第9話
「あ~…だり~」
カリカリという、ノートにペンを走らせる音が教室に響く。
期末テストも近づくこの時期、誰もがいつ、教師の口からテストのポイントが告げられるかもわからないと、聞き漏らしの無いようにと必死に授業に聞き入っている。
それは決して俺でも例外ではない。
学力に自信が無い訳ではないが、それでも効率よくテストで点が取れるならそれに越した事は無い。
しかし―――
「みーかーげー、だるいんだよー」
俺の隣で、机にうつぶしだるそうにしているそいつは、いかにも間の抜けた、今にも泣きそうなそんな声で俺に泣き言をほざいている。
俺は無視を決め込んでいたのだが、そいつはかまわずに続けた。
「昨日お前に葵チャンからの伝言伝えてからなんだけどさあ」
そう、コイツは昨日俺が葵と戦った際、葵に操られ、最終的には俺の手足となって、葵の操る5人の男をブチのめした俺のクラスメイトである。
「なんか、記憶が無いんだけど~」
そいつは顔だけ俺の方を向けると、うるうると泣き始める。
それはそうだろう、お前は記憶以前に脳そのものがぶっ壊れてたんだ、記憶がないなんて事は当たり前だ。
「それにだるくてだるくて……なんとかしてくれ~」
そもそもお前は、本来なら社会復帰が不可能なぐらい、葵に脳をやられてたんだ、そのくらいの障害が残る程度まで回復させてやって事に、ひとこと感謝でももらいたいくらいだ。
そんなそいつを、俺はあきれたように見下ろす。
「そんなだるいんだったら保健室にでも行ったらどうだ」
俺がそう言うと、そいつは一層涙をこぼす。
「ううっ、冷たいやつ、お前ってそんなやつだったのか」
そんなやつだったのかどうかは知らないが、猫を被る時、被らない時にしても、他人にあまり干渉しないと言うのが俺の共通の行動だったんだけどな。
そいつは涙をこぼしながら続ける。
「だって、せっかくのアコガレのケイコちゃんの授業だぜ、保健室なんかに行ってられっかよ」
そう、今この授業は世界史であり、担当の教師は景子だった。
「あの童顔にあの胸! 俺はあれを拝むために、這ってまでも学校に来たんだ! ……というわけでこの授業終わったらお前の言う通りに保健室行くわ」
そいつはもそもそと顔を前に向け、あごを机に付けた。
やれやれ、と俺はため息をつく。
……アコガレの景子センセイね
俺は、ごそごそと懐から携帯電話を取り出す。
そして、ボタン操作音を消去しているその携帯を操作して、発信履歴を呼び出した。
画面に表示される発信履歴、その20回分のメモリーはすべてが同じ番号になっている。
「でも、なんか……今日のケイコちゃん、体調悪そうじゃないか? ……というかなんか色っぽいというか、俺さっきから股間のあたりがムズムズしてしょうがないんだが……」
どうやら先ほどからコイツが机にうつぶせているのは、だるいから、という理由だけではなく、身体を前かがみにするというため、というのもあるらしい。
「さあ、俺にはわからないけど」
そう言って、俺は携帯の発信ボタンを押した。
しばらくして、俺の携帯から小さな呼び出し音が聞こえてくる、それと同時に―――
ガタッ、という音が、教室に響いた。
景子が、その手に持っていた教科書を教壇に落としたのだ。
教室がざわめく、何しろこれが最初ではない、すでに数回、景子は同様の事を繰り返していた。
「ご、ごめんなさい」
景子はそう言うと、落とした教科書を拾おうと、前かがみになる、だが。
「あっ…く……」
景子はそこで、なにかに耐えるようにその身体を硬直させた。
俺はそこで手に持つ携帯の発信を切る。
携帯が発していた小さな呼び出し音が途絶えた。
「はぁ……」
それと同時に、景子は切なげなため息をもらすと、やっとのことで教科書を手に取り、立ちあがる。
「ご、ごめんなさい、先生ちょっと体調が悪いみたい」
景子はそう言うと、取り繕ったような笑顔を見せた。
時々、うらめしくもなまめかしいそんな視線を俺に浴びせながら。
それを見ていた隣のやつが、もぞもぞと身体を動かす。
「み、御影、俺なんだか保健室より便所に行きたくなったぞ」
勝手に行ってろ、と俺は心の中でつぶやくと、スッと右手を小さく上げる。
その指先から出ている紫の糸は、すでに景子の額に打ち込まれていた。
だが俺は糸の能力は使わない。
『景子……その場で下着を脱げ』
声だけを、景子に向けて送った。
「えっ!」
思わず景子が声を上げる、教室中がざわめいた。
「あ…ごめんなさい、なんでもありません」
景子はそう言うと、じとっと今にも泣きそうなそんな目で俺を見つめた。
だが俺はぷいっとそっぽを向いてしまう。
俺はこの後、許してやる事も、更にそれを強要するような指示も出さない。
俺が出した1つの指示だけで景子がどのように行動するかを見る。
……さて景子、どうする?
しばらくすると、景子はその身体をぎりぎりまで教卓に近づける、おそらくその下半身をすべての生徒から見えなくするように。
そして景子は、おもむろに教卓の上に教科書を置くと、片手でそれを押さえながら読み始める、もう片方の手を教卓の下にもぐりこませながら。
ゴソゴソと動く景子、教科書を読む声がだんだんと艶っぽくなっていく。
どうやら俺の指示通り、下着を脱いでいるようだ。
そして、小さなため息とともに、景子は俺を見つめる、その顔は、俺の指示に従うためにここまでしたという奴隷としての自負にあふれているようにも見えた。
ちゃんと俺の命令通り、下着を脱いだって事か。
俺は更なる命令を景子に下す。
『教科書を読んだまま…教室を1周しろ』
ここまでくると、景子はもう完全に理性よりも羞恥による快感のほうが勝っているという感じだ。
俺の命令に従う事自体を快楽に代えるようにして、景子は俺の指示通り教科書を読みながら教室内を歩き始めた。
スカートがまくれないように、片手で抑えながらであったが、まあそれぐらいは許してやるか。
やがて、景子が俺のいる列の脇を歩き出す。
景子は意識的に俺のそばに近づくと、その歩くスピードを緩めた。
チラチラと俺のほうに視線を配る景子。
俺はそんな景子の目の前で、懐から再び携帯を取り出し、それを景子に見せ付けるように手のひらの上でもてあそぶ。
ピクンと景子が身体を震わせた。
俺は、再び発信履歴を呼び出し、発信ボタンを押す。
「ああっ」
極度の興奮状態に陥った景子が、今までで一番大きな声を出す。
身体をよろけさせ、ガッと俺の机の端に手をついた。
くすり、と俺は笑う。
そう、先ほどから景子を辱めているこの行為。
景子のヴァギナの中には、細身の携帯電話がバイブレーターにして埋め込まれているのだ。
それを俺は、この授業が始まってから断続的に数十回、鳴らしている。
耳をすますと、景子の股間のほうから、かすかなバイブレーションの音が聞こえる。
俺は再び糸を通し、景子に言葉を送る。
『景子、そんな声を上げると皆が不信がるぞ』
ん…と景子がよろけた身体を、俺の机の端を握って起こそうとする。
だが、もはや身体に力が入らないのか、景子は俺の机によりかかったまま身体を硬直させてしまった。
俺は携帯の呼び出しを切る。
景子は、ほう、と熱っぽいため息をつき、なんとかよろよろと体勢を立て直した。
そして振り返って教室を見渡せるような方向を向く。
「ご…ごめんなさい、さっきから迷惑をかけて、後もう少しだかから先生がんばるわ、みんなももうちょっと我慢してね」
俺は携帯を見ながらつぶやく。
……なにがもう少しなんだ? 景子
俺は、そうつぶやくと、それほど間を置かずにまた景子のヴァギナに埋まっている携帯を呼び出す。
「んんっ」
