[AI]「あれ、これ催眠じゃない?」12赤城美琴 屈辱

※この作品は生成AI「ChatGPT4o」を利用して製作しています

 

 

(……なにそれ?)

 

「男の子みたいに、欲情できる。そういう風に、変わっていくよ」

 

「千夏のまま、女の子を見て、想像して、欲しくなる」

 

「それが、千夏の“ご褒美”だよ」

 

 ――佐久間くんの、あの低くて静かな声。

 

 まるで囁くみたいに、チカの耳元に流し込まれてくその言葉たちが、うちの胸にも、ズンって響いた。

 

(……チカをレズにするってこと? なにそれ、おもろ)

 

 心のどっかで、そうツッコんでた。

 

 でも、それと同時に――

 

(……いいな)

 

 って思ってた。

 

「ご褒美」だって。

 

 そう言われて、催眠かけてもらって、チカがあんなに気持ちよさそうに、されてる。

 

(うちだって、がんばってるのに)

 

 ――思った。

 

 ずっと、ちゃんと付き添ってるし、チカのために、今日ここに来たんだし。

 

(いやまあ、うちも……いっぱい掛けてもらったけど)

 

(楽しかったし、気持ちよかったけど、いっぱい我慢してるし……)

 

 でも、それでも、まだ“おあずけ”。

 

 今も、ここで見てるだけ。

 

(ご褒美、ほしい)

 

 そう、思ってた。

 

 そう思っちゃってた。

 

 口に出したわけじゃない。けど、頭の中が“うらやましい”でいっぱいになっていく。

 

 あの時の気持ちが、じわじわ戻ってくる。

 

 ふわふわに溶けて、声が勝手に出ちゃいそうになって、腰がムズムズして、胸がきゅうってなって――

 

 あの時も、「されてるだけ」で、幸せだった。

 

(あたしも……してもらいたいな)

 

 チカを見て、そう思った。

 

(佐久間くんに、また……)

 

 胸の奥が、じんわり熱くなる。

 

 催眠で変わるのって、すっごく、すっごく――

 

 楽しい。

 

 気持ちいい。

 

 だから、もっと欲しくなっちゃう。

 

(……あたしも、欲しい)

 

「……千夏、聞こえるね」

 

 蒼真の声は、まるで夢の中で囁くみたいに静かで、心の深くに届いてくる。

 

「女の子って、ほんとに、すごく綺麗で、柔らかくて、あたたかい存在だよね」

 

「髪の艶も、まつげの長さも、指先の細さも――ぜんぶ、愛しくて、欲しくなる」

 

 千夏の体がぴくりと反応する。

 

 呼吸が少しだけ深くなって、唇が震えるのが見えた。

 

(……掛かってる)

 

 美琴は、目の前の千夏の様子を見て、ぞくっとした。

 

 あの時と同じ空気――

 

 佐久間くんの声が、優しくて、でもとても深くて。

 それが確実に、チカの心に沁みてるのが、伝わってきた。

 

「胸のふくらみも……脚のラインも……」

 

「女の子の身体って、見てるだけで、身体の奥が熱くなるよ」

 

「触れたくなる。匂いを嗅ぎたくなる。抱きしめたくなる。キスしたくなる」

 

 千夏のまぶたが、少しだけ持ち上がって――すぐにまた閉じた。その下で、黒目が泳いでいるのがわかる。

 

(……あー、入ってってる)

 

 美琴は無意識に、自分の太ももをきゅっと締めた。

 

(……うらやま)

 

 唇を噛む。

 

 だって、これ。

 

 絶対に気持ちいい。

 

「声も、仕草も、目線も、全部が刺激になる」

 

「女の子の存在そのものが……もう、我慢できないくらい、魅力的」

 

「そんな風に、なっていくよ」

 

 千夏が小さく、あ、って声を漏らす。

 

 呻くというほどじゃない。でも、はっきりと“反応”だった。

 

 身体が、熱を持ってる。肩が微かに震えて、脚が内股に揃いかけて――

 

(……チカの表情、めっちゃ緩んできてる)

 

 その姿が、くやしいくらい、羨ましかった。

 

(……いいな)

 

 うちも、あんな風にされたい。

 

 なんなら――レズにでも、なんでもしてくれていい。

 

(うちだって、あんな風に……変えられたい)

 

「……千夏、あの時のこと、思い出してみようか」

 

