竜の血族・外伝 7

 レオンフィールドのメイド、兼愛人のレミカは、ふと昔のことを思い出していた。

 独房――そう呼ぶにふさわしい、無骨な石造りの部屋の中。
 冷たい風がひっきりなしに吹き込み、奥歯がかちかちと鳴る。
 たった1枚の毛布にくるまり、少年が涙を流していた。
 誰かに殴られたらしく、少年の顔は腫れていた。

「馬鹿じゃないの? 泣くくらいなら初めから歯向かわなければいーのにさ。だいたいあたしが大人のアレを舐めさせられてるのがそんなに悔しいの? して欲しいんだったらいつでもしてあげるわよ。あんたのことは嫌いじゃないんだからさ」

 真向かいの独房で、膝を抱えてうずくまっている少女がまくしたてた。その声はただテンポが速いだけで力はなく、かすれていた。

「うっせー、てめぇのためじゃねぇよ」
「あ、そ。だったら今度から止めてよね。とばっちり食らうのはこっちなんだし。どーせこの先、さんざヘンなことを仕込まれた後にどっかの変態貴族に引き取られてよろしくやってくんだからさ、賢く立ち回った方が楽になれるわよ」
「そうして生きながら死んでいくのか?」
「あーそーかっこいい台詞ですわねお坊ちゃん。で? そんなたいそうな台詞で温かいスープにありつけるの? 殴られないで済むの? 下手にプライドを持つと辛くなるだけでしょうが!」

 怒鳴り声が壁に反響し、尾を引いた。
 少年は何も言い返せなかった。
 うつむき、声を殺し、少女はすすり泣いた。
 その泣き声に少年もまた視線を落とし、目を閉じた。

「あんた見てるとイヤになるわ。何でもう少し賢くなれないかな? あんたも、どうせすでに後ろの穴を掘られてるじゃない。だったらあきらめて殴られないで身を任せた方がいいでしょ?」
「いやだ」
「なんで」
「惚れた女と約束した」

 少年は言葉を切った。
 少女は顔を上げて、続きを促した。

「何を?」
「必ず迎えに行く。その時、彼女に相応しい男になるって」
「で、それと変態どもに無駄な抵抗を繰り返すこととどんな関係が?」
「誇りだよ」
「誇り?」
「誇り高く生きるんだ。この世の理不尽に対して引かない、媚びない、省みない。誰が相手で、何をされようとも。一度でも屈したら、きっとあいつらのところへはたどりつけない」

 少女は黙ってじっくりと少年の独白を吟味したが、沈黙が訪れて十数秒後に、呆れたように言った。

「アホだ。あたしの目の前に、筋金入りのアホが一匹いる」
「うるさい」

 ふてくされて、少年は膝を抱えた。

「馬鹿にしたければ、しろ。必ず見返してやる」
「あーそうだったら笑ってやるわよ馬鹿。ははは、あはははははは」

 容赦なく、少女は笑った。
 力のない笑いだった。無理に笑おうとして、笑っているかのような。
 少年はふてくされ、何の反応も見せぬ。
 少女は笑うのにも飽きて、少年に聞いた。

「本気なの?」
「ああ」
「怪我か病気か、それとも飢えで死ぬわよ」
「その時は、僕はそこまでの男だったってことだ」

 それから数十秒、互いに何も喋らなかった。

「……あの、さ」
「うん?」
「身分が高い人なんでしょ、あんたの想い人」
「うん、すごく」
「じゃあじゃあ、もしその人といい仲になれて玉の輿に乗れたらさ、あたしをあんたのメイドにしてよ。がんばって働くから」

 男はぽかんと口をあけて、まじまじと女の顔を見た。

「レミカには難しいと思うよ。礼儀作法とか言葉遣いとか覚えないといけないらしいよ? 僕の母さんが雇ってもらってた時、言葉遣いとか作法をさんざん注意されて、ブチ切れて僕に八つ当たりをしたくらいだから」
「うっせぇ、ヴォケが。そんくらい直してやる。じゃない、直します」
「説得力ゼロだな。でもなんでそんなことを言い出すのさ?」
「だってここって場末だし、逃げたとしても”ぱとろん”も働くあてもないじゃん。身体売るなら別だろうけど。その点、レオンなら私を守ってくれるし、身分の高い人に仕えるのならお給料も悪くないでしょ?」
「打算丸出しだな」
「だってあんたに惚れたからとか言うのって照れくさいでしょ」
「僕は嘘は嫌いだ」
「だから嘘ついてないでしょうが。で、どう? こんなクソみたいな所で暮らしてるんだから、ちょっとやそっとの仕打ちには慣れていることは保障するよ。お買い得だと思わない?」
「いいよ。ただし、メイドとして働く上で最低限の言葉遣いとか作法を覚えてくれ。じゃないとお互いに肩身の狭い思いをすることになるからな」
「わかった。約束だよ、未来のご主人様」

 それは昔の話。
 少女の名前をレミカといい、少年の名前をレオンフィールドといった。

***

 話を、現在にもどす。
 女はコンコン、と2度、樫の木のドアをノックした。
 その先には屋敷の主人がおり、彼女を待っていた。

「レオンフィールド様、命に従いレミカが参りました。入ってよろしいでしょうか?」

 果たして……
 何が変わり、何を得たのだろう――?