結局、この景子の授業が終わるまでに、俺は携帯の発信履歴がさらに一回りするまで、景子を嬲り続けた。
「終わった……」
俺の隣のやつがぐったりと顔を机にうつぶせる。
おちゃらけていたものの、実際かなりしんどかったんだろう。
「さっさと保健室に行ってこいよ、なんだったら俺が付き合ってやろうか?」
そんなふうに俺は親切げにそいつに言う。
だが本当のところは俺がそいつに施してやった修復がどの程度だったのかを知りたかったというのが本音だ。
うーん、とそいつはつぶやく。
だが、そんな俺の元に、そいつよりもさらにふらふらしたやつが近づいてきた。
今の今まで、俺が遠隔操作で嬲っていた景子だ。
景子は俺のそばまでくると、熱っぽい視線で俺を見下ろす、ご丁寧にその身体にしなをつくりながら。
今までぐったりしていたそいつが、景子の色気に当てられたのか、目を見張るように景子を眺めている。
「あの…御影君お願いなんだけど……今日使った教材を資料室まで運んでくれないかしら」
景子の口調は、その童顔とも言える顔立ちからは想像もできないほどに艶っぽく、眼鏡の奥の瞳はこれ以上ないほど潤んでいた。
……まったく、演技するならもう少しはまともに演技をしてもらいたいもんだ
「ごめんなさい…普段なら自分でするんだけど…先生ちょっと体調が悪くて……頼まれてくれる?」
やれやれ、と俺は返事をする。
「いいですよ、先生もあまり無理しないでください」
俺がそう言うと、景子は、じゃあお願いね、と言ってそそくさと教室を出て行ってしまった。
おそらく資料室で俺を待つために―――
突然ぐいと身体が引っ張られる。
胸倉をつかまれ、そいつに引っ張り寄せられたのだ。
「な、なんだ、今のはいったいなんなんだ!」
……なんだ…十分元気じゃないか
「なんでお前…だってお前は委員でもなんでもないだろ!?」
俺は面倒くさげにそいつを見下ろす。
「な、なんでお前が、ま、まさか景子先生の課外授――」
ポコッと俺はそいつの頭を殴る。
そして、殴りざまに糸をそいつの額に打ち込んだ。
「えっ」
俺はそのままそいつの身体にほんの少し刺激を与える、人の平衡感覚をつかさどる三半規管に向かって。
「な、なんだ?」
そいつは突然手を放すとふらふらとよろける。
俺は掴まれた部分をパンパンと叩き、襟を直した。
「ほら、調子悪いんだろ? 馬鹿な事言ってないでさっさと保健室に行って来い」
俺はぽんとそいつを押し出す。
「む…むぅ、ここまで酷いとは、しかたない、ふざけてないで行って来るか」
そいつはよろよろと歩き出した。
「ああ、行って来い、俺は用事ができたからついて行けないけどな」
俺がそう言うとそいつはよろけながらも手を振りながら、教室を出ていった。
俺はそいつを見送りながら心の中でつぶやく。
……そっちは保健室じゃなく便所の方だぞ……
まあいい、それだけ元気なら回復も早いだろう。
俺はスクッと椅子から立ちあがる。
そして、景子に言われた通り教卓の上に置きっぱなしになっていた教材を手に取ると、そのまま資料室へと向かおうとした。
だが―――
……そういえば、忘れるところだった
俺はそうつぶやくと、教室の出入り口のところで足を止める。
そして右手、中指をかざすと、糸の力を発動させた。
教室内が紫色に染まり、教室の人間の糸を打ち込むポイントがズラッと見えるようになる。
ふわりと指先から糸が舞い上がる。
その糸は、一気に、教室にいる人間の数だけ分裂した。
そして、俺は教室にいる人間すべてに糸を打ち込み、先ほどの景子の痴態を、その記憶のなからすべて消去させた。
俺は、自分の教室のある階から2つ階段を下り、その階の、一番端に位置する部屋へと向かう。
途中学年が違う生徒達とすれ違ったが、俺が手に資料室の教材を持っているところを見ると、特に疑問も持たずに目をそらしていった。
俺は、その部屋に辿り着くと、そこの扉を見上げる。
『資料室』と小さく書かれた板がぶら下がっていた。
ちらりと俺は隣の教室に目を配る。
隣の教室からは、特別授業なのかわからないが、休み時間というのに、人の気配を感じられなかった。
ひょっとしたらそれを見こんで景子はわざわざこの部屋を指名したのかもしれない。
それならそれでちょうどいい、せっかく景子が相手なんだ、茜や葵じゃすこしためらうようなハードな事をしてみるとしよう。
俺は冷たい笑いを浮かべながら携帯を取り出すと、再び景子のヴァギナに埋め込まれている携帯電話の番号をコールした。
まさか景子が俺の許し無しに自らあれを外す事もないだろう。
携帯から呼び出し音が聞こえる、それと同時に―――
「ああっ」
くぐもったような景子の声が、部屋の中から聞こえてきた。
俺は携帯を呼び出しにしたまま、資料室のドアを空けた。
ツンとかび臭い匂いが鼻をつく。
実際のところ、資料室というのはかなり狭く薄暗い。
部屋の中の、窓のある面以外はびっちりと棚が置かれている上に、部屋そのものが、それらの棚の中にある資料を日光による日焼けから守るために、学校の中でも特に日当たりの悪いところに設けられているからだ。
そんな中で俺は視線を前方に向ける。
資料室の棚に囲まれるようにぽつんと置かれている小さな机、そこに寄りかかっていた景子がうつろな表情をしながら、ふらふらと俺の方に歩いてきた。
そして、かすかな喘ぎ声を上げながら、俺にすがり付いてくる。
ボリュームある、景子の胸が俺の腕に押し付けられた。
景子がぽろぽろと涙をこぼし、俺を見上げる。
「ああっ、ご主人様、ご主人様あっ」
景子がたまらないといった感じで腰をくねらせている。
「お願いします、止めて、止めてください」
景子を責め立てるバイブレーションの音が聞こえてくる。
俺は片手で、ピッと携帯の呼び出しを止めてやった。
「ああ……」
バイブレーションの音が消え、それと同時にふっと景子の身体からも、緊張が消える。
だが、それでも景子は俺の身体から押し付けた胸や腰を離さず、それどころか更に押し付けるようにして、甘えるように俺を見上げた。
「ご主人様……」
期待に瞳を潤ませる景子、もはや完全に発情状態といった感じだ。
それはそうだろう、ヴァギナに埋め込んだ携帯のバイブを断続的に鳴らされ、その挙句、生徒たちの前でストリップもどきのような事までやらされたのだから。
だが―――
「ご主人様? 何を言ってるんですか先生、俺は先生に頼まれて教材をここに持ってきただけですよ」
俺はそう言って、景子を押しのけてしまった。
一瞬にして景子の顔が青ざめる。
「それでは用事が済みましたので、これで帰らせていただきます」
俺は優等生面をした笑い顔を見せると、くるっとその場できびすを返してしまう。
「ああ、いやっ、待ってください」
景子が俺の背中にしがみついてくる。
「お願いします、行かないでください、私を置いていかないでください」
だが、それでも俺は歩く足を止めない、景子を振り切るように出口に近づく。
「あっ」
景子がよろけ、ぺたんと床にひざまずいてしまう。
「ああ……ご主人様…いやぁ……」
俺はそこで立ち止まり、景子の方を振り向き、景子を見下ろす。
景子は、文字通り主人に捨てられた子犬のような涙目で、俺を見上げていた。
俺は、わざと景子を蔑むような目で見下ろす。
そしてゆっくりと景子に言った。
「そうですね……もし俺がご主人様だとしたら……」
景子が息を詰まらす。
「自分の都合で主人を呼び出すような奴隷は……ちょっとお断り願いたいですかね」
俺のその言葉を聞き、絶望的な顔をする景子。
そのままよろよろと、四つん這いのまま、俺の足元に這ってくる。
そして、俺の足にすがりついた。