「君の中に“蓮”がいた時――どんなふうに、君の体を見てたか」

 

「胸に手を当てて、やわらかさに震えてたよね」

 

「スカートの中を見て……その奥まで、触れて――」

 

「“やっべ”“チカ可愛い”“欲しい”って……あれは、君自身の感覚だった」

 

(……うわ、来たわ)

 

 チカの肩が、ふるっと震える。

 

 息が浅くなって、膝がわずかにすり合わさる。

 

(……絶対思い出してる)

 

 見てるだけで、伝わってくる。佐久間くんの声が、千夏の深いところにしみこんでるのが。

 

 そのとき――ふと。

 

 自分の中で、ぐんっと熱がこみ上げてきた。

 

(……うちだって、知ってるもん)

 

(チカの身体が、どんだけ可愛いか。見てたし、触れてたし)

 

 わかる。

 

 すっごく、わかる。

 

 だって――

 

 目の前にいるチカが、可愛すぎるから。

 

 目を閉じて、息を漏らして、今にも蕩けそうな顔で……ちょっと脚を開いたまま、身を震わせてて――

 

(……マジで、やば……)

 

 太ももの奥が、ぞわって震えた。

 

 気づいたら、私の手が――制服のスカートの下へ、そっと滑り込んでた。

 

 机の下で、音を立てないように。

 

 誰にも見えないように。

 

(……だって、もう我慢できない)

 

 指先が、タイツの上から自分の内ももをなぞる。

 

 そのまま、そっと太ももを撫でて、中心に近づいていくと――

 

(あ……濡れてる……)

 

 ショーツ越しでもはっきりわかる、じっとりした感覚。

 

 触れた指先が、濡れた布地を押し込んで、その奥の熱まで感じ取って――

 

 びくん、と腰が跳ねた。

 

(うち、……やばい、マジで)

 

 チカに掛けられてる“スケベになっちゃう催眠”を見てたら、気づいたら、自分がスケベになってた。

 

(……佐久間くんの声、聞いてるだけで……)

 

 その声が、隣で囁くみたいに響いて、自分の中にまで入り込んでくる気がした。

 

(だってさ、催眠って、最高だもん)

 

(楽しくて、気持ちよくて、うちを変えてくれて……)

 

 指が、濡れた布の奥へ、もっと押し当てられる。

 

 腰が、勝手に揺れて――

 

 小さく、かすかに吐息が漏れた。

 

「……は……♡」

 

 慌てて口を押さえる。

 

 でももう、遅い。

 

 太ももをすり合わせて、快感をごまかして、それでもショーツの中では、指が勝手に動いてた。

 

 熱くて、敏感で、やわらかくて。

 

 自分のそこが、どれだけ感じてるか、もうとっくに知ってる。

 

(……あたしも、されたい。チカみたいに。変えられたい)

 

(どんな風にでもいい。気持ちよくしてくれるなら……)

 

 そう思った時、自分の中から、じわっとまた熱があふれてきた。

 

 たった一人で。

 

 誰にも触れられてないのに。

 

 “催眠で変わっちゃう幸せ”を、思い出しただけで。

 

 私は、また、気持ちよくなってた。

 

 

 ちゅ……くちゅ……くちゅっ……

 

 濡れたショーツの隙間から差し込んだ指が、奥で音を立てる。

 

「……ん、ぁ……♡」

 

 抑えたつもりの声が、喉から漏れた。

 

 熱い。

 

 腰が勝手に揺れる。

 

 このまま誰にも気づかれずに……って思ってたのに、もう無理だ。

 

「……やば……まじ、やば……♡」

 

 指が止まらない。音が、どんどんはっきりしてくる。

 

 くちゅっ、くちゅ、ちゅくっ……

 

(うそ、うち、……こんな音……)

 

 ふと、左手に握ってたスマホが目に入った。

 

(やば、録ってる……!)

 

 録画は続いてる。

 

 画面の中では、千夏がだらしなくぐったりして、蒼真がその横で何かを囁いてる。

 

(ブレてない……? 音、入ってない……?)

 

 水音……うちの声……

 

(え、やば……やば、やばいって……!)

