毎日植物工場に入るようなら気を抜いた下着は着けてこない方が良いだろう。
こうして監視カメラで記録されている以上、子供っぽすぎる下着は恥ずかしい。
(下着も……脱がなきゃ……)
スーツとストッキングを脱ぎ終わったら、今度は下着だ。
工場内には、何も持ち込めない。
だから、下着だって例外ではないのだ。
「ん……」
勇気を振り絞って、ブラジャーを外す。
平均よりちょっと大きい乳房が余す所なく空気に曝され、恥ずかしさでぶるっと身体が震えた。
「おぉ、とても綺麗なおっぱいですね。形も良いし、乳首がツンと尖ってるのがまた可愛い」
「っ……! あ、ありがとうございます……」
私の胸を褒めてくる先輩社員に、私は顔を真っ赤にして礼を言った。
かなり恥ずかしいけれど、目上の方に褒められるなんてありがたいことだ。
先輩社員の男性はそんな私にニコリと笑うと、続けて他の新入社員たちの身体も褒めていく。
みんな褒められるたびに、顔を赤くしながらもきちんとお礼を返しているようだ。
さすがは一流企業に就職できただけあって、みんな礼儀がなっている。
私ももっと頑張らなければ。
(よし……!)
私は気合を入れて残された最後の一枚、ショーツに手をかけて勢いよくずり下ろした。
アソコが空気に触れる感触に顔がまた真っ赤になったけれど、なるべく何も考えないようにして両脚からショーツを抜き去る。
そして脱ぎ捨てた衣服と下着を持ち上げると、壁際のロッカーを開けてその中に仕舞った。
「よし、全員裸になったようですね。それではいよいよ工場内に入りますよ」
先輩社員の男性は一人だけ衣服を身に着けたまま、部屋の奥の扉を開けた。
なんでこの人は服を着てて良いんだろう? とふと疑問が浮かんだけれど、すぐにプリントに書かれていたことを思い出して納得した。
確か、『社長の許可さえあれば工場内への持ち込みは例外的に可能とする』……だったか。
先輩社員の服は多分、社長に許可を貰った特別なものなのだろう。
できれば私たちにも許可が欲しかったけれど、まぁ新入社員ごときに社長がわざわざ気を使うなどあり得ない。
私は、いつか許可を貰えるくらい頑張って出世しよう、と考えて先輩社員の後を付いていった。
扉をくぐると、その向こうはとてもひらけたスペースになっていた。
広さはサッカーコートくらいあるだろうか。
中央には農作物が植えられた棚が並び、壁際にはなぜかベッドがずらっと置かれていて、男性社員たちがそれぞれそこに座ってこちらを眺めている。
私たちは全裸だから少し恥ずかしかったけれど、なるべく身体を隠さないように努力した。
「どうです? 案外普通でしょう?」
先輩社員の男性が、おどけたように笑いかけてくる。
その言葉通り、工場内は想像していたよりもそんなに物々しくはなかった。
素晴らしい作物を生産しているのだから、もっと機械やら装置やらが大量にあるかと思っていたけれど、別に普通の植物生育機器だけしかない。
それに壁は一面真っ白で清潔そうではあるものの、ベッドなんて生活感漂うものが置かれているなんて、なんだか思い描いていたものと違いすぎてちょっと拍子抜けだ。
「ははは、これでも厳密な環境調整が行われているんですよ。まぁこれからその凄さが分かっていくと思います」
先輩社員の男性はそう言って、ふふん、と笑う。
ベッドに座っていた男性社員たちも、その言葉にどっと笑い声を上げた。
もしかして何かのジョークだったのだろうか?