「ごめんなさい、ご主人様許してください、我慢できなかったんです」
景子が顔を上げ、俺を見つめる。
「見捨てないで、ご主人様、私を見捨てないで下さい」
涙を流しながら俺に哀願してくる景子。
そんな景子を見下ろしながらふと俺は思う。
……そういえば最近は茜と葵にかかりっきりで景子をほとんど相手にしてなかったな
実際景子にしてみれば、俺に捨てられるととか捨てられないとかは、現実味を帯びた問題なんだろう。
そろそろこう言うからかい方は勘弁してやるか。
俺は、景子の頬に手を当てると、親指で景子の涙をすくってやる。
そして俺は、いつもの、奴隷である景子に命令するように、高圧的な声で言った。
「景子、立ち上がってスカートをまくれ」
ぱあっと景子の頬に赤みがさしてくる。
それと供に、表情が恍惚としたものになってくる。
「はい…わかりました、ご主人様」
景子はそう言うと立ち上がり、赤いスカートに手をかけ、自らめくり上げた。
下着はすでに先ほど脱がさせたのでそこにはない、大量の愛液にぬれた景子の股間があらわになった。
「ご主人様……これでいいですか?」
散々太ももをすり合わせていたせいだろうか、本来なら水をはじくはずのストッキングまで愛液がぐっしょりと染み込んでいた。
俺は引き続き高圧的な声で景子に言う。
「もっとよく見えるように工夫する事も考えつかないのか」
ああ、と景子がため息を漏らす。
「すいません…これでよろしいですか? ご主人様」
景子はそう言うと、立ったままの状態で、足を更に広げ、腰を前に突き出してくる。
女にしてみればかなり屈辱的なポーズだろう。
だが、それでも景子は俺の命令に従う事自体が快感という感じで、嬉々として行ってくる。
そんな景子に更なる命令を俺はする。
「景子、次だ、手を使わずに埋まっている物を出してみろ」
え、と声をあげる景子。
「わかってるだろ、イキんで出すんだ」
そういって俺は、景子の股間を見上げるようにしゃがんで床に膝をつく、そしてピンと中指の爪で携帯の埋まっている景子のヴァギナの表面をはじいた。
「ひゃっ……わ、わかりました」
景子はそう言うと、股間を俺の方に突き出したままの姿勢で、ん…と下半身に力を入れ始める。
ぷるぷると下っ腹が震えだした。
「どうした、全然出てこないぞ」
切なげなため息を漏らす景子。
「待ってください……すぐに…出しますから」
景子の下半身に、更に力がこもる。
やがて、景子のヴァギナからポタポタと中から搾り出されるように愛液があふれてきた。
「ああ…ご主人様、出ます、もうすぐ出ます、見ていてください」
景子が震えた声でそう言うと、にゅるっとコンドームにその身を包んだ携帯電話が、底の方から現れた。
はあ、と安堵のためか、景子が小さくため息をつく。
だが、俺はここでイタズラをする。
景子にわからないように、懐に手を入れたまま携帯を操り、景子のヴァギナから出かけた携帯を鳴らした。
ブーンと景子の愛液を撒き散らしながら振動を開始するする携帯電話。
「ひゃああっ」
ガクガクと景子の膝が震えだす。
「ご主人様っ、ご主人様あっ」
景子は、携帯を出す事だけに集中し、これが振動をするものだという事なんてすっかり忘れていたに違いない。
それを、やっとの事で先端が出て、ほっとしたところで振動を与えられたんだ、景子にしたらたまったもんではないだろう。
「ああっ、だめぇご主人様、そんなふうにされたら出せなくなっちゃいます」
ブルブルと振るえながらそんな事を口走る景子。
俺はその言葉を聞くと、景子に聞こえるように小さくため息をつく。
「つまり景子、お前は俺の命令なんか聞けないという事だな?」
俺は感情の読み取れない、抑制した声でそうつぶやいた。
ああ…と切なげな声を出し、みるみると目に涙をためていく景子。
「待ってください……出します、絶対にご主人様の命令通りにします」
そう言うと、景子は再び携帯を出すようにしてイキみはじめる。
ブーンと景子のヴァギナを責め立てる携帯。
「うう……っ」
携帯の振動にあわせるように、景子の身体も震える。
景子の中に埋め込まれている携帯は、二つ折りのタイプではなく、そのままの状態で使うタイプの携帯だ。
二つ折りのものに比べると出しやすいと思えるかもしれないが、大画面タイプなので、奥のほうが太くなっている構造になっている。
そのため、底のほうを出すのはたやすいが、そこから更に先を出すのはかなりつらい事になるだろう。
「あ……ああっ」
景子が更に力をこめる。
ジュプっと泡だった愛液が流れてくると同時に携帯の太い部分までが景子のヴァギナを掻き分けるようにして、飛び出てきた。
「はぁ……」
景子がほっとしたような表情をする。
だが、この程度で許してやるような俺ではない。
俺はすかさず手を伸ばし、出てきた携帯の底に指をあてる。
そしてニヤリと笑うと、ズブリと再び携帯を、景子のヴァギナの奥のほうまで埋め込んでしまった。
「あ、あああっ」
景子が絶望的な声をあげる。
悲しげな表情で俺を見下ろす景子。
「そんな……ご主人様…」
だが、俺はふんと笑うと景子に言ってやる。
「なんだ? 奴隷ってのは主人のする事を非難することができるのか?」
俺は指を埋め込み、最奥まで携帯を押し戻してしまった。
「そ、そんな事は……」
震えながら涙目で俺を見下ろす景子。
俺は卑下た笑いを浮かべ、景子に言う。
「じゃあこういう時はどんなふうに言うんだ、俺のちゃんとした奴隷なら」
景子はぎゅっとスカートを握っている手に力をこめる。
そして、更に股間を俺の方に突き出して言った。
「ご主人様……もっとして下さい…もっと私をいじめてください……」
震えるような声でつぶやく景子。
だが、俺を見つめるその潤んだ瞳の光は、被虐の喜びそのものだった。
「じゃあ景子、もう一度だ、出してみろ」
俺は今度は、最初から携帯の底に手をあてるようにしておいて景子に言う。
「ああ……ご主人様、お願いします」
そして再び携帯を出すようにイキみはじめる景子。
結局俺は、その後それを5回繰り返すまで、景子を開放させてやらなかった。
カランという音が響き、リノリウムの床に携帯が落ちる。
それに遅れるように、ボタボタッと大量の水滴が後に続いた。
ブブブブと音を立てつづける携帯。
だが、俺がその呼び出しを止めるまでもなく、まるでタイミングを合わせるように、景子に埋めたときは満タンにしてあったその充電池は切れ、ピーと警告音を鳴らして、携帯の振動は止まってしまった。
「ああ……」
ガクンと景子が膝を折る。
そして、しゃがんでいた俺に抱きつくように倒れてきた。
俺はそれを受け止める。
「ご主人様……」
夢心地、という感じで俺の事をつぶやく景子。
そんな景子を見ながら、俺は心の中でつぶやく。
……景子、まだまいるんじゃないぞ、こんなものはまだ前戯だからな。
俺は景子を抱き上げると、部屋の奥のほうへ向かう。
そして景子を、机の上に寝そべらせた。
「ご主人様ぁ…」
自ら股を開き、甘えたような声を出してくる景子。
景子のヴァギナからは、携帯で嬲られていた時と変わらぬ量の愛液が、ダラダラと流れ出ている。
……景子、この程度で満足するなよ、これからもっとお前を気持ちよくさせてやるからな
俺はそう心の中でつぶやくと、おもむろに景子のスカートを脱がせ、そのポケットに手を突っ込んだ。
「ご主人様?」
景子が不思議そうな顔をして、俺を見上げる。
……確か、こいつはいつも持っていたはずだ
そして、俺は景子のポケットから小さな刺繍の入った布製の携帯ケースを取り出した。
俺はスカートを床に放り投げ、そのケースを開ける。