 随分と変わったはずだ。孤児院で腐っていた頃の自分と、今の自分とでは。
 スレた言葉遣いを直し、礼儀作法を覚え、それが地になって定着するまで自分を律し続けた。
 仕事は忙しく、非常にストレスが溜まったが、それでも幸せだった。
 好きな相手に尽くすことが、彼女の仕事だったから。

 感謝していた。
 自分を守ってくれたことに。
 憧れていた。
 彼のひたむきさに。
 彼との約束を守り、彼の為にと変わってゆく自分が誇らしく、嬉しかった。
 傍にいるだけで幸せだった。

 うまく、伝えられるだろうか。
 感謝と、愛情を。

「どうぞ」

 男が返事をする。動悸が高まるのを感じながら、彼女は部屋へと入った。

***

 恋人から後ろ指をさされる前に、愛人を処分する。
 これから、そのための話し合いをするところだった。

 俺は最低だな、とレオンは思った。
 好きな相手がいるのに別の女に手を出した。それだけでも最低なのに、未熟な魔道の力を用いて女の心をもてあそんだ。
 長年彼の傍に置き、夜が来るたびに身体をむさぼり、愛と忠誠を誓わせた。
 ゆっくりと、女は壊れていった。
 自我をレオンに譲り渡し、思考はレオンへの奉仕のみに染まり、ご主人様に微笑みを返すだけの人形になった。
 最近になって女は正気を取り戻したようだが、それは幸運な力が働いたにすぎない。一生、老婆になり死ぬまで女は人形のまま生きていくことも有り得たはずであり、そのことを想像して男は深い自責の念にかられていた。

「身体の調子はどうだ?」
「おかげさまで快調です」
「そうか。よかった」
「その節はご迷惑を――」

 女が謝ろうとしたのをさえぎり、男は早口で言った。

「新しい就職口を用意してある。待遇は今と同じか少しいいくらいだと思う。すまないが1ヶ月以内に荷物をまとめて、ここを引き払って欲しい」」
「私が、何か粗相をしましたか?」
「いや。何も悪いことはしていないし真面目に働いてくれることも分かっている。ただ、これ以上僕の傍で働かれるのは困る」
「何故です?」
「けじめがつけられない」
「何に対するけじめです? 私はレオンさんに対して、感謝こそすれ嫌なことを強要されたことは1度もありません」

 レミカの中で、とまどいが苛立ちに変わり、苛立ちが怒りへと変質する。
 醜い、自己中心的な感情。――これだけ尽くしたのに、これだけ愛しているのに何故受け入れてくれないのか、と。

「僕の恋人に対してだ。レミカのためじゃない。それにこんな自己中心的な男に人生を捧げるなんて馬鹿な真似はしない方がいい」
「私の人生をどうするかは、私が決めることです」
「そうだ。だからその決定権を放棄させて、操り人形にした男に仕えるのはおかしいだろう?」
「私はレオンさんのことが好きです。レオンさんは、私のことが嫌いですか?」
「好き嫌いの問題じゃない」
「いいえ。ようは私よりも、その恋人の方が大切だから私を遠ざけたいだけなんでしょう?」
「……」

 図星をさされ、レオンはたじろいだ。だがひとつ呼吸を置くと、彼ははっきりと答えていた。

「その通りだ」

 その言葉に、レミカはめまいを感じた。ずん、と身体が重くなった気がした。
 分かっていた。分かっていたはずなのに、彼が自分を一番に想ってくれることを期待していた。
 彼の恋人よりも長い間彼の傍にいて、他の誰よりも多く彼に抱かれた。その日々が淡い期待を抱かせていた。
 割り切っていたはずなのに。
 性欲処理の道具でいい、と。
 胸が苦しかった。苦しくて切なくて吐き気がして、知らない間に涙が流れていた。
 もし、人形でいた頃ならば。
 術をかけられ、人形でいた数日前ならば、彼の言葉を受け入れて大人しく屋敷を引き払ったのだろうか。

「レオンさん」

 ぐい、とレミカは涙をぬぐった。
 昔は、出会ってから数年間は呼び捨てにしていた。
 だが今は呼び捨てではなく、”さん”という言い方が一番しっくりくる。そう、こんな風に別れ話を切り出されて、泣いてしまっている時でも。
 いまさらながらに、思い知った。
 誰のために変わったのかを。
 レオンに仕えるために、自分は生きてきたのだと。

 だと、すれば。

 ご主人様を幸せにすることが、使用人の幸福であるのならば……
 幸せになるために、自分はここを立ち去らねばならないのだろう。

「ありがとうございました。貴方に会えて、幸せでした」

 深々と頭を下げ、上げたと同時にレミカは逃げ出すように駆けていった。
 泣いているところを、見せたくはなかったから。

***

 レオンと、その愛人に関する密偵からの報告を聞いて――
 急きょ、双子の姫君はお茶会を開いた。
 場所は屋外に設置されたテラス。
 時刻は深夜に近い。
 見下した先にある庭園は、空と同様に闇色に染め上げられていた。
 姉妹は丸テーブルを中心に身体の向きを90度違えて座り、片方は蜂蜜のたっぷりと入ったホットミルクを、もう片方はブランデーがわずかに入った紅茶を手にしていた。

「本日の議題は、”にいさまが愛人を処分した件について”です」

 ばんっ、とルフィーナはテーブルを叩いた。
 激怒していた。
 その度合いは先日、父親の差し金で貴族の糞子弟にレイプされかけた時と遜色ないだろう。
 ただし、怒る理由は先回とは全く違っていたが。

