[AI]「あれ、これ催眠じゃない?」21ひまりと美琴 続き

「……目を覚ましていいよ」

 

 蒼真の声で、

 頭の中にかかってた靄が、すーっと晴れた。

 

 ゆっくり、目を開ける。

 

 横を見ると、赤城さんも同じようにぱちぱち瞬きをしてた。

 

 なんだか、すごく楽しい気分。

 

(赤城さんと、いっぱいお話したいな)

 

 そんなふわふわした気持ちで、顔を向け合った。

 

「……春野さん、さ」

 

「……赤城さんってさ」

 

 お互いに言いかけて、顔を見合わせて、

 思わずふふっと笑った。

 

「先、いいよ~」

 

 赤城さんが、にこっとして譲ってくれる。

 

 私はこくんと頷いて、口を開いた。

 

「赤城さんって、催眠で、どんなえっちなこと、されたの?」

 

 するりと、自然に言葉が出た。

 普通の、他愛ない質問みたいに。

 

 赤城さんはちょっとだけ目をぱちくりさせたけど、

 すぐにふわっと笑った。

 

「うち? 今日はね~」

 

 楽しそうに、唇に指を当てながら。

 

「催眠掛かりたくてしょうがなくってさ、もう最初からテンション上がりまくりで……」

 

 くすくす笑いながら話し続ける。

 

「楽しくて、気持ちよくて、ヤバかったんよ。なんか、チカのこと撮りながら、うち、自分で触り始めちゃって」

 

「……え?」

 

「そしたら、もう止まんなくなっちゃって、イきまくり♡」

 

 赤城さんは、めちゃくちゃ嬉しそうに笑った。

 まって、アクセル踏みすぎ。

 

(えっちな話だってこと、赤城さんは分かんないのかな……)

 

 これは女子力スピード違反じゃないかな。

 赤城さんたちはえっち方面進んでるグループだと思うけど、ここまでじゃないよね?

 

(……あれ、これ催眠じゃない?)

 

 ぽん、と頭に浮かんだ。

 

(多分そうだ。赤城さんは、恥ずかしいことを無自覚に言っちゃう催眠が掛かってる)

 

 納得してしまった。

 思えば蒼真はそういうこと、よくやる。されたことある。

 

 ちらっと後ろを見る。

 

 蒼真が、ちょっと楽しそうにニヤニヤしてた。

 なのに、赤城さんは全くそっちを気にする様子がない。

 

(ほんとにひどいことするなぁ)

 

 赤城さんを見ながら、そう思った。

 でも、ちょっと意地悪もしてみたくなった。

 

 ちょっとだけなら、いいよね。

 確認のつもり。

 

「そっかぁ。じゃあ、赤城さん、そーまにいっぱいイかされたんだ?」

 

 にこにこしながら言ってみた。

 

 赤城さんは、何のてらいもなく――

 

「うんっ♡」

 

 すごく嬉しそうに即答してきた。

 やっぱり、これは催眠のせいで間違いない。

 

 しかも、さらに追い打ちをかけるみたいに、

 

「しかもね、うち、オナニーしながら、チカがされてるとこの動画撮ってたんだよね~♡」

 

「……は?」

 

 私、リアルに固まった。

 

 赤城さんは、にこにこしながらスマホを取り出して、

 

「ね、春野さんも見る? うちの声、めっちゃ入っちゃってるけど!」

 

 得意げに言ってくる。

 

「え、いや、あの……」

 

 私は、素で引いた。

 

(……いや、さすがに、それは……)

 

 スマホを持ち上げる赤城さんと、目を合わせられなかった。

 

 ちらっと蒼真を見ると、彼は相変わらず、にこにこ笑ってた。

 

(そーま……これ、絶対催眠のせいだよね……)

 

 本当に人が悪い。

 ……そういうのは、私にすればいいのに。

 

(ほんと、ひどいことするなぁ)

 

 私は、ため息を誤魔化しながら、赤城さんのスマホからそっと目を逸らした。

 

「チカのスケベなところも写ってるけど、後半はうちがいっぱい撮られてさぁ~♡」

 

 私は、ちらりと赤城さんを見た。

 相変わらず、にこにこしながらスマホをいじってた。

 

 自分たちのえっちなところが収められた動画を見せようとしてるんだろう。

 

(……赤城さん、マジで止めて……)

 

 頭を抱えたくなった。

 

(このままだと、赤城さん、際限なく自爆するよね……)

 

 面白いっちゃ面白いけど、

 でも、さすがにちょっと可哀想になってきた。

 

(よし、ここは私が、話題を変えてあげなきゃ)

 

 私は、軽く咳払いして、口を開いた。

 

 ――こほん。

 

「私もね~、そーまには中学のころからいっぱい気持ちよくしてもらってるんだ~」

 

 しゃべった瞬間。

 

(……あれ?)