中には2、3本の針が入っているケースと、5種類ぐらいの色の木綿糸が巻きつけられていた糸巻きが収められていた。
そう、これは携帯用の裁縫セットだ。
マメなやつだ、携帯の裁縫セットなんて、たとえ持っていても鞄とかに入れて持ち歩くのが普通なのに。
俺は、そこから白の木綿糸を取り出すと、30センチ強の長さを出し、歯で食いちぎる。
景子は俺の様子を、ただぼうっと見ていた。
俺は、いったん景子の脇に裁縫セットを置くと、右手にその糸を持ったまま、左手で景子のヴァギナを広げる。
「あ……」
景子がピクンと震えた。
そして、極度の興奮状態のため、包皮をめくり上げるまでもなく、顔をのぞかせていた景子の肥大したクリトリスを無造作に嬲る。
「あっ、ご主人様っ」
景子が身体をのけぞらせる。
そんな景子に俺は言う。
「景子、ここを自分の手で開け」
「はっ、ああっ……わかりました……」
景子はそううなずくと、俺の指示通り、自らの指で包皮をめくり上げ、クリトリスを剥き出しにさせる。
「それが限界か?」
俺がそう言うと、景子は包皮をめくる指に更に力を入れる。
見ていて痛々しさを感じるほどに、景子の真っ赤に充血したクリトリスが剥き出しにされた。
「こ、これでよろしいですか?」
俺は、満足げな笑いを見せると、先ほど引きちぎった木綿糸を両手で持つ。
そして、その木綿糸の端に、小さな輪っかができるように結び目を作った。
その様子を見ていた景子がため息を漏らす。
「ご主人様……それを私のここに結ぶんですか…?」
景子が肩で息をしながらたずねてくる。
「いやか?」
俺がそう言うと、景子は首を横に振った。
そして、倒錯感に酔った、潤ませた目で俺を見上げながらつぶやいた。
「私の身体は全部ご主人様のものです……ご主人様の使いたいように使ってください……」
そう言って、景子はすでに限界まで剥き出しにされたクリトリスを更に剥き出しにしようと、両の指に力を込めた。
ふんと俺はつぶやくと、手にもっていた木綿糸を景子のクリトリスに近づける。
そしてその輪っかの部分を、クリトリスを囲うようにあてがうと、結び目を爪でもち、長く垂れている方の糸を引っ張った。
シュッと縮まる輪っか、それはキュッと景子のクリトリスを根元からきつく縛り上げた。
限界まで剥き出しにされていたクリトリスが、根元で結ばれた事により、さらに押し出されるように飛び出てくる。
「ひいっ」
ビクンと景子が身体を震わした。
俺は、結び付けた糸が簡単に解けないかを確かめるために、ピンピンと糸をひっぱる。
「ああっ、ああっ、ご主人様ぁっ」
糸を引くたびに、涙をボロボロと流し、まるで電極を差し込まれ電流を流されている蛙の足のように痙攣をする景子。
セーターの奥に収められているその大きな胸が、波打つようにゆれる。
だが、それでも景子はクリトリスを剥き出しにさせている手を緩めない。
……まったくたいした忠誠心だ
俺は、そうつぶやくと、簡単には糸が抜けない事を確認し、いっときその糸を開放してやる。
はあっ、と景子が息を漏らした。
そんな景子に俺は言う。
「景子、もう手を離していいぞ」
景子は俺の言葉を聞いて、そろそろと指を離す。
だが、景子のクリトリスは、結び付けられた糸が包皮を押し上げる形となり、その剥き出しのまま形を変えなかった。
「ご主人様………」
うつろな目で俺を見上げる景子、そのヴァギナは更なる愛液を垂れ流している。
そんな景子を見下ろし、俺は冷たい笑いを浮かべる。
「景子……言っておくがまだ準備も終わってないんだぞ」
俺がそう言うと、景子は被虐の喜びに目を輝かせ、つぶやくように言った。
「はい……ご主人様…もっとしてください…」
俺はそんな景子を尻目に、景子の脇に置いてあった裁縫セットを手にとると、そこから再び糸を取り出し、今度はさっきの倍の長さに糸を切った。
そして景子に命令する。
「景子、着ている物を全部脱げ」
俺がそう言うと、景子は期待で顔を赤くしながら、もそもそとセーターを脱ぎ始めた。
机の上に寝そべって、足を開いたまま上着を脱ぐ姿は、少々滑稽にも見える。
セーターを脱ぎ、シャツを剥ぐと、その景子の巨大な乳房を無理やり押し込めているブラが現れた。
いかにも高価そうなブラだ。
それを見た俺は、皮肉をこめて景子に言った。
「ずいぶん気合の入った下着じゃないか、以前はシンプルなブラしかしてなかったんだろ?」
ん…と景子が身じろぎする。
「いつでも……ご主人様にしてもらってもいいようにって思って……」
景子は殊勝な事をつぶやくと、パチンとブラのホックを外した。
ブラをはじくようにしてユサッと景子の胸が飛び出してきた。
俺はそんな景子を見下ろしながら、先ほどと同じように、糸の端に輪っかを作る。
そして景子に言った。
「景子、どうすればいいかわかるな」
景子はコクンとうなずくと、景子は片方の乳房に両手をあてる。
そしてまるで自ら自分の母乳でも絞るかのように、ぎゅっと乳房を握り締めた。
グイっとまるで強調されるように飛び出す景子の乳首。
「お願いします、ご主人球……」
俺はその震えている景子の乳首に、糸の輪っかを引っ掛ける。
「ん……」
ぴくんと景子の身体が震える。
そして俺は、先ほどと同じように、糸の結び目を爪で押さえ、輪っかを絞るように、糸の反対側を引っ張った。
キュッと糸が景子の乳首を締め上げる。
「ああっ」
はっきり言ってこちら側はクリトリスよりも繊細に扱う必要はない、俺は先ほどよりも強く、輪っかを締め上げた。
「ひいっ」
景子が喉から搾り出すような悲鳴をあげる。
だが、俺は容赦なく、景子に告げる。
「景子、次だ」
俺がそう言うと、うつろな目で俺を見つめ、そろそろと乳房を握り締めていた手を離す。
「は…はい……」
そして、先ほどと同じように、絞るようにして、反対側の乳房を自ら握り締めた。
ピンと突き出される景子の乳首。
俺はもう片側にも輪っかを作り上げると、同じようにその輪っかで景子の乳首を縛り上げる。
「ああ……」
もうこの感覚に慣れたのだろうか、景子の口からやるせないようなため息が漏れた。
俺は、ふんと笑うと最後の仕上げに取り掛かる。
クリトリスに結び付けた糸をくいっと上の方に引っ張った。
「あっ」
そしてその糸を、乳首同士を結び付けた糸に、たるみの無いよう結び付ける。
糸は、ピンと両乳首、そしてクリトリスとYの字になるように結び上げられた。
俺は、その結び目を、下から指を通すようにしてピンピンと上に引っ張る。
「あひいっ、ご、ご主人さまぁっ」
俺はニヤリと笑うと景子に言う。
「景子、やっと準備が終わっただけだぞ、そんな声をあげててこの後もつのか?」
俺は糸を持っていた手を放し、今度は両手で景子の乳房を掴むと、ぐいっとそれを揉み上げる。
ビンと糸が張り、乳房は上を向いているのに、乳首だけが糸に引っ張られ下を向く。
「ああっ、ああっ」
「今から俺が突くたびに、これと同じ事が起こるんだぜ」
俺がそう言うと、景子は息を荒げながらも、トロンとした目で俺を見下ろす。
「ご主人様…、していただけるんですか?」
俺は、景子の胸から手を放し、ズボンのファスナーを下ろす。
そして、すでに反り立っているペニスを取り出した。
ああ…と景子が俺のペニスを見つめ、ため息をもらす。
そして、自らの股間に手を当てると、ぐいっとヴァギナとアナル、両方が広がるように力を込めた。
景子が熱っぽい目で俺を見上げる。
「ご主人様…どちらを使っていただけるんですか…?」
景子のヴァギナとアナルは、すでにもう待ちきれないかのように、ヒクヒクと蠢いている。
俺は、ふんと笑うと、自分のペニスを握り締めながら、景子に近づく。
「とりあえず、完全に準備が整ってるほうからしてやるよ」