 

 慌てて口を押さえて、息を殺した。

 

 指も止めようとしたけど――

 

 止まらなかった。

 

 ちゅっ、ちゅくっ、くちゅっ……

 

 もう、下半身が自分のじゃないみたいに動いてた。

 

 脳が蕩けてく。

 

 そのとき――

 

「……お待たせ」

 

 佐久間くんの声がした。

 

 こっちを向いて、柔らかく笑って、そう言った。

 

 瞬間――

 

「――っあ♡♡♡」

 

 意識が、真っ白に飛んだ。

 

 頭の奥で、何かが弾けた。

 

 腰がガクンと跳ねて、指先が震えた。

 

「ぁ、ぁあ……っ……♡」

 

 全身が、きゅんって締め付けられて――

 

 吐息と一緒に、電流みたいな快感が駆け抜けた。

 

 ビクン、ビクッ……!

 

 足が震えて、太ももがつりそうになる。

 

 手の中で、指がびっくりするくらい濡れてた。

 

(……なに、今の……)

 

 脳が、ふわふわしてる。

 

 佐久間くんの「お待たせ」――

 

 その一言だけで。

 

 びくんっ……びくっ……

 

 下腹部から、何度も何度も、波みたいな快感が溢れてきて――

 

「ん、ぁ、あぁ……♡」

 

 震える声が、喉から漏れる。

 

 全身がふわふわして、力が抜けて、頭が働かない。

 

 ふと、遅れて気づいた。

 

(……あ、そっか……うち、掛けてもらえるって思ったから……嬉しくて、イっちゃったんだ……)

 

 理解が遅れて届いたその瞬間、

 

「ふふ……ほんと、わかりやすいな」

 

 優しい声がして、手のひらがすっとのびてきた。

 

 左手――スマホを持っていた方。

 

 その先端では、録画ランプが、まだ赤く光り続けていた。

 

 止める様子もなく、佐久間くんがそっとそれを持ち上げる。

 

「お疲れ様、美琴。偉かったね」

 

 その一言が、脳にとろりと染み渡った。

 

 ふにゃっと、力が抜ける。

 

「ぇ……えへ……♡」

 

 笑ったつもりが、変な声になった。

 

 気づけば、佐久間くんがスマホをこちらに向けていた。

 

 撮られてる――って意識が、少しだけ浮かんだのに、

 

 それ以上の幸福感が、全身をくしゃくしゃにしてた。

 

 視界が潤んで、何も考えられない。

 

 佐久間くんが、ぽつりと呟く。

 

「美琴も、入っちゃったのかな。掛かりたかったもんね」

 

 その言葉に、胸がぎゅっとなった。

 

「じゃあ、もう君も――女の子が、かわいくて、しょうがない」

 

 そのまま、声が静かに流れ込んでくる。

 

「千夏のことが、欲しくて、たまらない。見てるだけで、身体がムズムズする」

 

「女の子って、かわいくて、やわらかくて、いい匂いがして……」

 

「ね、美琴。触れてみたくなるよね? 抱きしめて、キスしたくなるよね?」

 

「千夏のスカートの奥、気になってたよね。どうなってるか、見たくてたまらないよね」

 

「触れたら、きっと気持ちいい。ぜったい、癖になっちゃうよ」

 

「美琴は、女の子に欲情する。特に千夏に。どんどんそうなる。どんどん、そうなっていく……」

 

「それが、気持ちいい。嬉しい。楽しい。――幸せだよね?」

 

「……ん、んぁ……ぁ、あっ……♡」

 

 口から、思わず変な声が漏れた。

 

 うれしい。すっごくうれしい。

 

 頭の奥が、じんわりして、胸の奥から熱がこみ上げてくる。

 

 女の子が、かわいくて、たまらない。

 

 チカが、かわいくて――たまらない……!

 

 

 佐久間くんの声が、ふわっと耳に届いた。

 

「だって、千夏は大事な仲間なんだよね」

 

 うん――そう、だよ。

 

「……あの日だって、千夏を庇って、僕のところへ来た」

 

(……そっか、うち、チカを……)

 

 脳がじわりと熱を帯びて、ぼんやりしてた記憶の奥から、ぽつぽつと断片が浮かんでくる。

 

 あの教室。チカが不安そうにしてて、

 その隣で、うちは――

 

「思い出せるよ。あの時の気持ち」

 

(……あたし、佐久間くんのこと……)

 

「本当は、僕のことが嫌いだった」

 

「催眠で、全部、楽しいことだと思い込まされていただけ」

 

「ほら、全部……思い出せる」

 

 脳の奥が、かき混ぜられる。

 

 ふわふわの膜みたいなものが、少しずつはがれていく。

 

 佐久間くんが、ちょっと嫌だった。

 催眠とか、うさんくさいって思ってた。

 むしろ――怖かった。

 

 なのに、いま――

 

「三つ数えると、初めて会ったときの美琴の心に戻る」

 

(――戻る?)