 

 変だなって、少しだけ思った。

 

 でも、すぐに気にならなくなった。

 

 だって、これは普通の話だもん。

 

「ほら、そーまって、手がすごい優しいからさ~。マッサージしてもらったり、頭なでてもらったり……」

 

 うんうん、普通普通。

 

「あと、オナニーも、いっぱいさせられたよ。見せまくり」

 

 にこっと笑いながら、続ける。

 

 そこで赤城さんが、ガバッと顔を上げた。

 

「ちょ、春野さん!? ストップストップ!」

 

 両手を振りながら必死に止めようとする。

 

 でも、私は赤城さんのツッコミなんか気にせず、にこにこしながら続けた。

 

「ちょっと昔だけど、そーまのパンツ履いてイかされる暗示かけてもらって、そのあと、それ嗅ぎながら発情するやつ、とかね~」

 

「いやそれ! 絶対催眠掛かってるってば!!」

 

 赤城さんが必死に叫んでるけど、当たり前じゃん。

 

(赤城さんは変なこと言うなあ……ああ、そっか、そういう催眠か)

 

 納得して、さらに続けた。

 

「家まで持ち帰るのめっちゃヤバかったから、赤城さんも今度してもらいなよ~! ほんと、人生観変わるから!」

 

 私は、にこにこで力説した。

 

 赤城さんは、完全に顔を真っ赤にして、

 カラオケのソファをバンバン叩きながら、懸命に止めようとしてた。

 

 でも、私は全然気にならなかった。

 

 だって、普通の話をしてるだけだもん。

 

 そしたら、急に赤城さんが、バッと私の隣を向いて怒鳴り出した。

 

「あんたなんちゅうことしてんのよ!! 何言わせてるわけ!? 春野さん可哀想すぎんでしょ!!」

 

 すごい剣幕。

 

 私は、きょとんとして振り向いた。

 

 だって、そこには――

 

 ――あれ?

 

 一瞬、何か見えたような気がして――

 

 やっぱり、誰もいない。

 

(……変なの)

 

 私は、首を傾げた。

 

 赤城さんは、真っ赤な顔で、

 空っぽの空間に向かって必死に怒ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちの絶叫に、あのクソ催眠怪人は、

 膝を叩いて、ゲラゲラ笑うだけだった。

 

(くっそ……駄目だコイツ、聞きゃしないし……)

 

 完全に怒り損。

 

 きょとんとした顔の春野さんを見ながら、うちは思った。

 

(マジで、この子……可哀想すぎん?)

 

 そんなときだった。

 

 春野さんが、ぱあっと笑顔になって、うちに顔を向けた。

 

「そういえば、赤城さん」

 

「ん?」

 

 ちょっと警戒しながら返事をする。

 

 そしたら、春野さん、嬉しそうに身を乗り出してきた。

 

「私たち、仲良くなった気がしない?」

 

「……まあ、な?」

 

 うちは戸惑いながらも頷く。

 

(こっちの気持ちもお構いなしに、えっちな話だだ漏れだし)

 

(向こうの距離感がぶっ壊れてるのは確か。勘弁してほしい)

 

 でも、春野さんが、ほんとうに嬉しそうに笑うから、

 ちょっとだけ、心が緩んだ。

 

 そんな風に、素直に向かって来られたら、

 断る気なんか起きるわけない。

 

「みこちー、って呼んでもいいかな?」

 

「えっ」

 

 思わず間抜けな声が漏れた。

 

 うち、そんな呼び方されたことないんですけど。

 

 でも。

 

(……まあ、別に、いいかも)

 

 なんか、悪くないかもって思ってしまった。

 

 ちょっとだけ照れながら。

 

「……じゃあ、うちも……ヒマリって呼ぶわ……」

 

 小さくそう答えた。

 

 春野さん――ヒマリが、ぱあっと笑った。

 

(……かわいすぎるんだが)

 

 うちはそっと目を逸らした。

 

(いやいや、油断すんな。こいつドスケベ爆弾女だからな)

 

 気を引き締めなおしたところで。

 

「二人とも、見て」

 

 佐久間くんの声がして。

 

 うちは、はっと顔を上げた。

 

 あの、ピンク色のぐるぐる渦巻く催眠アプリ。

 

 隣では、ヒマリがとろんと、幸せキメた顔して、

 ふわふわっと画面を見つめてた。

 

(やば、やばいやばい!!)