そう言って俺は、ペニスの先端を、景子のヴァギナに押し当てた。
「ああっ」
ビクンと景子が身体をのけぞらせる。
しかし、それと同時に、その身体の動きに合わせてゆれた乳房が、糸で結ばれたクリトリスと乳首の3点を強く引っ張った。
「ひいっ」
俺の亀頭を、景子のどぷっと流れた熱い愛液が包む。
ああ…と涙目で俺を見上げる景子。
「景子、覚悟しろよ」
俺はそう言うと景子の腰を両手で掴み、ペニスを一気に景子のヴァギナの奥のほうまで突っ込んだ。
ドンと俺のペニスが景子の子宮を突き上げる。
「ああっ、ご主人さまぁ」
ビクビクと景子の身体が震える。
俺はそのまま、わざと景子の胸が大きくゆれるようにと、長く、ゆっくりとしたストロークでピストンを始めた。
俺が突く度に糸が、ビン、ビンという音をたてる。
「ちぎれちゃう、ご主人様ぁ、私のおっぱいの先と、オマメがちぎれちゃいますっ」
悲痛な叫び声をあげる景子。
しかし奴隷としての性なのか、それでも景子は自由になっている手でゆれる胸を抑えようともせずに、頭の上のほうでぎゅっと結んでいた。
俺はそんな景子を面白がって、先ほどのように、糸の下から指を通し、その結合部分をくいっと持ち上げる。
糸たるみが無くなり、さらに景子の縛られている部分を責めあげた。
「ああっ、ご主人様、すごいっ、すごいいっ」
糸を通して、質量感のある景子の胸の動きが伝わってくる。
断続的に糸に伝わる衝撃。
そしてそれとタイミングを合わせるように、俺のペニスが締め付けられた。
……このままじゃこっちがもたないな
俺はそう思うと、糸から手を離し、景子の中からペニスを引き抜いてしまう。
「ああっ、そんなご主人様っ」
景子が口惜しそうな顔をして、俺を見つめる。
そんな景子を見下ろしながら、俺は景子に言った。
「景子、次だ」
俺はぐいっと机の上に寝そべっていた景子を起こさせる。
「今度は机に手をついて、尻をこっちに向けるんだ、後ろのほうを使ってやる」
俺がそう言うと、景子は倒錯感に酔ったような顔をして、机から降り、俺の言われた通り机に手をついて尻を俺の方に突き出す。
「ご主人様ぁ」
ポタポタと景子の濃い愛液が糸を引きながら、床に落ちる。
そして景子はそのままの体勢で俺の方に顔を向け、片手を机につけたまま、もう片方の手でアナルを広げて俺に言った。
「ご主人様……ご主人様の牝奴隷のいやらしい穴を、全部使ってください……」
俺は、景子のヴァギナの締め付けによって、これ以上ないぐらいに硬くなったペニスを、景子が自ら広げているアナルに押し当てる。
「んんっ」
すると、景子がアナルを広げていた手を離し、俺のペニスを握り締め、自ら押し込むようにその手に力を込めた。
俺は景子の誘導に合わせ、腰を押し出す。
ズブリ、と簡単に俺のペニスは景子のアナルに埋没していった。
「はああっ」
景子がブルブルと震える。
俺はそのまま根元までペニスを押し込む。
景子のアナルは、まるで筋繊維の1本1本が別の生き物のように絡みつき、俺のペニスを締め付けてきた。
自ら腰を動かし始める景子。
そんな景子を背中側から見下ろし、俺は皮肉げに言ってやった。
「なんだ景子、そんなにこっちで感じるのか? こないだまでオナニーですらここを使った事ない女とは思えないな」
景子が腰をもじつかせながら、悩ましげに答える。
「だ、だって……こっちはご主人様に初めてを貰っていただいた場所だから…」
景子が潤んだ目で俺を見上げる。
……精神的なプラスアルファもあるって事か
だったらこっちでとことん感じさせてやるよ。
俺はそう思うと、景子の腰を強く掴み、後ろから思いっきり突き上げはじめた。
「ああっ、ご主人様っ、さっきよりいっ」
俺はふんと笑う。
景子をバックの姿勢にさせたのは、アナルを犯しやすくするためだけではない。
この格好のほうが、胸のゆれの幅が大きくなり、正常位のときよりも激しく糸で結ばれた乳首とクリトリスを締め上げるからだ。
だが、俺は遠慮無しにガンガン後ろから景子のアナルを突き上げる。
「ひいっ、ひいっ」
もはや、まともな言葉すら出せなくなる景子。
だが、俺は更にここから景子をいたぶる。
俺は、景子が手をついている机に手を伸ばすと、その机の上にあった今にも落ちそうなペン立てを手にとる。
そしてその中からボールペンを取り―――
それを景子の身体の前のほうにまわし、乳首とクリトリスを結んでいる糸の中心に引っ掛けた。
ぷらんと重りのような状態で糸にぶら下がるボールペン。
ビクリと景子の身体が震える。
「ああっ、だめえっ、ご主人様、そんな重りなんかつけちゃだめぇっ」
景子が狂ったように叫び声をあげた。
俺は笑いながら景子に言う。
「なんだ、俺のする事に文句をつけるのか、そんな奴隷にはお仕置きをしなきゃいけないな」
俺は、ペン立ての中から更に、いかにも重そうな、振る事により芯をだすタイプのシャープペンを取り出す。
そして、それをクルっと1回指でまわすと、ボールペンを引っ掛けた場所と同じと頃に、それをぶら下げた。
先ほどボールペンを引っ掛けただけではほとんど動かなかった糸。
しかし、今度のその重いシャーペンは、引っ掛けると同時に、ぐんとその糸を下に引っ張った。
「ひいいいっ」
ぷしゃっとあふれ出た愛液が俺の太股を濡らした。
俺はその状態から、動きを緩めていたピストンを、再び高速にする。
俺が突く度に、糸を引っ張る重りとなっているボールペンとシャープペンがカチンカチンとお互いにぶつかって音を鳴らす。
「あああっ、ご主人様、ご主人様ぁっ」
ボロボロと涙を流す景子。
「もうわからないのっ、私、痛いのか気持ちいいのか、もうわからないのっ」
景子のアナルの締め付けが、俺のペニスをちぎりそうなぐらい強くなる。
「ご主人様っ、私イキます、もうイっちゃいますっ」
景子の尻全体がブルブルと震えてくる。
景子も限界が近いだろうが、俺の方もそろそろだ。
「景子、出してやるぞ」
俺はそう言って、一段と強く、ペニスを景子のアナルに押し込む。
「ああっ、ご主人様、お願いします、ご主人様の精液を私のお尻の穴に全部流し込んでぇっ」
ぎゅっと景子のアナルが締まる。
それと同時に、俺はそれまで溜め込んでいた精を、すべて景子のアナルにぶちまけた。
「ああああっ」
景子が大きく身体を反り返らせる。
そして、その動きでついに、景子を散々嬲りつづけていた糸に限界がきた。
これ以上ないぐらいに、景子の乳房によって引っ張られていた糸が、ぷちんと音を立てて、その中心の結び目からちぎれた。
「ああっ、ああっ、ああっ」
俺の精液が直腸内にドクドクと流し込まれている感触、そして今まで自分に苦痛を与えつづけていた糸からの開放。
この襲ってくる2つの感覚で、景子は身体をぶるぶると震わせた。
カランと2本のペンが床に落ちる。
「ああ……」
そして、それを追うように、景子がどさりと床にうつぶせるように倒れた。
ズボッと俺のペニスが景子のアナルから抜ける。
「あっ……あっ……」
景子は気を失っていたが、それでも襲ってくる余韻に、その身体を波打たせている。
俺は息を1つつくと、しゃがんで景子の股を開かせる。
糸によって嬲られたクリトリスの様子を見るためだ。
ぐいっと景子のヴァギナを開く。
木綿糸という、糸としては細めの部類に入るものにきつく縛られ、引っ張りつづけられていたそこは、紫色にうっ血し、ちぎれるとまではいかないが、その傷つきようは限界を遥かに超えているような状態だった。
……普通ならまず病院行きだが…
俺は、するっと指先から紫の糸を出す。
そして、それを景子のクリトリスの中心に打ち込んだ。