 

「でも体は、千夏に欲情する、スケベな美琴のまま」

 

(え……)

 

 言葉が、身体の芯に、ふわっと入り込んでくる。

 

「自分では動けない。催眠に支配されたままだ」

 

(支配……?)

 

「ほら……さん」

 

 数字が、静かに落ちてくるたび、胸がぎゅうっと締め付けられる。

 

「に」

 

 頭の奥がクリアになる。

 あの時の嫌悪感。警戒心。反発心。

 ぜんぶ、リアルに蘇ってくる。

 

「いち」

 

 ――ばちん。

 

 なにかが弾けた気がした。

 

(……あ……)

 

 佐久間くん――いや、佐久間蒼真。あいつの顔が見える。

 

 思い出した。

 初めて、こいつを見たときの感情。

 

(なんか、きしょかった……)

 

(むっつりで、絶対ヘンなこと考えてそうで……)

 

(あたし、ぜったい関わらないって思ってた)

 

 なのに――

 

 今、身体が、熱い。

 

 ふとももが、そわそわして、

 胸の奥が、ずきんずきんと疼いて、

 

 喉の奥が、乾いて仕方ない。

 

 視界の端には、机にぐったりしてるチカの姿。

 

 汗ばんだ肌。

 スカートの奥。

 ぴん、と伸びた脚のライン――

 

(やば……なにこれ……チカ、エロすぎ……)

 

(触りたい。におい嗅ぎたい。下、どうなってるか、ちゃんと見たい……)

 

 頭では、佐久間くんのことが嫌で、

 でも身体は、チカに欲情してて――

 

 そのギャップが、めちゃくちゃに気持ちよかった。

 

(……いや、そんなわけ、ないし)

 

「赤城さん、覚えてる?」

 

 佐久間くんの声が、また降ってきた。

 

 ちょっと、にやけたような、わかってて言ってる声。

 

「催眠、気持ちよかったんでしょ?」

 

(……は?)

 

「いっぱい掛けてほしかったんだよね。かわいかったよ」

 

「――なっ……!!」

 

 ぶちっ、と何かが切れる音がした気がした。

 

「あんた、なに言ってんの!? きっしょ! うちはそんなんじゃ――!」

 

 言いかけて、喉が詰まった。

 

 ――目が、離せなかった。

 

 チカが、あんな顔して、机に突っ伏してるのに。

 

 口元、かすかに開いてて、目はとろんと潤んでて。

 ふともも、きゅって揃えて、腰が微かに揺れてる。

 

 うそ……やば……  え、なにあの色気……

 

 胸の奥が、また、ぎゅうって熱くなる。

 

 身体の奥、じんじんする。

 

 ――うちじゃないのに。

 

 あんな顔、うちだって、したかったのに。

 

(……ちがうっ)

 

 即座に否定が浮かぶ。

 

(それは、催眠で変えられただけ! あたしじゃない!)

 

 自分で自分に言い聞かせる。うちがそう思うなんて、おかしい。こんなの、あいつの――

 

(こいつのせい!)

 

 胸の奥が、熱くて、苦しくて、でもそれ以上に――千夏から、目が離せない。

 

 ――催眠で変えられちゃうのって、楽しくて、気持ちよくて、マジで最高なんだもん。

 

 自分で言ったことが、頭の奥からよみがえってくる。

 

(うちは、そんなんじゃないし……)

 

 でも、視線が、千夏から外れない。

 

(……チカ、かわいすぎ……)

 

(えっちすぎん……?)

 

「なに見てるの、美琴」

 

(……は?)