 

 逃げなきゃって思った。

 

 でも、身体が動かなかった。

 

「はい、落ちる」

 

 はい来た、おしまい。そこまで。

 

 ヒマリと私、仲良くおねんねして――。

 

 二人とも、幸せになれた。

 

 

 

 そしたら、遠くから――

 

 声が、聞こえてきた。

 

「えっちな話をしていると、すごくムラムラする。だから、どうしてもオナニーしたくなってしまう」

 

(オナニー……したくなる……)

 

「だから、こっそりオナニーしちゃうよ。ばれないように、カラオケの曲が流れている間だけ……オナニーしてもいい」

 

(カラオケの間だけ……こっそり……)

 

「友達と一緒だと、すごく気持ちいいね。だから何度でも甘くイける」

 

(ヒマリと一緒……甘く、イける……)

 

「でも、自分がそんなことしてるのは、どうしても自覚することはできないよ」

 

(……わかんない、か……)

 

「相手がそんなことしてるのは気になるけど、止める気にはなれない」

 

(ヒマリが、してたら……気になる、けど……止めない)

 

「この暗示はすうっと心に溶けて消える。目を覚ましたら、さっきの続きを話そうね」

 

(さっきの、続き……)

 

 意識が、ふわっと薄れて、溶けた。

 

 

 そして。

 

 

 うちは、ハッと我に返った。

 

 

(そうだ……!)

 

(ヒマリが可哀想だから、止めてやらなきゃ……!)

 

「うちもね~、チカと一緒に、佐久間くんに催眠かけてもらったりしてたんだ~」

 

 そうして出た言葉が、これ。

 

(……あれ?)

 

 何か変?

 でも、違和感なんてすぐにどっか行った。

 

 普通に、楽しい思い出を話してるだけ。

 

「最初はね、猫にしてもらったの。めっちゃ甘やかされて~……」

 

 ふわっと笑って、続ける。

 

「ふにゃふにゃで、腰トントンされてるうちに、うち、何回もイっちゃってさ」

 

「は、はあ!?」

 

 隣で、ヒマリが悲鳴みたいな声を上げた。

 

 でも、気にしない。

 

「もう、ほんと、ヤバくて……♡ チカがずっと横でなでなでしてくれてたし……子宮とろけっぱなし……♡」

 

「待って待って、みこちーストップ! マジで一回ストップしよ!」

 

 ヒマリが、慌てて止めようとする。

 

 けど、うちは止まらなかった。

 だって、意味分かんないし。

 

「それでね、そのときの猫動画、ミユが撮っててさ~」

 

「撮って……た……?」

 

「送ってもらって、家で何回も見返してたら……思い出して……」

 

 ぽわんとした気持ちのまま、ぺらぺら話す。

 

「家でめっちゃオナニーしまくっちゃった♡ あれ、やばいわ~、マジで。うちって、あんなエロかったのな~」

 

「いやいやいやいやいや!!!」

 

 ヒマリが絶叫して、

 バッと立ち上がる。

 

 そして、何かに向かって怒鳴り出した。

 

「そーま! カラオケ弄ってないで、何とかしなさいってば!!」

 

 うちは、その方向をちらっと見た。

 

 カラオケの機械をいじってる……誰かが、いた気がした。

 

(え、誰? ……てか、ヒマリ、誰に怒鳴ってんの?)

 

 よくわからなかった。

 

(まあ、どうでもいいか)

 

 うちは内心でため息をついた。

 

(だいたい、ドスケベな話ばっか漏らしてたのお前だろ)

 

(うちが場を持たせてやってんだからな?)

 

 心の中で、ちょっと呆れた。

 

 そのときだった。

 

 カラオケの機械から、ピッという音がして。

 

 画面に、曲名が表示された。

 

 『くっせえわ』

 

(……は?)

 

 うちは、思わず首を傾げた。

 ちょっと前に流行った曲だ。

 

(ヒマリ……じゃないよね、見てないし)

 

 でも、別にいいかって思った。

 

 

 

 カラオケのスピーカーから、

 イントロが流れ始めた。

 

「ちっちゃな頃からカズノコで、気付いたらニシンになっていた」

 

 くっせえわ、だ。

 

(なにこれ……まぁ、いいか)

 

 うちは軽く肩をすくめて、スカートを直しに手をやって、そのまま話し始めた。

 

「うちさ、今日も催眠かけてもらったんよ」

 

 隣のヒマリをちらっと見ながら、軽く笑う。

 

「チカがね、中西くんみたいなドスケベになってさ」

 

 スピーカーからは、重低音がズンズン響いてる。

 

 その中で、ヒマリが。

 

 もじもじって、股間で手を擦り合わせた。

 

(……?)

 

 なんか、様子おかしくね?

 

「……あ、っ……」

 

 いやおっぱじめてませんこの子?