「口にするのもおぞましいわね。今回のテーマは」

 姉と同じく、妹の顔と声にも怒りが満ちていた。

「残念ながら、私達の愛するにいさまは一介のヘタレ。……嗚呼、なんではっちゃけて下さらないのかしら。妾を持つのは王の特権でしょうに、自分で殻に閉じこもってもう呆れるくらいのお馬鹿。巷で言うアレです。”上等な料理に蜂蜜をぶちまけるがごとき思想”とかいう、まさにそのシチュエーション。これからルフィとにいさまの愛人の方々と一緒に、愛欲にただれた桃色生活を送るための裏工作を寝る間を惜しんで日夜続けていましたのに!」

 喋るうちにテンションが高くなったのか、今度はキレたリスフィーナがテーブルをがんっ、とたたいた。
 カタカタ、とテーブルが揺れ、ティーカップの中身がこぼれてしまう。

「リスフィーナ君、落ち着きなさい。キャラが普段と違っているわよ」
「これが落ち着いていられますか。ルフィだって楽しみにしていたでしょう? 夜な夜な顔を赤らめてきゃーなんて時々言ったりして、身体をくねくねさせて悶えてたくせにこのむっつりスケベさん」
「……お黙りなさい」

 むっつりとルフィーナは押し黙り、ホットミルクを口につけてすすった。リスフィーナもブランデー入りの紅茶をすする。ぽかぽかと身体が暖かくなった。

「それで、どうしましょうか、ルフィ。この件への落とし前は」
「既に考えているわ。手始めにレミカさんを拉致しましょう」
「また過激な――拉致して、その後は?」
「耳を貸して」

 ちょいちょいと指先で妹を招くルフィーナ。リスフィーナは言いつけどおりに姉の唇近くに顔を寄せた。十分な近さになったところで、ルフィーナは何事かよからぬコトを囁いた。

「――なるほど、名案。でも少し間違えたら、色々なところに飛び火しそうね」
「火遊びは危ないぐらいが一番面白いのよ」
「燃え上がったときの消火はいつも私に押し付けるくせに。ルフィがにいさまを刺した時だってそう」
「いじめないでよ、悪かったって反省したんですから。それにもう10年近くも前の話でしょう。何より、にいさまには許していただいたわ」
「許す許されない以前に、3日3晩生死の境をさまよわせるのはどうかと思うけど。だから今回はなるべく穏便にしてね」
「気をつけるわ。レミカさんとは同じ男を見初めた者同士、いいお友達になりたいしね。私とリスフィみたいに」
「その関係って気が触れると思うわ、普通の人だったら」
「そう?」
「そうよ」

 どちらともなく、笑った。
 口元を緩ませ、くすくすと、声をあまりたてずに。
 どちらも、精神がどこか破綻している。
 彼女らにとって、浮気は問題ではない。嫉妬心は確かにあるが、その火力は火傷を起こすには足りない。
 彼女らの世界の中心にはレオンが鎮座ましましており、彼のために働くことこそが彼女らの生きる理由であり意味だった。
 全てはレオンのためにある。
 レオンの望むものは全てを用意し、彼が望まない全てを排除する。
 だから、曲げることを許さない。
 欲しいと望んだのなら、手に入れればいい。
 捨てたくなければ、持ち続ければいい。
 気遣いは、嬉しいがいらぬ。
 レオンはレオンのままであるべきで、誰かに気兼ねし何かを犠牲にしてはならない。
 それが世界の摂理で、彼女達は彼のために存在している。
 それが自然なことだと考えている。
 空気を吸って吐くように。無意識に、それでいて、それなしでは死んでしまうかのように。
 双子の姫君達は、レオンのことを想っていた。

 レミカに暇を出してから、2週間が過ぎた。

「妙にベッドが広いな」

 などと、夜毎に寂寥感を抱きもしたが、それも10日ほどで慣れた。
 新しい雇用主と上手くやっているだろうか、とも思うが、わざわざ近況を尋ねに行くのは男としておかしいだろう。
 彼女とは、もう終わったのだ。
 そういえば、とレオンは手紙を見つめた。
 双子からの招待状だった。
 暇ができたので泊まりで遊びに来ませんか、という内容が書いてある。
 素敵な贈り物を用意したので、是非もらっていただきたいとも。

「2週間くらい予定を切り詰めれば何とかなるだろうな」

 スケジュールを整理し、もぞりとレオンは毛布をかぶった。

***

「ようこそおいでくださいました」

 双子は申し合わせたかのように同時に言い、ぺこりとお辞儀をする。
 同じ顔で同じ動作をし、同じ言葉を喋るそのさまは、まるで人形のようでいて、しかし、面を上げた双子の瞳は人形にはありえぬ強烈な生気を宿していた。

「ああ、招いてくれてありがとう。しばらく厄介になるのでよろしく」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」

 ぴと。むにゅ。
 胸を押し付けるように、ルフィーナはレオンの右腕に抱きついた。男の視線が自分の胸元へ引き寄せられるのを確認し、ルフィーナは口元を微かにほころばせた。

「にいさま。左腕と右腕の感触、どちらの方がお好みですか?」

 ぴと。むにゅ。
 同じく男の左腕に抱きつき、リスフィーナ。

「いやどちらって、お前な……日も高いうちからそういうことで年上をからかわないでくれ」
「だって長らく放置されて寂しかったんですもの」
「そしてリスフィは昼夜を問わずはしたない娘ですもの」
「ルフィ、うるさい」
「んー? お姉さんに向かって何て口の聞き方するかなー」