 

 一瞬、頭の中が真っ白になった。

 

 「美琴」なんて、呼ばれる筋合いないし。

 よりによって、こいつに。

 

 ――“佐久間蒼真”。

 

 あたしにとっては、あの時からずっとそう。

 名前すら、呼びたくないってくらい――最悪なヤツ。

 

「……見てないし!」

 

「ほんとに? 見惚れてたよね。赤くなってたし」

 

「うっさい! しゃべんな!」

 

 でも、千夏のこと、やっぱり目で追っちゃう。

 

 怒りの炎と、熱いなにかが混ざって、頭の中、ぐっちゃぐちゃだった。

 

 

「あとさ、これ借りてるよ」

 

 スマホをちらりと掲げてみせる。

 うちのスマホだ。

 録画中の赤いランプが、無慈悲にこちらを向いている。

 

「千夏に掛けてる時、見ながら……勝手に気持ちよくなってたでしょ。あの時の声も、きっとばっちり入ってるよね」

 

 顔が、びくりと引きつる。

 

(やめろ……言うな……)

 

「けっこう音、してたよね。下の方から。美琴の声とか、水音とか。きれいに録れてるかな」

 

 その一言で、視界がぐにゃりと歪んだ。

 

(っ……っ!?)

 

(……うそ……まさか……)

 

(うそ、うそ、うそ……!)

 

 あたしの声――

 あのとき、漏れた、かすかな吐息。

 自分でも気づいてた。

 自分の指が、濡れたショーツの奥で動いてたこと。

 

(……最悪だ……!!)

 

 あたしの音が。

 あたしの声が。

 

 録画の中に、無防備に――堂々と――自分の“恥”が刻まれているかもしれない。

 

「最初は、『催眠なんか効くわけねーし』って態度だったのに、今じゃ『お待たせ』の一言だけで、あんなになってさ」

 

 ただただ、耐えがたい。

 

 自分の声。

 出してた。

 いや、出しちゃった。

 ――“佐久間蒼真”の声、ひとことで、あたし、イっちゃってた。

 

(ちがう……そんなの、あたしじゃない……!)

 

 身体が熱い。頭が熱い。

 でも、それ以上に、顔が、焼けるみたいに火照っていた。

 

 何よりも最悪なのは――

 

 目の奥が、潤んでること。

 くやしい。くやしい。

 こいつにだけは、見せたくなかったのに……!

 

「っ……殺す……!」

 

 かすれた声で、そう呟くしかなかった。

 

(あたしを、誰だと思ってんの……!)

 

(好きでもないやつに、こんな顔、声、身体の、イイときの、反応とか――)

 

(見せたくなんかなかった!!)

 

 でも、あたしの身体は、ひとつも動いてくれなかった。

 

「怒ってる? ねえ、美琴」

 

 至近距離から、覗き込むように。

 

「キモ男、クソ野郎、性犯罪者……そんなふうに思ってる?」

 

(あたりまえじゃん……! 死ねよ……!!)

 

「でも、“催眠術師”の声がしたら、また気持ちよくなっちゃうんだよね?」

 

「たとえ、“本当の美琴”が俺を嫌っていても――」

 

 そこで、佐久間蒼真は声のトーンを落とした。

 

「――体の奥は、ちゃんと覚えてる。催眠の気持ちよさ。従うことの快感。すべてが、『大好き』だったってこと」

 

 瞬間、視界がじん、と滲んだ。

 

(……やめろ……)

 

(ほんとに……やめて……)

 

 言葉にできなかった。

 

 悔しいのに、怖いのに、恥ずかしいのに、

 なぜか、喉が詰まって、そのどれひとつも言葉にならない。

 

(……こんな……の)

 

(あたし、こんな……の……)

 

 そんなふうに考えてる時点で、もう、心が負けてる気がして――

 悔しさが、どこにも行き場をなくして、涙になってあふれそうになった。

 

 でも。

 

 それでも。

 

 あたしは、こいつのこと――絶対に許さない。

 

(あんたのことなんか、大っっっ嫌いだ……!!)

 

 

 そう心の奥で叫んだその瞬間、蒼真はふいにこちらから目を逸らし、千夏の方へと向き直った。

 

 背を向けるその仕草だけで、嫌な予感が、首筋を這った。

 

「千夏……君の中にある、女の子への欲望が、もっと強くなっていくよ」

 

 その声を聞いた瞬間、胸が詰まる。

 

「……は? ちょっと待って」

 

 喉がうまく動かず、かすれた声しか出なかった。

 でも、怒りはもう、煮え立つ寸前まできていた。

 

「おい! 千夏に何してんだよ、てめぇ……! 変なことすんな!」

 

 けど、蒼真は振り返らない。あたしの怒鳴りも、何もかも、無視するように。

 

「千夏、君は……小さくて、可愛い美琴が……欲しくて仕方がない」

 

(っ……!)