私たちはキョトンとしながらも、みんなとりあえず愛想笑いを浮かべる。
それを見て男性社員たちはさらに可笑しそうに笑った。
「さて、ではこれから仕事のノウハウを皆さんに教えていきます。でも私一人では少し荷が重いので、皆さんにはそれぞれ先輩の社員とマンツーマンで指導してもらうことになります。さぁ、そちらの方から順番に奥の方へ」
どうやらベッドに腰掛けていた男性社員たちは、私たちを指導するためにいてくれたらしい。
私はわざわざ自分たち一人一人に先生を付けてくれたことにちょっと恐縮しながらも、前の新入社員の人に続いて奥へと歩いていく。
やがて順番に担当が決まっていき、私は奥から5番目の中肉中背の男性社員とペアになった。
「おっ! 俺はこの美乳ちゃんかぁ♪ 俺は來嶋。よろしくね」
「っ! あ、ありがとうございます。節倉茜です。よろしくお願いします……」
開口一番に飛び出してきた卑猥な褒め言葉に、顔を真っ赤にしながら会釈する。
とても恥ずかしいけれど、褒められたのなら礼をしなければならない。
來嶋さんはそんな私を愉快そうに眺めながら、ポンポンとベッドを叩いた。
「じゃあ茜ちゃん、ここに座って。仕事を教えるよ」
「は、はいっ」
『茜ちゃん』……いきなり下の名前で呼ばれたのは面食らったけれど、あまり気にせず言われた通り來嶋さんの隣に腰を下ろす。
「んー……茜ちゃん、良い匂いするね。香水とか付けてるの?」
「えっ? は、はい……母からプレゼントされたものを……」
仕事の話ではなく、よく分からない世間話を始める來嶋さん。
私はそれに戸惑いながらも、なんとかそれに答える。
まずはお互いの距離を縮めようとしているのだろうか。
まぁ確かにその方が円滑にコミュニケーションが取れて良いのかもしれない。
私は、そういうことなら、と頑張って会話を続けようとした。
しかし――、
「くんくん……あー、たまんねぇ。めっちゃ勃つ」
「んっ……。た、たつ……?」
私の首筋に鼻を寄せ、執拗に匂いを嗅いでよく分からないことを呟く來嶋さん。
あまりにも近すぎる距離感に、私は戸惑って何もできない。
やがて來嶋さんは顔を離し、もうやっちまうか、と小さく呟いた。
「茜ちゃん、ヤらせて」
「えっ……?」
「だから、股開けっつってんの」
「っ!!」
最初の言葉では追いつかなかった脳も、二言目でようやくハッキリと來嶋さんの意図を理解する。
來嶋さんは、私に性欲処理の相手をして欲しいようだ。
注意事項のプリントにも書かれていたけれど、『女性社員が男性社員を発情させてしまった場合、責任を持って性欲を処理しなければならない』。
いつか来ると分かっていたけれど、こんなに早くその時が来るとは思わなかった。
「茜ちゃんのせいでバキバキに勃起しちまったんだから、早く責任とってよ。ほら、隣のベッドでももうヤり始めてるよ」
「えっ……。あっ!」
來嶋さんが指差した先を見てみると、なんと隣のベッドではもう新入社員の女の子がはしたなく股を広げて、男性社員のアレを受け入れようとしている所だった。
そして私と來嶋さんが見ている前で、二人の腰がぴったりと密着する。
出会ってから数分も経っていないのに、もう身体の関係を持ってしまったようだ。
「ほら、茜ちゃんだけワガママ言ってやめるの?」
來嶋さんが私に囁く。
そうだ。
私だってもう立派な大人なのだから、自分だけ規則を破るわけにはいかない。
むしろ進んで股を開くくらいしなければならないのだ。
「わ、分かりました……」
私はなんとかそう声を出して、嫌がる心をねじ伏せながらベッドに横になる。
そしてゆっくりと、膝を曲げて轢かれたカエルのように無様な格好になった。
「おほっ、綺麗なスジマンだね。もしかして新品?」
「うぅ……はい、処女です……」
「おぉっ、ラッキー!」
來嶋さんは私が未経験であることに興奮したのか、あっという間に服を脱ぎ捨てて固く勃起したアレを露わにする。
思わず目を背けてしまいたくなるグロテスクさ。
これからあんなものが自分の中に入ってくるのかと思うと、堪らない怖気が走った。
「濡れてないからローション使おうねー」
來嶋さんはベッドの枕元に置いてあったピンク色のボトルを掴むと、キャップを外して自分のアレに塗りつけていく。
そしてそれが終わると、私のアソコにもたっぷりとローションを垂らした。
「俺は優しいからローション使ってあげるけど、使わない乱暴な奴も結構いるからね。ま、覚悟しておいてよ」
「はい……」
どうやら性欲処理において私たち女性のことはあまり配慮されることが無いらしい。
まぁ自分が原因で発情させてしまったのだから、男性がスッキリすることを最優先にするのは当たり前かもしれないけれど。
來嶋さんは私が頷いたのを見て可笑しそうに笑ってから、私の股の間に膝立ちになって固く大きいアレを私のアソコに触れさせる。
私の喉が恐怖でゴクリと鳴ったけれど、來嶋さんは、いただきまーす、と呟いて、そのまま強引に私の中に侵入してきた。
「んんっ!! んく……んあぁ!!!」
まだ誰も侵入したことのない固く閉じた場所を、乱暴にこじ開けられる感覚。
ローションのおかげで來嶋さんのアレは止まることなく奥へ奥へと侵入し、そして――、
「はい、姦通~。はぁ~、茜ちゃんの処女マンコきっつ~」
「あ……あぁ……!」
來嶋さんの腰が私に密着し、自分の中に來嶋さんのものが全て入ってしまっているのを感じる。
痛みで目から涙が溢れ、口からは無意識に虚ろな声が漏れた。
「あらら、茜ちゃん泣いてら。ははっ、レイプっぽくてめっちゃ興奮するわ~♪」
「うぅ、うっ、うぅっ!」
私が泣いたのを可笑しそうに笑いながら、來嶋さんはガシガシと腰を振り始める。
私は涙を流しながら、呻き声を上げ続けた。
來嶋さんは『レイプっぽい』と表現したけれど、これは間違いなく私も同意した和姦だ。
來嶋さんだって仕事をしたいだろうに、私が発情させてしまったせいでこんなことをする嵌めになっている。
本来なら自分から腰を振って性欲処理のお手伝いをすべきなくらいだろう。
「うっ、くぅっ、うあっ、んっ!」
「ふんっ、ふんっ! あ~、処女マンコでチンコ扱くのくっそ気持ち良い~♪ やっぱ締め付けが違うわ♪」
処女を奪われてすぐ激しく動かれるのはとても痛いけれど、來嶋さんが恍惚とした声を上げてくれているのがなによりの救いだ。
ちゃんと責任を取れている。
私にとってはその事実が、なにより心を落ち着かせてくれる。
しかし――、
「う゛っ」
「んぁっ?」
ドクッ! ドクッ! ドクッ! ドクッ!