そこから俺は肉体干渉の力を持つ、青い糸の力を使う。
ぴくっと景子のクリトリスが震えたかと思うと、次の瞬間、クリトリスはそのままスケールを小さくしたように、縮まってしまった。
ポロ、という感じで今まで景子のクリトリスを締め上げていた糸が落ちる。
俺は糸が取れた事を確認すると、そのまま大きさを元に戻してやった。
俺はそのままうっ血した状態のそこを見つめる。
……完全に元に戻してやってもいいが
俺は、そのうっ血したクリトリスを、指の腹でやさしくなでてやる。
「んん……っ」
景子が、気絶した状態から、ぴくりと身体を動かす。
……案外このままのほうが、景子は喜ぶかもしれないな
どうせ放っておいたってすぐに直るだろう、実際先ほどよりも少しは血色がよくなっているし。
俺はそう思いながら糸を景子から引き抜く。
そして、同じようにして両の乳首に結び付けられた糸を取ってやると、景子の頬を軽く叩き、起こしてやる。
「ん……」
景子がうっすらと目を開け、そのままの夢心地のような視線で、俺を見上げる。
「ご主人…様ぁ…」
こういう時の景子は、本当に幸せそうな顔をする。
俺は、そんな景子に、まだ硬度を失っていないペニスを突き出す。
「景子、全部の穴を使ってくれと言った割にはまだ1つ残ってるぞ」
俺がそう言うと、景子は、あ…とつぶやく。
そして口を開けながら、俺のペニスに舌を伸ばしてきた。
そのままぺろっと俺の亀頭を舐め上げる景子。
「ご主人様……私のご主人様……」
アナルセックスの後だと言うのに、ためらい無く俺のペニスを丁寧に舐め上げていく景子。
「…これからも……ずっと……」
景子が喉の奥まで俺のペニスを飲み込む。
俺のペニス全体が、ねっとりとした感触に包まれる。
締め上げられるような感じは皆無だが、それとはまた違う繊細な感覚。
俺はこの景子の献身的な奉仕により、2度目の射精を景子の口内で向かえた。
夕暮れの時の通学路、身体を芯まで凍らせる木枯らしが、道端に散る枯葉を吹き上げている。
夕日を背にした俺の身体から伸びる影法師は、遥か先まで背を伸ばし、街頭の下をくぐるたびにその姿を薄くしていた。
並ぶ影はひとつと無い、俺はたった1人で家への帰路へとついている。
いつもの事だ。
学校から家が近い事を利用して、授業が終わるとすぐに帰る生徒たちと、部活動で遅くなる生徒たちの合間を縫うように帰っている。
人間が嫌いだとかそんな事は言わないが、それでも他人といるよりは1人でいると時のほうを好む。
単純に……他人に気を使うのが面倒なだけだ、俺が他人に見せている顔は、この影法師のように、俺の本性とは遥かに離れたものなのだから。
そんな事を思いながら、家路への足を速める。
そして―――
これももう、いつもの事になりかけている事。
俺の住むマンション、その入り口に、身を隠すようにして1人の少女がたたずんでいた。
夕日に負けない、美しい赤茶けた髪をショートカットに切りそろえ、張りの効いた制服を着こなし、普段なら気丈なはずのその目を、落ち着かずにきょろきょろとさせながら。
そう、我が学園の生徒会副会長、北条茜だ。
俺はあれから、茜にかかっている規制をすべて取り払い、開放してやった。
もはや監禁する意味も、必要性もないと判断したからだ。
葵の方はさすがに開放できない、あの容姿と精神年齢はそのままにしているからだ、それでも毎日楽しそうに、家の中ではしゃぎまくっている。
俺の姿を確認したのか、茜は、あ…と小さな声をあげると、その落ち着かない視線を更に泳がせた。
このように、何も言わずとも、俺の家の前で俺の事を待っている茜。
それを無理やり家に引き込み、葵とセットで嬲る、これがいつもの事だった。
俺は茜に近づく。
茜がきゅっと鞄の取っ手を握り締め、その身体に緊張を走らせた。
だが―――
「えっ」
いつもなら、俺はここで高圧的に茜に命令して、家までついてくるように指示をしていた。
しかし今日はあえて、俺はまるで茜がそこに存在しないかのように、茜の前を素通りし、マンションの玄関へと向かってしまった。
後の方で、茜がおろおろしているのが気配でわかる。
俺は、オートロックの解除コードを入力する装置の前に立つ。
そして自動ドアを開けるための暗証番号を入力し始めた。
「ま、待ってよ」
茜が俺のほうに駆け寄ってくる。
俺が茜の方を向くと、茜はそうする事に相当決心を必要としたのか、まるで肩で呼吸をするように、息をはずませていた。
そんな茜に俺は、感情の無い抑制した声で言う。
「なんの用だ?」
えっ、と再び茜が声をあげた。
「なんの用があって、こんなところにいる?」
茜は、自分の予想外の事が起こって、完全に慌てふためいているという感じだ。
そんな状態からかろうじて声を出す。
「そ、それは……」
だが、それに続く言葉は、茜の口からは出てこない。
俺は再び入力装置の方を向き、テンキーで暗証番号を押し続ける。
「用が無いなら帰れ」
俺がそう言うと、茜はビクンと身体を震えさせた。
「だ…だって…」
俺はここで茜を誘導するような、そんな救いの言葉をかける気はない。
もはや、その身体が、俺なしではいられないようになってしまったのを、しっかりと自覚させるために。
俺のキーを押す指が進む。
茜が慌てたように言葉を続けた。
「だ、だって……だって、ここにこなきゃ、葵に会えないじゃない!」
やっとの事で、搾り出すように答えを言った茜。
俺はキーを押す手を止める、そして茜のほうを向いた。
茜がビクッと震える。
そして抱きしめるように鞄を胸のところでかかえ、俺から身を守るようなそんな体勢をとった。
茜は首をすくめ、おびえた小動物のような目で俺を見上げてくる。
俺はそんな茜を見下ろすと、更に感情の無い、まるでそこにいる茜が、面識の無い人間であるような声で言った。
「だったら……インターホンを押せばいいだろ?」
あ…と茜は弱々しくつぶやく。
「確かに俺は葵に、誰がインターホンを鳴らしても出ないように指示をしている、だがお前がモニター越しに姿を見せてやれば、葵はカギを開けるはずだ」
う…と下唇を噛み、なにも言えなくなる茜。
「何のためにわざわざ―――」
俺は突然、ぐいっと茜の手首を捕まえると目の前に持ってくる。
「あっ」
「手がこんなになるまで、ここで俺を待ってたんだ?」
茜の手は、長時間木枯らしにさらされていた事を証明するように、真っ赤になりカサカサに乾いていた。
「あ…いや……」
じわり、と茜の目に涙が浮かぶ。
俺はぱっと茜の手を離すと、再び暗証番号の入力装置の方を向く。
そして今度はスムーズに暗証場号を押し直し、決定キーを押した。
ピ、という音が響き、音を立ててガラス製の自動ドアが開く。
俺はすかさずそのドアをくぐった。
「あっ、ねえ待って」
茜が俺を追いかけ、続くようにドアをくぐる。
だが俺は、茜に一別もくれずに、エレベーターを目指した。
茜が、一定の距離を置きながら後ろからついてくるのがわかる。
俺はエレベーターの前に着くと、呼び出しのボタンを押す。
茜は相変わらず一定の距離を置いたまま、その場でたたずんでいた。
エレベーターはすでにこの階にあったので、すぐに扉を開ける。
俺がエレベーターの中に入ると、茜はまるで俺の視線を避けるようにして、エレベーターの中に入り込んできた。
ちょうど、俺がエレベーター内のボタンの方を向こうと方向転換した時の、俺の背中側を通ったのだ。
俺は思わず吹き出しそうになったがそれをこらえる。
そして表情を変えないまま、俺の家がある階のボタンを押した。
茜は、俺を避けるように、ちょうど対角側の角で、胸に鞄を抱きかかえ、身を守るようにして背中を壁に預けている。