 

 心臓が跳ねた。体の奥が、キュッとねじれる。

 

 おかしい。おかしいのに、何かが反応してしまっている。

 

「こうして深く落ちていても、美琴の声は聞こえている」

 

「目を閉じていても、うっすらと視界が透けて……美琴の姿が見えてくる」

 

「スカートの奥、胸の形、指の細さ、唇の色。……全部、見たくてたまらない。欲しいと思ってしまう」

 

 ぞくり、と背筋が震えた。

 

「ちょっ……やめっ……やめろ、マジで!! 千夏に、変なことすんなって!!」

 

 叫ぶ。叫んでる。

 けど、こいつは笑ってすらいない。ただ、冷静に――千夏に“染み込ませている”。

 

(なんで……なんでこんなことを……!?)

 

 千夏の体は、まだ脱力したまま。

 トロンとした目元が、かすかに震えているのが見えた。

 

 それが、たまらなく――怖かった。

 

(……聞こえてるの? ほんとに、聞こえちゃってるの……?)

 

(……うちの声を、聞きながら……“欲しい”って、思ってんの……?)

 

「催眠に掛かっている女の子は、特別に可愛いね」

 

 蒼真が、ぽつりと呟く。

 

「無防備で、素直で。……千夏はいま、自分では動けないけど――」

 

「頭の中ではずっと、想像してる。どうしたいか。どんなふうに、美琴を手に入れたいか。どこを触りたいか、どうキスしたいか……」

 

「全部、自分の中で繰り返してる。止まらない」

 

(……っざけんな……!!)

 

(千夏は、あたしの友達なんだぞ……!)

 

(それを……そんな風に、勝手に、変えて……!!)

 

 怒りと、悔しさと、どうしようもない恐怖が、ぐちゃぐちゃになって押し寄せてくる。

 

 それなのに――

 胸の奥が、ずっと、ぎゅうって熱い。

 

(……うそ……なにこれ)

 

(あたし、怒ってるのに……怖いのに……)

 

(なんで、こんな……ざわざわしてんの……?)

 

 目の前で、ぐったりとした千夏が――

 ゆっくりと、ほんのわずかに指を動かした。

 

 びくり、と心臓が跳ねた。

 

(……見えてるの? うちのこと……)

 

 千夏が、あたしのことをいやらしい目で見てる。

 そう思っただけで、なぜか――胸の奥が、ぞわぞわと疼いた。

 

 それだけじゃない。

 

(……うちも、チカのこと……いやらしい目で見てる)

 

(ずっと……見ちゃってる)

 

 チカのとろけた目。ふともも。肌。スカートの中。

 さっきまで、あたしの中にも“あれ”が入ってた。

 蒼真の声に誘導されて、気づかないうちに、チカをいやらしい目で、追ってた。

 

(うそ……あたし、もう……こんな……)

 

 そんな風に考えてるだけで、下腹部がきゅん、と縮こまる。

 脚の奥が、じんじんしてきて。

 動けないままの足が、勝手に震え出しそうになる。

 

 そんなあたしの様子を、この男はちらりとも見ず――静かに、こちらへ振り返った。

 

 

「じゃあ、美琴――千夏に、可愛いところ、見せてあげようか」

 

 喉が詰まった。

 

「……は?」

 

 かすれた声が、自分の口から漏れる。

 

「……何言ってんの、テメェ……!」

 

 震える唇。今にも噛みちぎりそうなくらい、奥歯がきしんだ。

 

「可愛いところって……あんた、何様のつもり!?」

 

 怒鳴り声が、教室の中に跳ね返る。

 

 それでも、佐久間蒼真は落ち着き払った声で――

 

 ――「でも、可愛かったよ」

 

 その言葉が、耳に落ちた瞬間。

 

 瞬間的に、背筋がぞわっと粟立った。

 

(……は?)

 

 なに、いま……?

 

(可愛い? 誰が? ……あたしが?)

 

 言われた瞬間、胸の奥がぐつぐつと煮え立つように熱くなる。

 

(こいつ、何言ってんの!?)

 

 あたしは、こいつのことを、心の底から軽蔑してる。

 怒ってる。軽んじてる。吐き気すらする。

 なのに――どうして、こんな言葉を平然と落としてくるのか。

 

(誰が“可愛い”なんて……!)

