後編 「どういう…ことだ?」 ぴくりとガラドリエルの眉が吊り上がるが、フランツは頭を下げたまま動かない。 早朝のひんやりとした空気の中、沈黙が部屋を覆う。 そんな中、のそりと身を起こした者がいた。エファリスだ。 「
もっと読む「中世」
La Hache 中編
中編 こんな様子のエファリスを、ガラドリエルはいまだかつて見た事がなかった。 一心不乱にフランツの唇を求め、黒い髪も大きな胸も振り乱して男の体に裸身を擦り寄せる、媚びた『女』としてのエファリスを。有能な副官としての彼
もっと読むLa Hache 前編
前編 アルノー砦は、日が高いにも関わらず暗い雰囲気に包まれていた。 鎧で身を固めた見張りの者も、傷ついた肉体を包帯で覆っている者も、防具や武器についた血や泥をぬぐっている者も、一様に敗北のあまりの重さに頭を押さえつけ
もっと読む蒼い月の夜に プロローグ
プロローグ 父は知らない。 物心ついた頃にはもういなかったから。 母に尋ねるといつも少し困ったような顔をしていた。 だから私はそれ以上何も聞けなかった。 それでも良かった。 美しい母と私より少し背の高い姉。
もっと読む蒼い月の夜に 第一話
第一話 透き通った湖の水面にきらきらと眩しく朝日が反射する。 もう夏だというのにその水は冷たく、気持ちよかった。 黒く短い髪を洗い、ゆったりと水面に浮く。 私たちの復讐の帰り道。 あの屋敷から三日ほど街道に沿っ
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