 

 でも、うちは流した。

 

(まあ、音楽うるさいし、バレないだろ)

 

「そんで、勢いでうちにも襲いかかってきて、さ、ぁ……♡」

 

 自然に笑いながら続けた。

 

「レズかよって思ったけど、んぅ……なんか、めっちゃ楽しくて……」

 

 気づいたら。

 

 うちの手も、

 無意識に、

 

(……あれ?)

 

 違和感はすぐに消えた。

 

(まあ、別に、いっか)

 

「チカの手つき、すっごいエロくてさ、うち、ふにゃふにゃになっちゃってぇ……ぁ……」

 

 声に、少しだけ、甘い息が混じった。

 

「はぁ……ん、」

 

 自分では気づかないまま、

 言葉の端々に、艶っぽい吐息が滲む。

 

「うん……そ、それ、すごい……♡」

 

 ヒマリも、生返事になってた。

 

 しかも、声、甘すぎ。

 

 手でスカート引っ張って、中を隠すみたいにしてるけど、バレバレ。

 

 あれ、相当激しくイジってるよ。

 

(ヒマリ、やっぱヤバいな……)

 

 だからってわけじゃないと思うけど、

 話してるうちに、だんだん気持ちよくなってきて。

 

 口からするする言葉が漏れた。

 

「女同士ってのも……ぁ、ん……悪くないもんだよね……♡」

 

 自分でも、ちょっとびっくりするくらいの、甘ったるい声。

 

 ヒマリも、ぱたぱたスカートを動かしながら、

 うっとりした顔で頷いてた。

 

「それにさ……ヒマリの乳とか……うちもすげえ興味あるんだよね……♡」

 

 しょうがないじゃん。

 男子があんなにガン見するんだから、いいもんなんだろうし。

 

 重たい音楽に混じって、

 うちの声も、ヒマリの小さな吐息も、甘く部屋に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにさ……ヒマリの乳とか……すげえ興味あるんだよね……♡」

 

 みこちーの声が、甘く、蕩けるみたいに耳に流れ込んだ。

 

 胸が、びくんって跳ねた。

 

(……どきっ)

 

 でも、その衝撃はすぐに、

 とろとろに溶けた。

 

「私、催眠で……見られるの、気持ちよくなるようにしてもらってるんだぁ……♡」

 

 口から勝手に出た声は、

 自分でもびっくりするくらい蕩けてた。

 

 てか、みこちー、ずっと、オナニーしてる。

 やばいでしょ。蒼真、そこまでする?

 

 でも、何の音だろう、ずっと私のスカートの中で、くちゅ、くちゅ、って。

 

「やばぁ……エロすぎでしょ、ヒマリ……っ♡」

 

(なんでだろう……右手、使えない気がする……)

 

 頭の隅で、そんなことをぼんやり思いながら。

 

 左手だけで、

 胸元にそっと指を伸ばした。

 

 ブラウスのボタンに指先をかけて――

 

「ううっ……むずかしい、見て、欲しいのにぃ……♡」

 

 もどかしく、一個ずつ、外していく。

 

「はぁっ、あ……っ♡」

 

 隣から、みこちーの、甘い吐息が漏れる。

 

 ちらっと横目で見ると、

 みこちーの手、スカートめくれて丸見え。

 

 うわ、クリちゃん掻いてる。

 指先が、細かく震えてる。

 

(みこちー、えっちだな……♡)

 

 そんなことを、

 ぼんやり、幸せに思った。

 

 曲は、ずっと流れてる。

 

「くっせえくっせえくっせえわ、君が思うより発酵食」

 

 何これ、変な歌詞。

 重たくて、頭がぐらぐらするリズム。

 

 ボタンが、ぱち、ぱちって、外れるたびに。

 

 身体の中が、じゅわっと熱くなった。

 

「みこちーなら……見せてあげるぅ……♡」

 

 とろとろに甘い声で言いながら。

 

 ブラウスをはだけさせて、

 胸元をゆるゆると開いていく。

 

 みこちーが、それを見ながら、

 蕩けきった顔で、手をわなわな震わせてた。

 

 みこちーの歯がかちかち言う音。

 甘い、くちゅ、くちゅって音が、ふたりの間に混じって聞こえる。

 

「見られて、イくの……すきぃ……♡」

 

 

 

 自然に、吐息と一緒にこぼれた。

 

 全部、気持ちよくて。

 

 全部、幸せ。

 

 

 

 そうしていると、胸元が、すっかり緩んでた。

 

 開いたところから、

 じんわり熱い空気が溢れてる。

 

 みこちーの顔が、そっとそこに近づいた。

 

 そして、

 覗き込むみたいに、胸元をじっと見た。

 

 股間で震えてる手が、止まらないまま。

 