 

 佐久間は、まるで何でもない話をするように、言葉を続けた。

 

「最初に掛けたとき、覚えてないかもしれないけど……君、すごく素直だったんだよ」

 

 その口ぶりがまた腹立たしい。

 まるで、“見てきたままを教えてあげてる”みたいな口調。

 

「最初は、思いっきり睨まれたけどさ。『は? 催眠? うさんくさっ』って、そういう顔してた」

 

(してたに決まってんでしょ……!)

 

「でも、俺が声をかけて、少しずつリラックスさせていったら、君――すぐに落ちていった」

 

 落ちていった。

 

 その言葉を聞いた瞬間――

 頭の中に、ふっと、映像がよみがえった。

 

 誰もいない教室。

 冷たい床。

 蒼真の声。

 おでこに、ふれる指。

 

 膝が崩れたときの、体の浮遊感。

 呼吸が熱くなって、目が霞んで。

 意識が、じわじわ溶けていく。

 

(……うそ……)

 

(これ、なに……思い出してんの、あたし……)

 

「“催眠開始”って言ったら、君の身体がすーっと力を抜いて、まぶたが重くなって、声に従うように……そんなふうに暗示を入れたんだよ」

 

 心臓が、ドクンと跳ねる。

 

「“掛かるのが気持ちいい”“掛けられるのが楽しい”ってね。そうしたら、君……すっごく気持ちよさそうにしてた」

 

(やだ、やめて……言わないで……)

 

 頭が熱い。

 胸の奥が、キリキリする。

 なにより――自分でも思い出しちゃってるのが最悪だった。

 

 蒼真はさらに言葉を重ねる。

 

「それから、猫になったときも可愛かったよ。チカの膝の上で喉鳴らしてさ、“にゃー”って甘えながらすり寄って――あれはもう、芸術だった」

 

(……あ)

 

 その瞬間、視界がまた滲んで、今度はチカの顔が浮かぶ。

 

 柔らかい太ももに、頭を埋めた感触。

 チカが、嬉しそうに撫でてくれた手。

 耳を触られて、とろんとしたまま、甘えていた記憶。

 

 くすぐったくて、気持ちよくて――

 そして、幸せだった。

 

 腰を撫でられて、とんとんとされて。

 身体がふわふわして、びくんってなって。

 それを、チカは本当に愛おしそうに、ずっと可愛がってくれてた。

 

(……気持ちよかった……)

 

(あのときの、チカの手も、声も、表情も……)

 

 思い出しただけで、下腹がきゅうってなって、胸がざわつく。

 

 でも。

 

 ――全部、催眠だった。

 

(……あたし、催眠で……猫にされて)

 

(チカに甘えて……撫でられて……イかされて)

 

(全部、あいつに掛けられた暗示のせい……!)

 

 気持ちよかった。

 心から、幸せだった。

 でも――だからこそ、苦しい。

 

(あたしの“幸せ”が、こいつの手の中にあった……)

 

(……それが、一番……最悪だ)

 

 あたしの中にある“チカへの気持ち”すら、こいつの声で作られた。

 

 それを考えると、吐き気がするほどの屈辱が、喉の奥からせりあがってきた。

 

 

「ああ、それで、さっきの録画だけどさ――」

 

「自分でしながらさ、千夏のこと、ずっと録ってくれてたよね。偉いね、美琴」

 

 その言葉が、耳の奥でかちりと何かを噛み鳴らした。

 

(……偉い、ね?)

 

(ふざけんなよ……!)

 

 忘れようとしてたのに、脳が勝手にあの時の光景を呼び戻す。

 

 チカが、脱力していた。

 脚を揃えて、机に突っ伏して、蒼真の声に反応してた。

 

 そのすぐ横で――あたしは、スマホを構えてた。

 ごく自然に。むしろ誇らしげに。

 “いいこと”だと信じて。

 

 楽しくて、気持ちよくて、良いこと――

 そう思い込まされていたから。

 

(でも……ちがう……)

 

(なんで、うち……チカの、あんなとこ……!)

 

 恥ずかしげに震えてる顔。

 とろけた目。

 スカートの奥まで、映ってたかもしれない。

 それを、自分の手で、しっかりと。

 

 

 その事実に、今さら吐き気がするほどの自己嫌悪が襲ってくる。

 

(自分から……撮ってたんだ)

 

(それだけじゃない。チカに、エッチなこと言って……)

 

(全部、いいことだって、信じて……!)