 ぎゅむ、とルフィーナは妹の頬をつねった。

「歳なんてたった数秒のちがいだけでしょう」

 ぎゅむ、とリスフィーナは姉の頬をつねり返した。

 手加減しているうちににいさまから離れなさい。あらお姉さま、それはこちらの台詞ですわ。私はまだ余力を残していますのよ? 奇遇ねリスフィーナ君、私も2割くらいの力しか出してないわ。あらそうですか、私は1割くらいですけど。

 ……などと、けん制しあう2人。

「相変わらず仲がよろしいな」

 にらみ合う妹達の手をとり、やんわりとお互いの頬からはずさせるレオン。

「はい、握手して仲直り」
「はーい」

 双子は大人しく頷いた。余人が同じことをすれば黙殺してくるであろうが、ことこの兄に対しては非常に素直である。

「そうそう、お茶の準備をしていますの。にいさま、甘いものは大丈夫ですか?」
「いや特に好き嫌いはないよ」
「そう。よかった。この日の為に、私とリスフィとでがんばって茶菓子を作りましたの」
「ふっふっふ。おいしい方が私の作った方ですよ」
「ぺちーん」

 奇声を発し、ルフィーナが妹のおでこを手の平ではたいた。
 言葉どおり、ぺちっ、とかなりいい音がした。

「悪意ある嘘をまことしやかに吹き込むんじゃありません」
「……にいさま、ルフィがぶったところがすごく痛いです。さすっていただけますか?」
「仕方ないな」

 レオンがリスフィーナのおでこを撫でる。リスフィーナは上機嫌に顔をほころばせ、子供のようにえへへ、と笑った。
 それを見るルフィーナの口元が、ひく、ひく、と小きざみに引きつる。とはいえレオンに手を出すのもはばかられたので、声を大にして自分の正当性を主張した。

「にいさま、前もって言っておきますけど、用意したクッキーは限りなく2人の合作です。卵黄と小麦を混ぜてこねるまでは両方でやって、蜂蜜やバターを塗るのは私、リスフィはチョコレートなどのトッピングをしましたの。焼入れはメイドに任せましたから、上に乗せてあるものが違うだけで、厳密にはどちらか片方だけが作ったお菓子なんてありません」
「ああ、そうか」
「あはは……失礼しました、ルフィ」
「ま、いいわ。許してあげる。淑女たるもの寛容の心を持って他人に接しないとね」

 言いつつも妹の足を靴のかかとで軽く、踏みつけた。
 リスフィーナは顔をしかめた。その行為に気づいてはいたが、レオンは小さく息を吐くのみで、何も言わなかった。
 仲の良い、間接的に近親相姦をするほど仲の良い姉妹である。仲がこじれるとすれば、原因がどこにあるか知っているだけに、当事者であるレオンは気苦労がたえなかった。

「さ、にいさま。くだらない小競り合いとその仲裁劇は置いて、参りましょう。深夜になればお菓子以外の、面白いプレゼントを用意してますわ」
「ああ、そうでした。にいさま、楽しみに待っていてくださいね。きっとお気に召すはずですから」

 2人は、笑った。
 無邪気さの奥に、邪悪なものを忍ばせて。

「そうか、楽しみだ」

 何故か、背筋に凍るものを感じながら、レオンはうなずいた。

***

 そして、夜。
 当たり前のように閨に誘われ、その下準備として風呂にまったりと浸かっているレオンがいた。
 もうすぐ姫達を抱く。
 抱きたいし、実際に抱くのだろう。
 国王の監視の目や、社会的に知れれば近親相姦と忌避されるのは間違いないのだが――不思議と、あまり危機感は抱けなかった。理由は分からぬが、ルフィーナ、リスフィーナの双子の瞳を見ると、そんな危険などどうでもよくなってしまう。
 否。危機感よりも何よりも、たぎる欲望の前に全てがとるに足りぬことのように思えてしまう。

「いかんな」

 と言っても、自分を抑えるつもりはなかった。
 毒食わば皿まで。皿を食えばテーブルまで。その後は世界を喰らいつくそう。2人の誘いにのって別荘に出向いた時点からアウトなのだ。どうなろうと責任はとる。いまさらためらうつもりはない。

「何がいけないのですか?」
「……。そーいう風に男の入っている風呂の中に恥らいなく入ってくるキミ達が」

 突如、浴室に入ってきた双子に、レオンは呆れた声で諭した。
 彼女達のいでたちは、腰まで届く金の髪を頭の上に巻き上げ、胴体には残念ながら襦袢という薄着を羽織っただけだった。歩くたびにたぷん、と揺れる胸が下着を着けていないことを示している。薄い襦袢は、少し濡れてしまえばたちまちに素肌を透かせてしまうだろう。