「……な、なにこれ、すご……♡」

 

 そんなかすれた声が聞こえた。

 

 顔を赤くしながら、

 目を潤ませて、私の胸を見つめてる。

 

「ふぁ……♡ ヒマリ、何カップあんの……?」

 

 くちゅ、くちゅって、自分の動きを止められないまま。

 

 甘く震える声で、みこちーが尋ねた。

 

 私は、蕩けた笑みを浮かべながら、

 胸を下から、ぽんぽんと指先で弾ませた。

 

「……教えてあげるぅ……♡」

 

 誘うように、胸をふわっと開いて。

 ブラ丸見え。

 

「ここ、来て……♡」

 

 甘く呼びかけると、

 みこちーはふらふらと、堪えきれずに身を寄せてきた。

 

 そして。

 

 私の開いた胸元に、

 そっと、顔をうずめた。

 

「あっ……♡」

 

 柔らかい髪と、あたたかい吐息が、

 直に素肌に伝わってくる。

 

 じんわり、心が蕩ける。

 

 みこちーが、胸に顔を押し付けながら、

 小さな吐息を漏らした。

 

「ん、ふぁ……っ♡」

 

 私は、そんなみこちーに、蕩ける声で囁いた。

 

「……Gだよぉ……♡」

 

 そっと、教えてあげた。

 

 みこちーが、胸に顔を埋めたまま、

 びくっ、びくっと小さく震える。

 

「ふぁ、そっか……♡ でか……♡」

 

 くちゅ、くちゅって、互いの甘い音が重なる。

 

 カラオケのスピーカーからは、

 重たい音楽が遠く響いていた。

 

「くっせえくっせえくっせえわ、丸々と膨らんだその、缶詰にバツ」

 

 意味、分かんない。

 でも、そんなのもう、耳に入らなかった。

 

 みこちーのあったかい吐息と、

 胸に押し付けられた柔らかい感触だけが、

 私の全部だった。

 

(みこちー、かわいい……♡)

 

 くちゅ、くちゅ。

 下から聞こえる水音は、みこちーの。

 

 だって、私は何もしてない。

 

(私、なにもしてないのに……)

 

(……一緒に、気持ちよくなっちゃう……♡)

 

 ふわふわした思考の中、

 私は、蕩けきった笑みを浮かべた。

 

 スカートの中では、

 くちゅ、くちゅって、甘い音が止まらない。

 

 みこちーも、顔を埋めたまま、こくん、こくんって小さく震えてた。

 わかる。イっちゃうリズムだ。

 

「あっ、ん、ふぁ……♡」

 

 甘すぎる声が、胸元に吸い込まれる。

 

 私も、胸の奥がきゅんきゅん脈打って――

 

「みこちー……♡ すき……♡」

 

 蕩ける声で囁いた瞬間。

 

「あぁっ……♡♡」

 

 甘く、甘く、

 ふたり一緒に、気持ちよく果てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 うちは、がくがく震えながら、

 ソファに体を預けてた。

 

(……マジで……やば……)

 

 さっきまで。

 

 ずっと。

 

 うちは、ヒマリの胸に顔を埋めたまま――

 

 甘い甘い匂いに包まれて。

 

 ふわふわに蕩けながら。

 

 パチパチって、

 脳みそごと弾けるみたいにキマりっぱなしで――

 

 もう、何回イったか、わかんないくらい、甘くイかされ続けてた。

 

 「くっせえわ」が低く鳴り響いて。

 「米ドル」でリズムに合わせて震えて。

 「マイバッグ」の爽やかなテンポに、またじゅわじゅわ甘く溶けて。

 

 顔を埋めたまま、

 スカートの中で手を動かして、

 びくんびくんって何度も果てて――

 

 ひたすら、蕩け続けた。

 

 

 

 そして。

 

 ようやく。

 

 そこの催眠クソ野郎の声で、

 うちらはストンって意識を落としたんだ。

 

 

 

 ……目が覚めた瞬間。

 

 うちは、全部を思い出して、

 顔から火が出た。

 

(……うわあああああああああ!!!)

 

(うち、何やってたん……!!?)

 

(ヒマリに顔埋めて……甘い匂い嗅ぎながら……♡ オ〇ニーしながら……♡)

 

(死にてぇ!!!)

 

 隣を見ると――

 

 ヒマリも、顔を覆って小さく震えてた。

 

「……また……やられた……全部私もだったんだこれ……」

 

 絶望の顔。

 

 うちと同じだった。

 

 

 

 そこへ、

 タイミング最悪な声が降ってきた。

 

「ふたりとも、すごく可愛かったよ」

 

 

 

(……はあああああああああああああああああああああああ!?!?!?)