不意に來嶋さんが呻き声を上げ、お腹の中に熱い何かが放出される感覚が襲ってくる。
驚いて來嶋さんの顔を見ると、來嶋さんは口をだらしなく開けて陶酔したような表情をしていた。
「!!!」
さっきまで処女だった自分にも分かった。
來嶋さんは、私の中に射精したのだ。
出すよの一言もなく、無断で、私は種付けされてしまったのだ――。
「き、來嶋さん、あの、今日は危ない日で……!」
今日は確か、危険日。
來嶋さんはコンドームを着けていなかったし、中に出されるのは確実にまずい。
私は慌てて來嶋さんにそれを伝えた。
しかし來嶋さんは――、
「ふぅ……。あぁ、それなら後でアフターピル飲んどいてね。社員はタダで貰えるから」
「えっ…………あ……は、はい……」
危険日に中出ししたことを、どうということはないように話す來嶋さん。
どうやら性欲処理においては男性を満足させることだけが重要で、それ以外のことはやはり全てが瑣末なことらしい。
発情させたのは女性が一方的に悪いのだから、当然のことかもしれないけれど。
「んじゃもう一回戦」
「えっ? んあっ、うっ、んんっ、うぁっ!」
なんだかぼんやりしてしまった私に、來嶋さんが再び腰をバコバコと打ち付けてくる。
二回目もやはり無断で中出しされ、その次は來嶋さんではなく隣のベッドの男性社員に犯され、その次はその隣の男性に……。
……そしてようやく野菜の育て方について聞くことができた頃には、もう私はクタクタになっていて、何を教えられたのかろくに覚えることができなかった。
◇◆◇◆◇
「お、おはようございます……」
今日も野菜の生育質に入り、挨拶をする。
ベストクロップスカンパニーで働き始めてから、もう1ヶ月が過ぎた。
慣れたもので、こうしていつも通り全裸になっても、もうあまり羞恥心は感じなくなった。
しかしまだどうしても慣れないのが――、
「あんっ! あんっ!」
「あぁっ、んんっ! はぁっ!」
部屋のあちこちから聞こえてくる嬌声。
今日も今日とて、女性社員たちは朝から男性社員の性欲処理に勤しんでいるようだった。
働いて1ヶ月して分かったことだけれど、女性がこうして全裸でいる以上、男性はどうしても発情してしまうもののようで、女性社員は驚くほど頻繁に性欲処理をしなければならなかった。
酷い日にはそれこそ一日中相手をさせられるし、生理中でもフェラチオを嫌というほどさせられて休めることがない。
……もちろん、悪いのは私たち女性なのだから文句を言う筋合いなんてこれっぽっちも無いのだけれど。
「おっ、おはよう茜ちゃん。ヤらせて♪」
「あっ、はい……」
手持ち無沙汰にしていた男性社員が、部屋に入ってきた私を見つけて声をかけてくる。
私はその要求に頷きながら、手近なベッドへと一緒に歩いて行く。
こうして気軽に身体を差し出すのは、まだあまり慣れない。
でも、少しずつ――、
(ぜんぶ私のせいなんだから、ちゃんと男の人には奉仕しないと……)
そういう意識が頭の中に刻みつけられていくのが、自分でもよく分かった。
◇◆◇◆◇
こうして、ベストクロップスカンパニーの『商品』は作られていく。
彼女たちは知らない。
部屋の中央で適当に育てられている植物などではなく、自分たちこそが、後に好色な金持ちたちに出荷される『商品』に他ならないということを……。
< 終 >