「リスフィはともかく私は恥ずかしいですよ、これでも」
「まー猫かぶりなお姉さまはどうでもいいとして、にいさまだって視線がえっちです」
「そりゃ、な」

 離れ離れだった間に育った双子の身体を上から下まで見下ろして、自分の股間を確認する。期待ゆえか見事にソレは瞬時に屹立していた。

「にいさま、お背中を流させてください」
「ことわる」

 ルフィーナからののおいしい申し出だが、一言で却下する。
 今、湯船から出るとやばいのだ。

「む、にいさまが反抗期だ」
「それとも、最近ルフィの体重がちょこっと増えて見た目がほんのすこーしだけふくよかになったから嫌いになってしま……ぐみゅ」

 怒りと、怒りと、怒りをこめて、ルフィーナは妹の頬をつねった。

「ほれほれほれ、のびるのびるのびる」
「ひぎれる、ほっぺがちぎれちゃ……にゃっ!」
「にいさまにもっともらしく悪意のある嘘をつくなと何度も言っているでしょうこのお馬鹿!」
「にいさまー、横暴なルフィがいたいけな私をいじめますー」
「今のは自業自得だろ」

 笑いながらレオン。幸いというべきか、2人の和気藹々としたかけあいに、戦闘態勢に入っていた股間の紳士もどうにか収まってきた。

「やっぱり背中を流してもらおうかな」
「やたっ」

 ざば、とレオンは立ち上がった。もちろん前はタオルで隠している。
 彼女達は目くばせしあい、してやったりと、互いの手をぱちーんと叩いた。

「ささ、座ってください」

***

「にいさま、普通の洗い方と普通ではない洗い方、どちらにいたします?」

 男が座るなり、小悪魔のような笑みを浮かべてルフィーナが聞いた。
 びくり、とレオンの肩が震える。

「ふ、普通の方だろう当然」

 内心かなり葛藤したため、声がうわずった。

「リスフィはどっちがいい?」
「もちろん普通じゃない方」
「というわけで残念です。2対1の多数決により、にいさまの意見は却下されてしまいましたー」
「多数決わっしょい」
「横暴だぞキミたち」
「でもにいさまの身体は、正直に反応しているみたいですけど」
「きゃっ」

 背後から抱きつき、股間に流し目をくれるルフィーナ。
 憮然とするレオンフィールド。
 黄色い声を上げて飛びすさるリスフィーナ。しかしばっちりと指の隙間から、レオンの勃起したモノを見ている。

「リスフィーナ君。カマトトぶるならもう少し上手におやりなさい」
「む。ルフィは乙女のたしなみというものをご存じないのね」
「……キミタチ、いつの間にそんなにはっちゃけたのかね?」
「にいさまにお情けを頂いてからです」
「ルフィはともかく、私は淑女たるつつしみを持っておりますのでお忘れなく」
「ほう。なら、ルフィにだけ背中を流してもおうか」
「流石にいさま。あ、にいさまはこっち向いちゃ駄目ですよ。恥ずかしいですから」

 浴室の湿気を吸い、重くなった襦袢がわずかな衣擦れの音をさせる。
 とさり、と背後から聞こえた。正面を向いている男にも2人が衣服を脱いだのが分かった。
 石鹸を手で泡立て、ルフィーナは自分の胸にくりゅくりゅと塗りつける。

「”作法”は、仲のいいメイドから聞いているのですが……こういうことをするのは初めてです。つたないようでしたら、遠慮なく叱ってください。にいさまのご要望に沿えるように努力しますから」

 男の背に胸を当て、耳元に囁く。
 衣服ごしではなく、肌に直接触れるルフィーナの双乳。
 柔らかくて、暖かかくて、弾力に富んだそれは、彼女が背中に押し付けるのと同じ強さで押し返してくる。
 至近距離から立ち上る女の汗と、吐息に混じる柑橘系の香玉の甘ったるい匂い。
 くらくらしてくる。

「んっ……」

 乳房が、男の背筋を這う。
 背中に泡を塗りつけるように、胸全体を使って奉仕する。
 ぬるぬるとした泡と、人間の肌の温かさ。至近距離から聞こえる掛け声と息遣いに肌がゾクゾクとあわ立ち、股間の凶器はもうとっくに臨戦態勢に入っている。

「ぁ、やだ……胸の先がこすれてヘンな感じがします」

 確かに。
 胸で背中を愛撫されるうち、次第に背筋に感じる乳首の感覚が固くなるのが分かってきて……互いに意識し、興奮してしまう。

「仲間はずれはひどいです」

 いたずらっぽい声と共に、リスフィーナが参戦した。
 レオンが、何か言おうと口を開く。
 それを見計らったかのように顔を寄せ、唇を奪い、舌を差し込んだ。

 ちゅ……ちゅちゅ……ちゅぐ……、ぴちゅ……くちゃ……

 レオンの舌を探り、からませ、唾液をおくる。こく、と男がためらいもなく喉を鳴らして飲むのに至福を覚えながら、リスフィーナはしばしその口付けを楽しんだ。
 唇を離す。
 銀色の糸が互いの口に橋をかけた。
 とろ……と。
 リスフィーナの太股が濡れている。
 湯当たりのためではなく、頬は赤くなっているだろう。途中から完全にキスに没頭してしまったが、レオンに気持ちよくなってもらえているだろうか、などと内心で思いつつ、リスフィーナは上目遣いでレオンを見た。
 視線を合わせ、魔道の力を使い男の心を探る。
 何を望んでいるのか。
 どうすれば、悦んでくれるのか。

「ルフィが背中を洗っているので、私は前を失礼しますね」

 興奮と羞恥に、リスフィーナの声がうわずっている。
 正面から抱きつく。ただし男の背中を奉仕する姉の邪魔にならぬよう、彼の身体の後ろに手を回すことはしない。
 レオンの胸板で、リスフィーナの胸がつぶされる。
 前もって、胸には石鹸をこすりつけ泡立たせていた。身体をくねらせ、すでにはしたなく勃起している胸の先を、男のそれにこすれるように胸板を洗う。