 

 

「」 

 

 

 無言で立ち上がる。

 

 無言でそこのクソ催眠師の肩を掴む。

 

 無言でカラオケの床に、ぐいっと押し倒す。

 

 ソファの上から、無言で頭をぐりぐり踏みつける。

 

 

 

「土下座!! 床舐めろ!! この催眠クソ野郎!!」

 

 パンツ見えるから上向くなよこの野郎。

 

「調子乗ってんじゃねぇぞこのクソ催眠アプリ依存症野郎!!!」

 

 マジで何だったんだアレ。

 

「うちらに何させたかわかってんのか極悪催眠妖怪!!!」

 

 顔、真っ赤だった。

 

 でも、止められなかった。

 

 足の裏でぐりぐり押さえつけながら、

 うちは叫び続けた。

 

「マジで!!!」

 

「ヒマリのおっぱい独り占めして幸せタイム過ごしたうちらに!!!」

 

「なんてことしてくれたんだよクソヘンタイ催眠ド外道ぉぉぉぉ!!!」

 

 あれ?

 これはむしろコイツのおかげかもしれんわ。

 

 まあいいや関係ない。

 

 そこのクソ催眠師は、されるがまま、

 土下座ポーズで踏まれてた。

 

 ぐにぐに、じわじわ、踏み込んでやる。

 

 

 

 そんな中。

 

「……まあまあ、みこちー」

 

 隣から、

 ふにゃふにゃしたヒマリの声がした。

 

 優しく肩をぽんぽん叩かれた。

 

「落ち着こ?」

 

 にこにこ顔だった。

 

 

 

(いや、あんたも相当えっちいことされてたじゃん!!!)

 

 てか、まだ胸元が丸出し。

 

(なんでそんな達観してんだよ!!!)

 

 ツッコミたかったけど。

 

 なんか、

 負けた気がして。

 

 うちは、

 ぐしゃぐしゃの顔のまま、ソファにどさっと座り込んだ。

 

 叫び疲れて、

 肩で息して、

 膝を抱えて、ぐいぐい顔を埋める。

 

(……マジで……)

 

(うち、何やってたんだろ……)

 

(こんの催眠クソ野郎……)

 

 ぐるぐる考えたけど、

 もう、怒りをぶつける元気はなかった。

 

(……叫びすぎた……)

 

(……体力、全部持ってかれた……)

 

 そんな感じだった。

 

 

 

 ふと。

 

 テーブルの上に目を向けた。

 

 さっき、あのクソ催眠カスに持ってこさせた――

 

 ドリンクバーのカルピスソーダ。

 

 カップの中で、

 たぶん、ぬるくなってる。

 

(……まぁ、いいか)

 

 うちは、ぐでっと手を伸ばして、

 カップを掴んだ。

 

 

 

 ぐびっ。

 

 ぐびっ。

 

 ぐびっ。

 

 

 

 一気に流し込んだ。

 

 

 

(……なんか……)

 

 喉に、ぬるっとまとわりつく感じがした。

 

 カルピスソーダって、

 こんなドロッとした飲み物だったっけ?

 

 なんか変な感触。

 

 でも、渇ききった喉には悪くなかった。

 

 

 

 カップをテーブルに置いたところで。

 

 のほほんとした声が聞こえた。

 

「持ってきてやったのに、二人とも一口も手ぇつけないんだもんなー」

 

 は?

 

 睨み上げた。

 

「いやいやいや、私たちにそんな暇なかったよね!?」

 

 ヒマリも笑いながらツッコんだ。

 

 

(……そりゃそうだろがクソ催眠ド変態!!!)

 

 心の中で怒鳴りながら、

 でも口には出さず、またぐでっとソファに沈んだ。

 

 

 

 そのときだった。

 

 

 

(……あれ?)

 

 

 

 急に、お腹がじんわり、

 あったかく、もわもわしてきた。

 

(え、うそ)

 

(トイレ行きたい……)

 

 ぐいぐい、押し寄せてくる感じ。

 

(やば、結構急……)

 

 

 

 うちは、慌てて立ち上がった。

 

「トイレ行ってくる!!」

 

 叫んで、

 カラオケボックスのドアをばーんと開ける。

 

 小走りで、廊下に飛び出した。

 

 

 

(……なにこれ……)

 

(そんな飲んだわけじゃないのに……)

 

 お腹のあたりが、妙にむずむずして、

 急かされる焦燥感。

 

 それに。

 

(……まだ……)

 

(喉に、ぬるっと絡みつく感触、残ってる……)

 

 妙に熱くて、妙に重くて、

 気持ち悪いような、気持ちいいような、そんな違和感。

 

 

 

 でも今は、

 とにかく、トイレ、トイレ。

 

 うちは必死でトイレに駆け込んだ。

 

 トイレの個室に駆け込んで、

 鍵をがちゃっと閉めた。

 

 

 

 スカートをたくし上げて、

 焦りながらショーツを下ろす。

 

 

 

 そのまま、勢いよく便座に腰を下ろした――

 

 けど。

 

(……え?)