扉が閉まると、エレベーターが上昇し始めた。
エレベーターが動く音だけが耳に入ってくる。
だが俺は、2人だけが狭い密室に閉じ込められるような状況になると、それを待っていたように茜に話し掛けた。
「なあ、茜……」
ビクッと茜が震える。
「な…なに?」
警戒するような、それでもほんの少し期待感があるようなそんな茜の声。
俺は、クスッと笑うと、そんな茜をまるでからかうように言った。
「……ひょっとしてお前も……俺に惚れてたか?」
惚れていた、つまり葵のように、今のこんな状態になる前から俺の事を、という事だ。
ガンという音がエレベーター内に響く。
おそらく思わず身体を後ろにのけぞらせようとした茜が、後頭部をエレベーターの壁にぶつけた音。
俺は、茜が今どんな顔をしているのかを知るのを楽しみに思いながら、茜の方を向いた。
茜は大きく目を見開きながら汗を流し、見ているこっちが気の毒に思えるほど狼狽していた。
はっきり言って、今まで俺が糸で嬲った時、葵をだしに凌辱した時にすら見せなかったほど顔を蒼白にしている。
……確率は半々ぐらいに思ってたんだが…どうやら図星だったみたいだな
「思った通りか」
俺がそうつぶやくと、茜はハッとしてその蒼白だった顔面を、今度は真っ赤にした。
「なっ、何を言ってるのよ、あなた馬鹿じゃないの? どんな根拠があってそんな事言うわけっ!」
ぜいぜいと息を切らすほどの声で俺の言った言葉を否定する茜。
俺は思わずクスクスと笑う。
やっぱり茜はこういう感じじゃなくっちゃな。
まあ、根拠といえば、今の茜のうろたえ方が最大の根拠なわけだが、俺はあえてそこには触れずに、茜を追い込むことにした。
「根拠か……聞きたいか?」
俺はそういって1歩茜に近づく。
「あ…」
茜はぎゅっと鞄を胸に抱きかかえたまま、俺から逃げるように後ろに下がる。
だが、もともと茜はぴったりと壁に背中をつけていたのだ、後ろに下がろうとしても、茜はゴツッと後頭部をエレベーターの壁にぶつけただけだった。
先ほどもこんなふうにして頭を壁にぶつけたんだろう。
そんな茜に、俺はゆっくりと、追い込むようにしゃべり始める。
「まず最初に俺が引っかかったこと……」
茜が息を呑む。
「お前、俺と最初に対峙した時、俺に妙に情けをかけようとしてたよな、糸を返せば無傷で返してやるとか」
まあその後、お互いヒートアップして殺すの殺さないのまで発展したが。
「どうしてそこまでして俺の身を案じた?」
俺がそう言うと、茜が強く俺を見上げる。
「そ、そんなのっ」
そして、再び俺から視線をそらすと、顔を赤らめたまま、なるべくそっけなさを表すようにしてつぶやいた。
「あ、葵があなたの事が好きってだって聞いてたから……なるべくなら五体満足で普通の人に戻ってほしいと思ったからよ」
ぎゅっと茜は鞄を抱きかかえている手に力を込める。
……まあ、確かにそれが本当の理由だろうな
「じゃあ次だ」
俺がそう言うと、茜は少し強気になった顔を俺のほうに向ける。
俺は、ニヤリと笑って茜に言った。
「俺が初めてお前を犯してやったとき……」
茜がはっとしたような顔をする。
「お前、妙な行動とったな、『私にとっては初めてだから』とか言いながら」
その時の事を思い出したのか、茜は顔を真っ赤にさせた。
そう、確かにあの時茜は、それでも俺が初めての男だからみたいな事を言って、拘束を解くことを要求し、まるで自ら俺を求めるようにして、抱きついてきた。
「今思えば不可解な行動だ、普通ああいう事は忘れたいと思うんじゃないか?『犬に噛まれたと思って』なんて言葉もあるぐらいだしな」
うっと茜が言葉に詰まる。
「縄を解くように要求してきたのも変だな、結局犯られるのに変わらないなら縛られたままの方が自分に言い訳ができただろう、自分は拘束されてたから仕方なく、って」
茜は俺を見たり、目をそらしたりと視線を定めずに落ち着かない感じだ。
頬を赤く染めたまま、苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「あの時のお前の行動を考えると……どうも忘れたいというよりは、俺を初めての男として記憶に残したいみたいなそんな意思が見られるんだが」
まあ、あれを初めてと認識するかどうかは、本人の考え方次第だろうが。
「どうなんだ? 茜」
俺は余裕の笑みを浮かべながら、茜を見下ろす。
「そ…そんなの……」
必死に何かの言い訳をしようとする茜。
しかし続く言葉が出てこない。
もごもごと意味の無いつぶやきを口の中で繰り返すだけだ。
「そう言えば確かあの時は、お前にかけていた『俺に屈する事ができない』って規制を解いてやったんだっけな、それまで無理に押さえつけられてた感情が爆発したか?」
「そっ、そんな事―――」
その通りだと言わんばかりに、顔を真っ赤にさせたまま俺の今言った言葉をむきになって否定しようとする茜。
だがそのまま続く言葉が見つからずに口をパクパクさせている。
俺はうろたえる茜に笑いを隠せずに言う。
「まあいい、次にいくぞ」
まだあるの、とでも言いたそうな顔を茜がする。
俺はふんとつぶやき、続けた。
「……結局のところ、俺がそうなんじゃないかと決定的に思い始めたのは葵が原因だ」
「葵?」
ああ、と俺はうなずく。
「葵が必要以上にお前を恋敵として認識してるって事さ」
「あ……」
茜はそうつぶやいて、少しばつの悪そうな顔をする。
今、茜の脳裏には、あの時の、俺に近づくなといって嫉妬の塊のようになって茜を突き飛ばした葵の姿が浮かんでいるのかもしれない。
だが、はっきり言えばあんなものは参考になりえない、あれは、俺がわざと葵の目の前でキスシーンを見せつけたりと、作為的に葵を煽っただけだ。
俺が気づいた本当の葵の心。
それはまだ、俺が葵に何も手を加えていない頃の事。
俺が、葵を敵として対峙していた時の事。
俺は葵に対し、道具としてと前置きを付けたが、茜を大事な存在だと告げた。
その時の、俺すら恐怖を覚えたほどの葵の激昂。
おそらくあの時点で、もう葵は、茜が俺に対し自分と似たような感情を持っていたという事に気づいていたんだろう、だからこそ、俺が茜を気に入っているような類の事を聞かされて、葵はあそこまで激情にかられたのだ。
俺を茜に奪われるという不安、恐怖、葛藤。
俺は笑いながら茜を見下ろす。
「葵ってのは芸術肌のせいかずいぶんと感受性が高いな」
まあ、そのせいであれだけ精神が不安定なのだが。
「ああいうやつの勘ってのは、結構あてになるもんだぜ」
一歩間違えば被害妄想だがな、と俺は付け加える。
もう茜は俺と目を合わせようとはしなかった、うつむいたままじっとしている。
俺は、そんな茜を気にせずに続ける。
「どうする? 他にもまだ『そう考えてみれば』って思う事がいくつかあるんだが……全部聞きたいか?」
だが、これはハッタリだ、もう俺には思いつく事はない。
しかし、茜を追い詰めるには十分すぎる効果があったようだ。
茜はうつむいたまま、鞄を抱きしめぽろぽろと泣き始めた。
「そんなの……そんなのっ」
水滴が1つ2つと床に落ちる。
「全部全部っ…あなたがこんな人だって知る前の事よっ」
茜は肩を細かく震わせながら、今までためていたものを吐き出すように大声で言った。
「そうよ、私はあなたの事好きだったわ、悪いっ?……でも、あなたがこんな人だなんて知ってたら、絶対そんな気持ちにはならなかった! 今じゃそんな事考えてた私が泣きたいほど情けないって思ってるわよっ」
そう言って、その言葉通り、あふれる涙をボロボロとこぼす茜、だが―――
―――本当に、そうか?