「にいさま、私も……」

 背後から、ルフィーナが男の右肩にあごを乗せ、キスをせがむように目を閉じる。
 首を回し、レオンは要望に答えてやった。

 ちゅぐ……ちゅ……ちゅちゅちゅ……ぴちゃ、ぴちゅ、ちゅちゅ……

 妹よりもねちっこく、長く、いやらしいキスをして欲しい。
 ルフィーナの瞳が、そう語っていた。
 だから、男は要望どおりにしてやる。

 ちゅちゅ……ぴちゃ……ちゅっ、ちゅちゅっ……ちゅ……

 口腔を犯すように舌を動かし、時折相手の唇を唇で柔く噛む。
 柑橘系の香りのする唾液を飲み、自分の唾液を飲みこませ、口はしからどちらのかも分からぬ唾がこぼれるのもかまわず、舌をぐちゅぐちゅと絡ませる。
 やがて、息苦しさから口を離す。
 はぁ、はぁ、とお互いから、荒い呼吸の音が聞こえた。

「ああ、もったいない」

 リスフィーナが楽しげに言い、姉と入れ違いになる形でレオンに顔を近づけた。
 唾液まみれになった男のあごに舌を伸ばし、なめとる。
 舌を滑らせ、口元へ。男の唇に舌を這わせ、唾液をすすりとった。
 双子の姉と、愛しい恋人の唾が混じった液体を、嬉々として味わってゆく。

「おいしい……」

 恍惚とした顔で、リスフィーナ。
 男が、その唇にちゅ、と触れるだけのキスをする。リスフィーナの表情が、さらにふにゃふにゃと蕩けた。
 しまりのない顔の目尻は下がり、唇からは無意識に笑みがこぼれる。不意にペットを可愛がるような気分になり、レオンはその髪を撫でた。

「にゃー」

 リスフィーナが鳴く。鳴いて、男の身体に密着した。
 びく、その身体が一瞬硬直した。頬が強張っている。下腹のあたりに、妙に固い棒状の何かがあたっていた。それが何かは分かっているし、暗闇の中でだが見たこともあった。
 期待半分、あとの半分は羞恥と恐れを抱きつつ、目線をゆっくりと下におとした。

「はぅ……」

 真正面から、まじまじとソレを見つめるリスフィーナ。上から見下ろす男の視線を感じる。その気配がなんとなく気恥ずかしかった。

「あまり見られると恥ずかしいんだが」
「あ、ごめんなさいにいさま。つい見とれてしまって……」
「すけべ」

 と、ルフィーナが男の右肩から顔を出して言う。

「ルフィの言えたことじゃないだろう?」
「あ、やぁ」

 男は左手を器用に背後に回し、ルフィーナの胸をとらえた。
 ギリ、と強く力を込め、次いでやわやわと緩急をつけてこね回す。
 すでに尖った乳首をつまみ、軽く爪で引っかいてやると、ルフィーナは息をあらげ、身をのけぞらせて許しを請うた。

「だめ、だめですにいさま……そんなにされたら、ヘンな気分になります……」
「存分になれ。お兄ちゃんが許す」
「はぁっ……」

 びくっ、と肩が震える。軽く逝ったかもしれない。
 身体から力が抜け、くてんと男の背に身を預ける。
 はぁ、はぁ、と呼吸を整えるルフィーナの胸をさらにもてあそびつつ、レオンは身体を回して唇を重ねた。

 くちゅ……じゅ……じゅくちゅ、ちゅちゅっ……

 口腔を蹂躙し、唾液を送り込む。
 ルフィーナの喉がこくん、と鳴り、男から送り込まれる唾を従順に飲んでゆく。

「いいなぁ……」

 レオンにいたぶられる双子の姉を見て、羨望のまなざしを向けるリスフィーナ。
 自分もレオンに虐めて欲しい。
 だがどうすればいいだろうか。姉の身体を玩んでいる最中におねだりするのは、姉にもレオンにも迷惑だろう。
 そこで、閃いた。
 メイドから教わった作法を頭の中ではんすうし、実践に移す。
 座ったまま、レオンの下半身に身体を近づけた。
 ちゅ、と亀頭の先にキスをし、胸を寄せた。
 ぬりゅりと、石鹸にこすれ男のモノが包まれる。

「ん、しょ……」

 10年前にはなかったおっぱいを左右からこすり合わせ、男の肉棒に奉仕する。胸と胸の間からのぞく亀頭の先、鈴口を舌先でつつき、先走りをなめとった。

「ちょっと苦い」

 目尻を下げ、嬉しそうに言う。その顔に、その声に、レオンは不覚にもぐっとキてしまう。
 石鹸の泡を潤滑油に、ヌルつく胸の柔らかさが気持ちいい。彼の好みぴったりに育った胸がたぷたぷと左右から押しつぶされ、肉棒を中に収めて形を変えるさまが、上から見下ろすとすごく……興奮させられる。
 もっと。もっともっと味わいたい。
 おっぱいの柔らかさと温かさを、何も考えずアホのように味わい尽くしたい。白い液体を存分に出して、この美しい金の髪の女の顔と胸とを汚したい。