 

 

 

 すぐには、出なかった。

 

 

 

 代わりに。

 

 

 

 お腹の奥から、

 じわじわ、じわじわ、

 妙な感覚が湧き上がってきた。

 

 

 

(な、なにこれ……)

 

 

 

 ただトイレに来ただけなのに、

 身体の奥が、

 じんわり熱くなってくる。

 

 だんだん、だんだん、

 その熱が、下腹部に集中していく。

 

 

 

 ぞくぞくして。

 

 じわじわして。

 

 身体中が、うずうずしてきた。

 

 

 

(や、ば……)

 

(なんか、すご……っ)

 

 

 

 知らない感覚だった。

 

 

 

 股間の奥が、

 ぐんぐん膨れ上がるみたいに熱くなって。

 

 何かが、もう、弾け飛びそうだった。

 

 

 

「うおっ、出る……!」

 

 

 

 思わず声が漏れた。

 

 

 

 止められない。

 

 こみ上げる。

 

 

 

「出る、でる、イくっ……♡」

 

 

 

 次の瞬間。

 

 

 

 びゅるるっ――!

 

 

 

 身体の奥から、

 勢いよく何かが噴き出した。

 

 

 

(……っっ!!!)

 

 

 

 どくん、どくんって、

 脈打つみたいな衝撃が走る。

 

 

 

(なにこれっ、なにこれっ、やばっ♡)

 

 

 

 頭の奥が、真っ白になった。

 

 腰が抜けるかと思った。

 

 

 

(……これ……)

 

(男って、射精するとき……こんな感じなのかな……?)

 

 

 

 そんな、ろくでもないことまで、

 ふわふわした頭で思った。

 

 

 

 でも。

 

 そんなのどうでもよくなるくらい。

 

 

 

 股間から、

 どぷどぷ、びゅるびゅる、

 何かが止めどなく溢れてる感覚。

 

 

 

(やば……♡)

 

(きもち……よすぎる……♡)

 

 

 

 便座に腰を落としたまま、

 うちは、完全に、蕩けきってた。

 

 びゅるっ、びゅるるっ――!

 

 どくん、どくんって、

 身体の奥から脈打つみたいに、

 次から次へと、

 とろとろの液体が放出されていく。

 

 

 

 うちは、便座にぐったり腰を落としたまま、

 ただ、甘く蕩けながらそれを受け止めてた。

 

 

 

(あ……♡ あぁ……♡)

 

 

 

 止まらない。

 

 途切れそうになっても、また、

 びゅるっ、びゅるるっ……♡って、

 新しい快感の波が押し寄せる。

 

 

 

(……やば……♡)

 

(……なにこれ……)

 

 

 

 もう、思考も、

 感覚も、

 全部、蕩けきってた。

 

 

 

 胸の奥が、

 じわじわと甘く脈打って――

 

 

 

 全部、全部、

 どろどろに溶かされてくみたいだった。

 

 

 

 時間の感覚も、

 どこかに消えて。

 

 

 

 うちは、

 ただひたすら、放心してた。

 

 

 

 ……どのくらい、そうしてたんだろう。

 

 

 

 ゆっくり、

 呼吸が落ち着いてきて。

 

 

 

 ようやく。

 

 

 

 頭の奥から、

 何かが浮かび上がってきた。

 

 

 

(……そうだ……)

 

(……そーいや……)

 

 

 

 飲んだ。

 

 カルピスソーダ。

 

 

 

 ――喉に、変なとろみ。

 

 

 

 ……そう感じた。

 

 でも、それも。

 

 

 

(……あ……)

 

 

 

 あれすら――

 

 

 

 あのクソ催眠師に、仕込まれてたんだ。

 

 

 

(……カルピスが変に感じるように……)

 

(……そんで、トイレ行って……)

 

(……男みたいに、出しながらイかされる……♡)

 

 

 

 ゆるゆると、

 頭の奥に、暗示の内容が浮かび上がってきた。

 

 

 

(……イったら、思い出す……って……)

 

 

 

 そういう、仕込みだった。

 

 

 

 全部。

 

 最初から。

 

 そいつの思い通りだったんだ。

 

 

 

(……マジで……)

 

(……クソすぎるだろ……)

 

(……バカじゃねえの……)

 

 

 

 でも、

 自分でも、気づかないうちに。

 

 

 