 

 今思えば、どうかしてた。

 あの時、心の底から「役に立ってる」って思ってた。

 

(あたし、ほんとに……!)

 

 羞恥で、呼吸が荒くなる。

 でもそれ以上に――怒りが、湧き上がってくる。

 

 そのときだった。

 

「今も、ちゃんと録ってるよ」

 

 佐久間の声に、目を向ける。

 

 彼の手元のスマホが、こちらを向いていた。

 レンズが、まっすぐあたしを捉えてる。

 

 今この瞬間の、あたしの顔を。

 怒りに歪んで、羞恥で揺れて、でも睨みつけることも忘れなかった、この表情を。

 

 いや――

 きっと、もっとずっと情けない顔してるんだ、あたし。

 

「いいね、その顔。すごく可愛い」

 

 さらりと、吐き捨てるような声。

 

 その瞬間、カッと頭に血が上った。

 

「……ふざけんな! 誰がてめぇなんかに――!」

 

 怒鳴ろうとした、その声を遮るように、佐久間が軽く振り返る。

 

「ねえ、千夏」

 

 その口調は、妙に落ち着いていて――それが逆に、恐ろしかった。

 

「怒ってる美琴も、すごく可愛くて、エッチだよね」

 

 え――、と思う間もなく、続けざまに。

 

「もう我慢できない。落ちてる場合じゃないよね」

 

 ぞわっ、と背中に冷たいものが這い上がった。

 

(ちょっと待て……やめろ……やめろよ!!)

 

 その言葉の意味を理解するよりも早く、蒼真の意識は千夏に向いていた。

 

 あたしの隣で、ぐったりと沈んでいたチカの身体――

 そのまぶたが、ぴくりと揺れた気がした。

 

(うそ、やだ……チカ……!)

 

 目を開けるなんて、そんなの……今だけは、やめて――!

 

 そう願ったはずなのに。

 

 でも、その瞬間、あたしの胸の奥で、なにかがズンって脈打った。

 

 目を開けたチカが――もし、うちのことを見たら。

 うちに、欲情していたら。

 可愛いって、エッチだって思ってたら。

 

(……なにされるんだろ)

 

(どう触られるんだろ、どんな顔で、どんな声で……)

 

 想像が、頭の中に広がる。

 

 チカの手が、あたしの頬に触れる。

 スカートを撫でて、指を這わせて――

 「ミコトはかわいいなぁ」って、あの声で囁かれて。

 

 甘くて、くすぐったくて、気持ちよくて――

 

(……っ)

 

 太ももの奥が、じん、と熱くなる。

 

 心臓が、またドクンと跳ねる。

 

 そんなの、絶対に……幸せだ。

 されたい。してほしい。

 チカに――あたしを、欲しがってほしい。

 

(……あたし、ほんとに……)

 

(チカに、エッチなことされたいって……)

 

 その瞬間、自分の思考に愕然とする。

 

(……違う)

 

(ちがうってば、そんなの……全部……!)

 

 その感情が、自分の中から自然に生まれたものじゃないと、あたしはちゃんと知ってる。

 

 これは――あのクソ催眠野郎に植えつけられた暗示。

 欲情するように仕向けられて。

 気持ちよくなるように、気づかないうちに操られて――

 

(でも……それでも……)

 

 千夏が、うちを見てくれたら。

 欲しがってくれたら。

 触れてくれたら――

 

 その想像が、たまらなく甘くて、苦しくて。

 全身が、ぞわぞわして、どうにかなりそうだった。

 

(……最低だ、うち)

 

「――じゃあ、千夏を起こしてあげようか」

 

(こんな気持ち、あのクソ野郎にやられたせいって分かってるのに)

 

(それでも、チカに……気持ちよくされたいなんて……!)

 

 

2件のコメント

  1. なにぃ、引き伸ばすのか!

    なんかドラゴンボール的な感じになってきたのでぅw
    まさか一話まるまる話してるだけで終わるとは(いや、暗示を入れて敵対心を煽ったりしてるけど)
    次回は美琴ちゃんがくっ、殺せ!とか言うんでぅね?(現代日本だろ)

    1. すっかり催眠堕ちしてる子に「じゃあ最初の時の気持ちに戻るよ」ってするの、最高すぎるのでついやってしまうんですよ。
      そしてつい長くなってしまうのでぅ。
      引き延ばしたというか、一話のつもりで仕上げたら長くなりすぎて、話を分けるしかなくなったという……。

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