「ふふ、どうしましたか、にいさま? 目をギラギラさせて」

 すっ、とリスフィーナが離れた。
 レオンは、落胆をあらわに妹を見た。

「どうして欲しいですか、にいさま?」

 妖艶に、微笑む。
 見せ付けるように胸を張り、自分の手で泡を塗り広げる。
 おっぱいは白くあわ立つ石鹸によってテラテラと光り、身体のラインが淫らに強調されていた。
 たぷん、とリスフィーナの胸が揺れる。先ほどまで、レオンの肉棒を淫らにこすりたてていた果実が、目の前で美味しそうにさらけ出されている。
 ごくり、とレオンの喉がなった。

「いつの間にそんなはしたなくなったんだ、リスフィーナ君」
「にいさまのせいです」
「そうそう。にいさまに初めてお情けを頂いた日から、夜ごとにいつも自分の指で慰めているんですよ。うわごとみたいに、にいさまのことを何度も呼んで」

 レオンの背中に胸を押し付けルフィーナが、男に抱きつきながら囁く。
 媚惑的に、男の理性を蕩かすように。
 囁きが心地よく耳をくすぐり、レオンはゾクゾクと首筋をあわ立たせた。
 後ろからあてがわれる胸と、その中心にある尖った乳首の感触が、たまらなく気持ちいい。
 男の息が荒くなり、昂ぶる興奮に鼓動が早鐘を打つのが分かる。
 ぎゅ、とさらに強くルフィーナは身体を押し付けた。

「リスフィは虐められると悦ぶ変態さんなんですよ」
「ちょ、ちょっとルフィ! 私はそんなにはしたなくないわ。にいさまに変な嘘を吹き込まないで」
「そんなに動揺しなくても、口だけの言葉を信用することはないから安心しなさい」
「あ、ありがとうございます」

 喜んだのも束の間、男は底意地の悪い笑みを浮かべた。

「だから身体に尋ねてやろう。ルフィ、手伝ってくれ」
「はい、にいさま。御心のままに」

 ルフィーナは嬉しそうに、妹をいたぶる提案に乗った。

***

「にいさま、リスフィははしたない娘だから、いじめられると悦ぶんですよ」
「ほう」
「こうすると……ほら」
「やぁっ!」

 桜色に色づく乳首をつまみ、ぐねぐねと荒々しくひっぱる。

「はぁぁぁ、やー。ルフィ、そんなに痛くしないで……」
「もっとして欲しいんでしょう? だって太股にまでえっちなおつゆが垂れてきてる。ほら、少しいじくるだけでくちゅくちゅって音がするのがわかるでしょう?」
「んっ……あ、やぁ、いじらないでルフィ」

 妹の太股に手を添え、あふれる蜜を指に絡ませる。
 ルフィーナが人差し指と中指を浅く入れ、2、3度かきまわしただけで、リスフィーナはふる、と身体を震わせて悶えた。

「はぁぁっ……」
「ほら、リスフィのおつゆが糸を引いてるでしょう、にいさま」
「ああ。すごくいやらしい」

 指と指との間に、ねちゃぁ、と糸が伝っている。レオンはルフィーナの指を口に含み、妹の蜜を舐めとった。

「ほんの少しだけすっぱいな」
「どんな味ですか?」

 レオンの唇をふさぐルフィーナ。深いキスをし、レオンと舌を絡ませる。
 そうしてルフィーナとキスをしている間、レオンの手はリスフィーナの胸をわしづかみ、ギリ……と力いっぱいにこねあげていた。

「んー、にいさまの唾の味しかしない」
「それは残念だ」
「ううん、残念じゃないかも。私はにいさまの唾の味も好きだから。頭がぼーっとして、気持ちよくなるの」
「にいさま、おっぱいいじっちゃやぁ……」 
「ああごめんなリスフィ、こっちをいじめてほしかったか」

 レオンの指がリスフィーナの膣内に入れられた。2本の指を往復させ、Ⅴ字型に広げ、勃起して半ば皮の剥けたクリトリスをこすりたてる。
 リスフィーナは何度か達してしまったのだろう、身悶えるたびに身体がびくびくっ、と震えた。

「そこもぉ、ダメですぅ」
「駄目? 何が駄目なのかはっきり言ってくれないとわからないぞ」
「やぁ」

 頭を振り、長い髪を振り乱していやいやとするリスフィ。

「本当にやめてほしいの? お兄ちゃんにされるのは気持ちが悪いか?」
「違うの。好きなの。にいさまにいじめられるのが好きです。でもこれ以上されたらヘンになっちゃうの。ヘンになって、あんまりはしたない姿を見せるときっと愛想をつかされるから、我慢しないといけないの」
「我慢しないで言って欲しいな。リスフィーナが何をされて、どういう風な感じがするのか」
「にいさま、嫌いにならない? 私が凄くえっちでも、嫌いにならない?」
「ああ。ならない」
「にいさまの指が、私のお……おまんこを、いじくってます。それで、私はすごく感じて、頭が真っ白になって……軽く何度も逝っちゃってるの。でも、まだ足りない。にいさまのがすごく欲しいの。無理やり犯されるみたいに、にいさまに組み敷かれて、にいさまのたくましいので、いっぱいいじめて欲しいの」
「よく言えました」

 レオンが、ルフィーナに目配せした。
 ルフィは優しく微笑み、両手を使って妹の太ももを開かせた。ちょうどオシッコをさせるようなポーズで、リスフィーナはレオンと向かう形になる。