俺は1歩、茜に近づく。
―――だったらなんで……お前は今の状況を甘受しようとしている?
茜は俺の行動に気づかずに、うつむいたまま泣き続けている。
―――葵は……俺の本性を知った後でも俺を求めたぜ。
すっと右手を上げて茜に近づける。
俺にはよくわかる、結局、お前ら2人は……血を分けた姉妹って事さ。
俺はすばやく、手をうつむいている茜の顔の下に潜り込ませる。
そして指先で茜のあごを掴まえると、そのままぐいと茜の顔を上げさせた。
「あ……」
上を向かせた茜の顔は、熱っぽさを伴った瞳が流れる涙で潤み、思わず背筋がゾクリとするほど官能的だった。
俺はそんな茜をくいっと更に引き寄せる。
そして、その唇に自分の唇を覆い被さるように押し付けた。
「んっ」
茜が俺を拒絶するように身じろぎをする。
だが、俺は左手を茜の背中に回し、茜が身動きを取れないようにする。
茜とキスをするのは都合2回目だが、今回は、前のように葵に見せ付けるだけの見せかけだけのものにするつもりはない。
俺は、茜のあごに当てていた指をぐいと下に引っ張り、茜の口を少し開かせる。
そして、その開いた隙間から、舌を強引にねじ込んだ。
「んんっ!」
ビクリと茜の身体が震える。
その時の衝撃で舌を茜に噛まれたが、その程度で俺はひるまない、そのまま舌を蠢かすように茜の口内をまさぐり始めた。
奥に逃げようとする茜の舌を、自分の舌で引きずり出すように絡ませたり、唇の裏をなめたりと、茜の口内で俺の舌が触れてないところなどないとないといわんばかりに、俺は舌で愛撫し続ける。
「ん……ん……」
ばさり、という音がエレベーター内に響く。
茜の鞄が床に落ちる音。
それを追うようにして、脱力しきった茜の両腕が、だらりと垂れ下がった。
もはや茜に抵抗する気配は見られない、なすがままに俺の行為を受けている。
茜の荒い息が俺の顔をくすぐる。
そのうち、がくがくと茜の膝が震えだし、茜は立っていることすら困難な状態になる。
俺は、背中に当てていた左手を、支えるように、まさぐるように茜の腰に回す。
エレベーターの中は、俺と茜の舌が絡む音だけがするようになった。
やがて―――
チンとエレベーターが目的の階に到着した音を響かせた。
俺は茜から離れる
つうと俺と茜の交じり合った唾液が糸を引いた。
俺が腰から手を離すと同時に、茜は背中をエレベーターの壁に預けたまま、ずるずるとずり落ち、ぺたんと正座でもするような格好で床にへたり込んでしまった。
俺は、くいっと自分の口をぬぐうと、その場できびすを返し、エレベーターの外へと向かう。
今まで茜と濃厚なキスをしていた事などまるでなかったかのうように。
「……いや、おいていかないで……」
そして、俺がエレベーターの扉をくぐったとき、後ろの方から、そんなかすれるような茜の涙声が聞こえた。
俺は、エレベーターの扉を1歩越えたところでくるっと茜の方を向きなおし、そのままバンッとエレベーターの安全装置を手で押さえつけ、エレベーターが閉まらないようにした。
茜はもう、腰が抜けているのか、俺を追いかけようとした床に手をついた格好で俺を見上げている。
俺は、そんな茜を見下ろしながら真剣な顔をし、ゆっくりと告げた。
「茜、二者択一だ」
え…と茜がつぶやく。
「俺を求めてこの扉をくぐるか、それともこのまま扉が閉まるのを待って、二度とここにはこないか」
二度とこない、と言った時に茜の身体がビクンと震えた。
「でも……」
「葵の事なら心配するな、確かにこのまま素直に帰してやるような事はできないが、きっと妥協点を見つけて、お前にも満足できるような形にしてやる」
「………」
俺は、すっと右手を茜に差し出す。
「周りの事を考えるな、お前だけの都合で、お前だけの意思で決めろ」
茜が熱っぽい視線で、俺の顔と差し出された右手を交互に見つめる。
ごくりと茜の喉が鳴った。
もうわかっている、ここまで追い込まれた茜がとる選択はひとつしかない。
茜は震える指先を俺の方に伸ばす、そして―――
しっかりと俺の手を握り締めた。
俺は茜の手を強く掴むと、ぐいと引っ張り、立ち上がらせ引き寄せる。
それと同時にエレベーターの安全装置を抑えていた手を離した。
茜はふらふらと俺に寄りかかり、そのまま抱きつくようにしがみついてくる。
その身体は細かく震えていた。
やがてエレベーターの扉が閉まり、そのまま下の階へと向かっていく。
茜の口から熱っぽい吐息が漏れた。
もう戻れない茜。
……これで…完璧だな
茜は完全に落ちた。
今まで通り、気の強さを見せることはあるだろうが、それでも俺の言うことに逆らうことはないだろう。
茜はもう、自らこうなる事を望んだのだから。
俺は、完全にその身体を俺に預けている茜を支えながら、携帯電話を取り出す。
そしてその中から、景子の電話番号を呼び出し、発信ボタンを押した。
……せっかく茜が完全になったんだ、この際全員呼び出してまとめて面倒見てやるか
携帯の呼び出し音が響き、数回もコールしないうちに景子が出る。
俺は景子に、全員を相手にしてやる旨を伝え、ここにくるように命令する。
わざと茜に聞こえるように。
だが、茜はそんな俺と景子の会話を聞いても、少しも臆することなく、俺に寄り添っていた。
ピッ、と俺は携帯を切り懐にしまうと、先ほどのように、あごを掴んで茜の顔を上げさせる。
俺を見上げる茜。
その熱っぽい瞳には、もはやなんの迷いも見られなかった。
よどんだ水の流れ。
たとえ風がさざなみ立たせたその表面で、太陽の光を乱反射させても、それを美しいと思う人間は皆無だろう。
目に見えるのは川という場所にはふさわしくないおびただしいほどのゴミ。
そして、その目にしみるほどの悪臭。
真冬のこの季節でこれだ、夏のその悲惨さは想像を絶するだろう。
俺は、そんな川の上にかけられているコンクリートの橋から、その濁った水を見下ろしている。
思えばここからすべてが始まった。
この橋の桁下で見つけた紫色の石。
人の精神を思うがままに操れる、神がかり的な能力を俺に与えた糸。
その後俺は、同じような能力を持ったやつらを倒し、その能力を取り込み、文字通り神のような力を手に入れた。
世界を征服する。
俺にはそんな意味のない野望などないが、それでもこの力があればそれも不可能ではないだろう。
俺は糸の力を使う。
ふわり、と俺の指先から紫の糸が舞い上がった。
キラキラと、光の屑を撒き散らしながらゆらめいている紫色の糸。
しかし、それと同時に―――
ちりちり……ちりちり……と。
俺の頭の中を焼くような、くすぐるようなそんな感覚。
これは、今まで何度か体験したことのある感覚。
俺が、今では俺の忠実な奴隷である2人と対峙した時の。
そう、同じような糸の力を持った者を感じ取っている感覚。
遠く……ずっと遠くからまるで俺を呼ぶように―――
……なんだ
クスリ、と俺は笑う。
……あれで終わりじゃなかったのか
俺は、まるで俺を呼ぶように届いてくるその力の方を向く。
どこにいるのかはわからない。
それでも、ずっと遠くから、確実に―――
……ああ、いいぜ、どんどんかかってこいよ
すうっと俺は前にかざすように右手を上げる。
たとえ、どんなやつが相手だって――――
シュンと、紫の糸が、俺の全身に巻きつくように、俺の身体を囲った。
―――俺がかならず、ぶちのめしてやるから
< 第一部 完 >