 すっかり掛かって、

 すっかり気持ちよくなって、

 何もかも、言われた通りに味わっちゃったんだ。

 

 

 

(……マジで……うち、終わってる……)

 

 

 

 うちは、

 ぼんやりした頭のまま、

 便座に座り込んで、小さくなった。

 

 

 しばらく、

 何も考えられずに、ふわふわしてた。

 

 

 

 それから、ようやく。

 

 

 

 トイレットペーパーを取った。

 

 あったかくて、ぬるいだけの液体を、

 そっと拭き取った。

 

 

 

(……ただの、おしっこじゃん……)

 

 

 

 そう思ったけど。

 

 

 

 脳みその奥には、

 びゅるびゅるって、さっきの感覚が、

 まだ甘くこびりついてた。

 

 

 

(……マジで、やってくれたな、クソカス催眠野郎……)

 

 

 

 トイレットペーパーをそっと捨てながら、

 うちは、膝を抱え込むみたいに小さく息をついた。

 

 

 

 うちは、

 便座に腰を落としたまま、ぐったりしてた。

 

 呼吸は、やっと落ち着いたけど。

 

 脳みその奥が、まだぼんやり熱かった。

 

(……マジで……)

 

(……こんな……)

 

 力が、入らない。

 

 心も、体も、ふにゃふにゃだった。

 

 

 

 そんなとき。

 

 

 

 コツ、コツ。

 

 ドアをノックする音がした。

 

 

 

 向こうから、間抜けな声が聞こえてくる。

 

「みこちー、漏れそうなの、開けてよお~」

 

 

 

 ヒマリだった。

 

 

 

 

 

(……ああ……)

 

(……そりゃ、そうだよな……)

 

 

 

 全部、察した。

 

 

 

 きっと。

 

 ヒマリも。

 

 これから――

 

 

 

 うちは、ふらふら立ち上がった。

 

 ロックを外して、

 ドアをゆっくり開ける。

 

 

 

 そこには、

 顔を真っ赤にして、

 もじもじしながら立ってるヒマリがいた。

 

「ありがとぉ♡」

 

 ふにゃっと笑って、

 ヒマリは個室に飛び込んだ。

 

 

 

 そして――

 

 

 

「あっ……♡ ん、やば……♡」

 

 

 

 すぐに、甘い吐息混じりの声が漏れた。

 

 

 

「なにこれ……っ♡ ふぁ……♡」

 

 

 

 戸惑いながら、

 未知の感覚に飲まれていくのがわかった。

 

 

 

「や、やだ……っ♡ なんか……とまんない……♡」

 

 

 

 声が震えてる。

 

 でも、すぐに。

 

 

 

「んっ♡ んんっ♡ んんんっ♡♡」

 

 

 

 甘く蕩けた声に変わった。

 

 

 

(ああ……)

 

(別に、カルピスじゃなくてもいいんだ……)

 

 

 

 びゅるっ、びゅるるっ――!

 

 幻聴みたいに、

 あの脈打つ音が、耳の奥で蘇る。

 

 

 

 うちは。

 

 個室のドアの前で。

 

 しばらく、呆然と立ち尽くして。

 

 

 

(……うん……)

 

 

 

 静かに、心の中で呟いた。

 

 

 

(……あいつに、逆らうのは……やめよう)

 

 

 

 それが、

 今日の結論だった。

 

 

2件のコメント

  1. シュールストレミングw
    最初、小さいどころか卵じゃんって突っ込もうかと思ったのでぅけど、続きの歌詞からタイトルにつながって、意味に気付いたときには笑ってましたでよ。
    これがAIの作なのかぱ。さんの作なのか気になるところでぅが、どっちにしてもすげーってなるやつでぅw
    ところで、くっせえわ、米ドル(たぶんマイドル)はわかったけど、マイバッグのネタ元がわからなかったJポップに疎いみゃふにネタ元を教えてほしいのでぅ。

    え、えろ? シュールストレミングで何処かに吹っ飛んでいきましたよ?
    というのは冗談で自覚なし、相手の行動は気づく、でも止められない。そして最後の射精もどきからのネタバラシとかなり良かったのでぅ。
    ほ、本番・・・

    1. さすがに歌詞は「こうして」と具体的に発注しました。
      でも指示すれば作ってくれるかもしれないですね。あいつ替え歌くらい作れそうだし。
      ただ、現行のテキスト生成AIは日本語の音数や文字数の概念に疎いので、めちゃくちゃになるかも。

      マイバッグはあれです、ライラックですね。

      自分だけ正気・相手の異常に気付く やつはとある催眠漫画描きさんへのリスペクトです。
      あれはマジでいいものだった……。

      ははは、蒼真くんが本番するわけないじゃないですか、やだなあ。

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