「やぁ、やめてよルフィ」
「にいさまに言われたでしょう? リスフィがえっちでも、嫌いにならないって。だからもっと、楽しみなさい」
「はぁぁっ!」

 リスフィーナがのけぞった。レオンの肉棒が、ずんっと一気に深くまで挿入されたから。

「あぁぁ」

 どくっ、と結合部から、大量の蜜があふれる。身体からは完全に力が抜け、背後から支えるルフィーナに身体を預けていた。

「いい、リスフィ。リスフィの身体は、にいさまのモノなの。髪も、唇も、おっぱいも、おへそも、その下にあるえっちな女の子のところも。にいさまが気持ちいいとリスフィも気持ちよくなれるし、にいさまが望むことを叶えるのがリスフィの望みなの。だから今は、安心して溺れなさい。にいさまにどうすれば満足していただけるかだけを考えなさい」

 妹の耳元にキスをしながら、小声でルフィーナが”暗示”をかける。
 レオンには気づかれないように、たわいのない睦言(むつごと)をささやくのふりをしながら。
 深く、深く。魂まで届くように。
 より深く、より強く、自分の妹がレオンに隷属するように。

「うん。リスフィの身体は、にいさまのモノなの」
「そうだよ。私も一緒だから」
「うんっ」

 嬉しそうに、満面の笑みを浮かべうなずいた双子の妹に、ルフィーナは口づけた。

 ちゅちゅ、くちゅ……くちゅちゅ……ちゅる……ちゅっ…

 唇と唇を触れ合わすだけだったキスはすぐに深いものへと変わり、リスフィーナはレオンに貫かれながら双子の姉に口腔を犯された。
 双子の姉妹が唇をむさぼる、その扇情的な光景にレオンのモノが、びくんっ、と震えた。

「はぅっ」
「そろそろいくぞ」

 レオンが腰を動かし、肉棒の抜き差しを始めた。
 ぐちゅぐちゅ、と白っぽい蜜が結合部の隙間からどろどろとあふれ出し、浴室は断続的に奏でられるリスフィーナの嬌声に満たされた。

「あっ、あっ、あぅ、すごい……にいさま、気持ちいいですぅ、にいさまのが……リスフィのおまんこをぐちゃぐちゃってかき回してますぅ」
「良かったわね、リスフィ」
「あっ、はぁ、ルフィ、おっぱいいじめちゃだめ。ヘンになるっ。にいさまもそんなに乱暴にかき回しちゃだめ、イク、いっちゃうの……もう何度目かわからないくらい、いっちゃうのぉ」
「何度もいっているだろう。気にするな」
「ダメ、だめなの、私だけ気持ちよくなっちゃ……にいさまに気持ちよくなっていただかないとだめなの」
「僕もすごく気持ちいいよ」
「ほ、本当ですか、はぁっ……、私の身体、気持ちいいですか?」
「ああ、すごく」
「じゃ……一緒に、一緒にイッていただけますか? にいさまの白いの、リスフィにいっぱいくれますか?」
「ああ、もうちょっとだ」

 レオンが肉棒の出し入れを激しくする。女を悦ばせるためではなく、射精に向け一直線に肉壺を蹂躙していった。

 ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ。

 ぬらつく音とリスフィーなの嬌声が混じる。男が突くごとにがくがくと身体が揺れ、ちいさな絶頂が波のように押し寄せ、だんだんとそれがひとつの大きな波へと収束してゆく。
 背後からはルフィーナが乳首の先をつねり、それが痛いほどに気持ちいい。

「あっ、あっ、あっ、あっ!」

 あまりの気持ちよさに唾液がこぼれ、あごをつたう。意識は真っ白になり、気持ちいいという言葉以外に何も考えられなかった。
 いや……ひとつだけ。レオンが気持ちよくなってくれているかどうか、気にかけている。それがかろうじて、快楽に翻弄されるリスフィーナの意識をつないでいた。

 ぐちゃっ、ぐちゃっ、ぐちゃっ!

 男の動きが切羽詰ったものになる。もうすぐだ、と霞のかかった頭というより、身体が悟った。
 無意識に、リスフィーナは男に抱きついた。

「くっ!」

 どくっ、どくっ、ドクドクッ!

 肉棒が、爆ぜる。
 すんでのところで引き抜いた肉棒は、暴発してリスフィーナの顔を、胸を、お腹を、白く汚した。

「はぁぁぁぁっ!」

 リスフィーナが感極まったあえぎをあげ、四肢をぴーんと突っ張らせた。
 次いで、くてん、とその身体が落ちた。

「リスフィ……?」
「失神しちゃったみたいですね」
「やりすぎたな」
「いいえ。だってすごく幸せそうな寝顔ですもの。私だって、気を失うくらい愛されたいですもの」

 言いつつ、ルフィーナはリスフィーナの身体に舌を這わせ、精液をなめ取っていった。

「ああ、にいさまの味。おいしくないけど、すごくおいしい」

 双子の姉が妹の顔を舐め、胸を舐め、お腹を舐める。そのさまはひどく淫らで、男のモノは再び固いほどに勃起していた。

「あ、にいさまったら……」
「あー……、気にするな。それより先にリスフィを介抱してやらないと」
「そう……ですね。ここに放置しておくのもかわいそうですものね」
「残念だけど、続きはベッドの上でな」 
「はい、にいさま。仰せのままに」

 不満の一言も漏らさず、ルフィーナは微笑んだ。
 それから、レオンはルフィーナ、リスフィーナ、それにもう1人の女の身体を堪能することになるが――
 それはまた、次回の話。

< 続く >

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